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1 世 の 中 には 男 と 女 しか いない? 性 的 指 向 には いろいろな 形 があります 異 性 を 愛 す る 人 だけではなく 同 性 愛 や 両 性 愛 の 人 もいます また 性 の 自 己 認 識 こころの 性 と 生 物 学 的 な 性 か らだの 性 が 違 うと 感 じて さまざまな 葛 藤 が 生 じる 性 同 一 性 障 害 の 人 々もいます 長 い 間 社 会 では 性 について 非 常 に 固 定 的 に 考 えられてきました 世 の 中 には 男 性 と 女 性 しかいない そして 男 性 は 男 性 の 特 徴 のある 身 体 を 持 ち 社 会 において 男 性 らしい 行 動 をし 女 性 に 関 心 を 持 つ 女 性 は 女 性 の 特 徴 のある 身 体 を 持 ち 女 性 らしい 行 動 をし 男 性 に 関 心 を 持 つ それだけが 正 常 であり そこからはずれるものは 異 常 だと 考 えられてきたのです しかし 人 間 を 単 純 に 二 つのパターンにわけ それ だけを 認 めてそれ 以 外 を 排 除 してしまう 考 え 方 は この パターンにあてはまらない 人 々が 人 知 れず 苦 しむ 背 景 と なっています ある 人 を 性 的 少 数 者 であるという 理 由 で 差 別 したり 排 除 したりすることなく 違 いを 認 め それぞれの 人 の 生 き 方 を 尊 重 することが 人 権 の 基 本 です
2 さまざまな 性 的 少 数 者 の 人 々がいます 1 性 同 一 性 障 害 性 同 一 性 障 害 とは 生 物 学 的 な 性 からだの 性 と 性 の 自 己 認 識 こころの 性 が 一 致 しない 状 態 を 指 します 性 同 一 性 障 害 のある 人 々は 自 分 の こころの 性 と か らだの 性 が 一 致 しないことにより 社 会 生 活 に 支 障 が 生 じます 日 本 では 日 本 精 神 神 経 学 会 がまとめたガイドライン に 基 づいて 診 断 と 治 療 が 行 われており 性 別 適 合 手 術 をはじめ 性 同 一 性 障 害 のある 人 々に 対 する 治 療 は 正 当 な 医 療 行 為 として 認 知 されています こうした 治 療 を 受 け 性 別 適 合 手 術 さらに 戸 籍 上 の 性 別 を 変 更 する 人 もいますし そうでない 人 もいます 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 いの 特 例 に 関 する 法 律 2004( 平 成 16) 年 7 月 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 いの 特 例 に 関 する 法 律 が 施 行 されました この 法 律 は 性 同 一 性 障 害 のある 人 々のうち 特 定 の 条 件 を 満 たす 人 に 対 して 家 庭 裁 判 所 の 審 判 を 経 ることに よって 法 令 上 の 性 別 の 取 扱 いを 自 分 の 性 であると 自 認 している 性 こころの 性 に 合 致 するものに 変 更 する ことを 認 め 戸 籍 上 の 性 別 記 載 を 変 更 できるものとした 法 律 です 2 また これに 伴 い 戸 籍 法 施 行 規 則 の 一 部 を 改 正 する 省 令 が2004( 平 成 16) 年 7 月 に 施 行 されました これにより 性 別 の 取 扱 いの 変 更 について 家 庭 裁 判 所 の 審 判 があった 場 合 には 同 裁 判 所 からの 嘱 託 により 父 母 との 続 柄 欄 を 変 更 する( 例 えば 長 男 長 女 に 変 更 な ど)ことができるようになりました その 後 2008( 平 成 20) 年 6 月 には 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 いの 特 例 に 関 する 法 律 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 により 性 別 の 取 扱 いの 変 更 の 審 判 が 可 能 な 条 件 の 一 部 が 改 正 されました なお この 法 律 は 施 行 の 状 況 を 踏 まえ 性 同 一 性 障 害 者 及 びその 関 係 者 の 状 況 や その 他 の 事 情 を 勘 案 し 必 要 に 応 じ 検 討 が 加 え られるものとしています
性 別 の 取 扱 いの 変 更 の 審 判 が 可 能 な 条 件 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 いの 特 例 に 関 する 法 律 より 1 二 十 歳 以 上 であること 2 現 に 婚 姻 をしていないこと 3 現 に 未 成 年 の 子 がいないこと 4 生 殖 腺 がないこと 又 は 生 殖 腺 の 機 能 を 永 続 的 に 欠 く 状 態 にあること 5 その 身 体 について 他 の 性 別 に 係 る 身 体 の 性 器 に 係 る 部 分 に 近 似 する 外 観 を 備 えていること 3 性 的 指 向 性 的 指 向 とは 人 の 性 愛 がどのような 対 象 に 向 かう のかを 示 す 概 念 を 言 います 具 体 的 には 性 愛 の 対 象 が 異 性 に 向 かう 異 性 愛 (へテロセクシュアル) 同 性 に 向 う 同 性 愛 (ホモセクシュアル) 男 女 両 方 に 向 う 両 性 愛 (バイセクシュアル)を 指 します 同 性 愛 者 両 性 愛 者 の 人 々は 少 数 派 であるとされて きました こうした 性 的 指 向 は 正 常 と 思 われず 根 強 い 偏 見 と 差 別 から 社 会 生 活 のいろいろな 面 で 人 権 に かかわる 問 題 が 発 生 しています WHOにおける 同 性 愛 の 認 識 の 変 遷 WHO( 世 界 保 健 機 関 )は1990( 平 成 2) 年 国 際 障 害 疾 病 分 類 (ICD-10)( 出 版 は1993( 平 成 5) 年 )からそれまで 記 載 されていた 同 性 愛 の 項 目 を 削 除 しました 同 性 愛 を 治 療 対 象 となる 障 害 ではないとしており 1995( 平 成 7) 年 日 本 精 神 神 経 学 会 も 同 様 の 基 準 を 採 用 しています
4 ひとくくりにはできない 性 的 少 数 者 先 天 的 に 身 体 上 の 性 別 が 不 明 瞭 であることはインター セックスともいわれます こうした 人 々も 性 的 少 数 者 に 含 まれます 性 的 少 数 者 といっても さまざまであり それぞれの 人 が 感 じている 困 難 や 関 心 は 異 なります よく 同 性 愛 者 と 性 同 一 性 障 害 者 が 混 同 されること があります しかし どの 性 を 性 愛 の 対 象 とするか と 自 分 の 性 をどう 認 識 するか( こころの 性 が 何 か) と はそれぞれ 別 の 問 題 です 性 的 少 数 者 の 存 在 を 認 めたつもりでも こういう 人 々 はこうに 違 いない などと 勝 手 に 決 めつけてしまうこと が 偏 見 になります 資 料 性 的 少 数 者 に 関 する 国 や 地 方 公 共 団 体 の 取 り 組 み 法 務 省 文 部 科 学 省 が 発 行 した 人 権 教 育 啓 発 白 書 において 性 同 一 性 障 害 者 の 人 権 性 的 指 向 ( 異 性 愛 同 性 愛 両 性 愛 )を 理 由 とする 偏 見 差 別 をな くし 理 解 を 深 めるための 啓 発 活 動 について 次 の ような 取 り 組 みが 報 告 されています 法 務 省 の 人 権 擁 護 機 関 では 性 同 一 性 障 害 者 については 性 同 一 性 障 害 を 理 由 とする 差 別 をなくそう 性 的 指 向 について は 性 的 指 向 を 理 由 とする 差 別 をなくそう を 年 間 強 調 事 項 と して 掲 げ 1 年 を 通 して 全 国 各 地 で 講 演 会 等 の 開 催 雑 誌 等 による 広 報 啓 発 冊 子 の 配 布 等 の 啓 発 活 動 を 実 施 常 設 特 設 の 人 権 相 談 所 における 相 談 の 受 付 人 権 相 談 などで 性 同 一 性 障 害 者 及 び 性 的 指 向 に 関 する 嫌 が らせ 等 人 権 侵 害 の 疑 いのある 事 案 を 認 知 した 場 合 は 人 権 侵 犯 事 件 として 調 査 し その 結 果 人 権 侵 害 の 事 実 が 認 められ れば 関 係 機 関 と 連 携 協 力 して 当 該 事 案 に 即 した 適 切 な 措 置 を 講 じている 性 同 一 性 障 害 者 の 性 別 の 取 扱 いの 特 例 に 関 する 法 律 ( 平 成 16 年 施 行 平 成 20 年 改 正 ) 平 成 22 年 版 人 権 教 育 啓 発 白 書 要 約 また 地 方 公 共 団 体 においても 人 権 施 策 指 針 や 男 女 共 同 参 画 条 例 などの 中 で 性 的 少 数 者 に 配 慮 した 記 述 を 設 けたり 印 鑑 登 録 などの 公 的 な 書 類 において 性 別 の 記 載 欄 を 削 除 したりする 取 り 組 みが 進 みつつあ ります
人 権 擁 護 推 進 審 議 会 答 申 や 資 料 人 権 教 育 啓 発 に 関 する 基 本 計 画 でとりあげられた 性 的 指 向 による 差 別 人 権 擁 護 推 進 審 議 会 が2001( 平 成 13) 年 5 月 に 発 表 した 答 申 人 権 救 済 制 度 の 在 り 方 について では 以 下 のように 性 的 指 向 による 差 別 の 問 題 につ いて 言 及 しました 人 種 信 条 性 別 社 会 的 身 分 門 地 障 害 疾 病 性 的 指 向 等 を 理 由 とする 社 会 生 活 にお ける 差 別 的 取 扱 い 等 については 調 停 仲 裁 勧 告 公 表 訴 訟 援 助 等 の 手 法 により 積 極 的 救 済 を 図 るべきである ( 中 略 ) 積 極 的 救 済 を 行 うべき 差 別 的 取 扱 いの 範 囲 は ( 中 略 ) 人 種 皮 膚 の 色 民 族 的 又 は 種 族 的 出 身 信 条 性 別 社 会 的 身 分 門 地 障 害 疾 病 性 的 指 向 等 を 理 由 とする 社 会 生 活 ( 公 権 力 との 関 係 に 係 るもののほか 雇 用 商 品 サービス 施 設 の 提 供 教 育 の 領 域 における 私 人 間 の 関 係 に 係 るものを 含 む )における 差 別 的 取 扱 いを 基 本 とすべきである また 2002( 平 成 14) 年 3 月 閣 議 決 定 された 人 権 教 育 啓 発 に 関 する 基 本 計 画 では 性 的 少 数 者 の 人 権 について その 他 の 人 権 課 題 の 中 で 同 性 愛 者 への 差 別 といった 性 的 指 向 に 係 る 問 題 とし て 人 権 教 育 啓 発 の 取 り 組 みが 必 要 であるとして います 10 11
資 料 性 的 少 数 者 の 人 権 に 関 する 国 際 的 な 動 き 国 連 に 性 的 指 向 に 関 する 宣 言 が 提 出 2008( 平 成 20) 年 12 月 第 63 回 国 連 総 会 に 性 的 指 向 に 関 する 宣 言 が 提 出 されました この 宣 言 は 世 界 人 権 宣 言 が 掲 げる 人 権 の 普 遍 性 の 再 確 認 をし 性 的 指 向 や 性 別 の 自 認 に 関 わらず すべての 人 の 人 権 の 促 進 と 保 護 を 求 め ています 宣 言 に 法 的 拘 束 力 はありませんが 欧 州 連 合 (EU)を 中 心 とする66か 国 によって 共 同 提 出 され 日 本 政 府 もこの 宣 言 を 支 持 しています * 宣 言 の 内 容 ( 抜 粋 )* 性 的 指 向 や 性 自 認 に 関 わらず すべての 人 に 人 権 が 平 等 に 適 用 されることを 求 めた 無 差 別 の 原 則 を 再 確 認 すること 性 的 指 向 や 性 自 認 に 関 わらず すべての 国 と 関 連 する 国 際 人 権 機 構 に 対 し 人 権 の 促 進 と 保 護 に 努 めるよう 求 める 認 識 理 解 の 不 足 若 年 層 においては 正 しい 知 識 を 得 る 機 会 が 少 なく 性 のありかたについて 違 和 感 等 を 持 っても 誰 にも 相 談 できずに 自 分 が 異 常 なのではないかと 悩 み 続 ける 場 合 も あります また 周 囲 の 人 々 とりわけ 家 族 へ 自 分 が 性 的 少 数 者 であることを 打 ち 明 けたとしても 理 解 を 得 られなけれ ば 孤 立 してしまうことになります もし 身 近 な 人 が 例 えば 性 同 一 性 障 害 ということで 悩 んでいる 場 合 は 適 切 な 医 療 機 関 の 精 神 科 に 相 談 したり カウンセリングを 受 けることも 可 能 です 社 会 的 な 偏 見 差 別 性 同 一 性 障 害 者 は さまざまな 場 面 において こころ の 性 とは 違 う 振 る 舞 いや 服 装 を 要 求 されたときに 当 事 者 が 苦 痛 を 感 じ それになじまないでいることでいじめを 受 けたりすることがあります また 戸 籍 を 変 更 していな 12 13 3 1 2 性 的 少 数 者 の 人 々が 直 面 する 問 題
い 場 合 身 分 証 明 書 類 に 掲 載 されている 性 と 外 見 の 性 が 違 うことによってトラブル 困 難 に 出 会 うこともあります 同 性 愛 については 古 来 より 世 界 中 のさまざまな 宗 教 の 4 共 生 の 社 会 へ 中 でも 不 道 徳 などと 考 えられ 迫 害 されてきた 歴 史 もあり 法 律 や 制 度 の 制 定 行 政 や 性 的 少 数 者 による 啓 発 活 ます 海 外 では 同 性 愛 を 法 律 で 禁 止 している 国 もあり 動 もあり 性 的 少 数 者 についての 正 しい 認 識 は 広 まっ ます てきています 現 在 でも 社 会 において 同 性 愛 者 に 対 する 偏 見 が 根 強 現 在 日 本 では 同 性 同 士 の 結 婚 は 認 められていませ いことから さまざまな 問 題 が 発 生 しています 時 には んが 海 外 では オランダ スペイン カナダなど 多 同 性 愛 者 への 差 別 や 排 除 が 暴 力 にいたることもあり 非 常 に 深 刻 な 問 題 です 3 くの 国 で 同 性 同 士 の 結 婚 が 認 められています 日 本 でも 自 ら 性 同 一 性 障 害 であることを 公 表 した 人 たち 偏 見 差 別 はなぜ 起 こるのか こうした 偏 見 や 差 別 はなぜ 起 こるのでしょうか? 大 きな 要 因 のひとつとして 差 別 する 側 の 無 理 解 やあまりにも 固 定 的 な 認 識 があげられるでしょう 世 の 中 には 自 分 の 考 え の 通 りの 男 性 と 女 性 しかいないと 信 じ それ 以 外 の 人 々は 自 分 の 理 解 を 超 えているからと 拒 絶 していま せんか?また 性 的 な 側 面 の 興 味 ばかりで 性 的 少 数 者 を 見 る 傾 向 も 偏 見 をかたちづくる 原 因 になっています 日 常 生 活 の 中 にあるこうした 偏 見 差 別 が 性 的 少 数 者 を 苦 しめています の 中 には 議 員 や 歌 手 作 家 として 活 躍 している 人 も います また 2010( 平 成 22) 年 には 性 同 一 性 障 害 の 小 学 校 の 男 児 が 学 年 の 途 中 から 女 児 として 登 校 する ことが 認 められるなど 社 会 において 少 しずつではあ りますが 理 解 や 共 生 の 意 識 が 広 がっています 性 的 少 数 者 の 人 々について 理 解 を 深 め すべての 人 々 のさまざまな 人 権 が 尊 重 される 社 会 をつくっていくこ とが 必 要 です 14 15