特 別 講 演 漢 方 の 魅 力 松 田 邦 夫 松 田 医 院 元 日 本 東 洋 医 学 会 会 長 私 は 大 塚 先 生 に 師 事 して 4 年 間 見 学 をしました 大 澤 先 生 というのは 私 の 1 級 下 の 大 変 頭 のいい 男 です が 彼 は 私 より 前 に 大 塚 先 生 のところに 行 ったんですね それで 大 先 生 を 凹 ましてやろうとたぶんそう 思 って 先 生 肺 炎 には 何 を 使 うんですか という 質 問 をしたそうです 大 塚 先 生 は 言 下 に ペニシリンを 使 う という ことで 大 澤 君 は 大 変 感 銘 を 受 けた 大 塚 先 生 は 役 に 立 つものであれば 何 でも 使 おう 早 く 効 くものであれ ば 使 おうという 考 えのようでした 大 塚 敬 節 (1900-1980) 昭 和 の 代 表 的 漢 方 医 1969 年 4 月 ~1973 年 3 月 : 診 療 見 学 した 漢 方 の 師. 大 澤 仲 昭 * 肺 炎 には 何 を 使 うか? ペニシリン * 大 阪 医 科 大 学 名 誉 教 授, 藍 野 加 齢 医 学 研 究 所 所 長. 無 言 の 行 ( 自 分 で 考 えよ) 大 匠 は 教 ゆるに 規 矩 をもってし, 人 をして 巧 ならしめず. 診 療 と 読 書 は 車 の 両 輪.どちらに 傾 いても 車 は 真 っ 直 ぐ 進 めない. 古 典 を 読 め. 後 は 患 者 が 教 えてくれる. 古 人 はウソをつく. 私 の 云 ったことでもそのまま 信 ずる 必 要 はない. 試 してみて 良 かったらやってご 覧. 患 者 への 愛 情 と 厳 しさ( 大 塚 敬 節 ) ヒビの 入 った 茶 碗 も 大 切 に 使 えばもつし,ヒビの 入 らぬ 茶 碗 もガチャガチャ 使 えばこわれる. 腎 臓 が 悪 くても 悪 くしないようにしていれば 長 命 だよ. 一 病 長 命, 無 病 短 命 というではないか. 医 師 が 患 者 に 注 ぐ 愛 情 ほど, 大 切 なものはないと 思 う. 慢 性 病 は 生 活 の 反 応 だから, 生 活 を 切 り 替 えなければ ならない. 酒 は 飲 む, 多 忙 な 生 活 はそのままというので は 治 らない.タバコをのんでいる! 馬 鹿 だな! 腹 が 立 ったらタバコを 止 めなさい. 身 体 に 悪 いものを 飲 み 食 いしながら 薬 で 治 そうとするのは 本 末 転 倒 だ. 私 の 方 も 治 そうと 努 力 するから,あなたも 治 そうと 努 力 しなけれ ばならない. 私 が 先 生 のところに 行 っていろいろ 質 問 すると 最 初 は 大 変 機 嫌 が 悪 い 先 生 で 自 分 で 考 えなさい ある いは 本 に 書 いてあることを 質 問 するなということのようでした 何 年 かたって ようやっと 先 生 はいろいろ 話 して くれるようになって 私 の 心 に 残 っているのは 診 療 と 読 書 は 車 の 両 輪 どちらに 傾 いても 車 はまっすぐ 進 め ない 古 典 を 読 め あとは 患 者 が 教 えてくれる 昔 の 人 はうそをつく 私 が 言 ったこともそのまま 信 ずる 必 要 はない 試 して よかったらやってごらん 追 試 を 勧 めた 先 生 でした 患 者 に 対 して 非 常 に 愛 情 をもっておられた 反 面 厳 しい 面 もありました 腎 臓 でずっとかかっていた 患 者 で すが テレビで 腎 臓 は 治 らないというのを 見 て 非 常 にがっかりしたということで 先 生 の 前 である 日 泣 くんです ね 先 生 はしばらく 泣 かせておいて そのあと 静 かな 声 で ひびの 入 った 茶 碗 も 大 事 に 使 えばもつし ひび の 入 らぬ 茶 碗 もがちゃがちゃ 使 えば 壊 れる 腎 臓 が 悪 くても 悪 くしないようにしていれば 長 命 だよ 一 病 長 命 無 病 短 命 と 言 うではないか この 患 者 はそれで ああ そうでしたね ということで にっこりして 帰 ってい きました 先 生 は 医 師 が 患 者 に 注 ぐ 愛 情 ほど 大 切 なものはないと 思 う と 書 いています ある 咳 が 止 まらない 患 者 に 対 して 先 生 は 慢 性 の 病 気 は 生 活 の 反 応 だから 生 活 を 切 り 替 えなければならない あなたのように 酒 は 飲 む 忙 しい 生 活 はそのままというのでは 治 らない たばこもまだ 飲 んでいるのか バカだな そのとき 患 者 さんはちょっとムッとした 顔 をしていましたが 腹 が 立 ったらたばこをやめなさい 体 に 悪 いものを 飲 み 食 いし ながら 薬 で 治 そうとするのは 本 末 転 倒 だ 私 のほうも 治 そうと 努 力 するから あなたも 治 そうと 努 力 しなけれ 111
脳神経外科と漢方 ばならない そんなふうに厳しい面がありました 大塚先生が私に教えた漢方の勉強法は 自己流は大成しない 最初は定石を学べ 定石というのは昔 から多くの人が第一選択とする治療法で 治療の大本ですね そして実際に使ってみる それによって経験 を積め あるいは さらに古典もできれば読みなさい あとは患者が教えてくれる そういったことを私に教え てくれました 漢方勉強法 大塚敬節 自己流は大成しない 定石を学ぶ 漢方の存在を知ることのメリット 定石 先人が臨床的効果を認め 多くの人が第一選 択とする治療法 治療の王道 実際に使ってみる テキスト 大塚敬節 症候による漢方治療の実際 南山堂 古典に興味を持つ 古典を読め 後は患者が教えて くれる 大塚敬節 まず西洋医学をしっかりと学ばなければならない 西洋医学を十分修得した上で漢方を学ぶことによ り 西洋医学の限界 漢方の利用価値と限界を知 ることができる 西洋医学 漢方両方向からの幅広い治療手段を 得ることができる めまい 頭痛 のぼせ ほてり には西洋医 学では検査で異常がないと異常なしと判断して 終了となるが 漢方では治療手段がある これからは私の考えですが まず 西洋医学をしっかりと学ばなければならない 言うまでもないのですが 西洋医学を十分に習得したうえで漢方を学ぶ そのことによって 西洋医学の限界 あるいは漢方の利用価 値 また限界を知ることができます そして西洋医学 漢方 両方向からの幅広い治療手段を得ることができ ると思います 例えばめまい 頭痛 のぼせ ほてりといったときに 西洋医学の検査で異常がない場合には 異常なしと判断して終了となりますが 漢方では治療手段があります 私の初期の頃の患者の治療経験を少しお話しさせていただきます 家内の叔父で 当時 87 歳の男性 風 邪がこじれて 結局肺炎になって 主治医が会わせる人があったら会わせなさいということで もうだめだろう ということで家内に連れられて私もお見舞いに行ったんですね 肺炎② 真寒仮熱 肺炎① 87歳男性 1969年 家内の伯父 体格頑健 かぜこじれ発熱37 38 ペニシリン 注射と点滴 水枕 肺炎危篤となる 診ると ふだんの赤み失せ青くつやなく別人のよう 低声 胸鳥肌 意識混濁 布団をひき寄せる 呼 吸早く 寝返り 煩躁 手が布団から出るとすっと 引っ込める 悪寒 脈浮遲弱 緊張弱く力ない 手足冷 尿色水のよう. 真寒仮熱 と診断 水枕と点滴をやめさせた 真武 湯 附子1.0 温服 翌日 一時40 となるも意識明瞭 顔色良く食欲出る 夕方声出て脈緊張回復 10日後 床上げ危機脱出 その後94才で亡くなるまで元気 真寒仮熱 陽証が陰証に変わるとき 内に寒があって 外に 仮熱が現れ この仮熱を表熱と誤る場合が多い. 真寒仮熱 では熱があっても脈は遲で 大でも力なく 尿は清白である. 松田邦夫 症例による漢方治療の実際 創元社1992 35-37 112
意 識 はほとんどなくて 青 い 顔 をして 私 が 頼 まれて 診 察 しようと 思 うと 布 団 を 無 意 識 のうちに 引 き 寄 せる 寒 気 があるというのは 分 かります 脈 を 見 ると 熱 があるのですから 触 れやすい 脈 は 浮 である 当 然 速 い だろうと 思 ったのが 意 外 と 遅 いんですね 脈 拍 がそんなに 速 くはない しかも 弱 い さらに 畜 尿 していたの ですが 尿 の 色 は 水 のようなんですね 熱 があったら もう 少 し 色 が 着 くはずです そのとき 真 寒 仮 熱 というのを 教 わったばかりだったのですが 体 の 中 が 冷 えている それでその 反 応 で 体 の 表 面 に 熱 があるように 見 える 体 の 中 が 冷 えているのだから 単 に 解 熱 剤 を 使 って 熱 を 下 げるようなことを すると 逆 効 果 で 治 らないと 教 わっていたので 中 のほうを 温 める 真 武 湯 を 与 えたんです 翌 日 もういっぺん 行 ったところ 熱 が 38~40 度 くらいに 上 がって 家 内 の 叔 母 である 奥 さんが へんな 薬 を 飲 ませるから 熱 が 上 がってといって 騒 いでいたんです そのあいだに 意 識 が 戻 ってきて 何 か 食 べさせろと いうことになって その 日 の 夕 方 から 声 が 出 て だんだん 回 復 して 10 日 後 に 危 機 を 脱 することができました 94 歳 で 亡 くなるまで 元 気 でした このように 体 内 に 冷 えがある 数 字 として 表 面 的 には 熱 があるように 見 える そういう 症 例 の 治 療 です これは 80 歳 の 男 性 で 北 海 道 の 人 なんですね 私 の 母 のいとこで 重 い 肺 炎 で 北 大 病 院 に 80 日 間 入 院 したんです 抗 生 剤 でようやっと 退 院 できるようになったのですが どうもすっかり 痩 せて 食 欲 がなくなって 起 き 上 がることもできない そういう 状 態 を 続 けていて 話 を 聞 いて 東 京 へ 来 られたんです そのとき 初 めて 見 たのですが わりあいと 背 が 高 い 方 で 痩 せてよろよろと 奥 さんもあまり 元 気 のいい 方 で はないのですが 片 方 を 奥 さんにもたれ もう 片 方 は 杖 をついてという 格 好 で ようやっと 入 ってきたんですね ほとんど 声 が 出 ない 真 夏 だったのですが 青 い 顔 をしていました 型 のごとく 診 ても おなかに 全 然 力 がない 特 に 下 腹 の 力 が 抜 けているんです これは 漢 方 で 言 う 八 味 丸 の 適 応 証 と 思 ったのですが あまりに 全 身 衰 弱 がはなはだしいので まず 体 力 を 回 復 させようと 思 って 人 参 湯 と 真 武 湯 を 合 方 であげたんです 慢 性 副 鼻 腔 炎 1 80 歳 男 性. 母 の 従 兄.1970. 肺 炎 のため80 日 入 院. 強 力 な 抗 生 剤 で 回 復 退 院 するも 以 来, 食 欲 なく 衰 弱. 検 査 で 胃 腸 異 常 なし. 背 は 高 いが 体 重 45kg. 痩 せて 夫 人 に 付 き 添 われ 杖 をついて 入 室. 口 乾, 声 しわがれて, 痰 の 切 れ 悪 い. 体 はふらつき, 足 がつり, 真 夏 で 足 冷 える. 尿 の 出 悪 く 力 ない. 夜 間 頻 尿. 腹 部 陥 凹, 力 ない. 心 下 痞 鞕, 臍 上 悸, 小 腹 不 仁. 脈 数, 舌 滑 らか, 舌 乳 頭 消 失. 背 診 で 両 志 室 圧 痛 あ り. 便 快 通 せず, 夜 間 尿 5 回, 血 圧 100-50. 慢 性 副 鼻 腔 炎 2 - 体 調 改 善 - 全 体 として 漢 方 でいう 陰 虚 証 である. 八 味 地 黄 丸 証 のようだが, 衰 弱 甚 だしく,まず 体 力 の 回 復 のため 人 参 湯 合 真 武 湯 を 与 える. 2ヶ 月 後 再 診. 杖 もなく, 元 気 に 入 室. 顔 色 は 良 く, 声 が 大 きい. 体 重 46kg, 血 圧 110-60. 開 口 一 番, あの 薬 は 鼻 にも 効 きますか? 実 は20 歳 頃 から60 年 来 の 副 鼻 腔 炎 があり.10 年 毎 耳 鼻 科 の 治 療 を 受 けてきた.これが 完 治 と 云 う. 体 調 は 頗 る 良 好, 体 が 暖 かく, 息 切 れしない. 5ヶ 月 後 終 了. 再 発 せず. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,277-278) 直 接 的 に 副 鼻 腔 炎 を 治 す 薬 ではないが, 体 調 全 体 を 改 善 したこ とで 間 接 的 に 治 癒 したものと 思 われる. 漢 方 の 醍 醐 味 のひとつ である. 2 カ 月 後 に 来 ました 非 常 に 元 気 で 奥 さんは 一 緒 でしたが 一 人 でもたれないで 入 ってきて あれほど 出 なかった 声 が 大 きな 声 で 口 を 開 くと 最 初 に あの 薬 は 鼻 にも 効 きますか 鼻 が 悪 いなんて 聞 いていなか ったなと 思 ったのですが 聞 いてみると 20 歳 頃 から 鼻 が 悪 い それでいろいろ 診 察 治 療 を 受 けたけれども 効 かないというので 10 年 ごとに 耳 鼻 科 の 偉 い 先 生 の 治 療 を 受 けた なぜ 10 年 ごとかというと 10 年 もたてば 医 学 は 進 歩 するだろうという 考 えのようでしたが 全 然 よくならない 113
脳 神 経 外 科 と 漢 方 ので とうとう 耳 鼻 科 通 いもやめた 鼻 が 悪 いなんていうことは 言 わなくなった それがこの 人 参 湯 真 武 湯 で すっかり 鼻 がよくなった 通 るようになったと 言 って 喜 んでくれました 私 は 長 年 の 副 鼻 腔 炎 がこういう 薬 でよく なるとは 信 じられなかったのですが 結 果 的 に 5 カ 月 後 に 薬 をやめました 90 歳 を 過 ぎて 亡 くなりましたが 亡 くなってから 夫 人 がいっぺん 会 いたいというので 札 幌 でお 会 いしたと きに そういえば 鼻 はどうでしたか と 言 ったら いや おかげであれ 以 来 鼻 がよく 通 って 非 常 に 喜 んでい ました ということで その 後 の 経 過 を 知 ることができました 体 調 全 体 を 改 善 することで 間 接 的 に 鼻 もよくなっ たのか 漢 方 のおもしろさの 一 つだと 思 いました これは 28 歳 の 女 性 で 失 恋 して それから 不 眠 症 になった もちろん 眠 剤 をいろいろ 飲 んで だんだん 効 かなくなって それで 来 たんですね 入 ってきた 顔 を 見 ると まず 全 身 がどす 黒 い そして 両 方 の 目 のまわり が 黒 い パンダが 来 た と ちょうどその 年 に 上 野 動 物 園 にパンダが 来 たというので そう 思 ったくらいです そのほか 便 秘 とか 痔 があるとかいろいろ 言 っていましたが もちろん 目 的 は 不 眠 体 格 のいい 人 で 諸 薬 無 効 と 書 きましたが これは 3 カ 月 後 です 私 は 漢 方 を 始 めたばかりだし 自 信 が ないものですから 患 者 さんの 前 で 漢 方 の 本 を 何 冊 も 広 げて さらに 質 問 する そういうことで 不 眠 に 効 きそう な 薬 を 次 から 次 へと 使 った 自 信 がないから 2 週 間 2 週 間 で 効 かなければ 次 の 薬 ですから 3 カ 月 後 とい うのは 6 処 方 使 い 切 ったんですね しかし 全 然 眠 れない もうそろそろ 来 なくなればいいなと 思 うのですが 本 人 はすがるような 目 でやってくる そんな 3 カ 月 後 に しかたがないなと 思 って おなかをいつものように 診 たら 痛 い! と 言 って いきなり 手 を 弾 き 飛 ばされてしまったんですね そのときに 私 はムッとしたんです 師 匠 からおなかは 柔 らかく 触 れと いうことで 決 して 私 の 触 り 方 は 強 くはないんです それがこんなに 痛 がるのは ひょっとしたら 漢 方 で 言 う 瘀 血 古 血 うっ 血 の 訴 えではなかろうか それまであまり 瘀 血 というのは 信 じていなかったのですが あらため て 考 えると 下 腹 を 押 さえると 痛 がる いろいろ 本 をひっくり 返 したけれども いわゆる 実 証 タイプで 便 秘 はし ていない 桂 枝 茯 苓 丸 がいいだろう しかし 桂 枝 茯 苓 丸 に 眠 れるということは 書 いてないし 逆 に 不 眠 症 の ところに 桂 枝 茯 苓 丸 は 適 応 としてない しかし ほかに 使 う 薬 もないので 今 度 は 1 週 間 だけあげたんです ね 不 眠 症 に 桂 枝 茯 苓 丸 料 28 歳 女 性.2 年 前 失 恋 後 不 眠 症 になり 睡 眠 薬 常 用. 顔 色, 目 のまわり 黒 くパンダのよう. 便 秘, 肩 こり, 痔 出 血 疼 痛. 実 証, 臍 上 悸 強 く, 左 下 腹 部 に 強 度 の 圧 痛 あり. 諸 薬 無 効, 桂 枝 茯 苓 丸 料 投 与.2 日 目 大 量 子 宮 出 血 あり, 産 婦 人 科 へ 駆 け 込 む. 出 血 は5 日 間 持 続. 服 薬 翌 日 から 眠 れ, 睡 眠 薬 中 止. 痔 全 治, 便 秘 肩 こり 消 失.7 日 目 別 人 のように 色 白 となる. 通 算 40 日 で 終 了,その 後 も 順 調. ( 松 田 邦 夫 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,153-154) 漢 方 の 瘀 血 という 病 態 概 念 は, 必 ずしも 荒 唐 無 稽 なも のではないことを 考 えさせられた. 翌 日 から 子 宮 出 血 が 起 きたんです それも 非 常 にひどい 出 血 そしてその 日 から 眠 れるようになって 睡 眠 薬 を 中 止 することができたんです 痔 もよくなって 便 秘 もよくなった 肩 こりもよくなった 1 週 間 だか8 日 目 114
だったかに 本 人 が 来 たときに あれっ と 思 ったんです 色 白 になっている 言 葉 は 悪 いですが インディア ンみたいな 黒 い 人 だと 思 っていたのが けっこう 色 が 白 いんだ 何 で 失 恋 したのかなんて 余 計 なことを 考 えた のですが 非 常 に 色 白 になったということが 眠 れるようになったことももちろんですが 私 にとっては 驚 きでし た こういうことが 漢 方 の 瘀 血 という 考 え 方 は 必 ずしも 荒 唐 無 稽 なものではないのではないかと 考 え 始 めた 最 初 です これは 90 歳 の 男 性 でたまたま 私 の 父 の 友 人 で 大 変 なお 金 持 ちで 横 浜 に 住 んでいて 頼 まれて 往 診 した んですね 聞 いてみると 足 腰 が 弱 って 歩 けないということで あといろいろ 腰 が 痛 いとか 血 圧 が 高 いとかあり ましたが 本 人 はお 金 にあかせて 現 代 医 学 の 治 療 はもちろんのこと 漢 方 治 療 鍼 灸 いろいろ 手 を 尽 くした のだけれども どうしてもよくならない ある 偉 い 先 生 から 年 のせいだから と 言 われて 腹 を 立 てたと そんな 話 でした 診 察 してみると 全 体 に 力 は 年 相 応 なのですが 特 に 下 腹 の 力 がない 胃 腸 は 丈 夫 で そのくせいろいろ おいしいものは 食 べたい そこで 本 人 が 処 方 を 書 いてくれというから 便 箋 に 八 味 地 黄 丸 に 人 参 3g という 処 方 を 書 いて 帰 ってきたんですね 外 に 出 て 横 浜 までの 交 通 費 も 診 察 料 も 第 一 お 礼 の 言 葉 も 何 もなかっ たな この 次 一 緒 にくれるのかなと 思 って 帰 ってきました 1 カ 月 後 に 行 きました 劇 的 によくなっていて 元 気 に 歩 けるようになっていたんですね 私 が ああ よか ったですね と 思 わず 言 ったら 本 人 は 何 がいい 漢 方 薬 がこんなに 効 くとは 知 らなかった もっと 早 く 飲 ん でいればよかった それにしても 高 いじゃないか あまり 飲 めない だから いくらぐらいですか と 言 ったら 横 浜 の 中 華 街 で 100 円 だと こういういい 薬 を 保 険 扱 いしないのは あんた 方 の 怠 慢 だ と さんざん 叱 られ ました 漢 方 エキス 製 剤 が 保 険 適 用 になるのは この 5 年 後 です 明 治 天 皇 の 漢 方 の 侍 医 をした 浅 田 宗 伯 という 人 が 巫 を 信 じて 医 を 信 ぜざるもの 病 気 になって 医 者 の 言 葉 よりもお 坊 さんを 頼 る 人 財 を 重 んじて 命 を 軽 くするもの 命 よりお 金 が 大 事 そういう 人 は 治 しても 無 駄 だから そういう 人 に 会 ったら 急 いで 逃 げてこいと 弟 子 たちに 教 えているんです もっと 早 くこの 言 葉 を 見 ればよかったと 思 いました 歩 行 困 難 に 八 味 地 黄 丸 1 90 歳 男 性.1970 年. 旅 行 中 倒 れて 帰 京. 父 に 頼 ま れて 横 浜 の 豪 邸 へ 往 診. 小 柄 で 顔 色 悪 く, 痩 せて 色 黒 の 老 人. 数 年 来 足 腰 が 弱 って 歩 けない. 諸 治 無 効. 年 のせいと 云 われて 立 腹. 腰 痛, 脚 力 なく, 歩 行 困 難 で 庭 の 散 歩 も 出 来 ない. 痩 せて 夜 間 頻 尿, 高 血 圧, 手 が 震 え, 気 分 いらつく. 腹 診 で 腹 力 なく, 臍 上 悸, 臍 下 不 仁. 胃 腸 は 丈 夫. 依 頼 により 出 された 便 箋 に 八 味 地 黄 丸 料 加 人 参 3.0の 処 方 を 記 す. 家 人 に 送 られて 辞 去.( 謝 礼 はな し.お 礼 の 言 葉 もない.) 歩 行 困 難 に 八 味 地 黄 丸 2 1ヶ 月 後 乞 われて 再 度 往 診. 劇 的 に 良 くなり, 腰 痛 なく 足 が 丈 夫 になって 近 所 の 散 歩 も 出 来 るようになった. 私 の 賛 辞 に, 本 人 不 満 の 言 葉 漢 方 薬 がこんなに 効 くとは 知 らなかった.もっと 早 く 飲 んでいれば 良 かった.それにして も 高 い.あまり 飲 めないではないか! と 怒 った 表 情.( 薬 価 100 円 ) 保 険 扱 いしないのはあんた 方 の 怠 慢 だ! 注 ) 漢 方 エキス 製 剤 の 保 険 適 用 はこの5 年 後. 浅 田 宗 伯 * 巫 を 信 じて 医 を 信 ぜざるものと 財 を 重 うして 命 を 軽 くす るものは, 速 やかに 辞 し 去 るべし. ( 栗 園 医 訓 ) * 浅 田 宗 伯 (1815-1894) 幕 末 明 治 時 代 の 漢 方 医 ( 松 田 邦 夫 活 治 験 録 204b) この 例 はいわゆる 腎 虚 と 考 えて 八 味 地 黄 丸 を 使 用 した. 結 局 このときも 往 診 料 はいっさい 触 れないで 今 度 あんたはいつくる? いや もうよくなったから も う 来 ません それは 困 る うちの 娘 孫 もいろいろ 病 気 があるから おれが 呼 んであげるから また 来 てくれ うーん だからお 金 持 ちになれたのかなと 思 いました 115
脳 神 経 外 科 と 漢 方 この 例 はいわゆる 腎 虚 と 考 えて 八 味 丸 を 使 って 私 が 劇 的 にその 効 果 を 実 感 した 例 です 患 者 の 気 持 ち それも 診 断 しなければいけないということを 実 感 させられた 最 初 の 例 です これは 55 歳 の 男 性 で 大 きな 会 社 の 秘 書 室 長 役 員 への 登 竜 門 なんですね その 部 署 で おそらく 頭 を 使 うことが 多 かったのでしょうね もともとの 知 り 合 いで やってきたんです 先 生 あっちのほうが といきなり 入 ってきたので どっちのほうですか と 言 ったんです 聞 いてみたら いつの 間 にかインポテンツになって 人 知 れず 悩 んでいる しかし 見 るからにがっちりした ブルドッグが 立 ち 上 がったような こういう 人 とはケンカしたくないなという 感 じのいかつい 人 です とてもそんなふうには 見 えな い 診 察 してみると みぞおちの 辺 から 脇 腹 にかけて 硬 いんです それで 大 柴 胡 湯 を 処 方 したんです 2 週 間 後 に 非 常 に 喜 んであらわれて 先 生! と 言 って 両 手 で 私 の 手 をパンとつかんで 握 手 なんでし ょうね その 痛 いこと 痛 いこと すごい 力 なんです それで 手 を 振 りながら 先 生 性 欲 が 亢 進 して 青 年 時 代 に 戻 ったようです と 大 変 な 喜 びよう あまり 喜 んだものですから 私 も 何 となくうれしくなって 4 年 目 の 最 終 のときで まだ 大 塚 先 生 のところに 通 っていたので 先 生 に 報 告 したんです 先 生 はその 頃 忙 しくて くどくどとしゃべる 人 に うん うん とうなずいているのですが 患 者 のとめどない 訴 えが 止 まっても 静 かにうなずき 続 けている 寝 ているんですね それでパッと 目 を 開 いて うん 何 日 もって いくか なかなか 古 だぬきで うまくやっているんですよ そこで 先 生 の 目 を 覚 まさせるのは 最 近 の 著 効 例 の 話 で それを 話 すと 急 に 目 が 覚 める そんなとき 先 ほど の 桂 枝 茯 苓 丸 で 眠 れるようになった 例 を 話 したら 先 生 は 非 常 に 喜 んでくださって そのあとでしたね 先 生 実 はインポテンツが 大 柴 胡 湯 で 著 効 を 奏 しまして その 患 者 が とちょっと 説 明 しかかったら そん なことは 当 たり 前 だ と 一 喝 されました インポテンツに 朝 鮮 人 参 あるいは 八 味 地 黄 丸 と 本 にも 書 いてあるし そのように 考 える 人 も 多 いけれども 漢 方 的 な 診 察 が 重 要 であるということを 再 認 識 した 例 でした このとき 大 塚 先 生 が 叱 ったのは 古 典 にいくらでも 書 いてある 常 識 だったようで 自 分 の 不 勉 強 を 痛 感 させられました EDに 大 柴 胡 湯 55 歳 男 性 会 社 秘 書 室 長. 実 は 見 るからに 実 証 頑 健 精 力 旺 盛, 最 近 数 年 陰 痿 に 悩 む. 日 夜 心 労.がっ ちり, 少 し 太 り 気 味. 心 下 部 厚 み 堅 く 緊 張.( 胸 脇 苦 満 ) 1969 年. 大 柴 胡 湯 処 方.2 週 後 嬉 々として 現 れ, 性 欲 亢 進 青 年 時 代 に 戻 ったようと 感 謝.ゴルフ 会 員 権 を 縁 故 で 譲 られる. 大 塚 敬 節 に 報 告. そんなことは 当 たり 前 だ. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,417-418) 一 般 にEDには 朝 鮮 人 参 や 八 味 地 黄 丸 と 考 える 人 もいる.そのよ うに 短 絡 的 に 漢 方 薬 を 用 いるのではなく, 漢 方 的 な 診 察 が 重 要 であることを 再 認 識 した. 大 塚 敬 節 の 言 は, 古 典 にいくらでも 書 いてある 常 識 だというニュ アンスと 思 われる. 自 分 の 不 勉 強 を 痛 感 させられた. これはむち 打 ち 症 で 55 歳 の 男 性 インドネシアをジープで 走 っているときに 穴 に 落 ちて むち 打 ち 症 に なったんですね 現 地 の 一 番 いい 病 院 で 治 らなくて 帰 国 した それで 私 はすぐに ある 大 学 の 脳 外 科 の 准 教 授 の 方 をたまたま 知 っていたものですから 優 秀 な 方 で その 方 を 紹 介 したんですね 帰 ってきて どうだっ た? と 聞 いたら いや あんたのむち 打 ちは 治 らない とこんこんと 言 われて 帰 ってきたと 本 人 は 非 常 にが っかりしているんですね 116
それではと 思 って 葛 根 湯 加 苓 朮 附 合 桂 枝 茯 苓 丸 という 処 方 を 考 えて 処 方 したんです 首 筋 から 後 頭 部 が 重 苦 しく 痛 い それからおそらく 内 出 血 もあるだろうということで この 処 方 をあげたところ 大 変 よく 効 いて 半 年 ですっかり 元 に 戻 りました それで 現 地 に 帰 っていったのですが その 前 に 同 じ 脳 外 科 の 大 家 の 先 生 に もういっぺん 診 てもらえということで 診 察 を 受 けさせたんですね 帰 ってきた 患 者 に 先 生 は 何 と 言 ってい た? と 言 ったら 非 常 に 不 機 嫌 でした 私 は 桂 枝 茯 苓 丸 を 加 えたのは いわゆる 瘀 血 が 潜 在 しているのではないかと 考 えて この 処 方 を 使 いまし た 以 後 むち 打 ち 症 でなかなか 治 らないという 方 はずいぶんこの 処 方 で 治 療 して 経 過 がよいという 経 験 を いたしました むち 打 ち 症 55 歳 男 性. 半 年 前,インドネシアで 草 原 をジープ 走 行 中 に, 穴 に 落 ち,むち 打 ち 症 で 入 院. 治 らず 帰 国. 項 部 鈍 痛, 後 頭 部 痛,C4-8 運 動 制 限, 肩 こり, 耳 鳴 り, 足 冷. 某 大 学 脳 外 科 で 変 形 性 脊 椎 症, 不 治 と 診 断. 体 格 良 好. 葛 根 湯 加 苓 朮 附 湯 ( 附 子 1.0) 合 桂 枝 茯 苓 丸 (1 日 90 粒 ) 処 方.2ヶ 月 後 経 過 良 好.4ヶ 月 後 肩 こり 消 失. 6ヶ 月 後, 全 治 終 診. 非 常 に 喜 んで 現 地 に 復 帰. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,196-197) 西 洋 医 学 で 不 治 といわれた 症 例 が 漢 方 で 奏 効 した. 桂 枝 茯 苓 丸 の 併 用 は,いわゆる 瘀 血 の 潜 在 を 考 えたからである. これはニュージーランドで 診 た 40 歳 の 女 の 人 です 現 地 の 大 きな 商 社 の 支 店 長 の 奥 さんで 現 地 に 来 て しばらくしてからのどが 詰 まる 何 かが 引 っかかっているようで 飲 み 込 もうと 思 っても 飲 み 込 めない 吐 き 出 そうと 思 っても 吐 けない 耳 鼻 科 の 専 門 医 の 診 断 では 異 常 がない そのうちだんだん 呼 吸 も 苦 しくなってくる 気 のせいだということで 薬 をもらったけれども 効 かない このままでは 帰 国 を 考 える そういう 状 態 でした これは 漢 方 では 半 夏 厚 朴 湯 の 適 応 症 なんですね しかし 旅 行 中 だし 何 も 持 っていない さらに 聞 いて みると 本 人 は 日 本 では 大 阪 に 住 んでいて 社 宅 で 家 事 はもちろん 何 でも 自 分 でやっていたんです 現 地 に 来 たら 支 店 長 夫 人 ということで 大 きな 屋 敷 でお 手 伝 いさんが 二 人 いて 何 でもやってくれるんですね 楽 だ なと 思 っているうちに こうなった そこで 私 が お 手 伝 いさんを 辞 めさせて 自 分 で 家 事 労 働 を 一 切 やりなさいと 言 って 帰 ってきたんです やらないだろうと 思 っていたのですが 本 人 は 必 死 だったんです その 通 りにして すっかりよくなったという ことを 礼 状 で 知 ることができました 和 田 東 郭 という 人 は 江 戸 時 代 を 通 じて 最 も 優 れた 名 臨 床 医 で これは 大 塚 先 生 の 言 葉 ですが 大 塚 先 生 がおそらくいちばん 尊 敬 していた 古 い 医 者 なんですね 彼 の 書 いたものに 穏 やかな 日 が 続 く ずっと 続 くと しばしば 気 が 鬱 して 気 鬱 になることがしばしば 見 られるということが 書 いてあります 今 の 症 例 は 使 用 人 にすべて 任 せたために 気 鬱 に 陥 ったと 推 察 されます ですから 体 を 動 かすことで 気 のめぐりをよくするということを 狙 って 幸 いに 奏 効 したんですね 漢 方 薬 を 使 わないで 漢 方 の 考 え 方 を 応 用 した 例 です 117
脳 神 経 外 科 と 漢 方 咽 喉 頭 違 和 感 1 40 歳 某 大 商 社 支 店 長 夫 人.1971 年 ニュージーランド オー クランド( 旧 首 都 )で. 数 ヶ 月 来 のどつまる. 何 かがひっかかっているようで, 飲 み 込 もうとしても 飲 めない, 吐 き 出 そうとしても 吐 けない. 耳 鼻 科 異 常 なく 気 のせいと 言 われて 服 薬 無 効. 息 苦 しく 気 分 落 ち 込 み, 帰 国 考 慮. 内 心 快 哉, 手 元 に 半 夏 厚 朴 湯 なし. 本 人 日 本 で 狭 い 社 宅, 当 地 大 邸 宅,お 手 伝 いが 一 切 行 う. お 手 伝 いをやめさせ, 自 分 で 家 事 労 働 をやるように 指 示 して 帰 国. 半 年 後, 人 に 託 して 高 価 な 香 水 と 礼 状, 完 治 と. 咽 喉 頭 違 和 感 2 折 衷 派 の 泰 斗 - 和 田 東 郭 (1742-1803)の 蕉 窓 雑 話 ; 平 穏 な 日 々が 久 しく 続 くと, 誰 でも 気 鬱 をわずらうのは 世 間 によく 見 られることである.( 意 訳 ) この 例 は, 使 用 人 に 全 てを 委 ねたために, 気 鬱 に 陥 っていたと 推 察 される.そこで, 治 療 は 身 体 を 動 かすことで 気 のめぐりの 改 善 を ねらい, 奏 効 したと 思 われる. 漢 方 薬 を 用 いずに, 漢 方 の 考 え 方 を 応 用 した. これは 私 の 父 親 の 話 で 長 い 間 藝 大 の 教 授 をしていた 関 係 で 弟 子 が 多 いんです 70 歳 のお 祝 いという か 朝 鮮 人 参 のエキスを 元 気 でいてください ということでもらって 飲 んで それから 全 身 に 発 疹 ができて そ れも 非 常 にひどいんですね 夜 も 眠 れない それで 私 が 呼 ばれて すぐに 親 しい 同 級 生 の 皮 膚 科 医 に 見 せ て ああ 薬 疹 だね というわけでステロイド 軟 こうをたくさんもらって これが 治 るのに 11 カ 月 かかりました 私 はこの 2 年 後 に 漢 方 の 道 に 入 ったので このときは 漢 方 を 使 うということは 知 りませんでした その 10 年 後 ちょうど 80 歳 の 父 はまた 朝 鮮 人 参 を 飲 んで 薬 疹 を 起 こしたんですね 弟 子 たちからもらった らしいのですが 今 度 はティーバッグだから いいと 思 った といってしょんぼりしているんですね 見 る 見 るう ちにぽつぽつと 赤 い 発 疹 が 全 身 に 出 てくるんです また 半 年 かかるのか と 嘆 いている 人 参 薬 疹?に 黄 連 解 毒 湯 2 人 参 薬 疹?1 私 の 父, 当 時 70 歳. 元 来 は, 皮 膚 疾 患 には 無 縁. 某 製 薬 の 朝 鮮 人 参 エキスを 飲 み 半 日 後 発 疹. 全 身 に 大 小 の 赤 い 発 疹,10 円 銅 貨 大 から 大 きいも のまで 隆 起,ひっかき 傷 で 血 がにじみ,かゆみの ため 不 眠. 1966 年 ( 昭 和 41 年 ) 当 時 私 は 大 学 内 科 在 籍 中.2 年 後 に 漢 方 の 道 に 入 る. 皮 膚 科 医 は 薬 疹 としステロイド 軟 膏 投 与. 頑 固 に ふえ 続 け,2 週 後 430 個 に 達 した.11ヶ 月 後,よう やく 湿 疹 消 退. 10 年 後, 再 び 朝 鮮 人 参 茶 で 再 発. 今 回 は 黄 連 解 毒 湯 を 服 用 して 熟 睡, 翌 日 湿 疹 は 火 に 水 をかけたように 消 失. 父 は 陽 実 症.その 後, 朝 鮮 人 参 を 単 独 で 飲 むことはなかったが, 半 夏 瀉 心 湯 などはいくら 飲 んでも 平 気 であった. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,350-352) 朝 鮮 人 参 は 漢 方 では 温 熱 薬 で 補 剤.これを 適 応 でない 陽 実 証 の 人 に 使 うとこのような 反 応 が 起 こるということか. ステロイドで 難 渋 した 湿 疹 が, 黄 連 解 毒 湯 で 速 やかに 改 善 したこと は 寒 冷 薬 を 示 すと 思 われる. 冷 やす, 温 めるという 漢 方 の 考 え 方 にも 臨 床 的 意 味 があると 感 じた. 漢 方 で 起 きたものは 漢 方 で 治 さなければと 思 って 黄 連 解 毒 湯 を 飲 ませたんですね 翌 日 起 きてみたら 火 に 水 をかけたように 発 疹 が 消 えていました 父 は 元 気 な 暑 がりの いわゆる 陽 実 証 で こういう 人 には 朝 鮮 人 参 はだめなんですね 半 夏 瀉 心 湯 はいくら 飲 んでも 平 気 なんです 人 参 も 入 っている しかし 黄 連 など が 入 っていて 温 める 人 参 と 冷 やす 黄 連 がうまく 配 合 されている そういうのは 大 丈 夫 なんです このように 朝 鮮 人 参 は 体 を 温 めます 体 力 免 疫 力 を 高 める 温 熱 薬 あるいは 補 剤 適 応 ではない 陽 実 証 の 人 が 飲 むと こういう 反 応 が 起 こることがあるんです ステロイドで 難 渋 した 湿 疹 が 黄 連 解 毒 湯 でひと 晩 でよ くなったということは 寒 冷 薬 というものの 働 きを 示 すと 思 いました このことから 冷 やすとか 温 めるという 漢 方 の 考 え 方 にも 臨 床 的 な 意 味 があると 感 じました 118
これは 家 内 の 母 親 80 歳 です 彼 女 は 若 いときに 3 回 くらいおなかの 手 術 を 受 けて おそらく 癒 着 が 残 っ たんでしょうね 便 がよく 出 ない いつもすっきりしないで おなかが 痛 い 腰 も 痛 い 頼 まれて 私 が 診 たのが 80 歳 のとき おなかが 非 常 に 柔 らかいのですが ポンポンとたたくと 腸 がムクムクと 動 くんです これはおもしろいなと 思 って 入 っていますか という 感 じですね そうすると おなかがムクムク いつまで もおなかをたたいているから まわりの 人 たちは 漢 方 の 診 断 というのは 不 思 議 な 診 断 をするんだなと 思 ったら しいのですが ふっと 気 がつくと 本 人 は 非 常 に 痛 そうな 顔 をしている 腸 が 動 くと おなかは 当 然 痛 いです それであわてて 大 建 中 湯 をあげたんです 2 週 間 後 にはすっかりおなかの 痛 みもなくなり 便 がよく 出 るよ うになったんですね 104 歳 で 亡 くなるまで その 後 こういうことは 一 度 もなかったです 術 後 の 通 過 障 害 に 大 建 中 湯 はよく 使 われますが 私 が 昔 その 威 力 に 非 常 に 驚 いた 例 です 腹 痛 に 大 建 中 湯 80 歳 家 内 の 母.1985 年. 手 術 3 回 (30 歳 外 妊,36,39 歳 腸 閉 塞 ) 腹 痛 持 病.いやなことがあると 腹 痛 を 訴 える.1 年 来 腹 満 痛 悪 化.シクシク 腹 痛, 便 快 通 せず 残 便 感. 下 剤 は 痛 むばかり. 腰 冷 え 水 中 にいるよう. 最 近 腰 痛 悪 化. 143cm,47kg. 脈 遅 弱, 腹 壁 軟 弱 無 力, 鼓 腸 顕 著. 腹 壁 を 叩 くと 腸 がムクムク 動 き 蠕 動 亢 進 触 知. 腸 の 動 きわかり 痛 む. 大 建 中 湯 エキス.2 週 後 体 調 よく 腹 痛 消 失, 排 便 良 好. 腰 の 冷 え, 腰 痛 消 失. 一 人 で 元 気 に 出 歩 き 皆 喜 ぶ.(2009 年 死 去,104 歳 ) ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,96-97) 術 後 の 通 過 障 害 に 大 建 中 湯 が 速 効 を 示 し, 中 止 後 も 再 燃 しなかった. 顔 面 発 疹 に 当 帰 芍 薬 散 遠 縁 の 若 い 女 性. 顔 面 を 大 きなマスクで 隠 し 濃 いサングラ スで 来 診. 顔 面 全 体 ひどい 発 疹, 地 肌 赤 く 腫 れて 汚 らしい 感 じ.ほてり 強 く 痒 い. 月 経 前 必 ず 悪 化, 月 経 終 了 で 良 くな る. 皮 膚 科 治 療 無 効. 腹 診 特 記 すべき 所 見 なし. 月 経 時 悪 化 で 当 帰 芍 薬 散 を 処 方. 次 の 月 経 時 に 顔 面 少 し 発 疹,その 次 はまったく 出 ない. 希 望 により 終 診,その 後 再 発 せず. 大 塚 敬 節 妊 娠, 出 産 に 関 連 して 発 症 する 病 状 には 当 帰 芍 薬 散. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,349) これも 広 義 の 瘀 血 に 該 当 するか. これは 両 親 の 郷 里 の 石 川 県 から 来 た 親 戚 の 女 性 で すごい 顔 をして 入 ってきたんですね まず 大 きなマ スクをして 大 きなサングラスをかけて これが 男 性 だったら 銀 行 強 盗 という 感 じで 顔 が 全 然 分 からない ど うしたんですかと 聞 いたら サングラスとマスクを 取 ったんです 途 端 に 診 察 の 訓 練 で 体 は 動 かなかったと 思 うのですが ギョッとしました お 岩 さんという 感 じで 顔 は 発 疹 なのですが 潰 瘍 みたいにどす 黒 い それ でもうほとんど 顔 全 体 すごいんです 聞 いてみると すごく 火 照 ってかゆい 月 経 の 前 に 必 ずこうなる 月 経 が 終 わるとだんだんよくなるけれども 次 の 月 経 が 来 ると またこうなる 皮 膚 科 の 治 療 はずっと 受 けているけれども 全 然 効 かない このとき 使 ったのが 当 帰 薬 散 です 大 塚 先 生 は 妊 娠 出 産 に 関 連 して 発 症 する 病 状 には 当 帰 薬 散 と 言 っています 私 は 妊 娠 出 産 および 月 経 に 関 連 して 発 症 する 病 状 にいいのではないかと 思 って 使 っていま す 次 の 月 経 のときに 少 し 悪 くなりましたが その 次 からまったく 出 ない もうよくなったからやめる と 言 うから ちょっと 早 いのではないかと 思 ったんだけれども また 悪 くなったらいらっしゃい と 言 っておきました 以 来 三 十 何 年 たちますが 二 度 と 再 発 しません これも 広 い 意 味 の 広 義 の 瘀 血 に 該 当 するのではないかと 思 い ます これは 歩 くのが 遅 いという 58 歳 の 男 性 で ある 医 学 部 の 教 授 です 話 を 伺 うと 歩 くのが 遅 いというのが 主 訴 で 自 分 は 元 来 せっかちで 歩 くのは 速 い だから 奥 さんと 二 人 で 外 出 すると いつもさっさと 歩 いていっ て 曲 がり 角 で 大 きな 声 で 何 しているんだ 遅 いじゃないか といつも 怒 鳴 りつけていました いつの 間 にか 逆 転 して もう 家 内 と 一 緒 に 外 出 するのが 苦 痛 なくらい 家 内 がサッサと 先 のほうに 行 って 振 り 返 って それ 119
脳 神 経 外 科 と 漢 方 も 人 がたくさんいるときに 大 きな 声 で あなた 何 しているの 遅 いじゃない と 怒 鳴 られます 私 は 思 わず 因 果 応 報 と 思 ったのですが まさかそんなことは 言 えませんから 型 のごとく 診 察 したら どうっ ていうことはないんですね 特 に 問 題 はない 足 だけが 遅 いのだったら 八 味 地 黄 丸 食 欲 もあるしと 思 って 1 カ 月 あげたのですが 効 かないんです それで 1 カ 月 たって うーん 効 きませんか と そうしたら この 患 者 さんのほうで いや 漢 方 というのはそんなすぐには 効 かないんじゃないですか 同 じので 結 構 です と 言 われたのですが 待 て 待 てと 思 って 考 えてみると この 人 は 脈 が 非 常 に 弱 いんです ね 脈 が 触 れにくい そしてさらによく 聞 いてみると 非 常 に 疲 れやすい それではと 思 って 補 剤 の 補 中 益 気 湯 に 変 えてみたんです これはだんだんによく 効 いてきて 3 カ 月 後 にかなり 速 くなりました そのときにご 主 人 は 家 内 と 競 争 しています 二 人 で 一 生 懸 命 歩 いていますが ど っちもどっちです 最 近 セックスがだめだったのですが 非 常 によくなりました 補 剤 を 使 うことの 奥 深 さを 知 りました 歩 くのが 遅 い 58 歳 男 性 大 学 教 授. 1988 年. 数 年 来 歩 行 が 遅 い. 易 疲 労 倦 怠, 口 乾. 肝 機 能 低 下. 冬 足 冷. 172cm,65kg. 体 格, 栄 養, 顔 色, 食 欲 普 通. 脈 弱, 舌 乾 微 白 苔. 腹 壁 緊 張 良 好. 八 味 地 黄 丸 無 効. 補 中 益 気 湯 に 変 方 後, 歩 行 改 善.3ヶ 月 後 歩 行 かなり 早 くなる. 性 機 能 回 復 と 喜 ぶ. 一 見 顔 色 よい 実 証 タイプに, 意 外 と 補 中 益 気 湯 有 効 例 がある. 脈 弱 く, 疲 れやすい. 要 注 意. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,438-439) 外 見 だけで 判 断 できない 例 があることと, 補 剤 を 使 うことの 奥 深 さ を 知 った. 胸 痛 77 歳 女 性.1999 年. 子 供 のとき 足 に 霜 焼 け. 若 いとき から 冷 え 症, 平 熱 35.2 年 前 にクーラーで 冷 えてから 右 胸 と 右 背 中 が 強 く 痛 む. 冷 えると 痛 みが 増 悪 する.ペ インクリニックに 通 院 するも 不 治. 手 足 と 腹 が 冷 える. 155cm,52kg. 脈 沈 小. 足 冷. 当 帰 四 逆 加 呉 茱 萸 生 姜 湯 エキス7.5 分 3を 与 える. 1ヶ 月 後, 体 が 暖 まってきた. 胸 背 痛 消 失.2ヶ 月 後 完 治. 冷 えが 良 くなると 同 時 に 他 の 症 状 も 消 失. 自 分 でも プールで 水 中 歩 行 を 始 めている. ( 松 田 邦 夫 活 治 験 録 173b) 冷 えると 痛 むという 症 状 から 温 める 処 方 を 用 いて 奏 効 した 例. これは 胸 が 痛 いということで 右 胸 から 右 の 背 中 が 強 く 痛 いというのが 主 訴 です もちろん 病 院 でいろいろ な 検 査 ところが 引 っかからないんですね 結 局 ペインクリニックで 痛 みだけ 止 めようと 思 ったけれども こ れも 効 かない どうもそういう 痛 みは 冷 えると 悪 化 するということで 脈 も 非 常 に 小 さいし 足 も 冷 たい 少 し 温 めたらどうかというので 当 帰 四 逆 呉 茱 萸 生 姜 萸 を 与 えたんです 1 カ 月 後 に 体 が 温 まってきて 何 よりも 主 訴 の 胸 や 背 中 の 痛 みはすっかり 消 えたんですね 冷 えると 痛 むということで 温 める 処 方 を 使 って 効 いた 例 です これは 小 児 喘 息 の 8 の 女 の 子 3 歳 くらいから 喘 息 でいろいろな 治 療 を 受 けているけれども よくならない 風 邪 を 引 くと 悪 化 する いわゆる 咳 喘 息 で 私 は 小 柴 胡 湯 麻 杏 甘 石 湯 の 合 方 をよく 使 うので このときもあ げたんです 小 学 生 なので 薬 だけおじいさんが 取 りに 来 て そのおじいさんが 煎 じかすをもう 一 度 煎 じて わしが 飲 んでもいいですか というから どうぞ と 言 っておいたんです その 後 この 本 人 と 祖 父 だけ 風 邪 を 引 かないんです 家 族 は 引 いても 引 かない そういうことで 5 カ 月 くら いでこの 子 の 喘 息 は 完 治 しました 免 疫 系 に 影 響 があったのではないかと 思 われます 小 柴 胡 湯 あるいは 麻 杏 甘 石 湯 それぞれ 単 独 ではこういう 効 果 はないんですね 120
小 児 喘 息 8 歳 女 児.3 歳 で 湿 疹. 皮 膚 科 で 湿 疹 は 治 癒 したが 喘 息 を 発 症. 以 来 小 児 科 の 治 療 を 受 け 治 癒 せず. 体 が 弱 く 食 欲 がない. 風 邪 をひきやすく,ひくと 咳 が 続 き, 喘 鳴, 呼 吸 困 難 となる. 口 渇 あり. 148cm,24kg. 小 柴 胡 湯 合 麻 杏 甘 石 湯 ( 煎 )を 処 方. 二 番 煎 じ( 煎 じた 後 の 生 薬 滓 を 再 度 煎 じる)を 祖 父 が 飲 んだ. 喘 息 消 失.その 後 本 人 と 祖 父 だけ 風 邪 をひかない.その 冬 の 風 邪 の 大 流 行 時 にもひかない.5ヶ 月 後 治 癒. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,32-33) 本 例 では, 免 疫 系 に 影 響 があったのではないかと 思 われる. 小 柴 胡 湯 では 同 様 の 経 験 をするが, 麻 杏 甘 石 湯 だけでは,このよう な 効 果 はない. 副 鼻 腔 炎 7 歳 女 児. 1978 年. 小 学 2 年. 幼 稚 園 児 から 副 鼻 腔 炎 で 鼻 閉, 黄 鼻 汁, 後 鼻 漏. 頭 重 痛, 肩 こり, 項 のこわば り, 汗 をかきにくく, 冷 たい 飲 食 物 を 好 む. 120cm,24kg. 皮 膚 ざらつく. 葛 根 湯 加 辛 夷 川 芎 各 1.5, 石 膏 6.0, 薏 苡 仁 5.0を 処 方. 半 年 後, 鼻 閉, 頭 重 痛 消 失. 学 校 の 成 績 抜 群,ビリか らクラス 一 番 となり, 担 任 の 先 生 驚 く. 同 級 生 の 母 親 数 人 来 診, 頭 の 良 くなる 薬 をくれ と 云 う. あれば 私 が 飲 む と 答 える. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,271-272) これは 7 歳 の 女 の 子 で 副 鼻 腔 炎 幼 稚 園 のときから 鼻 が 悪 いんですね もちろん 耳 鼻 科 にかかっているの ですが なかなかよくならない 鼻 が 詰 まる 黄 色 い 鼻 が 出 る それで 胃 腸 には 問 題 がないので 葛 根 湯 加 川 芎 辛 夷 に 少 し 加 えてあげたんですね 半 年 くらいで 鼻 の 症 状 がすっかりよくなった 問 題 は 学 校 の 成 績 が 抜 群 になったんです それまでクラスで 一 番 下 だったようです それがクラスで 1 番 の 成 績 になって 担 任 の 先 生 が 驚 いたそうです まもなく 同 級 生 の 母 親 が 3 人 来 ました 頭 がよくなる 薬 をく れ というから あれば 私 が 飲 む と 言 ってお 引 き 取 りいただきました 口 訣 というのは 処 方 の 使 い 方 のコツというか そういうものを 日 本 の 漢 方 の 医 師 たちが 考 えたんですね こ れは 頭 痛 に 釣 藤 散 旧 ソ 連 の 時 代 に 私 が 北 里 の 東 洋 医 学 研 究 所 の 外 来 担 当 のときにおいでになったん です 高 血 圧 で なかなか 血 圧 が 下 がらない ときに 220 降 圧 剤 を 飲 んでいてもずいぶん 高 い しかし 一 番 の 主 訴 は 頭 痛 なんです それも 朝 4 時 から 5 時 に 激 しい 頭 痛 のために 目 が 覚 める そのほか いろいろなことを 言 っていました 通 訳 を 通 じての 質 疑 です その 頃 は 外 国 に 一 般 人 が 出 るというのはなかな か 難 しい 国 ですから 本 人 に どうして 日 本 においでになったんですか と 言 ったら 東 洋 医 学 の 治 療 を 受 けるために 来 た というから それでは 責 任 があるなと 思 ったりしました この 方 を 診 察 すると いくつかの 症 状 はありますが 決 定 的 だったのは 大 塚 先 生 の 釣 藤 散 は 早 朝 の 頭 痛 に 有 効 なことが 多 い という 言 葉 です そのことを 根 拠 に 釣 藤 散 を 少 し 下 腹 の 圧 痛 もあったので 瘀 血 もあ るかなと 思 って 桂 枝 茯 苓 丸 も 兼 用 にしたんです 2 週 間 後 にほとんど 頭 痛 が 消 えたというので どちらが 効 いているのかなと 思 って 釣 藤 散 だけにしたんで すね 桂 枝 茯 苓 丸 をやめた 順 調 によくなって 2 カ 月 半 後 に 帰 国 しましたが このとき 血 圧 も 下 がっていまし た この 症 例 から 漢 方 薬 というのは 外 国 人 にも 効 くときは 効 くんだなということと 口 訣 古 い 口 訣 だけでなく て こういう 新 しい 口 訣 もときに 参 考 になるということを 知 りました 121
脳 神 経 外 科 と 漢 方 口 訣 の 面 白 さ: 頭 痛 に 釣 藤 散 1 67 歳 女 医 ( 旧 ソ 連 ).1989 年. 北 里 東 医 研 外 来. 2 年 来 高 血 圧 治 療 中, 時 に 最 高 血 圧 220. 朝 4 時 か ら5 時 に 激 しい 頭 痛 のため 目 覚 める. 首 こり, 吐 き 気, 時 々 頻 尿, 悪 寒. 後 頭 部 の 圧 迫 感 が 取 れない. 目 の 疲 れ,みぞおちのつかえ, 手 足 の 冷 え, 不 眠 傾 向, 易 疲 労. 自 国 の 脳 神 経 専 門 病 院 で 頭 部 血 流 異 常 と 診 断 され 降 圧 剤 等 無 効. 東 洋 医 学 の 治 療 を 受 けるため 来 日 したと 云 う. 口 訣 の 面 白 さ: 頭 痛 に 釣 藤 散 2 160cm,71kg. 腹 部 は 柔 らかで 軽 度 心 下 痞 鞕 と 右 胸 脇 苦 満, 腹 部 大 動 脈 拍 動 を 触 知, 右 下 腹 部 に 圧 痛. 血 圧 140-104. 顔 貌 苦 悶 状, 態 度 が 硬 い. 釣 藤 散 料 ( 食 前 )を 処 方. 桂 枝 茯 苓 丸 料 ( 食 後 ) 兼 用. 2 週 後 著 効. 釣 藤 散 料 のみとし,4 週 後 頭 痛 消 失.2ヶ 月 半 後 帰 国 時 血 圧 130-90. ( 松 田 邦 夫 症 例 による 漢 方 治 療 の 実 際 創 元 社 1992,129-131) 大 塚 敬 節 口 訣 釣 藤 散 は 早 朝 の 頭 痛 に 有 効. 私 が 漢 方 薬 を 使 い 始 めた 頃 は 飲 んでくれる 人 がいないんです 当 時 今 から 45 年 くらい 前 大 学 をやめ てから 認 知 されていないので 自 分 で 飲 む あるいは 身 内 の 者 近 親 者 に 飲 んでもらうということで 効 果 を 確 かめる そして 内 科 中 心 から だんだんにほかの 科 の 患 者 さんにも 範 囲 が 及 んできました 治 ると 患 者 その 家 族 が 非 常 に 喜 びます そのときに 医 師 としての 喜 びを 感 じます あるいは 非 常 に 気 難 しい 人 だったのですが よくなってくると この 人 笑 ったこと あるのかしらと 思 うような いつも 苦 虫 を 噛 み 潰 したような 人 が ときにスマイルを 見 せてくれる そのように 親 しくなれたときも やはりうれしいです 私 は 漢 方 の 世 界 に 入 ってから 昔 はすぐほかの 科 へ 回 していた 専 門 外 と 思 う 患 者 を 自 分 で 診 る 機 会 が 増 えました すべて 医 療 に 携 わる 者 は 誰 でも 広 い 知 識 を 常 に 追 い 求 めることが 大 切 だと 思 います 西 洋 医 学 のベテランの 先 生 は 漢 方 に 興 味 をもつ 人 が 多 いです 漢 方 独 特 の 視 点 に 興 味 をもつからだと 思 います 漢 方 には 独 特 の 世 界 があって 経 験 的 に 説 明 します それは 臨 床 的 に 有 用 なことが 多 いです 漢 方 の 魅 力 1 初 め 漢 方 薬 を 自 分 から 始 め, 近 親 者 に 飲 んでも らって 効 果 を 確 かめた. 対 象 は, 内 科 中 心 から 次 第 に 各 科 へと 範 囲 を 拡 げていった. 患 者,そして 患 者 の 家 族 が 喜 ぶとき, 医 師 として の 喜 びを 感 ずる. 気 むずかしい 人 と 親 しくなれたときも 同 様 である. 漢 方 の 魅 力 2 私 は 漢 方 の 世 界 に 入 ってから, 昔 はすぐ 他 科 へ 廻 していた 患 者 を 自 ら 診 る 機 会 がふえた.すべて 医 療 に 携 わる 者 は 誰 でも 広 い 知 識 を 常 に 追 い 求 めることが 大 切 である. 実 際, 西 洋 医 学 のベテラン 医 師 は 漢 方 に 興 味 を 持 つ 人 が 多 い. 漢 方 独 特 の 視 点 に 興 味 を 持 つか らである. 漢 方 には 独 特 の 世 界 があり, 経 験 的 に 説 明 する.それは 臨 床 的 に 有 用 である. 私 は 漢 方 の 世 界 に 入 って 大 塚 敬 節 先 生 という 名 医 に 会 うことができたのは 非 常 に 幸 運 でした 半 信 半 疑 だった 私 が 先 生 の 治 療 を 見 て だんだんに 引 き 込 まれていったという 感 じです しかし 治 せない 患 者 はいま す 理 解 できない 患 者 もいます そういうときの 医 師 の 態 度 考 え 方 が 問 われるということも 知 りました 私 は 漢 方 を 学 ぶことによって 西 洋 医 学 と 違 う 視 点 をもつようになりました 西 洋 医 学 の 気 づかない 病 態 に 気 づく かつ 幅 広 い 治 療 手 段 を 得 られたというのは この 医 学 を 学 ぶことの 醍 醐 味 だったと 思 います ただ 漢 方 だけの 専 門 にとどまったら かえって 漢 方 のよさは 消 えます 122
漢 方 治 療 では 患 者 さん あるいはそういう 関 係 者 と 心 の 交 流 が 深 く 付 き 合 いもまた 長 くなります 治 療 を 通 じて 医 師 の 側 も 変 わりますし あるいは 患 者 から 教 えられることもあります 患 者 が 変 わって 医 師 の 側 も 変 わることがあります 今 申 し 上 げたような 症 例 を 通 じて 私 は 漢 方 の 道 にだんだんと 魅 了 されて 引 き 込 まれて 今 日 まで 歩 いてき ました 患 者 が 教 えてくれるという かつての 大 塚 先 生 の 言 葉 を 実 感 しています 漢 方 の 魅 力 3 私 が 漢 方 の 世 界 に 入 った 道 は 顧 みて 幸 運 であっ た. 治 せない 患 者, 理 解 できない 患 者 にたいして の 医 師 の 態 度, 考 え 方 が 問 われることを 知 った. 漢 方 を 学 ぶことによって, 私 は 西 洋 医 学 と 違 う 視 点 を 持 った. 西 洋 医 学 の 気 づかない 病 態 に 気 づき, かつ 幅 広 い 治 療 手 段 を 得 られたのはこの 医 学 を 学 ぶことの 醍 醐 味 であった. ただし 漢 方 だけの 専 門 にとどまったら, 反 って 漢 方 の 良 さは 消 えることも 自 戒 している. 漢 方 の 魅 力 4 漢 方 治 療 では, 患 者 と 医 療 従 事 者 との 心 の 交 流 が 深 く, 付 き 合 いの 年 数 も 長 くなる. 治 療 を 通 じて 術 者 は 患 者 から 教 えられる. 患 者 が 変 わり, 術 者 も 変 わる. 上 述 のような 症 例 を 通 じて 私 は 漢 方 の 道 に 次 第 に 魅 了 されて 今 日 まで 歩 んできた. 患 者 が 教 えてく れる との 大 塚 敬 節 の 言 を 実 感 している. 漢 方 医 学 は 昔 から 現 在 まで 多 くの 先 輩 医 師 の 経 験 に 基 づくもので 先 人 の 知 恵 の 結 晶 でもあります 皆 さ ま 方 にも こういう 先 人 の 知 恵 の 結 晶 を 絶 やすことなく 将 来 につなげていっていただきたいと 願 っています ご 清 聴 ありがとうございました 終 わりに 漢 方 医 学 は 昔 から 現 在 まで 多 くの 先 輩 医 師 の 経 験 に 基 づくもので, 先 人 の 知 恵 の 結 晶 である. 先 人 の 知 恵 の 結 集 を 絶 やすことなく, 将 来 に 繋 げ る 担 い 手 になっていただきたい. 123