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Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) Title 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 : 大 和 ヤマト やまと Author 塚 田, 修 一 (Tsukada, Shuichi) Publisher 三 田 社 会 学 会 Jtitle 三 田 社 会 学 (Mita journal of sociology). No.18 (2013. 7),p.120-133 Abstract Genre Journal Article URL http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=aa11358103-20130706- 0120

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 大 和 ヤマト やまと The image of battleship YAMATO, from the perspective of cultural nationalism. 塚 田 修 一 1.はじめに (1) 本 稿 の 目 的 と 位 置 付 け 本 稿 の 主 目 的 は アジア 太 平 洋 戦 争 時 の 戦 艦 大 和 に 関 する 言 説 および 表 象 を 文 化 ナショ ナリズム すなわち ネーションの 文 化 的 アイデンティティが 欠 如 していたり 不 安 定 であったり 脅 威 にさらされている 時 に その 創 造 維 持 強 化 を 通 してナショナルな 共 同 体 の 再 生 を 目 指 す 活 動 ( 吉 野 1997:11)という 観 点 から 考 察 することである 周 知 のように 戦 艦 大 和 は 1945 年 に 沈 没 した 物 理 的 には 失 われた 存 在 である しかしなが ら 敗 戦 以 降 現 在 に 至 るまで 夥 しい 量 の 戦 艦 大 和 言 説 - 表 象 が 生 み 出 されている そしてその 多 くが 例 えば 日 本 人 なら 知 っておきたい 空 前 の 巨 大 戦 艦 の 誕 生 戦 い そして 最 後 (Gakken Mook 戦 艦 大 和 の 真 実 : 表 紙 )や 戦 艦 大 和 と 日 本 人 ( 永 沢 2007=2012)という 文 言 から 推 察 されるように 人 々の 日 常 的 な 意 識 の 水 準 での ナショナリズム 感 覚 と 隠 微 な 関 係 を 取 り 結 び 続 けている 本 稿 では この 大 和 の 言 説 - 表 象 を 歴 史 的 に 追 尾 することにより それらの 文 化 ナ ショナリズムとしての 作 用 機 能 の 様 相 及 びその 変 容 を 明 らかにする また 大 和 言 説 - 表 象 を 分 析 することは すなわち 戦 争 意 識 の 有 り 様 を 考 察 することでもある 本 稿 では 先 行 研 究 において 蓄 積 されてきた 戦 争 観 の 分 析 を 参 照 しつつ それらと 大 和 言 説 - 表 象 との 関 係 性 を 記 述 していく これが 本 稿 の 第 二 の 目 的 である さて 本 稿 はまず 戦 後 日 本 のナショナリズムの 歴 史 社 会 学 的 研 究 として 位 置 づけることが 出 来 る 戦 後 日 本 のナショナリズムに 関 しては これまで 多 くの 社 会 科 学 者 によって 論 じられてきたが 近 年 の 研 究 のうち 本 稿 と 強 く 関 心 領 域 を 共 有 するのは 小 熊 (2002)や 福 間 (2006)である 小 熊 も 福 間 も 戦 争 体 験 を 観 察 の 主 軸 として 言 説 を 分 析 し 戦 後 ナショナリズムの 有 り 様 と 変 容 を 通 時 的 に 記 述 している それが 両 書 の 独 創 的 な 点 であり 何 よりの 魅 力 ともなっている が 本 論 ではそれらに 多 くを 学 びつつも 戦 艦 大 和 の 言 説 - 表 象 を 観 察 の 主 軸 として 設 定 し ナショ ナリズムの 様 態 の 新 たな 記 述 を 試 みる さらに 本 稿 は 戦 争 の 語 り および 戦 争 観 の 研 究 としても 位 置 づけることが 出 来 る 1990 年 代 半 ばに 戦 争 の 記 憶 が 論 じられ 始 めて 以 降 この 領 域 には 多 くの 優 れた 研 究 が 蓄 積 されてきた ( 野 上 2006 成 田 2010 など) 中 でも 本 稿 にとって 最 も 重 要 な 仕 事 は 吉 田 裕 による 戦 後 日 本 に おける 戦 争 観 の 有 り 様 の 通 時 的 分 析 である( 吉 田 1995=2005) 吉 田 は 戦 後 日 本 における 塚 田 修 一 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 大 和 ヤマト やまと 三 田 社 会 学 第 18 号 (2013 年 7 月 )120-133 頁 120

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 対 外 的 には 必 要 最 小 限 度 の 戦 争 責 任 を 認 めるが 対 内 的 には 戦 争 責 任 問 題 を 事 実 上 否 定 す る あるいは 不 問 に 付 す という 姿 勢 を ダブル スタンダード として 指 摘 している この 吉 田 の 主 張 に 本 稿 も 概 ね 首 肯 する ただし 本 稿 では そうした 戦 争 観 と 文 化 ナショナリズムとし ての 大 和 言 説 - 表 象 との 関 係 性 の 考 察 を 通 して 戦 争 観 および ダブル スタンダード を とりまく 社 会 意 識 の 状 況 を 明 らかにするものである (2) 記 述 の 視 点 と 方 法 本 稿 の 記 述 の 視 点 と 方 法 について 説 明 しておこう 先 述 のように 本 稿 は 文 化 ナショナリズム という 観 点 から 考 察 を 行 うが 吉 野 (1998)は 1970~80 年 代 の 日 本 人 論 を 素 材 として この 文 化 ナショナリズムを 検 討 している その 際 に 吉 野 は これまでの 日 本 人 論 研 究 が 日 本 人 論 の 生 産 面 の 分 析 すなわちテクスト 内 容 の 分 析 と 批 判 および ナショナリスト 探 し に 終 始 して いたことを 指 弾 し 日 本 人 論 がどのように 受 容 消 費 されたのかに 着 目 して 分 析 を 進 める それ により ナショナリズムの 消 費 という 画 期 的 な 切 り 口 を 獲 得 することに 成 功 している 本 稿 もこ うした 吉 野 の 視 点 を 共 有 しており 大 和 言 説 表 象 の 内 容 分 析 というよりはむしろ どのように 受 容 消 費 されて 文 化 ナショナリズムとして 作 用 したのか を 観 察 していく 何 より 戦 艦 大 和 は マンガやアニメ プラモデル 等 様 々な 形 態 で 消 費 されてきたからである そしてそれらの 観 察 によって 人 々の 日 常 意 識 の 水 準 でのナショナリズムの 有 り 様 を 記 述 することが 出 来 る また 本 稿 の 記 述 方 法 としては 言 説 の 歴 史 社 会 学 を 採 用 する 1) 次 節 で 見 る 通 り 物 理 的 ( 物 質 的 )な モノ としての 戦 艦 大 和 は 1945 年 4 月 7 日 に 既 に 失 われており 以 来 戦 艦 大 和 は 言 説 として 存 在 - 運 動 してきたからである また 扱 う 時 期 は 1950 年 代 から 90 年 代 までと し 2) 便 宜 上 年 代 をゆるやかに 10 年 ごとに 区 切 りながら 記 述 していく なお 言 説 に 関 しては 主 に 国 立 国 会 図 書 館 検 索 システム(NDL-OPAC) および 大 宅 壮 一 文 庫 雑 誌 記 事 索 引 検 索 により 収 集 および 分 析 を 行 った また 映 像 資 料 の 収 集 に 際 しては 別 冊 映 画 秘 宝 戦 艦 大 和 映 画 大 全 (2010 年 洋 泉 社 )を 参 照 した (3) 戦 艦 大 和 史 の 概 観 戦 艦 大 和 に 関 する 基 本 情 報 を 素 描 しておこう 3) 戦 艦 大 和 は アジア 太 平 洋 戦 争 時 に 大 日 本 帝 国 海 軍 により 建 造 された 世 界 最 大 の 戦 艦 である 全 長 は 263 メートル 排 水 量 は 70000 トンを 超 え 乗 員 数 2300 人 を 数 える 超 大 型 の 体 躯 であり 装 備 には 史 上 最 大 の 46 センチ 主 砲 3 基 9 門 を 備 えていた 1937 年 に 呉 海 軍 工 廠 において 起 工 され 1940 年 に 進 水 1941 年 に 就 役 し 1942 年 からは 連 合 艦 隊 旗 艦 となった 1944 年 にはマリアナ 沖 海 戦 レイテ 沖 海 戦 に 従 事 するが 目 立 った 戦 果 をあげることはなく 1945 年 4 月 7 日 に 海 上 特 攻 作 戦 ( 天 一 号 作 戦 ) 途 中 に 米 軍 の 猛 攻 を 受 け( 坊 ノ 岬 沖 海 戦 ) 徳 之 島 沖 に 沈 没 する この 大 和 の 存 在 は 建 造 時 より 終 戦 を 迎 えるまで 沈 没 してもなお 軍 事 機 密 であり また 終 戦 後 も GHQ の 検 閲 (への 恐 れ)により しばらくは 一 般 の 人 々が 知 るところとは 成 り 得 なかった 121 121

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) 2. 大 和 の 50 年 代 (1) 吉 田 満 戦 艦 大 和 ノ 最 期 戦 艦 大 和 の 名 を 一 般 に 知 らしめたのが 大 和 に 副 電 測 士 として 乗 艦 し 沈 没 からの 生 還 者 である 吉 田 満 によって 書 かれた 戦 艦 大 和 ノ 最 期 である 占 領 中 に GHQ による 検 閲 により 全 文 削 除 が 命 じられるなどの 紆 余 曲 折 を 経 て サンフランシスコ 講 和 条 約 の 発 効 によって 占 領 が 終 結 する 1952 年 に 出 版 されたこのテクストは 命 がけで 戦 い 死 線 を 越 えてきた そうした 経 験 がほとんど 感 情 の 屈 折 なしに 語 られている 同 時 期 の 戦 記 もの と 同 様 に( 高 橋 1988:40) 一 種 の 記 録 文 学 として 書 かれており それゆえに 読 者 に 強 い 印 象 を 残 した 例 えば 竹 西 寛 子 はこのテクストを 読 んだ 際 のことをこう 述 懐 している 1958 年 の 秋 夜 更 けてから 開 いた 一 冊 の 書 物 に 私 は 思 いがけない 衝 撃 をうけた それは もと 海 軍 の 青 年 将 校 によって 書 かれた 戦 争 の 記 録 であった 私 は 自 分 のからだが 徐 々に 冷 えて ゆくように 感 じたが 眼 の 裏 側 だけは 灼 けて しみるようだった 何 時 間 の 後 には 勤 めに 出 な ければならないということも そのために 少 しでも 睡 眠 をとっておかなければならないという ことも とうてい 自 分 のこととしては 考 えられなかった 戦 争 が 終 ってすでに 13 年 も 過 ぎてい るという 日 に 迂 闊 にもわたしは 戦 艦 大 和 ノ 最 期 を 読 んだ ( 竹 西 1964:98 99) このように 竹 西 に 思 いがけない 衝 撃 を 与 えたこのテクストは その 後 の 吉 田 自 身 の 旺 盛 な 執 筆 活 動 と 相 俟 って 大 和 の 名 とその 最 期 を 広 く 知 らしめることになる そして この 戦 艦 大 和 ノ 最 期 は そのカタカナ 文 語 体 によって 江 藤 淳 に 痛 切 な 感 動 を 覚 える と 評 されるほどの 悲 劇 として 受 容 されるわけだが 4) ここで 指 摘 しておきたいのは こ の 悲 劇 の 物 語 は 具 体 的 な 敵 の 姿 や 顔 が 一 切 現 われない 自 己 完 結 的 な 性 格 を 有 している ということである 5) この 自 己 完 結 的 な 悲 劇 としての 戦 艦 大 和 ノ 最 期 は 福 間 良 明 が 指 摘 するように 任 侠 的 な 心 情 と 共 鳴 しつつ( 福 間 2007) 戦 後 日 本 社 会 の 言 説 空 間 を 流 通 していく (2) 松 本 喜 太 郎 戦 艦 大 和 その 生 涯 この 戦 艦 大 和 ノ 最 期 の 一 方 で 文 化 ナショナリズムの 観 点 から 大 和 を 考 察 する 上 で 注 目 しておきたいのは 同 じく 1952 年 に 出 版 された 松 本 喜 太 郎 戦 艦 大 和 その 生 涯 というテクスト である 大 日 本 帝 国 海 軍 の 技 術 大 佐 で 大 和 の 設 計 補 佐 を 務 めた 著 者 によるこの 技 術 レポートに よって 大 和 の 性 能 やテクノロジーが 詳 らかにされ その 設 計 建 造 に 注 がれた 日 本 の 技 術 力 の 優 秀 性 が 称 揚 されていくのである このテクストは 雑 誌 自 然 1950 年 1 月 ~9 月 号 に 連 載 された 記 事 が 基 になっているが その 最 終 回 において 松 本 はこう 述 べていた 122 122

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 一 介 の 技 術 者 として 筆 者 は 戦 艦 大 和 の 記 事 完 結 にあたり 一 言 述 べさせてもらいたいこ とがある それは 日 本 人 は 自 己 の 有 する 技 術 能 力 の 優 秀 性 を 自 覚 すべきだ ということであ る 日 本 の 造 船 界 はかつて 小 鷹 級 及 び 妙 高 級 巡 洋 艦 を 世 に 出 し 各 国 海 軍 をしてその 優 秀 性 に 眼 を 見 はらせた 戦 艦 をつくるにも その 技 術 の 粋 をこめて 大 和 型 を 送 り 出 したのである これら の 事 柄 は 日 本 人 の 優 れた 技 術 能 力 を 現 わしたほんの 一 端 にしか 過 ぎない 問 題 は 軍 艦 にあるの ではなくて これを 作 って 示 した 日 本 人 の 才 能 にある ( 自 然 1950 年 9 月 号 :79 下 線 引 用 者 ) そしてこうした 謂 いは 次 のような 言 説 によって 反 復 強 化 されていく 技 術 というものは 一 日 にして 成 るものではない 突 飛 な 飛 躍 的 な 進 歩 というものは 技 術 の 世 界 にはあり 得 ないのである 大 和 はそのいい 例 で もし 我 々の 先 輩 の 遺 産 がなかつたら かれはこ の 世 に 生 れなかつたかも 知 れない 不 沈 艦 は 沈 んだ しかし その 技 術 は 亡 びてはならないし 又 亡 ぼさせてはならないのである ( 戦 艦 大 和 いまだ 沈 まず 文 藝 春 秋 1955 年 11 月 号 :253) 世 界 最 大 の 戦 艦 大 和 武 蔵 を 造 った 日 本 の 技 術 と 工 業 力 は 戦 後 十 六 年 たった 今 もなお 生 きている マンモス タンカーを 続 々と 進 水 させている 現 在 の 日 本 造 船 工 業 の 実 力 が 両 巨 艦 を 建 造 したという 実 績 に 発 していることはいうまでもあるまい ニコンやキャノンなどの 優 秀 カ メラを 産 んだ 光 学 技 術 も これまた 両 巨 艦 につまれた 十 五 メートル 測 巨 儀 と 深 いつながりを 持 っ ているのだ ( 特 集 大 和 武 蔵 は 生 きている! 悲 劇 の 巨 艦 その 現 代 的 意 義 週 刊 朝 日 1962 年 1 月 12 日 号 :18) こうして 称 揚 される 大 和 に 注 がれた 日 本 人 の 優 れた 技 術 力 が 敗 戦 国 民 のプライド/ア イデンティティの 拠 り 所 として 作 用 していくことになる こうした 文 化 ナショナリズムとしての 大 和 が 要 請 欲 望 された 背 景 に 在 るのは 50 年 代 の 日 本 国 民 が 陥 っていたアイデンティティの 危 機 である 青 木 保 によれば この 時 期 の 日 本 人 のアイ デンティティは 自 らの 文 化 の 否 定 と 劣 性 の 認 識 に 求 められていた( 青 木 1990=1999) また 戦 後 のベストセラーの 調 査 から 社 会 意 識 の 推 移 を 取 り 出 した 辻 村 明 によれば 敗 戦 直 後 か ら 約 10 年 くらいの 時 期 におけるベストセラーは 日 本 に 対 する 否 定 の 論 調 が 圧 倒 的 に 支 配 的 で あったという( 辻 村 1981) さて 吉 田 裕 は 1950 年 代 に ダブル スタンダード の 成 立 を 指 摘 しているが その 対 内 的 な 態 度 戦 争 責 任 問 題 を 事 実 上 否 定 する あるいは 不 問 に 付 す の 形 成 において 上 述 の 文 化 ナ ショナリズムとしての 大 和 言 説 の 作 用 を 推 察 することが 出 来 よう 123 123

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) 3.60 年 代 の 大 和 (1) 戦 記 ものブームの 中 の 大 和 1960 年 代 前 半 に 戦 記 ものブーム が 起 こる 6) 少 年 マンガ 誌 の 表 紙 にアジア 太 平 洋 戦 争 時 の 戦 闘 機 や 戦 艦 が 描 かれ また 少 年 雑 誌 では 戦 時 の 兵 器 が 特 集 され またアジア 太 平 洋 戦 争 を 舞 台 とし たマンガ 0 戦 はやと ( 辻 なおき 1963 年 ~ 週 刊 少 年 キング 連 載 )や 紫 電 改 のタカ (ちば てつや 1963 年 ~ 週 刊 少 年 マガジン 連 載 )などが 男 子 の 人 気 を 博 す そしてこの 戦 記 ものブーム の 中 心 に 在 ったのが 大 和 であった 1957 年 生 まれの 石 破 茂 は こう 述 懐 している ( 大 和 のことは) 幼 稚 園 児 の 頃 から 知 っていましたよ 当 時 は 月 刊 漫 画 雑 誌 っていうのが 人 気 でね そのカラーの 特 集 がいつも 大 和 かゼロ 戦 でしたもん ( 中 略 ) 戦 争 が 終 わってか ら 20 年 もたってない 頃 ですよ でも 厭 戦 思 想 に 満 ち 満 ちていたのか というとそんなことは なくて 少 年 画 報 や 冒 険 王 は 必 ず 大 和 かゼロ 戦 ちょっと 変 わったところで 紫 電 改 と かね だから 大 和 ゼロ 戦 隼 なんてのは 当 時 の 子 供 たちは 誰 でも 知 ってましたよ ( 別 冊 宝 島 1239 僕 たちの 好 きな 戦 艦 大 和 2006 年 宝 島 社 :61) そしてこの 戦 記 ものブーム においても 前 章 で 観 察 したナショナリズムが 作 用 していた 自 ら がこのブームに 興 じた 体 験 を 持 つ 夏 目 房 之 介 (1950 年 生 まれ)はこう 指 摘 している 小 学 生 の 頃 の 私 が 戦 記 マンガをいったいどんなふうに 読 んでいたかといえば SF 架 空 漫 画 にはない 実 名 性 の 魅 力 と 奇 妙 な 敗 戦 国 少 年 のプライドによってであった どんなにカッコよ く 描 かれても 日 本 が 負 けた 事 実 はかくしようがない その 事 実 を 納 得 するために 当 時 私 を 含 む 少 年 たちはかんたんにいえばこう 考 えたはずだ 零 戦 を 生 んだ 日 本 の 技 術 は 当 初 米 国 を 圧 倒 するほど 優 れていたが 資 源 にとぼしい 日 本 は 物 量 に 負 けたのだ と 多 分 多 くの 大 人 たちが なんで 日 本 は 負 けたの? という 子 どもの 素 朴 な 問 いに そう 答 えていたのではない かと 思 う そこでは 戦 争 は 正 義 とか 理 念 の 問 題 ではなく むしろ 技 術 的 な 問 題 だった 敗 戦 という 事 実 をあえて 技 術 的 に 考 えることで プライドを 保 とうとしていたともいえる ( 夏 目 1997:61 下 線 引 用 者 ) また 戦 記 ものブーム と 並 行 して 戦 闘 機 や 軍 艦 の 模 型 づくりがブームとなる その 中 心 に 在 ったのもやはり 大 和 であったが ここにも 夏 目 はナショナリズムを 指 摘 する 子 どもたちの 想 像 力 の 中 では 自 分 の 手 がなぞる 模 型 の 感 覚 が マンガの 世 界 のリアリティに つながっていた 模 型 づくりは 子 どもの 模 倣 遊 びの 面 白 さが 基 本 だが 時 代 時 代 に 現 実 にあっ た 技 術 の 反 映 でもある ( 中 略 )メカに 対 する 子 どもの 憧 れが 実 在 した 戦 争 メカへの 憧 れにな 124 124

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 り 敗 戦 国 少 年 の 複 雑 なプライドを 刺 激 したのである ( 夏 目 1997:61-62 下 線 引 用 者 ) 事 実 当 時 の 週 刊 誌 も 子 供 たちは 大 和 や 武 蔵 のプラモデルで 日 本 にもこんな 軍 艦 があった んだ ということを 誇 りに 思 っているんです ( サンデー 毎 日 1963 年 7 月 28 日 号 :102)というプ ラモデル 問 屋 のコメントを 紹 介 している このように 戦 記 ものブーム の 中 においても 戦 艦 大 和 は 敗 戦 国 少 年 のプライド/アイデ ンティティを 慰 撫 する 文 化 ナショナリズムの 言 説 として 作 用 していたのである 7) (2) 大 和 言 説 の 減 少 60 年 代 後 半 になると 男 の 子 文 化 における 戦 記 ものブーム も 去 り 同 時 に 一 般 的 にも 大 和 に 関 する 言 説 や 表 象 が 少 なくなる 8) その 背 景 には まず 戦 争 体 験 の 風 化 を 指 摘 することができる その 兆 候 はこの 時 期 の 戦 争 の 語 り に 顕 著 にあらわれている 成 田 龍 一 はこの 時 期 に 戦 争 の 語 り が 体 験 の 時 代 から 証 言 の 時 代 へと 移 行 したことを 論 じており( 成 田 2010) また 高 橋 三 郎 は この 時 期 の 戦 記 ものか らは 凄 み すなわち 単 に 戦 争 とは 何 かを 超 えて 人 間 とは 何 かを 考 えさせる そして 筆 者 が 個 人 としてその 苛 酷 な 体 験 を 語 るなかで 読 者 が 感 じるもの ( 高 橋 1988:76)が 失 われていくこと を 指 摘 している しかしながら これまでの 考 察 を 踏 まえるならば この 大 和 言 説 表 象 の 減 少 に 対 して 文 化 ナショナリズムとしての 大 和 の 機 能 不 全 という 解 釈 を 与 えることも 出 来 るだろう すなわ ち 大 和 によってプライドやアイデンティティを 回 復 させる 必 要 が 無 くなった ということであ る 高 度 経 済 成 長 1965 年 から 70 年 までは 11.6 パーセントという 伸 びを 示 していた により 現 実 に 技 術 大 国 化 経 済 大 国 化 する 中 で 人 々は 自 信 を 回 復 する 統 計 数 理 研 究 所 が 行 っている 日 本 人 の 国 民 性 調 査 によれば 日 本 人 は 西 洋 人 とくらべて ひとくちでいえばすぐれていると 思 い ますか それとも 劣 っていると 思 いますか? という 質 問 に 対 し 劣 っている の 割 合 が 減 少 し すぐれている という 回 答 の 割 合 が 増 加 するのがこの 時 期 である 図 表 1 また 1960 年 代 のべストセラーには 日 本 の 美 点 を 再 確 認 し 日 本 および 日 本 人 を 肯 定 していく 内 容 のものが 多 くなっていく( 辻 村 1981:257) 青 木 保 によれば 肯 定 的 特 殊 性 の 認 識 によって 経 済 大 国 の 自 己 確 認 の 追 求 が 行 われるのがこの 時 期 である( 青 木 1990=1999) 大 和 を 召 喚 して ナショナル アイデンティティを 維 持 強 化 する 必 要 など もはや 無 かったのである 125 125

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) 図 表 1 統 計 数 理 研 究 所 日 本 人 の 国 民 性 調 査 4.70 年 代 の ヤマト (1) 宇 宙 戦 艦 ヤマト さて 戦 艦 大 和 は 1970 年 代 に 新 たな 装 いで 息 を 吹 き 返 すことになる アニメ 宇 宙 戦 艦 ヤ マト シリーズである 9) 日 本 のアニメ 史 およびいわゆる オタク カルチャーにおいても 重 要 な この 作 品 については 周 知 のように 多 くの 作 品 論 が 存 在 する しかしながら 本 稿 では 彼 らの 主 張 の 詳 細 に 立 ち 入 ることや その 正 否 を 判 定 することは 行 わず また 作 品 論 や 内 容 分 析 ではなく ヤマト の 制 作 者 の 意 図 と 受 け 手 の 解 釈 消 費 の 様 相 を 観 察 していく このアニメのストーリーを 要 約 しておこう 舞 台 設 定 は 未 来 の 地 球 地 球 人 は 異 星 人 からの 侵 略 攻 撃 にさらされ 日 夜 落 とされる 遊 星 爆 弾 = 核 兵 器 によって 地 球 全 体 が 放 射 能 で 汚 染 され 地 表 は 死 の 世 界 となっていた 生 き 残 った 人 類 は 放 射 能 汚 染 から 身 を 守 るため 地 下 に 篭 るが 滅 亡 は 時 間 の 問 題 であった そんな 折 に 地 球 を 救 おうとする 別 の 異 星 人 からのメッセージに 従 い 地 球 防 衛 軍 は 第 二 次 世 界 大 戦 のとき 海 中 に 沈 んだ 旧 日 本 海 軍 の 戦 艦 大 和 を 宇 宙 戦 艦 ヤマト とし て 改 造 し 放 射 能 で 汚 染 された 地 球 を 浄 化 し 復 活 させるために 宇 宙 の 彼 方 イスカンダル への 旅 に 出 る それにしても 60 年 代 後 半 にはすでに 機 能 不 全 を 起 こしていたはずの 戦 艦 大 和 が なぜこの 70 年 代 に ヤマト として 召 喚 されねばならなかったのであろうか その 解 答 は プロデューサー である 西 崎 義 展 の 企 画 意 図 に 求 めることが 出 来 る 西 崎 は 高 度 経 済 成 長 ゆえの 閉 塞 感 に 危 機 感 を 表 明 している 126 126

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 生 活 の 行 きづまりについて くどくど 説 明 する 必 要 はあるまい 日 本 人 は 驚 異 の 経 済 成 長 をな しとげ 物 質 的 には 豊 かになったが そこには 公 害 があり 物 価 高 があって まだまだ 幸 せとは 言 えないし ことに 精 神 面 となると 産 業 社 会 の 歯 車 となってしまった 個 人 の 孤 立 感 を 救 うすべ もない ( 宇 宙 戦 艦 ヤマト 全 記 録 集 ( 上 ):264) そして 西 崎 は 次 のような 提 言 を 行 う かつて 日 本 人 は 外 国 の 人 から 黄 色 い 猿 とかジャップとかいわれ あなどられてきました しかし 今 はそんなことはほとんどありません 逆 に 日 本 人 の 勤 勉 さや 緻 密 さや 複 雑 さに 民 族 としての 長 所 を 認 め 世 界 全 体 がもっと 幸 せになれるように 指 導 性 を 発 揮 してほしいと 要 望 さ れています 私 は 日 本 人 が このすぐれたところを もう 一 度 再 認 識 し それが 国 際 性 へつな がるように 育 ってほしい と 心 から 思 います 宇 宙 戦 艦 ヤマト は そういう 私 の 強 い 念 願 が フィーリングとなって 形 成 された 作 品 だとも 言 えるのです ( ヤマトよ 永 遠 に パンフレット) すなわち 佐 藤 健 志 が 述 べるように 西 崎 は 宇 宙 戦 艦 ヤマト を 経 済 大 国 化 ゆえの 日 本 社 会 の 閉 塞 した 状 況 を 日 本 人 が 乗 り 越 える 可 能 性 を 示 す 寓 話 として 構 想 したのである( 佐 藤 1992:19) (2) ヤマト と 大 和 椹 木 野 衣 は この 宇 宙 戦 艦 ヤマト が その 設 定 の SF 的 想 像 力 にもかかわらず それはどこ かで 見 るものに かつての 日 米 戦 争 の 記 憶 を 呼 び 覚 まさずにはおかない として いわば 大 和 と ヤマト の 連 続 性 を 指 摘 している 実 際 ヤマト で 劣 勢 に 立 たされた 人 々が 地 下 に 都 市 を 作 り かろうじて 生 き 延 びようとす る 様 は 防 空 壕 に 身 を 潜 めて 空 爆 が 終 わるのをひたすら 待 つ かつての 市 民 の 様 を 思 わせる そ の 頭 上 で 一 面 の 焼 け 野 原 となった 地 表 の 様 子 は アメリカの 戦 闘 爆 撃 機 B29 によって 徹 底 的 に 焼 き 払 われた 首 都 = 東 京 の 記 憶 を 喚 起 するし 次 々に 投 下 される 未 知 の 放 射 能 兵 器 によって 廃 墟 と なった 地 球 は ほかでもないヒロシマ ナガサキを 直 接 想 起 させる また 物 語 の 随 所 で 絶 体 絶 命 の 状 況 に 追 いやられた 人 物 は しばしば 唐 突 に 自 爆 攻 撃 を 敢 行 する そもそも 地 球 人 たち が 生 存 を 掛 けて 銀 河 へと 送 り 出 す 宇 宙 戦 艦 が かつて 日 本 海 軍 の 最 後 の 希 望 と 呼 ばれた 戦 艦 大 和 の 改 造 に 基 づくとなると 事 は 偶 然 ではあり 得 ない 明 らかにこの 物 語 は かつての 日 米 戦 争 を 下 敷 きにしているのだ ( 椹 木 2005:194 195) 実 際 監 督 原 作 を 担 当 した 松 本 零 士 にとって この ヤマト はやはり 戦 艦 大 和 の 復 活 で なければならなかったのである それは 松 本 の 敗 戦 体 験 に 由 来 している 127 127

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) ( 戦 後 ) 家 族 で 九 州 に 移 ったんですが それからは 敗 戦 国 の 暮 らしというものが どんなにみ じめなものになるかということを まざまざと 感 じることになりました やはり 占 領 軍 にこびる 人 間 とこびない 人 間 の 二 つに 分 かれるんですね 私 はまだ 幼 かったですが こびることはしませ んでした アメリカ 兵 が 投 げるキャンディなどは 踏 み 潰 して 歩 いていました むこうとしてみれ ば 好 意 からのことで ひとりひとりのアメリカ 人 に 対 してはなんの 憎 しみもないんですが 全 体 としてみればむざむざと 施 しはうけないぞ という 気 概 がありました しかし 実 際 にそういっ た 混 迷 の 時 代 に 身 をおいたということは 非 常 に 貴 重 な 体 験 をできたということで 作 品 を 描 く うえで 大 変 役 にたっていますね ( 別 冊 歴 史 読 本 呉 江 田 島 歴 史 読 本 :13 14) また 松 本 は 大 和 への 思 いをこう 語 っている 空 爆 を 受 けて 敗 戦 を 迎 え 戦 後 進 駐 軍 がやっ て 来 た その 大 混 乱 期 を 生 きた 文 字 通 り 亡 国 の 民 となった 日 本 人 ですが 大 和 のような 世 界 に 誇 れる 科 学 技 術 の 結 晶 のような 巨 大 戦 艦 を 造 ったという 事 実 が 民 族 としての 自 信 のようなものとし て 日 々の 拠 り 所 になったのではないでしょうか (Gakken Mook 戦 艦 大 和 の 真 実 :7) しかしながら ヤマト に 先 の 戦 争 の 影 を 読 み 込 む 解 釈 は 他 でもない 吉 田 満 によって 否 定 されている 吉 田 は 宇 宙 戦 艦 ヤマト を 観 て 三 十 三 年 前 の 特 攻 隊 を 思 い 出 した との 新 聞 投 書 を 挙 げ それに 対 し 心 配 は 無 用 としてこう 論 じる ここ( 引 用 者 注 : 宇 宙 戦 艦 ヤマト )で 演 じられているのは いうまでもなく 人 間 が 歴 史 の 中 で 飽 きずにくり 返 してきた 醜 悪 な 凄 絶 な 戦 争 ではなくて 架 空 の SF 茶 番 劇 に 過 ぎない 戦 うことを 強 いられた 人 間 の 救 いようのない 苦 悶 自 己 犠 牲 を 覚 悟 するまでの 生 々しい 憤 りは その 片 影 もない 戦 場 におもむくものが 断 念 しなければならない 愛 の 深 さ 別 離 の 耐 え 難 さは この 映 画 をしばしばいろどるラブシーンのトーンとは まるでかけ 離 れた 世 界 である 幸 いにも この 点 でこそ 大 和 と ヤマト は 決 定 的 に 異 質 であり 子 供 たちの 胸 に 高 鳴 る 鼓 動 ほほ を 伝 わる 涙 は 特 攻 隊 員 の 空 しい 死 とは 何 のかかわりもない 無 邪 気 な 透 明 な 感 傷 なのである ( 宇 宙 戦 艦 ヤマト の 世 代 文 藝 春 秋 1978 年 11 月 号 :218) 実 際 ヤマト に 熱 狂 したファンたちも 先 の 戦 争 を 重 ねてはいなかった ヤマト プロデ ューサーの 西 崎 は ヤマト ファン クラブのメンバーから 作 品 がヒットした 要 因 を 聞 き 取 り こ う 述 べている 例 えば 宇 宙 戦 艦 ヤマト のメカニックな 部 分 がいいとか 音 楽 がいい ドラマ がいい あるいはアクションがいいと いろいろおっしゃいますが ファン クラブの 方 々に 聞 い てみますと 一 口 では 言 えない そういったものすべてが 総 合 されたような 一 つの 匂 いというか フィーリングのようなものの 魅 力 だとおっしゃいますね ( キネマ 旬 報 1977 年 9 月 下 旬 号 :132) また 当 時 のファン 向 けの 書 籍 を 調 査 した 佐 野 明 子 によれば 作 品 中 のさまざまな SF メカやキャ ラクター 設 定 がおもに 紙 面 を 埋 めており ファンタジーではなく 現 実 にあった 戦 争 関 連 の 記 事 は 認 められないという( 佐 野 2009:294) ヤマト ファンたちは 作 品 の 関 連 情 報 を 収 集 して 楽 しむ 128 128

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 あるいは 二 次 創 作 を 行 う オタク 的 な 消 費 を 始 めていたのである 10) すなわち 夏 目 房 之 介 が 述 べるように 戦 艦 大 和 を 改 造 したカタカナのヤマトは 第 二 次 世 界 大 戦 の 戦 争 体 験 を 想 起 させる 実 名 性 であるよりも むしろ 遠 い 歴 史 の 彼 方 から 投 影 された 幻 のよ うに 抽 象 化 された 悲 劇 の 象 徴 として 若 いファンたちに 受 けとられた ( 夏 目 1997:111)ので ある ここでは ヤマト に 敗 戦 体 験 を 投 影 する 松 本 と ファンたちの 受 容 消 費 の 間 に 明 らかな 齟 齬 が 起 こっている ここに 於 いて 戦 争 体 験 や 敗 戦 と 強 く 規 定 し 合 っていた 60 年 代 まで の 大 和 から 先 の 戦 争 が 漂 白 された ヤマト への 転 回 が 生 じているのである この 先 の 戦 争 の 漂 白 という 状 況 は このアニメに 限 ったものではない それは 例 えば 同 じ 70 年 代 における 海 軍 マネジメントの 研 究 といった 大 日 本 帝 国 海 軍 の 組 織 や 作 戦 を 組 織 論 や 経 営 論 として 解 釈 するビジネス 書 の 出 現 ( 吉 田 1995=2005)からも 指 摘 できる (3)ナショナル アイデンティティの 安 定 では この 大 和 から ヤマト への 転 回 を 可 能 たらしめた 社 会 的 条 件 とは 何 であろうか 本 稿 では その 解 答 を 前 述 の 戦 争 体 験 の 風 化 の 他 に ナショナル アイデンティティの 安 定 に も 見 出 す 先 にも 言 及 した 日 本 人 の 国 民 性 調 査 によると 70 年 代 を 通 して 日 本 人 は 西 洋 人 とくらべ て ひとくちでいえばすぐれていると 思 いますか それとも 劣 っていると 思 いますか? という 質 問 に 対 し すぐれている という 回 答 の 割 合 は 高 いまま 劣 っている の 割 合 は 低 いまま 推 移 し ており 同 様 に NHK 放 送 文 化 研 究 所 による 日 本 人 の 意 識 調 査 においても 日 本 は 一 流 国 だ 日 本 人 は 他 の 国 民 に 比 べて きわめてすぐれた 素 質 をもっている という 項 目 に 対 し そう 思 う と 回 答 する 割 合 は 70 年 代 から 80 年 代 半 ばにかけて 安 定 して 高 い 割 合 を 示 しており また 今 でも 日 本 は 外 国 から 見 習 うべきことが 多 い という 項 目 に 対 し そう 思 う と 回 答 する 割 合 も 安 定 して 低 い 割 合 を 示 している 図 表 2 図 表 2 NHK 放 送 文 化 研 究 所 現 代 日 本 人 の 意 識 構 造 [ 第 七 版 ] :110 129 129

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) このナショナル アイデンティティの 高 い 安 定 により もはや 大 和 はナショナル アイデン ティティの 拠 り 所 としての 機 能 を 完 全 に 失 い 悲 劇 の 抽 象 化 や 西 崎 の 企 画 意 図 とも 食 い 違 うか たちでの 無 邪 気 な ヤマト の 消 費 が 可 能 になったのである 5.80 年 代 以 降 の 大 和 /ヤマト/やまと (1) 戦 艦 大 和 の 探 索 吉 田 裕 は 80 年 代 に 戦 争 に 関 する 侵 略 性 や 加 害 性 に 関 する 認 識 が 増 したことなどを 挙 げ ダブ ル スタンダードの 動 揺 を 指 摘 している( 吉 田 1995=2005) さらに 日 本 人 の 自 信 やナショナ ル アイデンティティが 揺 らぎを 見 せ 始 めるのもこの 時 期 である 図 表 1 図 表 2 このような 社 会 状 況 と 同 時 期 に 新 たに 浮 上 してくる 海 底 の 戦 艦 大 和 の 探 索 という 言 説 11) との 関 係 の 必 然 性 を 推 察 することが 出 来 る 先 に 指 摘 しておいたように 大 和 の 物 語 には 自 己 完 結 的 な 性 格 が 纏 わりついていたが この 海 底 の 戦 艦 大 和 の 探 索 という 物 語 は 敵 の 顔 は 勿 論 のこと 加 害 者 / 被 害 者 責 任 あるいは 対 外 関 係 などは 一 切 介 在 する 余 地 がない 純 粋 に 自 己 完 結 的 な 物 語 である すなわち 海 底 の 戦 艦 大 和 の 探 索 は 自 己 完 結 的 で 内 向 きの 態 度 のひとつの 極 点 なのである こうして 60 年 代 後 半 から 70 年 代 において 機 能 不 全 を 起 こしていた 文 化 ナショナリズムとして の 大 和 言 説 は 戦 争 観 やナショナル アイデンティティが 揺 らぐ 80 年 代 において 50 年 代 か ら 60 年 代 とは 異 なるかたちで 自 己 完 結 的 な 物 語 として 再 び 欲 望 されるのである (2) 欲 望 される やまと 続 く 80 年 代 後 半 から 90 年 代 にかけての 大 和 表 象 で 注 目 すべきなのは かわぐちかいじの 漫 画 沈 黙 の 艦 隊 (1988~1996 年 モーニング 連 載 )である ストーリーを 要 約 しておこう 日 米 共 同 で 極 秘 に 建 造 された 原 子 力 潜 水 艦 シーバット の 試 験 航 海 を 行 っていた 海 上 自 衛 隊 の 海 江 田 四 郎 二 等 海 佐 ら 乗 組 員 が 突 如 艦 内 で 反 乱 をおこし 以 降 海 江 田 を 元 首 とする 独 立 戦 闘 国 家 やまと を 名 乗 る 危 険 な 核 テロリストとして 抹 殺 を 図 ろうと するアメリカやソ 連 に やまと は 海 江 田 の 天 才 的 な 操 艦 術 と 原 潜 の 優 れた 性 能 を 武 器 として 対 抗 していく さて この 漫 画 は 1989 年 のあの 時 期 というのは 世 界 では 冷 戦 が 終 結 しつつあって じゃあ 冷 戦 が 終 わったらどうなるの? 日 本 はどうするの? っていう 不 安 感 があった 特 に 日 本 とアメ リカの 今 後 の 距 離 感 がよくわからないという 感 覚 があった で 自 分 もこの 不 安 感 を 解 消 したいな って 思 いがあって それで 沈 黙 の 艦 隊 を 描 けば なんとなく 日 本 と 世 界 特 にアメリカとの 距 離 感 が 具 体 的 に 自 分 のなかで 組 み 立 てられるだろうと 思 ったんです ( 別 冊 宝 島 1679 僕 たちの 好 きなかわぐちかいじ :22)とかわぐち 自 身 が 述 べているように 冷 戦 体 制 の 崩 壊 への 不 安 と ナ ショナル アイデンティティの 動 揺 を 背 景 として 描 かれている その 意 味 で かわぐちにとって 130 130

塚 田 : 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 言 説 やまと は 明 らかに 文 化 ナショナリズムとしての 戦 艦 大 和 の 変 奏 である そしてこの 沈 黙 の 艦 隊 は 高 い 人 気 を 博 すことになるが そのポピュラリティの 背 景 を 理 解 す るために 現 在 史 のシミュレーション 漫 画 でもあるこのテクストを 同 じく 90 年 代 に 数 多 く 書 かれ 読 まれた 歴 史 シミュレーション 小 説 の 文 脈 に 置 いてみることにしよう 12) それら 歴 史 シミュレーシ ョン 小 説 の 殆 どは 卓 越 した 指 導 者 と 超 兵 器 により 架 空 の 第 二 次 世 界 大 戦 が 日 本 の 勝 利 に 導 かれ るか あるいは 現 実 の 日 本 が 陥 った 破 滅 を 回 避 するという 歴 史 的 事 実 を 反 転 させた 形 式 を 採 って いるが そこに 山 家 (2012)は 歴 史 修 正 主 義 的 な 欲 望 との 随 伴 を 指 摘 している そしてそれら 歴 史 シミュレーション 小 説 と 自 虐 史 観 の 修 正 は 共 に 対 米 従 属 的 な 戦 後 アメリカニズムに 染 め 上 げられた 戦 後 である 冷 戦 体 制 を 超 克 し 90 年 代 の 日 本 が 直 面 していた 国 内 外 の 経 済 的 政 治 的 苦 境 を 克 服 できるように 国 家 再 編 をおこなおうという 企 てと 結 び 付 いた 記 憶 政 治 的 実 践 であるとい う( 山 家 2012:144) すなわち 大 和 の 変 奏 としての やまと は こうした 冷 戦 体 制 の 崩 壊 によるナショナル ア イデンティティの 揺 らぎゆえに 創 作 され また 90 年 代 の 社 会 から 欲 望 され 文 化 ナショナリズムの 言 説 として 作 用 していくのである 6.おわりに 本 稿 では 戦 艦 大 和 言 説 表 象 の 受 容 消 費 を 歴 史 的 に 追 尾 し その 文 化 ナショナリズムと しての 作 用 機 能 ( 不 全 )の 様 相 の 変 遷 を 記 述 してきた その 様 相 の 変 遷 と 強 く 規 定 し 合 ってきた ものは 経 済 変 動 に 伴 う 国 民 の 自 信 の 浮 き 沈 み 及 び 戦 後 日 本 の 戦 争 観 であった 吉 野 (1997)が 批 判 していたように 日 本 のナショナリズム 研 究 は ポピュラー 文 化 やサブカル チャーといった 人 々の 日 常 意 識 の 水 準 でのナショナリズムの 受 容 消 費 について 不 十 分 な 分 析 し かしてこなかったことを 鑑 みるに 本 稿 の 作 業 は 一 定 の 価 値 があると 言 えるだろう もちろん 残 された 課 題 も 多 い 本 稿 では 膨 大 な 大 和 言 説 表 象 のごく 一 端 を 扱 ったにすぎ ず 2000 年 代 以 降 の 現 在 の 分 析 も 行 われていない 13) また 本 稿 では 言 説 として 扱 ってき たが 各 メディア( 文 学 映 画 アニメ)による 差 異 を 検 討 する メディア 論 的 な 分 析 も 必 要 であ ろうし 精 緻 な 受 け 手 分 析 も 必 要 である 14) しかしながら 紙 幅 は 既 に 尽 きた それらは 別 稿 にお いて 考 究 することにしよう 付 記 本 稿 は 第 82 回 日 本 社 会 学 会 大 会 におけるポスターセッション 戦 艦 大 和 の 表 象 文 化 と 日 本 社 会 (2009 年 10 月 於 立 教 大 学 ) 第 58 回 関 東 社 会 学 会 大 会 における 一 般 報 告 戦 艦 大 和 のイメージ 変 容 と 戦 後 日 本 の 戦 争 感 (2010 年 6 月 於 中 央 大 学 ) およびカルチュラル タイフーン 2012 におけるパネル 報 告 戦 艦 大 和 ノ 表 象 (2012 年 7 月 於 広 島 女 学 院 大 学 )に 基 づくものである 131 131

三 田 社 会 学 第 18 号 (2013) 注 1) 言 説 の 歴 史 社 会 学 の 実 践 例 としては 赤 川 (2010)がある 2) 2000 年 以 降 の 現 在 における 戦 争 観 やナショナリズム および 戦 艦 大 和 に 関 する 言 説 の 有 り 様 いかな るエピステーメーに 浸 されていた(る)か は いまだ 正 確 に 捉 えられないからである 3) 以 下 本 節 の 記 述 は 平 間 編 (2003)を 参 照 している 4) たとえば 江 藤 淳 は 私 はこの 大 和 の 文 体 に 接 するたびに 叙 述 されている 事 実 の 悲 劇 的 な 性 格 と 同 時 に この 文 体 そのものが 内 包 する 悲 劇 性 に 対 して ちょっと 名 状 しようのない 痛 切 な 哀 切 というんじゃな いんです 痛 切 な 感 動 を 覚 えるんです ( 吉 田 江 藤 1975:51)と 述 べている 5) なお 福 間 良 明 は 2005 年 に 公 開 された 映 画 男 たちの 大 和 について 敵 の 顔 の 不 在 を 指 摘 している( 福 間 2009) 6) 戦 記 ものブーム の 内 実 を 詳 細 に 分 析 した 研 究 として 伊 藤 (2004) 高 橋 (2004)がある 7) 論 者 は このようなポピュラーカルチャーに 宿 る 戦 争 意 識 の 有 り 様 を 戦 争 感 と 呼 んだことがある( 塚 田 2012) 8) 大 宅 壮 一 文 庫 雑 誌 記 事 索 引 検 索 の 結 果 および 高 橋 三 郎 による 昭 和 20~30 年 代 に 発 表 された 戦 記 もの の 一 覧 表 ( 高 橋 1988:186 194)に 基 づく 9) 1974 年 にテレビアニメが 放 送 され 劇 場 版 としては 宇 宙 戦 艦 ヤマト (1977 年 ) さらば 宇 宙 戦 艦 ヤマト (1978 年 ) ヤマトよ 永 遠 に (1980 年 ) 宇 宙 戦 艦 ヤマト 完 結 篇 ( 1983 年 )がある 10) このあたりの 状 況 は 宇 宙 戦 艦 ヤマト に 泣 いた 子 どもたち 高 山 英 男 一 〇 代 文 化 としての ヤマト 現 象 を 探 る ( 朝 日 ジャーナル 1978 年 10 月 27 日 号 )に 詳 しい なお おたく 的 消 費 に 関 しては 大 塚 (1989)を 参 照 のこと 11) その 代 表 的 なものは 1980 年 に 行 われ その 経 過 が NHK 特 集 戦 艦 大 和 探 索 として 放 送 された 三 井 (1982) であったり 角 川 春 樹 辺 見 じゅんによる 1985 年 の 探 索 ( 辺 見 原 2004)である 雑 誌 記 事 では 例 えば 35 年 ぶりに 確 認 沈 没 地 点 は 北 緯 30 度 41 分 東 経 128 度 4 分 2 つに 折 れ 砂 に 埋 もれた 戦 艦 大 和 を 発 見! 週 刊 プレイボーイ 1980 年 8 月 31 日 号 鎮 魂 とロマン 戦 艦 大 和 探 索 100 日 のすべて 週 刊 読 売 1985 年 9 月 8 日 号 など 12) なお かわぐちは 後 に ジパング (2000~2009 年 モーニング 連 載 )において アジア 太 平 洋 戦 争 を シミュレーションしてみせている 13) 大 和 表 象 の 現 在 を 分 析 したものとして 山 里 (2011)がある 14) こうした 試 みの 好 例 として 福 間 (2006)がある 参 考 文 献 青 木 保.1990=1999. 日 本 文 化 論 の 変 容 中 公 文 庫. 赤 川 学.2010. 構 築 主 義 を 再 構 築 する 勁 草 書 房. 伊 藤 公 雄.2004. 戦 後 男 の 子 文 化 のなかの 戦 争 中 久 郎 編 戦 後 日 本 のなかの 戦 争 世 界 思 想 社 :151-179. NHK 放 送 文 化 研 究 所 編.2010. 現 代 日 本 人 の 意 識 構 造 [ 第 七 版 ] NHK 出 版. 大 塚 英 志.1989. 物 語 消 費 論 新 曜 社. 小 熊 英 二.2002. 民 主 と 愛 国 新 曜 社. 佐 藤 健 志.1992. ゴジラとヤマトと 民 主 主 義 文 藝 春 秋. 佐 野 明 子.2009. 戦 艦 大 和 イメージの 転 回 奥 村 賢 編 映 画 と 戦 争 森 話 社 :279-304. 椹 木 野 衣.2005. スーパーフラットという 戦 場 で 村 上 隆 編 著 リトルボーイ 爆 発 する 日 本 のサブカルチャー アート ジャパン ソサエティー:187-205. 132 132

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