さつまいもの 前 処 理 条 件 が 焼 き 芋 の 甘 味 度 に 及 ぼす 影 響 松 本 大 学 人 間 健 康 学 部 健 康 栄 養 学 科 矢 内 研 究 室 小 沼 有 里 久 野 智 子
目 次 第 一 章 背 景 第 二 章 目 的 第 三 章 1-1.さつまいもの 前 処 理 と 糖 度 の 関 係 1-2. 方 法 1-3. 結 果 2-1. 焼 き 芋 の 焼 成 条 件 の 検 討 2-2. 方 法 2-3. 結 果 第 四 章 考 察 第 五 章 まとめ 第 六 章 謝 辞
第 一 章 背 景 長 野 県 中 信 地 域 は 農 水 畜 産 物 の 生 産 が 盛 んであり 高 品 質 な 生 産 物 が 多 く 出 荷 されてい る 一 方 それらは 生 鮮 品 としての 流 通 はあるものの 規 格 外 などを 利 用 した 加 工 品 とし て 流 通 される 商 品 は 多 くないのも 現 状 である つまり 農 産 物 の 加 工 や 規 格 外 農 産 物 の 有 効 活 用 について 課 題 が 多 い 一 方 6 次 産 業 の 動 きが 盛 んにおこなわれている 中 安 曇 野 市 においてさつまいもの 栽 培 が 本 格 化 し 生 芋 の 流 通 はもとより 干 しイモなどの 加 工 が 本 格 化 した 安 曇 野 の 気 候 風 土 の 利 用 により 高 品 質 なさつまいもが 栽 培 されるが さつま いもは 生 食 されないことや 甘 味 度 が 高 いことに 価 値 があることから 高 品 質 なさつまい も 加 工 品 の 開 発 は 地 域 活 性 に 大 きく 貢 献 すると 考 えられる 第 二 章 目 的 高 糖 度 なさつまいも 加 工 品 を 開 発 すべく 基 礎 研 究 を 行 うことを 目 的 とする 本 研 究 では 近 年 安 曇 野 市 内 で 栽 培 が 始 まったさつまいもに 着 目 し 加 熱 調 理 前 に 行 う 前 処 理 がさつま いもの 甘 味 度 に 及 ぼす 影 響 について 実 験 を 行 うこととした また 処 理 したイモを 焼 き 芋 に 加 工 する 加 熱 条 件 について 検 討 した 安 曇 野 の 気 候 風 土 の 利 用 により 高 品 質 なさつま いもが 栽 培 されるが さつまいもは 生 食 されないことや 甘 味 度 が 高 いことに 価 値 がある ことから 高 品 質 なさつまいも 加 工 品 の 開 発 は 地 域 活 性 に 大 きく 貢 献 すると 考 えられる さつまいもは ジャガイモに 比 べ 単 糖 類 や 二 糖 類 などの 甘 みを 呈 する 糖 を 多 く 含 むた め 甘 さを 感 じる また 主 成 分 であるでんぷんはそれを 分 解 する 酵 素 であるアミラーゼに よって 分 解 され 甘 味 度 を 増 す 収 穫 後 に 貯 蔵 するのはこのためである 酵 素 はたんぱく 質 であり 酵 素 反 応 は 特 定 の 温 度 によって 促 進 される よって さつまいもの 加 熱 調 理 前 に 酵 素 反 応 によるでんぷんの 分 解 を 促 進 させる 条 件 を 見 出 せば 甘 味 度 の 高 いさつまいも 加 工 品 ( 焼 き 芋 など)ができると 考 えられる
第 三 章 方 法 1-1.さつまいもの 前 処 理 と 糖 度 の 関 係 1-2. 方 法 ほぼ 同 じ 大 きさ 形 状 のさつまいも( 茨 城 県 産 )を 使 用 した( 図 1) さつまいもの 重 量 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 は 272.7 g ± 33.2 であった 図 1 使 用 したさつまいも 生 のさつまいもを 丸 のまま 保 温 庫 (VS-408 株 式 会 社 ベルソス) 内 に 入 れ( 図 2) 30 50 および 70 の 3 試 験 区 において それぞれ 10 20 30 および 60 分 間 処 理 した 前 処 理 したさつまいもは 加 熱 中 の 糖 度 上 昇 の 影 響 を 極 力 なくすために 電 子 レンジ (ER-KD420 東 芝 株 式 会 社 )を 用 いて 600Wで5 分 30 秒 間 加 熱 した 図 2 保 温 庫 内 で 処 理 している 様 子
さらに 加 熱 したさつまいもの 中 心 部 のみを 取 り すり 鉢 でペースト 状 にしてから 糖 度 をポケット 糖 度 計 (PAL-Patissier 株 式 会 社 アタゴ)にて 測 定 した 最 適 な 処 理 温 度 と 思 われる 処 理 条 件 について 処 理 時 間 をさらに 24 時 間 まで 延 長 し 糖 度 の 変 化 を 測 定 した 1-3. 結 果 および 考 察 各 温 度 条 件 で 前 処 理 したさつまいもの 糖 度 の 変 化 を 図 に 示 した 図 3から5に 示 した 30 での 処 理 では 前 処 理 20 分 後 以 降 糖 度 が 低 下 する 傾 向 が 見 られたが 50 および 60 で 処 理 したさつまいもの 糖 度 は 処 理 時 間 の 延 長 に 伴 い 糖 度 も 増 加 する 傾 向 が 見 ら れた また 50 で 1 時 間 処 理 したさつまいもの 糖 度 が 51 度 と 最 高 値 に 達 した 70 処 理 においても 1 時 間 処 理 で 45.5 度 まで 糖 度 が 上 がったが 処 理 温 度 が 高 く これ 以 上 時 間 を 延 長 して 処 理 をすると 水 分 が 抜 けてしまう 恐 れがあるため 50 60 分 間 の 処 理 が 最 適 と 思 われる 図 3 30 で 前 処 理 したさつまいもの 糖 度 の 変 化
図 4 50 で 前 処 理 したさつまいもの 糖 度 の 変 化 図 5 70 で 処 理 したさつまいもの 糖 度 の 変 化
さらに 図 6には 1 2 3 6 12 24 時 間 と 処 理 時 間 延 長 に 伴 う 糖 度 の 変 化 を 示 した 図 6 50 で 前 処 理 したさつまいもの 糖 度 の 変 化 先 に 同 じく 1 時 間 処 理 の 時 点 で 先 の 実 験 とほぼ 同 じく 50 度 以 上 の 糖 度 の 上 昇 がみら れたが それ 以 降 の 糖 度 は 減 少 傾 向 にあり 24 時 間 処 理 後 の 糖 度 は 39.9 度 と 12.3 度 の 減 少 が 見 られた さつまいもは 元 々 麦 芽 糖 やブドウ 糖 を 含 有 するため 甘 い 食 味 である が そのほかの 炭 水 化 物 をでんぷんとして 貯 蔵 しており さつまいもの 貯 蔵 中 にβ-アミラ ーゼがそのでんぷんを 麦 芽 糖 に 分 解 している よって その 酵 素 が 働 く 最 適 な 温 度 と 時 間 が 本 研 究 では 50 で 1 時 間 であった また 24 時 間 で 糖 度 が 下 がったことから 酵 素 が 失 活 したことが 分 かる 1 時 間 という 比 較 的 短 時 間 処 理 で 25% 以 上 の 糖 度 の 上 昇 という 知 見 は 高 品 質 なさつまいもの 加 工 に 有 意 と 考 える
2-1. 焼 き 芋 の 焼 成 条 件 の 検 討 2-2. 方 法 先 の 実 験 において さつまいもの 最 適 な 前 処 理 条 件 の 知 見 を 応 用 し さつまいも 加 工 品 の 特 に 焼 き 芋 の 加 工 条 件 の 検 討 を 行 った すなわち 50 で 1 時 間 処 理 したさつまいもの 焼 成 条 件 を 検 討 した 電 子 レンジ(ER-KD420 東 芝 株 式 会 社 )のオーブンモードにて 200 250 および 280 でそれぞれ 40 分 60 分 加 熱 処 理 を 行 う 加 熱 したさつまいもの 中 心 部 のみを 取 り すり 鉢 でペースト 状 にしてから 糖 度 をポケット 糖 度 計 (PAL-Patissier 株 式 会 社 アタゴ)にて 測 定 した 焼 き 芋 の 水 分 含 量 は 赤 外 線 水 分 計 (FD-720 株 式 会 社 ケ ツト 科 学 研 究 所 )にて 測 定 した さらに 比 較 対 照 として 甘 いことで 知 名 度 の 高 い 鹿 児 島 県 産 安 納 芋 について 下 記 の 実 験 を 行 い 比 較 した 1 電 子 レンジ( ER-KD420 東 芝 株 式 会 社 )で 600Wで5 分 30 秒 間 加 熱 処 理 250 1 時 間 の 前 処 理 後 電 子 レンジ( ER-KD420 東 芝 株 式 会 社 )で 600W で 5 分 30 秒 間 加 熱 処 理 350 1 時 間 の 前 処 理 後 電 子 レンジ(ER-KD420 東 芝 株 式 会 社 )にて 250 で 60 分 加 熱 処 理 2-3. 結 果 表 1に 加 熱 調 理 後 のさつまいもの 糖 度 と 水 分 を 示 した 表 2 加 熱 処 理 の 結 果 250 で 60 分 焼 いたものが 45.2 度 と 最 も 糖 度 が 高 いという 結 果 になった 200 で 60 分 焼 いたいもの 糖 度 が 他 と 比 較 して 低 い 原 因 は 水 分 含 量 が 多 いことが 考 えら れる この 焼 き 芋 は 焼 き 芋 ペーストとして 再 度 加 工 を 行 うことも 前 提 としている よっ
て 高 糖 度 であること 皮 がむきやすいなどの 点 を 考 慮 した 場 合 図 7から9に 示 したよ うに 焼 き 上 がりに 皮 と 実 が 離 れることも 重 要 な 要 素 となる 250 60 分 焼 成 のイモの 焼 き 具 合 は 剥 皮 が 容 易 でかつ 糖 度 の 高 い 処 理 条 件 である よって この 条 件 が 最 適 である と 考 えられる 図 7 200 60 分 で 処 理 したいもの 断 面 図 図 8 250 60 分 で 処 理 したいもの 断 面 図 図 9 280 60 分 で 処 理 したいもの 断 面 図
また 安 納 芋 の 糖 度 および 測 定 結 果 を 表 3に 示 した 前 処 理 をしなくても すでに 糖 度 が 49.5 度 であった しかし 前 処 理 電 子 レンジ 加 熱 の 試 験 区 では 糖 度 はほとんど 変 化 が なかったが 前 処 理 オーブン 加 熱 では 試 験 区 1と 比 較 して 約 9%も 糖 度 が 低 かった 安 納 芋 はもともと 甘 味 度 が 高 いことと 貯 蔵 によるでんぷんの 糖 化 を 出 荷 前 に 実 施 してい ることが 考 えられる 図 9に 示 した 試 験 区 3の 焼 成 後 の 芋 の 断 面 は 色 もよく 実 と 皮 が きれいにはがれていた 表 3 安 納 芋 の 糖 度 および 水 分 測 定 結 果 条 件 糖 度 ( 平 均 値 ±SD) 水 分 量 1 49.5±0.41 50.1% 2 48.7±0.21 54.6% 3 40.6±0.37 58.9% 図 10 50 1 時 間 の 前 処 理 後 電 子 レンジにて 250 で 60 分 加 熱 処 理 を 行 った 安 納 いもの 断 面 図 本 研 究 は 安 曇 野 市 産 さつまいもの 加 工 法 の 開 発 に 寄 与 し 糖 度 を 上 昇 させる 手 法 を 用 いて 本 年 3 年 目 となる 干 し 芋 の 加 工 の 前 処 理 法 として 実 用 化 し 製 造 ラインに 落 とし 込 む 作 業 を 今 後 行 う また 本 研 究 にて 実 施 した 焼 き 芋 の 処 理 加 工 条 件 を 持 ちいて さつ まいもペーストの 製 造 スキームに 落 とし 込 む 作 業 をこれから 実 施 する さつまいもの 大 量 加 工 やペースト 化 については 長 野 県 内 で 実 施 できるところは 無 い よって 本 知 見 をもと
にさつまいも 加 工 品 の 製 造 を 事 業 化 し それを 雇 用 の 創 出 に 絡 めた 子 育 て 支 援 障 碍 者 福 祉 観 光 などを 目 的 とした 地 域 の 活 性 化 につなげていきたいと 考 える 第 五 章 まとめ 加 熱 処 理 に 先 だち 前 処 理 の 加 熱 条 件 を 検 討 した 結 果 前 処 理 を 50 1 時 間 にしたい もの 糖 度 が 51 度 と 最 も 高 くなった その 前 処 理 で 焼 き 芋 を 作 った 結 果 250 で 1 時 間 焼 いたいもが 糖 度 45.2 度 と 最 適 だ と 分 かった 本 知 見 を 利 用 して さつまいもの 加 工 品 製 造 を 事 業 化 し 地 域 に 貢 献 できる 事 業 として 確 立 していくことが 今 後 の 課 題 である 謝 辞 卒 業 論 文 の 作 成 にあたりご 指 導 ご 助 言 をいただきました 矢 内 和 博 先 生 に 心 からお 礼 申 し 上 げます また 本 研 究 の 実 施 に 当 たり 研 究 助 成 を 賜 りました 株 式 会 社 八 光 電 機 様 に 心 から 御 礼 申 し 上 げます さらに 研 究 に 携 わったすべての 人 々に 深 く 感 謝 申 し 上 げま す