豪 雨 による 奄 美 肝 付 町 道 路 被 災 箇 所 調 査 工 学 部 北 村 良 介 酒 匂 一 成 1.はじめに 奄 美 大 島 加 計 呂 麻 島 では,21 年,212 年, 肝 付 町 では 212 年 に 豪 雨 に 伴 う 斜 面 崩 壊 によ り 多 くの 道 路 が 被 災 している 著 者 らは, 奄 美 での 21 年 1 月 2 日,212 年 6 月 1 日 に 発 生 した 豪 雨 による 道 路 災 害 箇 所 の 被 災 復 旧 状 況 および 肝 付 町 での 212 年 6 月 27 日 の 大 雨 に 伴 う 斜 面 崩 壊 による 国 道 448 号 や 町 道 津 代 線 などにおける 斜 面 崩 壊 および 道 路 損 壊 状 況 の 現 地 調 査 を 実 施 した 2. 奄 美 における 道 路 被 災 復 旧 状 況 調 査 (1) 調 査 内 容 本 調 査 は, 鹿 児 島 県 大 島 支 庁 建 設 部 建 設 課 道 路 建 設 係 瀬 戸 内 事 務 所 建 設 課 の 協 力 を 得 て,212 年 11 月 28 日 から 29 日 の 日 程 で, 図 -2.1 に 示 す 箇 所 を 調 査 した 1 日 目 は,1 奄 美 市 名 瀬 平 田 町 地 内,2 篠 川 下 福 線,3 曽 津 高 崎 線 沿 いの 斜 面 崩 壊 および 道 路 損 壊 状 況 を 調 査 した 2 日 目 は, 加 計 呂 麻 島 の4 町 道 西 阿 室 瀬 相 線,5 安 脚 場 実 久 線 ( 瀬 武 ~ 薩 川 ),6 安 脚 場 実 久 線 ( 諸 数 ) 沿 い で 発 生 した 斜 面 崩 壊 および 道 路 損 壊 状 況 を 調 査 した 図 -2.1 奄 美 大 島 での 調 査 箇 所 (Google earth に 加 筆 ) (2) 降 雨 状 況 21 年 ~212 年 の 奄 美 大 島 加 計 呂 麻 島 で 土 砂 災 害 などが 発 生 した 当 時 の 降 雨 状 況 をそれぞれ 図 -2.2(a),(b),(c)に 示 す 被 害 が 甚 大 であった 21 年 1 月 18 日 ~22 日 では,2 日 に 6mm を 超 える 雨 が 一 日 に 数 度 降 っており, 一 日 で 約 7mm もの 降 雨 が 記 録 されている また, 211 年 9 月 24 日 ~28 日 の 降 雨 では,21 年 には 及 ばないが,9 月 25 日 の 深 夜 に 5mm 1
(mm/hour) (mm/hour) (mm/hour) 連 続 雨 量 (mm) 連 続 雨 量 (mm) 連 続 雨 量 (mm) 南 九 州 から 南 西 諸 島 における 総 合 的 防 災 研 究 の を 超 える 雨 が 3 時 間 連 続 で 降 っている さらに,212 年 6 月 8 日 ~12 日 の 降 雨 においても, 6 月 1 日 には 5mm を 超 える 雨 が 2 時 間 連 続 して 降 っている このように 奄 美 では, 日 雨 量 2mm を 超 えるような 雨 が 毎 年 のように 記 録 されるようになってきている 8 7 6 5 連 続 雨 量 8 7 6 5 4 3 2 1 4 3 2 1 1/18 1/19 1/2 1/21 1/22 8 7 6 5 (a) 21 年 1 月 18 日 ~22 日 の 降 雨 状 況 ( 名 瀬 観 測 所 ) 連 続 雨 量 日 時 4 35 3 25 4 3 2 1 2 15 1 5 9/24 9/25 9/26 9/27 9/28 7 (b) 211 年 9 月 25 日 ~26 日 の 降 雨 状 況 ( 名 瀬 観 測 所 ) 日 時 35 6 5 4 連 続 雨 量 3 25 2 3 15 2 1 1 5 6/8 6/9 6/1 6/11 6/12 (c) 212 年 6 月 8 日 ~12 日 の 降 雨 状 況 ( 古 仁 屋 観 測 所 ) 図 -2.2 21 年,211 年,212 年 の 名 瀬 古 仁 屋 における 災 害 発 生 当 時 の 降 雨 状 況 日 時 2
(3) 調 査 箇 所 の 現 状 ここでは, 今 回 の 調 査 した 箇 所 の 一 部 を 示 し, 豪 雨 による 土 砂 災 害 による 道 路 被 災 状 況 について 説 明 する (a) 奄 美 市 名 瀬 平 田 町 地 内 奄 美 市 名 瀬 平 田 町 地 内 ( 図 -2.1 中 の1)は, 国 道 58 号 の 朝 戸 トンネルの 奄 美 市 街 地 側 の 入 り 口 付 近 の 斜 面 である ここでは,211 年 の 豪 雨 後, 地 すべりにより 擁 壁 の 変 状 や 道 路 の 隆 起 が 見 られるようになり, 変 状 の 進 行 を 抑 制 するためにトンパックの 設 置 などで 応 急 処 置 をしていた 箇 所 である しかし, 通 行 車 両 の 安 全 確 保,また,この 斜 面 の 近 くには 大 川 写 真 -2.1 法 面 復 旧 工 事 の 状 況 ( 名 瀬 平 田 地 内 ) ダムから 奄 美 市 内 に 生 活 用 水 を 供 給 するパイプラインがあることから, 住 民 の 生 活 を 守 るため, 現 在, 災 害 復 旧 工 事 が 実 施 されている 工 事 は, 地 すべり 対 策 として, 受 圧 板 工,アンカー 工, 現 場 吹 付 法 枠 工, 水 抜 きボーリング 工 などが 実 施 されている (b) 篠 川 下 福 線 篠 川 下 福 線 ( 図 -2.1 中 の2)は, 奄 美 市 住 用 町 方 面 から 大 島 郡 瀬 戸 内 町 篠 川 の 山 間 部 を 通 る 道 路 である 道 路 被 害 としては, 写 真 -2.2, 写 真 -2.3 に 示 すように 道 路 側 部 の 崩 壊 や 道 路 斜 面 の 崩 壊 が 見 られた 道 路 側 部 の 崩 壊 は, 豪 雨 により 側 溝 の 排 水 処 理 能 力 を 超 えた 水 が 路 面 を 流 下 し, その 水 が 道 路 下 斜 面 に 溢 れた 箇 所 で 侵 食 されている これは, 山 間 部 にある 道 路 で 多 く 見 られる 崩 壊 状 態 である 現 在 は, 路 面 からの 水 が 崩 壊 部 へ 流 入 しないようにアースカーブ 工 が 施 されて いた また, 道 路 斜 面 の 崩 壊 部 では, 道 路 上 部 の 斜 面 から 崩 壊 が 発 生 し,その 崩 壊 土 砂 が 道 路 を 塞 いでいた 現 在 は, 道 路 に 堆 積 していた 崩 壊 土 砂 はすでに 撤 去 され, 法 面 対 策 工 事 が 開 始 され ていた アースカーブ 工 写 真 -2.2 道 路 側 部 の 崩 落 ( 篠 川 下 福 線 ) 写 真 -2.3 道 路 斜 面 の 崩 壊 ( 篠 川 下 福 線 ) (c) 曽 津 高 崎 線 曽 津 高 崎 線 ( 図 -2.1 中 の3)は, 大 島 郡 宇 検 村 名 柄 から 阿 室 へ 向 かう 海 沿 いを 通 る 道 路 である 海 沿 いの 道 路 は, 写 真 -2.4 に 示 すように, 山 裾 部 を 通 っており,その 道 路 斜 面 が 豪 雨 によりいた るところで 崩 壊 している 曽 津 高 崎 線 で 見 られた 崩 壊 パターンとしては, 写 真 -2.5 に 示 すように 斜 面 の 中 腹 から 表 層 崩 壊 を 起 こしているケースが 多 く,すべり 面 となったと 考 えられる 基 盤 岩 が 崩 壊 後 に 露 頭 している 箇 所 が 多 く 見 られた また, 写 真 -2.6 に 示 すように, 斜 面 の 稜 線 に 沿 って 広 範 囲 に 崩 壊 が 生 じている 箇 所 も 見 られた さらに, 写 真 -2.7 に 示 すように, 斜 面 形 状 などの 影 響 で, 表 層 水 や 斜 面 内 の 水 が 集 水 したことが 原 因 と 考 えられる 崩 壊 が 数 か 所 で 見 られた 復 旧 状 況 については, 被 害 が 広 範 囲 に 綿 ていること, 住 宅 街 付 近 などから 離 れていることから, 進 捗 は 遅 く, 応 急 処 置 として 道 路 上 の 崩 土 が 取 り 除 かれ, 大 型 土 のう 袋 が 置 かれている 状 態 である 3
写 真 -2.4 海 沿 い 道 路 の 被 災 ( 曽 津 高 崎 線 ) 写 真 -2.5 すべり 面 と 思 われる 基 盤 岩 が 露 頭 し た 崩 壊 跡 ( 曽 津 高 崎 線 ) 写 真 -2.6 稜 線 に 沿 った 崩 壊 ( 曽 津 高 崎 線 ) 写 真 -2.7 雨 水 の 集 水 が 原 因 と 思 われる 崩 壊 跡 ( 曽 津 高 崎 線 ) (d) 加 計 呂 麻 島 加 計 呂 麻 島 においても, 豪 雨 による 土 砂 災 害 が 数 多 く 発 生 しており, 道 路 の 全 面 通 行 止 めにな った 箇 所 が 多 く 存 在 する 加 計 呂 麻 島 の 道 路 は, 海 に 沿 った 山 裾 を 通 る 道 路, 島 を 横 断 する 山 間 部 の 道 路 がほとんどで, 土 砂 災 害 の 影 響 を 非 常 に 受 けやすくなっている また, 近 年, 害 虫 によ る 松 枯 れがいたるところで 見 られる 町 道 西 阿 室 瀬 相 線 ( 図 -2.1 中 の4)は, 山 間 部 を 通 る 道 路 であり, 道 路 の 両 側 が 山 で 囲 まれている 212 年 の 豪 雨 では, 写 真 -2.8 や 写 真 -2.9 のような 斜 面 頂 部 からの 大 規 模 な 崩 壊 が 見 られた 現 状 は, 斜 面 の 土 の 掘 削 が 掘 削 され, 法 先 には 大 型 土 のう 写 真 -2.8 道 路 斜 面 の 崩 壊 ( 町 道 西 阿 室 瀬 相 線 ) 写 真 -2.9 斜 面 頂 部 からの 崩 壊 ( 町 道 西 阿 室 瀬 相 線 ) 4
袋 が 設 置 されている 状 態 である また, 安 脚 場 実 久 線 ( 瀬 武 ~ 薩 川 )( 図 -2.1 中 の5)は, 海 に 沿 った 道 路 であり, 写 真 -2.1 に 示 すような 稜 線 からの 崩 壊 など が 生 じており, 斜 面 崩 壊 の 範 囲 が 広 範 囲 で, 崩 壊 土 砂 が 道 路 上 に 広 く 堆 積 していた 現 状 では, 道 路 上 の 土 砂 は 取 り 除 かれ, 通 行 可 能 となっているが, 復 旧 対 策 は,これからである 3. 肝 属 郡 肝 付 町 内 之 浦 における 道 路 被 災 復 旧 状 況 調 査 (1) 調 査 概 要 鹿 児 島 県 肝 属 郡 肝 付 町 では,212 年 6 月 26 日 から 写 真 -2.1 広 範 囲 な 稜 線 からの 崩 壊 ( 安 脚 場 実 久 線 ( 瀬 武 ~ 薩 川 )) 27 日 にかけての 大 雨 により, 一 般 国 道 448 号 や 町 道 津 代 線 において, 斜 面 崩 壊 が 発 生 し, 通 行 止 めや 家 屋 の 損 壊, 住 民 が 孤 立 する 被 害 があった 今 回 の 調 査 では, 鹿 児 島 県 大 隅 地 域 振 興 局 およ び 肝 付 町 役 場 建 設 課 のご 協 力 を 得 て, 国 道 448 号 および 町 道 津 代 線, 津 代 立 石 線, 川 原 瀬 (こら ぜ) 線 における 斜 面 崩 壊 および 道 路 損 壊 状 況 の 現 地 調 査 を 実 施 した 調 査 は,7 月 31 日 ( 現 地 調 査 ),8 月 9 日 ( 現 地 調 査 ),9 月 2 日 ( 試 料 採 取 )の 3 回 実 施 した 9 月 2 日 現 在 でも, 国 道 448 号 では, 小 串 トンネルから 内 之 浦 漁 港 へ 向 けた 道 路 の 一 部 で 通 行 止 めとなっている 調 査 箇 所 は, 以 下 の 通 りである( 図 -3.1) 1 垂 水 の 小 川 ( 国 道 448 号 ),2 水 尻 地 内 ( 国 道 448 号 ),3 白 木 地 区 ( 町 道 津 代 線 ),4 倉 地 区 付 近 ( 町 道 津 代 立 石 線 ),5 川 原 瀬 地 区 ( 町 道 川 原 瀬 線 ),6 長 坪 地 内 ( 国 道 448 号 ),7 南 方 地 内 ( 国 道 448 号 ),8 宮 原 地 内 ( 国 道 448 号 ) 通 行 止 め 区 間 津 代 半 島 図 -3.1 鹿 児 島 県 肝 属 郡 肝 付 町 の 被 災 調 査 箇 所 (Google Earth に 加 筆 ) 5
1 分 間 雨 量 連 続 雨 量 南 九 州 から 南 西 諸 島 における 総 合 的 防 災 研 究 の (2) 降 雨 状 況 図 -3.2 に 被 災 現 場 に 近 い 気 象 庁 内 之 浦 観 測 所 で 観 測 された 6 月 22 日 ~6 月 28 日 までの 降 雨 状 況 を 示 す 図 より,6 月 23 日 の 早 朝 から 雨 が 降 り 始 め,6 月 26 日 までに 約 25mm の 降 雨 が 観 測 されている さらに,6 月 27 日 には 2mm を 超 える 雨 が 長 時 間 にわたって 降 ってい る 最 大 は,6 月 27 日 の 14:~15: で 66mm であった 7 7 6 5 4 連 続 雨 量 6 5 4 3 3 2 2 1 1 6/22 6/23 6/24 6/25 6/26 6/27 6/28 6/29 日 時 図 -3.2 降 雨 状 況 ( 内 之 浦 観 測 所 ) 3 25 2 1 分 間 雨 量 15 1 5 1 8 6 4 2 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 22 24 日 時 図 -3.3 8 月 27 日 の 1 分 間 雨 量 と 各 時 刻 における ( 内 之 浦 観 測 所 ) 6
図 -3.3 は,より 詳 細 に 降 雨 状 況 を 見 るために, 内 之 浦 観 測 所 で 計 測 された 1 分 間 雨 量 と 各 時 刻 の を 示 している 図 より,8 月 27 日 15:1~15:2 の 1 分 間 に 26mm の 降 雨 が 観 測 さ れていること,また,14:3~15:3 に 84mm の 雨 が 降 っていることが 分 かる (3) 災 害 の 状 況 と 特 徴 1 肝 属 町 内 之 浦 : 垂 水 の 小 川 ( 国 道 448 号 ) 垂 水 の 小 川 では, 大 雨 に 伴 い 8 月 27 日 15:4 に 土 石 流 が 発 生 した 斜 面 は 主 に 花 崗 岩 から 構 成 されており, 土 石 流 は, 下 流 で 幅 : 約 8m, 厚 さ: 約 5m, 傾 斜 角 :8.5 度 ( 上 流 側 で 16 度 )で 堆 積 していた( 写 真 -3.2) 図 -3.4 に 示 す 道 路 の 山 側 は,レッドゾーン, 海 側 の 家 屋 部 分 はイエロー ゾーンに 指 定 されていた 家 屋 の 前 に 車 庫 を 建 てていた( 過 去 の 土 砂 災 害 の 経 験 から)ため, 擁 壁 代 わりとなり 家 屋 の 倒 壊 は 免 れたが, 2 名 が 一 時 閉 じ 込 められた 本 斜 面 の 対 策 としては, 道 路 脇 の 4m の 範 囲 の 民 有 地 を 買 い 取 り, 土 石 流 が 発 生 した 渓 流 には 砂 防 堰 堤 を 設 置 する 予 定 で ある 図 -3.4 崩 壊 前 の 状 況 (Google earth より) ( 垂 水 の 小 川 ) 写 真 -3.1 崩 壊 箇 所 ( 垂 水 の 小 川 ) 写 真 -3.2 土 石 流 跡 地 ( 垂 水 の 小 川 ) 写 真 -3.3 被 災 した 家 屋 ( 垂 水 の 小 川 ) 2 肝 属 町 内 之 浦 : 水 尻 地 内 ( 国 道 448 号 ) 水 尻 地 内 の 斜 面 崩 壊 発 生 箇 所 では, 平 成 15~16 年 に 二 段 のアンカーと 水 抜 きボーリングが 実 施 されていたが, 対 策 された 斜 面 上 にある 無 対 策 斜 面 が 崩 壊 した 地 質 は, 花 崗 岩 であり, 斜 面 は, 高 さ: 約 6m, 幅 : 約 35m, 傾 斜 角 : 約 35 度 で 崩 壊 土 砂 が 堆 積 していた 崩 壊 部 上 部 には, クラックが 見 られなかったため, 不 安 定 な 土 塊 はすでに 滑 落 したものと 考 えられる 対 策 として 7
は, 土 砂 を 取 った 後 に,アンカー 引 張 試 験 を 実 施 する また, 海 側 に 仮 橋 を 設 置 した 後, 現 在 の 道 路 を 復 旧 する 予 定 である 崩 壊 箇 所 図 -3.5 対 策 工 概 要 図 ( 鹿 児 島 県 大 隅 地 域 振 興 局 作 成 資 料 に 加 筆 ) 写 真 -3.4 崩 壊 状 況 ( 肝 付 町 内 之 浦 水 尻 地 内 ) 3 肝 付 町 内 之 浦 : 白 木 地 区 ( 町 道 津 代 線 ) 白 木 地 区 では, 斜 面 崩 壊 により 家 屋 2 戸 が 被 災 した 8 月 26 日 に 斜 面 が 少 し 崩 れ,8 月 27 日 の 日 中 に 斜 面 が 大 きく 崩 壊 した 道 路 を 挟 んで 斜 面 側 の 住 民 は 外 出 しており, 反 対 側 に 住 む 住 民 は, 区 長 が 見 回 りに 来 たので, 外 に 出 て 様 子 を 見 ていた 時 に 斜 面 崩 壊 が 発 生 したため, 人 的 被 害 は 発 生 しなか った しかし, 土 砂 により, 一 部 住 民 が 孤 立 した( 完 全 に 途 切 れたわけではなく, 緊 急 車 両 のみ 通 行 可 能 な 状 態 ) 被 災 地 の 主 な 土 質 はまさ 土 であり, 表 層 に 黒 土, 一 部 に 降 下 火 砕 流 堆 積 物 (ボラ)が 見 られる 表 -3.1 に 土 質 試 験 結 果 を 示 す 飽 和 度 が 高 くなっているのは, 試 料 採 取 直 前 に 降 雨 があったためである 斜 面 崩 壊 土 砂 は, 幅 : 約 22m, 高 さ: 表 -3.1 土 質 試 験 結 果 白 木 地 区 自 然 含 水 比 % 23.6 湿 潤 密 度 g/cm 3 1.58 乾 燥 密 度 g/cm 3 1.28 土 粒 子 密 度 g/cm 3 2.66 間 隙 比 1.8 飽 和 度 % 58.2 透 水 係 数 m/sec 3. 1-4 約 38m, 角 度 : 約 3 度 で 堆 積 していた 対 策 としては, 急 傾 斜 地 事 業 で 対 応 する 予 定 である また, 斜 面 の 中 部 で 湧 水 が 見 られたため, 排 水 パイプが 設 置 されている( 写 真 -3.6) 写 真 -3.5 斜 面 崩 壊 箇 所 ( 白 木 地 区 ) 写 真 -3.6 排 水 用 パイプの 設 置 状 況 4 肝 付 町 内 之 浦 : 倉 地 区 付 近 ( 町 道 津 代 立 石 線 ) 写 真 -3.7 は, 今 回 の 大 雨 で 崩 壊 した 部 分 である 崩 壊 が 発 生 した 付 近 では, 今 回 の 大 雨 前 から 変 状 が 見 られ, 写 真 -3.8 に 示 すように 擁 壁 の 一 部 が 土 塊 に 押 されて 道 路 が 盛 り 上 がり, 肝 付 町 役 場 建 設 課 では, 災 害 以 前 にこの 箇 所 の 補 修 を 計 画 していた 斜 面 上 部 には 多 くのき 裂 が 見 られる 8
写 真 -3.7 斜 面 崩 壊 箇 所 ( 倉 地 区 ) 写 真 -3.8 大 雨 以 前 の 変 状 箇 所 土 質 は,まさ 土 であり, 玉 ねぎ 状 に 風 化 した 花 崗 岩 が 見 られる 9 月 2 日 現 在 では,まず, 写 真 -3.8 部 分 の 変 状 の 補 修 が 行 われている 5 肝 付 町 南 方 川 原 瀬 地 区 ( 町 道 川 原 瀬 線 ) 川 原 瀬 (こらぜ) 地 区 では, 大 雨 により 道 路 が 寸 断 する 被 害 が 発 生 した 原 因 は, 道 路 上 の 流 水 とみられる 土 質 は, 主 にまさ 土 である 一 部 にしらすが 見 られた 6 肝 付 町 長 坪 地 内 ( 国 道 448 号 ) 長 坪 地 内 では, 道 路 脇 の 海 側 斜 面 が 約 3m 幅 にわたって, 約 7m 下 まで 約 42 度 の 角 度 で 滑 落 した 原 因 は, 道 路 上 の 流 水 が 原 因 と 考 えら れる 崩 壊 前 の 状 況 と 見 比 べてみると( 図 -3.6), 路 肩 の 段 差 ブロックが 無 くなっているところか ら 崩 壊 が 生 じていることが 分 かる 現 在 では, 崩 壊 斜 面 に 吹 付 モルタルが 施 され, 侵 食 を 防 ぐ 対 策 がとられている 写 真 -3.9 川 原 瀬 地 区 の 崩 壊 箇 所 写 真 -3.1 長 坪 地 内 の 道 路 被 災 図 -3.6 崩 壊 発 生 前 の 状 況 (Google earth) 9
7 肝 付 町 南 方 地 内 ( 国 道 448 号 ) 南 方 地 内 では, 吹 付 モルタルにより 斜 面 が 保 護 されていたが, 大 雨 により, 下 部 のモルタルが 剥 がれ 落 ちた( 写 真 -3.11) また, 隣 接 する 北 側 の 写 真 -3.12 の 箇 所 では, 斜 面 が 滑 動 し, 吹 付 モ ルタルが 圧 迫 されたように 破 壊 している この 箇 所 では,28 年 にも 修 復 作 業 が 行 われており, この 斜 面 は, 地 すべり 崩 壊 を 起 こしているものと 考 えられる 写 真 -3.11 南 方 地 内 の 崩 壊 箇 所 1 写 真 -3.12 南 方 地 内 の 崩 壊 箇 所 2 8 肝 付 町 宮 原 地 内 ( 国 道 448 号 ) 宮 原 地 内 では, 大 雨 により, 斜 面 が 滑 動 し, 擁 壁 が 崩 壊 し, 道 路 の 半 分 まで 土 砂 が 堆 積 した 斜 面 は, 花 崗 岩 で 構 成 されている 崩 壊 の 形 態 は, 地 すべりに 近 い これからボーリング 調 査 を 実 施 し, 今 後 の 復 旧 計 画 を 立 てる 予 定 である 4.おわりに 本 調 査 では,21~212 年 に 発 生 した 豪 雨 に 伴 う 斜 面 崩 壊 による 道 路 災 害 について, 奄 美 大 島 や 肝 属 郡 肝 付 町 内 之 浦 の 被 災 箇 所 の 調 査 を 実 施 した 崩 壊 の 特 徴 写 真 -3.12 宮 原 地 内 の 道 路 被 災 箇 所 としては, 山 間 部 を 通 る 道 路 では, 道 路 斜 面 の 大 規 模 崩 壊 や 路 面 を 流 れた 水 の 流 下 による 道 路 崩 落 などの 被 害 が 見 られた また, 地 すべりにより 道 路 設 備 に 変 状 が 生 じている 箇 所 も 見 られた 海 沿 いの 道 路 については, 山 の 稜 線 から 広 範 囲 に 崩 れ た 箇 所 や 斜 面 の 表 層 にすべり 面 とみられる 基 盤 岩 が 崩 壊 後 に 現 れている 箇 所 が 見 られた また, 復 旧 状 況 については, 現 状 では 市 街 地 に 近 い 部 分 から 順 に 実 施 されており,その 他 の 箇 所 では 応 急 対 策 がなされ, 今 後 の 復 旧 計 画 が 検 討 されている 段 階 であった 本 調 査 箇 所 は, 過 去 に 何 度 も 同 様 な 豪 雨 を 受 け, 被 災 している 箇 所 である 今 回 の 調 査 で 得 られた 崩 壊 の 特 徴 などを 今 後 の 斜 面 災 害 対 策 に 生 かしていきたい 謝 辞 : 本 調 査 は, 鹿 児 島 県 大 島 支 庁 建 設 部 建 設 課 道 路 建 設 係 瀬 戸 内 事 務 所 建 設 課, 鹿 児 島 県 大 隅 地 域 振 興 局 建 設 部 および 肝 付 町 役 場 建 設 課, 地 盤 工 学 会 九 州 支 部 のご 協 力 を 得 ました ここに, 謝 意 を 表 します 参 考 文 献 1) 鹿 児 島 大 学 奄 美 豪 雨 災 害 調 査 委 員 会 編 :21 年 奄 美 豪 雨 による 土 砂 災 害 の 実 態 と 特 徴 ( 地 頭 園 隆, 下 川 悦 郎, 寺 本 行 芳 ), 21 年 奄 美 豪 雨 災 害 の 総 合 的 調 査 研 究 報 告 書,pp.11-2, 212 1