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前 期 若 冲 と 江 戸 絵 画 の 世 界 1 月 28 日 ( 金 )~ 3 月 13 日 ( 日 ) 2 若 冲 と 自 然 へのまなざし ぜんぶ 見 つかるかな? 京 都 錦 小 路 の 青 物 問 屋 の 主 人 だった 若 冲 糸 瓜 もよく 目 にしていたのでしょう 糸 瓜 の 実 の 模 様 や 花 や 葉 蔓 にいたるまで 細 部 までこだわ って 描 いています さらに 糸 瓜 に 群 がる 虫 たちに もご 注 目 11 種 の 生 物 が 描 かれていますが す ぐには 見 つけられません 若 冲 からの 挑 戦 状 だ と 思 って 探 してみてください どの 生 き 物 も 丁 寧 に 精 密 に 描 かれていて 触 角 や 足 に 生 える 細 か いギザギザまで 見 るのに 虫 眼 鏡 が 必 要 なほど 伊 藤 若 冲 糸 瓜 群 虫 図 ( 部 分 ) 驚 くべき 観 察 力 です 普 段 私 たちはものをちゃん と 見 ているようで 見 ていないのだということにも 気 付 かせてくれます 代 表 作 動 植 綵 絵 のうち 池 辺 群 虫 図 にも 同 じポーズの 虫 が 登 場 していますが この 作 品 はそれより 前 に 描 いたと 考 えられています 江 戸 絵 画 の 精 華 リアルな 絵 とは? 江 戸 時 代 の 中 期 以 降 は リアル が 意 識 された 時 代 西 洋 から 医 学 や 測 量 術 などがもたらされ 人 々は 実 物 に 則 したものの 考 え 方 や 見 方 に 目 覚 めます 絵 画 の 分 野 もこの 流 れを 受 け 今 では 当 たり 前 に 思 えますが 対 象 を 見 て 描 くスタイルが 流 行 ります 円 山 応 挙 が 一 世 を 風 靡 した 理 由 も ものを 見 て 描 く 写 生 を 重 視 したからにほかありません 動 物 の 毛 描 きを 得 意 とした 狙 仙 も 写 生 派 の 一 人 猿 の 毛 の 質 感 をリアルに 描 こうとしています 森 狙 仙 猿 図 ( 部 分 ) 親 猿 の 真 剣 な 表 情 も 微 笑 ましく 優 しい 情 愛 が 伝 わってくるようです また 文 人 画 では 絵 師 の 心 の 風 景 が 描 かれているといいます つまり リアル も 人 それぞれ 何 をもってリアルとするかは 絵 師 によっても 異 なっています 表 面 的 なものだけでなく 絵 に 込 めた 絵 師 の 心 もリアルに 感 じ 取 りたいものです
富 嶽 三 十 六 景 や 北 斎 漫 画 でよく 知 られている 浮 世 絵 師 葛 飾 北 斎 最 近 は 伊 藤 若 冲 という 強 力 なライバル?も 出 現 してきましたが 北 斎 ほど 日 本 人 画 家 で 海 外 でも 知 られている 存 在 はないでしょう さて ここでは 五 人 の 美 女 が 登 場 する 作 品 をじっくりご 覧 下 さい 北 斎 は 一 人 一 人 の 女 性 をうまく 描 き 分 けています 例 えば 煙 管 を もった 女 性 1には 眉 がありません 実 は 眉 を 削 っているのは 既 婚 者 の 証 一 方 赤 い 絞 りの 髪 飾 りを 付 けているのは 若 い 娘 2 こ れは 若 さを 印 象 づけるための 必 須 アイテム さらに 髪 を 結 うための 櫛 をさしているのは 髪 結 い3です 肌 身 離 さず 仕 事 道 具 を 持 ち 歩 いているようです 反 物 を 持 つ 二 人 は 呉 服 店 の 使 いか 胸 元 を 広 めに 開 けている 方 は 娘 姉 とも 考 えられます このように 立 場 も 年 齢 も 異 なる 五 人 の 女 性 を 見 事 に 描 き 分 ける 北 斎 さすがは 世 界 の 巨 匠 です こうした 美 人 画 に 限 らず 名 所 絵 や 祭 礼 図 などの 風 俗 画 は 当 時 の 流 行 りのファッションや 髪 型 遊 び 等 々 人 々の 関 心 事 暮 らしぶ りを 教 えてくれる 有 難 いものなのです 前 期 若 冲 と 江 戸 絵 画 の 世 界 1 月 28 日 ( 金 )~ 3 月 13 日 ( 日 ) 浮 世 の 諸 相 - 風 俗 画 が 伝 えるもの - 北 斎 女 性 を 描 き 分 ける! キセル 1 3 2 3 特 集 展 示 茶 の 湯 とかざり 愛 でる 喜 び 触 れる 楽 しみ 茶 の 湯 の 道 具 をはじめ 工 芸 品 の 多 くは 鑑 賞 するだ けではなく 使 い 触 れる 愉 しみもあります ここでは 高 さ5cmに 満 たない 様 々な 形 の 容 れ 物 にご 注 目 ください これらは 香 合 と 呼 ばれるお 香 を 入 れる 蓋 付 きの 容 器 で で お 茶 の 席 で 用 いる 器 の 一 つです 香 合 には 陶 磁 器 や 漆 器 などがありますが サイズは 小 さくとも 使 う 者 の 五 感 を 刺 激 する 魅 力 が 凝 縮 されています 手 の 中 にすっぽり 収 まるこうした 小 さな 美 術 品 は 時 に 厳 しい 眼 でモノを 見 極 める 彼 らの 心 を 和 ませ 一 層 蒐 集 の 世 界 へと 引 き 込 んでいったことでしょう 織 部 菊 兜 香 合 葛 飾 北 斎 五 美 人 図 ( 部 分 ) 織 部 分 銅 形 香 合 志 野 宝 珠 形 香 合