第 45 回 中 部 地 区 英 語 教 育 学 会 和 歌 山 大 会 (2015) 髙 木 亜 希 子 ( 青 山 学 院 大 学 ) 酒 井 英 樹 ( 信 州 大 学 ) 加 藤 由 美 子 (ベネッセ 教 育 総 合 研 究 所 ) 福 本 優 美 子 (ベネッセ 教 育 総 合 研 究 所 )
調 査 の 背 景 英 語 教 師 の 資 質 や 成 長 について 英 語 教 師 の 資 質 や 成 長 のありかたについて 理 論 をまと めたもの( 英 語 科 教 育 法 のテキスト)や 調 査 研 究 (e.g. JACET 教 育 問 題 研 究 会 2005)は 複 数 ある 問 題 の 所 在 1. 教 師 の 資 質 や 成 長 について 具 体 的 に 特 性 やエピソー ドがイメージできる 質 的 調 査 はあまり 行 われていない 2. 実 際 に 英 語 で 授 業 ができる 中 高 英 語 教 師 は 何 を 大 切 とし どのような 学 びを 行 ってきているのかについての 研 究 はほとんどない
調 査 の 背 景 ベネッセにおける 調 査 第 1 回 中 学 校 英 語 に 関 する 基 本 調 査 ( 教 員 調 査 生 徒 調 査 (2009) 量 的 英 語 科 教 員 が 抱 えている 課 題 例 : 指 導 方 法 コミュニケーション 能 力 と 他 技 能 との 関 連 時 間 がほし い 自 分 自 身 のスキル 意 欲 関 心 を 持 たせたい 中 高 生 の 英 語 学 習 に 関 する 聞 き 取 り 調 査 (2013) 質 的 中 高 生 の 英 語 学 習 に 関 する 実 態 調 査 (2014) 量 的 教 員 聞 き 取 り 調 査 (2014) 質 的
調 査 の 概 要 研 究 課 題 英 語 で 授 業 ができる 中 高 英 語 教 員 が 英 語 教 師 として 大 切 にしていることは 何 か < 具 体 的 には> 1 指 導 で 大 切 にしていること 教 育 観 生 徒 に 身 につけさ せたい 力 は 何 か 2 現 在 までの 学 びや 経 験 ( 英 語 学 習 経 験 大 学 での 学 び 現 職 での 学 び 等 )がどのように1に 寄 与 しているか 指 導 力 向 上 のヒントを 探 る
調 査 の 概 要 < 実 施 時 期 > < 実 施 方 法 > < 分 析 方 法 > 2014 年 10 月 11 月 1 人 約 60 分 インタビュアー1 名 +サブ1 名 半 構 造 化 インタビュー TAE (Thinking at the Edge) 中 高 英 語 教 育 研 究 会 根 岸 雅 史 ( 東 京 外 国 語 大 学 ) 酒 井 英 樹 ( 信 州 大 学 ) 髙 木 亜 希 子 ( 青 山 学 院 大 学 ) 工 藤 洋 路 ( 玉 川 大 学 ) 重 松 靖 ( 国 分 寺 市 立 第 二 中 学 校 ) 加 藤 由 美 子 (ベネッセ 教 育 総 合 研 究 所 ) 福 本 優 美 子 (ベネッセ 教 育 総 合 研 究 所 )
調 査 の 概 要 主 な 質 問 項 目 指 導 に 関 すること 指 導 で 大 切 にしていること( 理 由 いつから きっかけ 等 ) 子 どもに 身 につけさせたい 力 印 象 に 残 っているエピソード 英 語 の 先 生 になったきっかけ 大 学 での 学 び( 英 語 関 連 その 他 ) これまでの 英 語 学 習 経 験 自 己 研 鑽 これまでの 英 語 使 用 経 験 これまでの 勤 務 校
調 査 の 概 要 対 象 者 文 部 科 学 省 新 学 習 指 導 要 領 に 対 応 した 授 業 実 践 事 例 映 像 資 料 で 授 業 実 践 をされている 先 生 中 学 土 屋 裕 子 先 生 ( 静 岡 県 浜 松 市 立 江 南 中 学 校 DVD 出 演 時 : 静 岡 県 浜 松 市 立 南 部 中 学 校 ) 杉 光 いづみ 先 生 ( 佐 賀 県 嬉 野 市 立 塩 田 中 学 校 DVD 出 演 時 : 佐 賀 県 鹿 島 市 立 東 部 中 学 校 ) 川 崎 恵 美 子 先 生 ( 青 森 県 むつ 市 立 田 名 部 中 学 校 ) 高 校 植 木 明 美 先 生 ( 茨 城 県 立 竹 園 高 等 学 校 ) 津 久 井 貴 之 先 生 (お 茶 の 水 女 子 大 学 付 属 高 等 学 校 DVD 出 演 時 : 群 馬 県 立 中 央 中 等 教 育 学 校 ) 亀 谷 みゆき 先 生 ( 岐 阜 県 立 関 高 等 学 校 DVD 出 演 時 : 岐 阜 県 立 東 濃 業 高 等 学 校 )
分 析 方 法 :TAE TAEとは Thinking at the Edge(TAE):Gendlinら(Gendlin &Hendricks, 2004)が 開 発 した 理 論 構 築 法 うまく 言 葉 にできてないけれども 重 要 だと 感 じられる 身 体 感 覚 を 言 語 シンボルと 相 互 作 用 させながら 精 緻 化 し 新 しい 意 味 と 言 語 表 現 を 生 み 出 していく 系 統 だった 方 法 ( 得 丸 2010, p.5) 得 丸 (2010)が 質 的 研 究 法 として 応 用 分 析 過 程 Part 1(ステップ1~5) フェルトセンスから 語 る Part 2(ステップ6~9) 実 例 からパターンを 引 き 出 す Part 3(ステップ10~12) 理 論 を 構 築 する 5つのターム
分 析 結 果 :5つのターム 子 どもに 寄 り 添 う 子 どもの 学 習 状 況 発 達 や 興 味 関 心 に 寄 り 添 うのは 大 前 提 にある 加 えて 学 校 と 日 々の 生 活 の 両 方 の 中 で 起 こる 中 高 生 の 思 春 期 独 特 の 繊 細 な 感 情 いらだち 不 器 用 さ そういうものにも 深 い 愛 情 を 持 って 寄 り 添 っている 自 らの 成 長 先 生 方 は まず 自 らの 英 語 力 を 伸 ばすために 自 己 研 鑽 している また 指 導 授 業 運 営 の 研 究 実 践 振 り 返 りを 行 い 次 の 新 しいチャレンジをして いる この 繰 り 返 しの 中 で 自 らの 教 育 観 や 指 導 観 もどんどん 発 展 進 化 させてい る 最 善 を 求 め 続 ける 子 どもに 寄 り 添 う こと 自 らの 成 長 の 両 方 に 常 に 最 善 を 尽 くし それを 続 けて いる 1 つの 発 言 1つの 活 動 1つの 授 業 に 最 善 を 尽 くすということと 共 に 10 年 後 15 年 後 の 先 を 見 越 して 何 をすべきかということも 考 えている
分 析 結 果 :5つのターム 英 語 を 使 う 経 験 単 に 留 学 をしたり 海 外 で 生 活 をしたことがあるいうことではない 完 全 ではなくても 伝 えたいことをきちっと 伝 えようとする 経 験 をしたことがある 英 語 を 使 って 人 とつながるということのすばらしさとか 喜 びを 先 生 自 身 が 体 験 さ れたことがある そして それを 子 どもたちに 何 とか 伝 えたい 経 験 してもらいた いと 思 っている 変 化 子 どもの 日 々の 小 さな 変 化 ( 元 気 がある ないなど)に 心 を 配 るとともに 日 本 や 海 外 で 起 こっていること 教 育 行 政 の 新 しい 動 きなどにも 敏 感 である また 自 ら が 多 様 な 学 校 で 新 しいことを 経 験 したり 学 びを 求 めて 新 しいことに 挑 戦 すること で 新 しい 価 値 観 に 触 れながら それを 寛 容 に 受 け 入 れ 自 らも 変 化 しながら 次 のステップに 進 んでいる
事 例 紹 介 ( 抜 粋 ) 子 どもに 寄 り 添 う 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 変 化 子 どもに 寄 り 添 う 事 例 1 中 学 B 先 生 荒 れる 生 徒 と 向 き 合 う 荒 れる 理 由 がわかる: 勉 強 がわからなくなったから 学 校 が 居 場 所 ではない 生 徒 のつらさを 思 う だから 勉 強 できるようにしてあげたいと 思 ったんです 事 例 2 中 学 C 先 生 英 語 が 苦 手 で 態 度 悪 く 反 抗 的 な 中 学 2 年 生 の 男 子 生 徒 向 き 合 うことで 生 徒 が 書 いた 僕 の 夢 I want to be a farmer. I want to be like my father. I respect him. まだ 簡 単 な 英 語 では 色 々な 言 葉 で 飾 ることができずにストレート に 言 わなくちゃいけない だから 日 本 語 では 書 けないようなことも 書 いてしまう 素 直 に 言 葉 に 出 してしまう (このようなストレート の 気 持 ちに 触 れることができる) 英 語 はラッキー
事 例 紹 介 子 どもに 寄 り 添 う 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 変 化 自 らの 成 長 事 例 3 中 学 B 先 生 テストは 子 どもへのテストではなく 自 らの 指 導 へのテスト 事 例 4 高 校 E 先 生 生 徒 に 学 び 続 けることを 伝 えたいと 思 った 時 には その 教 員 そのものも 学 び 続 けていないと できない
事 例 紹 介 子 どもに 寄 り 添 う 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 変 化 最 善 を 求 め 続 ける 事 例 5 高 校 E 先 生 常 に 一 時 間 一 時 間 の 授 業 に 勝 負 を 賭 けている 生 徒 の 一 発 言 も 聞 き 逃 さないように 聞 き 逃 したらrecastもscaffoldingもできない そこからの 学 び 合 い も 出 てこない
事 例 紹 介 子 どもに 寄 り 添 う 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 変 化 英 語 を 使 う 経 験 事 例 6 中 学 A 先 生 中 学 2 年 の 春 休 みに ロサンゼルスへ(21 日 間 位 ) あのときはすごく 度 胸 が 座 って 話 せたような 気 がする あのころは 間 違 えを 恐 れるなんてことはかけらもなかった 事 例 7 中 学 C 先 生 母 国 (アイルランド)で 教 員 になった 元 ALT その 生 徒 たちと 自 分 の 生 徒 たちとをつなげた 人 がつながるということを 強 く 意 識 自 分 自 身 もその 元 ALTと 親 友 に 生 徒 にも 人 とつながってほしいという 気 持 ちを 持 つようになった
事 例 紹 介 子 どもに 寄 り 添 う 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 変 化 変 化 事 例 8 高 校 F 先 生 教 職 課 程 では 限 られた 科 目 を 取 ればよかった 習 ったことのないことを 教 えることになってしまった 私 ぐらいの 年 代 の 英 語 の 教 員 っていうのは 大 変 な 思 いをしてい る 習 ったことのないことを 教 えることになっちゃった 事 例 9 高 校 F 先 生 ベルリンの 壁 が 崩 壊 した 時 に 衝 撃 を 受 けた あり 得 ないと 思 って いることも 起 こる これから 大 変 な 時 代 を 生 きる 子 どもたちのことを 考 える 身 体 ごと 自 分 が 対 処 しなきゃいけない 知 らない 急 なことに 思 いもよらないことに 準 備 しておかないとだめ 不 意 打 ちはくると
考 察 :5つのタームの 関 係 をイメージ 化 したもの 子 どもに 寄 り 添 う 先 生 によって それぞれのタームの 意 味 することや 重 さは 異 なる 自 らの 成 長 最 善 を 求 め 続 ける 英 語 を 使 う 経 験 子 どもに 寄 り 添 う 最 善 を 求 め 続 ける 自 らの 成 長 英 語 を 使 う 経 験 いろいろな 変 化 の 影 響 を 受 けながら 先 生 方 は 最 善 を 求 め 続 ける ということを 軸 にす えて 子 どもに 寄 り 添 い ながら 日 々の 指 導 を 行 っている そこに 英 語 を 使 う 経 験 自 ら の 成 長 のための 努 力 の 結 果 をそれぞれ 関 連 させ 全 体 で 循 環 させながら 教 師 として 成 長 (teacher development)し 続 けている
インタビューにご 協 力 いただいた 先 生 方 について 資 料 中 学 A 先 生 ( 女 性 ) 中 学 B 先 生 ( 女 性 ) 中 学 C 先 生 ( 女 性 ) 旅 行 好 き( 国 内 で 行 ってない 所 がないくらい ) 好 奇 心 旺 盛 市 で 中 心 的 な 存 在 で 研 修 等 もしている 英 語 を 聞 くことを 大 切 にしている 指 導 スタイルはどんどん 進 化 いい と 思 ったことはとりあえずやってみて 自 分 に 合 わなかったり ダメなときはすぐやめる 小 2の 時 から 英 語 の 習 いごと 高 校 生 の 時 に 自 分 の 英 語 が 外 国 人 に 通 じたことが 大 きな 喜 びに ( 田 舎 にいるけど) 世 界 に 羽 ばたける 力 をつけてもらいたい 楽 しく!わかる! 力 がつく 授 業 を 心 がけ 子 どもの 成 績 に 合 わせて 丁 寧 な 手 当 てを 愛 情 を 持 って 行 う ある 英 語 教 育 の 研 究 会 に 参 加 するため 定 例 的 に 全 国 へ 旅 する 好 奇 心 旺 盛 英 語 はそれほど 好 きではなかった 大 規 模 校 での 指 導 歴 が 長 い 1 年 間 内 地 留 学 ( 大 学 で) 交 換 制 度 で 高 校 での 指 導 経 験 も(1 年 間 ) 子 どもへの 寄 り 添 いを 大 切 にする 音 読 や 英 作 文 のテーマなど 生 徒 の 様 子 をみて 柔 軟 に 応 じる まだま だ 子 どもを 見 れていないという 反 省 も
インタビューにご 協 力 いただいた 先 生 方 について 資 料 高 校 D 先 生 ( 男 性 ) 大 学 時 代 に 留 学 (1 年 間 ) 中 学 校 中 高 一 貫 校 行 政 の 経 験 もある それまでの 環 境 からリセットし 客 観 的 になる 変 化 があった 授 業 でしかできないことを 授 業 の 中 核 に 据 える 生 徒 がいい 言 語 活 動 を 行 うことを 越 えて 主 体 的 に 学 ぶこと 仲 間 と 学 び 合 う 力 を 育 てることを 新 たな 目 標 にしている 高 校 E 先 生 大 学 のESSの 追 い 込 まれた 状 況 で 言 語 を 身 に 付 けた 経 験 を 持 つ 進 学 校 での 指 導 経 験 が 長 く そこで 実 績 を 上 げつつ 英 語 を 使 う 力 の ( 女 性 ) 育 成 も 行 う 国 の 仕 事 に 関 わることで 視 野 が 広 がる 苦 手 な 仲 間 ともきちんと 議 論 できる 人 を 育 てる 英 語 よりもホームルー ムの 授 業 の 方 が 生 徒 の 人 気 が 高 いほどである 高 校 F 先 生 ( 女 性 ) 世 の 中 の 知 識 や 世 界 情 勢 などに 敏 感 コミュニケーションにおいて 感 情 的 にならないためにも 事 実 に 基 づき 論 理 的 に 思 考 することが 必 要 と 考 える 大 学 時 代 に 留 学 (1 年 間 )し 学 習 者 に 寄 り 添 うことを 学 習 者 の 立 ち 場 か ら 知 る 子 どもの 発 達 や 興 味 に 寄 り 添 い 分 かる 喜 びを 大 切 にする