総論

就 職 氷 河 期 世 代 の 老 後 に 関 するシミュレーション 総 合 研 究 開 発 機 構 リサーチフェロー 辻 明 子 就 職 氷 河 期 と 呼 ばれる 期 に 初 職 の 就 職 活 動 を 行 った 人 々たちの き 方 に 関 する 変 化 の 特 徴 として 非 規 雇 用 と 家 事 も 通 学 も 行 っていない 無 業 の 割 合 の 増 加 がある こうした 非 規 雇 用 や 無 業 は 所 得 も 少 なく また 老 後 生 活 資 金 への 準 備 公 的 年 金 への 加 入 と 納 付 も 十 分 に 行 えていない これは 潜 在 的 老 後 生 活 困 窮 の 割 合 が 増 加 し ていると 考 えることができる そこでここでは 彼 らが 生 活 困 窮 となり 生 活 保 護 というセーフティーネットの 最 後 の 砦 に 頼 るとどのぐらいの 会 的 扶 養 負 担 生 活 保 護 受 給 額 総 額 がかかるのか 検 討 する こととした 就 職 氷 河 期 の 人 々について き 方 の 変 化 非 規 の 増 加 と 家 事 通 学 をしていない 無 業 の 増 加 によって 生 じる 潜 在 的 な 生 活 保 護 受 給 は 77.4 万 人 それが 具 体 化 した 場 合 に 必 要 な 追 加 的 な 予 算 額 累 計 約 17.7 兆 円 19.3 兆 円 となる 結 果 が 導 き 出 され これが 現 実 となれば 会 的 にも 深 刻 な 影 響 を 与 える 規 模 であることが 予 想 される 1. 推 計 方 法 の 考 え 方 まず 本 推 計 における 就 職 氷 河 期 の 人 々の 同 定 と 就 職 氷 河 期 の き 方 への 影 響 の 考 え 方 は 次 のとおりである 就 職 氷 河 期 は 1993 年 頃 から 10 年 程 度 と 考 えられ この 期 に 学 卒 初 職 への 就 職 活 動 期 が 重 なった 人 々が 就 職 氷 河 期 世 代 といえる この 期 に 学 卒 後 初 職 を 得 るための 活 動 を 行 った 人 々の 生 まれ 年 を 考 えると 高 卒 の 場 合 1975 年 ごろから 1985 年 ごろに 生 ま れた 人 々 大 卒 の 場 合 1970 年 ごろから 1980 年 ごろに 生 まれた 人 々が 就 職 氷 河 期 世 代 で あろう しかしながら 本 推 計 においては データ 制 約 から 2002 年 就 業 構 造 基 本 調 査 において 25-34 歳 の 人 々を 本 推 計 では 就 職 氷 河 期 の 集 団 とした 就 職 氷 河 期 前 と 就 職 氷 河 期 世 代 の き 方 の 違 いを 比 較 する 場 合 5 年 おきに 実 施 される 総 務 省 統 計 局 就 業 構 造 基 本 調 査 のデータが 有 用 である *1 おおよそ 1968 年 1977 年 出 生 コーホートを 就 職 氷 河 期 コーホ ートとして 取 り 扱 うということである - 114 -

就 職 氷 河 期 の き 方 の 変 化 とは 具 体 的 には 2002 年 に 25-34 歳 であった 人 々と 1992 年 に 25-34 歳 であった 人 々の 雇 用 形 態 等 の 割 合 の 差 分 を 見 て これを 就 職 氷 河 期 の 人 々 の き 方 の 変 化 ととらえるのである この 未 曾 有 の 就 職 難 の 影 響 で 増 加 した 非 規 雇 用 や 無 業 がどのように 生 涯 賃 金 年 金 受 給 を 得 て 生 を 終 えていくのか そして 最 低 生 活 水 準 との 差 分 の 大 きさは 累 計 でど の 程 度 なのか 見 るのかが この 作 業 のねらいである 2. 具 体 的 な 作 業 手 順 と 結 果 作 業 は 次 の 3 つの 段 階 に 分 かれる 第 段 階 : 雇 用 形 態 別 生 涯 賃 金 と 老 後 最 低 生 活 資 金 等 の 計 算 賃 金 センサスによる き 方 別 賃 金 と 生 活 保 護 受 給 費 を 用 いた 最 低 生 活 費 の 算 出 平 均 余 命 別 の 2 つの 仮 定 雇 用 形 態 別 生 涯 老 後 生 活 費 の 推 計 第 二 段 階 : 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 設 定 作 業 就 業 構 造 基 本 調 査 による き 方 変 化 算 出 老 後 生 活 保 護 リスクの 調 整 女 子 配 偶 関 係 と 年 金 加 入 状 況 による 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 の 設 定 第 三 段 階 : 潜 在 的 な 生 活 保 護 受 給 と それが 具 体 化 した 場 合 に 必 要 な 追 加 的 な 予 算 額 推 計 作 業 1 第 段 階 : 雇 用 形 態 別 生 涯 賃 金 と 老 後 最 低 生 活 資 金 等 の 計 算 賃 金 センサスによる き 方 別 賃 金 と 生 活 保 護 受 給 費 を 用 いた 最 低 生 活 費 の 算 出 賃 金 を 平 成 18 年 厚 生 省 統 計 情 報 部 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 のデータを 用 いて 性 年 齢 5 歳 階 級 別 雇 用 形 態 別 にプロットしたものが 図 表 1 である 雇 用 形 態 別 とは 具 体 的 には である この 4 つの き 方 別 にどのようなここでは ここで 描 かれた 賃 金 カーブを 生 涯 賃 金 カ ーブの 代 替 とすることとした つづいて 生 活 保 護 受 給 費 を 用 いた 老 後 最 低 生 活 費 年 の 算 出 を 行 った 図 表 2-115 -

図 表 1 き 方 別 賃 金 カーブ 主 要 部 分 のみ 800 700 600 女 年 500 収 400 万 円 300 200 100 0 17 歳 18 19 20 24 25 29 30 34 35 39 40 44 45 49 50 54 55 59 60 64 65 歳 800 700 600 男 年 500 収 400 万 円 300 200 100 0 17 歳 18 19 20 24 25 29 30 34 35 39 40 44 45 49 50 54 55 59 60 64 65 歳 資 : 厚 生 省 統 計 情 報 部 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 2006 年 図 表 2 生 活 保 護 の 生 活 扶 助 及 び 住 宅 扶 助 費 1 級 -1 円 居 宅 第 1 類 居 宅 第 2 類 住 宅 総 額 年 60-69 歳 1 人 1 級 地 -1 36,100 43,430 13,000 92,530 1,110,360 資 : 生 活 保 護 手 帳 編 集 委 会 生 活 保 護 手 帳 2007 年 度 版 - 116 -

平 均 余 命 別 の 2 つの 仮 定 の 確 認 老 後 年 数 を 算 出 するため まず 65 歳 の 平 均 余 命 データを 男 女 別 に 用 いた このときに 1. 寿 命 が 将 来 にわたって 平 成 18 年 2006 年 水 準 のままの 場 合 と 2. 寿 命 が 将 来 伸 びる 場 合 の 2 つの 平 均 余 命 データを 男 女 別 で 用 意 した これはわが 国 の 平 均 余 命 の 伸 びの 可 能 性 を 考 慮 するためである 現 在 の 水 準 : 厚 生 省 H18 年 簡 易 生 命 表 より 65 歳 の 平 均 余 命 男 18.5 年 女 23.4 年 将 来 の 伸 びた 寿 命 水 準 : 国 立 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 将 来 推 計 人 口 より 2025 年 の 65 歳 の 平 均 余 命 男 20.3 年 女 25.4 年 雇 用 形 態 別 生 涯 老 後 生 活 費 の 推 計 続 いて 先 ほど 賃 金 構 造 基 本 調 査 で 見 た 4 つの き 方 に 対 して 会 保 険 の 加 入 状 況 を 考 慮 に 入 れた 8 種 類 のパタンAD2を 設 定 した 図 表 3 図 表 3 き 方 及 び 会 保 険 別 の 8 種 のパタン き 方 変 化 の 有 無 加 入 年 金 加 入 健 康 保 険 年 金 加 入 納 付 状 保 険 加 入 状 況 況 A 無 し 生 同 じ 厚 生 年 金 健 康 保 険 加 入 加 入 B1 無 し 生 同 じ 厚 生 年 金 健 康 保 険 加 入 加 入 B2 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 加 入 加 入 B3 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 未 加 入 未 納 未 加 入 C1 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 加 入 加 入 C2 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 未 加 入 未 納 未 加 入 D1 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 加 入 未 加 入 D2 無 し 生 同 じ 国 民 年 金 国 民 健 康 保 険 未 加 入 未 納 未 加 入 パタン 別 A-D2 までの 8 種 の 性 別 年 齢 別 5 歳 階 級 別 就 業 形 態 別 各 種 年 保 険 個 人 企 業 負 担 分 を 算 出 し 老 齢 年 金 を 計 算 受 給 額 計 算 した 厚 生 年 金 受 給 額 については 単 身 として 想 定 厚 生 年 金 の 配 偶 加 算 抜 き 年 金 乗 率 5.769 物 価 スライド 勘 案 無 し 60 歳 まで 勤 務 とした 国 民 年 金 受 給 額 については H18 年 固 定 年 792,100 円 とした 上 記 の 老 齢 年 金 を 用 いて 余 命 の 2 パタン 別 に 生 涯 年 金 受 給 額 うち 国 庫 負 担 分 生 涯 老 後 資 金 の 計 算 等 を 行 った なお 国 民 年 金 と 国 民 健 康 保 険 の 保 険 は 次 の 通 りとした 国 民 年 金 の 保 険 はH18 年 固 定 月 13,860 円 国 民 健 康 保 険 の 保 険 は 40 歳 未 満 は 収 入 の 7.5% 40 歳 上 は 8.8% その 結 果 が 図 表 4 および 図 表 5 である 例 えば 男 性 パタンの A 厚 生 年 金 加 入 の 場 合 は 年 平 均 で 老 齢 年 金 が 229.9 万 円 うち 老 齢 基 礎 年 金 は 79.2 万 円 受 給 することになる 65 歳 降 の 老 後 の 老 後 生 涯 資 金 が 平 成 18 年 余 命 ベースだと 4241 万 円 平 成 37 年 余 命 ベースだと 4664 万 円 になる 結 果 となった 男 性 で 厚 生 年 金 加 入 パタン B2の 場 合 は 年 平 均 で 老 齢 年 - 117 -

図 表 4 所 得 生 涯 老 後 資 金 老 後 生 涯 生 活 保 護 き 方 年 金 計 算 用 生 涯 所 得 生 涯 の 平 均 報 酬 額 老 齢 厚 生 年 金 A 老 齢 基 礎 年 金 B 老 齢 年 金 総 額 =A+B 健 康 保 険 雇 用 保 険 健 康 保 険 雇 用 保 険 児 童 手 当 会 保 険 会 保 険 会 保 険 生 活 保 護 1 級 -1 単 身 住 宅 扶 助 有 り 個 人 個 人 個 人 会 会 会 会 個 人 会 個 人 月 年 年 年 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 生 涯 年 年 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 千 円 対 所 得 割 合 千 円 千 円 男 A 261,173 453 1,507 792 2,299 11,699 18,658 2,089 11,699 18,658 4,179 235 32,447 34,771 12.4 1,110 1,188 B1 154,718 269 893 792 1,685 6,875 11,053 1,238 6,875 11,053 2,475 139 19,166 20,543 12.4 1,110 574 B2 154,718 269 792 792 12,727 7,318 1,238 0 0 2,475 139 21,283 2,615 13.8 1,110-318 B3 154,718 269 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 C1 59,502 103 792 792 4,899 7,318 476 0 0 952 54 12,693 1,006 21.3 1,110-318 C2 59,502 103 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 D1 127,914 222 792 792 10,549 7,318 1,023 0 0 2,047 115 18,890 2,162 14.8 1,110-318 D2 127,914 222 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 女 A 181,000 314 1,044 792 1,836 8,042 12,931 1,448 8,042 12,931 2,896 163 22,421 24,032 12.4 1,110 726 B1 107,857 187 622 792 1,414 4,758 7,705 863 4,758 7,705 1,726 97 13,326 14,286 12.4 1,110 304 B2 107,857 187 792 792 8,800 7,318 863 0 0 1,726 97 16,981 1,823 15.7 1,110-318 B3 107,857 187 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 C1 51,993 90 792 792 4,268 7,318 416 0 0 832 47 12,002 879 23.1 1,110-318 C2 51,993 90 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 D1 54,452 95 792 792 4,427 7,318 436 0 0 871 49 12,181 920 22.4 1,110-318 D2 54,452 95 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 1,110-1,110 生 活 保 護 と 年 金 の 差 分 65 歳 の 平 均 余 命 平 成 18 年 簡 易 生 命 表 H18 年 2006 年 65 歳 平 均 余 命 ベース H37 年 2025 年 65 歳 平 均 余 命 ベース 差 分 年 金 受 給 額 年 金 うち 公 的 負 担 5 割 B 個 人 会 厚 生 年 金 D = A-B-C-D 65 歳 の 平 均 余 命 平 成 37 年 将 来 生 命 表 年 金 受 給 額 年 金 うち 公 的 負 担 5 割 B 個 人 A C A C 年 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 年 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 万 円 会 厚 生 年 金 D 差 分 = A-B-C-D 老 後 生 涯 生 活 保 護 1 級 -1 単 身 住 宅 扶 助 有 り H18 余 命 ベース H37 余 命 ベース 男 A 18.5 4,241 731 1,866 1,170 475 20.3 4,664 804 1,866 1,866 129 0 731 4,241 0 804 4,664 B1 18.5 3,108 731 1,105 687 585 20.3 3,418 804 1,105 1,105 404 0 731 3,108 0 804 3,418 B2 18.5 1,461 731 732 0 0 20.3 1,607 804 732 0 72 587 1,318 2,049 646 1,449 2,253 B3 18.5 0 0 0 0 0 20.3 0 0 0 0 0 2,049 2,049 2,049 2,253 2,253 2,253 C1 18.5 1,461 731 732 0 0 20.3 1,607 804 732 0 72 587 1,318 2,049 646 1,449 2,253 C2 18.5 0 0 0 0 0 20.3 0 0 0 0 0 2,049 2,049 2,049 2,253 2,253 2,253 D1 18.5 1,461 731 732 0 0 20.3 1,607 804 732 0 72 587 1,318 2,049 646 1,449 2,253 D2 18.5 0 0 0 0 0 20.3 0 0 0 0 0 2,049 2,049 2,049 2,253 2,253 2,253 女 A 23.4 4,304 928 1,293 804 1,279 25.4 4,670 1,007 1,293 1,293 1,076 0 928 4,304 0 1,007 4,670 B1 23.4 3,315 928 771 476 1,140 25.4 3,597 1,007 771 771 1,048 0 928 3,315 0 1,007 3,597 B2 23.4 1,857 928 732 0 197 25.4 2,014 1,007 732 0 275 746 1,674 2,603 809 1,816 2,824 B3 23.4 0 0 0 0 0 25.4 0 0 0 0 0 2,603 2,603 2,603 2,824 2,824 2,824 C1 23.4 1,857 928 732 0 197 25.4 2,014 1,007 732 0 275 746 1,674 2,603 809 1,816 2,824 C2 23.4 0 0 0 0 0 25.4 0 0 0 0 0 2,603 2,603 2,603 2,824 2,824 2,824 D1 23.4 1,857 928 732 0 197 25.4 2,014 1,007 732 0 275 746 1,674 2,603 809 1,816 2,824 D2 23.4 0 0 0 0 0 25.4 0 0 0 0 0 2,603 2,603 2,603 2,824 2,824 2,824 生 涯 老 後 公 的 負 担 年 金 と 生 活 保 護 生 涯 老 後 資 金 老 後 生 涯 生 活 保 護 1 級 -2 単 身 住 宅 扶 助 有 り 生 涯 老 後 公 的 負 担 年 金 と 生 活 保 護 生 涯 老 後 資 金 - 118 -

- 119 - 図 表 5 老 後 生 涯 生 活 費 等 結 果 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 A B1 B2 B3 C1 C2 D1 D2 女 A B1 B2 B3 C1 C2 D1 D2 老 後 生 涯 生 活 保 護 1 級 -1 単 身 住 宅 扶 助 有 り 年 金 受 給 額 男 女 寿 命 H18 老 後 生 活 費 万 円 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 A B1 B2 B3 C1 C2 D1 D2 女 A B1 B2 B3 C1 C2 D1 D2 老 後 生 涯 生 活 保 護 1 級 -2 単 身 住 宅 扶 助 有 り 年 金 受 給 額 男 女 寿 命 2025 老 後 生 活 費 万 円

金 が 168.5 万 円 うち 老 齢 基 礎 年 金 は 79.2 万 円 受 給 することになる 65 歳 降 の 老 後 の 老 後 生 涯 資 金 は 平 成 18 年 余 命 ベースだと 3108 万 円 平 成 37 年 余 命 ベースだと 3418 万 円 になる これ の き 方 および 年 金 加 入 の 組 み 合 わせパタン B3 から D2ではいずれの 場 合 も 公 的 な 老 齢 年 金 による 受 給 金 額 は 生 活 保 護 費 を 下 回 る 公 的 年 金 に 加 入 しない 場 合 具 体 的 には 男 性 で 国 民 年 金 未 加 入 未 納 パタン B3などでは 公 的 老 齢 年 金 はなく 生 活 保 護 費 による 111 万 円 が 年 額 の 老 後 の 生 活 費 となり 65 歳 降 にかかる 老 後 生 涯 生 活 保 護 費 は 平 成 18 年 余 命 ベースだ と 2049 万 円 平 成 37 年 余 命 ベースだと 2253 万 円 になる 老 後 生 活 費 に 対 する 公 的 負 担 老 齢 年 金 負 担 分 と 生 活 保 護 費 について 着 目 するならば 生 涯 の 公 的 負 担 は 平 成 18 年 余 命 ベースで 見 ると 男 性 の 場 合 パ タン Aおよび 厚 生 年 金 加 入 パタン B1は 731 万 円 となる これは 老 齢 厚 生 年 金 のうち 老 齢 基 礎 年 金 の 国 庫 負 担 分 である 方 国 民 年 金 加 入 パタン B2は 1318 万 円 でその 内 訳 は 731 万 円 が 老 齢 基 礎 年 金 587 万 円 が 生 活 保 護 費 となる 国 民 年 金 未 加 入 未 納 パタン B3 は 2049 万 円 で 全 額 が 生 活 保 護 費 である このように 老 齢 年 金 と 高 齢 期 の 生 活 保 護 受 給 額 から 見 た 老 後 生 活 費 に 対 する 公 的 負 担 を 比 べると 厚 生 年 金 加 入 のケースがもっとも 負 担 が 小 さく その 次 に 国 民 年 金 加 入 のケ ースが 続 く 国 民 年 金 に 未 加 入 未 納 の 場 合 が 公 的 な 負 担 が 最 も 重 くなる 2 第 二 段 階 : 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 設 定 作 業 就 業 構 造 基 本 調 査 による き 方 変 化 算 出 就 業 構 造 基 本 調 査 の 平 成 14 年 2002 年 と 平 成 4 年 1992 年 のデータを 用 いて 2529 歳 及 び 3034 歳 における き 方 を 比 較 した 図 表 6 変 化 のうち 規 の 雇 用 の 増 加 分 と 無 業 のうち 家 事 通 学 を 行 っていない その 他 *2 の 増 加 分 を 就 職 氷 河 期 の き 方 変 化 分 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 : 調 整 前 とした 図 表 6 就 職 氷 河 期 世 代 とそれ 前 の 比 較 25-29 歳 30-34 歳 特 定 年 齢 階 級 の き 方 構 成 比 % H4からH14の の 各 年 齢 階 級 にお ける 構 成 比 %の 変 化 =H4-H14 2529 歳 3034 歳 2529 歳 3034 歳 男 女 男 女 男 女 男 女 H14 H4 H14 H4 H14 H4 H14 H4 15 歳 上 総 人 口 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 - - - - 自 営 業 4.3 5.6 2.5 4.6 6.6 8.8 4.6 9.7-1.3-2.1-2.2-5.1 会 役 1.2 1.9 0.3 0.5 2.9 3.7 0.7 1.1-0.6-0.2-0.7-0.4 規 職 72.9 83.4 41.6 43.7 76.4 81.9 28.2 27.2-10.5-2.2-5.5 0.9 規 11.0 4.4 24.2 13.3 6.7 2.5 23.1 15.6 6.6 10.9 4.1 7.5 無 業 10.3 4.7 31.3 37.9 7.1 3.0 43.2 46.4 5.6-6.6 4.1-3.1 家 事 をしている 0.5 0.1 25.6 34.6 0.3 0.1 39.7 44.6 0.4-9.1 0.3-5.0 通 学 している 2.0 1.4 1.1 0.6 0.5 0.2 0.4 0.1 0.7 0.6 0.3 0.3 その 他 7.8 3.2 4.5 2.7 6.3 2.7 3.1 1.6 4.6 1.8 3.5 1.5 資 : 総 務 省 統 計 局 就 業 構 造 基 本 調 査 平 成 4 年 および 平 成 14 年 - 120 -

このうち 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 となるリスクの 高 い 人 々を 抽 出 するために 女 性 につ いては 有 配 偶 を また 国 民 年 金 完 納 を 除 いた 割 合 を 計 算 した 女 子 については 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 となるのは 未 婚 学 卒 に 限 定 することとし 非 規 その 他 無 業 の 女 子 未 婚 学 卒 割 合 H14 年 を 力 調 査 より 求 め 用 いることとし た 図 表 7 また 非 規 雇 用 あるいは 無 業 のうち 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 となるのは 国 民 年 金 未 加 入 未 納 に 限 定 することとし 国 民 年 金 加 入 の 完 納 の 割 合 図 表 8で 調 整 したも のを 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 割 合 とした 図 表 9 図 表 7 女 子 未 婚 学 卒 割 合 % 女 子 未 婚 学 卒 割 合 非 規 その 他 無 業 1524 歳 53.5 77.8 2534 歳 42.9 83.3 資 : 総 務 省 統 計 局 力 調 査 詳 細 結 果 平 成 14 年 図 表 8 国 民 納 付 状 況 % 25-29 歳 30-34 歳 総 数 会 などに 無 職 総 数 会 などに 無 職 雇 われてい る 雇 われてい る 総 数 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 納 付 54.4 55.1 50.3 56.0 52.2 51.7 完 納 39.5 39.1 37.1 42.5 38.1 38.4 部 納 付 15.0 16.0 13.1 13.5 14.1 13.2 未 納 27.6 27.6 29.0 25.1 28.2 24.6 申 請 免 除 16.1 15.5 19.0 18.6 19.3 23.5 資 : 会 保 険 庁 平 成 14 年 国 民 年 金 被 保 険 実 態 調 査 図 表 9 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 女 子 配 偶 関 係 および 年 金 加 入 調 整 後 H4からH14の の 各 年 齢 階 級 における 構 2529 歳 3034 歳 男 女 男 女 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 6.9 3.8 4.7 2.8 規 4.0 2.8 2.5 2.0 家 事 通 学 をしていない 無 業 2.9 1.0 2.2 0.8-121 -

3 第 三 段 階 : 潜 在 的 な 生 活 保 護 受 給 と それが 具 体 化 した 場 合 に 必 要 な 追 加 的 な 予 算 額 推 計 作 業 前 項 において 2002 年 就 業 構 造 基 本 調 査 において 25-34 歳 の 人 々の き 方 の 変 化 非 規 と 無 業 の 増 加 と 調 整 後 の 潜 在 的 老 後 被 保 護 割 合 を 求 めた これを2002 年 の 性 年 齢 別 人 口 に 掛 け 合 わせてみると 就 職 氷 河 期 世 代 の き 方 変 化 数 と 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 が 得 られる 図 表 10 2002 年 点 で 就 職 氷 河 期 世 代 の 非 規 雇 用 の 前 世 代 との 比 較 した 増 加 分 は 137.1 万 人 無 業 は 54.5 万 人 合 計 191.7 万 人 と 考 えることができる このうち 潜 在 的 老 後 被 保 護 は 86.2 万 人 になる これは 2002 年 点 のそれであって 彼 らが 老 後 65 歳 上 に 生 き 残 る 確 率 で 調 整 すると 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 数 は 77.4 万 人 となる この 潜 在 的 な 老 後 被 保 護 数 に 先 ほど 求 めた 生 涯 老 後 生 活 費 図 表 5のうち 国 民 年 金 未 加 入 未 納 のパタンの 金 額 を 掛 け 合 わせると 就 職 氷 河 期 世 代 についての き 方 の 変 化 による 潜 在 的 老 後 被 保 護 にかかる 累 計 の 負 担 額 が 算 出 される 図 表 11 すなわち き 方 の 変 化 非 規 化 の 進 行 と 家 事 通 学 の 無 業 の 増 大 によって 生 じた 潜 在 的 老 後 被 保 護 は 77.4 万 人 そして 彼 らが 仮 に 全 65 歳 から 死 ぬまで 生 活 保 護 生 活 扶 助 および 住 宅 扶 助 を 満 額 受 け 取 った 場 合 必 要 な 追 加 的 な 予 算 額 は 累 計 で 約 17.7 兆 円 19.3 兆 円 となる 図 表 10 就 職 氷 河 期 世 代 の き 方 変 化 数 及 び 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 単 位 : 万 人 2002 年 点 生 残 率 調 整 後 65 歳 まで 生 き 残 る 場 合 き 方 変 化 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 非 規 雇 用 137.2 54.0 無 業 54.5 32.3 合 計 191.7 86.2 非 規 雇 用 123.0 48.4 無 業 49.0 29.0 合 計 172.0 77.4 図 表 11 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 及 び 累 計 の 生 活 保 護 費 2529 歳 3034 歳 合 計 男 女 男 女 H14 年 ベース 人 口 万 人 475.6 464.3 477.5 469.8 1,887.3 30-65 歳 の 生 残 率 H17 0.8685 0.8685 0.9385 0.9385 - 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 万 人 28.6 15.3 21.1 12.3 77.4 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 : 規 万 人 16.7 11.4 11.4 8.8 48.4 潜 在 的 老 後 被 保 護 数 : 無 業 万 人 11.9 3.9 9.7 3.5 29.0 H18 年 余 命 ベース 総 額 兆 円 5.9 3.1 5.5 3.2 17.7 H37 年 余 命 ベース 総 額 兆 円 6.4 3.5 6.0 3.5 19.3 注 *1 2002 年 降 については 総 務 省 統 計 局 力 調 査 によって 性 別 年 齢 5 歳 階 級 別 で 雇 用 形 態 別 データが 利 用 できる しかしながらそれ 前 のデータは 力 調 査 では 十 分 でないため *2 本 稿 の 計 算 で 用 いた 総 務 省 統 計 局 就 業 構 造 基 本 調 査 においては 無 業 の 中 に 失 業 が 含 まれる 点 に 留 意 する 必 要 がある 就 業 構 造 基 本 調 査 では 15 歳 上 人 口 が 有 業 と 無 業 - 122 -

に 分 類 され 無 業 の 中 でさらに 家 事 をしているもの 通 学 をしているもの その 他 に 分 かれる なお 総 務 省 統 計 局 力 調 査 では 15 歳 上 人 口 が 力 人 口 と 非 力 人 口 に 分 類 される 力 人 口 は 就 業 完 全 失 業 に 非 力 人 口 は 通 学 家 事 その 他 に 分 かれる 就 業 構 造 基 本 調 査 の 無 業 のうちその 他 と 力 調 査 の 非 力 人 口 のうちのその 他 では 定 義 が 異 なる - 123 -