目 次 1 事 案 の 概 要 238 ⑴ 争 点 239 ⑵ 当 事 者 の 主 張 239 イ 請 求 人 の 主 張 239 ロ 原 処 分 庁 の 主 張 240 2 裁 決 の 要 旨 240 3 評 釈 240 ⑴ 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 と 税 法 上 の 規 定 の 概



Similar documents
弁護士報酬規定(抜粋)

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc


私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

積 み 立 てた 剰 余 金 の 配 当 に 係 る 利 益 準 備 金 の 額 は 利 益 準 備 金 1 の 増 3 に 記 載 します ⑸ 平 成 22 年 10 月 1 日 以 後 に 適 格 合 併 に 該 当 しない 合 併 により 完 全 支 配 関 係 がある 被 合 併 法 人 か

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

若 しくは 利 益 の 配 当 又 はいわゆる 中 間 配 当 ( 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 うものを 除 きます 以 下 同 じです )を した 場 合 には その 積 立 金 の 取 崩 額 を 減 2 に 記 載 す るとともに 繰 越 損 益 金 26 の 増 3 の

Microsoft PowerPoint - 基金制度

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

第 1 監 査 の 請 求 1 請 求 人 姫 路 市 廣 野 武 男 2 請 求 年 月 日 姫 路 市 職 員 措 置 請 求 ( 住 民 監 査 請 求 政 務 調 査 費 の 返 還 に 係 る 法 定 利 息 の 不 足 以 下 本 件 請 求 という )に 係 る 請 求 書 は 平 成

特 定 が 必 要 であり, 法 7 条 の 裁 量 的 開 示 を 求 める 第 3 諮 問 庁 の 説 明 の 要 旨 1 本 件 開 示 請 求 について 本 件 開 示 請 求 は, 処 分 庁 に 対 して, 特 定 法 人 が 大 森 税 務 署 に 提 出 した, 特 定 期 間 の

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

10 期 末 現 在 の 資 本 金 等 の 額 次 に 掲 げる 法 人 の 区 分 ごとに それぞれに 定 める 金 額 を 記 載 します 連 結 申 告 法 人 以 外 の 法 人 ( に 掲 げる 法 人 を 除 きます ) 法 第 292 条 第 1 項 第 4 号 の5イに 定 める

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Microsoft Word - 制度の概要_ED.docx

定款  変更

( 復 興 特 別 法 人 制 具 体 的 内 容 ) 復 興 特 別 法 人 制 具 体 的 な 内 容 は 次 とおりです 1 納 義 務 者 法 人 は 基 準 法 人 額 につき 復 興 特 別 法 人 を 納 める 義 務 があります( 復 興 財 源 確 保 法 42) なお 人 格 な

答申書

教育資金管理約款

(12) 配当所得の収入金額の収入すべき時期

目 次 市 民 税 の 減 免 に つ い て 1 減 免 の 一 般 的 な 留 意 事 項 2 減 免 の 範 囲 お よ び 減 免 割 合 3 1 生 活 保 護 法 の 規 定 に よ る 保 護 を 受 け る 者 3 2 当 該 年 に お い て 所 得 が 皆 無 と な っ た

の 基 礎 の 欄 にも 記 載 します ア 法 人 税 の 中 間 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場 合 は 中 間 イ 法 人 税 の 確 定 申 告 書 ( 退 職 年 金 等 積 立 金 に 係 るものを 除 きます ) 又 は 連 結 確 定 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場

2004年度第2回定期監査(学校)事情聴取事項

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

定款

( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補 助 金 の 額 は 第 5 条 第 2 項 の 規 定 による 無 線 LAN 機 器 の 設 置 箇 所 数 に 1 万 5 千 円 を 掛 けた 金 額 と 第 5 条 第 3 項 に 規 定 する 補 助 対 象 経 費 の2 分 の1のいずれか 低

第一部【証券情報】

に 公 開 された 映 画 暁 の 脱 走 ( 以 下 本 件 映 画 1 という ), 今 井 正 が 監 督 を 担 当 し, 上 告 人 を 映 画 製 作 者 として 同 年 に 公 開 された 映 画 また 逢 う 日 まで ( 以 下 本 件 映 画 2 という ) 及 び 成 瀬 巳

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の

< F2D E633368D86816A89EF8C768E9696B18EE688B5>

Microsoft Word - 基金規約(新).docx

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

個 人 所 得 課 税 ~ 住 宅 ローン 控 除 等 の 適 用 期 限 の 延 長 2 4. 既 存 住 宅 に 係 る 特 定 の 改 修 工 事 をした 場 合 の 所 得 税 額 の 特 別 控 除 居 住 年 省 エネ 改 修 工 事 控 除 限 度 額 バリアフリー 改 修 工 事 平

< F2D824F C D9197A791E58A C938C8B9E>

( 参 考 ) 国 家 戦 略 特 別 区 域 法 ( 平 成 25 年 法 律 第 107 号 )( 抄 ) 国 家 戦 略 特 別 区 域 法 及 び 構 造 改 革 特 別 区 域 法 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 平 成 27 年 法 律 第 56 号 ) による 改 正 後 (

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は

国 税 通 則 法 の 見 直 しについて(23 年 度 改 正 ) 税 務 調 査 手 続 の 明 確 化 更 正 の 請 求 期 間 の 延 長 処 分 の 理 由 附 記 等 国 税 通 則 法 の 大 幅 な 見 直 しを 実 施 主 な 改 正 事 項 1. 税 務 調 査 手 続 ( 平

(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

大阪府電子調達システムの開発業務 (第一期)に係る仕様書案に対する意見招請のお知らせ

1

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

公営住宅法施行令の一部を改正する政令―公営住宅法施行令例規整備*

(3) (1) 又 は(2)に 係 る 修 正 申 告 の 場 合 は 修 正 中 間 又 は 修 正 確 定 10 法 人 税 法 の 規 定 によ 次 に 掲 げる 法 人 税 の 申 告 書 を 提 出 する 法 人 の 区 分 ごとに それ (1) 連 結 法 人 又 は 連 結 法 って

Microsoft Word - 12 職員退職手当規程_H 改正_

桜井市外国人高齢者及び外国人重度心身障害者特別給付金支給要綱

住宅税制について

2 前 項 に 定 める 日 に 支 給 する 給 与 は 総 額 給 与 を12 分 割 した 額 ( 以 下 給 与 月 額 という ) 扶 養 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 寒 冷 地 手 当 及 び 業 績 手 当 並 びに 前 月 分 の 超 過 勤 務

異 議 申 立 人 が 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は 異 議 申 立 書 の 記 載 によると おおむね 次 のとおりである 1 処 分 庁 の 名 称 の 非 公 開 について 本 件 審 査 請 求 書 等 について 処 分 庁 を 非 公 開 とする 処 分 は 秋 田 県

答申第585号

はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

目 次 1 報 酬 給 与 額 事 例 1 報 酬 給 与 額 に 含 める 賞 与 の 金 額 が 誤 っていた 事 例 1 事 例 2 役 員 退 職 金 ( 役 員 退 職 慰 労 金 )を 報 酬 給 与 額 として 申 告 して いなかった 事 例 1 事 例 3 持 株 奨 励 金 を

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

ー ただお 課 長 を 表 示 するものとする ( 第 三 者 に 対 する 許 諾 ) 第 4 条 甲 は 第 三 者 に 対 して 本 契 約 において 乙 に 与 えた 許 諾 と 同 一 又 は 類 似 の 許 諾 を することができる この 場 合 において 乙 は 甲 に 対 して 当

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

<4D F736F F D2096F088F582CC8B8B975E814191DE90458EE B4997A B794EF82C98AD682B782E98B4B91A E352E3129>

< F2D C93FA967B91E5906B8DD082CC94ED8DD0>

【労働保険事務組合事務処理規約】

<4D F736F F D208CF689768ED C8FE395FB978E8CEA8BA689EF814592E88ABC2E646F63>

スライド 1

Taro-29職員退職手当支給規程

第 3 章 会 員 ( 会 員 の 資 格 ) 第 5 条 協 会 の 会 員 は 協 会 の 目 的 に 賛 同 して 入 会 した 次 の 各 号 に 掲 げる 者 とする (1) 軽 種 馬 を 生 産 する 者 (2) 軽 種 馬 を 育 成 する 者 (3) 馬 主 (4) 調 教 師 (

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

H28記入説明書(納付金・調整金)8

< E8BE08F6D2082C682B DD2E786C7378>

<4D F736F F D2091DE90458F8A93BE82C991CE82B782E98F5A96AF90C582CC93C195CA92A58EFB82CC8EE888F882AB B315D2E312E A2E646F63>

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

Microsoft Word 日本年金機構職員退職手当規程(規程第36号)

(ⅴ) 平 成 28 年 4 月 1 日 から 平 成 35 年 12 月 31 日 までの 期 間 未 成 年 者 に 係 る 少 額 上 場 株 式 等 の 非 課 税 口 座 制 度 に 基 づき 証 券 会 社 等 の 金 融 商 品 取 引 業 者 等 に 開 設 した 未 成 年 者 口

新居浜市印鑑登録及び証明書発行保護事務取扱要領

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

土 購 入 土 借 用 土 所 有 権 移 転 登 記 確 約 書 農 転 用 許 可 書 ( 写 ) 農 転 用 届 出 受 理 書 ( 写 ) 土 不 動 産 価 格 評 価 書 土 見 積 書 ( 写 ) 又 は 売 買 確 約 書 ( 写 ) 土 売 主 印 鑑 登 録 証 明 書 売 主

国 税 クレジットカード 納 付 の 創 設 国 税 のクレジットカード 納 付 については マイナンバー 制 度 の 活 用 による 年 金 保 険 料 税 に 係 る 利 便 性 向 上 に 関 するアクションプログラム( 報 告 書 ) においてその 導 入 の 方 向 性 が 示 されている

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

平成16年度

とする ( 減 免 額 の 納 付 ) 第 6 条 市 長 は 減 免 を 受 け た 者 が 偽 り そ の 他 不 正 な 方 法 に よ り 減 免 の 決 定 を 受 け た こ と を 知 っ た と き 前 の 申 告 が あ っ た と き 又 は 同 条 第 2 項 の 規 定 によ

固定資産評価審査申出とは

(2) 保 育 料 等 減 免 措 置 に 関 する 調 書 (3) 地 方 税 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 226 号 ) 第 5 条 第 2 項 第 1 号 に 規 定 する 市 町 村 民 税 の 課 税 の 状 況 を 証 明 する 書 類 又 は 生 活 保 護 法 ( 昭 和

退職手当とは

募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ

c. 投 資 口 の 譲 渡 に 係 る 税 務 個 人 投 資 主 が 投 資 口 を 譲 渡 した 際 の 譲 渡 益 は 株 式 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 として 原 則 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 による 申 告 分 離 課 税 の 対 象 となりま

スライド 1

Microsoft Word 第1章 定款.doc

失 によって 告 知 事 項 について 事 実 を 告 げずまたは 不 実 のことを 告 げたときは 共 済 契 約 者 に 対 する 書 面 による 通 知 をもって 共 済 契 約 を 解 除 することができます た だし 当 組 合 がその 事 実 を 知 りまたは 過 失 によってこれを 知

<88F38DFC E8F8A93BE92BC914F979D985F837D E815B816A>

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

スライド 1


入札公告 機動装備センター

者 が 在 学 した 期 間 の 年 数 を 乗 じて 得 た 額 から 当 該 者 が 在 学 した 期 間 に 納 付 すべき 授 業 料 の 総 額 を 控 除 した 額 を 徴 収 するものとする 3 在 学 生 が 長 期 履 修 学 生 として 認 められた 場 合 の 授 業 料 の

Microsoft Word - 福祉医療費給付要綱

所令要綱

第4回税制調査会 総4-1

Transcription:

裁 決 評 釈 源 泉 徴 収 制 度 と 確 定 申 告 制 度 - 取 り 消 された 配 当 に 係 る 所 得 税 の 源 泉 徴 収 と 申 告 等 の 手 続 との 関 係 裁 判 上 の 和 解 により 取 り 消 された 配 当 に 係 る 源 泉 所 得 税 について 申 告 等 の 手 続 により 還 付 を 求 めることはできないとした 事 例 ( 平 成 18 年 分 の 所 得 税 の 更 正 の 請 求 に 対 してされた 更 正 をすべき 理 由 がない 旨 の 通 知 処 分 棄 却 ) 国 税 不 服 審 判 所 平 成 24 年 12 月 20 日 裁 決 ( 裁 決 事 例 集 89 号 ) 仙 台 国 税 不 服 審 判 所 長 伊 藤 義 之 SUMMARY 源 泉 徴 収 と 確 定 申 告 を 巡 る 関 係 については 最 高 裁 平 成 4 年 2 月 18 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 )により 源 泉 所 得 税 と 受 給 者 の 申 告 所 得 税 は 別 個 のものとして 成 立 確 定 するのであって 受 給 者 と 国 との 間 には 直 接 的 な 法 律 関 係 が 生 じないものとされているこ と( 最 高 裁 昭 和 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 )などを 理 由 に 受 給 者 の 確 定 申 告 の 際 に 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 における 過 不 足 の 精 算 を 行 うことは 所 得 税 法 の 予 定 するところで はないとして 最 高 裁 として 初 めてその 精 算 を 否 定 する 旨 明 示 している ところで 相 続 税 が 課 された 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 への 所 得 課 税 の 適 否 (いわゆる 生 命 保 険 年 金 二 重 課 税 訴 訟 )について 判 示 した 最 高 裁 平 成 22 年 7 月 6 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 本 件 最 高 裁 判 決 )においては もう 一 つの 争 点 であった 源 泉 徴 収 の 適 否 と 受 領 者 の 還 付 請 求 の 可 否 について 所 得 税 の 申 告 等 の 手 続 における 還 付 を 許 容 する 判 断 を 示 している 本 裁 決 は 本 件 最 高 裁 判 決 後 当 該 判 決 を 準 用 して 源 泉 所 得 税 に 係 る 是 正 ( 更 正 の 請 求 を 通 じた 源 泉 所 得 税 額 相 当 分 の 還 付 )を 求 めた 審 査 請 求 において 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 を 踏 ま えて 請 求 人 の 主 張 を 棄 却 した 初 めての 事 案 であり 先 例 性 も 高 いことから 本 稿 において 当 該 事 案 を 取 り 上 げ 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 や 税 法 上 の 規 定 内 容 を 確 認 するとともに 過 去 の 主 な 裁 判 例 や 裁 決 事 例 をトレースし 同 裁 決 の 妥 当 性 について 検 討 及 び 検 証 を 行 うものである ( 平 成 26 年 12 月 26 日 税 務 大 学 校 ホームページ 掲 載 ) ( 税 大 ジャーナル 編 集 部 ) 本 内 容 については すべて 執 筆 者 の 個 人 的 見 解 であり 税 務 大 学 校 国 税 庁 あるいは 国 税 不 服 審 判 所 等 の 公 式 見 解 を 示 すものではありません 237

目 次 1 事 案 の 概 要 238 ⑴ 争 点 239 ⑵ 当 事 者 の 主 張 239 イ 請 求 人 の 主 張 239 ロ 原 処 分 庁 の 主 張 240 2 裁 決 の 要 旨 240 3 評 釈 240 ⑴ 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 と 税 法 上 の 規 定 の 概 要 240 ⑵ 源 泉 徴 収 制 度 を 巡 る 主 な 先 例 裁 判 例 及 び 裁 決 事 例 242 イ 最 高 裁 昭 和 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 ( 民 集 24 巻 13 号 2243 頁 ) 242 ロ 最 高 裁 平 成 4 年 2 月 18 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 民 集 46 巻 2 号 77 頁 ) 243 ハ その 他 の 裁 判 例 及 び 裁 決 事 例 244 ニ 最 高 裁 平 成 22 年 7 月 6 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 民 集 64 巻 5 号 1277 頁 ) 244 ⑶ 本 裁 決 における 判 断 の 妥 当 性 について 246 イ 法 令 解 釈 246 ロ 当 てはめ 246 ハ 結 論 247 1 事 案 の 概 要 本 件 は 審 査 請 求 人 ( 以 下 請 求 人 とい う )が 裁 判 上 の 和 解 により 配 当 が 取 り 消 さ れたことを 受 けて 配 当 に 係 る 収 入 金 額 は 零 円 であり 源 泉 徴 収 をされた 所 得 税 の 額 は 確 定 申 告 書 記 載 の 額 であるから 還 付 金 の 額 に 相 当 する 税 額 が 過 少 であるとして 更 正 の 請 求 を したところ 原 処 分 庁 が 配 当 につき 源 泉 徴 収 をされた 所 得 税 の 額 は 請 求 人 の 所 得 税 額 の 計 算 において 算 出 所 得 税 額 から 控 除 できない から 還 付 金 の 額 に 相 当 する 税 額 が 過 少 である 場 合 には 当 たらないとして 更 正 をすべき 理 由 がない 旨 の 通 知 処 分 を 行 ったことに 対 し 請 求 人 がその 処 分 の 全 部 の 取 消 しを 求 めた 事 案 である なお 本 件 は 源 泉 徴 収 義 務 者 である 支 払 者 が 現 金 等 により 給 与 報 酬 を 支 給 する 事 案 ではなく 配 当 支 給 (しかも 不 動 産 を 現 物 支 給 )が 行 われた 事 案 であり 源 泉 所 得 税 相 当 分 を 請 求 人 が 配 当 受 領 後 に 支 払 者 に 支 払 い 支 払 者 により 国 へ 納 付 が 行 われたのであるが 後 日 支 払 者 に 対 する 破 産 手 続 開 始 決 定 がな され 破 産 管 財 人 による 破 産 法 上 の 否 認 権 に 基 づき 請 求 人 らに 対 する 訴 訟 提 起 がなされた ところ 結 果 的 に 本 件 和 解 により 配 当 が 取 り 消 され( 不 動 産 の 返 還 手 続 を 取 っている) 本 件 源 泉 所 得 税 について 支 払 者 ではなく 一 旦 配 当 を 受 領 した 請 求 人 自 身 の 申 告 等 の 手 続 によって 還 付 を 求 めた 特 異 な 事 案 であったこ とに 留 意 する 必 要 がある [ 請 求 人 と 源 泉 徴 収 義 務 者 である 支 払 者 と の 関 係 ] 請 求 人 は 平 成 18 年 10 月 日 に C 社 ( 以 下 C 社 という )から 会 社 法 第 453 条 株 238

主 に 対 する 剰 余 金 の 配 当 による 配 当 として 土 地 及 び 建 物 ( 以 下 本 件 土 地 等 という ) の 引 渡 しを 受 けた( 以 下 この 配 当 を 本 件 配 当 という ) 本 件 土 地 等 については D 地 方 法 務 局 e 支 局 において 受 付 年 月 日 平 成 18 年 10 月 日 受 付 番 号 第 号 原 因 を 平 成 18 年 10 月 1 日 贈 与 とする C 社 から 請 求 人 への 所 有 権 移 転 登 記 が 行 われたが その 後 登 記 原 因 に 錯 誤 があったとして 受 付 年 月 日 平 成 18 年 11 月 日 受 付 番 号 第 号 で 原 因 を 会 社 法 第 453 条 による 配 当 とする 所 有 権 更 正 登 記 が 行 われた 請 求 人 は 本 件 配 当 に 係 る 源 泉 徴 収 による 所 得 税 ( 以 下 本 件 源 泉 所 得 税 という )に 相 当 する 金 額 を C 社 に 支 払 った 請 求 人 が 提 出 した 確 定 申 告 書 には 平 成 18 年 分 配 当 剰 余 金 の 分 配 及 び 基 金 利 息 の 支 払 調 書 が 添 付 されており 当 該 支 払 調 書 の 配 当 等 の 金 額 欄 には 円 源 泉 徴 収 税 額 欄 には 円 及 び 支 払 者 の 名 称 欄 には C 社 と 記 載 されている C 社 は 平 成 20 年 12 月 日 に E 地 方 裁 判 所 に 対 し 破 産 手 続 開 始 を 申 し 立 てたところ 平 成 21 年 1 月 日 に 破 産 手 続 開 始 決 定 を 受 け 同 日 E 地 方 裁 判 所 は 破 産 管 財 人 ( 以 下 本 件 破 産 管 財 人 という )を 選 任 した 本 件 破 産 管 財 人 は 破 産 法 第 160 条 破 産 債 権 者 を 害 する 行 為 の 否 認 第 1 項 第 1 号 に 規 定 する 否 認 権 を 根 拠 として 平 成 22 年 3 月 日 に 請 求 人 他 1 法 人 を 被 告 とする 訴 訟 ( 以 下 本 件 訴 訟 という )を E 地 方 裁 判 所 に 提 起 した 本 件 訴 訟 は 平 成 23 年 10 月 日 に E 地 方 裁 判 所 において 和 解 ( 以 下 本 件 和 解 とい う )が 成 立 終 結 した 本 件 和 解 の 要 旨 は 原 告 ( 本 件 破 産 管 財 人 )は 本 件 配 当 を 取 り 消 す 被 告 ( 請 求 人 )は 平 成 18 年 10 月 日 D 地 方 法 務 局 e 支 局 受 付 第 号 により 本 件 土 地 等 についてされている C 社 から 被 告 ( 請 求 人 ) への 所 有 権 移 転 登 記 について 配 当 取 消 を 原 因 とする 抹 消 登 記 手 続 をする である 本 件 土 地 等 については 平 成 23 年 11 月 日 D 地 方 法 務 局 e 支 局 において 受 付 番 号 第 号 原 因 を 平 成 23 年 10 月 27 日 配 当 取 消 として 請 求 人 の 所 有 権 抹 消 登 記 がなされた ⑴ 争 点 本 件 源 泉 所 得 税 は 本 件 和 解 後 においても 所 得 税 法 第 120 条 確 定 所 得 申 告 第 1 項 第 5 号 に 規 定 する 源 泉 徴 収 をされた 又 はされ るべき 所 得 税 の 額 に 該 当 することを 理 由 に 本 件 更 正 の 請 求 により 還 付 を 受 けることがで きるか 否 か ⑵ 当 事 者 の 主 張 イ 請 求 人 の 主 張 (イ) 源 泉 徴 収 はあくまでも 申 告 納 税 制 度 を 補 足 するものとして 位 置 付 けられ 源 泉 徴 収 された 税 額 は 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 規 定 により 確 定 申 告 で 精 算 さ れることになる 本 件 の 場 合 は 所 得 税 法 第 181 条 源 泉 徴 収 義 務 の 規 定 に 基 づいて 本 件 源 泉 所 得 税 が 適 法 に 徴 収 納 付 され 請 求 人 はそれに 基 づいて 適 法 に 確 定 申 告 書 を 提 出 していたところ そ の 後 C 社 が 破 産 手 続 開 始 決 定 を 受 け 破 産 管 財 人 が 訴 訟 を 提 起 することとなり 本 件 和 解 が 成 立 した 結 果 本 件 配 当 の 全 部 が 取 り 消 されたものである 本 件 和 解 を 受 けて 本 件 配 当 の 全 部 が 取 り 消 された 事 実 ( 以 下 本 件 事 実 という )は 国 税 通 則 法 ( 以 下 通 則 法 という ) 第 23 条 更 正 の 請 求 第 2 項 第 1 号 の 後 発 的 事 由 に 該 当 するから 本 件 源 泉 所 得 税 は 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 規 定 に 基 づいて 精 算 されるべきものである (ロ) 最 高 裁 平 成 22 年 7 月 6 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 平 成 20 年 ( 行 ヒ) 第 16 号 )( 以 下 本 件 最 高 裁 判 決 という )の 主 旨 は 239

課 税 処 分 の 取 消 しであり 法 的 には 本 件 と 同 じである 本 件 最 高 裁 判 決 は 適 法 に 源 泉 徴 収 されていれば 年 金 の 受 給 者 が 申 告 等 の 手 続 により 直 接 還 付 を 受 けるこ とを 認 めたものであり 源 泉 徴 収 義 務 者 である 生 命 保 険 会 社 に 還 付 しようとする ものではない 所 得 税 法 第 207 条 源 泉 徴 収 義 務 の 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 の 規 定 も 同 法 第 181 条 の 利 子 所 得 及 び 配 当 所 得 に 係 る 源 泉 徴 収 の 規 定 も 同 じ 源 泉 徴 収 体 系 の 中 にあり 源 泉 徴 収 義 務 の 規 定 も 同 一 性 格 のもので ある 本 件 源 泉 所 得 税 は 適 法 に 徴 収 納 付 されていたもので 請 求 人 は 適 法 に 平 成 18 年 分 の 確 定 申 告 を 行 っていたと ころ 判 決 と 同 一 の 効 力 を 有 する 本 件 和 解 により 本 件 配 当 が 取 り 消 されたもので あるから 本 件 最 高 裁 判 決 を 準 用 し 請 求 人 は 本 件 源 泉 所 得 税 を 申 告 等 の 手 続 に より 精 算 できるものである ロ 原 処 分 庁 の 主 張 (イ) 本 件 の 場 合 は 納 付 の 時 には 適 法 な 国 税 の 納 付 であったものが その 後 に 本 件 和 解 により 本 件 配 当 そのものが 取 り 消 さ れたため 源 泉 徴 収 義 務 者 である 支 払 者 が 納 付 した 税 額 が 超 過 納 付 となったもの であり 超 過 納 付 となった 金 員 はその 国 税 を 納 付 した 源 泉 徴 収 義 務 者 たる 支 払 者 に 対 して 還 付 すべきものである した がって 本 件 和 解 後 の 本 件 配 当 に 係 る 源 泉 所 得 税 の 額 は 円 ではなく 零 円 となるから 請 求 人 に 係 る 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 に 規 定 する 源 泉 徴 収 をされた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 は 社 会 保 険 庁 からの 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 税 額 円 となる これにより 請 求 人 の 課 税 標 準 等 及 び 税 額 等 を 計 算 す ると 本 件 事 実 に 基 づき 請 求 人 の 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 に 変 更 が 生 じているものの 通 則 法 第 23 条 第 1 項 の 還 付 金 の 額 に 相 当 する 税 額 が 過 少 であ るときに 該 当 しない (ロ) 本 件 最 高 裁 判 決 は 所 得 税 法 第 181 条 に 規 定 する 源 泉 徴 収 の 対 象 となる 配 当 そ のものが 取 り 消 された 本 件 とは 事 情 を 異 にするものである 2 裁 決 の 要 旨 請 求 人 は 本 件 和 解 により 取 り 消 された 本 件 配 当 に 係 る 本 件 源 泉 所 得 税 は 所 得 税 法 第 181 条 の 規 定 に 基 づいて 適 法 に 徴 収 納 税 さ れたものであるから 適 法 に 源 泉 徴 収 された 年 金 について 受 給 者 が 申 告 等 の 手 続 で 精 算 す ることを 認 めた 本 件 最 高 裁 判 決 を 準 用 し 申 告 等 の 手 続 によって 精 算 できる 旨 主 張 する しかしながら 本 件 和 解 により 本 件 配 当 が 取 り 消 された 後 は 本 件 配 当 はその 支 払 の 時 点 まで 遡 って 無 効 となるのであるから 所 得 税 法 第 181 条 の 源 泉 徴 収 義 務 の 適 用 対 象 とな らず 本 件 源 泉 所 得 税 は 同 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 源 泉 徴 収 をされた 又 はされるべ き 所 得 税 の 額 には 該 当 しない また 本 件 最 高 裁 判 決 は 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 義 務 について 判 断 したもので あり 源 泉 徴 収 義 務 についての 法 令 の 根 拠 が なくなった 源 泉 所 得 税 についてまでも 申 告 等 の 手 続 においてその 精 算 を 認 めたものではな い 3 評 釈 ⑴ 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 と 税 法 上 の 規 定 の 概 要 最 高 裁 昭 和 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 は 納 税 告 知 処 分 を 巡 り 源 泉 所 得 税 に 関 する 法 律 関 係 のうち 支 払 者 と 国 支 払 者 と 受 給 者 との 間 の 問 題 に 関 するものであったが 受 給 者 と 国 との 関 係 に 関 して 問 題 となった 最 高 裁 平 成 4 年 2 月 18 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 以 下 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 という )が 出 さ れる 以 前 において 国 が 受 給 者 の 確 定 申 告 に 対 して 行 った 更 正 処 分 に 対 する 抗 告 訴 訟 とし 240

て 受 給 者 と 国 との 関 係 の 問 題 が 初 めて 正 面 からクローズアップされた (1) と 言 われている 東 京 高 裁 昭 和 55 年 10 月 27 日 判 決 ( 税 務 訴 訟 資 料 115 号 269 頁 ) 文 中 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 並 びに 受 給 者 の 所 得 税 法 上 の 規 定 におけ る 位 置 付 けについて 大 要 以 下 のとおり 説 示 し ている 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 について 見 るのに ( 一 ) 源 泉 徴 収 所 得 税 を 徴 収 して 納 付 する 義 務 は 納 税 義 務 であり( 国 税 通 則 法 15 条 1 項 ) 支 払 者 が 納 税 者 の 地 位 に 立 つ( 同 法 2 条 5 号 ) ( 二 ) 同 税 の 納 税 義 務 は 所 得 の 支 払 の 時 に 成 立 し( 同 法 15 条 2 項 2 号 ) その 税 額 は 右 成 立 と 同 時 に 特 別 の 手 続 を 要 しないで 確 定 する( 同 法 15 条 3 項 2 号 ) ( 三 ) 支 払 者 は 源 泉 徴 収 をすべき 所 得 を 支 払 う 際 法 定 の 所 得 税 を 徴 収 し 法 定 期 限 迄 に 国 に 納 付 しなければならない( 所 得 税 法 181 条 以 下 ) ( 四 ) 徴 収 義 務 者 たる 支 払 者 が 法 定 納 付 期 限 までに 右 税 を 納 付 しない ときは 税 務 署 長 は 支 払 者 に 対 する 納 税 告 知 によりこれを 徴 収 するが( 所 得 税 法 221 条 国 税 通 則 法 36 条 1 項 2 号 ) 右 納 税 告 知 処 分 は 課 税 処 分 ではなく 徴 収 処 分 で あり 徴 収 の 一 段 階 としての 履 行 の 請 求 で ある と 解 される ( 五 ) 支 払 者 は 源 泉 徴 収 所 得 税 の 徴 収 納 付 義 務 の 存 否 又 は 範 囲 を 争 って 納 税 告 知 処 分 に 対 する 抗 告 訴 訟 を 提 起 し 得 るほか これに 合 せて 又 は 別 個 に 右 徴 収 納 付 義 務 の 全 部 又 は 一 部 の 不 存 在 確 認 の 訴 を 提 起 することができる ( 六 ) 支 払 者 が 源 泉 徴 収 をしていなかった 場 合 において 右 ( 四 )により 徴 収 され 又 は 期 限 後 に 納 付 したときは 受 給 者 に 対 し その 税 額 に 相 当 する 金 額 を 爾 後 の 支 払 分 か ら 控 除 するか 又 は 右 金 額 を 求 償 すること ができる( 所 得 税 法 222 条 ) ( 七 ) 右 ( 四 ) の 納 税 告 知 処 分 は 徴 収 処 分 であって 支 払 者 の 納 税 義 務 の 存 否 範 囲 は 右 処 分 の 前 提 問 題 たるにすぎないから 支 払 者 において これに 対 する 不 服 申 立 をせず 又 これをし て 排 除 されたとしても 受 給 者 の 源 泉 納 税 義 務 の 存 否 範 囲 にはいかなる 影 響 も 及 し 得 るものではなく 従 って 受 給 者 は 支 払 者 から 右 ( 六 )の 求 償 権 の 行 使 を 受 けたと きは 自 己 において 源 泉 納 税 義 務 を 負 わな いこと 又 はその 義 務 の 範 囲 を 争 って 支 払 者 の 請 求 の 全 部 又 は 一 部 を 拒 むことができ 又 右 の 次 の 支 払 分 からの 控 除 を 受 けたとき は 残 余 の 支 払 のみでは 債 務 の 一 部 不 履 行 であるとして 右 控 除 にかかる 債 務 の 履 行 を 請 求 することができると 解 される 概 ね このような 法 律 関 係 にあるものと 認 められ る また 右 に 見 たような 基 本 構 造 を 有 す る 現 行 の 源 泉 徴 収 制 度 の 下 においては 国 ( 税 務 官 庁 )と 直 接 の 関 係 に 立 つものは 支 払 者 であって 本 来 の 所 得 税 納 税 義 務 者 たる 受 給 者 は 制 度 上 も 法 律 上 も 国 と 直 接 の 関 係 に 立 つものではないと 考 えられるが この 点 については 更 に 所 得 税 法 の 規 定 に 即 して 検 討 する 必 要 がある まず 同 法 138 条 によると 確 定 申 告 に 伴 う 受 給 者 の 還 付 請 求 が 認 められ この 場 合 受 給 者 は 国 と 直 接 の 法 律 関 係 に 立 つというべきであるが 右 はその 都 度 適 切 な 源 泉 徴 収 の 手 続 が 終 了 した 後 の 段 階 で 源 泉 徴 収 された 税 額 の 合 計 額 が 暦 年 経 過 後 他 の 所 得 も 合 算 した 年 間 総 所 得 に 対 応 する 算 出 税 額 を 上 廻 る 場 合 に 受 給 者 に 還 付 請 求 権 を 認 めることによ りその 間 の 直 截 の 解 決 調 整 をはかるための ものであると 解 される つぎに 給 与 所 得 に 係 る 源 泉 徴 収 においては 年 末 調 整 がな される( 同 法 190 条 ないし 193 条 ) これ は 暦 年 一 年 間 に 源 泉 徴 収 した 所 得 税 額 の 合 計 額 と その 年 中 に 支 給 された 給 与 額 に ついて 正 確 に( 特 に 諸 控 除 を 勘 案 して) 計 算 した 所 定 の 年 税 額 とを その 年 の 最 後 の 給 与 支 払 の 際 に 対 比 して 過 不 足 を 計 算 し これを 過 納 額 を 生 じた 時 は 年 末 の 給 与 に 対 する 源 泉 徴 収 税 額 をそれ 丈 減 額 し 又 は 241

還 付 し 不 足 額 を 生 じたときは 年 末 の 給 与 から 通 常 の 源 泉 徴 収 税 額 に 加 算 して 徴 収 することによってその 間 を 清 算 調 整 するも のであるが これに 当 る 者 は 支 払 者 であっ て 受 給 者 が 直 接 関 与 することはない 最 後 に 受 給 者 が 同 法 の 規 定 により 確 定 申 告 をする 場 合 (これに 当 るものは 確 定 申 告 が 義 務 付 けられている 場 合 及 び 医 療 費 控 除 雑 損 控 除 を 受 ける 場 合 のように 年 末 調 整 が 予 定 されていないか 右 でまかなえない 場 合 である)について 考 える 右 確 定 申 告 に おいては 源 泉 徴 収 の 対 象 となった 給 与 等 の 所 得 は 他 の 所 得 と 合 せて 課 税 総 所 得 金 額 を 構 成 し 他 方 右 給 与 等 の 所 得 について 源 泉 徴 収 をし 又 はされるべき 所 得 税 額 は 算 出 税 額 から 控 除 することとされているか ら( 同 法 120 条 1 項 ) 源 泉 徴 収 の 段 階 で 徴 収 納 付 された 所 得 税 額 を 申 告 納 税 の 段 階 で 更 めて 取 込 んだうえ 再 計 算 すること になる これは 所 得 税 の 確 定 申 告 におい ては 暦 年 末 を 基 準 として 年 間 における 所 得 のすべてを 総 合 して 計 上 したうえ 税 率 を 適 用 して 税 額 を 算 出 し これから 別 途 納 付 した 税 額 を 控 除 して 納 付 すべき 税 額 が 確 定 することになっていることによるもの であるが(いわゆる 年 税 主 義 総 合 課 税 主 義 累 進 税 率 ) 源 泉 所 得 税 の 納 税 義 務 者 その 成 立 確 定 の 時 期 手 続 は 右 1 にみたと おりであって 申 告 所 得 税 のそれと 全 く 異 るから 右 両 者 は 従 って 右 両 租 税 債 務 は 法 律 上 同 一 性 がないものというべきである このように 源 泉 所 得 税 の 申 告 所 得 税 との 間 に 同 一 性 がない 以 上 右 再 計 算 にあたって 両 者 の 間 の 清 算 調 整 がなされ 得 る 余 地 はな く 右 再 計 算 は 受 給 者 の 申 告 所 得 税 額 を 算 出 するための 計 算 関 係 にすぎないものとい うべく また 前 記 控 除 項 目 としての 源 泉 徴 収 をし 又 はされるべき 所 得 税 額 とは 法 上 正 当 に 徴 収 された 又 は 徴 収 されるべ きそれを 言 うものと 解 するのが 相 当 である 以 上 のとおりであって 確 定 申 告 に 際 して の 計 算 関 係 の 中 には 源 泉 徴 収 所 得 税 の 過 不 足 を 受 給 者 の 申 告 所 得 税 と 関 連 させて 清 算 調 整 する 機 能 は 存 しないというべきであ る ( 下 線 は 筆 者 が 挿 入 ) ⑵ 源 泉 徴 収 制 度 を 巡 る 主 な 先 例 裁 判 例 及 び 裁 決 事 例 イ 最 高 裁 昭 和 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 ( 民 集 24 巻 13 号 2243 頁 ) 判 決 要 旨 は 以 下 のとおり (イ) 源 泉 徴 収 による 所 得 税 についての 納 税 の 告 知 は 徴 収 処 分 であって 課 税 処 分 で はない (ロ) 支 払 者 は 源 泉 徴 収 による 所 得 税 の 徴 収 納 付 義 務 の 存 否 または 範 囲 を 争 って 納 税 の 告 知 ( 徴 収 処 分 )に 対 する 抗 告 訴 訟 を 提 起 することができ また これに あわせてまたはこれと 別 個 に 右 徴 収 納 付 義 務 の 存 否 または 範 囲 を 訴 訟 上 確 定 させるため 右 義 務 の 全 部 または 一 部 の 不 存 在 確 認 の 訴 を 提 起 することができる (ハ) 受 給 者 は 源 泉 徴 収 による 所 得 税 を 税 務 署 長 から 徴 収 されまたは 期 限 後 に 納 付 した 支 払 者 から その 税 額 に 相 当 する 金 額 につき 求 償 権 の 行 使 を 受 けたときは 自 己 の 負 担 すべき 源 泉 納 税 義 務 の 存 否 ま たは 範 囲 を 争 って 支 払 者 の 請 求 を 拒 む ことができる (ニ) 源 泉 徴 収 による 所 得 税 を 税 務 署 長 から 徴 収 されまたは 期 限 後 に 納 付 した 支 払 者 の 受 給 者 に 対 する 求 償 権 は 右 所 得 税 の 本 税 相 当 額 についてのみ 行 使 することが でき 附 帯 税 相 当 額 には 及 ばない 本 判 決 は 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 及 びそれ を 巡 る 訴 訟 の 形 式 について 支 払 者 受 給 者 の 権 利 救 済 を 十 分 配 慮 し 詳 細 に 説 示 し た 基 本 判 例 であると 言 われ その 理 論 構 成 の 特 色 としては 納 税 告 知 を 徴 収 処 分 とし て 性 格 決 定 することにより 納 税 告 知 が 確 定 しても 支 払 者 の 納 税 義 務 の 成 立 と 税 額 242

が 不 動 のものとならないことになり 受 給 者 は 支 払 者 の 支 払 請 求 ( 所 得 税 法 第 222 条 ) を 拒 みうるとして 一 般 論 としての 行 政 処 分 の 公 定 力 との 理 論 的 整 合 性 を 保 ちつ つ 本 来 の 源 泉 納 税 義 務 者 である 受 給 者 の 権 利 利 益 の 保 護 の 要 請 を 確 保 して いる 点 にあるとされている (2) (3) ロ 最 高 裁 平 成 4 年 2 月 18 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 民 集 46 巻 2 号 77 頁 ) 判 決 要 旨 は 以 下 のとおり 給 与 等 の 受 給 者 が 支 払 者 により 誤 って 所 得 税 の 源 泉 徴 収 をされた 場 合 において 当 該 年 分 の 所 得 税 の 額 から 右 誤 徴 収 額 を 控 除 して 確 定 申 告 することはできない 本 判 決 文 中 源 泉 徴 収 制 度 における 国 と 給 与 支 払 者 そして 給 与 所 得 者 の 三 者 の 法 律 関 係 について 明 確 に 判 示 がなされてい るところ 判 決 文 を 引 用 し これらの 関 係 を 確 認 する 右 の[ 筆 者 注 所 得 税 法 ]120 条 1 項 5 号 にいう 源 泉 徴 収 をされた 又 はされ るべき 所 得 税 の 額 とは 所 得 税 法 の 源 泉 徴 収 の 規 定 ( 第 四 編 )に 基 づき 正 当 に 徴 収 をされた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 を 意 味 するものであり 給 与 その 他 の 所 得 についてその 支 払 者 がした 所 得 税 の 源 泉 徴 収 に 誤 りがある 場 合 に その 受 給 者 が 右 確 定 申 告 の 手 続 において 支 払 者 が 誤 って 徴 収 した 金 額 を 算 出 所 得 税 額 か ら 控 除 し 又 は 右 誤 徴 収 額 の 全 部 若 しくは 一 部 の 還 付 を 受 けることはできないもの と 解 するのが 相 当 である けだし 所 得 税 法 上 源 泉 徴 収 による 所 得 税 ( 以 下 源 泉 所 得 税 という )について 徴 収 納 付 の 義 務 を 負 う 者 は 源 泉 徴 収 の 対 象 となる べき 所 得 の 支 払 者 とされ 原 判 示 のとお り その 納 税 義 務 は 当 該 所 得 の 受 給 者 に 係 る 申 告 所 得 税 の 納 税 義 務 とは 別 個 の ものとして 成 立 確 定 し これと 並 存 す るものであり そして 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 不 足 がある 場 合 には 不 足 分 について 税 務 署 長 は 源 泉 徴 収 義 務 者 た る 支 払 者 から 徴 収 し(221 条 ) 支 払 者 は 源 泉 納 税 義 務 者 たる 受 給 者 に 対 して 求 償 すべきものとされており(222 条 ) また 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 誤 りがある 場 合 には 支 払 者 は 国 に 対 し 当 該 誤 納 金 の 還 付 を 請 求 することができ( 国 税 通 則 法 56 条 ) 他 方 受 給 者 は 何 ら 特 別 の 手 続 を 経 ることを 要 せず 直 ちに 支 払 者 に 対 し 本 来 の 債 務 の 一 部 不 履 行 を 理 由 とし て 誤 って 徴 収 された 金 額 の 支 払 を 直 接 に 請 求 することができるのである( 最 高 裁 昭 和 43 年 (オ) 第 258 号 同 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 民 集 24 巻 13 号 2243 頁 参 照 ) このように 源 泉 所 得 税 と 申 告 所 得 税 との 各 租 税 債 務 の 間 には 同 一 性 がなく 源 泉 所 得 税 の 納 税 に 関 して は 国 と 法 律 関 係 を 有 するのは 支 払 者 の みで 受 給 者 との 間 には 直 接 の 法 律 関 係 を 生 じないものとされていることからす れば 前 記 源 泉 徴 収 税 額 の 控 除 の 規 定 は 申 告 により 納 付 すべき 税 額 の 計 算 に 当 た り 算 出 所 得 税 額 から 右 源 泉 徴 収 の 規 定 に 基 づき 徴 収 すべきものとされている 所 得 税 の 額 を 控 除 することとし これによ り 源 泉 徴 収 制 度 との 調 整 を 図 る 趣 旨 のも のと 解 されるのであり 右 税 額 の 計 算 に 当 たり 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 におけ る 過 不 足 の 清 算 を 行 うことは 所 得 税 法 の 予 定 するところではない のみならず 給 与 等 の 支 払 を 受 けるに 当 たり 誤 って 源 泉 徴 収 をされた( 給 与 等 を 不 当 に 一 部 天 引 控 除 された) 受 給 者 は その 不 足 分 を 即 時 かつ 直 接 に 支 払 者 に 請 求 して 追 加 支 払 を 受 ければ 足 りるのであるから 右 の ように 解 しても その 者 の 権 利 救 済 上 支 障 は 生 じないものといわなければならな い 本 判 決 は 解 釈 上 疑 義 のあった 所 得 税 法 243

第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 源 泉 徴 収 をされ た 又 はされるべき 金 額 という 文 言 の 意 義 についての 解 釈 を 示 しつつ 源 泉 所 得 税 と 受 給 者 の 申 告 所 得 税 は 別 個 のものとして 成 立 確 定 するのであってその 間 に 同 一 性 が ないこと また 源 泉 所 得 税 の 納 税 に 関 し て 支 払 者 のみが 国 と 法 律 関 係 を 有 するので あって 受 給 者 と 国 との 間 には 直 接 的 な 法 律 関 係 が 生 じないものとされていること ( 最 高 裁 昭 和 45 年 12 月 24 日 第 一 小 法 廷 判 決 民 集 24 巻 13 号 2243 頁 )などを 理 由 に 受 給 者 の 確 定 申 告 の 際 に 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 における 過 不 足 の 清 算 を 行 うことは 所 得 税 法 の 予 定 するところでは ない として 確 定 申 告 時 における 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 係 る 過 不 足 額 の 精 算 が 否 定 される( 消 極 説 )ことを 最 高 裁 判 所 と して 初 めて 明 示 し 学 説 上 は 積 極 説 が 多 数 占 めていた 中 で 実 務 上 の 解 釈 の 争 いに 一 応 の 決 着 をつけたものと 言 われている (4) (5) (6) ハ その 他 の 裁 判 例 及 び 裁 決 事 例 (イ) 岡 山 地 裁 平 成 16 年 3 月 23 日 判 決 ( 税 資 254 号 順 号 9604) 仮 に 原 告 の 主 張 するように 原 告 が 支 払 者 に 対 し 源 泉 徴 収 の 誤 徴 収 部 分 につき 返 還 請 求 しても 支 払 者 が 容 易 に 応 じない と 予 想 される 場 合 であったとしても そ れは 支 払 者 と 受 給 者 間 の 事 実 上 の 問 題 で あって そもそも 原 告 は 国 に 対 し 直 接 その 清 算 を 求 める 返 還 請 求 権 を 有 し ないのであるから 原 告 の 主 張 [ 筆 者 注 所 得 税 法 120 条 1 項 5 号 の 控 除 すべき 源 泉 徴 収 税 額 は 現 実 に 徴 収 された 源 泉 徴 収 税 額 であるとするもの]は 採 用 できない (ロ) 国 税 不 服 審 判 所 平 成 18 年 11 月 27 日 裁 決 ( 裁 決 事 例 集 72 巻 246 頁 ) 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 3 号 に 掲 げ る 算 出 所 得 税 額 から 控 除 すべき 同 項 第 5 号 に 規 定 する 源 泉 徴 収 をされた 又 はさ れるべき 所 得 税 の 額 とは 所 得 税 法 の 源 泉 徴 収 の 規 定 に 基 づき 正 当 に 徴 収 さ れた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 を 意 味 す るものであり 給 与 その 他 の 所 得 につい てその 支 払 者 がした 所 得 税 の 源 泉 徴 収 に 誤 りがある 場 合 に その 受 給 者 が 所 得 税 の 確 定 申 告 の 手 続 において 支 払 者 が 誤 って 徴 収 した 金 額 を 算 出 所 得 税 額 から 控 除 し 又 は 誤 徴 収 額 の 全 部 若 しくは 一 部 の 還 付 を 受 けることはできないと 解 する のが 相 当 である( 最 高 裁 平 成 4 年 2 月 18 日 第 三 小 法 廷 判 決 民 集 46 巻 2 号 77 頁 参 照 ) (ハ) 国 税 不 服 審 判 所 平 成 19 年 1 月 12 日 裁 決 ( 裁 決 事 例 集 73 巻 312 頁 ) 源 泉 所 得 税 の 納 税 に 関 し 国 と 法 律 関 係 を 有 するのは 徴 収 義 務 者 のみで その 所 得 の 受 給 者 との 間 には 直 接 の 法 律 関 係 を 生 じるものではなく また その 所 得 の 受 給 者 が 徴 収 されるべき 源 泉 所 得 税 を 確 定 申 告 により 納 税 することはできない のであるから 受 給 者 の 確 定 申 告 によっ て 請 求 人 の 源 泉 徴 収 義 務 が 消 滅 するこ とはない ニ 最 高 裁 平 成 22 年 7 月 6 日 第 三 小 法 廷 判 決 ( 民 集 64 巻 5 号 1277 頁 ) 判 決 要 旨 ( 但 し 源 泉 徴 収 関 係 部 分 のみ 抜 粋 )は 以 下 のとおり 所 得 税 法 ( 平 成 18 年 法 律 第 10 号 による 改 正 前 のもの) 第 207 条 所 定 の 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 の 支 払 をする 者 は 当 該 年 金 が 同 法 の 定 める 所 得 として 所 得 税 の 課 税 対 象 となるか 否 かにかかわらず その 支 払 の 際 その 年 金 について 同 法 第 208 条 所 定 の 金 額 を 徴 収 し これを 所 得 税 として 国 に 納 付 する 義 務 を 負 う 本 件 最 高 裁 判 決 は 年 金 払 特 約 付 き 生 命 保 険 契 約 の 被 保 険 者 兼 保 険 料 負 担 者 であっ た 夫 の 死 亡 により 保 険 会 社 からの 保 険 金 244

としての 年 金 の 支 払 を 受 けた 妻 X( 原 告 被 控 訴 人 上 告 人 )が 税 務 署 長 からその 年 金 に 対 して 所 得 税 を 課 す 旨 の 更 正 処 分 を 受 けたため 当 該 年 金 は 相 続 税 法 第 3 条 相 続 又 は 遺 贈 により 取 得 したものとみなす 場 合 第 1 項 第 1 号 のみなし 相 続 財 産 として 所 得 税 法 ( 平 成 22 年 法 律 第 6 号 による 改 正 前 のもの) 第 9 条 非 課 税 所 得 第 1 項 第 15 号 ( 現 第 16 号 )の 非 課 税 所 得 に 当 た ると 主 張 して その 取 消 しを 求 めた 事 件 (い わゆる 生 命 保 険 年 金 二 重 課 税 訴 訟 )である 国 側 は 仮 に 当 該 年 金 に 所 得 税 を 課 すこと ができないとした 場 合 には 生 命 保 険 会 社 が 本 件 年 金 についてした 源 泉 徴 収 は 誤 りで あったことになり Xの 申 告 所 得 税 の 計 算 に 当 たってその 誤 って 徴 収 された 金 額 を 差 し 引 くことはできない(Xとしては 生 命 保 険 会 社 に 対 して 誤 徴 収 額 相 当 の 未 払 年 金 の 支 払 を 請 求 すべきである)から このこと を 前 提 として 計 算 しなおせば 当 該 更 正 処 分 は 結 果 的 に 適 法 なものとなると 主 張 した この 主 張 に 対 し 本 件 最 高 裁 判 決 は 上 記 判 決 要 旨 のとおり 判 断 を 示 し 生 命 保 険 会 社 が 本 件 年 金 についてした 源 泉 徴 収 は 適 法 であって Xの 申 告 所 得 税 の 計 算 に 当 たり その 徴 収 金 額 を 差 し 引 くことは 許 されると した そのため 本 件 最 高 裁 判 決 が 確 定 申 告 時 における 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 係 る 過 不 足 額 の 精 算 を 否 定 した 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 と 相 反 する 判 断 なのではないか 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 の 射 程 は 及 ばないのかと いった 種 々の 議 論 や 判 例 評 釈 があるが 本 件 最 高 裁 判 決 は 生 命 保 険 会 社 が 源 泉 徴 収 した 額 は 適 法 に 支 払 がなされた 年 金 に 対 し 所 得 税 法 の 規 定 に 基 づき 正 当 に 徴 収 され た 所 得 税 の 額 であると 判 断 した 上 で 確 定 申 告 時 の 精 算 を 認 めているのであって こ の 点 からすれば 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 の 事 案 は 支 払 者 が 誤 って 法 令 の 根 拠 なく 源 泉 徴 収 をしたことになるから 適 法 に 源 泉 徴 収 が 行 われた 本 件 とは 事 案 が 異 なると 判 断 したものと 考 えられる (7) ほか 本 件 最 高 裁 判 決 は 支 払 者 にとって 源 泉 徴 収 の 対 象 と なるものと 受 給 者 にとって 所 得 税 の 課 税 対 象 となるものとの 間 における 乖 離 を 認 めた 上 で 支 払 者 が 正 しく 所 得 税 法 第 207 条 に したがって 源 泉 徴 収 している 金 額 は それ が 受 給 者 にとって 課 税 所 得 となるか 否 かを 問 わず 所 得 税 法 の 源 泉 徴 収 の 規 定 ( 第 4 編 )に 基 づき 正 当 に 徴 収 された 又 はされる べき 所 得 税 の 額 であるという 論 理 にした がって 確 定 申 告 時 における 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 係 る 過 不 足 額 の 精 算 を 認 めた ものであって 本 判 決 の 判 示 を 否 定 するも のではない (8) との 見 解 がある なお その 判 断 理 由 について 最 高 裁 調 査 官 は 1 給 与 所 得 等 に 関 する 所 得 税 法 183 条 1 項 等 の 規 定 が 源 泉 徴 収 の 対 象 を 同 法 の 定 める 課 税 所 得 に 限 る 旨 を 明 示 してい るのに 対 し 同 法 207 条 の 規 定 がその 旨 を 明 示 していないという 文 理 上 の 理 由 と 2 本 判 決 の 考 え 方 によれば 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 の 中 に 所 得 税 が 課 される 年 金 とそうでない 年 金 とがあり 更 に 1 つの 年 金 の 中 にも 所 得 税 の 課 税 対 象 となる 部 分 とそうでない 部 分 とがあることになり こ れらを 細 かく 仕 分 けさせることが 支 払 者 の 手 間 と 費 用 を 増 大 させる 結 果 にもなりかね ないことから 一 律 に 所 得 税 法 207 条 208 条 を 適 用 し 確 定 申 告 において 個 別 に 精 算 させるのが 相 当 であるとの 実 質 上 の 理 由 に よるものと 考 えられる (9) と 述 べている また 本 件 最 高 裁 判 決 の 判 断 については 源 泉 徴 収 制 度 の 基 本 ないし 所 得 税 法 等 の 各 規 定 ( 特 に 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 ) との 関 係 において 問 題 であるのみならず 非 課 税 であるのに 何 故 源 泉 徴 収 の 対 象 となり その 還 付 を 受 けるために 別 途 確 定 申 告 の 手 続 を 採 らねばならないのか 245

という 素 朴 な 納 税 者 感 情 からの 疑 問 があり 支 払 者 ( 源 泉 徴 収 義 務 者 )と 受 給 者 ( 源 泉 納 税 義 務 者 )との 間 で 年 金 債 務 の 履 行 に 関 わる 紛 争 を 生 じるおそれがあるなどのこ とからすると 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 の 支 払 に 係 る 源 泉 徴 収 に 関 し その 廃 止 を 含 め 早 急 に 手 当 をする 必 要 があるよう に 思 われる[ 筆 者 注 実 際 平 成 23 年 度 税 制 改 正 により 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 義 務 を 定 めた 所 得 税 法 第 207 条 の 例 外 規 定 としての 同 法 第 209 条 源 泉 徴 収 を 要 しない 年 金 が 改 正 措 置 済 ] (10) とする 見 解 もともと 所 得 税 法 の 定 める 源 泉 徴 収 制 度 が 所 得 税 の 前 どりの 制 度 で あることにかんがみ 支 払 う 年 金 のうち 所 得 税 法 の 対 象 となる 部 分 についてのみ 源 泉 徴 収 義 務 が 生 ずると 解 すべきである (11) といった 見 解 もある ⑶ 本 裁 決 における 判 断 の 妥 当 性 について イ 法 令 解 釈 本 裁 決 の 法 令 解 釈 では 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 趣 旨 として 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 を 引 用 し 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 にいう 源 泉 徴 収 をされた 又 はさ れるべき 所 得 税 の 額 とは 所 得 税 法 の 源 泉 徴 収 の 規 定 に 基 づき 正 当 に 徴 収 をされた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 を 意 味 するもの であり 給 与 その 他 の 所 得 についてその 支 払 者 がした 所 得 税 の 源 泉 徴 収 に 誤 りがある 場 合 に その 受 給 者 が 所 得 税 の 確 定 申 告 の 手 続 において 支 払 者 が 誤 って 徴 収 した 金 額 を 算 出 所 得 税 額 から 控 除 し 又 は 当 該 誤 徴 収 額 の 全 部 若 しくは 一 部 の 還 付 を 受 ける ことはできないと 解 するのが 相 当 である と 述 べ 更 に 源 泉 徴 収 と 確 定 申 告 との 関 係 に 関 し 同 様 に 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 を 引 用 し 所 得 税 法 上 源 泉 所 得 税 について 徴 収 納 税 の 義 務 を 負 う 者 は 源 泉 徴 収 の 対 象 となるべき 所 得 の 支 払 者 とされ その 納 税 義 務 は 当 該 所 得 の 受 給 者 に 係 る 申 告 所 得 税 の 納 税 義 務 とは 別 個 のものとして 成 立 確 定 し これと 並 存 するものであり そし て 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 不 足 がある 場 合 には 不 足 分 について 税 務 署 長 は 源 泉 徴 収 義 務 者 たる 支 払 者 から 徴 収 し( 所 得 税 法 第 221 条 ) 支 払 者 は 源 泉 納 税 義 務 者 たる 受 給 者 に 対 して 求 償 すべきものとされ ており( 同 法 第 222 条 ) また 源 泉 所 得 税 の 徴 収 納 付 に 誤 りがある 場 合 には 支 払 者 は 国 に 対 し 当 該 誤 納 金 の 還 付 を 請 求 す ることができ( 国 税 通 則 法 第 56 条 ) 他 方 受 給 者 は 何 ら 特 別 の 手 続 を 経 ることを 要 せず 直 ちに 支 払 者 に 対 し 本 来 の 債 務 の 一 部 不 履 行 を 理 由 として 誤 って 徴 収 された 金 額 の 支 払 を 直 接 に 請 求 することができ る と 述 べており 相 当 である そして 最 後 に 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づ く 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 義 務 について 判 断 し た 本 件 最 高 裁 判 決 を 確 認 的 に 引 用 している ロ 当 てはめ 本 裁 決 では 本 件 和 解 により 本 件 配 当 が 取 り 消 された 後 は 本 件 配 当 は 当 該 支 払 の 時 点 に 遡 って 無 効 となって 本 件 配 当 には 所 得 税 法 第 24 条 第 1 項 が 適 用 されない そして 同 法 第 181 条 は 同 条 が 適 用 される 源 泉 徴 収 の 対 象 である 配 当 を 第 24 条 第 1 項 ( 配 当 所 得 )に 規 定 する 配 当 等 と 規 定 していることから 本 件 配 当 は 同 法 第 181 条 の 適 用 対 象 にもならない とした 上 で 上 記 の 法 令 解 釈 のとおり 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 に 当 てはめ 所 得 税 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 にいう 源 泉 徴 収 をされた 又 はさ れるべき 所 得 税 の 額 とは 所 得 税 法 の 源 泉 徴 収 の 規 定 に 基 づき 正 当 に 徴 収 をされた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 を 意 味 すると 解 され 本 件 和 解 後 においては 本 件 配 当 は 源 泉 徴 収 の 対 象 とならないことから 本 件 源 泉 所 得 税 は 同 号 に 規 定 する 源 泉 徴 収 を された 又 はされるべき 所 得 税 の 額 に 該 当 246

しない と 判 断 しており 相 当 である また 本 裁 決 では 請 求 人 の 主 張 に 対 し て 大 要 次 のとおり 説 示 の 上 排 斥 して いる 2 本 件 最 高 裁 判 決 の 要 旨 は 同 法 第 207 条 は 同 条 が 適 用 される 源 泉 徴 収 の 対 象 である 年 金 を 第 76 条 第 3 項 第 1 号 から 第 4 号 まで( 生 命 保 険 料 控 除 )に 掲 げる 契 約 第 77 条 第 2 項 ( 損 害 保 険 料 控 除 )に 規 定 する 損 害 保 険 契 約 等 その 他 政 令 で 定 める 年 金 に 係 る 契 約 に 基 づく 年 金 と 規 定 し 初 回 分 年 金 は 同 法 第 207 条 が 適 用 される 年 金 に 該 当 するから その 支 払 をす る 者 は 初 回 分 年 金 が 同 法 第 9 条 の 規 定 に 該 当 するか 否 かに 関 わらず その 支 払 の 際 その 年 金 について 同 法 第 208 条 所 定 の 金 額 を 徴 収 し これを 国 に 納 付 する 義 務 を 負 い 当 該 年 金 受 給 者 が 所 得 税 の 申 告 等 の 手 続 に おいてその 徴 収 された 税 額 を 算 出 所 得 税 額 から 控 除 し 又 はその 全 部 若 しくは 一 部 の 還 付 を 受 けることは 許 されるとしたものであ り 同 法 第 207 条 の 源 泉 徴 収 義 務 について 判 断 したものである として 本 件 最 高 裁 判 決 との 事 件 との 相 違 性 を 述 べ そして 本 件 は 本 件 配 当 が 当 初 から 無 効 となった ことから 源 泉 徴 収 についての 法 令 の 根 拠 が なくなった 場 合 であり 年 金 の 支 払 自 体 は 無 効 とはなっていない 本 件 最 高 裁 判 決 とで は 事 情 を 異 にしており 本 件 最 高 裁 判 決 が 源 泉 徴 収 義 務 についての 法 令 の 根 拠 がなく なった 源 泉 所 得 税 についても 所 得 税 の 申 告 等 の 手 続 においてその 精 算 を 認 めたもので はないことは 明 らかである 旨 説 示 してい るのは 相 当 である なお 本 裁 決 に 係 る 審 判 所 の 判 断 につい て 平 成 4 年 最 高 裁 判 決 及 びそれ 以 後 の 課 税 実 務 等 の 潮 流 に 従 うものといえ 現 行 制 度 上 首 肯 せざるを 得 ないものと 考 える [また ] 請 求 人 が 本 件 最 高 裁 判 決 を 引 き 合 いに 自 己 の 正 当 性 を 主 張 したことについて は ( 裁 決 書 に) 説 示 されたとおり 本 裁 決 に 係 る 事 案 が 本 件 最 高 裁 判 決 の 射 程 外 であ ることを 示 した 点 は 意 義 があるものといえ る との 実 務 家 からの 見 解 がある (12) ハ 結 論 本 裁 決 は 源 泉 徴 収 と 確 定 申 告 との 関 係 についての 問 題 ( 具 体 的 には 支 払 者 によ る 源 泉 徴 収 の 過 程 で 生 じた 過 不 足 額 を 受 給 者 がその 確 定 申 告 の 際 に 精 算 是 正 するこ とができるか 否 か)を 含 んだ 事 件 について 本 件 最 高 裁 判 決 後 当 該 判 決 を 準 用 して 源 泉 所 得 税 に 係 る 是 正 を 求 めた 審 査 請 求 にお いて 本 件 は 年 金 の 支 払 い 自 体 は 無 効 と なっていない 本 件 最 高 裁 判 決 とでは 事 情 が 異 なり 本 件 最 高 裁 判 決 は 生 命 保 険 契 約 等 に 基 づく 年 金 に 係 る 源 泉 徴 収 義 務 につい て 判 断 したものであり 本 件 配 当 が 当 初 か ら 無 効 となったことから 源 泉 徴 収 について の 法 令 の 根 拠 が 無 くなったのであるから そもそも 所 得 税 法 第 181 条 の 源 泉 徴 収 義 務 の 適 用 対 象 とはならず 従 って 本 件 源 泉 所 得 税 は 同 法 第 120 条 第 1 項 第 5 号 の 源 泉 徴 収 をされた 又 はされるべき 所 得 税 の 額 に 該 当 しないこととなり これを 申 告 等 の 手 続 により 精 算 することはできないと して 請 求 人 の 主 張 を 棄 却 した 初 めての 事 案 であったが 上 記 のこれ 迄 の 検 討 結 果 を 踏 まえると 本 裁 決 の 結 論 は 妥 当 と 考 えられる なお 冒 頭 の 1 事 案 の 概 要 でも 触 れたとおり 本 事 案 は 特 異 な 事 案 であり 請 求 人 は 何 らかの 事 由 で 支 払 者 に 対 す る 本 件 源 泉 所 得 税 の 返 還 請 求 が 事 実 上 困 難 であったため 更 正 の 請 求 に 至 ったものと 推 察 されるとともに 本 件 和 解 の 際 の 本 件 源 泉 所 得 税 に 係 る 取 決 め( 和 解 条 項 - 清 算 条 項 や 権 利 放 棄 条 項 など)がどのようなもの であったかも 必 ずしも 明 らかではなく 破 産 法 上 の 取 扱 も 含 めて 検 討 を 要 する 課 題 を 内 包 する 事 例 であったと 考 えられる 本 件 のような 事 例 は 金 子 教 授 が 述 べて いる 徴 収 納 付 された 租 税 は 性 質 上 は 納 247

税 義 務 者 の 負 担 に 属 するものといえるから 徴 収 納 付 義 務 者 に 請 求 することが 不 可 能 な いし 困 難 な 場 合 ( 例 えば 徴 収 納 付 義 務 者 である 法 人 が 解 散 してしまった 場 合 破 産 手 続 において 源 泉 徴 収 がなされた 場 合 等 ) は 例 外 的 に 直 接 国 に 対 して 還 付 を 請 求 等 できると 解 すべき (13) 事 例 に 該 当 しうる ものと 考 えられ 私 見 ではあるが あくま で 例 外 的 な 措 置 としての 制 度 的 な 手 当 が 必 要 との 見 解 も 同 意 し 得 るところである (12) 寺 澤 典 洋 確 定 申 告 制 度 における 過 誤 納 された 源 泉 所 得 税 の 取 扱 い - 平 成 24 年 12 月 20 日 裁 決 ) 税 務 弘 報 (2013.12)143 頁 (13) 金 子 前 掲 注 (11)840 頁 (1) 石 原 直 樹 給 与 等 の 受 給 者 が 支 払 者 により 誤 っ て 源 泉 徴 収 をされた 金 額 を 税 額 から 控 除 して 確 定 申 告 をすることの 可 否 ( 平 成 5 年 度 主 要 民 事 判 例 解 説 ) 判 例 タイムズ 852(1994.9.25)282 頁 (2) 髙 木 光 源 泉 徴 収 の 法 律 関 係 と 納 税 の 告 知 租 税 判 例 百 選 ( 第 5 版 ) 別 冊 ジュリスト 207 (2011.12.25)206 頁 (3) 木 村 弘 之 亮 納 税 告 知 行 政 判 例 百 選 Ⅰ( 第 4 版 ) 別 冊 ジュリスト 150(1999.2)136 頁 (4) 青 栁 馨 給 与 等 の 受 給 者 が 支 払 者 により 誤 って 源 泉 徴 収 をされた 金 額 を 税 額 から 控 除 して 確 定 申 告 をすることの 可 否 最 判 解 民 事 篇 平 成 4 年 度 46 頁 (5) 石 原 前 掲 注 (1)282 頁 (6) 吉 村 典 久 源 泉 徴 収 と 確 定 申 告 租 税 判 例 百 選 ( 第 5 版 ) 別 冊 ジュリスト 207(2011.12.25) 208 頁 (7) 澤 田 久 文 年 金 型 生 命 保 険 に 対 する 相 続 税 と 所 得 税 の 課 税 関 係 に 関 する 最 高 裁 判 決 ( 最 高 裁 平 成 22 年 7 月 6 日 第 三 小 法 廷 判 決 ) 法 律 のひろば 2010.11 号 43 頁 (8) 吉 村 前 掲 注 (6)208 頁 (9) 古 田 孝 夫 時 の 判 例 ジュリスト 1423 (2011.6.1)100 頁 (10) 佐 藤 孝 一 所 得 税 法 207 条 所 定 の 年 金 の 支 払 者 は 源 泉 徴 収 義 務 を 負 う 旨 判 示 した 最 高 裁 判 決 ( 年 金 二 重 課 税 事 件 )- 源 泉 徴 収 との 関 係 からの 検 討 税 務 事 例 Vol.43 4(2011.4)7 頁 (11) 金 子 宏 租 税 法 ( 第 19 版 ) ( 弘 文 堂 2014.4.15) 835 頁 248