名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 Ⅰ. 序 文 近 年, 子 ども 達 における 生 活 習 慣 の 乱 れや 様 々な 健 康 問 題, 学 校 への 不 適 応 などが 社 会 問 題 となっている[6, 15, 19] 小 学 生 におい ては 小 1 プロブレムなどと 言 われ,



Similar documents
平 成 27 年 度 大 学 生 の 食 生 活 等 生 活 習 慣 調 査 結 果 1 目 的 平 成 25 年 3 月 に 策 定 された 健 康 日 本 21あいち 新 計 画 の 栄 養 食 生 活 分 野 の 目 標 項 目 では 2~6 歳 代 の 肥 満 者 の 割 合 と2~3 歳

(Microsoft Word _10\214\216\222\262\215\270\203\212\203\212\201[\203X_\215\305\217I\215e.doc)

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

Microsoft Word - 目次.doc

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

<4D F736F F D D488A778CA48B8689C881468DB293A190E690B E682558AFA93C896D88E738D8297EE8ED E646F6378>

区議会月報 平成19年4-5月

小山市保育所整備計画

untitled

2 積 極 的 な 接 種 勧 奨 の 差 し 控 え 国 は 平 成 25 年 4 月 から 定 期 接 種 化 したが ワクチン 接 種 との 関 連 を 否 定 できない 持 続 的 な 痛 みなどの 症 状 が 接 種 後 に 見 られたことから 平 成 25 年 6 月 定 期 接 種 と

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

m07 北見工業大学 様式①

愛知淑徳学園 規程集

1 子 ども 子 育 て 支 援 会 議 議 事 一 覧 平 成 25 年 11 月 28 日 ( 木 ) 第 1 回 子 ども 子 育 て 支 援 会 議 1 会 長 副 会 長 の 選 出 について 2 会 議 の 運 営 について 3 子 ども 子 育 て 支 援 新 制 度 の 概 要 につ

伊勢市の将来人口の推計【参考資料】

豊 住 直 樹 岩 沢 雅 司 渡 邉 幸 彦 7 中 林 信 男 高 橋 功 7 竹 原 奈 津 紀 滝 沢 義 明 コ 9 片 見 明 コ ム ム 高 橋 進 小 峰 直 ム 中 島 克 昌 55 0 松 島 誠 55 滝 邦 久 関 竹 夫 嶋 田 道 夫 信 7 栗 原 孝 信 ム 竹 井

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

協 議 会 事 務 局 長 民 生 委 員 協 議 会 会 長 身 体 障 害 者 協 議 会 会 長 老 人 クラブ 連 合 会 会 長 ( 平 成 25 年 6 月 1 日 現 在 ) 母 子 寡 婦 福 祉 会 会 長 手 をつなぐ 育 成 会 会 長 中 馬 惠 雄 元 野 濱 子 里 島

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

三 和 シヤッター 工 業 株 式 会 社 ( 中 核 事 業 会 社 ) 人 事 異 動 [ 取 締 役 監 査 役 執 行 役 員 ] 長 野 敏 文 代 表 取 締 役 社 長 取 締 役 専 務 執 行 役 員 ビル 建 材 事 業 本 部 長 髙 山 盟 司 取 締 役 専 務 執 行 役

5 月 平 日 夜 間 1 木 那 須 森 屋 2 金 小 宮 山 井 上 博 元 3 土 浜 野 伊 東 祐 順 山 本 省 吾 中 下 ( 県 ) 坪 井 植 草 西 村 4 日 町 村 梅 沢 石 橋 武 川 賢 一 郎 松 田 秀 一 鈴 木 盛 彦 5 月 松 本 東 條 武 川 慶 郎

Microsoft PowerPoint - 14説明資料

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

伊勢崎市職員職場復帰支援制度

< FC90B E835A838B976C8EAE81698E7392AC91BA94C5816A81698F4390B394C5816A2E786C73>

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

 

平 成 22 年 6 月 第 3 回 水 俣 市 議 会 臨 時 会 会 議 録 目 次 平 成 22 年 6 月 30 日 ( 水 )

tokutei2-7.xls

Microsoft Word - 概況(確定版).doc

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

Taro-18-4完全原稿.jtd

<4D F736F F D C93FA967B91E5906B8DD082D682CC91CE899E2E646F6378>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

別紙3

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

39_1

萩 市 立 小 中 学 校 施 設 耐 震 化 計 画 はじめに 平 成 7 年 1 月 の 阪 神 淡 路 大 震 災 以 後 近 年 まで 全 国 的 に 大 規 模 な 地 震 が 発 生 しており 公 共 施 設 の 耐 震 性 の 確 保 が 改 めて 重 要 視 されている このような

平 成 22 年 12 月 第 5 回 定 例 会 (11 月 26 日 招 集 ) 会 期 日 程 表

Taro-学校だより学力調査号.jtd

< F2D874491E682528FCD2091E DF C A2E>


国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

<947A957A8E9197BF C E786C73>

(Microsoft Word - \213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235\214\366\225\\\201iH \)\201iHP\227p\201j.doc)

47 高 校 講 座 モ オ モ 圏 比 較 危 述 覚 普 第 章 : 活

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

我孫子市小規模水道条例

「節電に対する生活者の行動・意識

Microsoft PowerPoint - 390

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

平 成 年 度 中 国 四 国 学 生 テニス 王 座 ランキング 表 男 子 シングルス 男 子 ダブルス 位 山 本 琢 也 ( 松 山 大 学 ) 位 岡 林 航 介 ( 松 山 大 学 ) 位 岡 林 航 介 ( 松 山 大 学 ) 位 山 本 琢 也 ( 松 山 大 学 ) 位 山 本 雄

Microsoft Word - 公表資料(H22).doc


2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,6 243,7 185,8 222,9 261,9

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

Ⅰ 平成14年度の状況

発 覚 理 由 違 反 態 様 在 日 期 間 違 反 期 間 婚 姻 期 間 夫 婦 間 の 子 刑 事 処 分 等 1 出 頭 申 告 不 法 残 留 約 13 年 9 月 約 9 年 11 月 約 1 年 10 月 2 出 頭 申 告 不 法 入 国 約 4 年 2 月 約 4 年 2 月 約

<8F748B D E8C8B89CA2E786C73>

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

S7-2)わが国におけるHIV感染妊娠の動向と近年の特徴

表紙

山梨県職員研修所 御中

PowerPoint プレゼンテーション

役員の異動に関するお知らせ

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 年 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 給 与 月 額 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

<4D F736F F D2090BC8BBB959491BA8F5A91EE8A C52E646F63>

18 国立高等専門学校機構

6/ 小 高 孝 二 中 嶋 憲 一 小 町 谷 直 樹 m 愛 知 駒 ヶ 根 市 駒 ヶ 根 市 6/19 松 下 正 浩 m 静 岡 6/19 森 田 俊 一 5: m 愛 知 6/19 中 澤 俊 喜

<4D F736F F D2093FC8A7797BF81438EF68BC697BF96C68F9C8ED28B7982D192A58EFB C8ED291498D6C8AEE8F802D312E646F63>

< F31332D91CF906B89BB8C7689E68F912E6A7464>

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第081号.doc

< F2D819B92CA926D E9693E A2E6A7464>

Ⅰ 平成14年度の状況

1.3. 距 離 による 比 較 距 離 による 比 較 を 行 う ( 基 本 的 に 要 求 される 能 力 が 違 うと 思 われるトラック 別 に 集 計 を 行 った ) 表 -3 に 距 離 別 の 比 較 を 示 す 表 -3 距 離 別 比 較

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

<4D F736F F D20328FCD5F8F5A82DC82A282DC82BF82C382AD82E882CC89DB91E8>

<4D F736F F D F8DC4955D89BF92B28F915F8D4C93638DBB90E895942E646F63>

( 教 育 職 員 免 許 状 の 取 得 ) 第 9 条 教 育 職 員 免 許 状 ( 幼 稚 園 教 諭 二 種 免 許 状 )を 取 得 しようとする 者 は 教 育 職 員 免 許 法 に 基 づき 別 表 2に 掲 げる を 修 得 しなければならない 2 教 育 職 員 免 許 状 の

Microsoft Word - 10 H21田中睡眠と経過

Microsoft Word - H25普通会計決算状況 .docx

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

Microsoft Word - 2章.doc

sho05-13/ky808254107800001138

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

第 63 回 ( 平 成 26 年 度 ) 横 浜 文 化 賞 選 考 委 員 会 日 時 平 成 26 年 8 月 22 日 ( 金 ) 午 後 2 時 ~ 場 所 市 庁 舎 2 階 応 接 室 次 第 1 開 会 2 開 会 あいさつ 横 浜 市 副 市 長 渡 辺 巧 教 3 委 員 紹 介

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

Transcription:

名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 第 27 号 (2014.12) 研 究 ノート 大 学 入 学 後 の 生 活 変 化 が 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 様 症 状 発 現 に 及 ぼす 影 響 中 野 貴 博 沖 村 多 賀 典 金 愛 慶 齋 藤 健 治 早 坂 一 成 廣 美 里 松 田 克 彦 名 古 屋 学 院 大 学 スポーツ 健 康 学 部 要 旨 大 学 1 年 生 を 対 象 に, 大 学 入 学 直 後 から 半 年 間 における 生 活 習 慣 の 変 化 と,それに 伴 うOD 様 症 状 発 現 との 関 係 性 を 検 討 することを 目 的 とした 4 月 および10 月 に 実 施 したアンケート 調 査 に 適 切 に 回 答 した125 名 を 分 析 対 象 とした 生 活 時 間, 睡 眠, 食 事,OD 様 症 状 に 関 して4 月 と 10 月 の 変 化 を 分 析 検 討 した 睡 眠, 食 事 習 慣 に 有 意 な 悪 化 が 確 認 された 生 活 時 間 では 有 意 な 遅 寝 遅 起 きの 進 行 が 確 認 された OD が 疑 われる 学 生 の 割 合 は,わずか 半 年 間 で 約 10%の 増 加 が 確 認 された これらの 結 果 より, 生 活 習 慣 の 悪 化 と 生 活 時 間 の 夜 型 化 がOD 様 症 状 を 引 き 起 こしている 可 能 性 が 疑 われた 大 学 生 に 対 して 適 切 な 生 活 習 慣 とリズムの 獲 得 を 教 育 すること が 体 調 の 改 善, 学 業 姿 勢 の 改 善 に 有 効 であることが 示 唆 された キーワード: 生 活 リズム, 起 立 性 調 節 障 害, 大 学 生 Influence of Lifestyle Changes on Appearance of OD Symptoms after Entrance into University Takahiro NAKANO, Takanori OKIMURA, Aekyoung KIM, Kenji SAITOU Kazunari HAYASAKA, Misato HIRO, Katsuhiko MATUDA Faculty of Health and Sports Nagoya Gakuin University 発 行 日 2014 年 12 月 31 日 33

名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 Ⅰ. 序 文 近 年, 子 ども 達 における 生 活 習 慣 の 乱 れや 様 々な 健 康 問 題, 学 校 への 不 適 応 などが 社 会 問 題 となっている[6, 15, 19] 小 学 生 におい ては 小 1 プロブレムなどと 言 われ, 小 学 校 の 生 活 に 適 応 できず, 授 業 中 じっとしていられ なかったり, 集 団 行 動 ができなかったりする ケースが 問 題 であり, 様 々な 取 り 組 みも 行 わ れている[5] これ 以 外 にも 小 学 校 高 学 年 頃 から, 身 体 活 動 が 減 少 したり,あるいは 痩 せ 願 望 などの 影 響 で 食 習 慣 の 乱 れが 生 じたりす ることも 指 摘 されている[10, 13] 中 学 生 や 高 校 生 における 女 児 の 痩 せ 願 望 は 特 に 大 きな 問 題 であり, 不 健 康 やせや 思 春 期 やせ 症 など の 増 加 も 指 摘 されている[20] その 一 方 で, 食 習 慣 の 乱 れや 身 体 活 動 の 現 象,テレビや ゲーム,ネットなどの 影 響 による 睡 眠 を 中 心 とした 生 活 習 慣 の 乱 れなどに 起 因 した 肥 満 の 増 加 も 問 題 となっている[1, 12] 肥 満 の 増 加 も 痩 せの 増 加 も 大 きな 社 会 問 題 と 言 える[4, 11] このような 問 題 点 は 児 童 生 徒 のみの 話 ではなく, 大 学 生 においても 多 く 見 られる 特 に, 大 学 生 では 一 人 暮 らしの 影 響 や 授 業 時 間 の 変 化 などによる 生 活 の 乱 れは 顕 著 であ り, 授 業 中 の 居 眠 りや 集 中 力 不 足, 午 前 中 の 体 調 不 良 などの 様 子 は 日 常 的 に 見 られている のが 現 状 である このような 学 生 は, 将 来, 卒 業 後 に 社 会 生 活 に 適 応 できなくなる 恐 れも ある 上 記 のような 問 題 を 呈 する 子 ども 達 におい ては, 単 なる 体 型 の 変 化 や 学 校 および 社 会 へ の 不 適 応 といった 問 題 だけではなく, 健 康 上 の 問 題 が 顕 在 化 するケースも 少 なくない 一 般 的 に 不 定 愁 訴 と 呼 ばれる 頭 痛 腹 痛 や 身 体 のだるさなどを 訴 えるケースも 多 く 見 ら れ, 上 記 のような 子 ども 達 の 意 外 な 共 通 項 であったりもする 午 前 中 の 体 調 不 良 など は,その 典 型 例 である このような 不 定 愁 訴 を 有 する 子 どもは,わが 国 では20 年 ぐらい 前 から 多 くなってきたと 言 われる[17, 19] さらに,このような 生 活 の 乱 れに 起 因 した 不 定 愁 訴 では 起 立 性 調 節 障 害 (Orthostatic Dysregulation, 以 下 OD と 記 述 する)が 疑 われるケースも 多 い[16, 17] これまでにも OD に 関 しては 児 童 生 徒 を 中 心 にいくつかの 報 告 がある[3, 9, 21] そして,これらの 報 告 の 多 くで 生 活 習 慣 の 乱 れとの 関 係 が 指 摘 され ている 本 来,OD は 自 律 神 経 系 の 働 きの 不 調 により, 起 立 時 に 血 圧 が 維 持 されず, 結 果 的 にめまいや 立 ちくらみを 起 こす 症 状 がその 典 型 症 状 である 自 律 神 経 の 働 きの 不 調 は 生 活 習 慣 の 乱 れにより, 正 常 な 日 内 リズムで 自 律 神 経 が 働 かないために 起 こることがわかっ ており, 生 活 習 慣 を 適 切 にすることで,この ような 症 状 が 大 幅 に 改 善 できる[14] 上 記 のような 学 校 や 社 会 への 不 適 応,そし てその 背 景 に 存 在 が 考 えられるOD,OD と 並 存 する 健 康 上 の 問 題 は, 重 大 な 社 会 問 題 で ある 日 本 学 校 保 健 会 の 調 査 では, 小 学 生 高 学 年 の 女 児 では 約 5.4%がOD 様 症 状 を 呈 することが 示 されている また, 中 学 生 や 高 校 生 ではさらに 増 加 し,それぞれ24.1%と 29.4%になっている 同 様 に 男 児 でも 中 学 生 で 16.5%, 高 校 生 で17.8%になっている[9] 一 方 で 大 学 生 に 関 する 研 究 はまだまだ 少 な い 実 際 には, 大 学 生 の 生 活 は 一 人 暮 らしな どの 生 活 の 変 化 に 影 響 を 受 けて 著 しく 乱 れて いることが 予 想 され, 高 校 生 まで 以 上 にOD 様 症 状 を 呈 する 学 生 が 多 いと 推 察 される 事 実, 小 学 生 や 中 学 生 よりも 大 学 生 の 生 活 はは るかに 乱 れているという 指 摘 もあり,それが 34

大 学 入 学 後 の 生 活 変 化 が 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 様 症 状 発 現 に 及 ぼす 影 響 体 調 の 不 良 や 抑 鬱 と 関 連 するとも 言 われてい る[8, 18] 恐 らくこのような 学 生 は 学 業 にも 支 障 をきたしている 可 能 性 があり, 将 来 の 社 会 生 活 に 適 応 できない 危 険 性 も 想 定 される 以 上 のような 背 景 から, 本 研 究 では 大 学 生 を 対 象 に, 大 学 入 学 直 後 から 半 年 間 における 生 活 習 慣 の 変 化 と,それに 伴 うOD 様 症 状 発 現 との 関 係 性 を 検 討 することを 目 的 とした Ⅱ. 方 法 2.1 対 象 者 対 象 者 は,2014 年 度 に 本 学 に 入 学 した1 年 生 153 名 であり,この 内,4 月 および10 月 に 実 施 したアンケート 調 査 に 適 切 に 回 答 した 125 名 を 分 析 対 象 とした 2.2 調 査 項 目 アンケート 調 査 は 生 活 時 間, 睡 眠, 食 事, OD 様 症 状, 情 緒, 過 去 の 運 動 暦,これから の 運 動 生 活, 自 己 効 力 感 に 関 する11 の 大 問 で 構 成 した 調 査 項 目 の 総 数 は103 項 目 であ り, 集 合 調 査 法 により 調 査 を 行 った また, すべての 選 択 肢 が 同 じものを 選 んでいたり, 選 択 肢 外 の 数 字 を 記 入 していたり, 時 間 項 目 においてはありえない 時 間 を 記 入 していたり などの 信 頼 性 の 低 い 回 答 に 関 しては, 不 適 切 な 回 答 として 事 前 に 削 除 して 分 析 を 行 った 本 研 究 では 上 記 の 調 査 項 目 の 内, 生 活 時 間 (3 項 目 ), 睡 眠 (10 項 目 ), 食 事 (12 項 目 ), OD 様 症 状 (11 項 目 )を 分 析 対 象 とした 調 査 はすべて4 件 法 にて 行 い, 数 値 の 大 きいも のを 良 好 な 生 活 習 慣 となるようにした ま た, 時 刻 項 目 に 関 しては24 時 間 表 記 にて 記 入 させた 2.3 データ 分 析 生 活 時 間 に 関 しては, 起 床 時 刻, 就 寝 時 刻, 睡 眠 時 間 の 変 化 を 対 応 のあるt 検 定 によ り 検 討 した 睡 眠 関 連 項 目 に 関 しては10 項 目, 食 事 関 連 項 目 に 関 しては12 項 目 の 合 計 得 点 を 算 出 し,それぞれ 睡 眠 得 点, 食 事 得 点 という 合 成 変 数 の 変 化 を 対 応 のあるt 検 定 により 検 討 した OD に 関 しては 表 2 に 示 し た 診 断 基 準 に 基 づき[2, 3], 陽 性 が 疑 われる 学 生 を 判 断 した その 後,4 月 から10 月 にお ける 陽 性 が 疑 われる 学 生 の 割 合 の 変 化 をクロ ス 集 計 およびカイ 二 乗 検 定 により 検 討 した すべての 分 析 において 有 意 水 準 は5%とし, IBM SPSS Statistics Version 20.0 を 用 いて 分 析 を 行 った Ⅲ. 結 果 3.1 生 活 時 間 の 変 化 起 床 時 刻, 就 寝 時 刻, 睡 眠 時 間 の 変 化 を 表 3 に 示 した 起 床 時 刻 は 有 意 に 遅 くなってお り,7 時 56 分 から8 時 17 分 へと 約 20 分 間 遅 くなっていた 就 寝 時 刻 も 同 様 に 約 20 分 間 遅 くなっており, 有 意 な 変 化 であった 睡 眠 時 間 に 有 意 な 変 化 は 見 られなかった 全 体 的 に 生 活 時 間 が 約 20 分 間 夜 型 に 移 行 している ことがうかがえた 3.2 睡 眠, 食 事 得 点 の 変 化 睡 眠 得 点 および 食 事 得 点 の 変 化 を 表 4 に 示 した 睡 眠 得 点 に 関 しては, 十 分 な 睡 眠 時 間 や 寝 つき, 起 床 の 仕 方 などの10 項 目 の 合 計 得 点 で 検 討 した 4 月 の 段 階 では 平 均 31.34 点 であり1 項 目 あたりでは3.0 点 をわずかに 越 える 値 であった 全 体 的 に 睡 眠 習 慣 は 良 好 であったことがうかがえた また,10 月 の 35

名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 表 1 調 査 領 域 項 目 一 覧 調 査 領 域 調 査 項 目 選 択 肢 生 活 時 間 睡 眠 食 事 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 様 症 状 学 校 がある 日 の 起 床 時 刻 学 校 がある 日 の 就 寝 時 刻 学 校 がある 日 の 睡 眠 時 間 睡 眠 時 間 はじゅうぶんに 取 ることができていますか 同 じぐらいの 睡 眠 時 間 を 取 っていますか ふとんに 入 ってからすぐに 眠 ることができますか ぐっすり 眠 ることができていますか 朝 はすっきりと 目 をさますことができていますか 朝 は 自 分 で 起 きることができていますか 同 じ 時 間 に 起 きることができていますか だいたい 同 じ 時 間 に 寝 ることができていますか 朝, 起 きてから 学 校 に 行 くまでの 時 間 に 余 裕 を 持 てていますか お 風 呂 にゆっくり 入 ることができていますか 朝 食 を 食 べることができていますか 好 き 嫌 いをしないで 食 事 ができていますか 毎 日, 食 事 を 三 回 きちんととることができていますか 毎 日, 食 事 を 同 じ 時 間 にすることができていますか ごはんを 残 さずに 食 べることができていますか できるだけ 多 くの 食 品 を 食 べるようにしていますか 栄 養 バランスのよい 食 事 ができていますか 食 事 はゆっくりとかんで 食 べていますか お 菓 子 やスナック 菓 子 を 食 べすぎないようにしていますか 食 品 の 安 全 ( 食 品 添 加 物 や 賞 味 期 限 等 )を 確 かめていますか ジュース 等 を 飲 みすぎないようにしていますか 塩 辛 いものを 食 べすぎないようにしていますか 立 ちくらみ や めまい を 感 じることがあるまたは, 立 ち 上 がるときにそっと 立 つことがある 立 っていると 気 持 ち 悪 くなり,ひどいときは 倒 れることがある お 風 呂 やシャワーに 入 ったとき, 気 分 が 悪 くなり,ひどいとき には 倒 れることがある 少 し 動 いただけでも 胸 がドキドキしたり, 息 切 れしたりするこ とがある 朝, 頭 痛 や 腹 痛 や 身 体 のだるさで, 起 きにくいことがある 顔 色 が 悪 い( 青 白 い) と 言 われることがある 食 欲 がないことがある おなかがさすように 痛 くなることがある 身 体 の だるさ や 疲 れやすさ を 感 じることがある 頭 が 痛 くなることがある 乗 り 物 に 酔 いやすい 時 刻 記 入 時 刻 記 入 起 床 就 寝 より 算 出 4 件 法 1:ほとんどない 2:ときどき 3:しばしば 4: 毎 日 4 件 法 1:ほとんどない 2:ときどき 3:しばしば 4: 毎 日 4 件 法 1:しばしば 感 じる 2:ときどき 感 じる 3:たまに 感 じる 4: 感 じない 36

大 学 入 学 後 の 生 活 変 化 が 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 様 症 状 発 現 に 及 ぼす 影 響 表 2 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 診 断 基 準 大 症 状 質 問 項 目 立 ちくらみ や めまい を 感 じることがあるまたは, 立 ち 上 がると きにそっと 立 つことがある 立 っていると 気 持 ち 悪 くなり,ひどいときは 倒 れることがある お 風 呂 やシャワーに 入 ったとき, 気 分 が 悪 くなり,ひどいときには 倒 れ ることがある 少 し 動 いただけでも 胸 がドキドキしたり, 息 切 れしたりすることがある 朝, 頭 痛 や 腹 痛 や 身 体 のだるさで, 起 きにくいことがある 陽 性 の 基 準 1,2,3 陽 性 1,2,3 陽 性 小 症 状 顔 色 が 悪 い( 青 白 い) と 言 われることがある 食 欲 がないことがある おなかがさすように 痛 くなることがある 身 体 の だるさ や 疲 れやすさ を 感 じることがある 頭 が 痛 くなることがある 乗 り 物 に 酔 いやすい ( 選 択 肢 :1.しばしば,2.ときどき,3.たまに,4.ない) OD 診 断 陽 性 陰 性 陽 性 の 基 準 大 症 状 3つ 以 上 が 陽 性 大 症 状 2つが 陽 性 かつ 小 症 状 1つ 以 上 が 陽 性 大 症 状 1つが 陽 性 かつ 小 症 状 3つ 以 上 が 陽 性 その 他 表 3 生 活 時 間 の 変 化 調 査 領 域 4 月 10 月 df t 値 p 値 ( 両 側 ) 起 床 時 刻 7: 56 ± 1: 42 8: 17 ± 1: 32 121-2.28 0.024* 就 寝 時 刻 24: 24 ± 0: 57 24: 44 ± 1: 11 121-3.28 0.001* 睡 眠 時 間 6: 50 ± 1: 11 6: 53 ± 1: 23 121-0.54 0.588 表 4 睡 眠 得 点, 食 事 得 点 の 変 化 調 査 領 域 4 月 10 月 df t 値 p 値 ( 両 側 ) 睡 眠 得 点 (10 項 目 :40 点 満 点 ) 31.34 ± 5.12 28.98 ± 4.94 124 5.65 0.000* 食 事 得 点 (12 項 目 :48 点 満 点 ) 37.59 ± 5.03 35.33 ± 5.28 124 5.89 0.000* 平 均 は28.98 点 であり, 有 意 な 悪 化 が 確 認 さ れた 同 様 に 食 事 得 点 に 関 しては, 朝 食 摂 取 や 食 べ 残 し, 栄 養 バランス,スナック 菓 子 等 の 摂 取 などの12 項 目 の 合 計 点 で 検 討 した 4 月 時 点 での 平 均 点 は37.59 点 であった 1 項 目 あ たりの 平 均 で3.1 点 以 上 であり 良 好 であった が,10 月 時 点 では 平 均 35.33 点 であり, 有 意 37

名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 表 5 起 立 性 調 節 障 害 (OD)が 疑 われる 学 生 の 割 合 の 変 化 時 期 陽 性 陰 性 合 計 4 月 31.8% 68.2% 100% 10 月 41.5% 58.5% 100% χ 2 test: p=0.05* な 悪 化 が 確 認 された 3.3 ODが 疑 われる 学 生 割 合 の 変 化 OD が 疑 われる 学 生 の 割 合 の 変 化 を 表 5 に 示 した 4 月 時 点 で 陽 性 が 疑 われる 学 生 の 割 合 は31.8%であった 10 月 時 点 では41.5%で あり 有 意 に 増 加 していた 約 10% OD 様 症 状 を 訴 える 学 生 が 増 加 していた Ⅳ. 考 察 4.1 ODが 疑 われる 学 生 の 割 合 今 回 の 調 査 では4 月 時 点 でのOD が 疑 われ る 学 生 の 割 合 は31.8%であった 先 行 研 究 に よれば, 小 学 生 や 中 学 生 ではOD が 疑 われる 児 童 生 徒 は 男 児 では16~17%, 女 児 では24 ~29% 程 度 おり,また, 思 春 期 以 降 に 増 加 す ることが 指 摘 されている[9] 今 回 の 結 果 か ら 大 学 生 においても 同 程 度 にOD が 疑 われる 学 生 がいることがうかがえた さらに, 先 行 研 究 では 女 子 において1 割 程 度 OD 様 症 状 や 不 定 愁 訴 が 見 られやすいことも 指 摘 されてい る[3, 9, 21] 本 研 究 では,4 月 時 点 でOD が 疑 われる 女 子 学 生 の 割 合 は35.7%, 男 子 学 生 では30.8%であった 同 様 に10 月 時 点 では, 45.8%と41.6%であった いずれの 時 点 も 女 子 学 生 においてOD が 疑 われる 割 合 が 多 かっ た しかしながら 男 女 の 乖 離 は5% 程 度 であ り, 小 中 学 生 よりは 少 なかった 義 務 教 育 以 降, 男 子 学 生 においてOD が 疑 われるケース が 増 加 していることが 示 唆 された 4 月 と10 月 の 比 較 では, 約 10% OD が 疑 わ れる 学 生 の 割 合 が 増 加 していた わずか 半 年 間 で10%の 増 加 は 驚 異 的 であり, 大 学 2 年 生 や 3 年 生 における 脅 威 はそれ 以 上 であること が 予 想 される 今 後 さらなる 追 跡 をしていき たい 大 学 生 においては, 親 元 を 離 れての 一 人 暮 らしや 就 学 時 間 の 変 化,あるいは,アル バイトを 自 由 にするようになるなどの 様 々な 生 活 の 変 化 が 予 想 される その 一 方 で, 大 人 として 扱 われることも 多 くなるため,あらゆ る 行 動 に 自 己 管 理 が 求 められるようになる 自 分 自 身 で 生 活 や 健 康 といったものに 気 を 付 けていかなければOD のような 体 調 不 良 を 減 らすことは 難 しいであろう また, 本 論 文 の 冒 頭 にも 記 したが,OD 様 症 状 の 増 加 は 近 年 の 大 学 生 における 学 業 への 姿 勢 や 社 会 に 出 て からの 不 適 応 といった 問 題 とも 無 関 係 ではな く,これらの 問 題 解 決 のためにも 学 生 の 健 康 生 活 管 理 にも 焦 点 をあてていくべきであ る 4.2 OD 様 症 状 発 生 割 合 と 生 活 習 慣 の 変 化 OD が 疑 われる 学 生 は 前 述 の 通 り4 月 から 10 月 で 約 10% 増 加 した 睡 眠 習 慣 の 得 点 や 食 習 慣 の 得 点 は 有 意 に 減 少 しており,それぞ れの 習 慣 の 悪 化 が 確 認 された 生 活 時 間 に 関 しても 有 意 な 悪 化 が 観 察 された 平 均 睡 眠 時 間 には 大 きな 変 化 が 見 られなかったが, 起 床 時 刻 と 就 寝 時 刻 は 有 意 に 遅 くなっており,い 38

大 学 入 学 後 の 生 活 変 化 が 起 立 性 調 節 障 害 (OD) 様 症 状 発 現 に 及 ぼす 影 響 ずれも 約 20 分 の 遅 れであった 小 学 生 から 高 校 生 頃 までは 発 育 発 達 に 伴 い 生 活 時 間 も 変 化 し, 就 寝 時 刻 が 遅 くなり, 睡 眠 時 間 も7 時 間 程 度 に 落 ち 着 くのは 自 然 である しかし, 大 学 生 においては 発 育 発 達 に 伴 う 変 化 とは 考 え 難 い さらに 睡 眠 時 間 は 変 化 していないこ とを 考 慮 すれば, 純 粋 に 遅 寝 遅 起 きの 進 行 と 考 えられる 本 学 では 始 業 が9 時 30 分 であ るが, 多 くの 学 生 が 高 校 時 代 は8 時 30 分, 遅 くとも9 時 には 始 業 していたはずである このような30 分 の 変 化 が 生 活 時 間 を 後 ろに ずらすことを 許 容 している 可 能 性 も 考 えられ る 序 文 にも 書 いたが,OD は 生 活 習 慣 の 乱 れにより 正 常 な 日 内 リズムで 自 律 神 経 が 働 か ないために 起 こることがわかっている[17] 学 校 の 始 業 時 間 に 関 わらず, 一 日 24 時 間 の 適 切 な 生 活 リズムを 刻 むことがOD のような 体 調 不 良 発 生 の 予 防 には 重 要 になると 考 えら れる 生 活 時 間 の 夜 型 化 がOD 様 症 状 を 引 き 起 こしているかどうかは,さらなる 追 跡 が 必 要 と 思 われるが,その 可 能 性 は 否 定 できな い さらに, 睡 眠 習 慣 や 食 習 慣 に 関 しても, 大 学 生 になって 半 年 で 有 意 な 悪 化 が 確 認 され ており,これもOD 様 症 状 の 増 加 に 影 響 した 可 能 性 がある 生 活 習 慣 の 乱 れや 生 活 の 夜 型 化 は 学 業 成 績 と 関 連 するという 報 告 もあり [7], 大 学 生 の 学 業 に 望 む 姿 勢 を 改 善 する 意 味 でも,このような 現 象 は 極 力 回 避 すべきで ある 現 代 の 大 学 においては 学 業 の 教 育 はも ちろんであるが, 日 々の 生 活 に 関 しても 教 育 をしていくことが 求 められるのかもしれな い 大 学 時 代 を 良 好 な 生 活 習 慣 とリズムのも とで 過 ごすことにより,OD 様 症 状 の 発 現 を 回 避 し, 充 実 した 学 生 生 活 へとつなげられる ことが 期 待 される Ⅴ.まとめ 本 研 究 は,2014 年 度 に 本 学 に 入 学 した1 年 生 を 対 象 に, 大 学 入 学 直 後 から 半 年 間 におけ る 生 活 習 慣 の 変 化 と,それに 伴 うOD 様 症 状 発 現 との 関 係 性 を 検 討 することを 目 的 とし た 睡 眠, 食 事 習 慣 に 有 意 な 悪 化 が 確 認 され た 生 活 時 間 では 有 意 な 遅 寝 遅 起 きの 進 行 が 確 認 された OD が 疑 われる 学 生 の 割 合 は, わずか 半 年 間 で 約 10%の 増 加 が 確 認 された これらの 結 果 より, 生 活 習 慣 の 悪 化 と 生 活 時 間 の 夜 型 化 がOD 様 症 状 を 引 き 起 こしている 可 能 性 が 疑 われた 体 調 の 改 善 や 学 業 姿 勢 の 改 善 のためにも, 大 学 時 代 に 適 切 な 生 活 習 慣 とリズムの 獲 得 を 教 育 することが 有 効 である ことが 示 唆 された 本 研 究 は2013 年 度 に 名 古 屋 学 院 大 学 総 合 研 究 所 において 研 究 活 動 の 補 助 ( 共 同 研 究 会 ) を 受 けて 実 施 した 文 献 [1] 林 辰 美, 伊 東 るみ, 二 宮 正 幸, 伊 藤 雄 平 (2002) 高 校 生 の 肥 満, 血 圧 高 値 者 における 食 生 活, 生 活 習 慣 ならびに 疲 労 自 覚 症 状 について. 栄 養 学 雑 誌 60: 93 97 [2] 市 橋 保 雄, 大 国 真 彦, 草 川 三 治, 鈴 木 栄, 八 代 公 夫, 市 橋 治 雄 編.(1974) 起 立 性 調 節 障 害. 中 央 医 学 社, 東 京,pp7 36 [3] 飯 田 吏 沙, 仙 田 真 弓, 古 田 真 司.(2008) 生 徒 の 起 立 性 調 節 障 害 (OD)を 疑 う 問 診 項 目 の 実 験 的 検 討 新 ガイドラインによる 起 立 試 験 と の 関 連 から. 愛 知 教 育 大 学 研 究 報 告 ( 教 育 科 学 編 )57: 35 43 [4] 金 田 芙 美, 菅 野 幸 子, 佐 野 文 美, 西 田 美 佐, 吉 池 信 男, 山 本 茂.(2004) 我 が 国 の 子 どもに 39

名 古 屋 学 院 大 学 研 究 年 報 おける やせ の 現 状 系 統 的 レビュー. 栄 養 学 雑 誌 62: 347 360 [5] 北 俊 恵, 藤 原 忠 雄.(2012) 小 学 校 1 年 生 対 象 の 基 本 的 生 活 習 慣 形 成 プログラムの 開 発 及 び 効 果 の 検 討 : 養 護 教 諭 による 健 康 観 察 時 の 実 践 的 研 究. 学 校 教 育 学 研 究 24: 31 37 [6] 小 林 章 雄.(2010) 現 代 社 会 の 子 どもの 不 健 康, 社 会 格 差, 学 校 保 健 の 課 題. 学 術 の 動 向 15: 75 81 [7] 小 林 秀 紹, 鈴 木 美 智 子, 小 澤 治 夫.(2008) 群 馬 県 館 林 市 における 小 学 生 の 生 活 習 慣 と 体 調 学 習 行 動 の 因 果 構 造 分 析. 発 育 発 達 研 究 37: 49 56 [8] 中 野 貴 博.(2006) 児 童 生 徒 よりも 深 刻 な 大 学 生 の 生 活 習 慣. 統 計 情 報,55(8)37 42 [9] 日 本 学 校 保 健 会.(2012) 平 成 18 年 度 児 童 生 徒 の 健 康 状 態 サーベイランス 事 業 報 告 書. 日 本 学 校 保 健 会, 東 京,pp79 82 [10] 落 合 裕 隆, 白 澤 貴 子, 大 津 忠 弘, 南 里 妃 名 子, 星 野 祐 美, 小 風 暁.(2013) 小 児 期 の 肥 満 とや せ 生 活 習 慣 との 関 連 について. 昭 和 学 士 会 雑 誌 5: 423 428 [11] 小 田 切 陽 一, 内 田 博 之, 山 勝 弘.(2013)わが 国 の 肥 満 傾 向 児 と 痩 身 傾 向 児 の 出 現 率 に 対 す る 年 齢 時 代 コホート 効 果 (1977. 2006 年 ) と2007. 2016 年 の 出 現 率 の 推 計. 日 本 公 衆 衛 生 雑 誌 6: 356 369 [12] 小 野 寺 杜 紀, 神 田 晃, 渡 辺 由 美, 方 泓, 川 口 毅. (1998) 小 児 肥 満 と 生 活 行 動 との 関 連 に 関 する 疫 学 的 研 究. 日 本 健 康 教 育 学 会 誌 6: 1 13 [13] 大 須 賀 恵 子.(2013) 男 小 学 生 の 体 型 と 生 活 習 慣 との 関 連 性. 日 本 公 衆 衛 生 雑 誌 60: 128 137 [14] 下 田 敦 子,タンナイン, 大 澤 清 二.(2014) HQC(Health Quality Control) 手 法 の 利 用 によ る 起 立 性 調 節 障 害 の 改 善 ミャンマーの5325 人 の 子 どもの 追 跡 調 査 から. 発 育 発 達 研 究 64: 11 17 [15] 鈴 木 綾 子, 野 井 真 吾.(2007) 中 学 生 における 睡 眠 習 慣 と 睡 眠 問 題, 不 定 愁 訴 との 関 連. 発 育 発 達 研 究 36: 21 26 [16] 田 中 英 高.(2012) 子 どものめまい: 小 児 起 立 性 調 節 障 害 を 中 心 に.Equilibrium Research 71: 53 60 [17] 田 中 英 高.(2013) 起 立 性 調 節 障 害 の 子 どもの 日 常 生 活 サポートブック. 中 央 法 規, 東 京, pp135 145 [18] 谷 島 弘 仁.(1996) 大 学 新 入 生 の 生 活 リズムと 抑 うつ 傾 向 の 関 連. 心 理 学 研 究 67: 403 409 [19] 内 田 勇 人, 松 浦 伸 郎.(2001) 小 学 生 時 と 中 学 生 時 における 不 定 愁 訴 の 背 景. 行 動 医 学 研 究 1: 47 54 [20] 山 縣 自 太 郞, 松 浦 賢 長, 山 崎 嘉 久.(2011) 思 春 期 やせ 症 への 対 応 マニュアル. 少 年 写 真 新 聞 社, 東 京 :pp8 15 [21] 吉 村 和 代, 高 橋 精 一 郎, 矢 倉 千 昭, 岡 真 一 郎, 後 藤 純 信, 森 田 正 治, 久 保 下 亮.(2012) 起 立 性 調 節 障 害 様 の 症 状 と 日 常 生 活 状 況 の 関 連. 日 本 理 学 療 法 学 術 大 会 :Db0547 40