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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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本 稿 は 一 昨 年 末 に 中 国 最 高 人 民 法 院 が 再 審 の 末 に 行 政 裁 定 書 を 発 して 事 件 の 終 結 を 図 った 案 例 を 紹 介 するとともに 特 許 の 権 利 化 の 過 程 で 行 われた 補 正 に 対 して 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するか 否 かに 関 し 最 高 人 民 法 院 が 下 した 判 断 を 分 析 し 今 後 の 特 許 権 利 化 実 務 にお いて 補 正 の 内 容 を 検 討 する 際 に 参 酌 できる 判 断 基 準 を 提 供 することを 目 的 とする 1. 事 件 の 概 要 上 述 した 行 政 裁 定 書 は 中 国 の 最 高 人 民 法 院 が 行 った 行 政 事 件 に 関 する 再 審 事 件 に 対 す る 判 断 を 示 した 司 法 文 書 であり 2011 年 12 月 25 日 に 最 高 人 民 法 院 によって 発 布 された 行 政 裁 定 書 であった 事 件 に 関 わった 特 許 は 中 国 知 識 産 権 局 によって 審 査 を 経 て 権 利 付 与 された 特 許 第 00131800.4 号 ( 以 下 本 件 特 許 とする )としての インクジェットカートリッジに 関 する 特 許 である 本 件 特 許 権 は 1999 年 5 月 18 日 に 出 願 された 特 許 出 願 第 99800780.3 号 ( 親 出 願 )の 分 割 出 願 であり 2004 年 6 月 23 日 に 権 利 付 与 公 告 がされた なお 当 該 特 許 出 願 の 親 出 願 である 第 99800780.3 号 は 国 際 出 願 PCT/JP99/02579 の 中 国 移 行 出 願 で ある 当 該 特 許 権 に 対 して 2006 年 1 月 17 日 に 無 効 審 判 が 請 求 され 請 求 人 は 本 件 特 許 が 新 規 性 不 備 進 歩 性 不 備 並 びに 補 正 要 件 不 備 であることを 理 由 に 特 許 権 をすべて 無 効 にすることを 請 求 した 本 件 特 許 の 権 利 人 ( 以 下 特 許 権 者 とする )は 無 効 審 判 の 5) 請 求 に 対 して 補 正 書 と 意 見 陳 述 書 を 提 出 し 権 利 の 維 持 をはかった 復 審 委 員 会 は 口 頭 審 理 を 経 て 特 許 権 者 が 権 利 化 をはかった 過 程 で 請 求 項 に 対 して 行 った 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 違 反 した 即 ち 新 規 事 項 追 加 に 該 当 したとして 特 許 権 をすべて 無 効 にするとの 審 決 を 下 した 6) 本 件 特 許 権 者 は 復 審 委 員 会 の 審 決 を 不 服 として 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 に 審 決 取 消 訴 訟 を 提 起 した 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 は 本 件 特 許 の 出 願 段 階 において 出 願 人 が 行 った 補 正 が 特 許 法 第 33 条 違 反 に 該 当 するか 否 かを 中 心 に 審 理 を 行 った 末 復 審 委 員 会 が 下 した 第 11291 号 決 定 を 維 持 すべきとする 一 審 判 決 を 下 した 7) 本 件 特 許 権 者 は 一 審 判 決 を 不 服 として 一 審 判 決 の 取 消 しを 求 めて 北 京 市 高 級 人 民 法 院 に 上 訴 した 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 上 訴 人 の 訴 えを 一 部 分 認 め 一 審 判 決 及 び 復 審 委 員 会 の 審 決 に 部 分 的 な 事 実 認 定 の 誤 りがあったとして 一 審 判 決 及 び 復 審 委 員 会 の 審 決 を 取 消 すととも に 復 審 委 員 会 が 本 件 特 許 の 無 効 審 判 請 求 について 再 審 理 するよう 命 じた 二 審 判 決 を 下 し た 8) 中 国 の 司 法 制 度 では 二 審 終 審 制 をとっており 上 述 した 北 京 市 高 級 人 民 法 院 の 二 審 判 決 が 最 終 決 定 となるはずであった しかし 一 部 分 の 特 殊 事 件 については 当 事 者 の 請 求 2

に 基 づき 最 高 人 民 法 院 が 事 件 の 再 審 理 いわゆる 再 審 を 行 うことが 法 律 によって 認 めら れている 本 件 事 件 の 無 効 審 判 請 求 人 らは 北 京 市 高 級 人 民 法 院 の 二 審 判 決 に 事 実 認 定 の 誤 りがあり 法 律 の 適 用 を 誤 ったとして 最 高 人 民 法 院 に 事 件 の 再 審 を 請 求 した そして 最 高 人 民 法 院 は 請 求 に 応 じて 再 審 の 審 理 を 行 った 結 果 再 審 請 求 人 の 一 部 分 の 請 求 理 由 を 認 めつつも 本 件 出 願 に 対 して 行 われた 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 せず 特 許 法 第 33 条 に 反 していないとの 二 審 判 決 の 結 論 が 正 しいと 認 め 再 審 の 請 求 を 棄 却 する 行 政 裁 定 書 を 発 した 9) これによって 本 件 再 審 事 件 が 終 結 するとともに 最 高 人 民 法 院 は 特 許 の 権 利 化 の 段 階 で 行 われた 補 正 について 特 許 法 第 33 条 をどのように 適 用 すべきかについて 一 つの 判 断 基 準 を 世 に 示 した 2. 本 件 の 争 点 について 本 件 訴 訟 事 件 は 特 許 権 を 無 効 にすべきか 否 かについて 復 審 委 員 会 で 行 われた 審 決 を 巡 った 行 政 訴 訟 事 件 であり 特 許 権 者 無 効 審 判 請 求 人 復 審 委 員 会 を 含 むそれぞれの 当 事 者 が 一 連 の 訴 訟 においてそれぞれの 観 点 を 主 張 しあっていたが その 最 大 の 争 点 は 本 件 特 許 の 権 利 化 の 過 程 において 出 願 人 ( 即 ち 後 の 特 許 権 者 )が 出 願 書 類 に 対 して 行 った 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 するか 否 か 即 ち その 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 す るか 否 かの 判 断 だった 3. 本 件 紛 争 の 詳 細 な 経 緯 公 開 公 報 によると 本 件 特 許 出 願 時 の 請 求 項 1は 次 の 通 りになっている 公 開 時 の 請 求 項 1 インク 針 を 介 してインクジェットプリント 装 置 のプリントヘッドにインクを 供 給 する インクカートリッジであって インクを 収 容 するインク 室 を 限 定 し 底 壁 と 一 方 の 縁 が 上 記 底 壁 と 交 合 する 第 1の 壁 と 一 方 の 縁 が 上 記 底 壁 と 交 合 し かつ 上 記 第 1の 壁 と 対 向 して 定 位 される 第 2の 壁 を 含 むケースと インクジェットプリント 装 置 のインク 供 給 針 が 挿 入 され 上 記 底 壁 に 形 成 され 上 記 第 2の 壁 よりもさらに 上 記 ケースの 上 記 第 1の 壁 に 近 く 位 置 するインク 供 給 口 と 上 記 インクジェットプリント 装 置 の 一 部 分 とかみ 合 い 上 記 第 1の 壁 に 形 成 され 上 記 第 2の 壁 を 離 れる 方 向 に 伸 びる 懸 垂 体 とを 有 するインクカー トリッジ 3

なお 審 査 の 段 階 において 上 記 請 求 項 に 補 正 が 施 され 特 許 公 報 によると 権 利 付 与 時 の 請 求 項 1は 次 の 通 りになっている 登 録 時 の 請 求 項 1 インクジェットプリント 装 置 のホルダに 装 着 され インク 供 給 針 を 介 してインクジェッ トプリント 装 置 のインクヘッドにインクを 供 給 するインクカートリッジであって 複 数 の 外 壁 と 上 記 複 数 の 壁 の 第 1の 壁 に 形 成 され 上 記 インク 供 給 針 を 収 納 するイン ク 供 給 口 と 上 記 インクカートリッジに 保 持 され インクに 関 する 情 報 を 記 憶 する 記 憶 装 置 と 上 記 複 数 の 壁 のうちの 第 1の 壁 に 交 差 する 上 記 第 2の 壁 に 取 り 付 けられ 上 記 イン ク 供 給 口 の 中 心 線 に 位 置 する 回 路 基 板 と 上 記 回 路 基 板 の 露 出 面 の 表 面 に 形 成 され 上 記 記 憶 装 置 をインクジェットプリント 装 置 に 接 続 するのに 用 いられ 列 を 成 す 複 数 の 接 点 と を 有 するインクカートリッジ なお 請 求 項 1によって 特 定 されたインクカートリッジは 図 1( 出 願 書 類 の 図 6)に 示 している 図 1 請 求 項 1にかかるインクカートリッジ 4

本 件 特 許 に 対 して 無 効 審 判 を 請 求 した 請 求 人 は 補 正 によって 追 加 された 記 憶 装 置 が 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 に 記 載 されておらず 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するとして 本 件 特 許 を 無 効 にすべきであると 主 張 した 無 効 審 判 の 手 続 において 審 判 廷 は 本 件 特 許 請 求 項 1にある 記 憶 装 置 ( 図 1にお ける 回 路 基 板 31に 取 り 付 けられている)は 審 査 の 段 階 で 補 正 によって 追 加 されたもの であると 認 定 し さらに 本 件 出 願 の 親 出 願 である CN99800780.3 またはそのもととなる 国 際 出 願 PCT/JP99/02579 の 明 細 書 及 び 請 求 項 には 記 憶 装 置 の 記 載 がなく 半 導 体 記 憶 装 置 の 文 言 記 載 があるのみであると 認 定 した このため 補 正 によって 追 加 され た 記 憶 装 置 という 構 成 要 件 が 新 規 事 項 に 該 当 するか 否 かは 出 願 当 初 の 明 細 書 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 に 基 づき 当 業 者 が 直 接 的 一 義 的 に 記 憶 装 置 の 構 成 要 件 を 導 き 出 せるか 否 かの 判 断 に 帰 すると 審 判 廷 は 指 摘 した 即 ち 当 業 者 にとって 登 録 特 許 の 請 求 項 1に 記 載 されている 記 憶 装 置 の 構 成 要 件 を 出 願 当 初 の 明 細 書 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 から 疑 義 なく 一 義 的 に 導 き 出 せるか 否 かにかかることに なる 特 許 権 者 は 請 求 項 1に 対 して 施 した 補 正 は 出 願 当 初 の 明 細 書 の 記 載 内 容 及 び 図 面 に 基 づいて 行 われ 出 願 当 初 の 明 細 書 の 記 載 内 容 を 超 えていないため 新 規 事 項 追 加 に 該 当 しないと 主 張 した 復 審 委 員 会 審 判 廷 は 明 細 書 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 に 基 づき 請 求 項 1 に 記 憶 装 置 を 追 加 する 補 正 は 新 規 事 項 追 加 に 該 当 すると 認 定 した 具 体 的 には 記 憶 装 置 には 半 導 体 記 憶 装 置 を 含 むほか 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 も 含 むと 解 すべきとし 明 細 書 の 記 載 内 容 からすると 本 発 明 はインクカートリッジに 使 用 されている 半 導 体 記 憶 装 置 について 行 われ 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 にはその 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 まで 言 及 し ておらず 記 載 内 容 から 直 接 的 一 義 的 に 本 発 明 のインクカートリッジに 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 が 取 り 付 けられているとは 導 き 出 せない 従 って 請 求 項 に 記 載 の 記 憶 装 置 は 何 の 疑 いもなく 明 細 書 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 と 同 一 のものであると 解 する ことができず 当 業 者 は 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 から 一 義 的 に 記 憶 装 置 を 特 定 することができず 同 様 に 請 求 項 に 記 載 の 記 憶 装 置 は 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 から 一 義 的 に 特 定 することができない とした よって 審 判 廷 は 審 理 の 末 本 件 特 許 権 者 が 審 査 の 段 階 に 半 導 体 記 憶 装 置 から 記 憶 装 置 にした 補 正 は 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 範 囲 を 超 えて 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するため 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 反 し 無 効 とすべきと 認 めた そして 復 審 委 員 会 は 本 件 特 許 を 無 効 にすべきとする 第 11291 号 決 定 を 下 した 本 件 特 許 権 者 は 復 審 委 員 会 第 11291 号 決 定 を 不 服 として 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 に 5

審 決 の 取 消 しを 求 める 行 政 訴 訟 を 提 起 した 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 は 審 理 の 末 復 審 委 員 会 が 行 った 半 導 体 記 憶 装 置 から 記 憶 装 置 にした 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するという 認 定 は 妥 当 であると 認 め 復 審 委 員 会 の 第 11291 号 決 定 を 維 持 する 一 審 判 決 を 下 した 本 件 特 許 権 者 は 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 の 一 審 判 決 を 不 服 とし 一 審 判 決 及 び 復 審 委 員 会 の 無 効 審 決 の 取 消 しを 求 めて 北 京 市 高 級 人 民 法 院 に 上 訴 した 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 審 理 を 経 て 一 審 裁 判 において 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 が 認 定 した 事 実 に 誤 りがない と 認 めた また 審 査 段 階 において 拒 絶 理 由 通 知 に 対 して 出 願 人 が 請 求 項 1に 対 して 行 った 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 すると 審 査 官 が 指 摘 した 事 実 も 判 明 した さらに この 指 摘 に 対 して 出 願 人 が 意 見 陳 述 書 において 請 求 項 1に 記 載 の 記 憶 装 置 が 明 細 書 及 び 図 面 に 記 載 されている 半 導 体 記 憶 装 置 に 該 当 すると 主 張 したことも 判 明 した 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するか 否 かの 判 断 基 準 は その 補 正 が 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 範 囲 を 超 えたか 否 か さらに 出 願 当 初 の 開 示 範 囲 を 超 えたか 否 かにある 即 ち 当 業 者 が 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 内 容 から 疑 義 なしに 補 正 した 内 容 を 特 定 できるかどうかにかかる さらに 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するか 否 かを 判 断 する 場 合 補 正 後 の 技 術 内 容 が 新 しい 技 術 内 容 を 構 成 するか 否 かをも 判 断 すべきである また 出 願 人 が 権 利 化 の 段 階 で 行 った 意 見 陳 述 は 新 規 事 項 追 加 にあたるか 否 かを 判 断 する 際 に 参 考 に することができるが 当 該 意 見 陳 述 は 新 規 事 項 追 加 の 唯 一 の 判 断 基 準 にするべきではな い と 指 摘 した 本 件 特 許 の 権 利 化 の 中 で 半 導 体 記 憶 装 置 から 記 憶 装 置 にした 補 正 について 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 次 のように 認 定 した 技 術 用 語 及 び 特 徴 についての 理 解 は 当 該 技 術 分 野 の 技 術 者 いわゆる 当 業 者 の 視 点 か ら 当 該 技 術 用 語 または 特 徴 が 用 いられる 特 定 の 言 語 環 境 までを 考 慮 すべきである 本 件 特 許 において 請 求 項 1にある 記 憶 装 置 は 審 査 の 段 階 において 補 正 により 追 加 された 当 初 の 請 求 項 には 半 導 体 記 憶 装 置 及 び 記 憶 装 置 の 記 載 があった 本 発 明 の 背 景 技 術 の 説 明 には インクカートリッジに 半 導 体 記 憶 装 置 及 び 当 該 記 憶 装 置 に 接 続 する 電 極 を 取 り 付 ける と 記 載 されている これらを 除 き 当 初 の 明 細 書 の 他 の 部 分 にはすべて 半 導 体 記 憶 装 置 を 用 いて 記 載 されている 当 業 者 は 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 から 出 願 人 が 半 導 体 記 憶 装 置 の 意 味 をもって 記 憶 装 置 を 用 いていることを 疑 いなく 特 定 できる さらに 補 正 前 補 正 後 の 何 れかの 技 術 内 容 において 記 憶 装 置 は 半 導 体 記 憶 装 置 の 意 味 をもって 使 用 され 新 しい 技 術 内 容 を 形 成 しておらず 当 業 者 が 新 しい 技 術 内 容 と 解 することはなかったはずである また 出 願 人 は 審 査 段 階 の 意 見 陳 述 書 中 で 記 憶 装 置 が 図 面 に 示 している 半 導 体 記 憶 装 置 を 指 すと 認 めている 6

補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 するか 否 かを 判 断 するのは 当 該 技 術 分 野 の 技 術 者 であり 当 該 技 術 分 野 において 専 門 知 識 を 持 つ 普 通 の 技 術 者 いわゆる 当 業 者 であり 当 該 技 術 分 野 の 技 術 内 容 を 理 解 する 能 力 を 持 つ 者 とすべきである 記 憶 装 置 の 用 語 は 半 導 体 記 憶 装 置 のほかに 他 種 類 の 記 憶 装 置 までも 包 含 するものと 考 えるべきであるが 本 件 発 明 の 技 術 分 野 であるプリント 装 置 のインクカートリッジにおいて 背 景 技 術 の 説 明 にこれを 半 導 体 記 憶 装 置 と 明 確 に 特 定 した 前 提 からすれば 当 業 者 はこの 用 語 を 上 位 概 念 の 記 憶 装 置 に 理 解 することはない これに 基 づき 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 出 願 人 が 行 った 補 正 が 新 規 事 項 追 加 に 該 当 せず 復 審 委 員 会 が 再 審 査 を 行 い 審 決 を 出 し 直 すべきであると 認 定 した よって 北 京 市 高 級 人 民 法 院 は 一 審 判 決 及 び 復 審 委 員 会 の 決 定 には 事 実 認 定 及 び 法 律 の 適 用 に 誤 りがあるか ら 取 消 されるべきであるとした 上 で 復 審 委 員 会 が 本 件 特 許 の 無 効 審 判 請 求 について 改 めて 審 査 し 決 定 を 出 し 直 すべきであるとする 二 審 判 決 を 下 した 中 国 の 法 制 度 は 二 審 結 審 となり 特 許 権 の 有 効 性 を 巡 る 本 件 紛 争 事 件 は 北 京 市 高 級 人 民 法 院 が 二 審 判 決 を 下 した 時 点 で 終 結 したはずだったが 特 例 として 結 審 となった 事 件 について 最 高 人 民 法 院 に 事 件 の 再 審 理 を 求 める 当 事 者 の 訴 えに 応 じて あるいは 最 高 人 民 法 院 が 自 らの 判 断 において 結 審 した 事 件 を 見 直 すことが 可 能 である これは いわゆ る 再 審 事 件 である 本 件 紛 争 事 件 の 当 事 者 のうち 無 効 審 判 の 請 求 人 は 二 審 判 決 におい て 事 実 認 定 及 び 法 律 の 適 用 に 誤 りがあったとして 二 審 判 決 の 取 消 しを 求 めて 最 高 人 民 法 院 に 再 審 を 求 めた そして 最 高 人 民 法 院 は 再 審 の 請 求 について 請 求 人 の 主 張 及 び 被 請 求 人 の 答 弁 内 容 を 調 べた 上 で 改 めて 事 実 認 定 を 行 った まず 請 求 項 1にある 記 憶 装 置 の 構 成 要 件 は 分 割 出 願 の 時 点 で 出 願 人 によって 自 発 補 正 の 形 で 追 加 されたものであり 特 許 審 査 の 段 階 で 審 査 官 の 求 めに 応 じて 補 正 したも のではないことが 判 明 した そして 最 高 人 民 法 院 は 本 件 紛 争 案 件 の 争 点 は 記 憶 装 置 の 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 するか 否 かであると 認 めた さらに この 問 題 を 分 析 するためには 次 のポ イントを 解 明 する 必 要 があると 認 定 した 1) 二 審 判 決 における 本 件 特 許 出 願 当 初 の 明 細 書 に 用 いられた 記 憶 装 置 の 意 味 の 解 釈 が 正 しいか 否 か 2) 本 件 請 求 項 1において 記 憶 装 置 とした 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 する か 否 か まず 二 審 判 決 の 認 定 の 正 否 について 最 高 人 民 法 院 は 次 の 判 断 を 示 した 二 審 判 決 が 本 件 出 願 当 初 の 明 細 書 において 半 導 体 記 憶 装 置 の 意 味 をもって 記 憶 装 置 の 用 語 を 使 用 し 記 憶 装 置 は 半 導 体 記 憶 装 置 の 簡 略 語 として 使 用 してい る とした 認 定 は 間 違 いだった 当 業 者 にとって 記 憶 装 置 とは 情 報 データを 保 存 する 装 置 であり 磁 気 記 憶 装 置 半 導 体 記 憶 装 置 光 ディスクなど 多 種 多 様 な 装 置 の 上 位 概 念 7

である その 意 味 は 明 瞭 であり 明 確 である 明 細 書 の 記 載 内 容 からすると 記 憶 装 置 の 用 語 は 明 確 にまたは 暗 に 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 を 排 除 しておらず さらに 記 憶 装 置 を 通 常 の 理 解 と 異 なる 特 別 な 限 定 をしたわけでもなかった これによって 記 憶 装 置 が 半 導 体 記 憶 装 置 を 指 していると 認 定 することはできない 従 って 当 業 者 にとって 記 憶 装 置 の 用 語 は 通 常 の 意 味 を 有 し 半 導 体 記 憶 装 置 に 限 定 されずに 広 く 解 釈 さ れるべきである したがって 二 審 判 決 における 本 件 特 許 の 出 願 当 初 の 明 細 書 において 半 導 体 記 憶 装 置 の 意 味 をもって 記 憶 装 置 の 用 語 を 用 いており 記 憶 装 置 は 半 導 体 記 憶 装 置 の 簡 略 語 として 使 用 している との 認 定 は 間 違 いだった 次 に 記 憶 装 置 とした 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 するか 否 かについて 最 高 人 民 法 院 は 特 許 法 第 33 条 の 立 法 主 旨 を 分 析 した 上 で 次 のような 認 識 を 示 した 補 正 が 出 願 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 範 囲 を 超 えてはならない とする 規 定 にお いて 当 初 明 細 書 と 請 求 項 の 記 載 範 囲 とは 属 する 技 術 分 野 の 通 常 の 技 術 者 いわゆ る 当 業 者 の 視 点 から 当 初 明 細 書 及 び 請 求 項 の 開 示 内 容 で 特 定 すべきである 当 初 明 細 書 と 請 求 項 が 開 示 した 技 術 内 容 をすべて 当 初 明 細 書 と 請 求 項 の 記 載 範 囲 と 解 すべきである より 具 体 的 にいえば 当 初 明 細 書 と 請 求 項 の 記 載 範 囲 は 以 下 二 つの 内 容 を 含 む 1) 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 が 文 言 または 図 形 で 明 確 に 開 示 した 内 容 2) 当 業 者 が 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 を 総 合 して 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 上 述 したように 当 初 の 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 の 記 載 内 容 から 導 き 出 した 内 容 が 当 業 者 にとって 明 らかであれば 当 該 内 容 が 当 初 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 範 囲 に 属 すると 認 定 できる 補 正 後 の 出 願 書 類 に 新 しい 技 術 内 容 さえ 導 入 されていなければ この 補 正 が 当 初 の 記 載 範 囲 を 超 えていないと 認 められる ここから 分 かるように 補 正 が 当 初 の 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 範 囲 を 超 えているか 否 かの 判 断 は 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 の 文 言 あるいは 図 形 が 表 した 内 容 のみではな く 当 業 者 が 当 初 の 開 示 内 容 を 総 合 すれば 明 らかになる 内 容 まで 考 慮 すべきである こ の 判 断 の 過 程 において 単 に 補 正 前 後 の 文 言 を 比 較 するだけで 結 論 を 出 すべきではなく さらに 当 業 者 が 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 を 唯 一 確 定 された 内 容 と 理 解 してはな らない 以 上 の 判 断 基 準 に 基 づき 本 件 出 願 当 初 の 明 細 書 請 求 項 及 び 図 面 の 記 載 内 容 を 総 合 すれば 当 業 者 は 半 導 体 記 憶 装 置 を 容 易 に 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 によって 置 き 換 えられ このような 技 術 内 容 が 半 導 体 記 憶 装 置 の 代 わりに 他 の 記 憶 装 置 を 用 いるインクカート リッジにも 適 用 できると 推 定 できる 本 件 特 許 権 者 は 分 割 出 願 の 時 点 で 元 の 請 求 項 にある 半 導 体 記 憶 装 置 を 記 憶 装 置 に 補 正 した 補 正 後 の 請 求 項 1は 当 初 明 細 書 請 求 項 及 び 図 面 の 記 載 内 容 から 当 業 者 が 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 と 比 較 衡 量 するならば 新 しい 技 術 内 容 を 導 入 した 8

わけではないものと 認 められる 従 って 請 求 項 1における 記 憶 装 置 とした 補 正 は 当 初 出 願 書 類 の 記 載 内 容 を 超 えておらず 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 している このような 判 断 に 基 づき 最 高 人 民 法 院 は 二 審 判 決 には 記 憶 装 置 の 意 味 に 関 す る 認 定 に 誤 りがあったものの 記 憶 装 置 に 関 する 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 記 載 に 適 合 するという 判 断 は 正 しく 維 持 すべきと 認 定 した 従 って 行 政 裁 定 書 を 以 って 再 審 請 求 を 却 下 する 行 政 裁 定 を 下 した 4. 考 察 本 件 裁 判 事 例 においては 無 効 審 判 事 件 が 発 端 となり 復 審 委 員 会 の 無 効 決 定 を 巡 って 北 京 市 中 級 人 民 法 院 北 京 市 高 級 人 民 法 院 そして 最 高 人 民 法 院 がそれぞれ 一 審 二 審 及 び 再 審 の 手 続 を 経 た 上 で 最 終 的 に 本 件 特 許 権 者 が 出 願 の 段 階 で 行 った 補 正 が 特 許 法 第 33 条 の 規 定 に 適 合 し 新 規 事 項 追 加 ではないとして 最 高 人 民 法 院 が 行 政 裁 定 書 の 形 で 本 件 紛 争 事 件 に 終 止 符 を 打 ったものである この 事 件 においてもっとも 重 要 なのは 最 高 人 民 法 院 が 行 政 裁 定 書 のなかで 特 許 法 第 33 条 の 趣 旨 を 解 釈 した 上 で この 条 文 の 適 用 原 則 を 明 確 に 示 し 復 審 委 員 会 とは 異 なっ た 判 断 を 示 したことにある 即 ち 当 初 明 細 書 及 び 図 面 の 記 載 範 囲 は 当 業 者 の 視 点 から 当 初 明 細 書 及 び 請 求 項 の 開 示 内 容 をもって 特 定 すべきであること さらに 具 体 的 に 二 つ の 内 容 をもって 判 断 すべきであることを 明 示 した 点 にある その 二 つの 内 容 とは まず 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 が 文 字 あるいは 図 形 で 明 確 に 表 した 内 容 であり 次 に 当 業 者 が 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 の 記 載 内 容 を 総 合 した 上 で 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 である これら 二 つの 内 容 を 当 初 の 出 願 書 類 の 開 示 内 容 と 認 定 すべきとの 最 高 裁 の 判 断 を 明 確 に 世 に 示 したのが 本 件 の 最 大 の 貢 献 であると 評 価 できる この 判 断 基 準 は 従 来 審 査 指 南 で 規 定 されている 新 規 事 項 追 加 に 関 する 判 断 基 準 より 緩 やかであったことに 注 目 すべきである 中 国 の 司 法 制 度 における 基 盤 は 条 文 法 であって 判 例 法 ではないため 本 文 で 紹 介 した 最 高 人 民 法 院 の 行 政 裁 定 書 の 判 断 基 準 がそのまま 他 の 司 法 判 断 に 適 用 されるとは 速 断 で きないが 今 後 同 様 な 紛 争 案 件 の 判 断 に 重 要 な 影 響 を 与 えるに 違 いない 一 方 行 政 手 続 である 特 許 審 査 及 び 審 判 手 続 において 従 来 通 り 特 許 法 実 施 細 則 及 び 審 査 指 南 の 規 定 に 基 づき 出 願 審 査 及 び 審 判 手 続 が 行 われるところ 今 回 の 最 高 人 民 法 院 の 判 断 は 浸 透 す るまでに 幾 分 時 間 がかかる 一 方 で 今 後 これらの 行 政 手 続 における 判 断 にも 一 定 の 影 響 力 を 示 し 特 許 審 査 または 審 判 事 件 における 審 査 官 または 審 判 廷 の 判 断 にも 影 響 を 与 えるだ ろうと 予 測 される 9

5. 終 わりに 中 国 の 特 許 審 査 において これまで 補 正 に 関 する 新 規 事 項 追 加 の 判 断 は 非 常 に 厳 格 に 行 われてきた 補 正 の 範 囲 は 当 初 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 内 容 または 当 初 明 細 書 及 び 請 求 項 の 記 載 内 容 から 直 接 的 一 義 的 に 導 き 出 せる 内 容 に 限 られるという 判 断 基 準 が 適 用 さ れていた さらに 実 務 上 補 正 の 範 囲 は 当 初 明 細 書 または 請 求 項 の 記 載 文 言 まで 厳 しく 制 限 されていた 事 例 が 数 多 くあり 出 願 人 が 出 願 後 当 初 の 出 願 書 類 にあった 記 載 上 の 不 備 を 正 し 補 正 によって 出 願 書 類 のさらなる 正 確 さを 求 める 努 力 の 余 地 が 狭 く 制 限 されていた 本 文 で 紹 介 した 最 高 人 民 法 院 が 示 した 新 しい 判 断 基 準 は 従 来 の 硬 直 した 行 政 判 断 に 一 風 を 吹 き 込 み 今 後 の 審 査 及 び 審 判 手 続 において 補 正 の 制 限 についてより 柔 軟 な 方 向 へ 運 用 が 切 り 替 わることが 期 待 できる 参 考 資 料 及 び 注 釈 1) 中 国 特 許 法 ( 専 利 法 ) 第 33 条 出 願 人 は 出 願 書 類 に 対 して 補 正 を 行 うことができるが 発 明 特 許 及 び 実 用 新 案 にかか る 出 願 書 類 に 対 する 補 正 は 元 の 明 細 書 及 び 請 求 項 に 記 載 した 範 囲 を 超 えてはならず 意 匠 に 対 する 出 願 書 類 の 補 正 は 元 の 画 像 又 は 写 真 で 表 示 した 範 囲 を 超 えてはならない 2) 中 国 特 許 法 ( 専 利 法 ) 実 施 細 則 第 53 条 専 利 法 第 三 十 八 条 の 規 定 に 基 づき 発 明 特 許 出 願 が 実 体 審 査 を 経 て 拒 絶 されなければな らない 状 況 とは 以 下 のものを 指 す (1) 出 願 が 専 利 法 第 五 条 第 二 十 五 条 に 規 定 される 状 況 に 属 し 或 いは 専 利 法 第 九 条 の 規 定 によって 特 許 権 を 付 与 できない 場 合 (2) 出 願 が 専 利 法 第 二 条 第 2 項 第 二 十 条 第 1 項 第 二 十 二 条 第 二 十 六 条 第 3 項 第 4 項 第 5 項 第 三 十 一 条 第 1 項 或 いは 本 細 則 第 二 十 条 第 2 項 の 規 定 に 合 致 しない 場 合 (3) 出 願 の 補 正 が 専 利 法 第 三 十 三 条 の 規 定 に 合 致 せず 或 いは 分 割 出 願 が 本 細 則 第 四 十 三 条 第 1 項 の 規 定 に 合 致 しない 場 合 3) 中 国 特 許 法 ( 専 利 法 ) 実 施 細 則 第 65 条 専 利 法 第 四 十 五 条 の 規 定 に 基 づいて 特 許 権 の 無 効 又 は 一 部 無 効 の 宣 告 を 請 求 する 場 合 は 専 利 復 審 委 員 会 に 特 許 権 無 効 宣 告 請 求 書 及 び 必 要 な 証 拠 一 式 二 部 を 提 出 しなければな らない 無 効 宣 告 請 求 書 は 提 出 する 全 ての 証 拠 に 合 わせて 無 効 宣 告 請 求 の 理 由 を 具 体 的 に 説 明 し また 各 理 由 の 根 拠 となる 証 拠 を 指 摘 しなければならない 前 項 に 言 う 無 効 宣 告 請 求 の 理 由 とは 特 許 が 付 与 された 発 明 創 造 が 専 利 法 第 二 条 第 二 十 条 第 1 項 第 二 十 二 条 第 二 十 三 条 第 二 十 六 条 第 3 項 第 4 項 第 二 十 七 条 第 2 項 第 三 十 三 条 又 は 本 細 則 第 二 十 条 第 2 項 第 四 十 三 条 第 1 項 の 規 定 に 合 致 しないか 若 し くは 専 利 法 第 五 条 第 二 十 五 条 の 規 定 に 該 当 するか 或 いは 専 利 法 第 九 条 の 規 定 に 基 づい 10

て 特 許 権 を 付 与 できないことを 指 す 4) 審 査 指 南 (2010 版 ) 第 2 部 第 8 章 5.2.3 認 められない 補 正 原 則 として 明 細 書 ( 及 び 図 面 )と 請 求 項 について 特 許 法 ( 専 利 法 ) 第 33 条 の 規 定 に 適 合 しない 補 正 はすべて 認 められない 具 体 的 に 出 願 内 容 の 一 部 の 追 加 変 更 及 び/または 削 除 をすることにより 当 業 者 が みた 情 報 が 当 初 出 願 に 記 載 された 情 報 とは 異 なり かつ 当 初 出 願 に 記 載 された 情 報 から 直 接 的 でかつ 疑 うことなく 確 定 できるものではない 場 合 このような 補 正 は 認 められない ここでいう 出 願 内 容 とは 当 初 の 明 細 書 ( 及 び 図 面 )と 請 求 の 範 囲 に 記 載 された 内 容 を 指 し 優 先 権 書 類 の 内 容 は 含 めない 5) 復 審 委 員 会 中 国 において 復 審 委 員 会 は 国 家 知 識 産 権 局 によって 設 立 された 組 織 であり 日 本 国 特 許 庁 審 判 部 に 相 当 する 拒 絶 査 定 不 服 審 判 及 び 無 効 審 判 の 事 件 を 扱 い 請 求 を 審 理 し 決 定 または 審 決 を 下 す 6) 復 審 委 員 会 2008 年 4 月 15 日 第 11291 号 決 定 7) 北 京 市 第 一 中 級 人 民 法 院 2008 年 12 月 20 日 (2008) 一 中 行 初 字 第 1030 号 行 政 判 決 書 8) 北 京 市 高 級 人 民 法 院 2009 年 10 月 13 日 (2009) 高 行 終 字 第 327 号 行 政 判 決 書 9) 最 高 人 民 法 院 2011 年 12 月 25 日 (2010) 知 行 字 第 53 号 行 政 裁 定 書 日 本 実 務 者 からのコメント 本 稿 は 中 国 における 補 正 の 適 否 問 題 についての 最 高 人 民 法 院 の 判 決 を 取 り 上 げたもの である これまで 厳 格 解 釈 がゆきすぎの 傾 向 があった 中 国 知 財 実 務 上 の 新 規 事 項 追 加 の 概 念 を 是 正 したものと 評 価 できる この 最 高 人 民 法 院 判 決 が 出 るまでは 明 細 書 の 文 言 通 り 図 面 の 表 現 通 りの 範 囲 を 逸 脱 していると 認 定 されれば 途 端 に 新 規 事 項 であると 認 定 されていた 傾 向 があったことは 否 めない いわば 実 質 面 よりはむしろ 表 面 的 な 表 現 の 相 違 で 成 否 が 決 まってしまうとい う 極 めて 形 式 主 義 的 な 弊 に 陥 っていた 面 がある 今 次 判 決 では まず 規 範 として 新 規 事 項 にならない 範 囲 として (1) 当 初 明 細 書 図 面 請 求 項 が 文 言 図 面 で 明 確 に 開 示 した 内 容 (2) 当 業 者 が 当 初 明 細 書 図 面 及 び 請 求 項 を 総 合 して 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 を 定 立 した 問 題 は(2)の 総 合 して 直 接 的 明 確 的 に 導 き 出 せる 内 容 とは 何 であ るか ということであるが これについては 文 字 通 り 単 なる 文 言 を 超 えた 総 合 判 断 をす る という 意 味 としている この 総 合 判 断 には 当 業 者 ( 北 京 市 中 級 人 民 法 院 はこ の 定 義 として 当 該 技 術 分 野 において 専 門 知 識 を 持 つ 普 通 の 技 術 者 を 当 てている)の 知 11

識 レベル 当 該 技 術 分 野 の 通 常 のレベルという 変 動 要 素 が 入 り 込 む 余 地 があり この 点 で 硬 直 的 な 判 断 に 陥 る 弊 を 除 き 柔 軟 な 判 断 ができる 余 地 を 残 していると 考 えられる ここに 形 式 主 義 を 脱 して 実 情 を 勘 案 する 姿 勢 の 一 端 がうかがえる 本 事 件 では 上 記 規 範 のあて はめにおいて 半 導 体 記 憶 装 置 を 記 憶 装 置 に 換 えた 補 正 につき 本 件 明 細 書 等 の 記 載 を 総 合 すれば いわゆる 当 業 者 であれば 半 導 体 記 憶 装 置 を 容 易 に 他 の 種 類 の 記 憶 装 置 に 置 換 できるという 点 を 根 拠 にして 半 導 体 記 憶 装 置 を 記 憶 装 置 に 換 え た 補 正 は 新 規 事 項 の 導 入 には 当 たらない という 判 断 構 造 を 採 用 している 一 方 日 本 であれば 願 書 に 最 初 に 添 付 した 明 細 書 特 許 請 求 の 範 囲 又 は 図 面 ( ) に 記 載 した 事 項 の 範 囲 内 ( 本 稿 で 当 初 明 細 書 等 記 載 事 項 内 という )であるべきと し 当 初 明 細 書 等 記 載 事 項 内 とは 当 業 者 によって 当 初 明 細 書 のすべての 記 載 を 総 合 することにより 導 かれる 技 術 的 事 項 である( 参 考 : 知 財 高 判 平 20.5.30( 平 成 18 年 ( 行 ケ) 第 10563 号 審 決 取 消 請 求 事 件 ) ソルダーレジスト 大 合 議 判 決 )としている これを 受 ける 形 で 審 査 基 準 では 新 規 事 項 を 含 まないとして 許 容 されるものに (A) 当 初 明 細 書 等 に 明 示 的 に 記 載 された 事 項 (B)( 明 示 的 な 記 載 がなくても) 当 初 明 細 書 等 の 記 載 から 自 明 な 事 項 を 挙 げている さらに (B)といえるためには これに 接 した 当 業 者 であれば 出 願 時 の 技 術 常 識 に 照 らして その 意 味 であることが 明 らかであって その 事 項 がそこに 記 載 さ れているのと 同 然 であると 理 解 する 事 項 でなければならない としている 記 載 されて いるのと 同 然 であると 理 解 する としている 点 が( 中 国 に 比 べて)より 限 定 的 であると 理 解 できる 反 面 日 本 における 当 業 者 の 定 義 ( その 発 明 の 属 する 技 術 の 分 野 における 通 常 の 知 識 を 有 する 者 特 許 法 第 29 条 第 2 項 )が 中 国 のそれとは 微 妙 に 異 なっている 点 にも 留 意 すべきと 考 える 実 務 的 には それこそ 自 明 な 話 とされるかもしれないが そもそも 新 規 事 項 か 否 かが 争 点 とならないような 明 細 書 の 開 示 表 現 を 考 える 諸 事 情 によりどうしようもなく 上 記 争 点 で 主 張 しなければならないときには その 分 野 の 通 常 の 技 術 者 であれば 争 点 のものも 記 載 内 容 から 想 起 できたはずであるとの 主 張 をし これを 裏 付 ける 証 拠 として たとえば 流 通 している 百 科 事 典 (できれば 複 数 の) 権 威 ある 専 門 家 による 証 言 学 術 論 文 業 界 誌 記 事 等 をなるべく 広 く 集 める というようなことが 必 要 となるだろう 12

原 著 者 紹 介 呉 学 鋒 中 華 人 民 共 和 国 弁 理 士 北 京 三 友 知 識 産 権 代 理 有 限 公 司 パートナー ホームページ http://www.san-you.com/jp/index.asp 日 本 側 監 修 コメント 担 当 者 紹 介 友 野 英 三 日 本 国 弁 理 士 ( 特 定 侵 害 訴 訟 代 理 業 務 付 記 ) 友 野 国 際 特 許 事 務 所 所 長 ホームページ http://www.tomono.org 著 書 : 合 衆 国 特 許 クレーム 作 成 の 実 務 他 多 数 13