2014 年 第 3 巻 第 1 号 32 頁 帝 王 切 開 中 のアナフィラキシーショックを 契 機 に 診 断 に 至 った ラテックス フルーツ 症 候 群 の 1 例 A case of latex-fruit syndrome diagnosed after anaphylactic shock during cesarean section 順 天 堂 大 学 静 岡 病 院 産 婦 人 科 山 田 敦 子 田 口 雄 史 平 山 貴 士 御 木 多 美 登 山 口 貴 史 田 中 沙 織 菅 沼 牧 知 子 村 岡 友 美 子 田 中 利 隆 五 十 嵐 優 子 三 橋 直 樹 Department of Obstetrics and Gynecology, Juntendo Shizuoka Hospital Atsuko YAMADA, Takeshi TAGUCHI, Takashi HIRAYAMA, Tamito MIKI, Takashi YAMAGUCHI, Saori TANAKA, Machiko SUGANUMA, Yumiko MURAOKA, Toshitaka TANAKA, Yuko IGARASHI, Naoki MITSUHASHI キーワード;ラテックス フルーツ 症 候 群 アナフィラキシー 帝 王 切 開 概 要 ラテックスはバナナ アボガドなどの 特 定 の 食 物 に 含 まれる 蛋 白 質 と 交 差 抗 原 性 を 示 すことがあ り ラテックスアレルゲンに 感 作 されると 即 時 型 アレルギーを 起 こすことがあり ラテックス フ ルーツ 症 候 群 と 呼 ばれることがある 今 回 我 々は 前 2 回 の 帝 王 切 開 時 や 妊 娠 中 の 内 診 や 経 腟 超 音 波 検 査 施 行 時 におけるラテックス 使 用 では 無 症 状 で あったが 帝 王 切 開 中 に 使 用 したラテックス 手 袋 によるアナフィラキシーショックを 発 症 し その 後 の 検 査 でラテックス 特 異 IgE 抗 体 価 と 果 物 の 特 異 的 IgE 抗 体 価 の 上 昇 が 確 認 され メロンで の 食 物 アレルギーが 発 覚 した 症 例 を 経 験 した 果 物 アレルギー アトピー 体 質 職 業 上 での 抗 原 へ の 暴 露 などについての 詳 細 な 問 診 を 行 うことは ラテックス フルーツ 症 候 群 の 診 断 に 有 用 であり アレルギー 発 症 を 防 ぐ 上 で 重 要 であるため 積 極 的 に 行 う 必 要 がある また ハイリスク 群 ではラ テックスフリー 環 境 下 での 対 応 に 努 めなければな らないと 考 える 緒 言 ラテックスとはゴムの 木 等 の 樹 液 を 加 工 して 作 られる 伸 縮 性 に 富 んだ 材 料 であり 手 袋 カテー テル 絆 創 膏 などの 医 療 用 具 や 炊 事 用 手 袋 ゴ ム 風 船 など 日 用 品 として 加 工 され 日 頃 から 接 触 する 機 会 が 非 常 に 多 い 物 質 である これら ラ テックス 製 品 に 接 触 することによって 起 こる 即 時 型 アレルギー 反 応 が ラテックスアレルギーと 定 義 されている ラテックスはバナナ アボガドな どの 特 定 の 食 物 に 含 まれる 蛋 白 質 と 交 差 抗 原 性 を 示 すこともあり ラテックスアレルゲンに 感 作 さ れると 前 述 のフルーツの 摂 取 で 即 時 型 アレル ギーを 起 こすことがあり ラテックス フルーツ 症 候 群 と 呼 ばれている
2014 年 第 3 巻 第 1 号 33 頁 今 回 我 々は 前 2 回 の 妊 娠 経 過 帝 王 切 開 術 前 後 管 理 中 日 常 生 活 及 び 今 回 妊 娠 中 の 内 診 や 経 腟 超 音 波 などでのラテックス 使 用 では 無 症 状 であっ たが 帝 王 切 開 術 中 にアナフィラキシーショック を 発 症 し その 後 の 検 査 でラテックス フルーツ 症 候 群 が 診 断 された1 例 を 経 験 したので 報 告 する 症 例 28 歳 女 性 2 経 妊 2 経 産 既 往 歴 家 族 歴 は 特 記 事 項 なし 既 往 歴 として 花 粉 症 を 含 め ア レルギーの 既 往 はなし 1 回 目 の 分 娩 は 妊 娠 33 週 3 日 に 前 期 破 水 のため 緊 急 帝 王 切 開 施 行 となり 2 回 目 の 分 娩 は 妊 娠 37 週 0 日 に 前 回 帝 切 のため 予 定 帝 王 切 開 施 行 となっていた どちらの 分 娩 も 当 施 設 で 硬 膜 外 脊 椎 麻 酔 下 に 行 われており 術 中 術 後 経 過 共 に 特 に 問 題 はなかった 今 回 妊 娠 は 前 2 回 帝 切 のため 妊 娠 37 週 4 日 で 選 択 的 帝 王 切 開 が 予 定 された 妊 娠 経 過 術 前 検 査 に 特 記 すべきことはなかった 術 中 経 過 手 術 室 入 室 時 のバイタルは 血 圧 120/68 mm Hg 心 拍 数 は 89 回 / 分 SpO2 98%( 空 気 呼 吸 下 )であっ た( 図 1) 麻 酔 内 容 は 入 室 15 分 後 に 硬 膜 外 麻 酔 カテーテル 留 置 され テスト 投 与 として 2%リ ドカイン1ml を 硬 膜 外 腔 に 投 与 した 入 室 20 分 後 に 脊 椎 麻 酔 としてクモ 膜 下 腔 に 0.5% 高 比 重 ブピバカイン 2ml とフェンタニル 15µg が 投 与 さ れた 麻 酔 レベルは 第 4 胸 椎 以 下 であった 呼 吸 は 自 発 呼 吸 で 酸 素 は フェイスマスク 3L/ 分 で 施 行 された 嘔 気 や 呼 吸 困 難 の 訴 えはなく 入 室 30 分 後 に 手 術 が 開 始 された 腹 膜 と 子 宮 が 強 固 に 癒 着 していたため 手 術 開 始 23 分 後 に 児 娩 出 24 分 後 に 胎 盤 が 娩 出 された 出 生 児 の 体 重 は 2830g アプガー 指 数 は 1 分 値 9 点 5 分 値 9 点 であった 分 娩 直 後 にオキシトシ ン 5 単 位 メチルエルゴメトリンマレイン 酸 塩 0.2mg を 子 宮 筋 層 に 局 所 注 射 メチルエルゴメト リンマレイン 酸 塩 0.2mg を 静 脈 内 注 射 した その 後 ミダゾラム 4mg を 静 脈 内 注 射 し 鎮 静 を 行 っ た 児 娩 出 8 分 後 母 体 血 圧 が 85/52 mmhg と 低 下 心 拍 数 122 回 / 分 と 増 加 したためフェニレフリン を 100μgずつ 計 0.7mg 投 与 した しかし 児 娩 出 10 分 後 には 50/35mmHg とさらに 血 圧 が 低 下 し SpO2 も 85%となった この 時 点 で 患 者 は 鎮 静 さ れているため 呼 吸 苦 などの 訴 えはなく 子 宮 収 縮 は 良 好 であり 術 野 の 出 血 はコントロールされて いた 急 速 輸 液 を 開 始 するとともに 肺 塞 栓 を 疑 い 低 分 子 ヘパリン 5000 単 位 投 与 ノルアドレナリン 0.1γの 持 続 投 与 が 開 始 された さらに アドレ ナリン 10μg 投 与 したところ 血 圧 は 97/77 mmhg と 上 昇 し 循 環 動 態 の 反 応 がみられた しかし SpO2 は 86%と 低 酸 素 持 続 したため ドルミカム スキサメトニウムを 用 いて 気 管 内 挿 管 し 麻 酔 管 理 を 全 身 麻 酔 に 切 り 替 えた さらに 右 手 根 部 より 動 脈 ライン 挿 入 し 血 圧 持 続 モニターとした 挿 管 後 のバイタルはノルアドレナリン 0.8γとドルミ カム スキサメトニウムの 持 続 投 与 で 血 圧 90/50 mmhg 台 心 拍 数 110 回 / 分 台 SpO2 99%であった 全 身 皮 膚 に 紅 潮 が 認 められ この 段 階 でアナフィ ラキシーショックが 疑 われた 手 術 はその 間 も 続 行 され 急 激 な 血 圧 低 下 より 25 分 後 に 手 術 終 了 した 手 術 時 間 は 1 時 間 6 分 麻 酔 時 間 は 1 時 間 50 分 体 液 納 出 は 出 血 量 540ml( 羊 水 込 み) 尿 量 60ml 輸 液 量 2450ml であった 母 体 は 周 術 期 管 理 目 的 に 挿 管 のまま 集 中 治 療 室 に 収 容 された
2014 年 第 3 巻 第 1 号 34 頁 術 中 経 過 mmhg 140 120 100 80 60 40 20 0 麻 酔 導 入 手 術 開 始 術 後 経 過 児 娩 出 オキシトシン 急 変 ヘパリン フェニレフリン 手 術 終 了了 挿 管 アドレナリン ドル ミカム+スキサメトニウム ノル アドレナリン 手 術 時 間 1 時 間 6 分 図 1 % 100 98 ICU 入 室 96 94 92 90 88 86 84 82 80 出 血 量量 540ml 造 影 CT 心 エコー SBP(mmHg) DBP(mmHg) SpO2(%) 集 中 治 療 室 収 容 時 に 全 身 造 影 CT 施 行 されたが 明 らかな 血 栓 は 肺 動 静 脈 共 に 見 られなかった 心 電 図 心 臓 超 音 波 検 査 では 右 心 負 荷 徴 候 もなく その 他 肺 塞 栓 を 疑 う 所 見 は 認 められなかった 集 中 治 療 室 入 室 時 に 行 った 血 液 検 査 ( 図 2)では WBC15300/μl D ダイマー19.2μg/ml と 上 昇 AT Ⅲ 活 性 は 39%と 低 下 を 認 めた また シアリル Tn 抗 原 は 15.0U/ml と 低 値 であり 羊 水 塞 栓 を 示 唆 する 結 果 はみられなかった 非 特 異 的 IgE は 424.9mg/dl と 優 位 に 上 昇 していたことより シ ョックの 原 因 を 術 中 使 用 したなんらかの 物 質 によ るアナフィラキシーと 考 えた 以 上 よりアナフィ ラキシーショックと 診 断 し リンデロン 2mg 投 与 及 び 帝 王 切 開 術 後 の 血 栓 予 防 に 低 分 子 ヘパリン 10000 単 位 / 日 投 与 も 開 始 した その 後 呼 吸 循 環 動 態 の 安 定 を 認 めたため ノルアドレナリン ドルミカム スキサメサニウムを 順 次 中 止 し 帰 室 後 4 時 間 半 で 抜 管 となった 本 症 例 では 肥 満 細 胞 の 脱 顆 粒 を 示 唆 するトリプ ターゼは 提 出 されていない 以 後 術 後 経 過 に 問 題 なく 術 後 8 日 目 に 退 院 と なった 図 2 アナフィラキシーに 対 しての 治 療 が 著 効 したこ とより 原 因 物 質 に 対 しての 精 査 が 行 われた 術 後 7 日 目 に 行 ったプリックテストでは 術 中 に 使 用 した 薬 剤 はすべて 陰 性 であった( 図 3) 原 因 物 質 の 検 索 1プリックテスト ラテックスパウダー バイオゲルノンパウダー 2%リドカイン 0.2%アナペイン 0.5%プピバカイン フェンタニル エフェドリン アトロピン フェニレフリン ミダゾラム メチルエルゴメトリン 生 食 生 食 & 白 色 ワセリン 術 中 使 用した 薬 剤 と 物 質 13 種 類 (コントロール 含 む) すべてプリックテスト 陰 性 図 3 しかし 同 日 行 った RAST 検 査 ではラテックス 特 異 IgE 抗 体 価 は 5.68UA/ml(クラス 3)と 高 値 を 認 めた また トマト セロリ じゃがいも りんご キウイ メロン マンゴ 洋 ナシ もも アボカド( 以 上 すべて 基 準 値 は 0.34 UA/ml 以 下 )においても 特 異 的 IgE 抗 体 価 の 上 昇 がみられた ( 図 4)
原 因 物 質 の 検 索 2RAST 抗 原 特 異異 IgE 抗 体 価 (UA/ml) クラス ラテックス 5.68 3 トマト 0.79 2 じゃがいも 1.03 2 セロリ 0.84 2 リンゴ 0.56 1 キウイ 0.56 1 メロン 0.48 1 マンゴ 0.40 1 洋 なし 0.40 1 もも 0.56 1 アボカド 0.50 1 特 異異 的 IgE CAP-RASTの 判 定 基 準 クラス 単 位 (UA/ml) 0 Negative 0.34 以 下 1 Borderline 0.35~0.69 2 Clearpositive 0.70~3.49 3 Strongpositive 3.50~17.49 4 17.5~49.9 5 Highlypositive 50.0~99.9 6 100 以 上 静 岡 産 科 婦 人 科 学 会 雑 誌 (ISSN 2187-1914) 2014 年 第 3 巻 第 1 号 35 頁 スト 皮 内 テストなどの in vivo テストによって なされる⁴)⁵) 本 症 例 でも RAST での 原 因 の 同 定 が 行 われた また 凝 固 異 常 とアレルギーの 関 連 を 調 べてみ ると Asero らは 血 漿 中 の 因 子 が 蕁 麻 疹 発 症 と 関 連 があると 考 えて 凝 固 因 子 について 検 討 をしたと ころ 一 部 の 慢 性 蕁 麻 疹 患 者 の 血 中 では D-ダイ マーや F1+2 などの 凝 固 因 子 の 異 常 があることを 明 らかにし これらの 凝 固 異 常 が 蕁 麻 疹 発 症 と 関 図 4 以 上 より 本 症 例 はラッテクス フルーツ 症 候 群 によるアナフィラキシーショックであったと 診 断 された 後 日 アレルギーについて 患 者 に 説 明 を 行 い 日 常 生 活 においてラッテクス 含 有 製 品 の 使 用 を 避 けるよう 指 導 を 行 った また 再 度 詳 細 に 問 診 を 行 ったところ 以 前 にメロンで 口 腔 内 に 掻 痒 がみられたことがわかった 患 者 は 口 腔 内 掻 痒 をアレルギー 症 状 と 認 識 していなかった 術 後 か ら 現 在 に 至 るまでは 上 記 食 物 摂 取 による 症 状 出 現 はみられていない 考 察 アナフィラキシーとは 種 々の 物 質 への 暴 露 を 契 機 に 発 疹 や 発 赤 掻 痒 感 や 浮 腫 などの 皮 膚 症 状 喘 鳴 や 呼 吸 困 難 などの 呼 吸 器 症 状 嘔 吐 や 下 痢 な どの 消 化 器 症 状 ショックなどの 循 環 器 症 状 を 突 然 発 症 し 通 常 は 24 時 間 以 内 に 軽 快 する 重 症 の アレルギー 反 応 と 定 義 される¹) 術 中 のアナフィ ラキシーの 発 生 頻 度 は 3500-20000 例 に 一 例 とさ れ²)³) 原 因 物 質 として 発 生 頻 度 順 に 筋 弛 緩 薬 ラテックス 抗 生 物 質 コロイド 輸 液 静 脈 麻 酔 薬 麻 薬 などが 挙 げられる アナフィラキシーの 初 期 診 断 は 既 往 歴 や 上 記 に 示 した 症 状 身 体 所 見 などに 基 づいて 行 われるが 確 定 診 断 原 因 物 質 の 同 定 には 血 清 IgE 抗 体 価 の 測 定 (RAST)など の in vitro テスト プリックテストやパッチテ 連 している 可 能 性 を 指 摘 している⁶) さらに 慢 性 蕁 麻 疹 だけでなく 急 性 蕁 麻 疹 においても 凝 固 異 常 がみられ CRP と 相 関 することが 報 告 されており ⁷) 帝 王 切 開 での 手 術 侵 襲 による 凝 固 線 溶 系 の 亢 進 のみではなく アレルギー 発 症 自 体 が 凝 固 異 常 と 関 連 している 可 能 性 があるといえる ラテックスは 水 様 性 で 澱 粉 との 結 合 性 があり パウダー 付 ラテックス 手 袋 ではトウモロコシ 澱 粉 に 吸 着 し 浮 遊 アレルゲンとして 経 皮 的 経 気 道 的 に 感 作 抗 原 刺 激 される そのため 感 作 の 機 会 の 多 い 医 療 従 事 者 やラテックス 製 造 業 者 頻 回 手 術 施 行 者 での 頻 度 増 加 がみられる⁵)⁸) また 反 復 して 帝 王 切 開 を 受 ける 妊 産 婦 はラテ ックス 暴 露 の 機 会 が 多 く 帝 王 切 開 中 のアナフィ ラキシーの 発 生 頻 度 は 310 症 例 に 1 症 例 に 起 こる という 報 告 ⁹)がある これは 児 娩 出 後 の 急 激 な 子 宮 収 縮 の 結 果 ラテックス 粒 子 が 大 量 に 子 宮 から 血 中 に 流 入 しアナフィラキシー 反 応 が 誘 発 される ためと 考 えられ⁹) 前 述 した 術 中 のアナフィラキ シーの 発 生 頻 度 に 比 較 して 高 く 前 回 の 手 術 で 異 常 がなかった 場 合 でも 反 復 帝 王 切 開 症 例 に 対 して は 大 量 の 抗 原 に 感 作 されるものと 考 え 注 意 する 必 要 がある 本 邦 における 過 去 5 年 間 に 報 告 された 症 例 で 本 症 例 と 同 様 に 手 術 開 始 からラテックスを 含 んだ カテーテルや 手 袋 に 暴 露 されているにも 関 わらず
2014 年 第 3 巻 第 1 号 36 頁 児 娩 出 後 にアナフィラキシーを 生 じ 術 後 にラテ ックスが 原 因 と 同 定 された4 例 について 表 に 示 す ¹⁰)~¹³)( 表 1) 表 1 それぞれの 症 例 は 気 管 支 喘 息 合 併 者 医 療 従 事 者 や 頻 回 手 術 施 行 者 とハイリスク 要 因 を 認 め そ の 一 部 は 術 前 の 問 診 で 明 らかにされていない ま た 発 症 時 期 としても 児 娩 出 後 に 急 激 にショック などの 症 状 が 見 られており 前 述 した 帝 王 切 開 時 のアナフィラキシー 発 症 誘 因 と 矛 盾 しない これ らの 症 例 は 発 症 後 の 適 切 な 対 応 により 良 好 な 経 過 を 辿 った しかし 術 前 の 対 応 によって 発 症 を 回 避 できた 可 能 性 は 否 定 できない ラテックスフリー 環 境 の 整 備 を 行 った 医 療 施 設 でのラテックスアレルギー 有 症 率 の 低 下 の 報 告 が なされており アレルゲンの 排 除 による 予 防 が 今 後 の 課 題 であるといえる ラテックスのメジャー アレルゲンである Hev b5 Hevb6 Hevb7 はバ ナナ キウイ アボカドなどに 対 して 交 差 反 応 を 示 し¹⁴) ラテックスアレルギーの 35%の 患 者 で これらの 食 物 アレルギーがみられラテックス フ ルーツ 症 候 群 と 呼 ばれる⁸)¹⁵) これら 食 物 アレ ルギーに 対 する 問 診 はラテックスアレルギーのハ イリスク 群 のスクリーニングになり 今 後 のアナ フィラキシー 発 症 の 予 防 に 役 立 つといえる 国 内 での 対 応 として 厚 生 省 は 1992 年 に 医 薬 品 等 安 全 性 情 報 で 米 国 FDA の 発 表 を 日 本 語 化 し て 発 表 し 1996 年 には 日 本 ラテックスアレルギ ー 研 究 会 が 発 足 し ラテックスアレルギーの 予 防 啓 発 活 動 を 行 っている⁸) 1999 年 には 医 療 用 具 の 添 付 文 書 にラテックスアレルギーに 注 意 す るよう 表 示 する 法 律 が 制 定 された 当 院 ではアレルギー 安 全 対 策 ガイドライン 2009 に 基 づいてラテックスセーフの 手 術 環 境 を 整 えるべく まずラテックス 感 作 頻 度 を 増 加 させ ると 考 えられるパウダー 付 ラテックス 手 袋 の 完 全 撤 廃 を 行 った また 本 症 例 や 前 述 した 報 告 症 例 のようにアレルギー 症 状 アレルギーリスクを 本 人 が 自 覚 していない 場 合 を 見 逃 さないために ラ テックスアレルギー 問 診 票 を 作 成 し( 図 5) 術 前 訪 問 時 にすべての 手 術 患 者 に 対 して 問 診 を 行 い ハイリスク 群 を 選 出 し ラテックスフリーで の 手 術 を 行 える 環 境 を 整 えている 以 前 は 麻 酔 器 や 腹 腔 鏡 機 材 の 配 管 のような 大 きなものから 器 具 を 束 ねる 輪 ゴムまで 様 々な 用 途 でラテックス 素 材 が 使 用 されており ラテックスフリーの 手 術 室 の 準 備 には 人 員 と 時 間 を 費 やした しかし 近 年 の 機 器 の 多 くはラテックスフリーで 販 売 されており ここ 最 近 では 手 術 用 手 袋 や 手 術 帽 など 細 かい 配 慮 のみで 対 応 する 現 場 が 増 えてきているようである
静岡産科婦人科学会雑誌(ISSN 2187-1914) 2014 年第 3 巻 第 1 号 37 頁 参考文献 1.Ellis AK, Day IH. Diagnosis and management of anaphylaxis. CMJ2003;307-11. 2. Harboe T, Guttormsen AB, Irgen A,et al.anaphylaxis during anesthesia in Norway: a 6-year aingle-center follow-up study.anesthesiology 2005;102:897-903. 3.Ebo DG, Fisher MM, Hagendorens MM, et al. Anaphylaxis during anesthesia: diagnostic approach. Allergy 2007;62:471-87. 4. Hepner P, Castells MC. Anaphylaxis during the perioperative period. Anesth Analg 2003;97:1381-95. 5.赤澤晃 松永佳世子 アレルギー安全対策ガイ ドライン 2009.日本ラテックスアレルギー研 究会 2009 6 Asero R, Tedeschi A, Riboldi P, et al. Plasma of patients with chronic urticaria shows signs of thrombin generation, and its 図5 intradermal injection causes wheal-and- 結論 flare reactions much more frequently than 今回我々は 前 2 回の帝王切開時や妊娠中の内診 autologous serum. J Allergy Clin lmmunol や経腟超音波検査施行時におけるラテックス使用 2006;117:1113-1117 では無症状であったが 帝王切開中に使用したラ 7.Takahagi S, Mihara S, lwamoto K et al. テックス手袋によるアナフィラキシーショックを Coagulation/fibrinolysis and inflammation 発症し その後の検査で食物アレルギーが発覚し markers are associated with disease た症例を経験した 果物アレルギー アトピー体 activity in patients with chronic 質 職業上での抗原への暴露などについての詳細 urticarial. Allergy2010;65:649-656 な問診を行うことは ラテックス フルーツ症候 群の診断に有用であり アレルギー発症を防ぐ上 で重要であるため 積極的に行う必要がある 8.松永佳世子 他 ラテックスアレルギーのすべ て 秀潤社 2009 9.Draisci G, Nucera E, Pollastrini E et al.anaphylatic reactions during ceasarean 本論文の要旨は平成 23 年度静岡産科婦人科学会 section. Int J Obstet Anesth 2007;16:63- 秋期学術集会で発表した 67 10.宮田あかね, 大和竜夫, 高野宏邦,他. 帝
2014 年 第 3 巻 第 1 号 38 頁 王 切 開 中 に 発 症 したラテックスによるアナ フィラキシーショックの1 例. 日 本 ラテック スアレルギー 研 究 会 会 誌 2009;13;1:56-63 11. 金 森 理 絵, 鎌 田 ことえ, 小 松 龍, 他. 帝 王 切 開 中 に 発 症 したラテックスアレルギーの1 症 例. 麻 酔 2010;59:375-378 12. 池 田 奈 保 美, 小 田 裕, 田 中 克 明, 他. 帝 王 切 開 中 に 生 じたラテックスによるアナフィラ キシーショックの1 症 例. 麻 酔 2010;59: 1294-1297 13. 中 内 佳 奈 子, 郷 律 子, 山 本 香, 他. 反 復 帝 王 切 開 においてアナフィラキシーを 発 症 した ラテックスアレルギーの1 例. Tokushima red Cross Hospital Medical Journal 2011;16:54-57 14. 矢 上 健.ラテックスアレルゲンとしての 植 物 の 生 体 防 御 蛋 白 質. 国 立 医 薬 品 食 品 衛 生 研 究 所 報 告,1998;116:46-62. 15.Rodriguez J, Crespo JF, Lopez-Rubio A, et al. Clinical cross-reactivity among foods of the Rosaceae family. J Allergy Clin Immunol. 2000; 106:183-189.