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海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 危 機 管 理 と 企 業 の 法 的 責 任 283 東 京 海 上 日 動 リスクコンサルティング( 株 ) ビジネスリスク 事 業 部 グローバルグループ グループリーダー 主 席 研 究 員 深 津 嘉 成 はじめに 新 興 国 を 中 心 に 企 業 の 海 外 進 出 が 増 加 する 中 海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 危 機 管 理 はますます 重 要 性 を 増 している 本 稿 では 海 外 赴 任 者 を 取 り 巻 くリスクの 内 健 康 管 理 危 機 管 理 に 関 するリスクを 取 り 上 げ 企 業 に 求 められる 対 応 企 業 の 法 的 責 任 について 解 説 する 1. 近 年 の 海 外 赴 任 者 動 向 (1) 増 加 する 在 留 邦 人 海 外 在 留 邦 人 ( 海 外 に 3 カ 月 以 上 滞 在 する 日 本 人 永 住 者 を 含 む)は 年 々 増 加 しており 2011 年 10 月 1 日 現 在 で 1,182 千 人 ( 対 前 年 比 +3.43%)に 達 する 国 別 で 見 ると BRICs 諸 国 の 内 中 国 (+7.14%) インド(+23.39%) ロシア(+5.58%) VISTA 諸 国 の 内 インドネシア(+6.56%) ベトナム(+9.01%) トルコ(+8.62%)が 特 に 増 加 しており 今 後 とも 経 済 成 長 が 見 込 まれる 新 興 国 諸 国 への 企 業 からの 赴 任 が 増 加 している ことがうかがえる 表 国 地 域 別 海 外 在 留 邦 人 数 順 位 国 地 域 名 邦 人 数 前 年 比 1 アメリカ 397,937 +2.44% 2 中 国 140,931 +7.14% 3 オーストラリア 74,679 +5.40% 4 英 国 63,011 +1.42% 5 カナダ 56,891 +4.51% 6 ブラジル 56,767-2.75% 7 タイ 49,983 +5.78% 8 ドイツ 36,669 +2.64% 9 韓 国 30,382 +4.53% 10 フランス 29,124 +7.79% 16 インドネシア 12,469 +6.56% 17 アルゼンチン 11,657-1.14% 18 マレーシア 10401 +7.17% 19 ベトナム 9,313 +9.01% 24 インド 5,554 +23.39% 33 ロシア 2,326 +5.58% 34 アイルランド 1,628 +1.18% 1

順 位 国 地 域 名 邦 人 数 前 年 比 35 トルコ 1,613 +8.62% 36 チェコ 1,523 +1.47% 37 南 アフリカ 1,446 +4.40% 出 典 : 外 務 省 海 外 在 留 邦 人 数 統 計 ( 平 成 24 年 速 報 版 ) : BRICs 諸 国 ( 中 国 ブラジル インド ロシア) : VISTA 諸 国 (ベトナム インドネシア 南 アフリカ トルコ アルゼンチン) : 前 年 比 +5.00% 以 上 海 外 での 生 活 は 気 候 文 化 言 語 の 違 いによる 不 自 由 さに 加 え 日 本 とは 異 なるさまざまな リスクが 存 在 することもあり 赴 任 者 としても 企 業 としても 注 意 が 必 要 である さらに 赴 任 者 が 増 加 傾 向 にある 中 では さまざまなリスクが 顕 在 化 する 可 能 性 も 高 まっている (2) 海 外 邦 人 でよく 見 られる 死 因 外 務 省 海 外 邦 人 援 護 統 計 ( 大 使 館 等 在 外 公 館 で 把 握 している 邦 人 援 護 事 案 統 計 赴 任 者 の 他 旅 行 者 等 を 含 む)によると 1 年 間 に 海 外 で 死 亡 する 邦 人 は ここ 数 年 500~600 人 前 後 で 推 移 しており 2010 年 は 549 人 ( 前 年 比 +7.02%)だった 死 因 の 第 1 位 は 疾 病 であり 318 名 ( 全 体 の 57.9%)が 持 病 等 を 含 む 疾 病 により 死 亡 した 第 2 位 は 自 殺 (53 名 ( 同 9.65%))であり 疾 病 と 自 殺 で 死 亡 者 全 体 の 67.6%を 占 めている 3 位 は 交 通 事 故 (35 名 ( 同 6.38%)) 4 位 は 水 難 事 故 殺 人 ( 被 害 ) (とも に 17 名 (3.10%))である(いずれも 2010 年 の 統 計 ) 図 海 外 邦 人 の 主 な 死 因 その 他 18% 登 山 事 故 2% 殺 人 ( 被 害 ) 3% 水 難 事 故 3% 交 通 事 故 6% 自 殺 10% 疾 病 58% 出 典 : 外 務 省 2010 年 ( 平 成 22 年 ) 海 外 邦 人 援 護 統 計 意 外 にもテロ 等 により 邦 人 が 死 亡 した 事 例 数 は 非 常 に 少 なく 発 生 可 能 性 に 着 目 すれば 危 機 管 理 もさることながら むしろ メンタルヘルス 対 策 を 含 む 健 康 管 理 の 重 要 性 がより 高 いこと がうかがえる 以 下 海 外 赴 任 者 の 健 康 安 全 を 取 り 巻 く 主 なリスクと 企 業 として 求 められる 対 応 について 概 観 したい 2. 健 康 管 理 面 でのリスクと 求 められる 対 応 (1) 主 な 感 染 症 2

中 国 東 南 アジアの 新 興 国 アフリカ 等 において 特 に 注 意 すべきリスクは さまざまな 感 染 症 である これらの 国 で 注 意 すべき 主 な 感 染 症 としては 以 下 が 挙 げられる - ウイルス 性 肝 炎 (A 型 B 型 C 型 等 ) ウイルス 性 肝 炎 は 日 本 にも 存 在 するが 中 国 東 南 アジアでは より 多 くの 感 染 例 が 見 ら れ 中 国 では 10 人 に 1 人 はウイルスキャリアとされる - 狂 犬 病 狂 犬 病 は 日 本 ではほとんど 感 染 例 が 見 られないが 中 国 東 南 アジアで 多 数 見 られる 感 染 症 である 犬 等 の 哺 乳 類 が 媒 介 し 感 染 発 症 すると 死 亡 率 は 100%とされる 危 険 な 病 気 である - デング 熱 蚊 が 媒 介 する 感 染 症 のひとつであり 極 力 蚊 に 刺 されないようにする 他 有 効 な 予 防 法 が ないとされる - HIV 感 染 エイズ 性 交 渉 輸 血 等 により 感 染 する 新 興 国 ではエイズに 対 する 啓 発 や 検 査 が 依 然 としてほと んど 行 われていない 地 域 が 見 られ 検 査 を 受 診 せず 感 染 を 自 覚 しない 例 が 多 数 あるとされ る (2) メンタルヘルス 前 述 のとおり 海 外 での 邦 人 自 殺 例 が 多 数 発 生 しており 海 外 赴 任 者 のメンタルヘルス 対 策 が 重 要 性 を 増 している 本 社 からの 期 待 とプレッシャー 現 地 での 習 慣 文 化 の 違 いによるストレ ス 周 囲 に 相 談 できる 相 手 が 少 ない 環 境 等 から 精 神 的 に 疲 弊 する 海 外 赴 任 者 も 少 なくない (3) 医 療 機 関 の 選 定 と 受 診 万 一 の 病 気 ケガの 際 の 医 療 処 置 が 安 全 に 受 けられるかどうかは 非 常 に 重 要 な 問 題 である 国 地 域 によっては 赴 任 者 帯 同 家 族 の 語 学 力 の 問 題 や 医 師 看 護 師 の 技 術 水 準 の 問 題 等 により 大 都 市 の 外 国 人 向 け 大 手 病 院 等 でも 誤 診 事 例 が 散 見 される 手 術 を 要 するような 病 気 ケガ 等 では 必 ずセカンドオピニオンを 取 るようにする 他 可 能 な 場 合 は 日 本 シンガポー ル 欧 州 等 より 信 頼 性 の 高 い 国 へ 行 き 受 診 治 療 を 受 けることも 求 められる (4) 海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 と 企 業 の 法 的 責 任 - 健 康 管 理 に 関 する 日 本 の 法 律 海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 については 派 遣 元 企 業 に 安 全 配 慮 義 務 があり 派 遣 元 企 業 が 責 任 を 持 って 体 制 を 整 備 し 実 践 すべきである 海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 に 関 する 日 本 の 法 律 としては 6 カ 月 以 上 の 海 外 派 遣 前 後 の 健 康 診 断 実 施 を 定 めた 労 働 安 全 衛 生 規 則 ( 第 四 十 五 条 の 二 ) 等 が 挙 げられる これら 法 規 は 企 業 としての 必 要 最 低 限 の 対 応 を 定 めたものであり 実 際 には 各 企 業 が 産 業 保 健 スタッ フと 検 討 を 重 ね より 適 切 な 健 康 管 理 体 制 を 構 築 することが 求 められている - 労 災 保 険 制 度 上 の 取 り 扱 い 海 外 での 疾 病 や 自 殺 事 故 を 想 定 すると 労 働 者 災 害 補 償 保 険 法 ( 労 災 保 険 法 )による 労 災 保 険 認 定 が 問 題 になり 事 例 によっては 安 全 配 慮 義 務 違 反 が 問 われる 例 もある な お 海 外 派 遣 者 は 原 則 として 労 災 保 険 が 適 用 されないが 海 外 派 遣 者 特 別 加 入 制 度 が あり これに 加 入 することで 適 用 が 受 けられる 適 用 においては 業 務 起 因 性 が 問 題 となる が 海 外 赴 任 先 での 過 労 自 殺 や 反 政 府 ゲリラによる 射 殺 事 件 が 特 別 加 入 制 度 の 対 象 と して 労 災 認 定 された 事 例 もある (5) 企 業 に 求 められる 対 応 - 赴 任 前 の 準 備 企 業 としては 海 外 赴 任 者 の 選 定 において 心 身 ともに 健 康 であり 海 外 生 活 によるスト レスに 対 して 十 分 な 耐 性 を 有 するかどうかを 見 極 めることが 重 要 である 法 律 が 求 める 渡 航 前 健 康 診 断 の 実 施 等 に 加 え 赴 任 先 の 環 境 や 留 意 すべき 感 染 症 等 の 情 報 をあらかじめ 適 切 に 収 集 し 医 師 に 相 談 の 上 必 要 な 予 防 接 種 を 赴 任 前 までに 全 て 済 ませ 3

ておくよう 指 示 すること 等 が 望 まれる - 赴 任 期 間 中 企 業 として 定 期 健 診 実 施 等 の 健 康 管 理 を 実 践 することが 不 可 欠 だが 基 本 的 には 赴 任 者 自 身 による 健 康 維 持 と 自 衛 策 の 実 践 を 促 すことが 重 要 である また メンタル 面 についても 赴 任 者 が 複 数 いる 拠 点 では 管 理 者 をはじめ 赴 任 者 同 士 でお 互 いの 状 況 を 注 意 し 赴 任 者 が 単 独 で 勤 務 する 拠 点 では 付 近 の 管 理 者 や 本 社 人 事 部 門 が 定 期 的 に 面 談 を 行 うこと 等 が 求 められる - 医 療 アシスタンスサービスの 活 用 万 一 赴 任 者 または 帯 同 家 族 で 急 病 やケガが 発 生 した 際 に 赴 任 者 または 帯 同 家 族 が 言 語 の 問 題 で 単 独 で 現 地 医 療 機 関 を 選 定 し 受 診 することが 困 難 であれば 医 療 アシスタンスサ ービスを 活 用 することが 有 効 である あらかじめ 契 約 を 締 結 することで 24 時 間 365 日 日 本 語 でのコールセンター 受 付 や 医 療 機 関 の 選 定 同 行 医 師 看 護 師 との 通 訳 サービス 提 携 病 院 でのキャッシュレスサービス 等 を 提 供 する 例 が 一 般 的 である 3. 健 康 管 理 に 関 連 する 現 地 法 令 と 企 業 の 責 任 (1) 現 地 法 令 と 企 業 の 法 的 責 任 前 述 のとおり 海 外 赴 任 者 の 健 康 管 理 は 派 遣 元 企 業 の 安 全 配 慮 義 務 の 一 環 として 位 置 づけら れる 一 方 赴 任 先 の 国 地 域 にも 企 業 従 業 員 の 健 康 管 理 に 関 するさまざまな 法 令 があり 多 くの 現 地 従 業 員 を 雇 用 する 現 地 法 人 等 では 現 地 法 令 への 対 応 も 非 常 に 重 要 である 企 業 としては 現 地 法 人 の 経 営 管 理 に 従 事 する 赴 任 者 等 に 対 して 現 地 法 令 と 企 業 に 求 めら れる 責 任 を 十 分 理 解 し 経 営 管 理 に 当 たるよう 指 導 支 援 することが 求 められる ここで は 中 国 タイにおける 従 業 員 の 健 康 管 理 に 関 連 する 法 令 を 紹 介 する (2) 中 国 における 関 連 法 令 中 国 においては 企 業 従 業 員 の 労 働 安 全 衛 生 を 監 督 する 中 央 政 府 機 関 として 国 家 安 全 生 産 監 督 管 理 総 局 (State Administration of Work Safety)が 置 かれ 安 全 生 産 法 (2002 年 施 行 ) 等 の 関 連 法 令 が 整 備 されているが 安 全 生 産 法 は 事 業 拠 点 における 安 全 管 理 重 大 事 故 防 止 に 重 点 が 置 かれている 健 康 管 理 に 関 連 する 法 令 としては 職 業 病 の 増 加 を 背 景 として 職 業 病 防 止 法 が 2002 年 に 施 行 されている 同 法 及 び 関 連 法 令 においては 職 業 病 予 防 に 関 する 労 働 者 企 業 及 び 監 督 当 局 の 責 任 義 務 が 規 定 されている 同 法 が 規 定 する 企 業 の 主 な 義 務 ( 一 部 )は 以 下 のとおりである - 労 働 者 のために 国 の 労 働 衛 生 標 準 と 衛 生 要 求 に 合 致 した 作 業 環 境 を 作 り 出 し また 労 働 者 が 労 働 衛 生 上 の 保 護 を 受 けられるよう 保 障 する 措 置 を 講 じなければならない - 職 業 病 の 予 防 及 び 治 療 のための 整 った 責 任 体 制 を 確 立 し 職 業 病 予 防 及 び 治 療 のための 管 理 を 強 化 し 職 業 病 の 予 防 及 び 治 療 の 水 準 を 高 め 使 用 者 が 発 生 させた 職 業 病 の 危 害 に 責 任 を 持 たなければならない - 法 により 労 働 災 害 の 社 会 保 険 に 加 入 しなければならない ( 以 上 4~6 条 ) - 職 業 病 の 予 防 及 び 治 療 を 管 理 するために 下 記 の 措 置 を 講 じなければならない (19 条 ) (1) 労 働 衛 生 を 管 理 するための 組 織 を 設 置 又 は 指 定 し 専 従 又 は 兼 任 の 労 働 衛 生 専 門 員 を 置 き その 事 業 所 の 職 業 病 の 予 防 及 び 治 療 に 責 任 を 持 たせる (2) 職 業 病 の 予 防 及 び 治 療 を 実 施 するための 計 画 を 策 定 する (3) 労 働 衛 生 の 管 理 制 度 と 運 用 規 程 を 策 定 整 備 する (4) 労 働 衛 生 の 個 人 記 録 と 労 働 者 の 健 康 保 護 管 理 記 録 を 策 定 整 備 する (3) タイにおける 関 連 法 令 タイにおいては 労 働 者 保 護 法 (2008 年 )の 中 で 規 定 されていた 労 働 安 全 に 関 する 規 定 を より 詳 細 に 規 定 するものとして 2011 年 1 月 労 働 安 全 衛 生 環 境 法 が 公 布 された 同 法 で は 使 用 者 の 安 全 配 慮 義 務 を 規 定 し( 第 6 条 ) 併 せて 危 険 の 周 知 ( 第 15 条 ) 安 全 管 理 者 の 任 命 ( 第 16 条 ) 労 働 者 に 影 響 のある 労 働 環 境 の 調 査 ( 第 36 条 ) 等 を 使 用 者 の 義 務 として 規 定 している 4

タイでは 2011 年 10 月 以 降 大 規 模 な 洪 水 により バンコク 首 都 府 北 部 からアユタヤ 県 に 掛 け ての 地 域 で 多 くの 日 系 企 業 拠 点 が 長 期 間 の 浸 水 被 害 に 見 舞 われた 最 長 2 カ 月 近 くに 及 んだ 浸 水 により 拠 点 の 建 物 設 備 等 は 汚 染 され 洪 水 により 運 ばれる 汚 物 菌 ウイルスによるさ まざまな 感 染 症 のまん 延 が 懸 念 された 企 業 としては 災 害 による 過 酷 な 環 境 下 での 復 旧 作 業 を 余 儀 なくされ 日 本 人 赴 任 者 に 限 らず 現 地 従 業 員 の 労 働 安 全 衛 生 についても 上 記 法 令 を 十 分 理 解 した 対 応 が 重 要 な 課 題 となった 4. 危 機 管 理 面 でのリスクと 求 められる 対 応 (1) 邦 人 の 犯 罪 被 害 事 例 海 外 で 邦 人 がさまざまな 犯 罪 被 害 を 受 ける 例 が 見 られる 件 数 としては 多 くないが 邦 人 が 被 害 者 となる 殺 人 事 件 も 複 数 発 生 しており 十 分 注 意 が 必 要 である (2) バンコク 暴 動 (2010 年 ) 海 外 では 政 変 や 暴 動 等 に 赴 任 者 が 巻 き 込 まれるリスクにも 留 意 が 必 要 である 2010 年 に 発 生 したタイ 暴 動 では 親 タクシン 元 首 相 派 の 反 独 裁 民 主 主 義 同 盟 (UDD)による 抗 議 活 動 が 大 規 模 デモに 発 展 し ついには 死 者 が 出 るまでの 混 乱 に 陥 った( 死 者 87 人 負 傷 者 1,400 人 以 上 ) バンコク 首 都 府 内 のビジネス 街 が 占 拠 の 対 象 になり 首 都 府 内 に 事 務 所 を 持 つ 日 系 企 業 では 業 務 に 多 大 な 影 響 が 生 じた 当 局 の 報 道 管 制 により 現 地 に 入 る 情 報 が 少 なく 現 地 対 応 が 遅 れた 例 以 前 からのデモに 慣 れた 在 留 邦 人 が 事 態 を 楽 観 視 しすぎ 予 想 外 の 影 響 を 被 った 事 例 等 が 見 ら れた (3) スマトラ 沖 地 震 (2004 年 ) また 大 規 模 自 然 災 害 に 突 然 見 舞 われるリスクも 念 頭 に 置 く 必 要 がある 2004 年 12 月 26 日 に 発 生 したインドネシア スマトラ 島 沖 地 震 (マグニチュード 9.1)では 津 波 による 被 害 等 で 最 終 的 に 23 万 人 以 上 が 死 亡 行 方 不 明 となった 多 くの 在 留 邦 人 が 現 地 で 被 災 し また 年 末 休 暇 の 時 期 だったため プライベートで 渡 航 し 被 災 した 周 辺 国 の 駐 在 員 帯 同 家 族 等 も 見 られた 日 系 企 業 においては 自 社 及 びグループ 会 社 の 社 員 家 族 の 安 否 を 確 認 するのに 多 大 な 時 間 を 要 し 本 人 が 出 社 するまで 安 否 が 不 明 だった 事 例 もあった (4) 海 外 赴 任 者 の 危 機 管 理 と 企 業 の 法 的 責 任 企 業 としては テロが 頻 発 している 等 危 険 性 が 高 いとされる 国 地 域 に 派 遣 する 場 合 には 実 態 に 応 じてガードマンや 安 全 装 置 の 付 いた 自 動 車 住 宅 の 提 供 等 が 安 全 配 慮 義 務 として 求 められる 勤 務 の 実 態 や 現 地 のリスク 環 境 を 適 切 に 把 握 し 必 要 な 安 全 対 策 を 実 施 することが 非 常 に 重 要 である (5) 企 業 に 求 められる 対 応 - 海 外 での 安 全 対 策 海 外 での 安 全 対 策 の 基 本 は 自 分 の 身 は 自 分 で 守 る である また 海 外 安 全 における 三 大 原 則 目 立 たない 行 動 を 予 知 されない 注 意 を 怠 らない も 重 要 である これらの 点 をまずは 赴 任 者 及 び 帯 同 家 族 各 人 に 周 知 徹 底 することが 重 要 である - 緊 急 事 態 における 迅 速 かつ 適 切 な 状 況 判 断 一 般 的 に 海 外 においては 現 地 在 住 者 がより 現 地 の 正 確 な 情 報 把 握 ができるとされるが 例 外 として 政 変 暴 動 等 急 激 に 社 会 状 況 が 変 化 する 状 況 では 現 地 赴 任 者 が 過 度 に 状 況 を 楽 観 視 し 判 断 を 誤 る 例 が 見 られる 前 述 のバンコク 暴 動 の 他 湾 岸 戦 争 (1991 年 ) インドネシア 暴 動 (1998 年 )でも 同 様 に 日 系 企 業 の 対 応 が 後 手 に 回 った 例 が 見 られる 状 況 の 見 極 めが 非 常 に 困 難 な 例 も 多 いが 現 地 での 判 断 に 過 度 に 依 存 するのではなく 本 社 側 としても 多 方 面 からの 情 報 を 集 め 状 況 を 見 極 めることが 求 められる 5

- 平 常 時 の 準 備 万 一 政 情 不 安 等 により 国 外 への 緊 急 避 難 が 求 められる 状 況 を 想 定 し 各 海 外 赴 任 者 帯 同 家 族 用 に 航 空 会 社 のオープンチケットを 用 意 している 例 も 多 い また 前 述 の 医 療 アシス タンスサービスにおいて 危 機 発 生 時 の 緊 急 避 難 支 援 をサービス 項 目 に 含 めている 例 もあ る さらに スマトラ 沖 地 震 のような 大 規 模 自 然 災 害 を 想 定 し 緊 急 時 の 連 絡 手 段 連 絡 先 を 複 数 用 意 し 各 赴 任 者 及 び 日 本 本 社 側 で 共 有 周 知 しておくこと 等 が 求 められる - 危 機 対 応 マニュアル 整 備 教 育 訓 練 の 重 要 性 危 機 管 理 の 観 点 から 発 生 確 率 は 低 いが 経 営 に 対 する 影 響 が 深 刻 な 事 態 を 想 定 し そ のような 状 況 下 でも 混 乱 を 最 小 限 にし できる 限 り 迅 速 な 初 動 対 応 を 行 う 対 応 体 制 を 整 備 することが 求 められる 対 応 手 順 をマニュアル 等 の 文 書 として 整 備 し 関 係 者 の 理 解 を 深 めるための 教 育 訓 練 を 計 画 的 に 実 施 することが 重 要 である 5. 危 機 管 理 に 関 連 する 現 地 法 令 と 企 業 の 責 任 (1) 危 機 管 理 に 関 する 企 業 の 法 的 責 任 前 項 危 機 管 理 面 でのリスク では 犯 罪 テロ 暴 動 自 然 災 害 等 のリスクについて 触 れた 赴 任 先 の 国 地 域 でも これらのリスクへの 企 業 の 対 応 を 求 める 法 令 が 制 定 されている 例 があ り 企 業 としてもこれらの 現 地 法 令 への 十 分 な 理 解 対 応 が 求 められる ここでは 中 国 ブラ ジル アラブ 首 長 国 連 邦 における 従 業 員 の 危 機 管 理 に 関 連 する 法 令 を 紹 介 する (2) 中 国 における 関 連 法 令 中 国 において 上 記 のような 緊 急 事 態 を 想 定 した 主 な 法 令 としては 2007 年 に 施 行 された 突 発 事 件 対 応 法 が 挙 げられる 2007 年 8 月 30 日 同 法 は 全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 議 で 採 択 され 同 年 11 月 1 日 から 施 行 された 2003 年 の SARS( 重 症 急 性 呼 吸 器 症 候 群 ) 感 染 拡 大 発 生 直 後 から 同 様 の 緊 急 事 態 による 社 会 混 乱 を 未 然 に 防 止 する 目 的 で 立 法 手 続 きが 始 められた 同 法 が 示 す 突 発 事 件 とは 突 然 に 発 生 し 社 会 に 厳 重 なる 危 害 を 引 き 起 こすまたは 引 き 起 こす 危 険 があり 応 急 措 置 を 取 らざるをえない 自 然 災 害 事 故 による 災 害 感 染 症 のまん 延 等 の 衛 生 事 件 及 び 社 会 安 全 事 件 である また 大 規 模 な 炭 鉱 事 故 や 建 築 物 倒 壊 事 故 等 も 全 て 同 法 の 対 象 と 解 釈 されて いる 企 業 ( 及 び 個 人 )においては 例 えば 下 記 のような 行 為 があった 場 合 に 業 務 停 止 命 令 許 可 証 の 取 り 消 し 20 万 元 以 下 の 罰 金 等 の 処 罰 が 規 定 されている - 法 令 に 基 づく 突 発 事 件 の 予 防 措 置 を 取 らず 被 害 を 拡 大 させる - 発 生 した 突 発 事 件 を 隠 蔽 し 被 害 を 拡 大 させる - 適 切 な 緊 急 対 応 設 備 の 整 備 メンテナンス 点 検 を 怠 り 突 発 事 件 を 発 生 させる または 被 害 を 拡 大 させる - 突 発 事 件 発 生 後 速 やかに 緊 急 救 援 業 務 を 組 織 的 に 実 施 せず 深 刻 な 結 果 を 招 く( 以 上 第 64 条 ) - 法 の 規 定 に 反 して 突 発 事 件 の 拡 大 波 及 や 緊 急 対 応 に 関 する 虚 偽 の 情 報 を 伝 播 させる( 第 65 条 ) 特 に 中 国 では SARS 感 染 拡 大 (2003 年 )の 他 四 川 大 地 震 (2008 年 ) 新 型 インフルエン ザ 感 染 拡 大 (2009 年 ) 等 重 大 な 事 件 のたびに 携 帯 電 話 インターネット 等 を 通 じてさま ざまな 風 評 が 流 れ 社 会 に 混 乱 をもたらした 事 例 が 見 られるため 虚 偽 の 情 報 の 伝 播 に 厳 しい 罰 則 が 明 記 されている 点 が 特 徴 的 と 言 える (3) ブラジルにおける 関 連 法 令 ブラジルにおいて 企 業 の 危 機 管 理 や 緊 急 事 態 対 応 を 規 定 する 法 令 として 明 確 なものはない が 例 えば 基 本 労 働 法 (CLT, Consolidacao das Leis do Trabalho)の 労 働 安 全 衛 生 に 関 す る 条 項 ( 第 162~164 166 条 )で 規 定 される 企 業 の 従 業 員 に 対 する 安 全 配 慮 義 務 が 上 記 に 6

類 するものとして 挙 げられる ブラジルでは 所 得 格 差 による 貧 困 や 麻 薬 等 を 原 因 として 強 盗 殺 人 等 の 凶 悪 犯 罪 が 多 発 し ている 世 界 的 に 見 ても 犯 罪 発 生 率 は 非 常 に 高 く 邦 人 の 凶 悪 犯 罪 被 害 も 多 発 している 企 業 としては 犯 罪 多 発 地 域 があることを 十 分 認 識 し 海 外 赴 任 者 及 び 現 地 従 業 員 の 安 全 確 保 の ため 十 分 な 対 策 を 実 施 することが 求 められる (4) アラブ 首 長 国 連 邦 における 関 連 法 令 アラブ 首 長 国 連 邦 (UAE)においても 同 様 に 連 邦 法 第 12 号 ( 労 働 法 ) において 労 働 安 全 衛 生 の 観 点 から 企 業 の 安 全 配 慮 義 務 が 規 定 されている 全 ての 雇 用 者 は 労 働 者 に 勤 務 中 の 傷 害 疾 病 また 職 場 での 機 器 の 使 用 による 火 災 等 の 危 険 が 及 ばないように 安 全 管 理 上 適 切 な 措 置 を 施 さなければならない 雇 用 者 は 労 働 社 会 省 の 指 示 その 他 すべての 安 全 対 策 を 行 わなければならない すべての 労 働 者 は 安 全 のために 支 給 される 保 護 帽 保 護 服 を 着 用 し 雇 用 者 の 安 全 対 策 の 指 示 を 順 守 し 安 全 対 策 指 示 が 実 行 さ れるのを 妨 げてはならない ( 第 91 条 ) これらの 法 令 に 基 づき 企 業 としては 緊 急 事 態 に 陥 るリスクを 予 測 し 相 応 な 安 全 対 策 ( 防 止 策 と 発 生 時 の 被 害 抑 止 策 )を 実 施 する 必 要 がある 以 上 本 稿 は 安 全 と 健 康 2012 年 9 月 号 に 掲 載 されたものを 中 央 労 働 災 害 防 止 協 会 の 許 可 を 得 て 一 部 加 筆 して 転 載 していま す ( 第 283 号 2012 年 10 月 3 日 発 行 ) 7