Title 自 閉 症 児 を 中 心 とした 発 達 障 害 児 への 行 動 論 的 介 入 Author(s) Citation 米 山, 直 樹 金 沢 大 学 大 学 院 社 会 環 境 科 学 研 究 科 博 士 論 文 要 旨, 平 成 12 年 度 6 月 : 12-17 Issue Date 2000-06 Type Others Text version URL http://hdl.handle.net/2297/4675 Right *KURAに 登 録 されているコンテンツの 著 作 権 は, 執 筆 者, 出 版 社 ( 学 協 会 )などが 有 します *KURAに 登 録 されているコンテンツの 利 用 については, 著 作 権 法 に 規 定 されている 私 的 使 用 や 引 用 などの 範 囲 内 で 行 ってください * 著 作 権 法 に 規 定 されている 私 的 使 用 や 引 用 などの 範 囲 を 超 える 利 用 を 行 う 場 合 には, 著 作 権 者 の 許 諾 を 得 てください ただし, 著 作 権 者 から 著 作 権 等 管 理 事 業 者 ( 学 術 著 作 権 協 会, 日 本 著 作 出 版 権 管 理 システムなど)に 権 利 委 託 されているコンテンツの 利 用 手 続 については, 各 著 作 権 等 管 理 事 業 者 に 確 認 してください http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspac
氏 名 米 山 直 樹 本 籍 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学 位 授 与 の 日 付 学 位 授 与 の 要 件 学 位 授 与 の 題 目 論 文 審 査 委 員 新 潟 県 博 士 ( 文 学 ) 社 博 甲 第 19 号 平 成 12 年 3 月 22 日 課 程 博 士 ( 学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 ) 自 閉 症 児 を 中 心 とした 発 達 障 害 児 への 行 動 論 的 介 入 (Behavioraltreatmemsfbrdevelopmentaldisorders, especiallyautisticchildren) 委 員 長 久 野 能 弘 委 員 木 村 敦 子, 吉 村 浩 一 学 位 論 文 要 旨 自 閉 症 とは,1 相 互 的 対 人 交 渉 の 質 的 欠 陥,2 言 語 非 言 語 コミュニケーション, 想 像 的 活 動 の 質 的 欠 陥,3 活 動 や 興 味 の 範 囲 の 著 しい 狭 まり,という3つの 症 状 を 主 な 特 徴 とする 発 達 障 害 である 1943 年 にLeoKannerによって 初 めてその 存 在 が 報 告 され,それ 以 降,その 原 因 論 の 探 求 とともに, さまざまな 治 療 教 育 的 アプローチの 効 果 が 検 討 されてきた 原 因 論 と 治 療 教 育 的 アプローチは 両 者 と も 密 接 に 結 びついており, 原 因 論 についての 仮 説 が 多 くの 治 療 教 育 的 アプローチを 生 み 出 してきたと も 言 える 原 因 論 として- 番 初 めに 考 えられたのは, 自 閉 症 は 保 護 者 の 誤 った 育 児 の 結 果 として 発 症 するという 心 因 論 であった しかし,この 心 因 論 も1968 年 のRutterの 論 文 発 表 以 降 は 陰 を 潜 め, 現 在 では 科 学 性 に 裏 付 けられた 形 で 生 物 学 的 原 因 論 と 心 理 学 的 原 因 論 が 発 表 されている 心 理 学 的 原 因 論 としては, 自 閉 症 児 に 認 められる 刺 激 の 過 剰 選 択 性 を 重 視 する 知 覚 障 害 説 や, 自 閉 症 児 にこれも 良 く 認 められるエコラリアやイントネーションの 異 常 を 重 視 する 言 語 認 知 障 害 説,あるいは 近 年, 認 知 心 理 学 の 分 野 で 注 目 を 集 めている 心 の 理 論 障 害 説 などがあげられる 本 研 究 ではこれらの 原 因 論 とは 別 の 仮 説 である 社 会 的 対 蘂 人 機 能 障 害 説 に 着 目 した これは, 人 に 生 得 的 に 付 与 されている 対 人 関 係 を 持 つためのコミュニケーション システムが 自 閉 症 児 においては 特 異 的 に 障 害 を 受 けており,その 結 果, 言 語 や 表 象 機 能 に 異 常 が 生 じてくるという 仮 説 である そし てこのコミュニケーション システムが 機 能 しないことによって, 叙 述 的 言 語 行 動 の 基 礎 となる 前 言 語 的 コミュニケーション 行 動 が 自 閉 症 児 において 成 立 しにくくなると 考 えられている 事 実, 自 閉 症 児 においては 要 求 的 伝 達 行 動 は 成 立 するものの, 他 の 発 達 障 害 児 で 認 められる 叙 述 的 伝 達 行 動 が 自 閉 症 児 には 成 立 しにくいことが 報 告 されている このような 障 害 の 特 異 性 から, 自 閉 症 が 疑 われる 場 合 には 早 期 から 治 療 的 介 入 が 導 入 される 必 要 が あるが, 対 壜 象 児 が 低 年 齢 の 場 合, 診 断 の 正 確 性 が 低 下 するため 確 定 診 断 がなされるのが 遅 れてしまう という 問 題 がある しかし, 原 因 論 が 明 らかではない 現 状 でも, 多 くの 仮 説 が2 次 性 の 障 害 が 生 じて くる 可 能 性 を 指 摘 していることを 考 えあわせると, 自 閉 症 と 良 く 似 た 症 状 を 対 象 児 が 示 しているなら ば,2 次 性 の 障 害 の 発 生 を 防 止 する 意 味 でも 早 期 に 介 入 する 必 要 があると 考 えられる そこで 本 研 究 でも, 医 師 による 確 定 診 断 が 下 されていない 発 達 障 害 児 に 対 しても 積 極 的 に 介 入 を 行 い,その 結 果 を 報 告 した また, 本 研 究 では 自 閉 症 児 を 中 心 とした 発 達 障 害 児 に 言 語 行 動 を 修 得 させるためには,どの 様 な 方 -13-
針 に 基 づく 治 療 的 介 入 が 効 果 を 持 つのかも 検 討 することとした 一 つの 方 向 性 としてはどの 様 な 順 序 で 訓 練 課 題 を 導 入 すべきかというのがあげられる 本 研 究 では, 訓 練 者 に 対 する 接 近 行 動 の 形 成 ( 第 4 章 ), 要 求 言 語 表 現 の 形 成 ( 第 5 章 ),そして 叙 述 的 言 語 の 基 礎 となる 前 言 語 的 コミュニケーション 行 動 成 立 のためのアイコンタクトの 形 成 ( 第 6 章 )という 順 序 での 介 入 が 妥 当 なものか 検 討 した さらに 本 研 究 では, 介 入 技 法 として, 行 動 理 論 に 基 づく 技 法 を 採 用 し,その 効 果 を 検 討 した 過 去, 行 動 理 論 に 基 づく 療 育 訓 練 に 対 しては 感 情 的 な 批 判 が 多 く 向 けられてきた しかし, 行 動 理 論 に 基 づ く 介 入 は, 基 礎 実 験 からのデータを 基 に 作 られた 理 論 を 重 視 した 科 学 性 客 観 性 に 富 むものであり, かつ, 訓 練 技 法 も 効 果 があるか 無 いかといった 非 常 にプラグマティックな 視 点 から 選 択 されている そして 最 も 大 きな 特 徴 は, 障 害 児 が 示 す 不 適 応 行 動 の 原 因 を 障 害 のせいにするのではなく, 環 境 との 関 係 で 捉 えることにある この 視 点 は 治 療 的 介 入 が 環 境 に 向 けられることを 示 しており, 本 研 究 も 適 応 行 動 の 形 成 や 不 適 応 行 動 の 除 去 に 際 しては, 障 害 児 とその 障 害 児 を 取 り 巻 く 環 境 との 相 互 作 用 に 重 点 を 置 くという 立 場 で 介 入 を 行 っている 従 って, 以 上 の 点 から 本 研 究 は 早 期 介 入 の 有 効 性, 訓 練 課 題 導 入 の 順 序 の 妥 当 性, 及 び 行 動 理 論 に 基 づく 療 育 訓 練 の 効 果 について 明 らかにするという3つの 目 的 を 有 しているといえる 次 に, 各 章 の 概 略 を 説 明 する まず 第 1 章 では, 自 閉 症 について,その 症 状 についての 説 明 を 行 った 後,その 原 因 論 を 生 物 学 的 説 明 と 心 理 学 的 説 明 の2 側 面 から 述 べた 中 でも, 心 理 学 的 説 明 においては, 自 閉 症 の 特 徴 である 対 人 関 係 の 形 成 の 困 難 さについて 触 れ,そこから 波 及 的 に 障 害 を 受 ける 前 言 語 的 コミュニケーション 行 動 について 説 明 した さらに 現 在 行 われている 行 動 理 論 的 アプローチ 以 外 の 療 育 方 法 である 語 用 論 的 ア プローチとTEACCHプログラムについて 紹 介 し, 行 動 理 論 に 基 づく 療 育 訓 練 との 比 較 を 行 った 続 く 第 2 章 では, 初 めに 幼 児 期 前 期 における 発 達 障 害, 特 に 自 閉 症 の 確 定 診 断 の 難 しさについて 説 明 した そしてそうした 困 難 を 考 慮 に 入 れても, 早 期 介 入 は 必 要 との 主 張 を 行 った 自 閉 症 は 様 々な 特 異 的 症 状 を 示 す 症 候 群 であるとはいえ,それら 全 ての 症 状 が 生 来 性 のものではなく,それらの 症 状 の 中 の-つが 他 の 症 状 を 引 き 起 こすと 言 われている そうした2 次 性 の 障 害 を 防 止 する 意 味 でも, 早 期 からの 治 療 的 介 入 は 重 要 と 考 えられる また, 本 研 究 では 治 療 的 介 入 に 用 いられる 技 法 として, 行 動 理 論 に 基 づく 技 法 を 採 用 しており,この 章 においてその 有 効 性, 科 学 性, 客 観 性 を 説 明 した 第 3 章 では, 自 閉 症 女 子 生 徒 を 対 象 として, 行 動 論 的 療 育 訓 練 の 代 表 的 な 技 法 である 見 本 あわせ 手 続 きを 導 入 した 事 例 を 紹 介 した この 対 象 児 は B',と D,,の 弁 別 は 既 に 成 立 していたが,その 小 文 字 である `b と d',の 弁 別 が 成 立 していなかった そこで 当 初, 単 純 な 見 本 合 わせ 課 題 で 両 者 の 弁 別 を 訓 練 したが,20セッションに 渡 る 訓 練 でも 学 習 は 成 立 しなかった そのため, B',と b に 対 しては ビ", `D と d に 対 しては `デ',というそれぞれ 共 通 の 媒 介 反 応 を 訓 練 し,その 後, 再 度 `b',と `d',の 弁 別 を 行 った その 結 果 対 象 児 は 速 やかに b と d の 弁 別 を 成 立 させた この 結 果 は, 自 閉 症 児 に 見 られる 刺 激 間 の 関 係 性 を 形 成 する 能 力 の 障 害 は, 異 なる 特 徴 をもつ 刺 激 を 媒 介 反 応 とすることで, 補 うことが 可 能 であることを 示 唆 しているといえる そして 続 く 第 4 章, 第 5 章, 及 び 第 6 章 では, 言 語 訓 練 において 介 入 すべき 対 象 の 順 序 性 を 検 討 し た まず 第 4 章 では, 対 人 回 避 傾 向 のある 無 発 語 の 就 学 前 の 自 閉 症 女 児 に, 訓 練 者 に 対 する 接 近 行 動 の 形 成 を 試 みた 訓 練 者 からの 働 きかけは, 当 初 は 弱 い 刺 激 提 示 から 始 め, 徐 々に 頭 を 撫 でる 等 の 強 い 刺 激 提 示 に 移 行 させた さらに 対 罎 象 児 が 要 求 しそうな 玩 具 を 視 線 を 基 に 速 やかに 提 示 するなど, 強 化 子 提 示 者 としての 機 能 を 増 すような 働 きかけを 行 った その 結 果,6セッションで 対 象 児 の 訓 練 者 に 対 する 回 避 傾 向 は 消 え 逆 に 自 発 的 接 近 行 動 を 示 すまでになった この 事 例 からは, 障 害 児 への 面 接 開 始 当 初 の 対 応 は, 訓 練 者 自 身 の 強 化 価 を 高 めることと, 対 象 児 において 不 安 を 生 じさせない 形 で 行 うことが 重 要 であることが 示 唆 された 第 4 章 において 訓 練 者 への 接 近 行 動 を 示 すようになった 対 象 児 は, 同 時 に 物 品 の 要 求 など, 要 求 行 動 を 訓 練 者 に 対 し 示 すようになった しかし,その 際 用 いられていた 要 求 伝 達 行 動 の 形 態 は, 相 手 と -14-
なる 大 人 の 手 を 要 求 対 象 物 に 対 して 向 けさせるというクレーン 行 動 がほとんどを 占 めていた そこで 第 5 章 では,クレーン 行 動 を 要 求 伝 達 表 現 として 用 いる 対 象 児 に,より 社 会 的 に 適 応 的 な 要 求 表 現 で ある とって,', `ちょうだい `あけて',といった 要 求 言 語 行 動 を 訓 練 することとした これらの 要 求 伝 達 表 現 は 機 会 利 用 型 指 導 法 の 手 続 きに 従 って, 遊 び 場 面 を 通 じて 段 階 的 に 形 成 されていった そ の 結 果, 速 やかに 要 求 場 面 では 言 語 行 動 によって 要 求 がなされるようになり,しかも 要 求 場 面 ごとに 異 なる 反 応 型 が 表 出 されるようになった この 成 果 は,クレーン 行 動 などの 社 会 的 に 適 切 ではない 反 応 型 でも 要 求 行 動 が 表 出 されているのならば, 機 能 的 に 等 価 な 代 替 的 行 動 を 訓 練 すれば,そうした 不 適 切 な 行 動 の 頻 度 を 減 らすことができ, 逆 に 適 切 な 行 動 の 頻 度 を 増 やすことが 可 能 であることを 意 味 している しかし, 一 方,この 手 続 きでは 要 求 表 現 を 訓 練 することはできるが, 他 者 への 注 意 やアイ コンタクトといった 社 会 的 行 動 を 形 成 することはできないことも 示 された そこで, 第 6 章 では, 叙 述 的 伝 達 行 動 の 基 礎 と 考 えられている 前 言 語 的 コミュニケーション 行 動 の 中 でも 共 同 注 意 の 成 立 条 件 について,アイコンタクトの 有 無 との 関 連 で 検 討 を 行 った この 共 同 注 意 とは, 従 来 の 発 達 心 理 学 において `こども,', 大 人,', ` 環 境 の 中 にある 刺 激,,の 関 係 を 論 じてきた 三 項 関 係 をさらに 機 能 的 に 詳 細 化 したもので, 具 体 的 には, 大 人 が 外 界 の 特 定 の 事 象 を 凝 視 した 場 合 に 子 どもが 大 人 の 視 線 を 追 ってそれを 凝 視 する 行 動 のことを 言 う この 共 同 注 意 を 分 析 する 方 法 には 視 点 取 得 課 題 と 凝 視 モニター 課 題 の2つがあるが, 本 研 究 では 視 点 取 得 課 題 を 用 いて4 人 の 発 達 障 害 児 を 対 象 に 実 験 を 行 った うち2 人 にはアイコンタクトが 成 立 しており,もう2 人 にはアイコンタクト が 成 立 していなかった 実 験 の 結 果,アイコンタクトが 成 立 していた2 人 は 視 点 取 得 課 題 を 通 過 でき たが, 他 の2 人 は 通 過 できなかった そこで, 通 過 できなかった2 人 にアイコンタクト 訓 練 を 実 施 し, 再 度 視 点 取 得 課 題 を 実 施 したところ, 一 定 以 上 の 成 績 の 上 昇 が 認 められた アイコンタクトが 成 立 し ていることは, 他 者 への 注 意 を 向 ける 行 動 が 成 立 していることを 意 味 する そして 相 手 の 視 線 を 情 報 として 利 用 するためには,その 前 提 条 件 として 他 者 への 注 意 が 成 立 しておかなければならないことが 示 唆 された 先 にも 述 べたように,こうした 共 同 注 意 などの 前 言 語 的 コミュニケーション 行 動 は 叙 述 的 言 語 成 立 の 為 の 前 提 条 件 になるので, 自 閉 症 などの 対 人 的 相 互 交 渉 能 力 に 障 害 のある 子 どもに 対 し ては, 要 求 表 現 とは 別 個 に 介 入 していかなければならない 点 であると 思 われる しかし, 子 どもの 特 性 によっては,そうした 要 求 的 伝 達 行 動 と 叙 述 的 伝 達 行 動 が 相 補 的 に 機 能 する 場 合 もある 第 7 章 では, 自 閉 症 の 確 定 診 断 が 下 されていない 段 階 から 早 期 介 入 を 行 った 発 達 障 害 児 の 事 例 を 報 告 した 対 象 児 は 介 入 当 初 全 くの 無 発 語 で,さらに 自 閉 症 に 特 有 の 行 動 も 観 察 されていた しかし, 介 入 後 5ヶ 月 で 自 閉 的 な 症 状 は 減 少 し, 有 意 味 語 も2 語 文 の 生 成 まで 可 能 な 状 態 になった このような 急 速 な 変 化 が 生 じた 理 由 として,ルーチン 遊 びのような 同 じ 内 容 を 繰 り 返 すような 遊 びを 継 続 することによって, 他 者 との 相 互 作 用 的 関 わりを 要 求 場 面 以 外 で 形 成 できたことと,さらに,そ の 遊 びの 内 容 が 対 象 児 の 興 味 関 心 に 則 したものであったので, 共 同 で 遊 んでいた 対 象 者 に 注 意 が 向 くようになり, 引 いては 対 象 者 の 模 倣 を 行 えるまでに 変 化 し, 模 倣 行 動 によって 習 得 した 言 語 を 自 発 的 に 使 用 できる 様 になったためだと 考 えられる 第 8 章 では,これらの 知 見 が 行 動 理 論 に 基 づく 療 育 訓 練 の 成 果 であることを 確 認 し,さらに 早 期 介 入 による 効 果 と 言 語 習 得 の 順 序 性 に 則 した 形 でその 介 入 がなされる 必 要 性 を 説 明 した 本 研 究 は, 確 定 診 断 がなされる 以 前 の 段 階 から 自 閉 症 を 疑 われる 発 達 障 害 児 に 対 し 早 期 介 入 を 行 う 必 要 性 を 示 したといえる さらにそこで 用 いられる 手 続 きとして 科 学 性 客 観 性 をもった 行 動 理 論 に 基 づく 療 育 訓 練 の 有 効 性 を 証 明 し,さらに 介 入 する 際 の 注 意 点 として, 言 語 獲 得 の 順 序 性 を 重 視 する 必 要 性 も 述 べた これらの 知 見 は, 障 害 児 療 育 における 基 礎 的 な 資 料 饅 であるばかりでなく, 今 後 の 特 殊 教 育 分 野 における 重 要 な 資 料 となるであろう -15-
Abstract Thepmmsesofthisdissertationweretodefinebehavioralpeculiaritiesofchildrenwithdevelopmenta1 disorders2especiallyautism,andtoexaminespecialeducationsfbrthemanintroductionwasdescnbed intheflrsttwochapters Inchapterone,sometreatmentsfbrautlsmwerecomparedandestimatedmreviewingtheresearchesaboutautism Inchaptertwo,effbctivenessofbehavioralapproachwerementioned homthepointofviewthattreatmentsfbrdevelopmemaldisorderswercregardedasmoreimportantthan diagnosis,reportsofresearchesweredescribed 丘 omchapterthreetochaptersevenchapterthreewas areportofoneautisticchild,whowastaughtdiscriminationbyatwo-choiceconditionaldiscrimination procedureusingmediativesthnulichapterfburwasareportofoneautisticchildwhoseescape-avoidant behaviorwasmodifiedatplayingsimation,withhabimationtothetramer,andfbrmationofconditioned orsocialreinfbrcement ChapterflvereportedanautisticchildwhoseG`cranebehavior,,,usingadult1shand asifitisanlnstrument,waschangcdtodcmandmgverbalbehavior Inchaptersix,childrenwithdevclopmentaldisordersparticipatedinthepsychologicalexperilnentwithVisualPerspective-TaskingTask Theresultssuggestedthatlheeye-contactwasnecessaryfbrjointattentionbehaviorlnchapterseven,acqUisitionprocessofverbalbehaviorwasanalyzedinadevelopmemalretardedchildlnchaptereight,all oftheseresultswerediscussedintennsofbehaviorallanguagetrainingprogramfbrchildrenwidldevelopmentaldisorders,especiallyautism. -16-
学 位 論 文 審 査 結 果 の 要 旨 米 山 論 文 は8 章 から 成 り, 最 初 の2つの 章 では 自 閉 症 児 を 中 心 とした 発 達 障 害 児 を 巡 る 研 究 が 内 外 の200を 越 える 論 文 を 参 考 に 展 開 されるとともに, 発 達 的 視 点 に 立 ち, 旧 来 の 行 動 論, 行 動 分 析 的 ア プローチを 越 えた 実 践 的 な 技 法 の 開 発 の 必 要 性 が 説 かれている 過 去 に 構 築 された 療 育 論 や 技 法 は 数 多 いが, 理 論 と 技 法 の 間 には 明 確 な 整 合 性 があり,その 有 用 性 は 系 統 だった 検 証 手 続 きのもとにその 効 果 を 実 証 されなければならない 米 山 は 過 去 の 自 閉 症 児 研 究 の 知 見 から,これらの 障 害 児 の 療 育 に は 対 人 コミュニケーション,わけても, 言 語 行 動 の 形 成 が 不 可 欠 であり,これらの 子 供 たちに 自 発 的 で, 無 理 のない 社 会 適 応 を 獲 得 させるためにはまず, 健 常 児 の 辿 る 言 語 獲 得 の 道 を 順 序 良 く 辿 らせる ことが 必 要 であるとした 行 動 分 析 の 知 見 によれば, 言 語 行 動 はマンド( 要 求 言 語 )の 成 立 とタクト ( 叙 述 言 語 )の 成 立 から 始 まるが, 発 達 的 視 点 に 立 った 研 究 からはまず, 親 や 治 療 者 に 対 する 愛 着 や 接 近 行 動 をもとにアイコンタクトが 形 成 され, 模 倣 行 動 が 出 現 するといった 流 れと, 一 方 で, 要 求 の 行 動 化 に 発 し 言 語 化 に 転 ずる 流 れと, 他 方 で, 形 成 されたアイコンタクトが 親 や 治 療 者 の 見 ている 対 象 に 目 を 向 ける 行 動 へと 発 展 ( 共 同 注 視 )する 流 れが 想 定 される 米 山 はそこに 再 び 行 動 分 析 的 立 場 を 持 ち 込 んで, 要 求 の 行 動 化 から 言 語 化 への 流 れは 模 倣 行 動 の 獲 得 にともなって 要 求 言 語 (マンド) へと 発 展 し,アイコンタクトから 共 同 注 視 の 流 れは 模 倣 行 動 の 獲 得 にともなって 叙 述 言 語 に 発 展 する という 言 語 発 達 の 模 式 を 想 定 する 米 山 のこのような 療 育 論 もしくは 療 育 技 法 の 独 創 的 なところは, 行 動 分 析 理 論 と 発 達 理 論 の 統 合 にあり, 従 来 経 験 的 に 組 み 立 てられてきた 行 動 分 析 の 技 法 に 言 語 発 達 における 順 序 性 といった 視 点 を 取 り 入 れて,より 無 理 のない 言 語 学 習 の 課 題 を 設 定 したただけでなく, 臨 床 上 の 成 果 としてみずからの 理 論 の 正 さを 証 明 したことにある 以 下,6つの 章 では 彼 が 着 想 した 言 語 発 達 過 程 の 模 式 図 に 従 って1) 接 近 行 動 の 形 成,2) 要 求 行 動 の 形 成,3)アイコンタクト 及 び 共 同 注 視 行 動 の 形 成,4) 要 求 言 語 の 形 成,5) 叙 述 言 語 の 形 成 が 試 みられるとともに 最 後 の 章 では, 6) 発 達 障 害 児 の 言 語 獲 得 の 経 過 の 詳 細 な 分 析 がなされており, 彼 の 療 育 理 論 の 正 当 性 やそれらの 理 論 のもとに 開 発 された 技 法 の 有 効 性 が 療 育 の 実 践 を 通 じて 明 らかにされた 審 査 は 論 文 展 開 の 論 理 性, 研 究 方 法 の 周 到 性, 及 び 臨 床 的 有 用 性 の3つの 側 面 から 加 えられた そ の 結 果 このどの 側 面 からみても 米 山 の 論 文 は 本 邦 の 臨 床 領 域 における 水 準 を 凌 ぐものであり, 臨 床 心 理 学 およびその 実 践 に 寄 与 するところの 多 いものであるという 点 で3 名 の 審 査 者 の 評 価 は 一 致 した 欲 をいえば, 発 達 論 及 び 行 動 論 に 属 する 代 表 的 な 流 派 の 詳 細 な 技 法 の 紹 介 が 欲 しかったとの 指 摘 もさ れたが, 言 語 発 達 過 程 の 模 式 にもとづいて 各 章 が 設 定 され, 健 常 児 の 発 達 の 時 間 軸 に 沿 って 課 題 が 設 定 され, 治 療 が 順 序 立 て 展 開 されている 点 は 特 に 評 価 が 高 かった 口 頭 発 表 会 での 演 者 の 応 答 及 び 検 討 薑 会 での 出 席 者 の 評 価 も 参 考 に, 審 査 委 員 会 は 米 山 論 文 が 博 士 論 文 として 相 応 しい 水 準 のものだと 結 論 した 米 山 には 行 動 分 析 研 究, 心 理 臨 床 研 究 への 掲 載 を 含 む4 編 の 副 論 文 と 日 本 動 物 心 理 学 会 での 2つの 口 頭 発 表, 日 本 行 動 分 析 学 会, 及 び 日 本 行 動 療 法 学 会, 北 陸 心 理 学 等 でのポスター 報 告 を 含 む 計 7つの 発 表 もあり, 彼 がすでに 日 本 臨 床 心 理 士 の 資 格 ( 第 7430 号 )を 得 ていることも 考 慮 するとき, 彼 が 独 立 した 研 究 者, 臨 床 家 として 自 立 可 能 な 人 材 であり, 本 邦 の 臨 床 心 理 学 の 分 野 への 貢 献 が 期 待 されるという 点 でも 審 査 委 員 の 評 価 は 一 致 し, 合 格 とした -17-