論 文 孔 内 局 部 載 荷 試 験 によるコンクリート 強 度 推 定 に 関 する 一 考 察 皿 井 剛 典 *1 田 中 徹 *2 北 山 穂 高 *3 *4 金 子 勝 比 古 要 旨 : 本 稿 は, 構 造 物 の 任 意 の 深 度 におけるコンクリート 強 度 を 推 定 するために 開 発 した 孔 内 局 部 載 荷 試 験 装 置 を 用 いた,コンクリートへの 局 部 載 荷 におけるコンクリートの 破 壊 挙 動 について 考 察 したものであ る 局 部 載 荷 後 のコンクリート 中 の 状 態 を 確 認 するため, 試 料 を 非 破 壊 非 接 触 で 観 察 できる X 線 CT 装 置 を 用 いたところ, 載 荷 点 直 下 にコーン 状 の 圧 密 領 域 が 形 成 されていることが 分 かった これをもとに, 孔 内 局 部 載 荷 試 験 によるコンクリート 強 度 の 推 定 の 過 程 に, 土 質 力 学 における 基 礎 の 支 持 力 問 題 と 同 様 の 考 え 方 を 適 用 できることを 証 明 した キーワード: 孔 内 局 部 載 荷 試 験, 破 壊 挙 動,X 線 CT 装 置, 圧 密 領 域, 貫 入 抵 抗 値,コンクリート 強 度 1. はじめに 筆 者 らは, 凍 害 等 によりコンクリート 表 面 から 劣 化 が 進 行 した 構 造 物 の, 任 意 の 深 度 におけるコンクリート 性 状 を 把 握 するための 調 査 試 験 装 置 として 孔 内 局 部 載 荷 試 験 装 置 ( 以 下, 試 験 装 置 )を 開 発 し( 図 -1), 種 々 の 室 内 試 験 ( 孔 内 局 部 載 荷 試 験 )を 実 施 してきた 1),2),3) 孔 内 局 部 載 荷 試 験 ( 以 下, 載 荷 試 験 )は,コンクリ ート 構 造 物 に 削 孔 したコア 孔 内 の 任 意 の 深 度 において, 荷 重 P (kn) 15 10 5 貫 入 抵 抗 値 =ΔP/ΔL 測 定 データ 回 帰 線 ΔL ΔP 直 径 40mm 長 さ 270mm 0 0 1 2 3 貫 入 量 L (mm) 図 -3 貫 入 抵 抗 値 の 算 出 方 法 ファイバースコープ 50 先 端 : 細 径 半 円 測 定 値 6 点 の 平 均 載 荷 先 端 図 -1 孔 内 局 部 載 荷 試 験 装 置 φ33mmコア 試 料 の 圧 縮 強 度 (N/mm2) 2 ) 40 30 20 10 0 29N/mm 2 以 下 y = 4.12x R2 = 0.874 全 テ ータ y = 4.13x R2 = 0.853 W/C=55% W/C=85% W/C=100% 線 形 (29N/mm2 以 下 ) 線 形 ( 全 テ ータ) 0 2 4 6 8 10 貫 入 抵 抗 値 (kn/mm) 図 -2 孔 内 局 部 載 荷 試 験 の 概 要 図 -4 貫 入 抵 抗 値 とコンクリート 強 度 の 関 係 [ 測 定 値 6 点 の 平 均 ] *1 川 崎 地 質 ( 株 ) 事 業 本 部 保 全 技 術 部 保 全 技 術 グループ 課 長 代 理 工 修 ( 正 会 員 ) *2 戸 田 建 設 ( 株 ) 土 木 営 業 統 轄 部 環 境 ソリューション 部 主 管 工 修 ( 正 会 員 ) *3 北 海 道 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 環 境 フィールド 工 学 専 攻 *4 北 海 道 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 工 博
試 験 装 置 の 載 荷 先 端 を 孔 壁 に 貫 入 させる( 図 -2)こと により 得 られる 荷 重 と 貫 入 量 の 関 係 から 貫 入 抵 抗 値 を 求 める( 図 -3)ものである これまでに 実 施 したコンクリート 供 試 体 を 用 いた 載 荷 試 験 の 結 果 からは, 載 荷 先 端 に 直 径 6mm の 細 径 半 円 を 用 い, 同 条 件 の 6 点 の 貫 入 抵 抗 値 を 測 定 すれば, 得 られた 貫 入 抵 抗 値 をおよそ 4 倍 した 値 が, 載 荷 点 付 近 のコンクリート 強 度 と 推 定 できることが 分 かっている ( 図 -4) 1) 本 稿 では, 載 荷 試 験 による 破 壊 状 況 を X 線 CT 装 置 に より 観 察 し,その 破 壊 挙 動 について 考 察 する させ, 載 荷 点 を 含 むように 約 10~20mm 角 (W/C=100% のみ 約 20mm 角 とし, 予 備 実 験 を 行 った)に 切 断 するこ とにより 作 製 した( 写 真 -2) なお,W/C=55%の 試 料 は,モルタル 円 柱 供 試 体 が 破 壊 に 至 ったものであり, 試 料 中 に 3 本 のひび 割 れを 含 んだ 状 態 である( 写 真 -2の 最 上 段 の 写 真 ) モルタル 円 柱 供 試 体 の 使 用 材 料 を 表 -1に, 配 合 を 表 -2に 示 す 水 セメント 比 85% 及 び 100%のモルタル 供 試 体 を 作 製 する 場 合, 材 料 分 離 が 生 じやすいが( 実 際 に, 材 料 分 離 気 味 であった), 本 実 験 では 圧 縮 強 度 を 変 化 さ せることに 重 点 を 置 いていることから, 増 粘 剤 等 の 添 加 2. X 線 CT 装 置 による 破 壊 状 況 の 観 察 2.1 観 察 用 試 料 作 製 X 線 CT 装 置 による 破 壊 状 況 の 観 察 用 試 料 は, 水 セメ ント 比 を 55%( 圧 縮 強 度 56.9N/mm 2 ),85%(27.2N/mm 2 ), 100%(17.7N/mm 2 )としたφ50 L100mm のモルタル 円 柱 供 試 体 の 天 端 面 ( 端 面 研 磨 )に 細 径 半 円 を 載 荷 し た 後 に( 写 真 -1), 載 荷 点 周 辺 にエポキシ 樹 脂 を 含 浸 W/C=55% 約 10mm 角 に 切 断 中 央 のくぼみは 載 荷 点 W/C=85% 写 真 -1 モルタル 供 試 体 への 載 荷 試 験 状 況 表 -1 モルタル 円 柱 供 試 体 の 使 用 材 料 材 料 名 種 類 産 地 品 名 密 度 (g/cm 3 ) セメント 普 通 太 平 洋 セメント 3.16 水 地 下 水 つくば 市 1.00 細 骨 材 陸 砂 外 浪 逆 浦 産 (70%) 2.60 砕 砂 葛 生 産 (30%) 2.67 W/C=100% 約 10mm 角 に 切 断 中 央 のくぼみは 載 荷 点 表 -2 モルタル 円 柱 供 試 体 の 配 合 単 位 量 (kg/m 3 ) 水 セメント 比 細 骨 材 (%) セメント 水 陸 砂 砕 砂 55 507 279 887 390 85 328 279 990 436 100 279 279 1018 448 約 20mm 角 に 切 断 赤 点 のくぼみは 載 荷 点 予 備 実 験 に 使 用 写 真 -2 観 察 用 試 料
W/C=55% 周 囲 と 異 なり 気 泡 が 無 い 1 試 料 テーブル 写 真 -3 X 線 CT 装 置 試 料 テーブルを 360 回 転 観 察 用 試 料 1mm 2 X 線 を 照 射 試 料 テーブル 厚 さ 0.022mm ごとのスラ イス 画 像 を 連 続 撮 影 ひび 割 れ 部 分 が 押 し 潰 されている 図 -5 X 線 CT 装 置 による 観 察 ( 撮 影 )の 概 要 は 行 わずに 供 試 体 を 作 製 した なお, 試 料 名 は,3 つの 圧 縮 強 度 レベルの 呼 称 として 水 セメント 比 W/C=55%, 85%,100%を 用 いた 2.2 観 察 方 法 観 察 には, 試 料 を 非 破 壊 非 接 触 で 観 察 できる X 線 CT 装 置 ( 写 真 -3)を 用 いた この 装 置 を 用 いること によって, 試 料 中 の 密 度 の 違 いを 可 視 化 ( 色 の 明 暗 )で きることから, 観 察 用 試 料 の 載 荷 点 近 傍 と 周 辺 の 状 態 を 観 察 し, 比 較 した 観 察 は, 観 察 用 試 料 を 試 料 テーブルに 置 き,X 線 を 照 射 しながら 360 回 転 させることにより 行 った( 図 -5) このような 観 察 ( 撮 影 )を 試 料 の 上 端 ( 載 荷 点 のある 面 ) から 厚 さ 0.022mm ごとに 行 い,1 試 料 につき 390 枚 のス ライス( 平 面 透 過 ) 画 像 を 得 た 2.3 観 察 結 果 細 径 半 円 により 載 荷 したモルタル 円 柱 供 試 体 から 切 り 出 した 観 察 用 試 料 の X 線 CT 装 置 による 観 察 の 結 果, 写 真 -4(W/C=55%), 写 真 -5(W/C=85%,100%)に 示 すスライス 画 像 が 得 られた スライス 画 像 には, 気 泡 等 の 空 隙 が 黒 く,セメントペーストが 灰 色 に, 骨 材 が 白 っぽく 表 示 されている 3 1 2 3 約 10mm ひび 割 れ 写 真 -4 試 料 観 察 画 像 W/C=55% 白 色 部 - 気 泡,ひび 割 れ 図 -6 三 次 元 加 工 による 気 泡,ひび 割 れの 抽 出
(1) ひび 割 れ 周 辺 の 状 態 W/C=55%の 試 料 ( 写 真 -4)は, 載 荷 点 から 3 方 向 に ひび 割 れが 拡 がっており, 試 料 側 面 において 肉 眼 でひび 割 れが 確 認 できる X 線 CT 装 置 によるスライス 画 像 で はひび 割 れや 気 泡 は 黒 く 見 えるが, 載 荷 面 から 約 8mm 下 の 断 面 3には 約 120 度 の 角 度 で 分 岐 した 3 本 のひび 割 れが 確 認 できる しかしながら, 載 荷 面 の 断 面 1や 中 間 の 断 面 2では,ひび 割 れが 載 荷 点 周 辺 で 途 切 れており, 連 続 していない 図 -6は,スライス 画 像 を 三 次 元 加 工 し, 空 隙 やひび 割 れを 抽 出 した 図 である 図 中 の 白 色 部 分 が 空 隙 やひび 割 れを 示 しているが, 写 真 -4と 同 様 に 載 荷 点 周 辺 や 直 下 ( 数 mm の 範 囲 )にひび 割 れを 示 す 部 分 ( 白 色 部 )が 見 られない これは, 載 荷 点 周 辺 や 直 下 のモルタルが 載 荷 によって W/C=85% 周 囲 と 異 なり 気 泡 が 無 い 1mm W/C=100% 骨 材 中 の ひび 割 れ 周 囲 と 異 なり 気 泡 が 無 い 1mm 気 泡 の 潰 れ 写 真 -5 試 料 観 察 画 像 W/C=85%,100% 圧 密 され,ひび 割 れを 押 し 潰 したために 生 じたと 推 測 さ れる 但 し,その 影 響 範 囲 は 浅 く, 数 mm 程 度 である (2) 載 荷 点 周 辺 の 状 態 写 真 -4や 写 真 -5に 示 した 各 観 察 試 料 のスライス 画 像 には, 供 試 体 作 製 時 に 混 入 した 気 泡 が 黒 色 に 表 示 さ れ, 試 料 中 に 点 在 している 様 子 が 見 て 取 れる しかしな がら, 載 荷 点 直 下 に 気 泡 は 無 く, 周 囲 と 異 なった 状 態 で ある 気 泡 が 無 い 領 域 は,スライス 画 像 では 載 荷 点 直 下 に 三 角 形 に 拡 がっているように 見 え, 図 -6の 三 次 元 画 像 で は 円 錐 状 (コーン 状 )となっているようにも 見 える こ れは, 載 荷 によってできた 圧 密 領 域 を 示 していると 考 え られ, 元 々 存 在 した 気 泡 が 押 し 潰 されたことにより 生 じ たと 推 測 される なお,W/C=100%の 試 料 のスライス 画 像 には, 載 荷 点 直 下 の 気 泡 が 潰 れたり, 骨 材 にひび 割 れが 生 じた 状 態 が 確 認 できる これは, 圧 密 途 中 の 状 態 を 示 していると 推 測 され,この 状 態 から 更 に 載 荷 すると( 載 荷 点 が 拡 大 す ると), 圧 密 状 態 ( 押 し 潰 された 状 態 )となると 考 えら れる (3) 影 響 範 囲 載 荷 による 圧 密 領 域 は, 気 泡 の 分 布 状 況 から, 載 荷 点 周 辺 や 直 下 数 mm のごく 限 られた 範 囲 と 考 えられる こ のため, 載 荷 試 験 による 構 造 物 への 影 響 は,ほとんど 無 いと 言 える 3. 孔 内 局 部 載 荷 試 験 における 貫 入 抵 抗 値 とコンクリー ト 強 度 との 関 係 に 関 する 考 察 3.1 破 壊 プロセスのモデル 化 孔 内 局 部 載 荷 試 験 は,コンクリート 構 造 物 に 削 孔 した コア 孔 壁 に 載 荷 先 端 を 貫 入 させ, 得 られた 荷 重 と 貫 入 量 の 関 係 から 貫 入 抵 抗 値 を 求 め,コンクリート 強 度 を 推 定 するものである 載 荷 先 端 によりコンクリート 表 面 に 一 軸 載 荷 した 場 合 には, 荷 重 ( 厳 密 には 載 荷 表 面 力 )が 小 さいと,コン クリートの 弾 性 応 答 により, 載 荷 域 のコンクリートは 沈 下 する 一 方, 荷 重 がある 程 度 以 上 となると, 載 荷 先 端 直 下 のモルタルが 圧 縮 降 伏 して 塑 性 化 し,これに 伴 い 載 荷 先 端 は 貫 入 される この 時 の 載 荷 先 端 の 貫 入 量 には, 塑 性 変 形 に 関 係 した 載 荷 先 端 の 貫 入 量 と, 弾 性 変 形 に 起 因 した 変 位 量 の 両 者 が 含 まれていることになる ここで, 強 度 と 弾 性 率 はほぼ 比 例 関 係 にあることから, 塑 性 変 形 量 と 弾 性 変 形 量 も 比 例 すると 考 えることがで きる 更 に, 塑 性 変 形 量 は 弾 性 変 形 量 に 比 較 して 十 分 大 きいと 考 えられることなどから, 近 似 的 には, 試 験 装 置 で 測 定 される 載 荷 先 端 の 貫 入 量 は, 塑 性 変 形 による 載 荷 先 端 の 貫 入 量 にほぼ 相 当 すると 取 り 扱 うことができる
図 -7 載 荷 先 端 の 貫 入 とコンクリート 状 態 変 化 すなわち, 図 -7に 示 すように, 載 荷 に 伴 い, 載 荷 先 端 とコンクリートの 接 触 部 の 直 下 に 受 動 接 触 面 積 が 増 大 し,その 結 果, 接 触 部 直 下 の 塑 性 域 が 拡 大 する すな わち,コンクリートは 塑 性 挙 動 を 示 すが,これに 伴 って 載 荷 先 端 の 接 触 面 積 が 増 大 するため, 見 かけ 上 塑 性 的 な 平 衡 状 態 が 達 成 され, 貫 入 量 の 増 大 に 伴 って 荷 重 も 増 大 する 以 上 のモデルに 基 づくと, 貫 入 抵 抗 値 とコンクリート 強 度 との 関 係 を 定 式 化 するためには, 載 荷 先 端 の 形 状 を 考 慮 した 載 荷 先 端 の 貫 入 量 と 接 触 面 積 との 関 係,コンク リートの 塑 性 状 態 における 支 持 力 等 を 明 らかにしたう えで, 荷 重 と 貫 入 量 との 関 係 ならびに 貫 入 抵 抗 値 とコン クリート 強 度 との 関 係 を 分 析 する 必 要 がある 3.2 貫 入 量 と 載 荷 面 積 との 関 係 細 径 半 円 の 半 径 R(=3mm), 貫 入 量 を u とし, 載 荷 先 端 がコンクリートに 接 触 する 領 域 を 載 荷 領 域 とす ると, 載 荷 領 域 半 径 r は 式 (1)のようになる( 図 -8) 図 -8 載 荷 先 端 と 貫 入 量 r R R u 2Ru u (1) したがって, 載 荷 面 積 A は, ける 極 限 支 持 力 を 推 定 する 方 法 について 考 える Terzaghi は, 基 礎 の 極 限 支 持 力 q u (N/mm2)を 式 (4)で 与 えている q αcn φ (4) 但 し,c は 粘 着 力,αは 形 状 係 数 で 円 形 の 場 合 α=1.3 で ある N c (φ)は 同 一 断 面 寸 法 の 2 次 元 帯 状 基 礎 に 対 する 支 持 力 係 数 であり, 内 部 摩 擦 角 φに 関 係 する 無 次 元 関 数 である 特 に,Terzaghi はψ=φと 与 えられると 仮 定 して, 支 持 力 係 数 を 式 (5)で 与 えている N φ cotφ π φ φ φ 1 (5) 式 (5)によると,φ=35 のとき N c =57.8,φ=40 のとき N c =95.7 である これに 対 して,Prandtl はψ=π/4+φ/2 と 仮 定 して, 支 持 力 係 数 を 式 (6)で 与 えている N φ cotφ exp π tan φ tan π φ 1 (6) 式 (6)によると,φ=35 のとき N c =46.1,φ=40 のとき N c =75.3 である 当 初 は, 底 面 が 粗 い 場 合 は Terzaghi の 仮 定 が, 滑 らか な 場 合 は Prandtl の 仮 定 が 成 立 すると 解 釈 されており, 土 の 力 学 における 基 礎 支 持 力 算 定 の 問 題 では Terzaghi の 支 持 力 係 数 が 用 いられていた しかしながら,その 後, 底 面 の 粗 さ 滑 らかさに 関 わらずψ=π/4+φ/2 となること, 言 い 換 えれば, 材 料 に 関 わらず Prandtl の 仮 定 が 妥 当 であ ることが 明 らかにされている 4) そこで,ここでは 支 持 力 係 数 N c は Prandtl の 支 持 力 係 数 ( 式 (6))を 用 い, 載 荷 域 形 状 の 影 響 については Terzaghi の 形 状 係 数 を 用 いた 表 現 ( 式 (4))を 用 いることとする なお,X 線 CT 装 置 による 観 察 で 載 荷 点 直 下 に 見 られ た 圧 密 領 域 は, 図 -9のくさび 形 の 領 域 を 観 察 したもの と 考 えられる A πr 2πRu 1 R (2) ここで, R 1 であれば, A 2πRu (3) とみなすことができる 3.3 極 限 支 持 力 の 推 定 半 無 限 固 体 表 面 の 有 限 領 域 を 載 荷 する 問 題 で, 固 体 が 塑 性 挙 動 する 場 合 の 耐 力 を 求 める 問 題 は, 材 料 学 におけ るポンチ 打 ち 込 みの 支 圧 力 問 題, 土 質 力 学 における 基 礎 の 支 持 力 問 題 等 としてよく 知 られている これらは 対 象 とする 材 料 が 異 なるので 応 用 分 野 も 異 なるが,いずれも 材 料 を 塑 性 体 と 近 似 して 載 荷 極 限 荷 重 を 求 めるもので ある そこで,これら 塑 性 理 論 に 基 づいて 表 面 載 荷 にお コンクリート 強 度 S c と 粘 着 力 c との 関 係 は, c ξ φ S (7) ξ φ φ φ 図 -9 支 持 力 図 (8)
である 特 に,φ=35 のときξ=0.26,φ=40 のときξ =0.23 となる 従 って, 極 限 支 持 力 q u を 圧 縮 強 度 S c を 用 いて 表 すと 式 (9)となる q αξ φ N φ S (9) 3.4 荷 重 と 貫 入 量 との 関 係 載 荷 領 域 周 囲 では,コンクリートは 降 伏 して 塑 性 釣 り 合 い 状 態 にあり,その 支 持 力 が 上 記 の 極 限 支 持 力 で 与 え られると 仮 定 すると, 全 荷 重 P は, P q A (10) となり, P αξ φ N φ S 2πRu 1 R Ku 1 R (11) 但 し, K 2παRξ φ N φ S (12) である 特 に, 1であれば, 簡 単 な 一 次 式 となる R P Ku (13) ここで, 式 (11) 及 び 式 (13)は, 荷 重 - 貫 入 量 曲 線 は 貫 入 量 が 載 荷 先 端 半 径 に 比 較 して 小 さい 範 囲 では 直 線 となる こと, 貫 入 量 が 比 較 的 大 きくなると 上 に 凸 の 曲 線 となる ことを 示 している 3.5 貫 入 抵 抗 値 とコンクリート 強 度 との 関 係 細 径 半 円 の 場 合 について, 貫 入 抵 抗 値 とコンクリ ート 強 度 との 関 係 を 考 察 する 局 部 載 荷 試 験 では, 荷 重 - 貫 入 量 曲 線 の 勾 配 から 貫 入 抵 抗 値 を 求 め,この 貫 入 抵 抗 値 からコンクリート 強 度 を 推 定 している 特 に, 室 内 試 験 における 貫 入 抵 抗 値 は, 貫 入 量 が 比 較 的 小 さい 範 囲 のデータから 求 められていると 考 えると, 貫 入 抵 抗 値 は, 式 (12)の K に 相 当 する 従 って, 式 (12)から, 貫 入 抵 抗 値 を 用 いたコンクリート 強 度 評 価 式 は 式 (14)のようにな る S K (14) παrξ φ N φ ここで, 細 径 半 円 の R=3mm であるので, S K (15) παξ φ N φ となる ここで,コンクリートの 内 部 摩 擦 角 を 文 献 5)(35 φ 40 )を 参 考 としてφ=35 とすると( 支 持 力 係 数 N c は Prandtl の 式 (6)),コンクリート 強 度 S u (N/mm 2 )と 貫 入 抵 抗 値 K(kN/mm)の 関 係 は, 式 (15)により S u =3.4K となる これは, 室 内 試 験 により 求 められた 係 数 4 とほ ぼ 一 致 する 値 である なお,このような 関 係 は, 理 論 上 いかなる 強 度 のコン クリートに 対 しても 成 り 立 つと 考 えられるが, 室 内 試 験 では,コンクリート 強 度 が 高 いほど 貫 入 抵 抗 値 との 相 関 性 が 弱 くなる 傾 向 にある( 図 -4) このため, 載 荷 試 験 による 強 度 推 定 の 適 用 範 囲 は,コンクリート 強 度 29N/mm 2 以 下 とした 1) 従 って, 本 章 により 証 明 された 関 係 についても,29N/mm 2 以 下 のコンクリートを 適 用 範 囲 とする 4. まとめ (1) 孔 内 局 部 載 荷 試 験 によるコンクリート 強 度 の 推 定 の 過 程 には, 土 質 力 学 における 基 礎 の 支 持 力 問 題 と 同 様 の 考 え 方 を 適 用 できることから, 本 試 験 による 強 度 評 価 が 妥 当 であることを 証 明 することができた (2) X 線 CT 装 置 を 用 いた 観 察 により, 載 荷 点 直 下 に 圧 密 領 域 が 確 認 された これは, 基 礎 の 支 持 力 問 題 にお ける 基 礎 直 下 のくさび 形 の 領 域 を, 実 際 に 観 察 した ものと 考 えられる 参 考 文 献 1) 皿 井 剛 典, 田 中 徹, 清 水 陽 一 郎, 高 橋 輝 : 孔 内 局 部 載 荷 試 験 によるコンクリート 性 状 の 把 握 に 関 する 研 究,コンクリート 工 学 年 次 論 文 報 告 集,Vol.29, No.2,pp.709-714,2007.7 2) 皿 井 剛 典, 高 橋 輝, 田 中 徹, 清 水 陽 一 郎 :コア 孔 を 利 用 した 孔 内 局 部 載 荷 試 験 装 置 の 開 発, 土 木 学 会 第 61 回 年 次 学 術 講 演 会 概 要 集 6-129,pp.257-258, 2006.9 3) 清 水 陽 一 郎, 田 中 徹, 高 橋 輝, 皿 井 剛 典 : 孔 内 局 部 載 荷 試 験 によるコンクリート 構 造 物 の 強 度 推 定 方 法 に 関 する 研 究, 土 木 学 会 第 61 回 年 次 学 術 講 演 会 概 要 集 6-130,pp.259-260,2006.9 4) ( 社 ) 地 盤 工 学 会 ( 東 京 ), 地 盤 工 学 数 式 入 門,pp.185, 2001 5) 園 田 恵 一 郎, 蛯 名 貴 之 :パーフォボンドリブにおけ るコンクリートのせん 断 強 度 特 性 に 関 する 極 限 解 析 理 論 による 考 察, 土 木 学 会 論 文 集 No.781/V-66, pp.213-218,2005.2