ISHIZUE 139 No. http://www.bmi.or.jp 財団法人 日本ビルヂング経営センター 日本ビル経営管理士会 JBMS JAPAN BUILDING MANAGEMENT INSTITUTE BULLETIN 特別座談会 ビル経営管理士の意義と 実務上の利点 重要性増す役割と高まる期待に応えて 丸の内パークビル 三菱一号館 三菱地所株式会社 ビルアセット開発部 榑林 康治 4 2009 APRIL
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NEWS ISHIZUE NEWS NEWS No.139 ISHIZUE 3
ビル 経 営 管 理 士 の 意 義 と 実 務 上 の 利 点 重 要 性 増 す 役 割 と 高 まる 期 待 に 応 えて ビル 経 営 管 理 士 に 対 する 注 目 度 期 待 度 はますます 高 まっている 不 動 産 の 所 有 と 経 営 の 分 離 の 流 れのなかで 実 際 に 収 益 を 生 み 出 す 不 動 産 の 経 営 管 理 運 営 に 携 わるアセットマネジメント(AM)や プロパティマネジメント(PM) 業 務 にとって 必 携 の 資 格 で 人 気 も 高 い 不 動 産 特 定 共 同 事 業 法 や 金 融 商 品 取 引 法 などでも 必 要 な 公 的 資 格 としての 側 面 も 持 つ ビル 経 営 管 理 士 の 意 義 と 実 務 上 の 利 点 などを 行 政 ( 国 土 交 通 省 )およびビル 経 営 管 理 士 の 皆 さんに 語 っていただいた 座 談 会 出 席 者 国 土 交 通 省 総 合 政 策 局 不 動 産 業 課 不 動 産 投 資 係 長 笠 嶋 七 生 氏 三 菱 地 所 ( 株 ) テナント 営 業 部 副 長 北 川 純 氏 氏 住 友 不 動 産 ( 株 ) ビル 事 業 本 部 管 理 統 括 部 部 長 補 佐 高 島 務 氏 Shidaインベストメント&マネジメント 代 表 信 田 直 昭 氏 司 会 ( 財 ) 日 本 ビルヂング 経 営 センター 参 事 山 田 清 裕 山 田 ( 司 会 ) 公 的 資 格 の 側 面 不 動 産 特 定 共 同 事 業 法 金 融 商 品 取 引 法 など 4 ISHIZUE April 2009
ビル 経 営 管 理 士 試 験 合 格 者 最 近 5か 年 の 試 験 実 施 結 果 および 合 否 基 準 [ 試 験 実 施 結 果 ] 実 施 状 況 平 成 16 年 度 平 成 17 年 度 平 成 18 年 度 平 成 19 年 度 平 成 20 年 度 受 験 申 込 者 360 365 397 770 715 平 均 年 齢 39.3 39.1 38.6 39.8 38.2 女 性 の 申 込 者 11 26 17 53 66 受 験 者 321 323 342 698 641 出 席 率 (%) 89.2 88.5 86.1 90.6 89.7 試 験 合 格 者 205 229 225 482 448 合 格 率 (%) 63.9 70.9 65.8 69.1 69.9 平 均 年 齢 38.7 38.3 37.6 40.1 38.2 女 性 の 合 格 者 8 13 8 27 36 [ 合 否 基 準 ] ( 点 以 上 ) 3 科 目 合 計 180 180 180 197 180 企 画 立 案 48 51 46.5 58 46 賃 貸 営 業 58 50 61 68 64 管 理 運 営 52 56 54 67.5 64 笠 嶋 各 分 野 の 基 礎 を 総 合 的 に 習 得 ビル 経 営 管 理 は 不 動 産 投 資 の メインエンジン 山 田 信 田 山 田 信 田 No.139 ISHIZUE 5
ビル 経 営 管 理 講 座 受 講 者 数 と ビル 経 営 管 理 士 受 験 申 込 者 数 の 推 移 1000 800 600 400 200 325 182 168 179 124 131 372 211 210 246 970 403 459 360 347 365 405 290 289 311 398 279 250 257 256 320 258 188 192 193 290 170 277 273 231 179 172 186 142 162 161 129 0 S56 57 58 59 60 61 62 63 H1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 770 715 488 530 資 格 取 得 を 機 に 体 系 的 に 勉 強 することが できました 資 格 取 得 で 体 系 的 に 知 識 を 習 得 幅 広 い 分 野 を 勉 強 山 田 北 川 山 田 高 島 行 政 から 見 たビル 経 営 管 理 士 の 役 割 企 画 立 案 管 理 運 営 の 能 力 が 有 効 山 田 笠 嶋 6 ISHIZUE April 2009
ビル 経 営 管 理 士 の 意 義 と 実 務 上 の 利 点 重 要 性 増 す 役 割 と 高 まる 期 待 に 応 えて 役 に 立 つテキストと スクーリング 内 容 山 田 北 川 高 島 ビル 経 営 管 理 士 試 験 は 国 土 交 通 大 臣 の 登 録 を 受 けた 証 明 事 業 として 位 置 づけられているものです スクーリングで 聞 いた 話 も 非 常 に 興 味 深 かったです No.139 ISHIZUE 7
ビル 経 営 管 理 士 の 意 義 と 実 務 上 の 利 点 重 要 性 増 す 役 割 と 高 まる 期 待 に 応 えて 一 般 の 投 資 家 の 方 にも ビル 経 営 管 理 士 の 役 割 を もっと 知 っていただきたい ビル 経 営 管 理 士 が 生 み 出 すキャッシュフロー ビル 事 業 者 投 資 家 に 不 動 産 ファンダメンタルズの 判 断 を 伝 えるのも 使 命 山 田 笠 嶋 山 田 高 島 8 ISHIZUE April 2009
ビル 経 営 管 理 士 登 録 証 明 事 業 のあゆみ 平 成 3 年 建 設 省 告 示 の ビル 経 営 管 理 に 関 する 知 識 及 び 技 術 の 審 査 証 明 事 業 認 定 規 程 により 財 団 法 人 日 本 ビルヂング 経 営 センターは 事 業 者 の 大 臣 認 定 を 受 け ビル 経 営 管 理 士 資 格 試 験 がスタート 平 成 11 年 9 月 不 動 産 特 定 共 同 事 業 法 施 行 規 則 の 改 正 により ビル 経 営 管 理 士 制 度 は 不 動 産 特 定 共 同 事 業 の 業 務 管 理 者 としての 能 力 の 審 査 証 明 事 業 として 国 土 交 通 大 臣 の 認 定 を 受 けた これにより ビル 経 営 管 理 士 は 公 的 資 格 制 度 となった 平 成 18 年 3 月 の 同 施 行 規 則 の 改 正 により 大 臣 認 定 の 審 査 証 明 事 業 は 大 臣 登 録 の 登 録 証 明 事 業 に 移 行 した この 制 度 変 更 に 伴 い 当 センターは 同 年 10 月 登 録 番 号 第 1 号 を 受 け ビル 経 営 管 理 士 試 験 を 実 施 している 平 成 12 年 9 月 に 制 定 された 不 動 産 投 資 顧 問 業 登 録 規 程 において ビル 経 営 管 理 士 が 登 録 の 際 の 必 要 資 格 の 一 つに 認 め られた 平 成 19 年 9 月 施 行 の 金 融 商 品 取 引 法 において 投 資 運 用 業 の 中 の 不 動 産 関 連 特 定 投 資 運 用 業 を 登 録 するには 不 動 産 投 資 顧 問 業 登 録 規 程 の 総 合 不 動 産 投 資 顧 問 業 登 録 を 受 けていることが 必 要 となった これにより 金 融 商 品 取 引 法 においてビル 経 営 管 理 士 は 重 要 な 資 格 となっている 北 川 信 田 一 層 高 まる ビル 経 営 管 理 士 に 対 する 期 待 と 役 割 の 大 きさ 山 田 ビル 経 営 管 理 士 が 管 理 しているビルは 良 いビルである ことを もっとアピールする 必 要 があります No.139 ISHIZUE 9
文 化 芸 術 歴 史 等 街 の 機 能 の 深 まり を 目 指 す 丸 の 内 再 構 築 第 2ステージ 第 一 弾 プロジェクト 三 菱 地 所 は 1998 年 に 丸 の 内 再 構 築 に 取 り 組 んでいくことを 表 明 しました 2007 年 までの10 年 間 を 第 1ステージ と 位 置 付 け 街 ブランド 戦 略 に 基 づき それまでのビジネスに 特 化 した 街 から 開 かれた 多 様 性 のある 街 へと 転 換 を 図 るべく 丸 の 内 ビル 新 丸 の 内 ビル 東 京 ビル 丸 の 内 オアゾなど 主 に 東 京 駅 前 周 辺 を 重 点 的 に 機 能 更 新 して 参 りました 2008 年 度 から 始 まる 丸 の 内 再 構 築 第 2ステージ では 有 楽 町 大 手 町 エリア 全 域 への 拡 がり と 文 化 芸 術 歴 史 等 街 の 機 能 の 一 層 の 深 まり を 目 指 して さらなる 領 域 へ 進 んでいきます 今 般 その 第 一 弾 プロジェクト 丸 の 内 パークビルディング 三 菱 一 号 館 が 4 月 末 に 竣 工 を 迎 えることになりますので 紹 介 させていただきます 三 菱 地 所 株 式 会 社 ビルアセット 開 発 部 榑 林 康 治 1 ( 図 表 1) 計 画 概 要 所 在 地 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 二 丁 目 6 番 1 号 2 号 敷 地 面 積 約 11,900m2 延 床 面 積 約 205,000m2 階 数 [ 丸 の 内 パークビルディング] 地 下 4 階 地 上 34 階 塔 屋 3 階 [ 三 菱 一 号 館 ] 地 下 1 階 地 上 3 階 高 さ 約 157m 構 造 [ 丸 の 内 パークビルディング] 鉄 骨 造 鉄 骨 鉄 筋 コンクリート 造 [ 三 菱 一 号 館 ] 煉 瓦 組 積 造 駐 車 台 数 282 台 設 計 監 理 株 式 会 社 三 菱 地 所 設 計 施 工 株 式 会 社 竹 中 工 務 店 図 表 1/ 建 築 概 要 ( 図 表 2) 1 丸 の 内 ビル 2 三 菱 UFJ 信 託 銀 行 本 店 ビル 3 丸 の 内 オアゾ 4 東 京 ビル 5 新 丸 の 内 ビル 6ザ ペニンシェラ 東 京 図 表 2/ 略 地 図 & 施 設 配 置 図 10 ISHIZUE April 2009
2 丸の 内パ ー クビ ル の特 徴 図 表 3 なるオープンカフェ エリアの賑わい 号館の赤煉瓦との調和を図りつつ 高 の中心軸である丸の内仲通り沿いには 機能オフィスの先進性を表現していま オフィス基準階フロア 図表4 は有 高感度な物販店舗が軒を連ね まちを す 丸の内エリアの高層ビル群の中で 効面積が約1100坪の無柱空間 丸の 訪れる人々を迎えます また 建物内 もひときわ目を引く色使いでありなが 内エリアでも最大規模の開放的な空間 B1F 3Fにはバリエーション豊かな ら 落ち着きのある優雅な印象を与え となります レイアウト効率の高い正 飲食店舗 4Fにはフィットネスクラ るデザインになっています 方形のオフィスゾーンをベースとしな ブが出店し この街で活躍するビジネ 低層部については 西面には三菱一 がら 一号館広場に面した南側は バ スパーソンに快適なオフィスライフを 号館の窓飾りをモチーフにしたアイア リエーション豊かなパノラマゾーンと 提供します ンワークをアクセントにして商業ゾー 1. 高規格オフィス して 執務スペース 会議室 個室 コミュニケーションスペース等 様々 なビジネスシーンに対応できるプラン 3. 外観デザイン 高層部の外装ファサードは 三菱一 ンの華やかさを演出する一方 東面に は旧丸ノ内八重洲ビルの小松石貼のオ フィスエントランスと尖塔が再現され となっています また ダイナミック な吹き抜け空間を有するダブルデッキ のエントランスロビーは 専用の1F 車寄せと合わせて オフィスとしての 風格 を高めています 5F 34Fのオフィスフロアは殆ど 全てのテナントが決定しており 三菱 商事 新日本製鐵等 日本を代表する グローバル企業に新本社としてご利用 いただくことが決まっています 2. 商業ゾーン B1F 4Fとアネックス棟は商業 ゾーン 丸の内コンフォート をテー マに様々な店舗が出店します 一号館 広場の緑を臨む区画には憩いの空間と 図表3 断面構成図 縦図 No.139 IS H IZ U E 11
4. 環 境 対 応 ( 図 表 5) 図 表 4/ 基 準 階 フロア 平 面 図 図 表 5/エアフローウィンドウ 模 式 図 12 ISHIZUE April 2009
3 図 表 6/ 一 丁 倫 敦 の 街 並 み 写 真 三 菱 一 号 館 の 歴 史 ビジネス 街 としての 丸 の 内 の 歴 史 ( 図 表 6) ( 図 表 7) 三 菱 一 号 館 の 復 元 免 震 装 置 を 設 置 して 現 代 基 準 に 適 合 した 耐 震 性 能 を 確 保 No.139 ISHIZUE 13
図 表 7/ 保 存 部 材 写 真 三 菱 一 号 館 美 術 館 としての 活 用 丸 の 内 の 歴 史 と 立 地 をふまえた 文 化 交 流 発 信 の 中 核 施 設 図 表 8/ 三 菱 一 号 館 美 術 館 ロゴ ( 図 表 8) 14 ISHIZUE April 2009
4 ( 図 表 9) 図 表 9/ 一 号 館 広 場 イメージパース 5 No.139 ISHIZUE 15
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判 例 百 選 連 載 第 21 回 山 下 渡 辺 法 律 事 務 所 弁 護 士 渡 辺 晋 Susumu Watanabe 昭 和 55 年 3 月 一 橋 大 学 卒 業 同 年 4 月 に 三 菱 地 所 入 社 平 成 2 年 3 月 三 菱 地 所 退 社 平 成 元 年 11 月 司 法 試 験 合 格 平 成 4 年 4 月 弁 護 士 登 録 ( 第 一 東 京 弁 護 士 会 ) 平 成 14 年 4 月 山 下 渡 辺 法 律 事 務 所 開 設 現 在 に 至 る 判 例 081 賃 借 店 舗 内 の 殺 人 事 件 に 関 する 賃 借 人 への 損 害 賠 償 請 求 東 京 地 裁 平 成 18 年 4 月 26 日 判 決 / 判 例 マスタ 解 説 本 裁 判 例 は 平 成 12 年 1 月 に 東 京 都 港 区 にあるアジア 料 理 店 内 で 発 生 した 殺 人 事 件 について 賃 借 人 および 店 舗 を 経 営 していた 転 借 人 に 対 して ビル 所 有 者 が 損 害 賠 償 を 求 めた 事 件 である 裁 判 所 は 賃 借 人 に 対 する 訴 えも 転 借 人 に 対 する 訴 えも いずれも 認 めなかった 事 案 の 概 要 裁 判 所 の 判 断 Xはビルの 賃 貸 人 Yは 賃 借 人 Zは 転 借 人 であり Zが 貸 室 において ア ジア 料 理 店 を 経 営 していた 平 成 12 年 1 月 25 日 午 前 7 時 ころ Zの 従 業 員 であるBが 店 舗 内 において 副 店 長 Aを 殺 害 し 売 上 金 を 奪 うという 事 件 が 発 生 した その 後 XとYは 延 滞 賃 料 や 更 新 料 の 支 払 問 題 を 解 決 する 念 書 を 作 成 したが その 念 書 には 平 成 12 年 1 月 に 貸 室 内 で 発 生 した 従 業 員 同 士 の 殺 人 事 件 に 関 する 補 償 は 別 途 金 銭 補 償 するものとする との 条 項 が 定 められた この 状 況 の 中 で Xが YおよびZに 対 し 事 件 によって 不 動 産 が 減 価 し 損 害 を 被 ったとして 訴 えを 提 起 した 20 ISHIZUE April 2009
判 例 082 ビル 室 内 の 内 照 式 看 板 およびクロスの 撤 去 請 求 仙 台 地 裁 平 成 20 年 8 月 21 日 判 決 / 最 高 裁 ホームページ 解 説 仙 台 駅 前 にあるビルの 賃 貸 借 室 内 に 無 断 で 設 置 された 英 会 話 教 室 の 内 照 式 看 板 とクロスが 夜 間 におけ る 都 市 景 観 を 害 しているとして 賃 貸 人 が 英 会 話 教 室 を 経 営 する 賃 借 人 に 対 して 契 約 条 項 に 基 づく 撤 去 を 請 求 した 事 案 である 裁 判 所 は 内 照 式 看 板 の 撤 去 請 求 は 認 める 一 方 クロスの 撤 去 については 権 利 の 濫 用 であるとして 認 めなかった 事 案 の 概 要 裁 判 所 の 判 断 A 社 は 平 成 4 年 9 月 22 日 語 学 教 室 を 経 営 するY 会 社 に 対 し Y 社 の 仙 台 駅 前 校 の 英 会 話 教 室 として 利 用 する 目 的 で A 社 所 有 ビルの3 階 を 賃 貸 した 賃 貸 借 契 約 には 賃 借 人 が 物 件 の 外 部 ( 出 入 口 扉 外 壁 窓 硝 子 スクリーン ブラ インド シャッター 等 を 含 む)に 商 号 商 標 その 他 のものを 表 示 するとき 看 板 および 広 告 並 にこれに 類 する 設 備 をする ときには 予 め 文 書 により 賃 貸 人 の 許 可 を 得 ることを 必 要 とし その 費 用 は 賃 借 人 の 負 担 とする 本 契 約 の 条 項 に 基 づ く 通 告 申 し 出 承 諾 その 他 意 思 表 示 はすべて 書 面 によらなければ その 効 力 を 生 じない と 定 められていた A 社 は 平 成 14 年 7 月 11 日 X 社 と 合 併 し 賃 貸 借 契 約 における 賃 貸 人 は X 社 となった Y 社 は 平 成 17 年 12 月 賃 貸 借 室 内 に 内 照 式 看 板 を 取 り 付 け また Y 社 のロ ゴマークを 記 載 したクロスを 貼 付 した が これらの 工 事 の 際 X 社 からY 社 に 対 する 書 面 による 事 前 許 可 はなされてい ない X 社 は Y 社 に 対 し 内 照 式 看 板 とク ロスの 撤 去 を 要 請 したが Y 社 がこれに 応 じなかったので 訴 えを 提 起 するに 至 った No.139 ISHIZUE 21
判 例 083 ビル 賃 貸 借 終 了 時 の 原 状 回 復 東 京 地 裁 平 成 20 年 1 月 16 日 判 決 /ウエストロー ジャパン 解 説 原 状 回 復 は ビル 事 業 における 最 もトラブル 発 生 の 可 能 性 が 高 い 局 面 のひとつであるが 裁 判 例 として 公 表 されるケースは 必 ずしも 多 くはない そのような 中 で 本 裁 判 例 は 原 状 回 復 のトラブルが 判 決 にまで 至 った 数 少 ない 事 案 である 1 原 状 回 復 が 完 了 していなくとも 鍵 を 返 還 したことによって 明 渡 しがなさ れたと 評 価 されていること 2 明 渡 しから 原 状 回 復 完 了 までの 間 について 賃 料 相 当 額 の 倍 額 のペナルティ は 認 められなかったが 賃 料 相 当 額 の 請 求 が 認 められたこと 3 賃 貸 人 が 自 ら 原 状 回 復 を 完 了 しえた 時 を 起 点 として 6か 月 後 に 保 証 金 を 返 還 すべきものとされたこと 等 実 務 上 参 考 になる 判 断 がなされている また 賃 貸 人 側 の 勧 める 大 手 建 設 会 社 の 原 状 回 復 工 事 の 見 積 金 額 が2100 万 円 であるのに 対 し 賃 借 人 が 数 百 万 円 で 原 状 回 復 することが 可 能 だと 主 張 した 点 に 関 し 建 物 については 全 面 的 な 補 修 等 が 必 要 であり 大 手 建 設 会 社 の 見 積 書 において 示 された 工 事 項 目 及 び 工 事 金 額 は 細 部 を 除 いておおむね 妥 当 と 解 されるとされた 判 示 部 分 についても 注 目 に 値 するものである 事 案 の 概 要 裁 判 所 の 判 断 賃 貸 人 Yと 賃 借 人 Xは 平 成 6 年 6 月 15 日 Kビル 西 館 2 階 109.08 坪 および 東 館 2 階 182.83 坪 について 保 証 金 を4382 万 900 円 として 賃 貸 借 契 約 を 締 結 した 賃 貸 借 契 約 には 契 約 終 了 と 同 時 にXが 物 件 を 原 状 に 復 さないときは Yは 自 ら 諸 造 作 設 備 等 の 収 去 破 損 故 障 特 別 な 使 用 方 法 に 伴 う 損 耗 を 修 復 することが できる 旨 および Xが 原 状 回 復 義 務 を 履 行 し かつ 本 件 建 物 を 完 全 に 明 け 渡 し た 後 6か 月 以 内 に 保 証 金 残 額 を 返 還 する 旨 の 定 めがなされていた Xは 平 成 16 年 7 月 に 解 約 を 申 し 入 れ 翌 年 1 月 31 日 Yから 預 かっていた 鍵 をY に 返 還 したが 退 去 に 関 してXとYの 間 でトラブルが 生 じ Xによる 原 状 回 復 工 事 がなされないままとなり XがYに 対 して 保 証 金 返 還 の 訴 訟 が 提 起 された 22 ISHIZUE April 2009
判 例 084 賃 貸 人 の 修 繕 義 務 の 不 履 行 による 損 害 賠 償 請 求 最 高 裁 平 成 21 年 1 月 19 日 判 決 / 最 高 裁 ホームページ 解 説 賃 貸 人 は 賃 貸 物 の 使 用 及 び 収 益 に 必 要 な 修 繕 をする 義 務 を 負 う( 民 法 606 条 1 項 ) 賃 貸 人 がこの 義 務 を 履 行 せず そのために 賃 借 人 に 損 害 が 生 じたときには 賃 貸 人 に 損 害 賠 償 義 務 が 生 ずるのであるが 本 裁 判 例 は 店 舗 の 賃 借 人 が 賃 貸 人 の 修 繕 義 務 の 不 履 行 により 被 った 営 業 利 益 相 当 の 損 害 を 被 ったケー スにおいて 賃 借 人 が 損 害 を 回 避 又 は 減 少 させる 措 置 を 執 ることができたと 解 される 時 期 以 降 は 損 害 賠 償 請 求 することはできないとされた 事 案 である 事 案 の 概 要 裁 判 所 の 判 断 賃 借 人 Xは カラオケ 店 などの 経 営 を 業 とする 株 式 会 社 賃 貸 人 Yは 建 物 の 所 有 者 である 平 成 4 年 9 月 ころから 漏 水 の 事 故 が 起 こり 始 めて 本 件 店 舗 部 分 に 浸 水 が 頻 繁 に 発 生 した トイレの 水 が 止 まらなかった ことがその 原 因 であったこともあるが 原 因 が 判 明 しない 場 合 も 多 かった 平 成 9 年 2 月 12 日 には 浄 化 槽 室 排 水 ピット 内 の 排 水 用 ポンプの 制 御 系 統 の 不 良 などによって 本 件 店 舗 部 分 が 床 上 30 50cmまで 浸 水 し( 本 件 事 故 ) 本 件 店 舗 部 分 でのカラオケ 店 の 営 業 ができなく なった そこで Xは Yに 対 し 浸 水 事 故 に より 営 業 することができなかったことに よる 営 業 利 益 喪 失 の 損 害 を 受 けたなどと 主 張 して 債 務 不 履 行 又 は 瑕 疵 担 保 責 任 に 基 づく 損 害 賠 償 を 求 めた No.139 ISHIZUE 23
ISHIZUE NO.139 COVER PHOTO DATA CONTENTS 2 4 10 16 Vol.8 20 21