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Transcription:

平 成 26 年 2 月 5 日 判 決 言 渡 平 成 24 年 ( 行 コ) 第 345 号 納 付 義 務 不 存 在 確 認 等 請 求 控 訴 事 件 主 文 本 件 控 訴 を 棄 却 する 控 訴 費 用 は 控 訴 人 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 控 訴 の 趣 旨 1 原 判 決 中, 控 訴 人 敗 訴 部 分 を 取 り 消 す 2 被 控 訴 人 の 予 備 的 請 求 を 棄 却 する 第 2 事 案 の 概 要 等 1 事 案 の 概 要 (1) 本 件 は, 英 国 領 バミューダ 諸 島 ( 以 下 バミューダ という )の 法 律 に 基 づいて 組 成 されたリミテッド パートナーシップ( 以 下 LPS とい う )であり,かつ 特 例 パートナーシップ( 以 下 EPS という )であ る 被 控 訴 人 が, 処 分 行 政 庁 から, 被 控 訴 人 の 平 成 13 年 4 月 16 日 から 同 年 12 月 31 日 までの 事 業 年 度 に 関 し, 国 内 源 泉 所 得 である 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 ( 課 税 所 得 額 26 億 7675 万 9136 円 に 対 する 納 付 すべ き 法 人 税 額 8 億 0254 万 7700 円 )について 法 人 税 申 告 書 の 提 出 がなか ったとして, 法 人 税 についての 決 定 処 分 及 び 無 申 告 加 算 税 1 億 2038 万 1 000 円 の 賦 課 決 定 処 分 を 受 けた( 以 下, 前 者 を 本 件 決 定, 後 者 を 本 件 賦 課 決 定 といい, 併 せて, 本 件 各 決 定 という )ことに 対 し, 被 控 訴 人 は, 我 が 国 の 法 人 税 法 上 の 納 税 義 務 者 に 該 当 せず, 国 内 源 泉 所 得 である 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 を 受 領 した 事 実 はないと 主 張 して, 控 訴 人 に 対 し,1 主 位 的 請 求 として, 本 件 各 決 定 に 係 る 納 税 義 務 が 存 在 しないこと の 確 認 を 求 め,2 予 備 的 請 求 として, 本 件 各 決 定 の 取 消 しを 求 めた 事 案 であ る -1-

なお, 略 語 は, 特 に 断 らない 限 り, 原 判 決 の 例 による (2) 争 点 は, 被 控 訴 人 の,(a) 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 ( 被 控 訴 人 が 法 人 税 法 2 条 4 号 の 外 国 法 人 に 該 当 し, 同 法 4 条 2 項 により 法 人 税 の 納 税 義 務 を 負 うか( 争 点 1),(b) 租 税 法 上 の 人 格 のない 社 団 等 該 当 性 ( 仮 に, 被 控 訴 人 が 外 国 法 人 に 該 当 しなくても, 同 法 2 条 8 号 の 人 格 のない 社 団 等 に 該 当 し, 同 法 4 条 2 項 により 収 益 事 業 から 生 ずる 国 内 源 泉 所 得 について 法 人 税 の 納 税 義 務 を 負 うか( 争 点 2),(c) 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 に ついての 国 内 源 泉 所 得 の 有 無 ( 被 控 訴 人 が 同 法 138 条 1 号 所 定 の 国 内 に ある 資 産 の 運 用 又 は 保 有 により 生 ずる 所 得 として, 同 法 施 行 令 177 条 1 項 4 号 所 定 の 匿 名 組 合 契 約 に 基 づき 利 益 の 分 配 を 受 ける 権 利 により 生 ず る 国 内 源 泉 所 得 を 得 ていたか( 争 点 3)である (3) 原 審 は, 争 点 1につき, 被 控 訴 人 は 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 すると は 認 められず, 争 点 2につき, 被 控 訴 人 が 租 税 法 上 の 人 格 のない 社 団 等 に 該 当 するとは 認 められず,したがって, 被 控 訴 人 は 法 人 税 法 上 の 納 税 義 務 者 に 当 たるということはできないとした 上, 本 件 各 決 定 はいずれも 違 法 である が, 無 効 であるとまではいえないとして,1 主 位 的 請 求 を 棄 却 し,2 予 備 的 請 求 を 認 容 して, 本 件 各 決 定 を 取 り 消 した そこで, 控 訴 人 が, 上 記 2を 不 服 として, 本 件 控 訴 をした 2 関 係 法 令 の 定 め, 前 提 事 実, 争 点 及 び 争 点 に 対 する 当 事 者 の 主 張 (1) 関 係 法 令 の 定 め, 前 提 事 実, 争 点 及 び 争 点 に 対 する 当 事 者 の 主 張 は, 原 判 決 別 紙 7に(2)のとおり 争 点 3についての 当 審 における 当 事 者 の 主 張 を 加 え, 後 記 3,4のとおり 争 点 1,2についての 当 審 における 控 訴 人 の 主 張 を 加 え るほかは, 原 判 決 の 事 実 及 び 理 由 中 の 第 2 事 案 の 概 要 の1 項 ない し5 項 ( 原 判 決 別 紙 1,2,3の1 2,4ないし7 及 び 別 表 1を 含 む ) に 記 載 のとおりであるから,これを 引 用 する なお, 法 人 税 法 及 び 所 得 税 法 は,いずれも 平 成 14 年 法 律 第 15 号 による 改 正 前 もの, 法 人 税 法 施 行 令 は, -2-

同 年 政 令 第 104 号 による 改 正 前 のものをいい,その 他 の 関 係 法 令 及 び 通 達 も, 平 成 13 年 12 月 31 日 当 時 のものによる (2) 原 判 決 148 頁 7 行 目 ( 別 紙 7)に, 以 下 のとおり 加 える 3 争 点 3( 被 控 訴 人 の 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 についての 国 内 源 泉 所 得 の 有 無 )について ( 控 訴 人 の 主 張 の 要 旨 ) (1) 国 内 において 事 業 を 行 う 者 に 対 する 出 資 につき, 匿 名 組 合 契 約 に 基 づき 利 益 の 分 配 を 受 ける 権 利 の 運 用 又 は 保 有 により 生 ずる 所 得 は, 国 内 源 泉 所 得 に 当 たる( 法 人 税 法 141 条 4 号,138 条 1 号, 法 人 税 法 施 行 令 177 条 1 項 4 号 ) 本 件 各 取 引 確 認 書 は, AからB 社 に 譲 渡 された 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 から 生 じた 利 益 総 額 の99%から,B 社 が 負 担 した 費 用 を 控 除 した 額 に 相 当 する 額 の 金 銭 (キャッシュフロー)と, B 社 が 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 を 取 得 するためにCと 締 結 した 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰに 係 る 支 払 利 息 及 び 費 用 の 合 計 額 に 相 当 する 額 の 金 銭 (キャッシュフロー)をスワップ( 交 換 )する 契 約 であるかのよう に 見 えるが, 一 連 の 経 過 を 見 ると,スワップ 契 約 という 法 形 式 を 採 用 しているものの, 被 控 訴 人 が 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 の99%の 支 払 を 受 けるために, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 の9 9%を 取 得 する 費 用 を 負 担 して 行 われたものであり, 被 控 訴 人 は, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 基 づく 利 益 分 配 金 請 求 権 の 運 用 又 は 保 有 により 生 ずる 利 益 を 得 ているというべきである (2)ア B 社 と 被 控 訴 人 との 間 で 行 われた 本 件 スワップ 契 約 2,3 及 び 本 件 各 取 引 確 認 書 による 取 引 ( 本 件 スワップ 取 引 )において, 約 定 時 点 で 双 方 のキャッシュフローの 現 在 価 値 が 等 価 であるか 否 かの 検 討 等 が 行 われた 形 跡 はなく, 等 価 であったことは 不 明 であり, 通 常 -3-

のキャッシュフローの 交 換 を 目 的 としたスワップ 取 引 であるとは 考 えられず, 金 利 スワップ 取 引 で 最 低 限 取 り 決 められる 想 定 元 本 や 期 間 の 定 めがなく, 契 約 当 事 者 間 に 存 在 する 個 別 の 事 情 を 前 提 に 行 われた 特 殊 の 取 引 であった イ B 社 は, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 係 る 投 資 の 期 待 収 益 率 が25% 程 度 と 極 めて 高 く, 取 得 費 用 の99%を 借 入 れにより 調 達 したにもか かわらず, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 ( 利 益 分 配 金 を 受 ける 権 利 )を 取 得 すると 同 時 にスワップ 契 約 よりその99%に 相 当 する 本 件 各 分 配 金 を 受 領 する 権 利 を 被 控 訴 人 ( 及 びD 社 )に 譲 渡 している ところ,B 社 は, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰにおいて, 投 資 のリスクを 負 わ ないことになっており, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 の99%に 係 る 投 資 のリスクは,その 取 得 費 用 の 実 質 的 な 拠 出 者 である 被 控 訴 人 が 負 うものであった ウ 被 控 訴 人 が 受 領 した 当 該 利 益 分 配 金 のうち99% 相 当 額 は, 我 が 国,アイルランド,バミューダのいずれの 国 においても 課 税 されな いことになるところ, 本 件 各 出 資 持 分 譲 渡 契 約, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰ, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅱ, 本 件 各 取 引 確 認 書 における 契 約 当 事 者 は,いず れもE グループに 属 する 事 業 体 等 であり, 一 連 の 契 約 関 係 は,E グループにおける 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 係 る 投 資 スキームとして 行 われた エ B 社 が, 出 資 の99%について 本 件 スワップ 取 引 をする 合 理 的 理 由 がなく, 当 該 部 分 には, 実 体 がない ( 被 控 訴 人 の 主 張 の 要 旨 ) (1) 被 控 訴 人 がB 社 との 間 で 締 結 した 本 件 各 取 引 確 認 書 ( 甲 7の1ない し3)は, 被 控 訴 人 とB 社 の 二 者 間 におけるキャッシュフローの 交 換 を 目 的 とするスワップ 契 約 であり, 被 控 訴 人 が 本 件 各 取 引 確 認 書 に 基 -4-

づいて 有 する 債 権 の 債 務 者 はB 社 以 外 になく,B 社 及 び 被 控 訴 人 は, 日 本 に 支 店, 代 理 人 その 他 の 恒 久 的 施 設 を 有 しておらず, 本 件 各 取 引 確 認 書 は,その 締 結 履 行 がすべて 国 外 で 完 結 しており, 本 件 各 取 引 確 認 書 を 含 むデリバティブ 取 引 は, 法 人 税 法 138 条 1 号 の 国 内 に ある 資 産 の 運 用 又 は 保 有 により 生 ずる 所 得 に 当 たらない 被 控 訴 人 は, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 当 事 者 ではなく, 本 件 各 匿 名 組 合 に 基 づい て 利 益 の 分 配 を 受 ける 権 利 を 取 得 したこともない 控 訴 人 の 主 張 は, 本 件 各 取 引 確 認 書 の 規 定 に 表 示 された 内 容 は, 当 事 者 であるB 社 と 被 控 訴 人 の 間 では,B 社 から 被 控 訴 人 に 対 し, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 の99%に 係 る 利 益 分 配 請 求 権 を 譲 渡 す るという 効 果 意 思 に 基 づく 契 約 であり, 本 件 各 取 引 確 認 書 の 規 定 をそ のように 解 釈 できるとするようであるが,そのように 解 することはで きない 本 件 各 取 引 確 認 書 の 規 定 はスワップ 契 約, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰ ( 乙 20ないし22)の 規 定 は 融 資 契 約 として,いずれも 極 めて 明 確 であって, 疑 問 を 差 し 挟 む 余 地 はない 本 件 各 借 入 契 約 Ⅱ( 乙 23, 25,26)も, 金 銭 消 費 貸 借 契 約 であり,それ 以 上 の 規 定 は 含 まれ ていない 本 件 各 取 引 確 認 書 の 規 定 上, 利 益 分 配 金 の 収 入 の99% 相 当 額 とし て 計 算 される 変 動 キャッシュフローと, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰ 上 の 利 息 ( 固 定 金 利 3.5%) 及 び 費 用 相 当 額 の 合 計 額 として 計 算 される 固 定 キャッシュフローとをスワップする 契 約 であることは 明 らかであり, それ 以 外 の 金 員 が 当 事 者 間 で 支 払 われる 旨 の 規 定 はない B 社 が 被 控 訴 人 に 対 し, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 上 の 匿 名 組 合 員 の 権 利 を 行 使 させる ことを 認 める 規 定 等 は 存 しない 被 控 訴 人 がB 社 に 代 わって,Cに 対 し, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰに 係 る 支 払 利 息 及 び 費 用 を 支 払 う 旨 の 規 定 もな い -5-

B 社 が 本 件 各 取 引 確 認 書 を 締 結 した 目 的 は, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 へ の 投 資 の 原 資 を 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰの 融 資 資 金 によって 調 達 すること を 可 能 にすることにあった( 甲 24) 被 控 訴 人 は, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 投 資 をするのではなく,その 損 失 リスクを 負 うことはない 固 定 キャッシュフローを 支 払 う 債 務 を 負 うのと 引 換 えに, 変 動 キャッシュフローのリスクと 利 益 を 引 き 受 けた ものである (2)ア 被 控 訴 人 は,B 社 側 の 支 払 債 務 の 上 限 となる 変 動 キャッシュフロ ーに 内 在 するリスクを 検 討 し, 被 控 訴 人 側 の 支 払 債 務 の 上 限 となる 固 定 キャッシュフローの 計 算 に 使 われる 固 定 利 率 の 合 理 性 を 検 討 した 上, 本 件 各 取 引 確 認 書 において 規 定 した 条 件 をスワップ 契 約 と して 合 理 的 と 評 価 して 合 意 したものである 仮 に, 被 控 訴 人 とB 社 がそのような 検 討 をしなかったとしても, 当 事 者 が 自 己 責 任 として 損 失 を 甘 受 することになるだけであって, 本 件 各 取 引 確 認 書 の 合 意 内 容 の 解 釈 や 有 効 性 等 に 影 響 することはあり 得 ない イ 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 投 資 事 業 は 不 良 債 権 投 資 事 業 であり, 現 実 的 な 回 収 不 能 リスクと 隣 り 合 わせのリスクの 高 い 投 資 であり, 投 資 開 始 時 点 において 期 待 収 益 率 が 高 いことは 結 果 的 に 高 い 収 益 を 確 実 に 挙 げられることを 意 味 せず,B 社 が 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 に 対 す る 投 資 から 利 益 が 出 るかは 不 明 であった 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 においては, 匿 名 組 合 員 は, 匿 名 組 合 事 業 か ら 生 じる 利 益 の 配 分 を 受 けるだけでなく, 損 失 の 配 分 も 受 けること になっており( 乙 6ないし9), 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 平 成 13 年 度 ないし 平 成 16 年 度 の 損 益 は 利 益 が 出 たものばかりではなく,す べて 損 失 が 生 じたものもあったのであり, 投 資 決 定 時 点 において, 将 来 利 益 が 出 ることが 確 実 であったのではないから, 期 待 収 益 率 が -6-

25%の 投 資 の 持 分 を 同 時 に 譲 渡 することが 不 自 然 不 合 理 とはい えない 控 訴 人 は, 本 件 各 取 引 確 認 書 締 結 時 点 において, 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 利 益 分 配 金 の 額 が, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰ 上 の 利 息 と 費 用 相 当 額 を 上 回 ることが 確 実 であったことを 示 す 主 張 立 証 をしていない ウ 控 訴 人 は, 社 会 的 経 済 的 事 実 があったという 裸 の 事 実 をいうも のにすぎず, 法 律 行 為 の 内 容 を 一 切 無 視 するものであって 誤 りであ る 課 税 要 件 事 実 の 認 定 は 真 実 に 存 在 する 法 律 関 係 に 即 して 行 われ るべきである 同 グループ 内 の 法 人 や 事 業 体 の 間 で 契 約 がされることは 珍 しい ものではなく,それぞれの 法 人 や 事 業 体 は 各 機 関 により 適 法 な 意 思 決 定 をして 契 約 を 締 結 するものであり, 本 件 各 取 引 確 認 書 によって 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 出 資 持 分 の99%に 係 る 利 益 分 配 請 求 権 が B 社 から 被 控 訴 人 に 譲 渡 されたことの 根 拠 になるものではない 本 件 スワップ 契 約, 本 件 各 借 入 契 約 Ⅰ,Ⅱにおいて, 完 全 合 意 条 項 ( 当 該 書 面 契 約 に 記 載 された 内 容 以 外 の 合 意 はないことを 確 認 し たもの)があり, 書 面 記 載 のとおりの 内 容 で 機 関 決 定 がされている エ 本 件 取 引 の 実 体 は,B 社 がCから 資 金 を 調 達 し,Aから 本 件 各 匿 名 組 合 契 約 の 持 分 を 取 得 したものであり,B 社 こそが 投 資 家 として 自 己 勘 定 による 投 資 をしたものである( 甲 24) オ 本 件 スワップ 取 引 が 通 常 の 金 利 スワップ 取 引 でないという 控 訴 人 の 主 張 は, 金 利 スワップ 取 引 を 矮 小 化 した 理 解 に 基 づく 誤 ったも のである 被 控 訴 人 は, 本 件 スワップ 取 引 が 特 定 の 想 定 元 本 に 対 して 金 融 市 場 で 成 立 している 固 定 金 利 を 利 用 して 計 算 される 固 定 キャッシュ フローを 交 換 するというプレインバニラと 呼 ばれる 最 も 単 純 な 金 -7-

利 スワップ 取 引 であると 主 張 したことはない スワップ 取 引 とは, それぞれ 別 々に 特 定 して 計 算 される 一 定 期 間 における2 種 類 のキ ャッシュフローの 交 換 であり, 契 約 当 事 者 間 の 合 意 が 成 立 し 得 るも のであれば,どのようなキャッシュフローでも 交 換 可 能 である 想 定 元 本 の 規 定 がなければ, 金 利 スワップ 取 引 でないというものでは ない 3 争 点 1( 被 控 訴 人 の 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 )についての 控 訴 人 の 主 張 (1) 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 の 判 断 枠 組 み 法 人 税 法 2 条 4 号 は, 外 国 法 人 を 内 国 法 人 以 外 の 法 人 をいう と 規 定 しているが, 我 が 国 の 租 税 法 には, 法 人 の 意 義 について 定 義 した 規 定 は 存 在 しないから, 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 は, 我 が 国 の 私 法 上 の 法 人 と 同 義 と 解 するのが 相 当 である ところで, 私 法 の 一 般 法 である 我 が 国 の 民 法 の 解 釈 において, 法 人 と は, 自 然 人 以 外 のもので, 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 となることのできるもの をいい, 我 が 国 では, 内 国 法 人 については, 法 人 法 定 主 義 ( 民 法 33 条 )を 採 用 し(その 他, 一 般 社 団 法 人 及 び 一 般 財 団 法 人 に 関 する 法 律 3 条, 会 社 法 3 条 等 ), 法 人 となる 事 業 体 を 法 律 が 明 記 しているため, 法 人 に 該 当 するか 否 かは 法 律 によって 法 人 格 を 付 与 されているか 否 かという 形 式 的 基 準 で 判 断 することができる しかし, 法 人 制 度 の 具 体 的 内 容 は,それぞれの 国 家 の 歴 史 的, 経 済 的 な 経 緯 を 踏 まえた 価 値 判 断 に 基 づく 立 法 政 策 により 異 なり 得 るものであるから, 外 国 においては, 法 人 法 定 主 義 が 採 用 されているとは 限 らないし,それが 採 用 されていても, 制 度 趣 旨 が 我 が 国 の 法 人 法 定 主 義 と 異 なるものである 場 合 や, 適 用 対 象 が 普 遍 的 でなく, 限 定 的 なものである 場 合 があり,その 準 拠 法 の 下 では 法 人 格 を 付 与 されていないが,その 名 において 権 利 を 取 得 し, 義 務 を 負 うなど, 構 成 員 とは 独 立 した 権 利 義 務 の 主 体 として 活 動 している 事 業 体 -8-

もあり 得 る したがって, 外 国 の 事 業 体 が 我 が 国 の 私 法 上 の 法 人 に 該 当 する か 否 かをその 準 拠 法 である 当 該 外 国 の 法 令 だけに 基 づいて 形 式 的 に 判 断 す ることは 相 当 ではない 外 国 の 事 業 体 の 法 人 該 当 性 の 判 断 に 当 たっては, 当 該 事 業 体 がその 準 拠 法 の 下 において 我 が 国 の 法 人 に 認 められるような 権 利 義 務 の 主 体 として 設 立 が 認 められたものであるか 否 かを, 準 拠 法 の 規 定 及 び その 解 釈 を 基 礎 とした 上 で, 実 質 的 に 判 断 するのが 相 当 である そうすると, 外 国 の 事 業 体 の 法 人 該 当 性 の 判 断 は, 当 該 事 業 体 の 準 拠 法 の 規 定 及 びその 解 釈 を 基 礎 として,その 設 立, 組 織, 財 産 の 管 理 や 帰 属 状 況 等 を 考 慮 し, 当 該 事 業 体 が 構 成 員 から 独 立 した 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 として 設 立 が 認 められているか 否 かを 個 別 具 体 的 に 判 断 すべきである その 際, 第 1に, その 名 において 契 約 を 締 結 し,その 名 において 権 利 を 取 得 し 義 務 を 負 うなど 独 立 した 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 となり 得 るか 否 か( 控 訴 人 基 準 2)を 根 幹 とな る 判 断 要 素 とした 上, 事 業 体 として 所 有 財 産 ( 不 動 産 )を 登 記 ないし 登 録 が できるか 否 か, 有 限 責 任 を 負 うにすぎない 構 成 員 がいるか 否 かなど, 第 2に, その 構 成 員 の 個 人 財 産 とは 区 別 された 独 自 の 財 産 を 有 するか 否 か( 控 訴 人 基 準 1), 第 3に,その 権 利 義 務 のためにその 名 において 訴 訟 当 事 者 となり 得 るか 否 か( 控 訴 人 基 準 3),さらに, 事 業 体 の 成 立 に 登 記, 登 録 等 の 外 部 的 手 続 を 要 するかなどの 事 情 も 総 合 して, 当 該 事 業 体 が 準 拠 法 によって 我 が 国 の 法 人 であれば 通 常 有 すべき 実 質 を 付 与 されているか 否 かの 観 点 から 判 断 する 必 要 がある (2) 控 訴 人 基 準 1ないし3についての 原 判 決 の 判 断 の 誤 り ア 原 判 決 は, 控 訴 人 基 準 1ないし3は, 法 人 といえるための 十 分 条 件 とま でいうことはできないし, 任 意 組 合 や 権 利 能 力 のない 社 団 もこれらの 基 準 に 該 当 し 得 るから, 上 記 基 準 は, 法 人 と 法 人 でない 団 体 ( 事 業 体 )とを 明 確 に 区 別 する 基 準 として 機 能 し 得 ないとする しかし, 控 訴 人 基 準 1 及 び2は, 実 体 法 的 に 法 人 制 度 の 本 質 からみて, -9-

法 人 とその 他 の 団 体 ( 組 合 や 人 格 のない 社 団 等 )とを 区 別 する 重 要 な 判 断 基 準 として 機 能 するものである また, 控 訴 人 基 準 3は, 手 続 法 的 に 法 人 として 活 動 する 上 で 不 可 欠 な 能 力 である 控 訴 人 基 準 1ないし3は, 法 人 の 私 法 上 の 概 念 から 導 き 出 されるものであり, 租 税 法 上 の 法 人 の 意 義 も 私 法 上 の 法 人 の 意 義 と 同 義 に 解 すべきであるという 借 用 概 念 の 考 え 方 と 整 合 し, 我 が 国 において 法 人 に 認 められる 権 利 能 力 と 同 じ 内 容 の 権 利 能 力 が 認 められている 外 国 の 事 業 体 を 等 しく 法 人 として 取 り 扱 うことになり, 課 税 実 務 において 法 的 安 定 性 や 公 平 な 取 扱 いを 確 保 することに 資 するとと もに, 法 人 該 当 性 の 判 断 基 準 として 十 分 なものであるから, 原 判 決 は,そ の 評 価 を 誤 るものである イ 原 判 決 は,ある 外 国 の 事 業 体 が 法 人, 人 格 のない 社 団 等 又 は 任 意 組 合 の いずれであるかが 判 然 としないときに, 控 訴 人 基 準 1 及 び2では, 法 人 と 人 格 のない 社 団 等 及 び 任 意 組 合 を 区 別 することは 困 難 であるとする しかし, 本 件 においては,ある 外 国 の 事 業 体 が 上 記 のいずれに 当 たるか ではなく, 我 が 国 の 法 人 と 同 様 の 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 と 認 められるか 否 か が 検 討 されるべきであり, 控 訴 人 基 準 1ないし3が 我 が 国 の 法 人 該 当 性 の 判 断 基 準 として 十 分 なものであれば 足 りるから, 原 判 決 の 指 摘 は, 当 を 得 ない ウ 被 控 訴 人 には, 控 訴 人 基 準 1ないし3 以 外 にも 構 成 員 から 独 立 した 法 的 主 体 として 存 在 することを 基 礎 づける 重 要 な 事 由 がある (ア) 我 が 国 の 法 人 の 大 部 分 が 登 記 を 成 立 要 件 としているように, 事 業 体 の 成 立 については, 構 成 員 となる 当 事 者 間 の 合 意 だけでなく, 登 記, 登 録 等 の 外 部 的 手 続 を 要 するとされており,バミューダの 法 令 でも,LPS の 設 立 には 登 記 等 の 外 部 的 手 続 を 要 するところ, 被 控 訴 人 は,バミュー ダにおいて,LPSかつEPSとして 登 記 されている (イ) 我 が 国 の 法 人 は, 法 人 自 体 の 債 権 者 に 対 する 排 他 的 責 任 財 産 を 作 る 法 -10-

技 術 であり, 法 人 の 財 産 は, 構 成 員 の 個 人 財 産 から 区 別 され, 個 人 に 対 する 債 権 者 の 責 任 財 産 でなくなる 我 が 国 の 法 人 は 債 権 者 のための 排 他 的 責 任 財 産 が 確 保 された 結 果, 有 限 責 任 を 負 うにすぎない 構 成 員 が 生 じ るが, 本 件 LPS 契 約 によれば,リミテッド パートナーは, 経 営 や 管 理 への 参 加 を 禁 じられ(4.1 条 ),ジェネラル パートナーの 事 前 の 書 面 による 同 意 を 条 件 として, 持 分 を 譲 渡 することも 可 能 であるとされ ており(9 条 ),リミテッド パートナーは,その 個 性 や 変 動 とは 関 係 なく, 被 控 訴 人 の 経 営 や 管 理 が 行 われる 有 限 責 任 を 負 うにすぎない 構 成 員 であることを 意 味 している (3) 原 判 決 基 準 1,2の 誤 り 原 判 決 は, 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 を 法 律 により 損 益 の 帰 属 すべき 主 体 (その 構 成 員 に 直 接 その 損 益 が 帰 属 することが 予 定 されない 主 体 )として 設 立 が 認 められたものであり, 我 が 国 の 私 法 上 の 法 人 と 同 様, 原 則 として,そ の 準 拠 法 によって 法 人 とする( 法 人 格 を 付 与 する) 旨 を 規 定 されたもの を いうとした 上 で, 外 国 の 事 業 体 の 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 について, 1 原 則 として, 当 該 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 から,その 準 拠 法 である 当 該 外 国 の 法 令 によって 法 人 とする( 法 人 格 を 付 与 する) 旨 を 規 定 されていると 認 め られるか 否 か( 原 判 決 基 準 1),2 当 該 事 業 体 を 当 該 外 国 の 法 令 が 規 定 する その 設 立, 組 織, 運 営 及 び 管 理 等 の 内 容 に 着 目 して 経 済 的, 実 質 的 に 見 れば, 明 らかに 我 が 国 の 法 人 と 同 様 に 損 益 の 帰 属 すべき 主 体 (その 構 成 員 に 直 接 そ の 損 益 が 帰 属 することが 予 定 されない 主 体 )として 設 立 が 認 められたものと いえるか 否 か( 原 判 決 基 準 2)を 検 討 すべきであるとする しかし, 原 判 決 は, 私 法 上 の 法 人 の 概 念 から 離 れ, 独 自 に 法 人 概 念 を 規 定 した 上 で,その 該 当 性 の 判 断 基 準 を 定 立 するもので, 相 当 とはいえないし, 実 質 的 にみても, 法 人 概 念 を 不 当 に 狭 めるものであって, 相 当 性 を 欠 くもの である -11-

ア 原 判 決 基 準 1につき,どのような 団 体 にどのような 権 利 義 務 を 付 与 する かは, 各 国 の 立 法 政 策 の 問 題 であり, 法 人 と 訳 される 外 国 の 団 体 の 概 念 が 我 が 国 の 法 人 の 概 念 と 同 一 であるとは 限 らない 我 が 国 の 法 人 と 同 様 の 権 利 能 力 を 有 する 団 体 が 当 該 外 国 の 法 令 では 法 人 とする 旨 規 定 されていな い 場 合 があるし, 逆 の 可 能 性 も 否 定 できない そもそも 外 国 で 法 人 法 定 主 義 が 採 用 されているとは 限 らず, 法 令 により 法 人 格 を 付 与 する 旨 規 定 され た 団 体 が 存 在 しないこともあり 得 るから, 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 如 何 によ り, 我 が 国 で 法 人 とされるか 否 かが 左 右 されることになって, 公 平 の 原 則 に 反 するし, 法 人 法 定 主 義 が 採 用 されていない 法 制 下 では, 極 めて 不 合 理 な 結 果 が 招 来 される イ 原 判 決 基 準 2につき, 損 益 は 私 法 上 の 権 利 義 務 に 基 づいて 発 生 するもの であるから, 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 であれば, 通 常 当 然 に 損 益 ないし 所 得 の 帰 属 主 体 となるのであって, 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 であることと 別 にあえて 損 益 の 帰 属 すべき 主 体 として 設 立 が 認 められたかを 基 準 として 定 立 する 必 要 はなく, 租 税 法 上 の 法 人 の 概 念 の 解 釈 として, 損 益 の 帰 属 主 体 として 設 立 が 認 められたことを 法 人 該 当 性 の 判 断 基 準 とする 根 拠 は 乏 しい そし て, 控 訴 人 基 準 2と 原 判 決 基 準 2との 適 用 上 の 差 異 が 実 際 に 問 題 となるの は, 当 該 外 国 の 事 業 体 が 当 該 外 国 の 準 拠 法 により 構 成 員 とは 別 個 の 権 利 義 務 の 主 体 として 取 り 扱 われているにもかかわらず, 当 該 準 拠 法 において, 事 業 活 動 から 生 じた 損 益 を 構 成 員 に 帰 属 させることを 許 容 する 法 制,とり わけ 法 的 に, 事 業 体 にいったん 帰 属 した 損 益 について,その 構 成 員 に 配 分 する 方 法 が 定 められている 場 合 の 取 扱 いであり,そのような 場 合 にまで, 当 該 事 業 体 の 法 人 該 当 性 を 否 定 することは, 他 の 外 国 の 事 業 体 との 間 で 課 税 関 係 の 公 平 を 害 するとともに, 当 該 外 国 の 準 拠 法 の 内 容 如 何 によって 課 税 対 象 とならない 事 業 体 が 生 じる 余 地 を 生 じさせ,ひいては 租 税 回 避 の 途 を 広 げることになって, 不 当 である 租 税 法 の 規 定 や 課 税 実 務 上 の 取 扱 い -12-

は,ある 事 業 体 が 法 人 税 の 納 税 義 務 者 になるか 否 かを 判 断 する 場 面 での 基 準 となることを 予 定 していないから,それらを 根 拠 に 法 人 該 当 性 の 判 断 基 準 を 導 き 出 すことはできない ウ 東 京 高 等 裁 判 所 平 成 25 年 3 月 13 日 判 決 ( 乙 55, 以 下 平 成 25 年 東 京 高 裁 判 決 という )は, 控 訴 人 主 張 の 判 断 枠 組 みに 沿 うものである 平 成 25 年 東 京 高 裁 判 決 は, 米 国 デラウェア 州 のLPSの 法 人 該 当 性 が 争 点 となった 事 案 について, 外 国 の 法 令 に 準 拠 して 設 立 された 事 業 体 が 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 するか 否 かは, 原 則 として 当 該 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 から,その 準 拠 法 である 外 国 の 法 令 によって 法 人 とする( 法 人 格 を 付 与 する) 旨 が 規 定 されていると 認 められるか 否 かによって 判 断 するの が 相 当 であるとした そして, 法 人 該 当 性 の 判 断 に 当 たっては, 当 該 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 をその 文 言 に 従 って 形 式 的 に 見 た 場 合 に, 当 該 外 国 の 法 令 が 当 該 事 業 体 を 法 人 とする 旨 規 定 しているかどうかだけでなく, 当 該 外 国 の 法 令 がその 設 立, 組 織, 運 営 及 び 管 理 等 についてどのように 規 定 して いるかも 併 せて 検 討 すべきであるとした さらに, 当 該 事 業 体 が 損 益 の 帰 属 すべき 主 体 として 設 立 が 認 められたものであるかどうか( 原 判 決 基 準 2 に 相 当 する 事 項 )を 判 断 基 準 とすることは 不 要 とした 上,デラウェア 州 L PS 法 とLPS 契 約 が 各 LPSの 設 立, 組 織, 管 理, 運 営 等 について 規 定 しているところ(その 名 において 契 約 を 締 結 し,その 名 において 権 利 を 取 得 し 義 務 を 負 うなど, 独 立 した 権 利 義 務 の 主 体 となり, 取 得 した 不 動 産 に ついては,その 名 で 登 録 することができ,その 名 において 訴 訟 当 事 者 とな ることもできるか 等 )を 検 討 し,デラウェア 州 LPS 法 に 基 づき 設 立 され たLPSが separate legal entity となると 規 定 する 同 法 201 条 (b)は, 同 法 に 基 づいて 設 立 されるLPSを 法 人 とする 旨 規 定 しているものと 解 すべきであるとして, 当 該 LPSが 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 すると 判 断 した これは, 控 訴 人 の 主 張 と, 本 質 において 同 様 の 見 解 である -13-

4 争 点 2( 被 控 訴 人 の 租 税 法 上 の 人 格 のない 社 団 等 該 当 性 )についての 控 訴 人 の 主 張 (1) 原 判 決 は, 要 旨, 被 控 訴 人 は, 民 法 上 の 組 合 ( 任 意 組 合 )に 類 似 した 組 織 形 成, 運 営 等 がされることを 予 定 したものにすぎず, 少 なくとも, 民 法 上 の 法 人 の 組 織, 運 営 及 び 管 理 にみられるような 団 体 としての 組 織 を 備 え, 多 数 決 の 原 則 が 行 われているということはできず, 団 体 としての 主 要 な 点 が 確 定 しているともいえないから, 人 格 のない 社 団 等 に 該 当 しないとする( 原 判 決 57 頁 ないし60 頁 ) しかし, 被 控 訴 人 は, 次 のとおり 組 織 及 び 財 産 帰 属 のいずれの 点 においても, 人 格 のない 社 団 等 と 認 められるための 要 件 を 満 た している (2) 組 織 性 について ア 人 格 のない 社 団 等 ( 権 利 能 力 のない 社 団 )に 該 当 するための 要 件 は,1 団 体 としての 組 織 を 備 え,2 多 数 決 の 原 則 が 行 われ,3 構 成 員 の 変 更 にも かかわらず 団 体 そのものが 存 続 し,4その 組 織 により 代 表 の 方 法, 総 会 の 運 営, 財 産 の 管 理 その 他 団 体 としての 主 要 な 点 が 確 定 していることである ( 最 高 裁 昭 和 39 年 10 月 15 日 第 一 小 法 廷 判 決 民 集 18 巻 8 号 167 1 頁, 以 下 最 高 裁 昭 和 39 年 判 決 という ) 被 控 訴 人 は, 上 記 1な いし4のすべての 要 件 を 満 たし, 組 織 の 構 成, 存 続 及 び 運 営 等 のいずれの 点 においても, 任 意 組 合 におけるそれを 超 え, 人 格 のない 社 団 等 というに ふさわしい 団 体 性 を 有 している なお,これらの 要 件 は,すべて 独 立 して 厳 格 に 満 たされることが 要 求 されるものではなく,むしろ 社 団 性 を 認 定 す るための 指 標 であり, 各 要 件 相 互 の 関 係 で 柔 軟 に 解 釈 され 得 るものであ り, 後 記 イないしオの 諸 要 素 を 総 合 すると, 被 控 訴 人 は, 構 成 員 から 独 立 した 団 体 としての 実 質 を 有 しており, 人 格 のない 社 団 等 の 要 件 を 満 たして いる イ 1の 要 件 について -14-

被 控 訴 人 は,ジェネラル パートナーとリミテッド パートナーとから なる 事 業 体 であり, 構 成 員 は 特 定 されており, 本 件 LPS 契 約 によれば, ジェネラル パートナーが, 被 控 訴 人 の 事 業 及 び 業 務 の 経 営 や 管 理 に 関 し て 排 他 的 に 責 任 を 負 うとともに,パートナーシップの 目 的 を 実 行 するため に 必 要 なすべての 事 項 を 行 う 権 限 を 付 与 され(4.1 条 ),この 独 占 的 権 限 に 基 づき 事 業 体 としての 意 思 決 定 を 行 い, 被 控 訴 人 を 代 表 して 法 律 行 為 を 行 っているから, 団 体 としての 組 織 を 備 えている ウ 2の 要 件 について 上 記 イのとおり, 被 控 訴 人 の 事 業 の 遂 行 に 係 る 意 思 決 定 は, 事 業 及 び 業 務 の 経 営 や 管 理 に 関 する 独 占 的 権 限 を 有 するジェネラル パートナーに 委 ねられており,これはすべてのパートナー( 構 成 員 )が 本 件 LPS 契 約 に おいて 合 意 しているものであり,パートナーシップ 持 分 の 過 半 数 により 解 散 を 求 めた 場 合 には,パートナーシップは 終 了 する(11.1 条 )から, 被 控 訴 人 において 多 数 決 の 原 則 が 行 われている エ 3の 要 件 について 本 件 LPS 契 約 によれば,ジェネラル パートナーの 決 定 により 一 定 の 条 件 を 満 たす 者 が 新 規 にリミテッド パートナーとなることが 認 められ (8.1 条,8.2 条 ),リミテッド パートナーは,ジェネラル パー トナーの 同 意 を 得 て, 保 有 するパートナーシップ 持 分 を 第 三 者 に 譲 渡 する ことができ(9 条 ),さらに,バミューダ 法 上, 財 務 大 臣 の 同 意 があれば, ジェネラル パートナーですら 変 更 することができる(1883 年 LPS 法 8B 条,1992 年 EPS 法 13 条 )とされているから, 被 控 訴 人 は, 構 成 員 の 変 更 にもかかわらず, 団 体 そのものが 存 続 する オ 4の 要 件 について 上 記 イ,ウのとおり, 本 件 LPS 契 約 においては,ジェネラル パート ナーが 被 控 訴 人 を 代 表 して 業 務 執 行 を 行 うと 定 められている 上, 費 用 の 支 -15-

出 (4.3 条 ), 受 領 する 金 銭 の 管 理 (4.5 条 ), 損 益 の 配 分 及 び 現 金 の 分 配 (5.1 条,5.2 条 ), 会 計 監 査 (6 条 ),パートナーシップの 終 了 及 び 清 算 (11.1 条,11.2 条 )についても,それぞれ 定 めがあ り,これらの 規 定 を 含 む 本 件 LPS 契 約 の 内 容 は,すべてのパートナーの 書 面 による 同 意 を 得 なければ,その 全 部 又 は 一 部 を 修 正 することはできな いとされている(7 条 )から, 被 控 訴 人 は,その 組 織 において, 代 表 の 方 法 や 財 産 の 管 理 等, 団 体 としての 主 要 な 点 が 確 定 している (3) 財 産 帰 属 の 点 について 民 法 上 の 組 合 における 財 産 の 帰 属 形 態 である 共 有 ( 合 有 )は, 各 共 同 所 有 者 において 目 的 物 に 対 する 管 理 権 能 と 収 益 権 能 とを 保 有 する( 持 分 権 を 有 す る)と 解 されているのに 対 し, 総 有 は, 所 有 権 に 含 まれる 管 理 権 能 と 収 益 権 能 とは 全 く 分 離 し, 管 理 権 能 は 専 ら 社 団 に 属 し, 各 共 同 所 有 者 は, 単 なる 収 益 権 能 を 有 するにすぎず, 共 有 における 持 分 権 を 有 しないと 解 されている そして, 人 格 のない 社 団 等 の 財 産 は, 構 成 員 に 総 有 的 に 帰 属 すると 解 される ところ, 被 控 訴 人 において, 被 控 訴 人 の 財 産 である partnership property に 対 して 管 理 権 能 を 有 するのはパートナーシップであり, 各 パートナーは, 収 益 権 能 のみを 有 し, 管 理 権 能 を 有 しないと 解 されるから, 被 控 訴 人 における 財 産 の 帰 属 形 態 は, 総 有 に 当 たるとしても, 共 有 ( 合 有 )に 当 たるとはいえ ない したがって, 被 控 訴 人 は, 財 産 の 帰 属 形 態 からみても, 民 法 上 の 組 合 類 似 の 団 体 性 が 認 められるにすぎないものではない 第 3 当 裁 判 所 の 判 断 1 当 裁 判 所 も, 被 控 訴 人 の 予 備 的 請 求 は, 理 由 があるものと 判 断 する その 理 由 は, 次 のとおり 補 正 し, 後 記 2のとおり 当 審 における 控 訴 人 の 主 張 に 対 する 判 断 を 加 えるほかは, 原 判 決 の 事 実 及 び 理 由 中 の 第 3 当 裁 判 所 の 判 断 に 記 載 のとおりであるから,これを 引 用 する (1) 原 判 決 10 頁 24 行 目 の 161 条 1 号 の2 号 ないし7 号 又 は9 号 ない -16-

し12 号 を 161 条 1 号 の2,2 号 ないし7 号 又 は9 号 ないし12 号 と 改 める (2) 原 判 決 22 頁 15 行 目 の 権 利 義 務 から 同 18 行 目 の であるから, までを 削 除 する (3) 原 判 決 28 頁 6 行 目 から7 行 目 にかけての 基 準 とした 場 合 には, の 後 に 例 えば, 人 格 のない 社 団 等 がその 名 において 登 記 をすることができな いとされているように, を 加 える (4) 原 判 決 28 頁 18 行 目 の あるときに, の 後 に 表 示 のみから 推 認 す ることは 困 難 であり, を 加 える (5) 原 判 決 29 頁 8 行 目 の いわざるを 得 ない を いわざるを 得 ず,そ れを 法 人 と 法 人 でない 団 体 ( 事 業 体 )とを 区 別 する 独 立 の 基 準 とすることは できない (6) 原 判 決 35 頁 1 行 目 の である の 後 に 場 合 を 加 える (7) 原 判 決 43 頁 26 行 目 の 甲 12 の 後 に (この 法 律 意 見 書 は,バミュ ーダに 本 拠 を 有 する 法 律 事 務 所 が,バミューダにおいて 組 成 されたEPSに ついての 法 律 意 見 を 述 べるため 作 成 されたものである 同 事 務 所 は, 被 控 訴 人 の 本 件 についての 法 律 顧 問 であるが,その 内 容 はバミューダ 法 の 専 門 家 に よる 解 釈 として, 疑 義 を 生 じさせる 特 段 の 事 由 が 認 められない 限 り, 合 理 性 を 有 するものと 解 されるところ, 本 件 において, 控 訴 人 は, 上 記 特 段 の 事 由 がある 旨 の 主 張 立 証 をしていない ) を 加 える (8) 原 判 決 51 頁 8 行 目 の 存 在 しない の 後 に したがって, 上 記 (1)ウ のとおり, 被 控 訴 人 は, 原 則 として, 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 すると はいえない を 加 える (9) 原 判 決 54 頁 5 行 目 から10 行 目 までを 次 のとおり 改 める そこで, 判 断 するに, 上 記 各 規 定 は,パートナーシップの 事 業 から 生 ず る 損 益 が 各 パートナーに 帰 属 する 旨 を 定 めたものであると 解 されるから, -17-

割 当 て 前 の 利 益 がパートナーシップに 帰 属 するということの 根 拠 となる ものではない (10) 原 判 決 54 頁 15 行 目 から19 行 目 までを 次 のとおり 改 める そこで, 判 断 するに, 本 件 LPS 契 約 5.1 条 (a)の 定 めが 存 在 するこ とにより, 割 当 て 前 の 損 益 がパートナーシップにいったん 帰 属 するものと は 解 されない (11) 原 判 決 59 頁 17 行 目 の いうのである の 後 に (なお,ジェネラル パートナーの 死 亡, 破 産, 辞 任, 解 任, 離 脱, 解 散 等 は,パートナーシッ プの 終 了 原 因 とされており( 本 件 LPS 契 約 11.1 条 ),ジェネラル パートナーの 個 性 が 重 視 されているとともに,パートナーシップの 存 続 自 体 が,リミテッド パートナーの 意 思 とは 無 関 係 の,ジェネラル パート ナーの 事 情 により 決 まる 場 合 があることとされている ) を 加 える 2 争 点 1( 被 控 訴 人 の 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 )について (1) 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 該 当 性 の 判 断 枠 組 みについて 控 訴 人 は, 上 記 第 2の3(1)のとおり 主 張 する そこで, 引 用 した 原 判 決 の 説 示 と 重 複 することを 厭 うことなく 判 断 する と, 次 のとおりである まず, 我 が 国 の 租 税 法 には 法 人 の 意 義 についての 定 義 規 定 がないため, 租 税 法 上 の 法 人 は 我 が 国 の 私 法 上 の 法 人 と 同 義 に 解 すべきである そして, 我 が 国 では, 内 国 法 人 について 法 人 法 定 主 義 が 採 られているから, 内 国 法 人 の 法 人 該 当 性 は, 法 律 により 法 人 格 を 付 与 されているかという 形 式 的 基 準 で 判 断 することになる また, 法 人 制 度 の 具 体 的 内 容 がそれぞれの 国 家 の 歴 史 的, 経 済 的 な 経 緯 を 踏 まえた 価 値 判 断 に 基 づく 立 法 政 策 により 異 なり 得 るものであるため, 外 国 において 法 人 法 定 主 義 が 採 用 されているとは 限 らず,それが 採 用 されていて も, 我 が 国 の 法 人 法 定 主 義 と 異 なる 制 度 趣 旨 から,その 準 拠 法 の 下 では 法 人 -18-

格 を 付 与 されていないが,その 活 動 実 態 として 我 が 国 の 法 人 と 類 似 のものが あり 得 ることは, 控 訴 人 の 指 摘 するとおりである そして, 控 訴 人 は,この 点 から, 外 国 の 事 業 体 が 我 が 国 の 租 税 法 上 及 び 私 法 上 の 法 人 に 該 当 するか 否 かを 判 断 するに 当 たって, 当 該 事 業 体 がその 準 拠 法 の 下 において 我 が 国 の 法 人 に 認 められるような 権 利 義 務 の 主 体 として 設 立 が 認 められたものであるか 否 かを 実 質 的 に 判 断 すべきであるとし,その 判 断 基 準 として, 控 訴 人 基 準 1ないし3によるべきであるとして, 上 記 第 2の 3(2)アないしウのとおり 主 張 している そこで, 以 下,さらにこれらの 基 準 の 当 否 を 考 え, 外 国 の 事 業 体 の 法 人 該 当 性 の 判 断 枠 組 みのあり 方 について 検 討 する (2) 控 訴 人 基 準 1ないし3についての 原 判 決 の 判 断 の 誤 りについて ア 控 訴 人 の 上 記 第 2の3(2)アないしウの 主 張 について 判 断 するに, 引 用 に 係 る 補 正 後 の 原 判 決 (22 頁 23 行 目 ないし29 頁 19 行 目 )に 説 示 する とおり, 控 訴 人 基 準 1ないし3(1 構 成 員 の 個 人 財 産 と 区 別 された 独 自 の 財 産 を 有 すること,2 独 立 した 権 利 義 務 の 帰 属 主 体 となる 能 力 を 有 するこ と,3その 名 において 訴 訟 当 事 者 となり 得 ること)は, 法 人 といえるため の 十 分 条 件 であるとはいえず,この 基 準 をもって, 現 行 法 上 法 人 とされる 団 体 ( 事 業 体 )とそうでない 団 体 ( 事 業 体 )とを 区 別 する 基 準 とすること は 困 難 であると 解 される イ 同 イについて 判 断 するに, 我 が 国 の 租 税 法 において, 法 人, 人 格 のない 社 団 及 び 組 合 という 事 業 体 が 明 文 で 規 定 されており,いずれも 事 業 体 とし て 活 動 する 実 態 を 有 しているところ, 法 人 税 法 は, 上 記 各 事 業 体 について, 独 自 の 定 義 規 定 を 置 かず, 法 人 及 び 人 格 のない 社 団 を 法 人 税 の 納 税 義 務 者 と 規 定 しているが, 組 合 は 課 税 主 体 ( 納 税 義 務 者 )としていない そこで, 本 件 においては, 法 人 税 法 の 解 釈 適 用 上, 被 控 訴 人 がいずれに 該 当 するか 問 題 になるのである すなわち,ある 事 業 体 が 法 人 又 は 人 格 のない 社 団 に -19-

該 当 する 場 合 には, 法 人 税 の 納 税 義 務 者 とされるのに 対 し, 組 合 に 該 当 す る 場 合 には, 納 税 義 務 者 とされることはないから,その 点 が 法 人 税 法 にお ける 処 分 の 適 法 性 を 左 右 することになるのであってその 区 分 こそが 問 題 である したがって,そのいずれかを 明 確 に 区 別 できないのであれば, 判 断 基 準 として 有 用 であるとはいえない ウ 同 ウ(ア)について 判 断 するに, 我 が 国 の 法 令 に 基 づき 組 成 される 事 業 体 が 我 が 国 の 私 法 上 の 法 人 とされる 根 拠 は, 法 人 法 定 主 義 により 法 人 格 を 付 与 する 旨 の 実 体 法 上 の 規 定 があるからであり, 登 記 されることによって 法 人 格 が 付 与 されるわけではない すなわち, 平 成 18 年 法 律 第 50 号 による 改 正 前 の 民 法 33 条 は, 法 人 法 定 主 義 を 採 用 し, 法 人 について 法 人 格 を 付 与 する 旨 の 根 拠 規 定 となっており, 同 45 条 1 項 は, 法 人 設 立 後, 所 定 の 期 間 内 に 登 記 すべきことを 定 め, 同 条 2 項 は, 登 記 を 対 抗 要 件 としていた ものであるから, 登 記 がされる 前 も 法 人 が 成 立 していることは, 当 然 その 前 提 とされていた そうすると,バミューダの 法 令 上,EPSについて 法 人 格 を 付 与 する 旨 の 規 定 があるか 否 かが 問 題 となるところ, 引 用 に 係 る 原 判 決 (51 頁 6 行 目 ないし8 行 目 )に 説 示 したとおり,そうした 規 定 は 存 在 しなかったのである したがって,LPSの 設 立 に 登 記 を 要 し,LPS かつEPSとして 登 記 されていることは, 被 控 訴 人 が 構 成 員 から 独 立 した 法 的 主 体 であることを 基 礎 づける 根 拠 としては 薄 弱 である 同 ウ(イ)について 判 断 するに, 控 訴 人 が 主 張 する 事 業 体 にどのような 責 任 を 負 う 構 成 員 がいて,その 者 が 経 営 や 管 理 にどのように 関 与 するか(パー トナーの 個 性 や 変 動 と 関 係 なく, 被 控 訴 人 の 経 営 や 管 理 が 行 われる 有 限 責 任 を 負 う 構 成 員 がいるか 否 か)という 点 は,それだけでは 被 控 訴 人 の 法 人 該 当 性 を 左 右 する 事 由 になるものとはいえない エ 以 上 によれば, 控 訴 人 の 上 記 第 2の3(2)の 主 張 は, 採 用 することができ ない -20-

(3) 原 判 決 基 準 1,2の 誤 りについて ア 控 訴 人 は, 原 判 決 の 基 準 が 誤 りであるとして, 上 記 第 2の3(3)アないし ウのとおり 主 張 する しかしながら, 当 裁 判 所 も, 外 国 の 事 業 体 の 法 人 該 当 性 の 判 断 枠 組 みと しては,1 原 則 として, 当 該 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 から,その 準 拠 法 であ る 当 該 外 国 の 法 令 によって 法 人 とする( 法 人 格 を 付 与 する) 旨 を 規 定 され ていると 認 められるか 否 かによるべきであり, 諸 外 国 の 法 制 法 体 系 の 多 様 性 ( 特 にいわゆる 大 陸 法 系 と 英 米 法 系 との 法 制 法 体 系 の 本 質 的 な 相 違 ), 我 が 国 の 法 人 概 念 に 相 当 する 概 念 が 諸 外 国 において 形 成 される に 至 った 沿 革, 歴 史 的 経 緯, 背 景 事 情 等 の 多 様 性 に 鑑 み, 当 該 外 国 の 法 令 の 規 定 内 容 をその 文 言 に 従 って 形 式 的 に 見 た 場 合 に, 当 該 外 国 の 法 令 にお いて 当 該 事 業 体 を 法 人 とする( 当 該 事 業 体 に 法 人 格 を 付 与 する) 旨 を 規 定 されているかどうかという 点 に 加 え,2 当 該 事 業 体 を 当 該 外 国 法 の 法 令 が 規 定 するその 設 立, 組 織, 運 営 及 び 管 理 等 の 内 容 に 着 目 して 経 済 的, 実 質 的 に 見 れば, 明 らかに 我 が 国 の 法 人 と 同 様 に 損 益 の 帰 属 すべき 主 体 (その 構 成 員 に 直 接 その 損 益 が 帰 属 することが 予 定 されない 主 体 )として 設 立 が 認 められたものといえるかどうかを 検 討 し,2の 点 が 肯 定 される 場 合 に, 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 すると 解 するのが 相 当 であると 考 える そこで, 以 下 では, 原 判 決 基 準 を 単 に 基 準 と 称 し, 控 訴 人 の 上 記 主 張 について 判 断 する イ 上 記 第 2の3(3)アについて 判 断 するに, 原 判 決 第 3の1イ(ウ) 及 びウ( 同 19 頁 18 行 目 ないし21 頁 24 行 目 )に 説 示 したとおり, 我 が 国 の 租 税 法 は, 法 人 概 念 につき 民 法 上 の 法 人 と 同 義 に 解 し, 外 国 の 準 拠 法 上 の 法 人 格 を 付 与 する 規 定 の 有 無 により,その 事 業 体 が 法 人 格 を 有 するか 否 かを 形 式 的 に 判 断 する 建 前 を 採 ったものと 解 される このような 理 解 は, 租 税 法 律 主 義, 法 令 の 統 一 的 解 釈 の 観 点 からも 根 拠 づけられるもので -21-

あり, 私 法 上 の 法 人 概 念 を 前 提 として, 民 法 及 び 租 税 法 上 の 法 人 概 念 と 整 合 的 に 解 釈 しようとするもので, 適 用 した 際 の 実 際 上 の 不 都 合 もない こ れに 対 し, 控 訴 人 の 主 張 によるときは, 外 国 の 事 業 体 についてのみ,その 準 拠 法 上 の 法 人 格 の 有 無 という 形 式 的 画 一 的 基 準 によることなく, 個 別 具 体 的 な 実 質 判 断 を 要 することとなり, 内 国 法 人 の 場 合 と 比 較 し, 法 的 安 定 性 を 欠 くうらみがある このように 考 えると, 基 準 1は 相 当 というべき である ウ 同 イについて 判 断 するに, 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 が 損 益 の 帰 属 主 体 で あることは, 租 税 法 の 規 定 上 明 らかであり, 上 記 に 説 示 したとおり, 租 税 法 上 の 法 人 の 意 義 は, 私 法 上 の 法 人 と 同 義 であるから, 私 法 上 の 法 人 の 要 件 として 損 益 の 帰 属 主 体 であることを 挙 げることは 相 当 と 解 される そして, 法 人 において 事 業 の 損 益 により 構 成 される 所 得 の 実 質 的 な 帰 属 主 体 が 法 人 の 構 成 員 であることはないから, 基 準 2は, 法 人 とそう でない 事 業 体 とを 区 別 する 上 で 有 用 であり,かつ, 相 当 というべきである なお, 控 訴 人 は, 控 訴 人 基 準 2と 基 準 2との 適 用 上 の 差 異 が 実 際 に 問 題 となる 例 として, 外 国 の 事 業 体 が 当 該 国 の 準 拠 法 により 構 成 員 とは 別 個 の 権 利 義 務 の 主 体 として 取 り 扱 われているにもかかわらず, 当 該 準 拠 法 にお いて, 事 業 活 動 から 生 じた 損 益 を 構 成 員 に 帰 属 させることを 許 容 する 法 制,とりわけ 法 的 に, 事 業 体 にいったん 帰 属 した 損 益 について,その 構 成 員 に 配 分 する 方 法 が 定 められている 場 合 の 取 扱 いを 挙 げる しかし, 事 業 の 損 益 が 事 業 体 にいったん 帰 属 するといえるかは, 当 該 法 令 の 解 釈 如 何 に よるべきところ, 引 用 に 係 る 補 正 後 の 原 判 決 (52 頁 16 行 目 ないし55 頁 1 行 目 )に 説 示 するとおり, 少 なくとも,バミューダ 法 に 準 拠 して 組 成 された 被 控 訴 人 には, 事 業 の 損 益 がいったん 帰 属 するものではない した がって, 本 件 においては, 控 訴 人 の 上 記 主 張 は,その 前 提 を 欠 く エ 同 ウについて 判 断 するに, 平 成 25 年 東 京 高 裁 判 決 は, 米 国 デラウェア -22-

州 LPS 法 により 組 成 されたLPSの 法 人 該 当 性 に 関 する 事 案 であって, そもそも, 本 件 とは 事 案 を 異 にするものである その 上 に, 上 記 ウに 説 示 したとおり,バミューダ 法 には,EPSに 関 して 法 人 格 を 付 与 する 旨 の 規 定 は 存 在 せず,したがって, 平 成 25 年 東 京 高 裁 判 決 が, 当 該 LPSが 我 が 国 の 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 するとの 判 断 において 前 提 とした 米 国 デラ ウェア 州 LPS 法 に 基 づき 設 立 されたLPSが separate legal entity とな る 旨 の 規 定 ( 同 法 201 条 (b))に 相 当 する 定 めはバミューダ 法 にはない のである 加 えて, 平 成 25 年 東 京 高 裁 判 決 の 判 示 内 容 が, 控 訴 人 主 張 の 判 断 枠 組 みに 沿 うものといえるかどうかについても 疑 問 が 残 る しかし, それを 措 くとしても, 上 記 の 理 由 により, 同 判 決 の 判 示 内 容 が 本 件 判 断 を 左 右 するものとは 解 されない オ 以 上 によれば, 控 訴 人 の 上 記 第 2の3(3)の 主 張 は, 採 用 することができ ない (4) 小 括 以 上 によれば, 被 控 訴 人 は, 租 税 法 上 の 法 人 に 該 当 するとは 認 められず, したがって, 法 人 税 法 2 条 4 号 の 外 国 法 人 に 該 当 せず, 同 法 4 条 2 項 本 文 による 納 税 義 務 者 に 当 たるということはできないから, 法 人 税 の 納 税 義 務 を 負 うものとはいえない 3 争 点 2( 被 控 訴 人 の 租 税 法 上 の 人 格 のない 社 団 等 該 当 性 )について (1) 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(1)ないし(3)のとおり 主 張 し, 要 するに, 被 控 訴 人 は, 組 織 及 び 財 産 帰 属 のいずれの 点 においても, 人 格 のない 社 団 等 として 認 められるための 要 件 をすべて 満 たしているというのである そこで, 以 下, 引 用 に 係 る 原 判 決 の 説 示 との 重 複 を 厭 うことなく 判 断 する (2) 組 織 性 について( 上 記 第 2の4(2)アないしオ) ア 人 格 のない 社 団 等 ( 権 利 能 力 のない 社 団 )に 該 当 するための 要 件 は, 最 高 裁 昭 和 39 年 判 決 に 従 い,1 団 体 としての 組 織 を 備 え,2 多 数 決 の 原 則 -23-

が 行 われ,3 構 成 員 の 変 更 にもかかわらず 団 体 そのものが 存 続 し,4その 組 織 により 代 表 の 方 法, 総 会 の 運 営, 財 産 の 管 理 その 他 団 体 としての 主 要 な 点 が 確 定 していることが 必 要 であるとされるところ, 控 訴 人 は,これら の 要 件 は,すべて 独 立 して 厳 格 に 満 たされることが 要 求 されるものではな く,むしろ 社 団 性 を 認 定 するための 指 標 であり, 各 要 件 相 互 の 関 係 で 柔 軟 に 解 釈 され 得 るものである 旨 主 張 する そこで, 判 断 するに, 人 格 のない 社 団 等 は, 事 柄 の 性 質 上, 法 人 格 を 有 しないこと 以 外 の 点 では, 法 人 と 同 様 の 実 質 を 有 していることが 必 要 であ り, 上 記 各 要 件 は,その 識 別 のための 基 準 である そうすると, 控 訴 人 の 主 張 するように 各 要 件 を 相 対 化 することは 相 当 とは 解 されず,4つの 要 件 が 独 立 して 満 たされる 必 要 があると 解 すべきである もっとも, 控 訴 人 は, 被 控 訴 人 につき, 上 記 の 各 要 件 を 満 たしていると 主 張 するので, 順 次 これを 検 討 する イ 上 記 1の 要 件 について 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(2)イのとおり 主 張 する そこで, 判 断 するに, 原 判 決 (59 頁 3 行 目 ないし26 行 目 )に 説 示 す るとおり, 被 控 訴 人 において,その 管 理 及 び 運 営 に 関 する 独 占 的 権 限 は, ジェネラル パートナーに 付 与 され,ジェネラル パートナーには, 業 務 執 行 及 び 組 織 運 営 に 係 る 意 思 決 定 を 行 い 被 控 訴 人 を 代 表 して 取 引 等 を 行 う 権 限 が 与 えられ, 本 件 LPS 契 約 上,リミテッド パートナーが 被 控 訴 人 の 管 理 又 は 運 営 に 参 加 し,その 他 の 被 控 訴 人 の 意 思 決 定 につき 関 与 する ことは 予 定 されていない ところで, 組 合 の 業 務 の 執 行 は, 組 合 員 の 過 半 数 で 決 し, 組 合 契 約 で 業 務 の 執 行 を 委 任 した 者 ( 業 務 執 行 者 )が 数 人 ある ときは,その 過 半 数 で 決 するものとした 上, 組 合 の 常 務 は,その 完 了 前 に 他 の 組 合 員 又 は 業 務 執 行 者 が 異 議 を 述 べたときを 除 き, 各 組 合 員 又 は 各 業 務 執 行 者 が 単 独 で 行 うことができる 旨 規 定 されているが( 民 法 670 条 ), -24-

第 三 者 との 関 係 においては, 組 合 契 約 その 他 により 業 務 執 行 組 合 員 が 定 め られている 場 合 は 業 務 執 行 組 合 員 が 組 合 の 業 務 に 関 して 組 合 員 全 員 を 代 表 する 権 限 を 有 すると 解 されている そうすると, 被 控 訴 人 は, 民 法 上 の 組 合 ( 任 意 組 合 )に 類 似 した 組 織 形 成, 運 営 等 がされているとみることが できる したがって, 被 控 訴 人 が 任 意 組 合 その 他 の 契 約 関 係 により 認 めら れる 団 体 性 を 超 えて, 意 思 決 定 機 関, 業 務 執 行 機 関 又 は 代 表 機 関 等 の 団 体 としての 組 織 を 備 えているとはいえない そうすると, 被 控 訴 人 は,1の 要 件 を 具 備 しているとみることはできな い ウ 上 記 2の 要 件 について 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(2)ウのとおり 主 張 する そこで, 判 断 するに,リミテッド パートナーは, 本 件 LPS 契 約 にお いて,ジェネラル パートナーに 対 し, 被 控 訴 人 の 事 業 及 び 業 務 の 経 営 や 管 理 に 関 する 独 占 的 権 限 を 付 与 している それは, 民 法 上, 組 合 の 業 務 執 行 が 多 数 決 によって 行 われるのと 異 なるものではなく( 民 法 670 条 1 項,2 項 ), 上 記 イと 同 様, 被 控 訴 人 について, 民 法 上 の 組 合 ( 任 意 組 合 ) に 類 似 した 組 織 形 成, 運 営 等 がされていることを 示 すものにすぎないもの と 解 される そうすると, 被 控 訴 人 は,2の 要 件 を 具 備 しているとみることはできな い エ 上 記 3の 要 件 について 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(2)エのとおり 主 張 する そこで, 判 断 するに, 引 用 に 係 る 補 正 後 の 原 判 決 ( 上 記 第 3の1(11)に 説 示 したとおり,ジェネラル パートナーの 死 亡 等 がパートナーシップの 強 制 的 終 了 原 因 とされており,その 限 度 において,パートナーシップの 存 続 自 体 が,リミテッド パートナーの 意 思 とは 無 関 係 の,ジェネラル パ -25-

ートナーの 事 情 により 決 まる 場 合 がある そうすると, 被 控 訴 人 が,3の 要 件 を 具 備 するとみることには 疑 問 があ る オ 上 記 4の 要 件 について 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(2)オのとおり 主 張 する そこで, 判 断 するに, 控 訴 人 が 主 張 する 事 項 は,いずれも 民 法 上 の 組 合 ( 任 意 組 合 )に 類 似 した 属 性 でもあるというべきところ, 原 判 決 (59 頁 18 行 目 ないし26 行 目 )に 説 示 するとおり, 被 控 訴 人 は 団 体 としての 組 織 を 備 えていないのであるから, 本 件 LPS 契 約 の 定 めをもって,その 組 織 により 代 表 の 方 法, 総 会 の 運 営, 財 産 の 管 理 その 他 団 体 としての 主 要 な 点 が 確 定 しているとはいえない そうすると, 被 控 訴 人 は,4の 要 件 を 具 備 しているとみることはできな い カ 以 上 によれば, 被 控 訴 人 は, 上 記 1,2,4の 各 要 件 を 満 たすものとは いえず,3の 要 件 該 当 性 には 疑 問 がある したがって, 控 訴 人 の 上 記 主 張 は, 理 由 がない (3) 財 産 帰 属 の 点 について( 上 記 第 2の4(3)) 控 訴 人 は, 上 記 第 2の4(3)のとおり 主 張 する そこで, 判 断 するに, 原 判 決 (35 頁 5 行 目 ないし15 行 目 )が 説 示 する とおり,1902 年 PS 法 によれば,LPSにおいては,パートナーシップ 財 産 (partnership property)に 対 するパートナーの 持 分 が 認 められている(2 4 条 ) そうすると, 被 控 訴 人 における 財 産 帰 属 形 態 は 総 有 ではなく, 合 有 というほかない 控 訴 人 の 主 張 は,その 前 提 を 欠 くものである したがって, 控 訴 人 の 上 記 主 張 は, 理 由 がない (4) 小 括 以 上 によれば, 被 控 訴 人 は, 法 人 税 法 2 条 8 号 の 人 格 のない 社 団 等 に -26-

該 当 せず,したがって, 同 法 4 条 2 項 ただし 書 による 納 税 義 務 者 に 当 たると いうことはできないから, 法 人 税 の 納 税 義 務 を 負 うことはない 4 争 点 1,2についての 控 訴 人 のその 余 の 主 張 は,いずれも 上 記 の 判 断 を 左 右 するものではない 第 4 結 論 以 上 によれば, 被 控 訴 人 の 予 備 的 請 求 は 争 点 3について 判 断 するまでもな く, 理 由 があるから 認 容 すべきであり,これと 同 旨 の 原 判 決 は 相 当 であって, 本 件 控 訴 は 理 由 がない よって, 本 件 控 訴 を 棄 却 することとして, 主 文 のとおり 判 決 する 東 京 高 等 裁 判 所 第 22 民 事 部 裁 判 長 裁 判 官 加 藤 新 太 郎 裁 判 官 河 田 泰 常 裁 判 官 柴 田 秀 は, 退 官 につき, 署 名 押 印 することができない 裁 判 長 裁 判 官 加 藤 新 太 郎 -27-