諮 問 庁 : 国 税 庁 長 官 諮 問 日 : 平 成 24 年 6 月 25 日 ( 平 成 24 年 ( 行 情 ) 諮 問 第 264 号 ) 答 申 日 : 平 成 25 年 6 月 18 日 ( 平 成 25 年 度 ( 行 情 ) 答 申 第 60 号 ) 事 件 名 : 特 定 路 線 価 評 定 調 書 兼 決 議 書 の 一 部 開 示 決 定 に 関 する 件 答 申 書 第 1 審 査 会 の 結 論 平 成 20 事 務 年 度 の 特 定 路 線 価 評 定 調 書 兼 決 議 書 のうち, 特 定 路 線 価 を 評 定 したもの ( 以 下 本 件 対 象 文 書 という )につき,その 一 部 を 不 開 示 とし た 決 定 については, 審 査 請 求 人 が 開 示 すべきとする 部 分 を 不 開 示 としたことは, 妥 当 である 第 2 審 査 請 求 人 の 主 張 の 要 旨 1 審 査 請 求 の 趣 旨 行 政 機 関 の 保 有 する 情 報 の 公 開 に 関 する 法 律 ( 以 下 法 という )3 条 の 規 定 に 基 づく 本 件 対 象 文 書 の 開 示 請 求 に 対 し, 平 成 24 年 2 月 23 日 付 け 岡 東 総 第 32 号 により 岡 山 東 税 務 署 長 ( 以 下 処 分 庁 という )が 行 った 一 部 開 示 決 定 ( 以 下 原 処 分 という )について, 別 紙 に 掲 げる 部 分 ( 以 下 審 査 請 求 対 象 部 分 という )の 開 示 を 求 める 2 審 査 請 求 の 理 由 審 査 請 求 人 の 主 張 する 理 由 は, 審 査 請 求 書, 意 見 書 及 び 意 見 書 ( 補 足 )の 記 載 によると,おおむね 以 下 のとおりである (1) 審 査 請 求 書 本 件 対 象 文 書 の3 枚 目 特 定 路 線 価 を 設 定 する 道 路 と 比 準 する 路 線 との 格 差 検 討 表 ( 住 宅 地 用 ) の 特 定 路 線 価 を 設 定 する 道 路 の 部 分 の 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価 欄 に20,400 円 と 同 じ 金 額 の 路 線 価 があるので,マ スキング 部 分 も 固 定 ( 路 線 価 )と 思 われるが, 仮 に 倉 敷 という 地 名 が 入 って いるとしても 申 出 書 の 宛 名 は 倉 敷 税 務 署 長 と 開 示 されており, 処 分 庁 もある 程 度 以 上 の 広 い 地 域 は 個 人 情 報 を 特 定 する 情 報 とは 考 えていないことが 明 ら かであるから 開 示 すべきである (2) 意 見 書 ア 有 斐 閣 発 行 の 松 井 茂 記 著 情 報 公 開 法 ( 第 2 版 )の181 頁 から183 頁 に,1 情 報 公 開 法 の 要 綱 案 に 対 する 基 本 的 な 考 え 方 ( 以 下 考 え 方 という )として, 個 人 に 関 する 情 報 には, 個 人 の 内 心, 身 体, 身 分, 地 位 その 他 個 人 に 関 する 一 切 の 事 項 についての 事 実, 判 断, 評 価 等 の 全 ての 1
情 報 が 含 まれる との 記 載 がある また,2 考 え 方 は, 具 体 的 事 例 における 個 人 識 別 可 能 性 の 有 無 の 判 断 に 当 たっては, 当 該 情 報 の 性 質 及 び 内 容 を 考 慮 してする 必 要 がある との 記 載 がある さらに,3 法 も 個 人 に 関 する 情 報 であって, 当 該 情 報 に 含 まれる 氏 名, 生 年 月 日 その 他 の 記 述 等 により 特 定 の 個 人 を 識 別 することができるもの には, 他 の 情 報 と 照 合 することにより, 特 定 の 個 人 を 識 別 することができるもの が 含 まれる ことを 明 らかにしている との 記 載 がある 1と3は 個 人 情 報 の 範 囲 を 拡 張 する 方 向 に 働 く 定 義 と 基 準 であるが,2 は 個 人 情 報 を 限 定 する 基 準 といえる 3は 条 文 中 の 文 書 で,2が 解 釈 基 準 とも 考 えられる 実 際, 情 報 公 開 の 制 度 運 用 と 判 例 では, 情 報 の 性 質 と 内 容 の 解 釈 により, 原 処 分 庁 の 公 開 判 断, 判 決 が 左 右 されることになる イ 当 然, 今 回 の 諮 問 は, 特 定 路 線 価 という 情 報 の 性 質 と 内 容 を 考 慮 すべき だが,その 前 に 国 税 庁 の 保 有 する 情 報 について, 他 の 官 庁 と 情 報 の 性 質 や 内 容 に 特 質 があり, 公 開 判 断 に 当 たって 考 慮 すべきなのかという 問 題 があ る この 点, 過 去 に 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 審 査 会 ( 以 下 審 査 会 という ) に 持 ち 込 まれた 財 務 省 に 対 する 情 報 公 開 請 求 の 諮 問 内 容 を 見 ると, 一 部 の 情 報 のみ 公 開 を 諮 問 するものはかなりあるが, 一 般 的 に 広 く 公 開 を 諮 問 し たものは 少 ない 審 査 請 求 人 が,2006 年 に 審 査 会 から 受 けた 岡 山 東 税 務 署 に 対 する 異 議 決 定 書 開 示 請 求 の 異 議 申 立 てに 係 る 答 申 も 基 本 的 に 公 開 を 拒 否 する 答 申 であった しかしながら, 審 査 請 求 人 はその 後 この 件 を 法 廷 で 争 い,2011 年 4 月 7 日 付 け 広 島 高 裁 岡 山 支 部 の 判 決 後, 原 処 分 庁 の 最 高 裁 控 訴 がなかった ため 原 告 勝 訴 が 確 定 している その 内 容 は, 僅 かな 個 人 情 報 を 除 き 基 本 的 に 公 開 すべきであるとの 判 断 であった 原 処 分 は 見 出 し 部 分 のように 個 別 的 性 格 を 持 たない 部 分 などを 開 示 するものであったので, 公 開 部 分 が 大 部 分 となる 変 更 であった 異 議 決 定 書 は, 国 税 に 関 する 法 律 に 基 づく 処 分 (ほとんどは 課 税 処 分 ) に 対 する 不 服 申 立 てで 原 処 分 庁 に 対 してなされた 納 税 者 の 異 議 申 立 てに 対 して 調 査 や 審 理 の 内 容 を 記 載 した 行 政 文 書 である 訴 訟 において, 被 告 側 は 主 張 の 一 部 で 納 税 者 が 事 業 活 動 に 関 して 課 税 庁 と 係 争 状 態 にあるとい う 情 報 は, 納 税 者 には 絶 対 に 知 られたくない 情 報 であり, 秘 匿 したい 情 報 である などと 主 張 した 審 査 請 求 人 も 含 め, 納 税 者 の 中 には, 課 税 庁 の 2
不 当 な 事 実 認 定 や 無 理 な 税 法 解 釈 を 世 の 中 に 流 布 させたい, 宣 伝 したいと いう 者 もいるのであるが, 一 方 で 知 られたくない 納 税 者 も 存 在 するであろ う 異 議 決 定 書 開 示 請 求 訴 訟 の 結 果 は, 異 議 決 定 書 の 性 質 及 び 内 容 を 考 慮 し た 上 で, 個 人 識 別 情 報 をかなり 限 定 し, 基 本 的 部 分 は 公 開 としたのであり, 特 定 路 線 価 情 報 は, 同 じ 省 庁 の 保 有 情 報 である 異 議 決 定 書 との 比 較 からそ の 個 人 識 別 情 報 の 範 囲 を 限 定 させる 必 要 がある 異 議 決 定 書 公 開 請 求 訴 訟 において 公 開 された 情 報 の 骨 子 は, 異 議 申 立 人 の 課 税 処 分 に 係 る 課 税 要 件 を 事 実 関 係 と 税 法 解 釈 の 二 つの 基 準 により 検 討 したものである 事 実 関 係 には, 営 業 者 の 取 引 などの 立 ち 入 った 情 報 も 含 まれるが, 裁 判 所 は, 抽 象 的 一 般 的 個 人 情 報 はもちろん, 非 開 示 とすべき 個 別 的 個 人 情 報 を 狭 く 限 定 した ウ 特 定 路 線 価 情 報 の 性 質 と 内 容 国 税 庁 が 毎 年 7 月 に 価 格 を 付 す 全 国 の 路 線 価 は 国 税 庁 のホームページに も 公 開 され, 財 団 法 人 資 産 評 価 システム 研 究 センター のホームページに は, 全 国 の 路 線 価 だけでなく 固 定 資 産 税 路 線 価 についても 表 示 されている 特 定 路 線 価 は, 現 行 制 度 上, 宅 地 の 相 続 税 評 価 について, 路 線 価 を 基 準 と する 地 域 において, 路 線 価 が 付 されなかった 道 路 の 価 格 を 納 税 者 から 課 税 庁 に 申 請 し 確 定 させるというものである また, 前 年 度 路 線 価 が 付 されな かった( 既 設 の) 道 路 について 路 線 価 が 付 されるケースもある さらに, 特 定 路 線 価 回 答 書 の 下 部, 注 書 きに この 回 答 書 による 回 答 は, 税 法 による 処 分 の 通 知 ではありません したがって,この 回 答 については, 異 議 申 立 て 又 は 審 査 請 求 の 対 象 となりませんから,ご 留 意 ください との 記 載 がある すなわち, 特 定 路 線 価 の 回 答 は, 課 税 処 分 滞 納 処 分 には 該 当 しないので 国 税 通 則 法 上 の 異 議 申 立 て 又 は 審 査 請 求 の 対 象 には 当 たら ない 納 税 者 は, 主 として 被 相 続 人 の 土 地 又 は 土 地 に 係 る 権 利 などの 相 続 税 上 の 相 続 財 産 の 個 別 評 価 を 計 算 する 基 礎 資 料 として 特 定 路 線 価 の 評 定 を 求 め たに 止 まる そして, 現 実 の 相 続 税 申 告 過 程 において, 納 税 者 が 特 定 路 線 価 を 申 請 するケースは 少 ない 最 近 の 岡 山 県 内 税 務 署 で 課 税 された 件 数 は 673 件 であり, 特 定 路 線 価 が 評 定 される 件 数 は 最 近 7 年 事 務 年 度 の 開 示 請 求 の 結 果 から 最 も 多 い2010 事 務 年 度 の69 件 である 被 相 続 人 は 相 続 財 産 を 相 当 以 上 保 有 しているのであるから, 複 数 の 宅 地 を 保 有 している 場 合 もかなりある それでも 件 数 は 百 件 に 満 たない 世 の 中 に 他 人 の 宅 地 の 相 続 税 評 価 を 知 りたい 好 事 家 がいるとして,もと 3
もと 多 くの 路 線 価 が 公 開 されていることから, 優 に 過 半 を 超 える 路 線 で( 国 税 庁 の 評 価 通 達 を 詳 しく 知 らずとも) 路 線 に 接 した 宅 地 の 概 算 的 価 格 的 把 握 が 可 能 である このことから, 特 定 路 線 価 情 報 は, 異 議 決 定 書 に 比 べて 相 対 的 に 要 請 される 個 人 情 報 の 秘 匿 性 は 薄 いと 判 断 することになるはずで ある 路 線 価 と 市 町 村 の 固 定 資 産 税 路 線 価 には 類 似 点 がある 岡 山 市 に 特 定 の 年 に 新 設 された 固 定 資 産 税 路 線 価 評 定 の 資 料 の 開 示 を 求 めたところ, 当 該 路 線 の 地 図 と 場 所 を 含 め, 開 示 された 開 示 後, 路 線 が 付 される 道 路 は 全 て 公 有 であり, 私 有 道 路 はないか 質 問 したところ, 私 有 地 等 もあるとの 回 答 であった それにもかかわらず, 岡 山 市 は 特 定 年 度 の 全 ての 固 定 資 産 税 路 線 価 の 対 象 道 路 の 場 所 が 分 かる 地 図 を 併 せて 開 示 した 課 税 庁 に 路 線 価 が 付 される 道 路 に 私 有 地 があるかどう か 問 い 合 わせ 中 であるが, 現 時 点 で 回 答 はない 固 定 資 産 税 路 線 価 と 路 線 価 の 関 係 は, 市 町 村 は 原 則 的 に 土 地 に 固 定 資 産 税 を 課 していることから, 路 線 価 が 付 されていない 道 路 に 固 定 資 産 税 路 線 価 が 付 されていることがある 有 斐 閣 発 行 の 松 井 茂 記 著 情 報 公 開 法 ( 第 2 版 )183 頁 には, しばしば 土 地 図 面 に 関 して 問 題 となっている しかし,これについては,そもそも 土 地 所 有 者 名 を 非 公 開 とすることがで きるかどうかと 絡 んで 難 しい 問 題 がある との 記 載 があり, 土 地 情 報 につ いては, 法 務 局 の 公 開 制 度 と 絡 んで 未 解 決 の 部 分 がある この 記 述 からも 特 定 路 線 価 情 報 は, 課 税 処 分 情 報 より 個 人 識 別 性 基 準 を 緩 く 解 釈 すべきこ とになろう 以 上 の 考 察 から, 特 定 路 線 価 情 報 は, 異 議 決 定 書 に 比 して 個 人 識 別 情 報 をより 狭 く 解 釈 すべきと 考 える エ まとめ (ア) 諮 問 にかけた 情 報 は, 道 路 の( 時 価 ) 価 格 算 定 に 係 るものであり, 異 議 決 定 書 のように 直 接 的 に 個 人 と 関 わるものではない 納 税 者 からすれ ば,もろもろの 相 続 財 産 算 定 の 基 礎 となる 情 報 のごく 一 部 として, 手 段 として 必 要 なものであり, 管 轄 庁 と 個 人 の 関 わりは 課 税 処 分 などより 薄 い (イ) 道 路 の 価 格 については, 個 別 にも 路 線 価 固 定 資 産 税 路 線 価 などが 公 開 され 秘 密 性 は 薄 い (ウ) 固 定 資 産 税 評 価 額 については 納 税 者 に 争 う 道 があるが, 特 定 路 線 価 に ついては 国 税 通 則 法 の 不 服 申 立 てでは 争 えず, 行 政 不 服 審 査 で 争 うと 時 間 がかかり 期 限 内 申 告 が 困 難 となる よって, 特 定 路 線 価 評 定 の 手 続 の 4
透 明 性 と 運 営 の 妥 当 性 ( 画 一 性 等 )を 情 報 公 開 で 探 ることには 現 制 度 上 公 益 性 がある (エ) 以 上 により, 特 定 路 線 価 評 定 に 係 る 個 人 識 別 可 能 性 は 限 定 的 に 狭 く 解 すべきである オ 理 由 説 明 書 によれば, 審 査 請 求 対 象 部 分 には 市 町 村 名 の 記 載 があり, 不 開 示 情 報 に 該 当 するという 当 該 部 分 は, 右 隣 に 記 載 された 文 字 の 大 きさ から2 文 字 である 可 能 性 が 高 い つまり, 当 該 部 分 には 正 確 な 地 番 までは 記 載 されず, 市 までの 記 載 であろう ところで, 異 議 決 定 書 開 示 請 求 訴 訟 において, 被 告 は 広 島 国 税 不 服 審 判 所 が 保 有 する 裁 決 書 に 係 る 納 税 者 の 住 所 は 中 国 地 方 全 域 であるが, 請 求 された 岡 山 東 税 務 署 が 保 有 する 異 議 決 定 書 の 納 税 者 管 轄 地 域 は 岡 山 市 内 の 一 部 という 狭 い 地 域 に 限 定 されるので 公 開 されると 個 人 識 別 性 が 高 ま る との 主 張 をしていた しかし, 裁 判 結 果 が 個 人 識 別 情 報 をかなり 限 定 して 解 釈 していることは 既 に 引 用 したところである もともと 課 税 処 分 に 係 る 納 税 者 の 住 所 地 が 岡 山 市 の 一 部 ということは 請 求 文 書 に 岡 山 東 税 務 署 が 保 有 する 異 議 決 定 書 と いう 括 りから 当 然 に 導 かれるものであり,この 程 度 の 広 さであれば, 個 人 識 別 情 報 とならないと 裁 判 所 が 判 断 し 確 定 したということである 特 定 路 線 価 情 報 は 課 税 処 分 などより, 個 人 情 報 識 別 性 を 狭 く 解 すべきは 当 然 であり, 公 開 すべきである 次 に, 処 分 庁 が 他 の 部 分 で 特 定 路 線 価 所 在 地 推 定 情 報 を 公 開 しているこ とを 述 べる 岡 山 東 税 務 署 資 産 税 担 当 者 の 説 明 によれば, 岡 山 県 内 の 特 定 路 線 価 決 定 税 務 署 は 当 初 複 数 存 在 したが, 複 数 の 開 示 請 求 年 度 の 途 中 から 岡 山 東 税 務 署 ただ 一 署 のみとなった そのため,そのことを 知 る 納 税 者 や 納 税 者 から 委 任 を 受 けた 税 理 士 は 特 定 路 線 価 申 出 書 の 相 手 先 の 宛 名 を 当 初 から 被 相 続 人 の 住 所 や 当 該 土 地 を 管 轄 する 税 務 署 ではなく, 岡 山 東 税 務 署 とする 場 合 もあるとのことである そのことからすると, 特 定 路 線 価 申 出 書 の 宛 名 が 玉 野 の 税 務 署 長 となっている 場 合 には, 評 定 される 特 定 路 線 の 所 在 地 ( 必 ずしも 納 税 者 の 被 相 続 人 の 住 所 とは 限 らず, 被 相 続 人 の 所 有 する 土 地 か 土 地 の 権 利 の 所 在 地, 被 相 続 人 の 同 族 会 社 が 所 有 する 土 地 又 は 土 地 に 関 する 権 利 等 が 含 まれる )が 玉 野 市 と, 強 く 推 定 されることになる 本 件 開 示 請 求 と 同 じ 事 務 年 度 に 申 請 書 宛 名 から 特 定 路 線 価 所 在 地 の 市 名 を 推 定 される ままに 開 示 していた 事 例 が 複 数 あった その 他 岡 山 市 長 名 の 固 定 資 産 税 評 価 証 明 書, 岡 山 法 務 局 資 料 に 書 かれた 岡 山 市 のメモなども 同 じ 事 務 年 5
度 の 文 書 に 存 在 していた このように, 処 分 庁 自 体 も 様 々な 特 定 路 線 価 所 在 情 報 をかなり 広 範 に 公 開 しているのであり, 特 定 路 線 価 所 在 の 市 町 村 名 を 個 人 識 別 情 報 と 解 して いないことがうかがわれる 審 査 請 求 対 象 部 分 にマスクしたことは 職 員 の 拍 子 塗 り- 単 純 ミス-であったと 考 えられる よって, 審 査 会 がイン カメラにより 審 査 請 求 対 象 部 分 の 記 載 が 市 の 名 前 であることを 確 認 されれば, 当 然 公 開 すべきものである (3) 意 見 書 ( 補 足 ) 上 記 (2)ウに 課 税 庁 に 路 線 価 が 付 される 道 路 に 私 有 地 があるかどうか 問 い 合 わせ 中 であるが, 現 時 点 で 回 答 はない とした 箇 所 について, 平 成 2 4 年 7 月 26 日 に 電 話 で 回 答 があった 担 当 者 の 岡 山 東 税 務 署 の 特 定 職 員 の 回 答 は,おおむね 路 線 価 を 付 する 道 路 について, 所 有 者 による 限 定 はなく, 幅 員 が 狭 い 道 路 について 路 線 価 がつ かない 場 合 がある また, 路 線 価 を 付 す 道 路 は 不 特 定 多 数 が 通 過 できる 道 路 である したがって, 個 人 又 は 法 人 所 有 の 道 路 であっても 路 線 価 が 付 される ケースは 存 在 する というものである したがって, 路 線 価 価 格 そのものが 個 人 情 報 そのものであっても 公 開 され るケースがあることとなり,この 点 からも 保 護 されるべき 特 定 路 線 価 の 個 人 情 報 性 は 薄 まるものと 考 える 第 3 諮 問 庁 の 説 明 の 要 旨 1 本 件 開 示 請 求 の 対 象 文 書 等 について 本 件 開 示 請 求 は, 処 分 庁 に 対 し, 平 成 20 事 務 年 度 の 特 定 路 線 価 評 定 調 書 兼 決 議 書 のうち, 特 定 路 線 価 を 評 定 したもの ( 本 件 対 象 文 書 )の 開 示 を 求 める ものである 処 分 庁 は, 平 成 24 年 2 月 13 日 付 け 岡 東 総 第 32 号 により, 本 件 対 象 文 書 の 一 部 について, 法 5 条 1 号 及 び2 号 に 該 当 するとして, 一 部 開 示 決 定 ( 原 処 分 )を 行 った これに 対 し, 審 査 請 求 人 は 本 件 対 象 文 書 のうち, 本 件 対 象 文 書 の7 枚 目 及 び 8 枚 目 別 紙 特 定 路 線 価 により 評 価 する 土 地 等 及 び 特 定 路 線 価 を 設 定 する 道 路 の 所 在 地, 状 況 等 の 明 細 書 計 2 枚 において 不 開 示 としている その 他 ( 参 考 事 項 ) 欄 の3か 所 ( 審 査 請 求 対 象 部 分 )について, 開 示 を 求 めていることか ら, 以 下, 原 処 分 の 妥 当 性 について 検 討 する 2 審 査 請 求 対 象 部 分 について 審 査 請 求 対 象 部 分 には, 特 定 路 線 価 により 評 価 する 土 地 等 が 所 在 する 市 町 村 名 ( 以 下 所 在 地 市 町 村 名 という )が 記 載 されており, 処 分 庁 は, 当 該 部 分 6
が 法 5 条 1 号 の 不 開 示 情 報 に 該 当 するとして 不 開 示 としている 3 不 開 示 情 報 ( 法 5 条 1 号 ) 該 当 性 について 倉 敷 税 務 署 は, 倉 敷 市 の 一 部, 総 社 市 及 び 都 窪 郡 早 島 町 の3 市 町 を 管 轄 して おり, 所 在 市 町 村 名 を 開 示 すると, 既 に 開 示 されている 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価, 交 通 接 近 条 件 の 最 寄 駅 (バス 停 )までの 道 路 距 離, 行 政 的 条 件 の 用 途 地 域 等 の 制 限 などの 他 の 情 報 と 照 合 することにより, 特 定 路 線 価 により 評 価 する 土 地 等 の 所 在 地 が 特 定 され, 特 定 の 個 人 を 識 別 することが 可 能 となる したがって, 所 在 市 町 村 名 は, 法 5 条 1 号 ( 他 の 情 報 と 照 合 することにより, 特 定 の 個 人 を 識 別 することができるもの)に 該 当 する 4 結 論 以 上 のとおり, 審 査 請 求 対 象 部 分 について, 法 5 条 1 号 に 該 当 することを 理 由 に 不 開 示 とした 原 処 分 は 妥 当 である 第 4 調 査 審 議 の 経 過 当 審 査 会 は, 本 件 諮 問 事 件 について, 以 下 のとおり, 調 査 審 議 を 行 った 1 平 成 24 年 6 月 25 日 諮 問 の 受 理 2 同 日 諮 問 庁 から 理 由 説 明 書 を 収 受 3 同 年 7 月 5 日 審 議 4 同 月 24 日 審 査 請 求 人 から 意 見 書 を 収 受 5 同 月 27 日 審 査 請 求 人 から 意 見 書 ( 補 足 )を 収 受 6 平 成 25 年 5 月 16 日 本 件 対 象 文 書 の 見 分 及 び 審 議 7 同 年 6 月 14 日 審 議 第 5 審 査 会 の 判 断 の 理 由 1 本 件 対 象 文 書 について 本 件 開 示 請 求 は, 平 成 20 事 務 年 度 の 特 定 路 線 価 評 定 調 書 兼 決 議 書 のうち, 特 定 路 線 価 を 評 定 したもの ( 本 件 対 象 文 書 )の 開 示 を 求 めるものである 処 分 庁 は, 本 件 対 象 文 書 の 一 部 について, 法 5 条 1 号 及 び2 号 に 該 当 すると して 不 開 示 とする 原 処 分 を 行 い, 諮 問 庁 も 原 処 分 を 妥 当 としている 審 査 請 求 人 は, 不 開 示 部 分 のうち, 別 紙 に 掲 げる 不 開 示 部 分 ( 審 査 請 求 対 象 部 分 )の 開 示 を 求 めていることから, 以 下, 本 件 対 象 文 書 を 見 分 した 結 果 に 基 づき, 当 該 部 分 の 不 開 示 情 報 該 当 性 について 検 討 する 2 不 開 示 情 報 該 当 性 について 当 審 査 会 において, 本 件 対 象 文 書 を 見 分 したところ, 本 件 対 象 文 書 は, 特 定 個 人 が 相 続 税 の 申 告 のため, 路 線 価 の 設 定 されていない 道 路 のみに 接 している 土 地 を 評 価 する 必 要 があるとして 行 った 当 該 道 路 の 特 定 路 線 価 の 設 定 の 申 出 に 対 し, 当 該 道 路 の 特 定 路 線 価 を 設 定 した 特 定 路 線 価 評 定 調 書 兼 決 議 書 と 題 7
する 決 裁 文 書 一 式 であり, 審 査 請 求 対 象 部 分 には, 特 定 市 町 村 の 名 称 が 記 載 さ れていることが 認 められる そして, 当 該 市 町 村 名 は, 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 特 定 個 人 の 氏 名 や 住 所 とともに 記 載 されている 本 件 対 象 文 書 の 一 部 であることから, 当 該 特 定 個 人 の 法 5 条 1 号 本 文 前 段 の 個 人 に 関 する 情 報 に 該 当 すると 認 められる (1) 法 5 条 1 号 ただし 書 該 当 性 特 定 市 町 村 は, 諮 問 庁 が 上 記 第 3の3で 説 明 するとおり, 倉 敷 税 務 署 が 管 轄 する3 市 町 ( 倉 敷 市 の 一 部, 総 社 市 及 び 都 窪 郡 早 島 町 )のうちの 一 つであ り, 当 該 特 定 市 町 村 が 存 在 することは 公 になっている 情 報 であるが,このこ とから, 本 件 対 象 文 書 に 記 載 されていることまでもが 公 にされているとは 認 められないので, 不 開 示 とされた 特 定 市 町 村 の 名 称 については, 法 5 条 1 号 ただし 書 イの 法 令 の 規 定 により 又 は 慣 行 として 公 にされ, 又 は 公 にすること が 予 定 されている 情 報 であると 言 うことはできず, 同 号 ただし 書 ロ 及 びハに 該 当 する 事 情 も 認 められない (2) 法 6 条 2 項 の 部 分 開 示 の 可 否 ア 特 定 市 町 村 の 名 称 は,それ 自 体 から 個 人 を 識 別 することができる 情 報 で はないが, 諮 問 庁 は, 既 に 開 示 されている 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価, 交 通 接 近 条 件 の 最 寄 駅 (バス 停 )までの 道 路 距 離, 行 政 的 条 件 の 用 途 地 域 等 の 制 限 などの 他 の 情 報 と 照 合 することにより, 特 定 路 線 価 により 評 価 す る 土 地 等 の 所 在 地 が 特 定 され, 特 定 個 人 を 識 別 することが 可 能 になると 説 明 する 本 件 対 象 文 書 を 見 分 したところ, 特 定 市 町 村 の 名 称 を 公 にしても, 直 ち に 特 定 路 線 価 により 評 価 する 土 地 等 の 所 在 地 が 特 定 されると 解 することが できないことから,この 点 について, 当 審 査 会 事 務 局 職 員 をして 諮 問 庁 に 確 認 させたところ, 諮 問 庁 は, 次 のとおり 説 明 する 特 定 路 線 価 の 設 定 申 出 は, 相 続 人 等 が 相 続 税 等 の 申 告 のため, 国 税 当 局 が 相 続 税 財 産 評 価 に 関 する 基 本 通 達 に 基 づき 定 めた 路 線 価 ( 以 下 路 線 価 という )が 設 定 されていない 道 路 のみに 接 している 土 地 等 を 評 価 するため に 行 うものであり, 公 になっている 相 続 税 財 産 評 価 路 線 価 図 と 固 定 資 産 税 路 線 価 図 を 照 合 することにより, 特 定 路 線 価 の 設 定 対 象 候 補 となる 道 路 を 特 定 することができる 本 件 の 場 合, 特 定 市 町 村 の 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価 図 等 を 検 討 し たところ, 特 定 市 町 村 の 名 称 を 公 にした 場 合, 公 になっている 特 定 市 町 村 の 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価 及 び 平 成 20 年 分 の 路 線 価 の 設 定 状 況 並 びに 既 に 開 示 されている 特 定 路 線 価 を 設 定 する 道 路 及 び 基 準 とする 8
路 線 の 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価 から, 特 定 路 線 価 の 設 定 対 象 候 補 となる 道 路 のうち, 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 土 地 の 所 在 地 が 面 する 道 路 を 特 定 することが 可 能 である イ そこで, 当 審 査 会 事 務 局 職 員 をして 諮 問 庁 が 検 討 した 特 定 市 町 村 の 平 成 20 年 度 固 定 資 産 税 路 線 価 図 等 の 提 示 を 求 め 確 認 させたところ, 諮 問 庁 が 上 記 アで 説 明 するとおり, 特 定 市 町 村 の 名 称 を 公 にした 場 合, 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 土 地 等 の 所 在 地 が 面 する 道 路 を 特 定 することが 可 能 であ ると 認 められる そして, 当 該 道 路 が 特 定 されると,その 所 在 地 情 報 と 不 動 産 登 記 簿 等 の 情 報 を 照 合 することにより, 当 該 道 路 に 面 する 土 地 の 所 有 者 を 識 別 するこ とができるものと 認 められ, 近 隣 住 民 等 一 定 の 関 係 者 には, 既 に 開 示 され ている 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 土 地 の 利 用 状 況 や 地 積 などの 情 報 によ り, 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 特 定 個 人 を 識 別 することが 可 能 であると 解 される ウ そうすると, 特 定 市 町 村 の 名 称 の 部 分 開 示 の 可 否 は, 近 隣 住 民 等 一 定 の 関 係 者 に 知 られることにより, 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 特 定 個 人 の 権 利 利 益 が 侵 害 されるおそれがあるか 否 かで 判 断 することになる 本 件 対 象 文 書 のうち, 原 処 分 で 開 示 された 部 分 の 記 載 から, 特 定 個 人 は, 相 続 税 の 申 告 のため 特 定 路 線 価 の 設 定 の 申 出 を 行 っていると 認 められると ころ, 一 般 に, 相 続 税 の 申 告 書 は,5000 万 円 に 法 定 相 続 人 一 人 当 たり 1000 万 円 を 加 えた 額 ( 平 成 6 年 1 月 1 日 の 相 続 税 申 告 から 適 用 )であ る 基 礎 控 除 額 を 超 える 場 合 に 提 出 しなければならないのであるから,この 相 続 税 申 告 の 基 礎 控 除 額 からすれば, 相 続 税 の 申 告 のため 特 定 路 線 価 の 設 定 を 申 し 出 た 特 定 個 人 は, 相 当 高 額 な 財 産 を 相 続 する 者 であると 言 うこと ができる したがって, 当 該 特 定 市 町 村 の 名 称 を 公 にした 場 合, 特 定 個 人 が 相 当 高 額 な 財 産 を 相 続 する 者 と 受 けとられることにより, 当 該 特 定 個 人 の 権 利 利 益 が 害 されるおそれを 否 定 することはできないことから,これを 部 分 開 示 することはできない 3 審 査 請 求 人 のその 他 の 主 張 について 審 査 請 求 人 のその 他 の 主 張 は, 当 審 査 会 の 上 記 判 断 を 左 右 するものではない 4 本 件 一 部 開 示 決 定 の 妥 当 性 について 以 上 のことから, 本 件 対 象 文 書 につき,その 一 部 を 法 5 条 1 号 及 び2 号 に 該 当 するとして 不 開 示 とした 決 定 について, 審 査 請 求 人 が 開 示 すべきとする 部 分 は, 同 条 1 号 に 該 当 すると 認 められるので,これを 不 開 示 としたことは 妥 当 で 9
あると 判 断 した ( 第 4 部 会 ) 委 員 森 田 明, 委 員 大 橋 洋 一, 委 員 中 曽 根 玲 子 10
別 紙 ( 審 査 請 求 対 象 部 分 ) 本 件 対 象 文 書 の7 枚 目 及 び8 枚 目 別 紙 特 定 路 線 価 により 評 価 する 土 地 等 及 び 特 定 路 線 価 を 設 定 する 道 路 の 所 在 地, 状 況 等 の 明 細 書 のうち, その 他 ( 参 考 事 項 ) 欄 の 不 開 示 部 分 11