当 報 告 の 内 容 は それぞれの 著 作 の 著 作 物 です Copyrighted materials of the authors 報 告 書 東 京 外 国 語 大 学 アジア アフリカ 言 語 文 化 研 究 所 主 催 フィールドネット ラウンジ 企 画 シンポジウム 自 助 グループのエスノグラフィ 相 対 化 を 通 じてみる 自 助 グループ の 輪 郭 日 時 場 所 参 加 者 数 2014 年 3 月 8 日 ( 土 ) 14:00~18:30 東 京 外 国 語 大 学 アジア アフリカ 言 語 文 化 研 究 所 303 大 会 議 室 40 名 シンポジウム 趣 旨 日 本 においては 1980 年 代 に 萌 芽 した 病 気 の 当 事 者 によって 運 営 される 自 助 グルー プ は 病 気 に 向 き 合 う 上 での1つの 形 態 としてすでに 一 般 的 なものとなった しかし 自 助 グループについての 疾 患 別 の 報 告 はあるものの 異 なった 疾 患 の 自 助 グループを 比 較 する 試 みはいまだ 見 られない 現 代 日 本 における 自 助 グループ はいかに 同 じで いかに 異 なり どのような 可 能 性 と 問 題 を 抱 えているのであろうか? 本 シンポジウムは 文 化 人 類 学 を 専 門 とする 若 手 研 究 者 6 名 が 集 合 と 生 成 維 持 回 復 親 医 療 企 業 をキーワードに 異 なる6つの 病 気 の 自 助 グループを 相 対 化 し 自 助 グループ という 集 合 体 の 輪 郭 を 描 こうとする 試 みである 当 日 は 文 化 人 類 学 者 のみならず 自 助 グループに 参 加 されている 多 数 の 当 事 者 の 方 をは じめ 社 会 学 医 学 看 護 学 など 幅 広 い 分 野 に 携 わる 方 々にご 参 加 いただいた プログラム 趣 旨 説 明 14:00~14:10 磯 野 真 穂 自 助 グループの 相 対 化 という 試 み~ 意 義 と 方 法 第 I 部 自 助 グループという 存 在 ~ 生 成 維 持 回 復 のかたち 14:10~14:35 堀 口 佐 知 子 (テンプル 大 学 ジャパンキャンパス) 自 助 グループに 集 う 人 々: ひきこもり の 場 合 を 中 心 に 14:35~15:00 新 ヶ 江 章 友 ( 名 古 屋 市 立 大 学 ) 分 断 を 超 えて: エイズ の 場 合 を 中 心 に 15:00~15:25 牛 山 美 穂 ( 早 稲 田 大 学 ) 回 復 のさまざまな 形 : アトピー 性 皮 膚 炎 の 場 合 を 中 心 に ( 休 憩 :10 分 ) 1
第 Ⅱ 部 当 事 者 を 取 り 巻 く 人 々 15:35~16:00 照 山 絢 子 (ミシガン 大 学 / 慶 應 義 塾 大 学 ) 親 子 関 係 をめぐって: 発 達 障 害 の 場 合 を 中 心 に 16:00~16:25 磯 野 真 穂 ( 早 稲 田 大 学 ) 自 助 グループと 医 療 の 関 係 : 摂 食 障 害 の 場 合 を 中 心 に 16:25~16:50 濱 雄 亮 ( 早 稲 田 大 学 ) 患 者 会 と 企 業 の 協 力 関 係 : 糖 尿 病 の 場 合 を 中 心 に ( 休 憩 :10 分 ) 第 Ⅲ 部 質 疑 応 答 17:00~17:20 福 井 栄 二 郎 ( 島 根 大 学 ) 17:20~17:40 熊 谷 晋 一 郎 ( 東 京 大 学 ) * 当 日 は 病 気 のため 欠 席 17:40~18:30 ディスカッション それぞれの 発 表 内 容 については 何 らかの 形 で 文 字 化 したものを 学 術 論 文 著 書 等 を とおして 今 後 発 表 する 予 定 なので そちらを 参 照 していただきたい( 現 在 本 シンポジウ ムの 内 容 については 著 書 として 出 版 予 定 である) 質 疑 応 答 でのディスカッションの 内 容 本 報 告 書 では 質 疑 応 答 で 議 論 となった 内 容 についてまとめたい 質 疑 応 答 では 聴 衆 に 事 前 にコメント 用 紙 を 配 布 し 記 入 していただいた そのコメント 用 紙 の 内 容 をふまえて 質 疑 応 答 を 行 った 自 助 グループを 調 査 するにあたり 調 査 拒 否 の 問 題 秘 密 保 持 やプライバシー 保 護 の 問 題 などがあると 思 うが どのように 考 えているか 今 回 の 発 表 者 がすべて 行 っているわけではないが 必 要 に 応 じて 大 学 の 倫 理 委 員 会 にお いて 審 査 承 認 などを 得 るなどの 倫 理 的 配 慮 を 講 じている ただ ある 疾 患 に 罹 患 してい る 人 がエスノグラフィを 読 んだ 際 に 誰 のことについて 書 かれた 内 容 かが 分 かってしまう 場 合 があるかもしれない したがって 何 らかの 文 字 化 したものを 発 表 する 際 には 聞 き 取 り 調 査 等 にご 協 力 いただいた 方 に 発 表 前 に 内 容 を 直 接 確 認 していただく 必 要 があると 思 う その 上 で 内 容 を 再 度 吟 味 し 発 表 する 必 要 があると 思 う 同 じ 疾 患 内 での 自 助 グループの 共 通 性 よりも むしろ 自 助 グループ 内 の 差 異 が 気 になる ので の 自 助 グループ とくくられると 違 和 感 をもつことが 多 かったです 2
今 回 の 発 表 では 例 えば 摂 食 障 害 のエスノグラフィがすべての 摂 食 障 害 を 代 表 している のではなく 部 分 的 な 真 実 を 照 らしているにすぎない 今 回 の 発 表 は 私 たちの 関 わった フィールドに 限 定 して 言 えることというスタンスで 話 している 複 数 の 発 達 障 害 者 と 深 く 関 わっております 彼 らの 生 活 を 見 てみると 皆 共 通 して 対 人 コミュニケーションが 苦 手 とか 感 覚 過 敏 とかの 問 題 を 抱 えていますが ほとんど 学 校 に 通 わなかったという 人 もいれば 国 立 の 大 学 院 まで 行 く 人 もいたりと できることや 状 況 に 差 があります こういう 様 子 をみると そもそも 発 達 障 害 というカテゴリー 自 体 が 無 効 なのかなと 思 いますが いかがでしょうか 発 達 障 害 というカテゴリー 自 体 が 日 本 に 特 有 のカテゴリーで そこにはいろいろな 政 治 的 意 図 がある ある 疾 患 内 のいろいろな 差 異 については 今 回 の 発 表 者 は 当 初 から 強 く 意 識 していたが そのような 方 向 性 で 進 めていくと 疾 患 同 士 の 比 較 ができなくなって しまう 例 えば 発 達 障 害 の 場 合 は 親 の 会 のグループが 活 発 であった しかし 一 方 で 親 の 会 が 活 発 ではない 自 助 グループもある このように 発 達 障 害 内 で 親 の 会 が 活 発 なとこ ろとそうでないところの 比 較 も 可 能 であったが 今 回 のシンポジウムでは 発 達 障 害 以 外 の 自 助 グループと 比 較 をすることによって 発 達 障 害 に 特 有 の 問 題 も 見 えてきた 今 回 の シンポジウムの 意 図 としては このような 考 え 方 が 背 景 としてあった 最 初 に 文 化 人 類 学 の 視 点 を 強 調 されていたので その 点 についての 質 問 です 特 に 医 療 に 関 わる 自 助 グループについて いくつかの 要 素 に 着 目 して 比 較 することは 重 要 だと 思 い ました しかし それがエスノグラフィの 目 的 だとは 思 えません エスノグラフィとは ときに 比 較 以 前 あるいは 反 比 較 的 な 実 践 と 思 われるからです そういう 意 味 で 改 めて 自 助 グループを エスノグラフィする ことの 意 味 を 考 えてほしいと 思 いました 自 助 グループの 目 的 の 一 つは 感 情 の 共 有 と 情 報 の 共 有 というところにあると 思 います ひと 昔 前 までは 自 助 グループとは だ ということを 示 すことが 目 的 でした しかし 現 在 は 違 う 例 えば 事 故 や 災 害 などで 自 分 の 子 を 亡 くした 親 についてエスノグラフィと して 描 く 場 合 人 類 学 者 が エスノグラフィを 書 くこと 自 体 が 弔 い だという 主 張 があり ます( 川 村 邦 光 弔 い 論 青 弓 社 2013 年 ) つまり 自 助 グループについて 書 くということは 感 情 を 共 有 する ということではな いか そういう 可 能 性 をエスノグラフィに 求 めるということは 情 報 の 共 有 ということよ りも 大 事 なことなのではないだろうか あるいはそのエスノグラフィを 共 有 することで どれだけその 情 報 を 身 体 化 したり 場 を 共 有 したりすることができるか そういう 可 能 性 としても エスノグラフィについて 考 えてほしいと 思 いました したがって 聞 き 手 や 読 者 をもっと 引 き 込 むような 書 き 方 というものがあるのではないでしょうか 3
(NPO の 方 から) 私 たちは 電 話 相 談 などの 場 面 ではいつも カウンセリングではなく ピアという 立 場 で 話 を 共 有 している どのような 経 験 をしましたか ということを 語 って もらっている 自 分 の 経 験 した 一 番 辛 いことを 言 葉 として 表 現 して 自 分 自 身 でその 経 験 を 再 度 確 認 することができる そうすることによって 自 ら 歩 いて 行 けるようになる そう いう 信 念 をもって 私 たちは 活 動 を 続 けている 身 体 化 することの 意 味 が 非 常 に 重 要 だと 考 えている また 医 療 と 対 面 した 時 も いろいろな 選 択 肢 があるのだということを 伝 えて いる 文 化 人 類 学 者 が 書 くということ/ 調 査 対 象 者 が 書 かれるということ は 簡 単 に 二 分 法 として 分 けることができない 当 事 者 の 人 たちも 語 ることによって 何 らかの 気 づきを 得 ている 書 く 側 も 書 かれる 側 も いろいろな 相 互 作 用 を 行 っている その 一 方 で 研 究 者 と 対 象 との 距 離 感 が 難 しいと 感 じました ( 発 表 者 A) 当 事 者 であるかないかということが 自 助 グループに 参 加 できるかどうか という 問 題 となるので 研 究 者 と 当 事 者 の 距 離 感 というものは 永 遠 の 課 題 である ひきこ もりの 場 合 は ひきこもりであるかどうかのなにか 明 確 な 基 準 があるわけではないので 当 事 者 性 を 主 張 することによって 当 事 者 になる 当 事 者 でない 人 が 自 助 グループで 調 査 を する 場 合 なぜ 調 査 をするのかについて 説 明 をしなければならない また 自 分 が 大 学 院 生 のときと 現 在 の 教 員 のときでは フィールドでの 接 され 方 が 全 く 異 なる 書 くことの 権 力 性 についても 意 識 する 必 要 がある しかし 他 の 医 療 心 理 専 門 職 者 とは 違 い 当 事 者 と 近 い 目 線 から 問 題 について 考 えていくということころが 人 類 学 者 らしさというところ ではないか ( 発 表 者 B) 研 究 者 が 調 査 対 象 者 と 強 い 信 頼 関 係 を 築 いて 調 査 を 行 うべきだと 思 う 今 回 のシンポジウムにも 調 査 にかかわっていただいた 自 助 グループの 方 も 参 加 されている が 実 際 にシンポジウムにも 来 ていただいて 一 緒 に 議 論 するくらいの 地 盤 を 作 る 必 要 があ ると 思 う もちろん 難 しい 側 面 もあるが 調 査 に 入 る 際 には 自 分 (= 人 類 学 者 )は 皆 さんと 経 験 を 共 有 し それを 自 助 グループの 外 の 方 にも 伝 えたい ということを 話 したう えで 協 力 していただき 信 頼 関 係 を 築 いていく 必 要 があるのではないか 当 事 者 に 寄 り 添 おうとする 人 類 学 の 視 座 が 自 助 グループの 研 究 (およびその 活 動 )に もたらす 可 能 性 を 学 ばせていただきました 質 問 したいのは では 逆 に 自 助 グループを めぐる 研 究 が 人 類 学 全 般 にもたらしうる 可 能 性 ( 学 的 貢 献 )はあるか あるとすればそれ は 何 かという 点 です ( 発 表 者 C) 病 気 に 基 づいて 集 まってきた 人 たちがどのようにして 自 助 の 組 織 を 作 って いくのかという 点 は これまで 人 類 学 で 議 論 されてきた 組 織 論 と 関 係 してくる 部 分 がある 4
( 発 表 者 D) 自 助 グループがなぜこのような 形 態 で 集 まり 語 りあい サポートしあう のかという 点 は 現 代 という 時 代 に 特 有 の 問 題 が 含 まれている 近 年 では 生 権 力 や 生 政 治 という 視 点 から 議 論 されているが このような 視 点 からさらに 議 論 を 精 緻 化 してい く 必 要 がある その 上 で 自 助 グループの 活 動 が 社 会 にどのようなインパクトを 与 えるの か どのように 社 会 との 関 係 を 変 容 させていくことができるのかについても 議 論 してい く 必 要 がある そのような 点 を 描 き 出 すことができれば 人 類 学 への 学 的 貢 献 ができるよ うになるのではないか 以 上 5