中 央 家 畜 衛 生 通 信 第 65 号 平 成 25 年 8 月 発 行 岩 手 県 中 央 家 畜 保 健 衛 生 所 岩 手 県 中 央 家 畜 衛 生 協 議 会 目 次 家 畜 を 残 暑 から 守 りましょう 岩 手 県 牛 ヨーネ 病 防 疫 対 策 要 領 の 改 正 について 農 場 HACCP 興 味 のある 方 は 当 所 まで!! めん 羊 の 慢 性 銅 中 毒 1 3 4 6 家 畜 を 残 暑 から 守 りましょう 梅 雨 明 けの 遅 れから 残 暑 の 長 期 化 が 予 想 されます 家 畜 にかかる 暑 熱 ストレ スは 乳 量 の 減 少 や 繁 殖 成 績 の 低 下 等 家 畜 の 生 産 性 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすばか りでなく 様 々な 疾 病 の 引 き 金 にもなります ここでは 暑 熱 対 策 のポイントについて 紹 介 します 1 各 畜 種 共 通 対 策 (1) 畜 舎 管 理 1 畜 舎 内 への 熱 の 侵 入 防 止 対 策 畜 舎 屋 根 への 散 水 石 灰 塗 布 屋 根 壁 への 断 熱 材 遮 光 ネット 等 の 設 置 2 畜 舎 内 の 蓄 熱 防 止 対 策 細 霧 装 置 の 設 置 遮 蔽 物 の 除 去 過 密 飼 養 の 回 避 など 換 気 扇 や 扇 風 機 での 送 風 換 気 は 除 湿 効 果 も 期 待 でき 特 に 畜 舎 内 の 送 風 で は 家 畜 の 体 に 直 接 吹 き 付 けるのではなく 一 定 方 向 への 空 気 の 流 れを 作 っ てやることが 大 事 です -1- 次 頁 に 続 く
(2) 家 畜 管 理 新 鮮 低 温 で 十 分 な 飲 水 の 確 保 朝 夕 の 涼 しい 時 間 帯 に 給 餌 また 家 畜 の 出 荷 も 暑 い 時 間 帯 を 避 けることで 成 績 が 上 がることが 期 待 できます 2 畜 種 別 の 対 策 (1) 牛 採 食 量 を 減 らさない 工 夫 として 飼 料 給 与 回 数 の 増 加 給 与 粗 飼 料 の 細 切 ミネラル 補 給 重 曹 添 加 ( 乳 牛 ) ビタミンA 添 加 ( 肥 育 牛 )などが 上 げられ ます なお 暑 熱 ストレスによる 食 欲 不 振 乳 量 低 下 などの 異 常 は 早 く 見 つけて 獣 医 師 に 相 談 しましょう (2) 豚 母 豚 では 採 食 量 低 下 に 伴 う 栄 養 低 下 を 改 善 させるため 高 栄 養 価 飼 料 の 給 与 や 添 加 剤 でのカロリー 補 給 が 効 果 的 です また 母 豚 の 暑 熱 ストレス 軽 減 に 冷 凍 ペットボトルを 用 いた 氷 水 滴 下 首 筋 ド ロップクーリングも 効 果 的 です 方 法 は 2L ペットボトルの 半 量 の 水 を 凍 ら せ 母 豚 の 首 筋 から 肩 に 自 然 解 凍 した 氷 水 が 当 たるように 吊 るします 肉 豚 では 飼 育 密 度 を 普 段 の8 割 程 度 に 低 下 させ 飼 料 は 朝 一 番 (5 時 頃 から 10 時 頃 )と14 時 から19 時 頃 までの 時 間 に 集 中 的 に 食 べさせるようにしま す ペットボトルクーリング 用 氷 の 作 り 方 1ペットボトル(1.5~2l) 割 り 箸 竹 串 輪 ゴムを 用 意 します 2 適 当 な 長 さに 切 った 割 り 箸 と 竹 串 を 輪 ゴムで 十 字 に 結 わえます 3 十 字 に 結 わえた 割 り 箸 と 竹 串 をペットボトル 内 に 入 れます 4 水 を 入 れ 冷 凍 庫 (できれば-20 以 下 )でじっくり 凍 らせます 割 り 箸 輪 ゴ ム 竹 串 2 リ ッ ト ル の ペ ッ ト ボ ト ル 割 り 箸 と 竹 串 を 輪 ゴムで 十 字 に 結 わえる ペットボトル 内 に 入 れる と 自 然 に 開 き そのまま 水 を 半 量 入 れ 凍 らせる 次 頁 に 続 く -2-
(3) 鶏 鶏 は 呼 気 で 喉 から 水 分 を 蒸 発 させて 体 温 を 下 げ 蒸 発 した 水 分 を 補 給 するた め 飲 水 量 が 増 えます 暑 い 時 は 飲 水 量 が3~4 倍 に 増 えるので 十 分 な 給 水 量 を 確 保 しましょう また 鶏 が 好 む 水 温 (10~13 )を 保 つため 日 中 熱 くな った 給 水 ラインの 水 抜 きを 定 期 的 に 行 いましょう 機 械 類 も 暑 さによりオーバーヒートして 故 障 することがあります 日 頃 から 機 械 の 動 作 状 況 に 注 意 し 定 期 的 なメンテナンスを 行 いましょう < 衛 生 課 > 岩 手 県 牛 ヨーネ 病 防 疫 対 策 要 領 の 改 正 について 岩 手 県 では 牛 ヨーネ 病 の 発 生 予 防 のため 乳 用 ( 搾 乳 ) 牛 は 平 成 10 年 度 から 肉 用 ( 繁 殖 ) 牛 は 平 成 20 年 度 から 家 畜 伝 染 病 予 防 法 第 5 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 本 病 検 査 を 行 っています その 結 果 平 成 24 年 度 は 肉 用 牛 において 4 戸 9 頭 ( 全 国 では225 戸 445 頭 )にヨーネ 病 の 発 生 が 確 認 されました 本 病 の 感 染 牛 は 症 状 を 現 す 前 から 糞 便 中 にヨーネ 菌 を 排 出 し 気 づかないうち に 農 場 内 に 感 染 が 拡 大 する 可 能 性 があるため 侵 入 防 止 と 早 期 発 見 が 重 要 です 平 成 25 年 4 月 国 は 牛 のヨーネ 病 防 疫 対 策 要 領 を 改 正 し これを 受 け 本 県 では 岩 手 県 牛 ヨーネ 病 防 疫 対 策 要 領 を 改 正 しました 今 回 の 改 正 により 感 染 牛 の 確 実 な 摘 発 と 県 外 導 入 牛 の 確 実 な 検 査 が 期 待 できるなど 本 病 の 発 生 予 防 及 び まん 延 防 止 対 策 が 強 化 されました 本 要 領 の 主 な 改 正 点 は 次 のとおりです 改 正 点 改 正 の 内 容 1 診 断 方 法 これまでは 血 液 ( 抗 体 ) 検 査 で 診 断 しましたが 改 正 後 は 糞 便 中 ヨーネ 菌 遺 伝 子 検 査 で 診 断 します 2 導 入 牛 の 牛 の 導 入 時 に 導 入 牛 を 隔 離 して 本 病 検 査 を 行 っていた 場 合 導 検 査 実 施 と 入 牛 が 遺 伝 子 検 査 で 陽 性 となった 場 合 でもその 農 場 が 発 生 農 場 陽 性 時 の 対 とはならなくなりました 応 一 方 導 入 時 に 検 査 を 実 施 しなかった 県 外 導 入 牛 が 患 畜 となっ た 場 合 には 3 の 助 成 事 業 の 一 部 が 対 象 外 となります 3 自 主 とう 本 病 患 畜 発 生 農 場 を 対 象 として 1 患 畜 との 関 連 牛 ( 患 畜 の 産 汰 助 成 事 業 子 等 ) 2 糞 便 中 のヨーネ 菌 遺 伝 子 検 査 で 遺 伝 子 が 検 出 された 牛 対 象 に 加 え 3 血 液 ( 抗 体 ) 検 査 で 陽 性 となった 牛 も 自 主 とう 汰 時 の 助 成 対 象 となりました 本 病 患 畜 発 生 時 には 患 畜 の 処 分 に 対 し 家 畜 伝 染 病 予 防 法 に 基 づいた 手 当 金 が 交 付 されます ただし 飼 養 衛 生 管 理 基 準 の 遵 守 等 の 条 件 を 満 たすことが 必 要 です 自 主 とう 汰 助 成 事 業 要 件 の 詳 細 については 当 所 へお 問 い 合 わせください < 防 疫 課 > -3-
農 場 HACCP 興 味 のある 方 は 当 所 まで!! 近 年 農 場 HACCPの 取 組 みが 全 国 で 始 まっています 平 成 25 年 6 月 末 現 在 国 内 で 農 場 HACCP 推 進 農 場 に 86 農 場 が 指 定 され 農 場 HACCP 認 証 農 場 には 27 農 場 が 認 証 されています 1 農 場 HACCPとは 表 農 場 HACCP 推 進 農 場 認 証 農 場 一 覧 乳 用 牛 肉 用 牛 豚 鶏 計 推 進 農 場 3 11 45 27 86 認 証 農 場 3 2 16 6 27 計 6 13 61 33 113 農 場 HACCPとは 畜 産 農 場 が 原 材 料 を 購 入 して 家 畜 や 畜 産 物 を 出 荷 するま でのすべての 過 程 について 工 程 ごとにHA( 危 害 分 析 )を 行 い 危 害 を 防 止 する CCP( 重 要 管 理 点 )を 定 め 重 要 管 理 点 を 一 定 の 頻 度 で 継 続 監 視 することにより 危 害 の 発 生 を 未 然 に 防 ぐことができるシステムです 畜 産 農 場 の 危 害 には 病 原 微 生 物 による 汚 染 肉 や 生 乳 中 への 抗 菌 性 物 質 の 残 留 など 様 々ありますが 農 場 HACCPは それらの 危 害 を 未 然 に 防 ぎ 農 場 におけ る 衛 生 管 理 を 向 上 させ 最 終 的 に 健 康 な 家 畜 及 び 安 全 な 畜 産 物 の 供 給 につなげ るものです 農 場 HACCPに 取 組 む 農 場 には 農 場 HACCP 推 進 農 場 と 農 場 HAC CP 認 証 農 場 の 二 つがあります 2 農 場 HACCP 推 進 農 場 とは 農 場 HACCP 推 進 農 場 とは 家 畜 の 飼 養 衛 生 管 理 基 準 を 満 たし かつ 基 本 的 な HACCP 手 法 を 理 解 し 農 場 HACCPに 取 組 んでいる 意 欲 ある 畜 産 農 場 につい て 一 定 の 要 件 を 満 たす 場 合 に 指 定 される 農 場 で 農 場 HACCP 認 証 農 場 の 前 段 階 と 位 置 付 けられています 次 頁 に 続 く -4-
3 農 場 HACCP 認 証 農 場 とは 農 場 HACCP 認 証 農 場 とは 畜 産 農 場 における 飼 養 衛 生 管 理 向 上 の 取 組 認 証 基 準 ( 農 場 HACCP 認 証 基 準 ) に 適 合 していると 認 証 された 農 場 です 平 成 21 年 8 月 農 林 水 産 省 消 費 安 全 局 長 から 公 表 されました 4 管 内 の 取 組 み 状 況 管 内 では 当 所 が 支 援 して 農 場 HACCP 推 進 農 場 の 指 定 を 受 けた( 株 )い わちくファーム 第 4 農 場 ( 肉 用 牛 肥 育 農 場 )と 農 場 HACCP 認 証 農 場 に 認 証 された( 独 ) 家 畜 改 良 センター 岩 手 牧 場 ( 乳 用 牛 飼 養 農 場 )があります また 管 理 獣 医 師 の 支 援 を 受 けて 農 場 HACCP 認 証 農 場 に 認 証 された 農 事 組 合 法 人 南 山 形 養 豚 組 合 ( 養 豚 農 場 )があります 5 農 場 HACCP 認 証 農 場 の 認 証 を 受 けるには 農 場 HACCP 認 証 取 得 には 一 般 的 に 管 理 獣 医 師 又 は 家 保 の 支 援 の 下 で 農 場 HACCP 認 証 基 準 で 要 求 されている 書 類 を 整 えて 認 証 機 関 (( 公 社 ) 中 央 畜 産 会 等 )に 申 請 し 書 類 審 査 現 地 審 査 を 経 て 認 証 判 定 委 員 会 での 最 終 審 査 をもっ て 農 場 HACCP 認 証 農 場 に 認 証 されます 6 ご 興 味 のある 方 は 当 所 まで 農 場 HACCPに 取 り 組 んだ 農 場 からは 飼 料 添 加 物 の 使 用 状 況 を 記 録 するな ど 日 常 の 飼 養 管 理 状 況 を 記 録 ( 管 理 )することで 家 畜 の 安 全 性 を 確 保 できること はもちろんのこと 従 業 員 の 力 量 ややる 気 が 上 がるなどの 自 主 管 理 能 力 の 向 上 や 呼 吸 器 病 などの 発 生 があった 時 に 改 善 する 仕 組 みがあることで 家 畜 の 健 康 が 確 保 され 生 産 性 の 向 上 が 期 待 できるなどの 成 果 を 聞 いています 農 場 HACCPについてもっと 詳 しく 話 を 聞 きたい 方 取 り 組 んでみたいけれど 具 体 的 に 何 をするか 知 りたい 方 将 来 取 組 みたいとお 考 えの 方 は お 気 軽 に 声 を おかけください 当 所 のスタッフが 皆 様 の 御 連 絡 をお 待 ちしております < 衛 生 課 > -5-
めん 羊 の 慢 性 銅 中 毒 めん 羊 は 他 の 家 畜 と 比 較 して 銅 の 排 泄 能 力 が 低 く 銅 中 毒 を 発 症 しやすいことが 知 られています 昨 年 から 今 年 にかけ 牛 用 飼 料 又 は 牛 めん 羊 兼 用 飼 料 を 給 与 し ていた 東 北 地 方 の 複 数 の 農 場 で 本 病 が 発 生 しています めん 羊 の 銅 の 飼 料 要 求 量 は 牛 とほぼ 同 量 ( 乾 物 中 5~10ppm)ですが 中 毒 発 生 限 界 は 25ppm( 成 牛 で 115~200ppm)と 許 容 範 囲 が 著 しく 狭 いため めん 羊 に 牛 用 の 配 合 飼 料 を 与 え 続 けると 慢 性 銅 中 毒 を 発 生 する 危 険 があります 特 に 栄 養 要 求 量 が 増 大 し ストレスが 加 わる 分 娩 前 後 に 突 然 発 症 する 傾 向 があります 摂 取 された 銅 は 主 に 肝 臓 に 蓄 積 されますが 過 剰 に 蓄 積 されて 貯 蔵 能 力 を 超 える と 肝 組 織 の 障 害 を 引 き 起 こします 症 状 は 元 気 食 欲 不 振 から 末 期 には 黄 疸 貧 血 血 色 素 尿 発 熱 等 を 呈 して 死 亡 します 剖 検 所 見 として 肝 臓 をはじめとする 全 身 諸 臓 器 組 織 の 黄 疸 ( 図 1) 腎 臓 の 暗 青 色 化 が 認 められます また 組 織 検 査 における 特 殊 な 染 色 により 肝 細 胞 に 銅 の 沈 着 ( 図 2)が 認 められます 生 化 学 検 査 では 肝 臓 腎 臓 及 び 血 液 から 高 濃 度 の 銅 が 検 出 されます 血 液 検 査 では 血 中 銅 濃 度 は 死 亡 直 前 まで 異 常 値 を 示 さないこ とがありますが 肝 障 害 により 肝 酵 素 活 性 値 (GOT GGT LDH 等 )が 著 しく 上 昇 す ることから 本 病 疑 いの 診 断 材 料 や 発 生 群 のモニタリングに 活 用 されます 本 病 の 発 生 防 止 対 策 として 栄 養 要 求 量 を 満 たすための 牛 用 濃 厚 飼 料 の 単 独 給 与 は 極 力 避 ける( 給 与 せざるを 得 ない 場 合 は 量 を 制 限 する)こと 特 に 分 娩 前 後 の 時 期 にストレスを 与 えない 飼 養 管 理 が 重 要 です < 病 性 鑑 定 課 > 図 1 肝 臓 の 黄 疸 図 2 肝 細 胞 への 銅 の 沈 着 ( 銅 染 色 ) < お 問 合 せ 先 > 岩 手 県 中 央 家 畜 保 健 衛 生 所 電 話 :019-688-4111, FAX:019-688-4012 ホームヘ ーシ :http://www.pref.iwate.jp/info.rbz?ik=3&nd=707 岩 手 県 中 央 家 畜 で 検 索 してください 沿 岸 広 域 振 興 局 農 林 部 宮 古 農 林 振 興 センター 電 話 :0193-64-2214, FAX:0193-64-5631 岩 手 県 中 央 家 畜 衛 生 協 議 会 電 話 &FAX:019-688-4015-6-