諮 問 庁 : 国 立 大 学 法 人 大 阪 大 学 諮 問 日 : 平 成 18 年 10 月 12 日 ( 平 成 18 年 ( 独 個 ) 諮 問 第 13 号 ) 答 申 日 : 平 成 19 年 7 月 6 日 ( 平 成 19 年 度 ( 独 個 ) 答 申 第 7 号 ) 事 件 名 : 本 人 に 係 る 放 射 線 カルテ 等 の 中 で 放 射 線 科 の 医 師 が 診 療 内 容 を 記 載 していると 認 められる 部 分 の 開 示 決 定 に 関 する 件 ( 保 有 個 人 情 報 の 特 定 ) 答 申 書 第 1 審 査 会 の 結 論 特 定 個 人 が 歯 学 部 附 属 病 院 の 放 射 線 科 で 診 察 を 受 けた 特 定 診 察 日 ごと に 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテ ( 以 下 本 件 請 求 保 有 個 人 情 報 という )の 開 示 請 求 につき, 放 射 線 カル テ, 外 来 カルテ 及 び 入 院 カルテ の 中 で, 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 していると 認 められる 部 分 ( 以 下 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 と いう )を 特 定 し, 開 示 した 決 定 については, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 を 特 定 したことは, 妥 当 である 第 2 異 議 申 立 人 の 主 張 の 要 旨 1 異 議 申 立 ての 趣 旨 本 件 異 議 申 立 ての 趣 旨 は, 独 立 行 政 法 人 等 の 保 有 する 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 ( 以 下 法 という )12 条 1 項 の 規 定 に 基 づく 開 示 請 求 に 対 し, 平 成 18 年 7 月 25 日 付 け 阪 大 総 評 第 3-6 号 により 国 立 大 学 法 人 大 阪 大 学 ( 以 下 大 阪 大 学, 処 分 庁 又 は 諮 問 庁 という )が 行 っ た 開 示 決 定 ( 以 下 原 処 分 という )についてその 取 消 しを 求 めるとい うものである 2 異 議 申 立 ての 理 由 異 議 申 立 人 の 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は, 異 議 申 立 書 及 び 意 見 書 の 記 載 によると,おおむね 以 下 のとおりである (1) 異 議 申 立 書 原 処 分 を 取 り 消 し, 本 件 異 議 申 立 てに 係 る 開 示 請 求 ( 以 下 本 件 開 示 請 求 という )の 内 容 に 沿 った 処 分 を 求 める 処 分 庁 は, 開 示 請 求 の 内 容 を 無 視 して 原 処 分 をしている 請 求 内 容 は, 診 察 日 ごとに 放 射 線 科 医 師 が 診 療 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテ の 開 示 を 求 めるものである ところが, 開 示 されたカルテは, 診 療 内 容 を 記 載 したものではなく,ゴム 印 の 日 付 だけのものや, ( 印 の 部 分 は, 放 の 文 字 を 丸 で 囲 んだもの 以 下 同 じ )のゴム 印 を 押 したも のが 多 く,しかも 枚 数 は12 枚 で14 日 分 のみである 本 件 開 示 請 求 に
は 診 察 日 一 覧 表 も 添 付 して 提 出 しているのであって, 診 察 日 ごとに 診 療 録 の 存 否 を 記 載 し, 存 在 するものは 開 示, 作 成 していない 場 合 や 紛 失 し ている 場 合 はその 理 由 を 記 して 不 存 在 等 の 説 明 責 任 を 果 たした 処 分 をす べきである (2) 意 見 書 本 件 の 開 示 請 求 の 内 容 は, 明 確 に 放 射 線 科 の 医 師 が 診 療 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテ と 特 定 している カルテとは 歯 科 医 師 法 2 3 条 で 歯 科 医 師 は, 診 療 をしたときは, 遅 滞 なく 診 療 に 関 する 事 項 を 診 療 録 に 記 載 しなければならない と 義 務 付 けている 診 療 録 のことで ある 本 件 開 示 請 求 のときに 添 付 している 放 射 線 科 受 診 日 表 は, 私 が 放 射 線 科 を 受 診 し, 放 射 線 技 師 ではなく 医 師 に 診 療 してもらった 日 を まとめている よって, 諮 問 庁 は, 歯 科 医 師 法 に 基 づき 作 成 された 診 療 録 を, 添 付 した 受 診 日 ごとに 存 在 すれば 開 示 すれば 良 く, 存 在 しなけれ ば, 存 在 しない 日 ごとにその 理 由 を 紛 失 か 作 成 していないかを 明 確 にし て 不 存 在 とすれば 足 りることである 文 書 を 明 確 に 特 定 して 開 示 請 求 し ているにもかかわらず, 処 分 庁 はその 内 容 とかけ 離 れたおよそ 診 療 録 と は 言 えないゴム 印 を 押 しただけのものや, 受 診 日 ごとに 対 応 しないで 一 括 で 開 示 をしている したがって, 原 処 分 は, 開 示 請 求 の 内 容 にそぐわ ない 処 分 であり,しかも,すべてを 開 示 したように 振 る 舞 っている こ のまま 処 分 庁 の 原 処 分 が 確 定 されると, 処 分 庁 は 放 射 線 科 診 療 録 は 全 て 存 在 していて, 全 て 開 示 した と 証 拠 に 使 うことが 予 想 される 誤 解 されないようにするためには, 正 確 に 内 容 を 記 載 した 処 分 がなされる べきである 診 療 録 以 外 のものを 診 療 録 として 開 示 決 定 したことは 不 当 である 処 分 を 取 り 消 し, 法 14 条 の 開 示 請 求 に 沿 った 開 示 をし,でき ない 場 合 は, 法 18 条 2 項 に 基 づく 正 確, 的 確 な 処 分 を 求 める 第 3 諮 問 庁 の 説 明 の 要 旨 異 議 申 立 人 は, 大 阪 大 学 が 行 った 全 部 開 示 決 定 ( 注 : 異 議 申 立 人 は, 部 分 開 示 決 定 と 誤 認 しているようである )について, 開 示 されたカルテは 診 察 内 容 を 記 載 したものではなく,しかも44 日 分 のうちの14 日 分 のみ であることから, 原 処 分 を 取 り 消 し, 本 件 開 示 請 求 の 内 容 に 沿 った 処 分 を するよう 主 張 しているが, 大 阪 大 学 の 意 見 は 次 のとおりである (1) 本 件 開 示 請 求 に 先 立 ち, 異 議 申 立 人 から, 平 成 18 年 5 月 8 日 付 け で 阪 大 歯 学 部 附 属 病 院 が 保 有 する 同 人 に 係 る 平 成 6 年 2 月 28 日 か ら 平 成 8 年 12 月 9 日 までの 放 射 線 関 係 記 録 ( 診 察 内 容 を 記 載 した 放 射 線 カルテを 含 む ) 一 式 の 開 示 請 求 があり, 大 阪 大 学 では 特 定 し た1 放 射 線 カルテ,2 外 来 カルテ,3 入 院 カルテ,4CT,MRI, レントゲン 検 査 報 告 書,5レントゲン 保 管 袋 の 文 書 について 全 部 開 示 決 定 をし, 平 成 18 年 6 月 16 日 に 閲 覧 に 供 するとともに 写 しを 交 付
した (2)その 後, 平 成 18 年 6 月 24 日 付 け 本 件 開 示 請 求 があったが, 本 件 開 示 請 求 で 特 定 している 放 射 線 科 の 診 察 日 を 含 んだ 期 間 の 放 射 線 関 係 記 録 ( 診 察 内 容 を 記 載 した 放 射 線 カルテを 含 む )は, 既 に 上 記 のと おりすべて 開 示 していることから, 既 に 開 示 されたカルテ 以 外 に 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 したカルテは 存 在 しないこと,また, 本 件 診 察 日 の 一 部 については, 放 射 線 科 医 師 が 確 かに 診 察 内 容 を 記 載 し ていると 認 められることを 明 らかにするために, 改 めて 該 当 部 分 を 特 定 して, 全 部 開 示 したものである (3)よって, 本 件 開 示 請 求 に 関 する 原 処 分 は, 適 正 であると 考 える 第 4 調 査 審 議 の 経 過 当 審 査 会 は, 本 件 諮 問 事 件 について, 以 下 のとおり, 調 査 審 議 を 行 った 1 平 成 18 年 10 月 12 日 諮 問 の 受 理 2 同 日 諮 問 庁 から 理 由 説 明 書 を 収 受 3 同 年 11 月 13 日 異 議 申 立 人 から 意 見 書 を 収 受 4 平 成 19 年 1 月 17 日 審 議 5 同 年 5 月 30 日 諮 問 庁 の 職 員 ( 国 立 大 学 法 人 大 阪 大 学 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 委 員 会 副 委 員 長 ほか)からの 口 頭 説 明 の 聴 取 6 同 年 6 月 27 日 審 議 7 同 年 7 月 4 日 審 議 第 5 審 査 会 の 判 断 の 理 由 1 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 について 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 は, 異 議 申 立 人 からの 下 記 (1)の 開 示 請 求 書 に よる 開 示 請 求 に 対 して, 処 分 庁 が 特 定 した 下 記 (2)の 文 書 であり, 一 定 の 範 囲 のカルテのうちの 当 該 部 分 を 特 定 し, 全 部 開 示 としたものである (1) 保 有 個 人 情 報 開 示 請 求 書 特 定 個 人 が 歯 学 部 附 属 病 院 の 放 射 線 科 で 診 察 を 受 けた 特 定 診 察 日 ごと に 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテ (2) 保 有 個 人 情 報 部 分 開 示 決 定 通 知 書 放 射 線 カルテ, 外 来 カルテ 及 び 入 院 カルテ の 中 で, 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 していると 認 められる 部 分 これに 対 し, 異 議 申 立 人 は, 本 件 請 求 保 有 個 人 情 報 として, 診 察 日 ごと に 放 射 線 科 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテの 開 示 を 求 め たのに 対 し,14 日 分 のみの 開 示 であり, 開 示 請 求 した 内 容 に 基 づく 処 分 になっていないため, 原 処 分 を 取 り 消 し, 本 件 開 示 請 求 の 内 容 に 沿 った 処 分 を 求 める 旨 の 異 議 申 立 てをしているため, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 の 特 定 の 妥 当 性 について 検 討 する
2 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 の 特 定 について 処 分 庁 が 特 定 した 本 件 開 示 請 求 に 係 る 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 は, 放 射 線 カルテ, 外 来 カルテ 及 び 入 院 カルテ の 中 で, 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 していると 認 められる 部 分 である 諮 問 庁 の 理 由 説 明 書 によると, 異 議 申 立 人 は, 本 件 開 示 請 求 に 先 立 ち, 平 成 18 年 5 月 8 日 付 け 保 有 個 人 情 報 開 示 請 求 書 により, 阪 大 歯 学 部 附 属 病 院 が 保 有 する 異 議 申 立 人 の 平 成 6 年 2 月 28 日 から 平 成 8 年 12 月 9 日 までの 放 射 線 関 係 記 録 ( 診 察 内 容 を 記 載 した 放 射 線 カルテも 含 む ) 一 式 の 開 示 請 求 を 行 い,これに 対 して, 処 分 庁 が,1 放 射 線 カルテ,2 外 来 カルテ,3 入 院 カルテ,4CT,MRI,レントゲン 検 査 報 告 書,5レ ントゲン 保 管 袋 を 特 定 の 上, 全 部 開 示 決 定 をし, 閲 覧 に 供 するとともに 写 しを 交 付 し,そこで, 諮 問 庁 は, 既 に 本 件 開 示 請 求 に 係 る 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 はすべて 開 示 しているとした 上 で, 本 件 開 示 請 求 に 対 しては, 異 議 申 立 人 が 請 求 する 放 射 線 科 の 医 師 が 診 察 内 容 を 記 載 していると 認 められる 部 分 を 改 めて 特 定 し, 全 部 開 示 したとしている これに 対 し, 異 議 申 立 人 は, 異 議 申 立 書 で 請 求 内 容 は, 診 察 日 ごとに 放 射 線 科 医 師 が 診 療 内 容 を 記 載 した 延 べ44 日 分 のカルテの 開 示 を 求 めて いる ところが 開 示 されたカルテは, 診 療 内 容 を 記 載 したものではなく, ゴム 印 の 日 付 だけのものや, のゴム 印 を 押 したものが 多 く,しかも 枚 数 は12 枚 で14 日 分 のみである と 主 張 している 異 議 申 立 人 の 主 張 に 対 して, 諮 問 庁 は, 口 頭 説 明 において, 次 のように 説 明 している 1 異 議 申 立 人 が 特 定 している44 日 は, 開 示 請 求 の 際 に 添 付 してきた 放 射 線 科 受 診 日 表 から,いずれも 歯 科 放 射 線 科 にて 受 診 して, 何 らか の 検 査 を 受 けた 日 であることが 分 かる 実 際,レントゲン 保 管 袋 にお ける 記 録 によれば,レントゲン 検 査 のほか,CT 検 査,MRI 検 査 が 行 われている 歯 科 放 射 線 科 における 検 査 業 務 には, 各 診 療 科 からの 検 査 依 頼 に 基 づき, 診 療 放 射 線 技 師 が 単 に 撮 影 のみを 行 うレントゲン 検 査 と, 歯 科 放 射 線 科 の 歯 科 医 師 が 行 う 診 療 行 為 を 伴 うCT 検 査,MRI 検 査 等 が あるところ,レントゲン 検 査 の 場 合 には, 歯 科 放 射 線 科 の 歯 科 医 師 に よる 診 療 行 為 がないため, 歯 科 医 師 が 記 載 を 行 うことはない 以 上 の 認 識 に 基 づいてカルテを 見 分 したところ, 明 らかに 歯 科 放 射 線 科 の 歯 科 医 師 が 記 載 したと 認 められるもの 以 外, 特 定 された 日 付 の 多 くは 単 に とだけ 記 載 されており,それ 以 上 に 簡 単 な 記 載 もないが, であっても, 当 該 日 の 検 査 がCT 検 査,MRI 検 査 である 場 合 は, 歯 科 放 射 線 科 の 歯 科 医 師 が 検 査 して 記 載 したと 認 めるのが 妥 当 である ことから, 当 該 日 付 のカルテは 当 該 文 書 として 特 定 することとした
その 結 果, 特 定 されたのが14 日 分 の 日 付 のカルテである 2 のゴム 印 を 押 しただけの 日 について, 当 該 日 に 歯 科 医 師 が 行 う 診 療 行 為 であるCT 検 査,MRI 検 査 が 実 施 されたことを 根 拠 にして 保 有 個 人 情 報 の 特 定 を 行 っているが, 診 療 内 容 の 記 載 については, の ゴム 印 だけであっても 記 載 方 法 としては 問 題 がなかった このような 諮 問 庁 の 説 明 は, 合 理 性 があると 認 められ, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 の 特 定 は 妥 当 であると 認 められる 3 その 他 の 異 議 申 立 人 の 主 張 について 異 議 申 立 人 は,その 他 種 々 主 張 するが,いずれも 当 審 査 会 の 結 論 を 左 右 するものではない 4 本 件 開 示 決 定 の 妥 当 性 以 上 のことから, 本 件 請 求 保 有 個 人 情 報 の 開 示 請 求 につき, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 を 特 定 し, 開 示 した 決 定 については, 大 阪 大 学 において, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 の 外 に 開 示 請 求 の 対 象 として 特 定 すべき 情 報 があるもの とは 認 められないので, 本 件 対 象 保 有 個 人 情 報 を 特 定 したことは, 妥 当 で あると 判 断 した ( 第 1 部 会 ) 委 員 大 喜 多 啓 光, 委 員 村 上 裕 章, 委 員 吉 岡 睦 子