実用的な使い方



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2 熟 眠 障 害 睡 眠 時 間 は 十 分 なのに 朝 になって 疲 労 が 抜 けていなかったり 熟 睡 した 感 じがない 場 合 熟 眠 障 害 の 可 能 性 があります 熟 眠 障 害 とは 睡 眠 時 間 は 普 通 ですが 通 常 の 睡 眠 に 比 べ 眠 りが 浅 いことによっ

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診療行為コード

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

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OD 研 究 会 報 No.74 号 -- 内 視 鏡 達 負 担 精 密 可 能 除 頃 バ 条 件 ぜ 条 件 細 胞 傷 爆 四 八 散 例 胃 肝 へ ぜ 肝 器 血 量 至 ぐ 閉 肝 限 学 界 識 率 語 婦 産 卵 巣 爆 婦 系 引 張 上 げ 破 細 胞 び 散 播 腫 ゅ 識

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睡 眠 薬 の 用 い 方 はじめに 不 眠 症 の 薬 物 療 法 を 開 始 するにあたっては まず 不 眠 の 鑑 別 診 断 ができなけれ ばならない 睡 眠 薬 を 用 いる 際 には 薬 物 の 薬 物 動 態 薬 理 作 用 副 作 用 につい て 知 っておく 必 要 がある ここでは 睡 眠 薬 を 実 用 的 合 理 的 に 用 いるうえで 必 要 な 上 記 のことがらについて 簡 単 に 述 べる なお 睡 眠 薬 は 大 きく 分 けてバ ルビタール 系 睡 眠 薬 とベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 および 非 ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 (ベンゾジアゼピン 受 容 体 に 結 合 するため 作 用 機 序 は 同 じである)に 分 けられるが バルビタール 系 睡 眠 薬 は 依 存 耐 性 を 起 こしやすく 多 量 に 服 用 すると 呼 吸 中 枢 を 直 接 抑 制 して 死 亡 することもあり 現 在 では 用 いられなくなっ てきている したがって ここではベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 および 非 ベンゾ ジアゼピン 系 睡 眠 薬 を 中 心 に 解 説 する ポイント;バルビタールは 用 いないこと ベゲタミンはフェノバルビタール クロルプ ロマジン プロメタジンの 合 剤 であり 用 いないほうが 良 い 不 眠 の 原 因 不 眠 はさまざまな 原 因 によっておこる 病 態 であり その 原 因 から 表 1のように 分 けられる 身 体 疾 患 によって 引 き 起 こされる 不 眠 の 多 くは,まず 原 疾 患 の 治 療 を 優 先 するべきである しかし 精 神 疾 患 に 伴 う 不 眠 を 患 者 さんが 身 体 疾 患 ( 前 立 腺 肥 大 による 頻 尿 )のためと 自 己 判 断 しているときもある 従 って 原 疾 患 から 考 えて 不 眠 の 訴 えが 強 すぎる 場 合 は 精 神 疾 患 による 不 眠 を 疑 うべきで ある 不 眠 を 引 き 起 こす 可 能 性 のある 薬 物 を 表 1(2)に 示 した 薬 物 以 外 に もカフェイン アルコール タバコに 含 まれるニコチンなどが 不 眠 の 原 因 とな りうる アルコールはしばしば 不 眠 の 患 者 さんが 寝 付 きをよくする 目 的 で 用 い るが 夜 間 の 突 発 的 覚 醒 や 睡 眠 の 分 断 を 引 き 起 こすことがある また アルコ ールは 睡 眠 時 無 呼 吸 を 悪 化 させることも 知 られている 精 神 生 理 性 不 眠 とは 心 理 的 ストレス 身 体 疾 患 一 時 的 な 環 境 の 変 化 などと 関 連 して 出 現 する 不 眠 で あり 入 眠 困 難 と 夜 間 覚 醒 が 起 こりやすい 精 神 性 理 性 不 眠 では 不 眠 の 要 因 となった 問 題 が 解 決 した 後 も 不 眠 が 続 くことがある これは 不 眠 に 対 する 不 安 恐 怖 が 条 件 付 けされたため 睡 眠 という 条 件 刺 激 により 不 安 恐 怖 感 が 出 現 し 覚 醒 レベルが 高 まると 説 明 されている 従 来 神 経 質 性 不 眠 とよばれているも のとほぼ 一 致 すると 考 えてよい 精 神 性 理 性 不 眠 は 睡 眠 薬 の 適 応 となる 代 表 的 障 害 であるが 実 際 には 眠 れているのに 不 眠 を 強 く 訴 える 症 例 や 薬 物 療 法 以 外 の 治 療 法 ( 睡 眠 時 間 制 限 法 ; 起 床 時 間 を 一 定 にして 眠 くない 時 間 には 布 団 に 入 らないようにする)に 反 応 するときもあり 安 易 な 睡 眠 薬 の 投 与 は 好 ましく ない 最 近 注 目 されている 疾 患 としてむずむず 脚 症 候 群 がある これは 夜 間 安

静 にしていると 足 がむずむずして 動 かしたくなる 病 気 である 足 を 動 かすと 楽 になり 昼 間 は 症 状 はほとんど 出 ない 患 者 自 身 病 気 だと 思 っていないこと が 多 い ポイント;アルコールは 寝 つきをよくするため 寝 際 に 飲 む 人 が 多 いが 睡 眠 の 質 を 悪 くするため 寝 るために 飲 むとういやり 方 は 良 くない むずむず 脚 症 候 群 は 思 ったより 多 い 睡 眠 薬 の 禁 忌 比 較 的 安 全 な 薬 であるが 急 性 狭 隅 角 緑 内 障 重 症 筋 無 力 症 には 禁 忌 である その 他 の 注 意 事 項 については 薬 を 使 用 する 際 の 注 意 および 副 作 用 の 項 で 述 べる. 睡 眠 薬 の 実 際 の 使 い 方 ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 は 血 液 中 からの 消 失 半 減 期 によって4つのタイプ に 分 類 する( 表 1) 一 般 的 に 入 眠 障 害 では 半 減 期 の 超 短 時 間 あるいは 短 時 間 作 用 型 睡 眠 薬 を 選 択 する 中 途 覚 醒 早 朝 覚 醒 の 場 合 には 中 間 作 用 型 ないし 長 期 間 作 用 型 を 選 択 する 睡 眠 薬 によっても 不 眠 が 改 善 しない 場 合 には 増 量 を 試 みるが 増 量 すればそ れだけ 持 ち 越 し 効 果 や 離 脱 症 状 などの 危 険 も 増 大 する また ベンゾジアゼピ ン 系 受 容 体 に 結 合 する 睡 眠 薬 を 一 定 の 量 以 上 に 増 量 しても 受 容 体 は 飽 和 状 態 に なるため 不 眠 は 改 善 しない ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 単 独 で 不 眠 が 改 善 されない 場 合 ミアンセリン(テトラミド)ないしトラゾドン(レスリン)を 加 える 方 法 があ る この2 剤 はセロトニン 2A 拮 抗 作 用 を 有 し 徐 波 睡 眠 を 増 加 させる 作 用 があ る まず トラゾドン 25mg 錠 の 半 錠 をベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 に 追 加 する その 後 25mg に 増 加 それでもだめならトラゾドン 10mg の 半 錠 に 切 り 替 える この2 剤 はα1 受 容 体 拮 抗 作 用 が 強 く 起 立 性 低 血 圧 を 引 き 起 こすため 高 齢 者 に は 慎 重 に 投 与 する 必 要 がある アミトリプチリン(トリプタノール; 抗 うつ 薬 ) レボメプロマジン(ヒルナミン; 抗 精 神 病 薬 ) ヒドロキシジン(アタラックス P; 抗 ヒスタミン 薬 )などは 強 い 抗 ヒスタミン 作 用 を 有 し 催 眠 作 用 がある しか し 同 時 に 抗 コリン 作 用 もあるため 中 止 時 の 離 脱 やせん 妄 の 悪 化 抗 コリン 作 用 による 便 秘 や 尿 閉 などの 副 作 用 があり 好 ましくない 不 眠 の 効 果 判 定 には 本 人 の 自 覚 症 状 の 改 善 を 目 安 にするが 睡 眠 にこだわり のある 症 例 では 十 分 な 睡 眠 がとれているにもかかわらず 不 眠 を 訴 えつづけるこ とがある このような 状 況 が 推 測 されるときは 家 族 の 観 察 も 参 考 にして 処 方 を 決 めていく また 加 齢 によって 必 要 な 睡 眠 時 間 は 減 少 していく 60 歳 以 上 であれば6-7 時 間 の 睡 眠 でよいと 考 える 中 止 方 法 ;ベンゾジアゼピン 系 薬 物 は 基 本 的 に 突 然 の 中 断 により 離 脱 症 状 を 起 こす 可 能 性 がある 中 止 方 法 としては2 週 間 に 四 分 の 一 づつ 減 らしていく 方 法

が 一 般 的 である ただし 半 減 期 の 長 い 睡 眠 薬 を 用 いている 場 合 は 一 日 おきに 投 与 しながら 徐 々に 投 与 間 隔 をあけていく 方 法 ( 隔 日 法 )でもよい また 半 減 期 の 短 い 睡 眠 薬 を 長 いものに 変 えてからが 隔 日 法 にしてもよい 高 齢 者 および 臓 器 障 害 のある 場 合 の 睡 眠 薬 の 選 択 高 齢 者 ; 高 齢 者 では 薬 物 代 謝 が 若 年 者 に 比 較 して 低 下 することが 知 られてい る 特 にミクロゾーム 系 酵 素 による 酸 化 過 程 は 加 齢 によりその 機 能 が 低 下 する ため 薬 物 のクリアランスが 延 長 し 連 続 投 与 によって 血 中 濃 度 が 増 加 する 可 能 性 がある ただし グルクロン 酸 抱 合 が 主 要 な 代 謝 経 路 である 睡 眠 薬 は 加 齢 の 影 響 を 受 けにくいといえる また 高 齢 者 では 転 倒 による 骨 折 を 起 こしやすい ため 筋 弛 緩 作 用 の 少 ない 睡 眠 薬 を 選 択 する ロルメタゼパム(ロラメット)1mg を 半 錠 ゾピクロン(アモバン)0.75mg 半 錠 ゾルピデム(マイスリー)5mg 半 錠 ないしトリアゾラム(ハルシオン)0.125mg を 選 択 する 腎 機 能 障 害 ; 腎 機 能 障 害 ではほとんどの 薬 物 のクリアランスが 障 害 される 透 析 を 受 けている 症 例 には 通 常 の 3 分 の 一 量 から 投 与 するべきである 妊 娠 ;ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 の 催 奇 形 性 は 低 いと 考 えてよいと 思 われるが 妊 娠 中 に 投 与 しない 方 がよいのはいうまでもない 分 娩 前 に 投 与 されている 場 合 には 胎 児 のアップガールスコアを 低 下 させることもある また ぐにゃぐに ゃ 児 症 候 群 を 起 こすことがあるとの 報 告 もある 多 くの 睡 眠 薬 は 脂 溶 性 が 高 い ため 母 乳 へ 移 行 すると 考 えられている したがって 授 乳 中 の 投 与 は 好 ましく ない 肝 機 能 障 害 ;ほとんどのベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 は 肝 臓 によって 酸 化 的 代 謝 うける 肝 硬 変 などの 肝 機 能 障 害 時 には 代 謝 クリアランスが 障 害 され 睡 眠 薬 の 効 果 および 副 作 用 が 強 く 現 われる この 場 合 グルクロン 酸 縫 合 により 代 謝 されるロルメタゼパム(ロラメット)を 選 択 する 呼 吸 器 障 害 ; 肺 気 腫 などの 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 を 有 する 高 齢 者 では 睡 眠 薬 により 低 換 気 がおきることがある 低 換 気 の 原 因 は 睡 眠 薬 による 筋 緊 張 低 下 の 結 果 上 気 道 の 狭 窄 がおこるためと 考 えられている したがって 睡 眠 薬 を 用 いる 場 合 は 筋 弛 緩 作 用 の 少 ないゾルピデム(マイスリー)やゾピクロン(アモバン) を 選 択 する 相 互 作 用 ;ほとんどのベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 は 肝 臓 のミクロゾーム 系 酵 素 であるチトクロームP450 系 に 属 する CYP3A4 による 酸 化 的 代 謝 うける 種 々 の 薬 物 が CYP3A4 の 働 きを 阻 害 するため 酸 化 的 代 謝 をうける 睡 眠 薬 のクリアラ ンスを 阻 害 し 持 ち 越 し 効 果 などの 副 作 用 を 増 強 する 可 能 性 がある 従 って 表 3 にあげた 薬 物 と 睡 眠 薬 を 併 用 する 場 合 には 表 xにあげた CYP3A4 を 主 要 な 代 謝 経 路 を 有 する 睡 眠 薬 は 好 ましくない 副 作 用 そのチェック 方 法 と 副 作 用 対 策

離 脱 症 状 ;ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 はバルビタール 系 睡 眠 薬 に 比 較 して 依 存 形 成 耐 性 離 脱 症 状 がおきにくいことが 知 られている しかし 長 期 間 多 量 の 睡 眠 薬 を 使 用 した 場 合 には 離 脱 時 にせん 妄 けいれんなどの 激 しい 離 脱 症 状 が 起 こることもある また 治 療 量 の 睡 眠 薬 を 長 期 間 使 用 し 中 止 した 際 に 軽 度 の 離 脱 症 状 が 起 こることもある この 場 合 睡 眠 薬 の 服 用 以 前 にはみられな かった 不 安 焦 燥 めまい 耳 鳴 り 手 の 震 えなどの 症 状 が 出 現 する 反 跳 性 不 眠 ; 睡 眠 薬 を 毎 晩 連 用 し 不 眠 が 改 善 した 段 階 で 突 然 服 薬 を 中 止 す ると 服 薬 開 始 まえよりかえって 強 い 不 眠 がすることをいう 一 般 に 反 跳 性 不 眠 は 半 減 期 の 短 い 睡 眠 薬 で 出 現 しやすい 反 跳 性 不 眠 について 十 分 に 説 明 する ことが 重 要 であるが 半 減 期 の 長 い 睡 眠 薬 に 置 き 換 えてから 中 止 する 方 法 もあ る 依 存 形 成 ; 依 存 は 睡 眠 薬 を 処 方 するにあたって 患 者 さんが 最 も 気 にする 症 状 である 依 存 形 成 はアルコール 依 存 など 他 の 依 存 症 状 の 既 往 がある 場 合 高 用 量 が 用 いられている 場 合 投 与 期 間 が 長 い 場 合 に 起 こりやすい また 最 近 で は 臨 床 用 量 依 存 の 問 題 が 注 目 されている 臨 床 用 量 依 存 とは 反 跳 性 不 眠 や 軽 度 の 離 脱 症 状 のため 服 薬 中 止 に 対 する 不 安 が 増 大 し 服 薬 しつづける 状 態 をいう 反 跳 性 不 眠 や 軽 度 の 離 脱 は1 週 間 以 上 続 くことはまれであるため あらかじめ このことを 十 分 に 説 明 しておく 必 要 がある 持 ち 越 し 効 果 ; 中 間 ないし 長 半 減 期 の 睡 眠 薬 では 服 用 した 薬 物 が 翌 日 も 体 内 に 残 り 日 中 の 眠 気 や 精 神 作 業 能 力 の 低 下 を 引 き 起 こすことがある 特 に 長 半 減 期 の 睡 眠 薬 は 連 用 により 徐 々に 体 内 に 蓄 積 し 定 常 濃 度 になるため 持 ち 越 し 効 果 がおこりやすい しかし 半 減 期 の 短 い 睡 眠 薬 でも 投 与 量 が 増 えれば 翌 朝 の 血 中 濃 度 は 上 昇 し 持 ち 越 し 効 果 は 強 くなる 健 忘 作 用 ; 睡 眠 薬 は 服 用 以 前 の 記 憶 は 保 たれているが 服 用 後 の 記 憶 が 障 害 されるという 前 向 性 健 忘 を 引 き 起 こすことがある 睡 眠 薬 による 健 忘 は 半 減 期 が 短 く 力 価 の 高 い 睡 眠 薬 で 報 告 例 が 多 い また 睡 眠 薬 を 服 用 した 後 いつまで も 起 きているとその 間 の 記 憶 がなくなる 頻 度 が 高 くなるため 服 薬 後 は 30 分 以 内 に 床 に 入 るようにする また アルコールとの 相 互 作 用 で 健 忘 惹 起 作 用 が 増 強 されるため 睡 眠 薬 を 服 用 している 場 合 はアルコールを 控 えるようにすべき である 筋 弛 緩 作 用 (ふらつきを 引 き 起 こす 作 用 ); 睡 眠 薬 は 筋 弛 緩 作 用 があるためふ らつきをおこす 高 齢 者 ではふらつきによる 転 倒 から 骨 折 を 引 き 起 こすことも あるため ふらつきによる 転 倒 を 予 防 するには 筋 弛 緩 作 用 の 少 ない 薬 物 を 用 い る 必 要 がある また 半 減 期 の 短 い 睡 眠 薬 は 持 ち 越 し 効 果 が 少 なく 日 中 のふら つきを 引 き 起 こしにくい ただし 夜 間 にトイレに 行 く 習 慣 のある 高 齢 者 では 半 減 期 の 短 い 睡 眠 薬 であっても 血 中 濃 度 のピーク 時 には 強 い 筋 弛 緩 作 用 のため

転 倒 の 危 険 がある これを 予 防 するには 睡 眠 薬 の 使 用 量 を 通 常 より 少 なくす る 必 要 がある