第 52 回 米 国 臨 床 腫 瘍 学 会 (ASCO 2016) 報 告 - 肺 癌 領 域 - 京 都 大 学 医 学 研 究 科 呼 吸 器 内 科 / 腫 瘍 薬 物 治 療 学 講 座 永 井 宏 樹 はじめに 第 52 回 米 国 臨 床 腫 瘍 学 会 (ASCO)は 6 月 3 日 ~7 日 で 例 年 通 り シカゴで 開 催 された ここ 数 年 の 傾 向 として 肺 癌 領 域 における 演 題 は 分 子 標 的 薬 と 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 が 2 大 テー マであり 今 年 もこれらに 関 する 発 表 が 中 心 であった 本 稿 では 今 年 の ASCO 2016 から がん 免 疫 療 法 と 分 子 標 的 薬 の 領 域 で 興 味 深 かった 演 題 を 選 択 して 報 告 する がん 免 疫 療 法 : 免 疫 複 合 療 法 2013 年 Science 誌 の break through of the year に Cancer immunotherapy が 選 ばれるなど 近 年 がん 免 疫 療 法 は 急 激 に 進 歩 しており その 代 表 的 なものとして Ipilimumab( 抗 CTLA-4 抗 体 ) および Nivolumab( 抗 PD-1 抗 体 )など 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 の 臨 床 的 有 用 性 が 示 された 事 が 挙 げられる しかし 一 方 で 上 記 薬 剤 単 剤 に 対 して 奏 効 する 患 者 はごく 一 部 に 限 られており バイオマーカーの 同 定 もまだ 出 来 ておらず 課 題 が 山 積 している 現 在 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 における 有 効 性 の 改 善 を 目 的 として 様 々な 免 疫 複 合 療 法 が 検 討 されており その 相 手 は 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 共 刺 激 受 容 体 アゴニスト 放 射 線 療 法 化 学 療 法 など 多 岐 に 渡 る 今 年 の ASCO においても 免 疫 複 合 療 法 の 演 題 が 多 く 発 表 されており その 中 で 下 記 4 つの 演 題 について 報 告 する Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 は 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 同 士 の 併 用 療 法 であるが その 作 用 機 序 が 異 なるため 相 乗 効 果 が 期 待 されており 昨 年 の ASCO で 進 行 期 悪 性 黒 色 腫 を 対 象 とし た Nivolumab vs Nivolumab/Ipilimumab vs Ipilimumab を 比 較 した 第 3 相 試 験 (CheckMate067 試 験 )で Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 が 有 意 に 無 増 悪 生 存 期 間 を 延 長 させた 事 は 記 憶 に 新 し い 小 細 胞 肺 癌 非 小 細 胞 肺 癌 において Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 の 有 効 性 と 安 全 性 を 評 価 した CheckMate032 試 験 CheckMate012 試 験 が 今 年 の ASCO で 報 告 された CheckMate032 試 験 (#100) 2 次 治 療 以 降 の 小 細 胞 肺 癌 患 者 213 人 を 対 象 に Nivolumab 単 剤 群 Nivolumab/Ipilimumab 併 用 群 (Nivolumab 1mg/kg, Ipilimumab 3mg/kg; Nivo1Ipi3 群 と Nivolumab 3mg/kg, Ipilimumab 1mg/kg; Nivo3Ipi1 群 )を 比 較 して 安 全 性 および 有 効 性 を 評 価 した randomised phase 2 試 験 であ
る Nivolumab/Ipilimumab 併 用 群 における 有 害 事 象 (Adverse Events; AE)としては Grade3-4 の AE( 10%の AE に 限 る)が Nivo1/Ipi3 群 で 30% Nivo3/Ipi1 群 で 19% と tolerable であったが 13 ~18%の 症 例 で 副 作 用 による 治 療 中 断 が 認 められた しかし これらの data は 昨 年 の 悪 性 黒 色 腫 を 対 象 とした CheckMate067 試 験 に 比 べると 軽 度 であると 考 えられる Primary Endpoint である 奏 効 率 (ORR)は Nivo 単 剤 10% Nivo1/Ipi3 群 23% Nivo3/Ipi1 群 19% であり さらに Sensitive relapse および refractory relapse に 関 係 なく Nivo1/Ipi3 群 で 良 い 傾 向 が 確 認 された また Spider plot では durable response が 確 認 され Waterfall plot では PD-L1 陽 性 陰 性 ともに 腫 瘍 縮 小 効 果 が 確 認 された 今 回 の 結 果 を 受 けて SCLC においては Nivolumab 1mg/kg+Ipilimumab 3mg/kg を 4 コース 施 行 し その 後 Nivolumab 3mg/kg で 維 持 療 法 を 行 う 治 療 戦 略 を 中 心 に 今 後 臨 床 試 験 が 進 みそうである CheckMate012 試 験 (#3001) 化 学 療 法 未 治 療 の 進 行 期 非 小 細 胞 肺 癌 患 者 を 対 象 に Nivolumab 単 剤 群 (n=52)または Nivolumab/Ipilimumab 併 用 群 (Ipilimumab 1mg/kg Q6W 群 (n=39) Ipilimumab 1mg/kg Q12W 群 (n=38))において 異 なる 用 量 と 投 与 スケジュールを 用 いた Phase1b 試 験 であり 主 要 評 価 項 目 は 安 全 性 副 次 的 評 価 項 目 は 奏 効 率 (ORR)および 24 週 時 点 の 無 増 悪 生 存 期 間 (PFS) 全 生 存 期 間 (OS)および PD-L1 発 現 レベルごとの 有 効 性 であった Grade3-4 の AE は Q12W 群 37% Q6W 群 33%であり Nivolumab 単 剤 群 19%より 高 い 傾 向 はあるが torelable と 考 えられ AE によ る 治 療 中 断 は Q12W 群 5% Q6W 群 8%で こちらは Nivolumab 単 剤 と 同 様 であった ORR については Q12W 群 47% Q6W 群 39%であり Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 全 体 (n=77) における ORR は 43%と 良 好 な 結 果 であった 更 に PD-L1 1%の 患 者 で 57% PD-L1 50%の 患 者 では 92%と 非 常 に 高 い 奏 効 が 得 られた 一 方 で PD-L1<1%の 患 者 では ORR 18%で Nivolumab 単 剤 の ORR 14%と 大 きな 差 は 認 められなかった この 点 に 関 しては PD-L1<1%で Ipilimumab の 上 乗 せ 効 果 がより 明 らかであった CheckMate067 試 験 とは 異 なる 結 果 であり 解 釈 が 難 しい 本 試 験 の 結 果 からは 非 小 細 胞 肺 癌 における 1st line の 治 療 選 択 肢 として 今 後 積 極 的 に Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 の 臨 床 試 験 が 進 められる 事 が 予 想 され 特 に PD-L1 陽 性 症 例 では 有 用 性 が 強 く 期 待 できるものと 思 われる 現 在 control arm を platinum doublet として Nivolumab 単 剤 Nivolumab/platinum doublet 併 用 療 法 Nivolumab/Ipilimumab 併 用 療 法 の 有 効 性 を 検 証 する CheckMate227 試 験 が 進 んでおり その 結 果 が 待 たれる 抗 PD-1/PD-L1 抗 体 +Co-stimulator agent 抗 原 と 結 合 した MHC class1 分 子 と T cell receptor 間 のシグナルを 修 飾 する 因 子 として 数 多 く の 免 疫 チェックポイント 分 子 と 共 刺 激 因 子 が 報 告 されており それぞれに 対 する 抗 体 薬 の 創 薬 が 進 んでいる( 抗 CTLA-4 抗 体 である Ipilimumab や 抗 PD-1 抗 体 である Nivolumab はその 代 表 格 である) 共 刺 激 因 子 としては CD137(4-1 BB) OX40 GITR CD40 CD27 など 多 数 確 認 されているが 今 回 ASCO にて 抗 OX40 抗 体 (アゴニスト)である MOXR09016 および 抗 CD137 抗 体 (アゴニスト)
である Utomilumab について 抗 PD-1/PD-L1 抗 体 薬 との 併 用 療 法 が 報 告 された Atezolizumab/MOXR0916 併 用 療 法 (#101) 進 行 期 の 固 形 腫 瘍 患 者 を 対 象 に Atezolizumab 1200mg(q3w)を 固 定 し MOXR0916 の dose escalation を 行 う Phase1b 試 験 が 施 行 され Primary endpoint は 安 全 性 Secondary endpoint は 推 奨 投 与 量 の 設 定 PK/PD 抗 腫 瘍 活 性 であった 計 58 人 の 患 者 で Atezolizumab/MOXR0916 併 用 療 法 が 施 行 されたが 有 害 事 象 については grade3 以 上 が 2 件 のみで 非 常 に 軽 度 であり 用 量 制 限 毒 性 (DLT)は 認 められず 最 大 耐 用 量 (MTD)にも 達 しないとの 結 果 になった 従 来 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 と 共 刺 激 因 子 アゴニス トの 併 用 療 法 については 免 疫 のブレーキを 解 除 しつつアクセルを 踏 む 状 況 に 近 い 事 からそ の 安 全 性 が 不 安 視 されていたが 今 回 の Phase1b 試 験 においてその 安 全 性 が 示 された 形 となっ た 現 在 悪 性 黒 色 腫 腎 細 胞 癌 非 小 細 胞 肺 癌 膀 胱 癌 トリプルネガティブ 乳 癌 などで expansion cohort が 行 われ 有 効 性 の 評 価 が 待 たれている Pembrolizumab/Utomilumab 併 用 療 法 (#3002) 進 行 期 の 固 形 腫 瘍 患 者 を 対 象 に Pembrolizumab 2mg/kg(q3w)を 固 定 し Utomilumab の dose escalation を 行 う Phase1b 試 験 が 施 行 され Primary endpoint は 推 奨 投 与 量 および MTD の 設 定 Secondary endpoint は 安 全 性 であった 計 23 人 の 患 者 で Pembrolizumab/Utomilumab 併 用 療 法 が 施 行 されたが Grade3 以 上 の 有 害 事 象 は 1 件 の 疲 労 と 3 件 の 貧 血 のみであり DLT は 認 められず MTD は Pembrolizumab 2mg/kg(q3w)および Utomilumab 5mg/kg(q3w)となった こちらの 試 験 も 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 と 共 刺 激 因 子 アゴニストの 併 用 療 法 であり Phase1b 試 験 においてその 安 全 性 が 示 された 形 となった 抗 腫 瘍 効 果 も 認 められており(CR 2 症 例 PR 4 症 例 ) 今 後 更 なる 臨 床 試 験 が 進 められそうである がん 免 疫 療 法 :Abscopal 効 果 Abscopal 効 果 とは 複 数 ある 転 移 病 変 から1つの 病 変 に 放 射 線 を 照 射 すると 照 射 野 以 外 の 離 れた 所 にある 転 移 病 変 も 縮 小 する 現 象 の 事 である 前 臨 床 モデルでは 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 に 対 する 放 射 線 治 療 の synergy 効 果 が 報 告 されており 実 臨 床 では 悪 性 黒 色 腫 の 症 例 におい て Ipilimumab に 緩 和 的 RT を 併 用 する 事 で Abscopal 効 果 を 認 めた 事 が 症 例 報 告 および retrospective stuidy で 報 告 されており 現 在 多 数 の 前 向 き 臨 床 試 験 が 進 行 中 である ただし 課 題 も 山 積 しており 放 射 線 照 射 における 適 切 なプロトコール( 照 射 線 量 照 射 回 数 逐 次 併 用 か 同 時 併 用 か)や 照 射 する 対 象 疾 患 や 臓 器 などは 明 確 になっていない 今 年 の ASCO では Ipilimumab と 放 射 線 治 療 を 併 用 した retrospective study および Phase1 の preliminary な data Nivolumab と 放 射 線 治 療 を 併 用 した Phase1 の data が 報 告 されたので 下 記 にその 内 容 を 記 載 する
Ipilimumab+RT(#3022 #3023) #3023 の 演 題 発 表 では 101 人 の 転 移 性 悪 性 黒 色 腫 の 患 者 を 対 象 に Ipilimumab+RT 併 用 群 (n=70)と Ipilimumab 単 独 群 (n=31)を 比 較 しており Primary outcome である CR rate において 併 用 群 は 25.7%(18/70) 単 独 群 は 6.45%(2/29)と 有 意 に 良 好 な 結 果 が 確 認 された(p=0.04 Odd ratio 5.02(95%CI 1.09 23.2)) また Secondary outcome である ORR は 併 用 群 で 37.1% 単 独 群 で 19.4%と 良 好 な 傾 向 が 確 認 され(p=0.106) OS も 併 用 群 21 ヵ 月 単 独 群 10 ヵ 月 で 有 意 に 併 用 群 で 良 好 な 結 果 であった(p=0.025). また #3022 の Phase1 試 験 では 固 形 腫 瘍 患 者 100 人 を 対 象 に Ipilimumab と SBRT(50Gy/4Fr) を 併 用 されており 照 射 時 期 (concurrent と sequential) 照 射 臓 器 ( 肝 転 移 と 肺 転 移 )をそれぞ れ 4 グループに 分 けて 安 全 性 および 有 効 性 が 検 討 されていた preliminary な 報 告 ではあるが 治 療 成 績 は PFS 3.2 ヵ 月 OS 10.2 ヵ 月 であり 評 価 可 能 な 31 人 の 患 者 において 3 人 が PR 10 人 が SD であった さらに 7 人 で 6 ヵ 月 以 上 の 奏 効 が 確 認 された 興 味 深 い 結 果 としては 肝 転 移 に SBRT を 施 行 した 場 合 は 肺 転 移 への 照 射 と 比 較 して systemic immune activation が 強 く 起 こ っていた Nivolumab+RT(#3024) #3024 の 演 題 発 表 では PD-1 抗 体 (REGN2810)と 放 射 線 治 療 の 併 用 について Phase1 の data が 報 告 された この 試 験 では 60 人 の 固 形 腫 瘍 患 者 を 対 象 とした PD-1 抗 体 の dose escalation study であり 同 時 に PD-1 抗 体 +RT 併 用 群 (n=36)と PD-1 抗 体 単 独 群 (n=24)が 比 較 された 本 試 験 では ORR は 併 用 群 16.7%(6/36)および 単 独 群 20.8%(5/24) 病 勢 制 御 率 (DCR)は 併 用 群 52.8%(19/36)および 単 独 群 50.0%(12/24)であり RT 併 用 による 改 善 効 果 は 認 められなかったが 少 数 例 での 検 討 であり 今 後 更 なる 研 究 が 必 要 である 今 回 の 3 つの 報 告 ではいずれも 安 全 性 は 確 認 されており 一 部 では 有 効 性 も 確 認 されている 事 から 今 後 放 射 線 治 療 の 照 射 方 法 を 含 めた 更 なる 検 討 が 必 要 と 考 えられる 分 子 標 的 薬 分 子 標 的 薬 といえば 近 年 は EGFR 関 連 では 第 3 世 代 EGFR-TKI の 演 題 が 数 多 く 認 められたが 本 年 の ASCO では 第 3 世 代 EGFR-TKI の 演 題 はあまり 目 立 たず Liquid Biopsy に 関 するものが 全 体 的 に 目 立 った また アメリカでは 今 年 6 月 1 日 をもって 非 小 細 胞 肺 癌 における EGFR 検 査 では Liquid Biopsy が 承 認 される 事 となり 今 後 Liquid Biopsy を 用 いた 研 究 がさらに 増 える 事 が 予 想 される 以 下 には EGFR mutation 以 外 の Driver mutation で あ る ALK rearrangement RET rearrangement ROS1 rearrangement BRAF mutation MET alteration に 関 する 興 味 深 い 演 題 を ご 紹 介 する
ALK rearrangement:j-alex 試 験 (#9008) 1 次 もしくは 2 次 治 療 の ALK rearrangement 陽 性 NSCLC の 患 者 207 名 を 対 象 として Alectinib と Crizotinib を 比 較 した Phase3 試 験 である Primary Endpoint である PFS において HR 0.34 (0.17-0.71) p<0.0001(alectinib; not reached Crizotinib; 10.2 ヵ 月 )と 有 意 に Alectinib で 良 好 な 結 果 が 確 認 され 中 間 解 析 において 早 期 有 効 中 止 となった 奏 効 率 は Alectinib 91.6% Crizotinib 78.9%であり 副 作 用 による 治 療 中 断 は Alectinib で 有 意 に 少 なく Forest plot の 解 析 結 果 では brain meta を 有 する 患 者 群 において HR 0.08(0.01-0.61)と Alectinib で 極 めて 良 好 な 治 療 成 績 が 得 られる 事 が 報 告 された 本 試 験 が 本 邦 の 日 常 臨 床 に 与 える 影 響 は 大 きいと 考 えられ 現 時 点 では Alectinib の 1st line に おける 使 用 は 添 付 文 書 上 で 記 載 されていないが 今 後 改 訂 へ 向 かう 事 が 予 想 される 事 から ALK rearrangement 陽 性 NSCLC における 1st line で Alectinib が 選 択 される 症 例 が 増 えてくるも のと 思 われる RET rearrangement:luret 試 験 (#9012) 2 次 治 療 以 降 の RET rearrangement 陽 性 NSCLC の 患 者 19 名 を 対 象 として Vandetanib の 有 効 性 を 評 価 した Phase2 試 験 である 患 者 背 景 として RET rearrangement partner は KIF5B が 10 人 CCDC6 が 6 人 Unknown が 3 人 であった Primary Endpoint である ORR は 全 体 では 53% PFS は 4.7 ヵ 月 1 年 生 存 率 は 47%であった Driver mutation に 対 する 治 療 効 果 としては 物 足 りない 成 績 であり 昨 年 の ASCO で 報 告 された RET rearrangement 陽 性 NSCLC に 対 する Cabozantinib の 治 療 成 績 とさほど 変 わらない 結 果 で あったが 本 試 験 で 興 味 深 かったのは RET rearrangement partner によって Vandetanib の 治 療 効 果 に 差 が 認 められた 事 であった KIF5B-RET 症 例 では ORR 20%(2/10)であったのに 対 し CCDC6-RET 症 例 では ORR 83%(5/6)と 顕 著 な 差 を 認 め KIF5B-RET における Vandetanib の 有 効 性 は 限 定 的 である 可 能 性 がある 一 方 で 今 年 の ASCO のポスター 発 表 (#9073)では MD アン ダーソンから 固 形 腫 瘍 に 対 する Vandetanib/Everolimus(mTOR inhibitor) 併 用 療 法 の 有 効 性 が 報 告 されており その 中 で KIF5B-RET を 有 する 固 形 腫 瘍 4 症 例 中 の 3 症 例 で PR を 達 成 している 事 から 上 記 のような 併 用 療 法 が 新 たな 突 破 口 となる 可 能 性 も 考 えられた ROS1 rearrangement:crizotinib の 有 用 性 (#9022) 東 アジアにおける ROS1 rearrangement 陽 性 NSCLC の 患 者 127 名 を 対 象 として Crizotinib の 有 効 性 を 評 価 した Phase2 試 験 であり 日 本 から 26 人 中 国 から 74 人 その 他 から 27 人 がエント リーされていた Primary endpoint である ORR は 69.3%であり PFS 13.4 ヵ 月 と 良 好 な 治 療 成 績 が 確 認 された また Waterfall plot では 非 常 に 良 好 な 腫 瘍 縮 小 効 果 が 認 められ 奏 効 例 69.3%の うち CR が 11.0%を 占 めていた Crizotinib に 関 する 副 作 用 はこれまでの 既 報 に 対 して 新 たなもの はなく 忍 容 性 も 良 好 であった 本 試 験 における 有 用 性 および 安 全 性 の 結 果 は 2014 年 に Shaw A などが 報 告 した ROS1
rearrangement 陽 性 NSCLC における Crizotinib の Phase1 試 験 の 結 果 と 同 様 であり ROS1 rearrangement 陽 性 NSCLC における Crizotinib の 有 用 性 は 確 固 たるものとなった 今 後 本 邦 で も 速 やかに 保 険 承 認 される 事 を 強 く 願 うばかりである BRAF mutation:brf113928 試 験 (#107) 既 治 療 BRAF V600E 陽 性 NSCLC の 患 者 57 名 を 対 象 として Dabrafenib/Trametinib 併 用 療 法 の 有 効 性 を 評 価 した Phase2 試 験 である 患 者 背 景 では BRAF mutation 陽 性 adenocarcinoma は smoker に 多 いとの 報 告 に 矛 盾 せず Never smoker は 28%と 少 なく Former smoker が 61% current smoker が 11%となっていた Primary endpoint である ORR は 63% Secondary endpoint である PFS(investigator)は 9.7 か 月 と 良 好 な 治 療 成 績 が 確 認 された また Grade3 以 上 の 副 作 用 も 少 なく 忍 容 性 も 良 好 であった なお 本 試 験 の 中 で 行 われた 既 治 療 BRAF V600E 陽 性 NSCLC の 患 者 78 名 を 対 象 として Dabrafenib 単 剤 療 法 の 有 効 性 を 評 価 した 結 果 では ORR 33% PFS 5.5 ヵ 月 と 不 十 分 な 結 果 であ った 事 から BRAF V600E mutation を 有 する NSCLC では MAPK pathway における BRAF および MEK の dual inhibition が 必 要 と 考 えられる MET exon14 alteration:profile1001 試 験 (#108) MET exon14 alteration は 非 扁 平 上 皮 非 小 細 胞 肺 癌 の 3~4% 肺 癌 肉 腫 の 20~30%が 有 すると 報 告 されており 今 回 MET exon14 alteration 陽 性 NSCLC の 患 者 21 名 を 対 象 として Crizotinib の 安 全 性 および 抗 腫 瘍 効 果 を 評 価 した PROFILE1001 試 験 (Phase1 試 験 )が 報 告 された 副 作 用 についてはこれまでの Crizotinib に 関 する 既 報 と 変 わらず 忍 容 性 は 良 好 であった ORR は 44%であり 治 療 継 続 期 間 中 央 値 は 5.3 ヵ 月 であった まだ ongoing な phase1 試 験 の data であり 本 試 験 では 登 録 数 50 人 まで 登 録 を 継 続 予 定 となっ ているが これまでにも METを targetとした 創 薬 や 数 々の 臨 床 試 験 が 成 功 しておらず 本 試 験 が 将 来 的 に MET に 対 する 治 療 開 発 に 繋 がっていく 事 を 期 待 したい まとめ 肺 癌 領 域 では Driver mutation に 準 じた 個 別 化 医 療 が 更 に 促 進 され その 耐 性 に 応 じた 治 療 戦 略 も 進 みつつある そこに 免 疫 チェックポイント 阻 害 剤 を 中 心 とした がん 免 疫 療 法 も 加 わり 肺 癌 における 全 身 化 学 療 法 はまさに 日 進 月 歩 の 勢 いで 変 化 している 患 者 さんにより 良 い 治 療 を 届 けるには 常 に up to date が 望 まれる 一 方 で 非 常 に 遣 り 甲 斐 のあ る 領 域 である 今 回 も 含 めて ここ 3 年 連 続 で ASCO 年 次 総 会 に 出 席 させて 頂 いているが 毎 年 アカデミック かつ 活 況 な 場 の 空 気 に 強 い 刺 激 を 頂 いている 腫 瘍 内 科 医 をこれから 目 指 す 若 い 先 生 方 には 是 非 ASCO に 参 加 して 現 場 の 雰 囲 気 に 触 れてもらいたいと 願 う