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(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

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主 文 1 広 島 地 方 海 難 審 判 所 が, 同 庁 平 成 年 広 審 第 号 貨 物 船 A 漁 船 B 衝 突 事 件 について, 平 成 21 年 6 月 18 日, 原 告 に 対 し 言 い 渡 した 原 告 の 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 裁 決 を 取 り 消 す 2 訴 訟 費 用 は 被 告 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 請 求 主 文 同 旨 第 2 事 案 の 概 要 1 事 案 の 要 旨 本 件 は, 海 技 士 である 原 告 において, 広 島 地 方 海 難 審 判 所 が 同 庁 平 成 年 広 審 第 号 貨 物 船 A 漁 船 B 衝 突 事 件 について 平 成 21 年 6 月 18 日 原 告 に 対 して 言 い 渡 した 原 告 の 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 裁 決 ( 以 下 本 件 裁 決 という )が 誤 った 根 拠 に 基 づいてされたものであるとして,そ の 取 消 しを 求 めた 事 案 である 2 前 提 事 実 ( 当 事 者 間 に 争 いのない 事 実 及 び 証 拠 により 容 易 に 認 定 することが できる 事 実 ) (1) 原 告 は, 昭 和 年 生 まれで, 長 崎 県 C 学 校 を 卒 業 し, 三 級 海 技 士 ( 航 海 ) の 海 技 免 状 を 受 有 し, 貨 物 船 A( 以 下 A という )に 二 等 航 海 士 として 乗 り 組 み, 航 海 中,00 時 から04 時 ( 以 下, 時 間 は24 時 間 表 示 による ), 12 時 から16 時 までの 各 4 時 間, 船 橋 において, 操 舵 に 従 事 する 甲 板 手 D ( 以 下 D 甲 板 手 という )と 共 に 航 海 当 直 につき, 同 船 の 操 船 に 従 事 し た 者 である (2) 衝 突 事 故 ( 以 下 本 件 事 故 という )の 発 生 ア 本 件 裁 決 の 認 定 にかかる 衝 突 日 時 平 成 年 月 日 00 時 34 分 丁 度 ( 以 下, 本 件 事 故 発 生 当 日 について - 1 -

は, 原 則 として 日 付 の 記 載 を 省 略 し, 時 刻 のみを 表 示 する ) イ 本 件 裁 決 の 認 定 にかかる 衝 突 地 点 α 東 部,β 灯 台 から 真 方 位 ( 真 北 を0 度 として360 度 の 分 法 で 示 す 方 位 以 下, 方 位 の 度 数 のみをもって 表 すこともある )200 度, 距 離 1. 54 海 里 (2852m 1 海 里 は1852m, 以 下,1 海 里 を 1マイル とも 表 示 する )の 地 点 ウ 事 故 態 様 Aの 船 首 と 左 舷 前 方 から 接 近 中 の 漁 船 B( 以 下 B という )の 右 舷 船 体 中 央 部 が 衝 突 した 事 故 エ 船 種 船 名, 設 備 及 び 当 日 の 状 況 (ア) A 船 籍 港 は 大 阪 府 大 阪 市,E 株 式 会 社 及 びF 株 式 会 社 共 有 の 総 ト ン 数 4,428トン, 全 長 120m, 幅 20m, 深 さ13.95 mで 出 力 7,060キロワットのディーゼル 機 関 を 有 し, 自 動 車 輸 送 に 従 事 する 鋼 製 の 船 首 船 橋 型 貨 物 船 であり, 乗 組 員 はG 船 長 及 び 原 告 外 9 名, 積 荷 は 車 両 407 台 他 を 積 載 し, 平 成 年 月 日 17 時 00 分 γ 港 を 発 しδ 海 峡 経 由 で, 愛 知 県 ε 港 に 向 かっ ていた (イ) B 主 たる 根 拠 地 は 香 川 県 さぬき 市,H( 以 下 H 又 は H 船 長 という ) 所 有, 総 トン 数 4.9トン, 長 さ11.10m, 幅 2. 95m, 深 さ1.12mで 出 力 48キロワットのディーゼル 機 関 を 有 し, 船 体 中 央 部 に 操 舵 室 を 設 けた 底 びき 網 漁 業 に 従 事 するF RP 製 漁 船 であり, 小 型 船 舶 操 縦 免 許 を 有 するHが1 人 で 乗 船 し, 操 業 の 目 的 で 平 成 年 月 日 10 時 00 分 香 川 県 ζ 漁 港 内 の 係 留 地 を 発 し,η 南 方 の 漁 場 に 向 かい, 操 業 を 終 え 揚 網 のうえ 漁 港 に 向 かっていた オ 衝 突 結 果 Aは, 船 首 部 及 び 左 舷 側 に 擦 過 傷 を 生 じた 程 度 であったが, - 2 -

Bは, 右 舷 側 中 央 部 に 破 口 を 生 じて 転 覆 し,H 船 長 ( 昭 和 年 月 日 生 )は 溺 死 した (3) 広 島 地 方 海 難 審 判 所 は, 平 成 21 年 6 月 18 日, 概 要, 後 記 アないしコ の 事 実 経 過 を 認 定 した 上, 航 法 の 適 用 につき, 両 船 の 船 間 距 離 が1.35 海 里 (2500m)となった 衝 突 4 分 前 の00 時 30 分 から1 分 前 の00 時 3 3 分 の3 分 間 の 両 船 の 方 位 変 化 が14 度 であるので, 両 船 は 互 いに 進 路 を 横 切 るも 衝 突 のおそれがないから, 海 上 予 防 法 ( 以 下 予 防 法 という )1 5 条 の 横 切 り 船 の 航 法 は 適 用 されず, 両 船 が 無 難 に 航 過 し 終 えるまでその 針 路 及 び 速 度 を 保 持 して 進 行 することにより, 新 たな 衝 突 のおそれを 生 じさせ ないよう 注 意 することが 船 員 の 常 務 であるから, 本 件 は, 予 防 法 38 条 及 び 39 条 の 船 員 の 常 務 によって 律 するのが 相 当 であるとし, 本 件 衝 突 は, 夜 間,α 東 口 において, 両 船 が 互 いに 進 路 を 横 切 るも 衝 突 のおそれがなく, 無 難 に 航 過 する 態 勢 で 接 近 中, 東 行 中 のAが, 見 張 り 不 十 分 で, 前 路 を 右 方 に 横 切 る 態 勢 で 南 下 中 のBに 対 して, 右 転 して 新 たな 衝 突 のおそれを 生 じさせ たことによって 発 生 したが,Bが, 衝 突 を 避 けるための 措 置 をとらなかった ことも 一 因 をなすものである I 受 審 人 ( 以 下 原 告 という )は, 夜 間, α 東 口 を 東 行 する 場 合, 左 舷 前 方 の 他 船 を 見 落 とすことのないよう, 左 舷 前 方 の 見 張 りを 十 分 に 行 うべき 注 意 義 務 があった しかるに, 同 人 は, 自 船 は θ 海 峡 ではなくδ 海 峡 に 向 かうので 左 舷 前 方 の 他 船 に 対 しては 余 り 気 を 配 らなくても 大 丈 夫 と 思 い, 船 首 方 に 認 めた 数 隻 の 漁 船 の 動 向 に 気 をとられ, 左 舷 前 方 の 見 張 りを 十 分 に 行 わなかった 職 務 上 の 過 失 により,Bを 見 落 と し, 近 距 離 に 接 近 してから 同 船 を 初 認 して 驚 き, 自 船 の 船 首 方 を 無 難 に 航 過 する 態 勢 のBに 対 して, 右 転 して 新 たな 衝 突 のおそれを 生 じさせて 同 船 との 衝 突 を 招 き, 自 船 の 船 体 に 擦 過 傷 を 生 じさせ,Bを 転 覆 させたほか,H 船 長 を 溺 水 により 死 亡 させるに 至 った として, 原 告 につき, 海 難 審 判 法 第 3 条 の 規 定 により, 同 法 第 4 条 第 1 項 第 2 号 を 適 用 し, 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の - 3 -

業 務 を1 箇 月 停 止 する 旨 の 裁 決 ( 本 件 裁 決 )を 言 い 渡 した( 甲 1) ( 事 実 経 過 ) ア 原 告 は,00 時 29 分,β 灯 台 から 真 方 位 249 度,1.94 海 里 (3 593m)の 地 点 において, 針 路 を116 度 に 定 め, 甲 板 手 を 手 動 操 舵 に 就 け,レーダーを 使 用 しながら17.5ノットの 速 力 ( 対 地 速 力, 以 下 同 じ 1ノットは 時 速 1 海 里 )で 続 航 した イ 原 告 は,00 時 30 分,β 灯 台 から214 度 1.75 海 里 (3241m) の 地 点 に 達 したとき, 左 舷 船 首 21 度 1.35 海 里 (2500m)にBの 表 示 する 白, 緑 2 灯 と 作 業 灯 を, 通 常 の 見 張 りを 行 っていれば 容 易 に 視 認 し 得 る 状 況 にあったが, 自 船 はθ 海 峡 ではなくδ 海 峡 に 向 かうので 左 舷 前 方 の 他 船 に 対 しては 余 り 気 を 配 らなくても 大 丈 夫 と 思 い, 船 首 方 に 認 めた 数 隻 の 漁 船 の 動 向 に 気 をとられ, 左 舷 前 方 の 見 張 りを 十 分 に 行 わなかった ので,Bの 存 在 に 気 付 かなかった ウ 原 告 は,00 時 30 分 わずか 過 ぎ,レーダーレンジを3 海 里 から1.5 海 里 に 切 り 替 えたとき, 左 舷 船 首 21 度 1.30 海 里 (2407m)にB のレーダー 映 像 を 認 めたが,この 映 像 は 北 西 に 向 かうものだと 思 い, 目 視 による 確 認 を 行 わなかったので, 依 然,Bの 存 在 に 気 付 かなかった エ 原 告 は,その 後,Bが 自 船 の 進 路 を 右 方 に 横 切 るも,その 方 位 が 右 方 に 明 確 に 変 化 して 衝 突 のおそれがなく,このままの 針 路 及 び 速 力 を 保 持 して 進 行 すれば, 同 船 が 自 船 の 船 首 方 0.2 海 里 (370m)ばかりを 無 難 に 航 過 する 状 況 にあったが,Bを 見 落 としたまま 接 近 していたので,このこ とに 気 付 かなかった オ 原 告 は,00 時 33 分,β 灯 台 から212 度,1.40 海 里 (2593 m)の 地 点 において, 甲 板 手 からβの 通 過 時 刻 を 海 図 室 で 日 誌 に 記 入 する ので 自 動 操 舵 に 切 り 替 える 旨 の 報 告 を 受 けたとき,ふと 前 方 を 見 て 左 舷 船 首 7 度 0.34 海 里 (630m)にBの 緑 灯 と 作 業 灯 を 初 めて 視 認 した - 4 -

カ そして, 原 告 は,Bが 自 船 の 進 路 を 右 方 に 横 切 るも 衝 突 のおそれがなく, 無 難 に 航 過 する 状 況 で 接 近 していたが, 同 船 を 初 認 したのが 近 距 離 に 接 近 してからであったので 緊 張 し, 衝 突 のおそれの 有 無 を 判 断 する 時 間 的 な 余 裕 が 十 分 にないまま,00 時 33 分 わずか 過 ぎ,Bの 船 首 方 を 横 切 るつも りで, 探 照 灯 を 照 射 したのち 自 ら 舵 を 手 動 に 切 り 替 えて 右 舵 10 度 をとっ たところ, 同 船 の 前 路 に 向 けて 回 頭 を 始 め,Bに 対 して 新 たな 衝 突 のおそ れを 生 じさせた キ 原 告 は,00 時 33 分 半 少 し 前, 甲 板 手 に 右 舵 20 度 を 令 するとともに 汽 笛 で 長 音 1 回 を 吹 鳴 し,00 時 34 分 少 し 前,Bが 左 舷 船 首 至 近 距 離 に 接 近 したので 衝 突 の 危 険 を 感 じ, 汽 笛 で 長 音 1 回 を 吹 鳴 するとともに 右 舵 一 杯 を 令 したが 及 ばず,Aは,00 時 34 分 β 灯 台 から200 度 1.54 海 里 (2852m)の 地 点 において 右 回 頭 中, 原 速 力 のままその 船 首 が1 50 度 向 いたところ, 左 舷 船 首 部 が,Bの 右 舷 中 央 部 に 後 方 から65 度 の 角 度 で 衝 突 した ク H 船 長 は,00 時 30 分, 操 業 を 終 えて 帰 航 するためβ 灯 台 から190 度 0.97 海 里 (1796m)の 地 点 を 発 進 し, 針 路 をιに 向 首 する21 5 度 に 定 め, 機 関 を 全 速 力 前 進 にかけて9.0ノットの 速 力 で, 航 行 中 の 動 力 船 が 表 示 する 灯 火 及 びヤグラ 上 に 作 業 灯 を 点 灯 し, 自 動 操 舵 により 進 行 した ケ H 船 長 は, 発 進 したとき 右 舷 船 首 60 度 1.35 海 里 (2500m)に Aの 表 示 する 白, 白, 紅 3 灯 を 視 認 でき,その 後 同 船 が 自 船 の 進 路 を 左 方 に 横 切 るも,その 方 位 が 右 方 に 明 確 に 変 化 して 衝 突 のおそれがなく,この ままの 針 路 及 び 速 力 を 保 持 すればAの 船 首 方 を 無 難 に 航 過 する 状 況 下, 船 尾 甲 板 上 で 漁 獲 物 の 整 理 等 を 行 いながら 続 航 した コ H 船 長 は,00 時 33 分,β 灯 台 から198 度 1.39 海 里 (2574 m)の 地 点 に 達 したとき,Aが 右 舷 船 首 74 度 0.34 海 里 (630m) - 5 -

となり, 同 船 の 船 首 方 0.2 海 里 (370m)ばかりのところを 無 難 に 航 過 しようとしたところ,00 時 33 分 わずか 過 ぎAが 自 船 の 前 路 に 向 けて 右 回 頭 を 始 め, 新 たな 衝 突 のおそれを 生 じさせたが, 機 関 を 停 止 するなど 衝 突 を 避 けるための 措 置 をとることなく 進 行 中,Bは, 原 針 路, 原 速 力 の まま, 前 示 のとおり 衝 突 した (4) 本 件 事 故 につき, 高 松 海 上 保 安 部 は,Aで 見 張 りを 担 当 していた 原 告 と Bの 操 船 者 であるH 船 長 につき, 業 務 上 過 失 往 来 妨 害 被 疑 事 件 として 捜 査 に 着 手 し,その 後, 原 告 は, 業 務 上 過 失 往 来 危 険, 業 務 上 過 失 致 死 罪 の 被 疑 事 実 につき 高 松 地 方 検 察 庁 に 送 致 され( 甲 78,111), 同 罪 名 にて 略 式 起 訴 ( 以 下 本 件 刑 事 事 件 という )され, の 略 式 命 令 を 受 けた( 原 告 自 認 ) (5)ア 運 輸 安 全 委 員 会 は, 本 件 事 故 に 関 し, 船 舶 事 故 及 び 事 故 に 伴 い 発 生 した 被 害 の 原 因 を 究 明 し, 事 故 防 止 及 び 被 害 の 軽 減 に 寄 与 することを 目 的 とし て 本 件 事 故 について 平 成 21 年 10 月 30 日 付 けで 事 故 調 査 報 告 書 をまと めた( 甲 68) イ この 事 故 調 査 報 告 書 によると, 運 輸 安 全 委 員 会 は, 原 告 を 含 むいわゆる 原 因 関 係 者 からの 意 見 聴 取, 海 上 保 安 庁 α 海 上 交 通 センターのAIS 情 報 の 記 録 ( 以 下 AIS 記 録 という AISとは 船 舶 自 動 識 別 装 置 のこと である )の 記 録 を 分 析 した 上, 事 故 発 生 日 時 は 平 成 年 月 日 00 時 34 分 ころ, 発 生 場 所 は 香 川 県 α 東 航 路 東 口 付 近 ( 航 路 外 )β 灯 台 から( 真 方 位 )198 度, 距 離 2800m(1.51 海 里 ) 付 近 と 認 め, 気 象 及 び 海 象 などに 関 する 情 報, 原 告 の 見 張 り 状 況 に 関 する 情 報,Bの 航 海 計 器, 機 関 操 作 レバー 等 の 状 況 に 関 する 情 報,A 及 びBの 灯 火 の 表 示 状 況,Bに 対 する 警 告 信 号 及 びサーチライトの 照 射 状 況,Bの 接 近 状 況 等 に 関 する 情 報,Bの 操 業 に 関 する 情 報 等 を 分 析 した 結 果, 本 件 事 故 につき, 以 下 のと おり 分 析 した - 6 -

(ア) 操 船 状 況 に 関 する 解 析 1 Aは, 東 航 路 に 沿 って 航 行 中, 左 舷 船 首 の16 度,1.3マイル 付 近 にBのレーダー 映 像 を 認 めたものの,この 映 像 を 北 上 漁 船 と 勘 違 い し,Bの 航 海 灯 を 目 視 で 確 認 しなかった その 後, 左 舷 船 首 方 20 度, 0.5マイル 付 近 に 前 路 を 右 方 に 航 行 する 態 勢 のBの 灯 火 を 認 め,B に 対 してサーチライトを 照 射 し, 手 動 操 舵 に 切 り 替 えて 右 舵 約 10 度, さらに 右 舵 約 20 度 をとったが 衝 突 したものと 考 えられる 2 Bは,ηの 南 方 沖 の 漁 場 で 僚 船 5~6 隻 とともに 底 びき 網 漁 に 従 事 した 後, 袋 網 も 船 内 に 取 り 込 んで 揚 網 を 終 え,ιに 向 けて 発 進 し, 自 動 操 舵 として 航 行 中, 衝 突 した 可 能 性 があると 考 えられる (イ) 航 法 に 関 する 解 析 本 件 事 故 は, 東 航 路 東 口 付 近 の 航 路 外 で, 互 いに 他 の 船 舶 の 視 野 のう ちにある 状 況 において, 東 航 路 を 東 南 方 に 航 路 外 に 出 ようとするAと 南 西 方 に 航 行 するBとが, 衝 突 直 前 までほぼ 一 定 針 路 で 航 行 し, 航 路 外 で 互 いに 進 路 を 横 切 る 態 勢 で 衝 突 したものと 考 えられる また, 衝 突 場 所 は, 海 上 交 通 安 全 法 の 適 用 海 域 であるが, 同 法 には 本 件 事 故 に 適 用 する 航 法 規 定 がないので, 一 般 法 である 予 防 法 が 適 用 され るものと 考 えられる A 及 びBが,このような 状 況 にあったことから, 両 船 がとるべき 動 作 は 次 のとおりであったものと 考 えられる 1 Aは, 針 路 及 び 速 力 を 保 持 しなければならないが,Bが 避 航 動 作 を 十 分 にとっていないと 認 めた 場 合, 警 告 信 号 を 行 い,さらに 間 近 に 接 近 して,Bの 動 作 のみでは 衝 突 を 避 けることができないと 認 めた 場 合, 最 善 の 協 力 動 作 をとらなければならない 船 舶 であった 2 Bは,Aを 右 舷 側 に 見 てAの 針 路 を 避 けなければならない 船 舶 であ った - 7 -

3 争 点 本 件 の 争 点 は,1AとBとの 位 置 関 係 について, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 がなく, 予 防 法 38 条 及 び39 条 の 船 員 の 常 務 により 律 せられるべき であるか( 争 点 1),2 横 切 り 船 航 法 の 適 用 があるとした 場 合 において, 原 告 に 対 し, 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1か 月 停 止 するとした 処 分 は 相 当 である か( 争 点 2)である 4 争 点 に 関 する 当 事 者 の 主 張 ( 原 告 の 主 張 ) (1) 本 件 事 故 の 発 生 にかかわる 事 実 経 過 について ア 衝 突 日 時 について 00 時 34 分 ころである イ 衝 突 地 点 について β 灯 台 から 真 方 位 200 度 2850mの 海 上 である ウ Bの 発 進 時 刻 及 び 発 進 地 点 について Bの 発 進 時 刻 は00 時 30 分 であり, 発 進 地 点 は,β 灯 台 から 真 方 位 1 96 度 2200mの 地 点 である エ Bの 速 力 について 停 船 していたBは,00 時 30 分 に 上 記 発 進 地 点 を 発 進 し, 約 30 秒 で 同 船 の 半 速 力 である4.5ノット 前 後 に 達 し, 概 ねその 速 力 で 航 行 し,0 0 時 33 分 にAからの 探 照 灯 の 照 射 あるいは 汽 笛 に 気 付 いて, 概 ね 約 30 秒 で 半 速 力 から 全 速 力 の9ノットまで 増 速 し, 衝 突 直 前 には9ノットに 達 していた オ Bの 針 路 について Bの 発 進 地 点 であるβ 灯 台 から 真 方 位 196 度 2200mの 海 上 から 衝 突 地 点 であるβ 灯 台 から 真 方 位 200 度 2850mの 海 上 を 直 線 で 結 ぶ214 度 である - 8 -

カ Aの 針 路, 速 力 及 び 航 過 時 刻 (ア) κ 北 方 の 漁 船 を 避 けるため 針 路 を113 度 に 変 針 した 位 置 及 び 時 刻 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 278 度 9 200m 付 近 海 域,この 時,α 東 航 路 東 口 付 近 の 漁 船 に 気 付 く ), 00 時 17 分 ころである (イ) 針 路 を116 度 に 変 針 した 位 置 及 び 時 刻 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 271 度 6 100m 付 近 海 域 ),00 時 23 分 ころである (ウ) メインレーダーのレンジを3 海 里 から1.5 海 里 に 切 り 替 えた 位 置 及 び 時 刻 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 241 度 3 300m),00 時 30 分 ころである (エ) 相 手 船 の 緑 色 灯 火 に 気 付 いた 位 置 及 び 時 刻 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 208 度 2 700m),00 時 33 分 ころである (オ) 衝 突 位 置 及 び 時 刻 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 200 度 2 850m),00 時 34 分 ころである (カ) Aの 速 力 16.5ノット( 分 速 509m)で 航 行 していた (2) BとAの 衝 突 までの 位 置 関 係 及 び 適 用 航 法 について ア Bは,00 時 30 分 にβ 灯 台 から 真 方 位 196 度,2200m 地 点 を 発 進 し, 約 30 秒 で 同 船 の 半 速 力 4.5ノット 前 後 に 達 し, 概 ねその 速 力 で 航 行 し,00 時 33 分 にAからの 探 照 灯 の 照 射 あるいは 汽 笛 に 気 付 いて, 概 ね 約 30 秒 で 半 速 力 から 全 速 力 9ノットまで 増 速 し, 衝 突 直 前 には9ノ - 9 -

ットに 達 していたと 考 えられ, 衝 突 時 刻 の00 時 34 分 までの1 分 間 で 半 速 力 から 全 速 力 にしたとすれば,この1 分 間 の 平 均 速 力 はおよそ8ノット 前 後 であり,Bは00 時 33 分 から00 時 34 分 までの1 分 間 に8ノット で 航 行 した 場 合 の246.9mを 航 行 した したがって, 衝 突 地 点 と 発 進 地 点 とを 結 ぶ214 度 の 針 路 を 衝 突 地 点 か ら 反 方 位 方 向 に 約 246.9mを 取 った 地 点 がBの00 時 33 分 の 位 置 と 考 えられる イ 上 記 のAとBの 各 時 分 における 相 対 的 位 置 関 係 をみると,AからのBの 方 位, 距 離 は,00 時 30 分 が104 度,2140m,00 時 31 分 が1 04 度,1580m,00 時 32 分 が104 度,1040m,00 時 33 分 が102 度,500mとなる ウ 以 上 から,AとBとの 位 置 関 係 は, 衝 突 のおそれのある 状 態 の 関 係 があ るのであり, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 が 適 用 され,Aが 保 持 船 ( 針 路, 速 力 を 保 持 する 義 務 を 負 う 船 )であり,Bが 避 航 船 ( 保 持 船 を 避 けて 航 行 する 義 務 を 負 う 船 )という 関 係 となる (3) 小 括 ア 本 件 事 故 が 発 生 した 主 たる 原 因 は, 第 1は,そもそも 衝 突 のおそれが 全 くなかったにもかかわらず, 停 船 していたBが 周 囲 の 見 張 りを 怠 り,α 東 航 路 を 約 17 5ノットの 高 速 で 東 航 するAに 気 付 かずAの 針 路 前 方 に 向 けて 航 行 を 開 始 ( 発 進 )し, 接 近 したことにより 衝 突 のおそれのある 状 態 を 惹 起 したこと, 第 2は,BとAとの 位 置 関 係 は, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 が 適 用 される 関 係 にあり,Bが 避 航 船,Aが 保 持 船 の 関 係 であるに もかかわらず,Bが 避 航 せずに,かえってAの 船 首 方 向 を 強 引 に 速 度 を 上 げて 横 切 ろうとしたことにある イ 本 件 裁 決 は,Bの 発 進 地 点 を 衝 突 地 点 から9ノットで 航 行 したことを 前 提 に 逆 算 して 計 算 した 地 点 とし,Bの 速 度 を9ノットで4 分 間 航 行 したと - 10 -

し,Bが 衝 突 前 に 増 速 したことを 無 視 するなど, 誤 った 事 実 認 定 をもとに, AとBとの 位 置 関 係 について, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 を 否 定 したもので 著 しく 不 当 である (4) 見 張 り 義 務 違 反 ( 予 備 的 主 張 )について AとBの 関 係 は, 横 切 り 船 航 法 が 適 用 されるものであり,Aが 保 持 船 であ り,Bが 避 航 船 であることから,Aは 針 路, 速 力 保 持 義 務 が 課 されており, 避 航 船 であるBがAからの 注 意 喚 起 信 号 である 汽 笛 や 探 照 灯 の 照 射 によっ ても 避 航 しないことが 明 らかになったことから,Bとの 衝 突 を 避 けるべく, 右 舵 を 切 ったものであり,これらの 動 作 については, 結 果 的 に 衝 突 を 避 けら れなかったことからみれば 不 十 分 ではあるが,A 側 としては 衝 突 を 避 けるた めの 避 航 動 作 を 取 ったものであり, 原 告 が 行 政 処 分 としての 免 状 停 止 処 分 ま で 受 けるべきものではない 行 政 処 分 である 懲 戒 を 行 うとしても 戒 告 が 相 当 というべきものであり, 本 件 裁 決 が 言 い 渡 した 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 1 箇 月 停 止 の 処 分 は 重 きにすぎるものであり, 取 り 消 されるべきである ( 被 告 の 主 張 ) (1) 本 件 事 故 の 発 生 にかかわる 事 実 経 過 について ア 衝 突 日 時 について( 本 件 裁 決 は,00 時 34 分 丁 度 ) 00 時 34 分 丁 度 である イ 衝 突 地 点 について( 本 件 裁 決 は,200 度, 距 離 1.54 海 里 ) AIS 記 録 に 基 づき,β 灯 台 から 真 方 位 198 度, 距 離 1.54 海 里 (2 850m ), 北 緯 度 分, 東 経 度 分 である ウ Bの 発 進 時 刻 及 び 発 進 地 点 について( 本 件 裁 決 は, 発 進 時 刻 は00 時 3 0 分, 発 進 地 点 は 衝 突 地 点 から215 度 の 反 方 位 線 上 に9ノットの 速 力 で 4 分 間 遡 った 地 点,すなわち, 衝 突 地 点 から215 度 の 方 向 に1111. 2m 遡 った 地 点 であるβ 灯 台 から 真 方 位 190 度,0.97 海 里 (179 6m)の 地 点 ) - 11 -

Bの 発 進 時 刻 ( 航 行 開 始 時 刻 )は00 時 30 分, 発 進 地 点 ( 航 行 開 始 地 点 )は, 同 船 が 航 行 してきた 針 路 線 である215 度 の 反 方 向 に00 時 34 分 から00 時 30 分 24 秒 までは8.85ノット,00 時 30 分 24 秒 か ら00 時 30 分 までは7.1ノットの 各 速 力 で 遡 らせた 地 点 である 北 緯 度 分, 東 経 度 分 の 地 点 ( 衝 突 地 点 から215 度 の 方 向 に1070m 遡 った 地 点 )である エ Bの 速 力 について( 本 件 裁 決 は,00 時 30 分 から 全 速 力 の9ノット) Bは,00 時 27 分 ころにゆっくりした 速 度 で 徐 々に 南 方 に 向 けて 発 進 し,00 時 30 分 ころ 北 緯 度 分, 東 経 度 分 の 地 点 か ら215 度 の 針 路 で5.3ノット 前 後 で 航 行 を 開 始 し,00 時 30 分 から 00 時 30 分 24 秒 までは5.3ノットから8.85ノットまで 増 速 中 で, 以 後 は 衝 突 まで 全 速 力 の8.85ノットで 航 行 を 継 続 した オ Bの 針 路 について( 本 件 裁 決 は,215 度 の 方 向 ) 衝 突 地 点 とιの 北 西 端 を 結 ぶ 針 路 線 である215 度 である カ Aの 針 路, 速 力 及 び 航 過 時 刻 ( 本 件 裁 決 は,00 時 29 分,β 灯 台 から 249 度,1.94 海 里 の 地 点 で, 針 路 116 度 に 定 め,17.5ノット で 続 航 ) AIS 記 録 を 基 に 航 跡 図 を 作 成 し, 所 要 点 間 を 結 んで 針 路 を 算 定 し, かつ 所 要 点 の 通 過 時 刻 から 速 力 を 算 定 すれば,Aの 針 路 は00 時 23 分 ころから117 度 であり, 速 力 は17.5ノットで 航 行 していた キ 原 告 がBに 初 めて 気 付 いた 時 刻 ( 本 件 裁 決 は,00 時 33 分 ) 00 時 32 分 半 である (2) BとAの 衝 突 までの 位 置 関 係 及 び 適 用 航 法 について ア 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 が 適 用 される 前 提 としては,1 両 船 がいず れも 適 法 な 交 通 方 法 をとっていること,2 両 船 がいずれも 行 動 の 自 由 を 制 限 されていないこと,3 両 船 間 に 衝 突 のおそれがあること,4 両 船 がそれ - 12 -

ぞれ 針 路 及 び 速 力 を 保 持 して 前 進 するものと 予 測 できること,5 避 航 動 作 をとるための 時 間 的 距 離 的 な 余 裕 があることの 各 条 件 を 満 たしているこ とが 必 要 である イ 本 件 では,Bが 北 緯 度 分, 東 経 度 分 の 地 点 から215 度 の 針 路 で5.3ノット 前 後 で 航 行 を 開 始 し,00 時 30 分 から00 時 3 0 分 24 秒 までは5.3ノットから8.85ノットまで 増 速 中 で, 以 後 は 衝 突 まで 全 速 力 の8.85ノットで 航 行 を 継 続 したとした 場 合 は,00 時 30 分 から00 時 32 分 半 の 間 には5.4 度 (1 分 間 平 均 2.7 度 ),0 0 時 30 分 半 から00 時 33 分 の 間 には10.5 度 (1 分 間 平 均 4.2 度 ) の 方 位 変 化 があり, 両 船 の 航 行 に 要 する 時 間 を 考 慮 しても,Bは,Aの 船 首 方 310m( 操 舵 室 からの 航 過 距 離 船 首 端 からの 航 過 距 離 は270 m )のところを 航 過 でき, 衝 突 のおそれがなかったから, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 はない ウ したがって, 本 件 は, 予 防 法 38 条 及 び39 条 の 船 員 の 常 務 によって 律 すべきである (3) 小 括 本 件 では, 衝 突 のおそれがなかったから, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 がなく, 予 防 法 38 条 及 び39 条 の 船 員 の 常 務 によって 律 した 本 件 裁 決 は 相 当 であり, 原 告 の 主 張 は 認 められない (4) 原 告 の 見 張 り 義 務 違 反 ( 予 備 的 主 張 ) ア Bが 高 松 海 上 保 安 部 の 認 定 した 航 行 開 始 地 点 ( 北 緯 度 分, 東 経 度 分 の 地 点 )から 速 力 5.3ノット, 針 路 215 度 とした 場 合 は, 00 時 30 分 半 から00 時 32 分 半 の 間 には2.3 度 (1 分 間 平 均 1.2 度 ),00 時 30 分 半 から00 時 33 分 の 間 には4.2 度 (1 分 間 平 均 1. 7 度 )の 方 位 変 化 があるにすぎないことから,1 分 間 に 平 均 2 度 の 方 位 変 化 がないとして, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 が 適 用 される 可 能 性 は 否 定 - 13 -

できない イ しかしながら, 本 件 事 故 につき, 予 防 法 15 条 の 規 定 の 適 用 があるとし ても, 原 告 には,Bに 対 する 見 張 りを 怠 った 過 失 がある 原 告 は,00 時 30 分 ころ 又 は00 時 30 分 半 ころにレーダー 画 面 上 で Bと 思 われる 漁 船 を 探 知 したのであるから,その 時 点 で, 肉 眼 による 見 張 りを 十 分 に 行 っていれば, 同 船 が 右 舷 灯 ( 緑 色 )を 見 せて 自 船 の 前 方 を 右 方 に 横 切 り, 衝 突 のおそれがある 態 勢 で 接 近 することが 容 易 に 判 断 でき, 警 告 信 号 を 発 し,また, 自 船 を 大 幅 に 減 速 させるなどして, 衝 突 を 避 ける ための 最 善 の 協 力 動 作 を 適 切 な 時 期 に 講 ずることができたことは 明 らか である ウ この 見 張 りを 常 に 行 うという 義 務 は, 船 舶 運 航 者 にとって 常 識 中 の 常 識 であり, 船 員 に 要 求 される 最 も 基 本 的 注 意 義 務 であるところ, 原 告 は,こ の 見 張 り 義 務 に 違 反 して 本 件 事 故 を 惹 起 したものであり,その 責 任 は 重 大 である その 結 果 もBと 衝 突 して 転 覆 させ,H 船 長 を 溺 死 させたものであ り, 原 告 の 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 懲 戒 は, 本 件 事 故 発 生 の 一 因 を 構 成 した 原 告 の 過 失 行 為 に 照 らし, 何 ら 相 当 性 を 欠 くも のではない 第 3 当 裁 判 所 の 判 断 1 本 件 事 故 発 生 の 事 実 経 過 について 前 提 事 実 に 加 えて, 関 係 証 拠 並 びに 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 以 下 の 事 実 が 認 められる (1) 原 告 が, 本 件 刑 事 事 件 の 捜 査 を 担 当 した 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 及 び 高 松 地 方 検 察 庁 の 検 察 官 に 対 し, 本 件 事 故 の 経 緯 につき 供 述 した 内 容 及 び 原 告 の 立 会 いの 下 に 行 われた 実 況 見 分 の 結 果 は, 概 要, 以 下 のとおりである( 甲 78ないし111) ア 原 告 は, 平 成 年 月 日 23 時 35 分 過 ぎころ,α 東 航 路 中 央 第 - 14 -

号 灯 浮 標 を 過 ぎた 辺 りで, 前 直 の 甲 板 長 からAの 当 直 を 引 継 ぎ, 合 直 の D 甲 板 手 に 操 舵 させ,α 東 航 路 東 航 レーンの 南 寄 りを 速 力 12ノットで 東 航 し, 速 力 制 限 のなくなるα 東 航 路 中 央 第 号 灯 浮 標 の 南 から, 速 力 を16.5ノットにあげ, 針 路 を100 度 に 設 定 して 航 行 した( 甲 10 7) イ 原 告 は,その 後, 同 航 船 を 追 い 越 すため 右 に 転 舵 し,λ 灯 標 の 北 側 位 の 航 路 側 線 上 でこれを 追 い 越 したころ, 船 首 方 の 航 路 南 側 (κ) 方 向 に 小 型 底 びき 網 漁 船 がおり,これを 避 けるため 及 び 航 路 内 に 戻 すためAの 針 路 を113 度 位 に 戻 した( 甲 107,110) Aの 船 橋 に 搭 載 されたGPSの 記 録 ( 以 下 GPSの 記 録 という GPSとは, 全 地 球 測 位 システムのことである )によれば, 原 告 が 針 路 を113 度 に 変 針 した 位 置 は, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 278 度 9200m) 付 近 海 域 である( 甲 80,110) ウ 原 告 は,その 後,6,7 分 航 行 したころにα 東 航 路 の 東 口 付 近 に4, 5 隻 の 小 型 底 びき 網 漁 船 らしき 船 が 左 舷 灯 ( 赤 色 )を 見 せて 北 上 するの を 見 て,これらの 漁 船 を 避 けるため, 少 し 右 に 寄 せ, 針 路 を116 度 位 にて 航 行 した( 甲 107,108) 針 路 を116 度 にしたことで, 自 然 にα 東 航 路 の 東 口 付 近 に 点 在 している 底 びき 網 漁 船 らしき 船 も 全 体 的 に 左 側 に 見 えるようになったが,なお, 自 船 の 右 方 に1,2 隻 の 底 びき 網 漁 船 らしき 船 が 左 舷 灯 を 見 せていた( 甲 107,108,110) GPSの 記 録 によれば, 原 告 がAの 針 路 を116 度 に 変 針 した 位 置 は, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 271 度 610 0m) 付 近 海 域 である( 甲 80,110) エ 原 告 は, 針 路 を116 度 に 向 けた 後,6,7 分 航 行 したころ,Aの 針 路 上 を 底 びき 網 漁 船 特 有 のヤグラのある 小 型 漁 船 が 北 上 していった そ の 横 切 り 船 は, 徐 々に 自 船 左 舷 方 向 に 見 えるようになり,5,6 分 後 に - 15 -

は 気 にならなくなった( 甲 108,110) オ その 後, 自 船 針 路 上 に 左 舷 灯 ( 赤 色 )を 見 せている 底 びき 網 漁 船 らし き 船 が 左 に2 隻, 右 に2 隻 いたことから, 原 告 は,レーダーのレンジを 3マイルから1.5マイルに 切 り 替 えたところレーダーの 中 心 から0. 25マイル 刻 みである 固 定 環 の4つ 目 か5つ 目 位 の 約 1.25マイルの 自 船 船 首 方 向 からやや 左 に1つ,2.5マイル 付 近 に 自 船 左 右 舷 方 向 に 各 1つの 映 像 を 見 た( 甲 107ないし110) 原 告 は,このレーダー 映 像 の1.25マイル 付 近 にある 船 の 映 像 を 自 船 の 前 を 横 切 っていった 船 と 思 い 込 んだ( 甲 108,110) また, 原 告 が 見 た 漁 船 は, 皆 左 舷 灯 ( 赤 色 )を 見 せていたことから, 原 告 は, 視 認 できた 船 は 皆 北 上 し ているものと 思 い 込 み, 自 船 船 首 1.25マイル 付 近 で 針 路 上 より 左 に いる 船 の 動 静 は 気 に 留 めず,それより 遠 くにいる 船 とのその 後 の 見 合 い 関 係 を 気 にして, 双 眼 鏡 や 目 視 で 動 静 を 監 視 した( 甲 108) GPSの 記 録 によれば, 原 告 がレーダーのレンジを3マイルから1. 5マイルに 切 り 替 えて 画 面 を 見 た 地 点 は, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 241 度 3300m) 付 近 海 域 である( 甲 8 0,110) カ その 後,α 東 航 路 中 央 第 号 灯 浮 標 と 並 行 したことから,D 甲 板 手 が, 航 海 日 誌 にその 時 刻 を 書 くため 海 図 台 に 行 った 直 後 ころ, 原 告 は, 双 眼 鏡 を 下 ろして 窓 の 外 を 見 た 時, 自 船 左 前 方 約 500mの 地 点 に, 右 舷 灯 ( 緑 色 )を 見 せて 南 下 してくる 漁 船 に 気 付 いた( 甲 108,110,1 11) GPSの 記 録 によれば, 原 告 が, 相 手 船 の 緑 色 灯 火 に 気 付 いた 位 置 は, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 208 度 270 0m) 付 近 海 域 である( 甲 80,110) キ 原 告 は, 相 手 船 を 発 見 後, 目 視 でその 動 きを 見 たが, 相 手 船 が 避 航 す - 16 -

る 様 子 がなかったことから,このままではぶつかると 切 迫 した 危 険 を 感 じ, 自 船 の 存 在 を 知 らせ 避 航 動 作 をしてもらうため 探 照 灯 を 照 射 し, 汽 笛 を 鳴 らすとともに 手 動 操 舵 に 切 り 替 えて 右 10 度 を 取 り,D 甲 板 手 を 呼 び, 右 舵 20 度, 右 舵 一 杯 の35 度 を 指 示 し, 再 び 汽 笛 を 鳴 らしたも のの 相 手 船 の 見 える 角 度 にほとんど 変 化 がなく, 相 手 船 は30 秒 でAの 左 舷 船 首 の 死 角 に 入 り, 原 告 が 左 舷 ウイングに 出 たところ, 左 舷 側 に 灯 火 の 点 いていない 船 影 が 船 尾 方 向 に 流 れて 行 き, 相 手 船 と 衝 突 したこと を 知 った( 甲 107,108,110,111) 衝 突 時 の 天 候 は, 雲 量 8 程 度 の 曇 りで, 風, 波 はほとんどなく, 視 程 は10キロから13キ ロメートルで, 潮 流 は, 満 ち 潮 の 西 流 であった( 甲 110) GPSの 記 録 によれば, 衝 突 位 置 は, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 200 度 2850m) 付 近 海 域 である( 甲 80, 110) ク 事 故 当 日,Aの 航 跡 について, 原 告 立 ち 会 いのもと, 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 による 実 況 見 分 が 実 施 され, 同 船 備 付 けのGPSの 航 跡 をもと に 現 場 海 域 での 航 跡 が 再 現 され,この 再 現 結 果 がGPSの 航 跡 とほぼ 同 じであることが 確 認 され,このGPSの 航 跡 をもとに 航 跡 図 が 作 成 され た( 甲 80) 原 告 は, 変 針 時 刻, 衝 突 時 刻 の 各 ポイントについて, 時 計 で 確 認 して いないが,D 甲 板 手 がα 東 航 路 中 央 第 号 浮 標 に 並 行 した 時,β 通 過 を 海 図 台 の 航 海 日 誌 に 記 入 しに 行 ったのが00 時 33 分 であること,Aの 速 度 が16.5ノット( 分 速 510m)であることから 所 要 点 通 過 時 刻 を 算 出 すると,κ 北 方 の 漁 船 を 避 けるために 変 針 した 時 刻 は,00 時 1 7 分 ころであり,Aの 針 路 を116 度 に 変 針 した 時 刻 は,00 時 23 分 ころであり,メインレーダーのレンジを3マイルから1.5マイルに 切 り 替 えレーダーの 画 面 を 見 た 時 刻 は,00 時 30 分 ころであり, 相 手 船 - 17 -

が 右 舷 灯 ( 緑 色 )を 見 せて 接 近 しているのに 気 が 付 いた 時 刻 は,00 時 33 分 ころであり, 衝 突 時 刻 は,00 時 34 分 ころであることが 矛 盾 な く 算 出 された( 甲 80,110) (2) 本 件 事 故 当 時, 原 告 と 共 に 操 舵 室 で 操 舵 の 配 置 についていたD 甲 板 手 が, 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 員 に 対 し, 本 件 事 故 の 経 緯 につき 供 述 した 内 容 は, 概 要, 以 下 のとおりである( 甲 96) ア 前 直 のJ 甲 板 長 から 手 動 操 舵 で 引 き 継 ぎを 受 け, 船 長 が 操 舵 室 から 下 りた 後, 原 告 から 何 度 か 操 舵 号 令 が 出 て,そのとおりに 操 舵 した λ 沖 の 航 路 中 央 付 近 に 底 びき 網 漁 船 が 何 隻 かおり, 漁 船 に 近 づかないように 航 路 の 南 寄 りを 航 行 した 速 力 は, 速 力 制 限 海 域 を 過 ぎていたので16 ノットを 少 し 超 える 位 の 速 力 で 航 行 していた イ α 東 航 路 中 央 第 号 浮 標 を 通 過 する 付 近 で 原 告 から116 度 との 針 路 指 示 があり,ジャイロレピータコンパスの 針 を 見 ながら, 針 路 116 度 で 航 行 した 針 路 116 度 で 航 行 中,α 東 航 路 東 口 付 近 に 漁 船 と 思 われ る 赤 色 灯 火 を 見 せた 船 が 自 船 の 針 路 左 舷 側 に 見 えた ウ β 灯 台 の 灯 りを 左 舷 側 に 見 て 通 過 するころ, 自 動 操 舵 に 切 り 替 え,1 16 度 に 設 定 してジャイロレピータコンパスのメモリが116 度 を 示 し ているのを 確 認 して, 操 舵 装 置 のすぐ 後 ろにある 海 図 台 に 行 き, 設 置 し てある 時 計 を 確 認 して, 航 海 日 誌 にβ 通 過 時 刻 を00 時 33 分 という 意 味 である 0033 と 記 入 した エ 航 海 日 誌 に 時 間 を 記 入 していると,サーチライトのスイッチ 音 が カ チッ と 聞 こえ ガチャガチャ とサーチライトを 操 作 する 音 が 聞 こえ, 汽 笛 が 鳴 ったので 操 舵 に 戻 ると 舵 は 手 動 に 切 り 替 わっていて,10 度 右 に 切 った 状 態 であった オ 操 舵 に 戻 った 後, 原 告 から スターボード20 度 の 操 舵 号 令 が 出 た ので 右 に20 度 舵 をとり,これに 続 いて ハード スターボード の 操 - 18 -

舵 号 令 で36 度 まで 舵 を 切 った カ 針 路 116 度 で 航 行 中,α 東 航 路 の 東 口 付 近 には, 漁 船 が2ないし3 隻 いるのは 確 認 したが, 今 回 衝 突 した 漁 船 には 気 付 いておらず, 海 図 台 から 帰 ってくるときに 初 めて 気 付 いた 操 舵 室 中 央 の 窓 から 左 舷 側 に1 枚 目 の 窓 から 緑 色 の 灯 火 が 見 え,やぐらのところに 作 業 灯 の 白 灯 が 点 い ていたので 底 びき 網 漁 船 と 分 かった この 漁 船 は 本 船 の 針 路 方 向 へ 接 近 していて, 段 々と 速 力 を 上 げていたように 見 え, 本 船 のすぐ 近 くまで 接 近 していることが 分 かった 漁 船 は, 本 船 の 船 首 左 舷 側 から 接 近 し, 船 首 間 近 にくると 左 舷 側 の 送 風 機 の 排 気 口 でやがて 見 えなくなり, 本 船 の 船 首 右 舷 側 を 通 過 していく のは 確 認 できなかった キ 海 図 台 後 ろの 壁 に 設 置 してある 時 計 を 見 て,00 時 33 分 であること を 確 認 し,それから 航 海 日 誌 にβ 通 過 時 間 を 記 入 し, 操 舵 に 戻 った 後 に 衝 突 したことを 考 えると, 時 計 を 見 てから 衝 突 するまでの 時 間 は1 分 程 度 であり, 衝 突 時 刻 は00 時 34 分 ころだと 思 う (3) 本 件 事 故 発 生 の 直 前 までBの 付 近 で 底 びき 網 漁 に 従 事 し, 事 故 現 場 近 くに 居 合 わせた 僚 船 であるKの 船 長 L( 以 下 L 船 長 という )が, 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 に 対 し, 本 件 事 故 の 経 緯 につき 供 述 した 内 容 及 びL 船 長 が 立 ち 会 って 行 われた 実 況 見 分 の 結 果 は, 概 要, 以 下 のとおりである( 甲 85, 86) ア L 船 長 は, 平 成 年 月 日 13 時 ころ, 定 係 地 から 漁 場 であるη 南 方 海 域 に 向 けて 出 港 した この 海 域 は 貨 物 船 やタンカー,フェリーなどの 本 船 の 航 路 筋 であり, 通 航 船 舶 が 多 数 往 来 する 危 険 な 海 域 であるが, 底 びき 網 漁 業 の 好 漁 場 であることから, 危 険 を 承 知 のうえ,この 海 域 で 操 業 して いる イ 日 は,M,N 漁 協 所 属 の 底 びき 網 漁 船 10 数 隻 と 他 の 漁 協 所 属 の 底 び - 19 -

き 網 漁 船 数 隻 が,β 周 辺 の 海 域 で 操 業 しており, 長 年 の 経 験 から 地 元 であ るM,N 漁 協 所 属 の 船 については 夜 間 であっても 灯 火 の 大 きさ, 明 るさ, オーニングの 張 り 具 合 などのあらゆる 特 徴 から 誰 の 船 かが 分 かり,Bにつ いても,その 特 徴 から 昼 間 からKの 近 くを 操 業 しているのを 確 認 していた ウ L 船 長 は, 同 日,5 番 目 の 操 業 を22 時 15 分 ころ,βとμのほぼ 中 間 にあるν 南 方 海 域 で,Kに 装 備 されているGPSで 位 置 を 確 認 して 網 を 入 れ, 北 緯 度 分 の 線 に 沿 って 西 向 きに 操 業 した GPSには 網 を 入 れる 目 安 の 位 置 を 印 でプロットしてある このとき,やや 右 前 方 500 mのところを,kとほぼ 同 一 の 針 路 で 西 向 け 底 びき 網 漁 を 操 業 中 のBを 確 認 した エ L 船 長 は, 約 2 時 間 操 業 した 翌 日 00 時 25 分 ころ,β 南 方 にあるα 東 航 路 号 ブイ 南 東 方 海 域 のGPSにプロットした 印 のところで, 揚 網 しようと 考 えていたところ, 丁 度 その 印 の 手 前 でBが 網 を 揚 げ 終 え 停 船 していたことから,その 少 し 手 前 ( 東 側 )でKも 停 船 し 揚 網 することとし た この 時 刻 は 操 舵 室 の 掛 け 時 計 で 確 認 した Kが 停 船 した 場 所 はBの 東 側, 目 測 約 30mの 海 上 で,Bが 船 首 よりも 右 前 に 見 えており,Bの 船 首 方 位 はやや 南 西 方 に 向 いていた L 船 長 は, 停 船 後,Bの 船 尾 に 人 影 が 見 えたことから 双 眼 鏡 で 確 認 した ところ, 網 はすでに 揚 収 され 船 尾 海 面 には 張 り 棒 が 揚 がっており,Hが 船 尾 甲 板 上 で 網 に 入 ったごみを 海 に 放 っていた オ その 後,L 船 長 は, 後 部 甲 板 でネットローラーを 操 作 しながら, 揚 網 作 業 を 開 始 した 揚 網 を 開 始 してから2 分 くらい 経 ったころ,Bはアイドリ ング 回 転 でクラッチが 前 進 に 入 ったくらいのゆっくりとした 速 力 で 徐 々に 南 方 向 け 動 き 始 めた さらに,3 分 くらいが 経 過 し 網 が 半 分 くらいまで 揚 がったころ,Bは 徐 々に 増 速 しながらι 向 け 南 方 に 走 り 始 めた このとき,BはKの 左 前 方 約 - 20 -

150mの 位 置 であり, 網 を 揚 げ 始 めてから5 分 が 経 過 していたから,0 0 時 30 分 ころである BとKとはOの 同 型 船 であり,エンジンも 同 じと 思 われる Kを 使 って 実 況 見 分 を 実 施 したところ, 全 速 力 は8.8から8.9ノットであり,L 船 長 がBを 見 たときの 速 力 については,6 割 くらいの 速 力 であったと 思 わ れ, 多 少 の 前 後 はあるが,5.3ノットである( 甲 105) Bと 同 型 の Kの 場 合, 停 船 から 全 速 力 の8.8ノットまで53.5 秒,8.9ノット まで65 秒 を 要 する( 甲 105) カ Bがι 向 け 走 り 始 めた 後 もL 船 長 は 揚 網 作 業 を 続 けていたが, 網 の 末 端 である 袋 網 が 揚 がってきたころ, 突 然,ドーンという 大 きな 音 が 一 回 聞 こ えた L 船 長 は,この 音 が 船 の 衝 突 した 音 と 考 えて, 咄 嗟 に 音 が 聞 こえた 左 舷 側 を 見 たところ, 南 方 約 500ないし600mのところに 背 の 高 い 大 きな 本 船 の 左 舷 側 がシルエット 状 に 見 えた キ L 船 長 が00 時 25 分 ころ,α 東 航 路 号 ブイ 東 方 海 域 で 停 船 し, 網 を 揚 げ 始 めたとき, 付 近 にはBのほかにKの 東 方 に 約 10 隻 の 底 びき 網 漁 船 が 操 業 しており, 南 方 には2 隻 の 底 びき 網 漁 船 がいた 南 の2 隻 は, 船 体 の 特 徴 から,1 隻 はP 漁 協 所 属 のQの 船 であり,もう 1 隻 はR 漁 協 所 属 のSの 船 であることがわかった Sの 船 は, 南 1マイル のところを 北 西 に 向 け 操 業 しており,Kと 同 じ 時 間 帯 に 網 を 揚 げ 始 め,K より 先 に 網 を 揚 げ 終 えていたように 見 えた ク Kが 揚 網 を 開 始 した 時 刻 と 位 置 は,00 時 25 分 ころ,β 灯 台 から 真 方 位 187 度, 約 2050mであり, 揚 網 を 終 了 した 時 刻 と 位 置 は,00 時 35 分 ころ, 真 方 位 200 度, 約 2100mであり, 転 覆 船 を 目 撃 した 時 刻 と 位 置 は,00 時 40 分 ころ, 真 方 位 206 度, 約 2850mである( 甲 85) また,Kが 揚 網 開 始 位 置 のとき,Bは,KのGPS 画 面 にプロッ トされた 印 の 東 側, 自 船 から 見 て 船 首 右 舷 方 向 約 30mのところでごみ - 21 -

処 理 中 であり,5 分 後 の00 時 30 分 ころ,Bはιへ 向 け 走 り 始 めたが, このときのBの 位 置 は,Kの 略 南 西 方 約 150mのところで, 揚 網 開 始 位 置 と 終 了 位 置 の 略 中 間 の 位 置 であった( 甲 85) ケ 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 は, 事 故 当 日 にL 船 長 を 立 ち 会 わせ,KのGP Sを 使 用 し,Kの 航 跡 を 解 析 した( 甲 85) その 結 果 は, 別 紙 漁 船 K 航 跡 図 記 載 のとおりであり,Kが 揚 網 を 開 始 した 時 刻 と 位 置 は, 同 図 2の0 0 時 25 分 ころ,β 灯 台 から 真 方 位 187 度, 約 2050mであり, 揚 網 を 終 了 した 時 刻 と 位 置 は, 同 図 3の00 時 35 分 ころ, 真 方 位 200 度, 約 2100mであり, 転 覆 船 を 目 撃 した 時 刻 と 位 置 は, 同 図 4の00 時 4 0 分 ころ, 真 方 位 206 度, 約 2850mであり,Bが 南 方 向 け 走 り 始 め たときのKの 位 置 は, 同 図 2と3の 略 中 間 の 位 置 であるβ 灯 台 から 真 方 位 194 度, 約 2050mの 海 上 であり,そのときBは,Kの00 時 30 分 ころの 位 置 から 略 南 西 方 約 150mの 位 置 にあったことから,Bの 航 行 開 始 位 置 (00 時 30 分 ころ)は, 真 方 位 196 度, 約 2200mとなり, Bは, 同 位 置 からιに 向 け 航 行 を 開 始 たことが 判 明 した( 甲 85) (4) ξ 港 に 陸 揚 げされたBについて 行 われた 実 況 見 分 の 結 果,Bの 船 橋 右 舷 船 首 側 甲 板 上 に 赤 色 の 掛 け 時 計 が 落 ちており,これが00 時 34 分 27 秒 を 指 して 止 まっており, 機 関 遠 隔 操 縦 装 置 は 操 舵 室 内 前 面 左 舷 側 に 設 置 され,ク ラッチレバーとスロットルレバーの2 本 のレバーで 構 成 され,クラッチレバ ーは F ( 前 進 ) 側 に,スロットルレバーは H ( 高 速 ) 側 の 可 動 域 限 界 に 位 置 し, 照 明 スイッチはONに 位 置 し, 自 動 操 舵 装 置 は 手 元 設 定 に 指 示 され,ダイヤル 式 リモコン 操 舵 装 置 のスイッチは 自 動 に 位 置 し, 自 動 操 舵 針 路 設 定 遠 隔 管 制 器 のダイヤルは240の 目 盛 りを 指 示 し, 船 体 は 右 舷 側 船 側 外 板 から 船 底 外 板 にかけての 破 口 及 び 船 側 外 板 に 亀 裂 があったことが 認 めら れた( 甲 104) (5) AとBの 衝 突 事 故 当 時,KのほかR 漁 業 協 同 組 合 所 属 の 漁 船 T,P 漁 業 協 - 22 -

同 組 合 所 属 の 漁 船 U 及 び 漁 船 Vが, 現 場 付 近 海 域 において 底 びき 網 漁 を 操 業 中 であった A,B,K,T,U 及 びVの6 隻 の 位 置 関 係 について,Bを 除 く5 隻 のGPSのデータ, 原 告 及 び 各 漁 船 の 船 長 の 供 述 から 解 析 された 航 跡 を 取 りまとめると,00 時 30 分 ころの 時 点 では,A 前 方 には, 左 舷 側 に2 隻, 右 舷 側 に2 隻 の 底 びき 網 漁 船 が 存 在 しており, 左 舷 前 方 2 隻 がKとB, 右 舷 前 方 の2 隻 がUとTであり,Vは, 同 時 刻 ころ, 既 にAの 針 路 を 横 切 り 同 船 の 左 舷 側 を 西 北 西 に 底 びき 網 を 曳 いて 操 業 中 であり,Bは,Aの 針 路 を 右 方 に 横 切 る 態 勢 で 航 行 を 開 始 したことが 判 明 した( 甲 79ないし91) (6) 本 件 刑 事 事 件 につき, 捜 査 を 担 当 した 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 は, 事 故 当 日 におけるAのGPSに 記 録 された 航 跡, 相 手 船 の 初 認 状 況, 機 器 の 状 況 及 び 立 直 状 況 等 の 実 況 見 分 を 実 施 した 上, 被 疑 者 である 原 告 のほか, 参 考 人 と してD 甲 板 手,KのL 船 長,T 船 長 S,V 船 長 W,U 船 長 Qの 取 調 べを 行 い, K,V,U,Tがそれぞれ 装 備 しているGPSに 基 づいて 事 故 当 時 の 航 跡 を 解 析 するなどの 捜 査 を 行 った 結 果, 本 件 は 予 防 法 15 条 規 定 の 横 切 り 船 の 関 係 にあり, 同 条 規 定 の 他 の 動 力 船 を 右 げん 側 に 見 る 動 力 船 ( 避 航 船 ) がBとなり,Bにあっては 同 法 16 条 規 定 の 避 航 船 の 航 法 を,Aにあっ ては 同 法 17 条 規 定 の 保 持 船 の 航 法 をとるべきと 認 定 した( 甲 78) 2(1) 上 記 1の 認 定 にかかる 本 件 刑 事 事 件 を 担 当 した 高 松 海 上 保 安 部 の 捜 査 官 及 び 高 松 地 方 検 察 庁 の 検 察 官 の 捜 査 結 果 のうち 事 実 関 係 については, 事 故 当 日 又 はこれに 近 接 した 日 時 に 原 告,D 甲 板 手 及 び 当 時 周 辺 で 操 業 をしていた Kを 含 む 漁 船 の 各 船 長 などの 関 係 者 の 事 情 聴 取 を 行 った 上,A,K 及 び 他 の 漁 船 のGPSの 記 録 を 解 析 し,これらの 各 船 を 用 いた 実 況 見 分 を 実 施 した 結 果 や 高 松 海 上 保 安 部 が 保 有 しているAIS 記 録 などの 整 合 性 を 十 分 に 検 討 して 得 られたものと 解 されるところ,その 結 果 は 十 分 に 信 用 するに 価 するも のと 評 価 するのが 相 当 である そうすると, 本 件 事 故 発 生 に 関 わる 事 実 経 過 は,1Aは,00 時 23 分 こ - 23 -

ろ, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 271 度 61 00m) 付 近 にてα 東 航 路 の 東 口 付 近 に4,5 隻 の 小 型 底 びき 網 漁 船 らし き 船 が 左 舷 灯 ( 赤 色 )を 見 せて 北 上 するのを 見 て,これらの 漁 船 を 避 ける ため 針 路 を116 度 に 変 針 した 上, 速 力 約 16.5ノットで 航 行 し,200 時 30 分 ころ, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 2 41 度 3300m) 付 近 に 達 した 地 点 で 原 告 がレーダーレンジを3 海 里 か ら1.5 海 里 に 切 り 替 えたところ, 自 船 船 首 方 向 からやや 左 に 約 1.25 海 里 ( 約 2315m)のところに 船 の 映 像 があった,3 一 方,Bは,00 時 25 分 ころ, 揚 網 を 終 え 停 船 したままH 船 長 がごみを 海 に 放 るなどの 作 業 を 行 い,00 時 30 分 ころ, 真 方 位 196 度, 約 2200mの 地 点 からιに 向 け, 針 路 214 度 で 航 行 を 開 始 し, 約 30 秒 程 度 で 速 力 約 4~5ノットの 半 速 力 に 達 した,4Aが 針 路 116 度,16.5ノットの 速 力 で 続 航 し,00 時 33 分 ころ,α 東 航 路 中 央 第 号 浮 標 と 並 行 し, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 208 度 2700m) 付 近 の 海 域 に 達 した とき, 原 告 は 自 船 左 前 方 約 500mの 地 点 に 右 舷 灯 ( 緑 色 )を 見 せて 南 下 し てくるBを 発 見 した,5 原 告 は,Bを 発 見 後, 目 視 でその 動 きを 見 たが,B が 避 航 する 様 子 がなかったことから,このままではぶつかると 切 迫 した 危 険 を 感 じ, 自 船 の 存 在 を 知 らせ, 避 航 動 作 をしてもらうため 探 照 灯 を 照 射 し, 汽 笛 を 鳴 らすとともに 手 動 操 舵 に 切 り 替 えて 右 10 度 を 取 り,D 甲 板 手 を 呼 び, 右 舵 20 度,さらに 右 舵 一 杯 の35 度 を 指 示 し, 再 び 汽 笛 を 鳴 らしたもののBの 見 える 角 度 にほとんど 変 化 がなく,Bは30 秒 でAの 左 舷 船 首 の 死 角 に 入 った,600 時 34 分 ころ, 香 川 県 小 豆 郡 η 町 β 灯 台 から 真 方 位 200 度, 約 2850m( 約 1.54 海 里 )である 北 緯 度 分, 東 経 度 分 の 海 上 付 近 でAとBが 衝 突 した,7Bのクラッチレバーと スロットルレバーは 全 速 前 進 の 位 置 にあり,Bの 全 速 前 進 での 速 力 は 約 9ノ ットであり,Bの 舵 が 取 り 舵 一 杯 に 取 られていることから,Bは, 航 行 開 始 - 24 -

後 約 30 秒 で 半 速 力 (4~5ノット)に 達 し, 衝 突 直 前 には 前 進 全 速 の 約 9 ノットの 速 力 で, 針 路 214 度 で 航 行 し,Aを 至 近 距 離 で 発 見 して 衝 突 回 避 するため 左 に 転 舵 したと 認 められる このAの 航 跡,Bの 航 行 開 始 地 点 及 び 両 船 の 衝 突 地 点 は, 別 紙 A 航 跡 図 記 載 のとおりである (2) 本 件 事 故 発 生 に 関 わる 事 実 経 過 のうち, 衝 突 時 刻, 衝 突 地 点,Aの 針 路 及 び 速 力,Bの 発 進 時 刻 及 び 発 進 地 点,Bの 針 路 及 び 速 力 は, 上 記 (1)に 判 断 し たとおりであるが, 本 件 裁 決 は,1 衝 突 時 刻 を00 時 34 分 丁 度,2 衝 突 地 点 をβ 灯 台 から 真 方 位 200 度, 距 離 1.54 海 里 (2852m),3Aの 針 路, 速 力 につき, 真 方 位 116 度,17.5ノット( 事 実 経 過 ア),4B の 針 路, 速 力 を,ιに 向 け 針 路 215 度 に 定 め,00 時 30 分 に 発 進 後,0 0 時 34 分 丁 度 に 衝 突 する 地 点 まで 一 貫 して9ノットの 速 力 ( 同 ク),5B の 発 進 地 点 を, 衝 突 地 点 から215 度 の 反 方 位 線 上 に9ノットの 速 力 で4 分 間 遡 った 地 点 と 認 定 したうえ, 航 法 の 適 用 につき, 両 船 の 船 間 距 離 が1.3 5 海 里 (2500m)となった 衝 突 4 分 前 の00 時 30 分 から1 分 前 の00 時 33 分 の 両 船 の 方 位 変 化 が14 度 であるとして, 両 船 は 互 いに 横 切 るも 衝 突 のおそれがないとした 本 件 裁 決 の 前 提 とされたこれらの 認 定 事 実 のうち, 衝 突 地 点 は 近 似 しているものの,Bの 速 力 及 び 発 進 地 点 については,かなり 大 きな 相 違 があり, 衝 突 時 刻 を00 時 34 分 丁 度 としていること,Aの 速 力 を17.5ノットとしていて,4 分 で 約 120mの 誤 差 が 生 じていることな ど, 本 件 事 故 発 生 に 関 わる 事 実 経 過 のうち, 上 記 (1)の 認 定 と 異 なる 部 分 は, 事 故 当 日 に 原 告,D 甲 板 手 及 び 各 漁 船 の 船 長 らからの 聴 取 した 事 実,Aや 各 漁 船 のGPSの 記 録 をもとに 行 われた 実 況 見 分 や 航 跡 の 解 析 などの 客 観 的 な 証 拠 である 本 件 刑 事 事 件 の 記 録 に 照 らし, 正 確 さを 欠 くものといわざるを 得 ない (3) 被 告 は, 衝 突 時 刻 及 び 衝 突 地 点,Aの 針 路 及 び 速 力,Bの 発 進 時 刻 及 び 発 - 25 -

進 地 点,Bの 針 路 及 び 速 力 につき, 本 件 裁 決 の 事 実 認 定 と 異 なる 主 張 をして いる これは, 本 件 裁 決 後 に 判 明 したAのAIS 記 録, 本 件 刑 事 事 件 の 記 録 などを 検 討 した 結 果, 本 件 裁 決 の 事 実 認 定 には,これらの 記 録 から 判 明 する 事 実 と 一 致 しない 点 があることを 認 めつつ,なお 被 告 独 自 の 検 討 を 加 え, 本 件 刑 事 事 件 を 担 当 した 高 松 海 上 保 安 部 が 下 したBの 速 度 や 発 進 地 点 について の 所 見 が 誤 りであって, 被 告 の 主 張 する 事 実 が 認 定 されるべきであり,この 被 告 の 主 張 する 事 実 を 前 提 とすると, 本 件 においては, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 の 航 法 が 適 用 されないと 主 張 するものと 解 される そこで, 上 記 の 各 点 についての 被 告 の 主 張 につき 検 討 する ア 被 告 は, 衝 突 時 刻 について,AIS 記 録 を 基 に 航 跡 図 を 作 成 し,00 時 34 分 00 秒 の 時 点 でAの 船 首 方 位 が154 度 となり, 原 告 が 理 事 官 調 書 において150 度 くらいで 衝 突 したと 供 述 しているのと 合 致 し,Aの 左 舷 船 首 部 の 衝 突 痕 跡 及 びBの 右 舷 外 板 の 損 傷 状 況 とも 矛 盾 しないなどとし て, 衝 突 時 刻 を00 時 34 分 丁 度 とし, 衝 突 地 点 について,AIS 記 録 を 基 に 作 成 した 航 跡 からβ 灯 台 から 真 方 位 198 度, 距 離 1.54 海 里 (2 850m) 北 緯 度 分, 東 経 度 分 である 旨 主 張 する そこで 判 断 するに, 原 告 は, 事 故 当 日 に 行 われた 本 件 刑 事 事 件 の 捜 査 官 の 取 り 調 べにおいて,D 甲 板 手 が 海 図 台 に 行 った 直 後 ころに, 緑 灯 を 見 せ て 南 下 している 漁 船 に 気 付 き, 探 照 灯 を 照 らし, 汽 笛 を 鳴 らしたりし, 右 に 舵 を 切 ったりして 衝 突 を 避 けようとしたが,30 秒 ほどで 死 角 に 入 り, 左 舷 ウイングに 出 たところ 左 舷 側 に 灯 火 の 点 いていない 船 影 が 船 尾 方 向 に 流 れていくのが 見 えたと 供 述 しており,D 甲 板 手 も 事 故 の 翌 日 に 行 われた 取 り 調 べにおいて, 衝 突 した 漁 船 については, 海 図 台 から 帰 ってくるとき に 初 めて 気 がついた, 漁 船 は, 本 船 の 左 舷 側 から 接 近 し, 船 首 間 近 にくる と 左 舷 前 方 の 送 風 機 の 排 気 口 でやがて 見 えなくなり,その 後, 本 船 の 船 首 右 舷 側 を 通 過 していくのは 確 認 できなかったと 述 べており, 海 難 審 判 庁 に - 26 -

おける 理 事 官 からの 質 問 に 対 しても, 原 告 は 衝 突 角 度 や 衝 突 箇 所 などの 衝 突 状 況 は 船 首 部 の 死 角 に 入 って 見 えなかったと 述 べ( 甲 4),D 甲 板 手 は 右 回 頭 中 であり, 衝 突 状 況 は 分 からないと 述 べている( 甲 5) これらの ことからすると, 原 告 とD 甲 板 手 とは, 衝 突 状 況 を 実 際 に 見 ておらず, 当 時, 衝 突 直 前 にAは 右 回 頭 中 であったことから, 衝 突 時 の 船 首 方 位 が 何 度 であったかは, 正 確 に 特 定 することは 極 めて 困 難 というべきであり,また, Bも 取 り 舵 一 杯 で 左 転 中 であったのであるから,Aの 船 首 方 位 がどの 位 置 にあったときに,Bと 衝 突 したのかも 不 明 と 言 わざるを 得 ないのであると ころ,これを154 度 で 衝 突 したと 断 定 することは 不 合 理 である したがって, 衝 突 時 点 においてAの 船 首 方 位 が154 度 を 示 していたこ とを 根 拠 に 衝 突 時 刻 を00 時 34 分 丁 度 と 断 定 し, 同 時 点 のAIS 情 報 に より 求 められた 位 置 から 船 橋 から 船 端 までの 距 離 を 加 えたとする 衝 突 地 点 についての 被 告 の 主 張 は, 採 用 することができない イ 被 告 は,Aの 針 路 と 速 力 について,AIS 記 録 を 基 に 航 跡 図 を 作 成 し, 所 要 点 間 を 結 んで 針 路 を 算 定 し,かつ 所 要 点 の 通 過 時 刻 から 速 力 を 算 定 し た 結 果,Aの 針 路 は00 時 23 分 ころから117 度 であり, 速 力 は17. 5ノットである 旨 主 張 する そこで 判 断 するに,GPSは,カーナビゲーションのように 人 工 衛 星 を 利 用 して, 船 舶 の 位 置, 針 路 及 び 速 力 等 を 測 定 する 装 置 であり,AISは, GPSを 装 備 している 船 舶 から 発 信 された 識 別 符 号, 船 名, 位 置, 針 路 及 び 速 力 などの 船 舶 のデータを 自 動 的 にVHF 電 波 で 送 受 信 し, 周 辺 船 舶 の 動 静 を 把 握 するための 装 置 である( 乙 32の1 2) Aは, 船 橋 に 設 置 されたGPS 装 置 のほか,GPSを 内 蔵 したAIS 装 置 を 搭 載 しており, 本 来 は, 船 橋 に 設 置 されたにGPSの 記 録 された 情 報 とAIS 装 置 から 発 信 された 情 報 を 受 信 した 海 上 保 安 部 のAIS 情 報 とが 一 致 するはずであ るが, 現 実 にはこれが 一 致 していない これは,Aの 船 橋 に 搭 載 されたG - 27 -

PS 装 置 とAIS 装 置 (GPS 装 置 内 蔵 )のいずれかが 誤 差 を 生 じさせて いるものと 考 えられるが, 船 橋 に 設 置 されたGPSが 誤 差 を 生 じさせてい ることを 認 めるに 足 りる 証 拠 はない そこで, 高 松 海 上 保 安 部 は, 原 告, D 甲 板 手 ほかから 事 情 を 聴 取 した 上, 船 橋 に 設 置 されたGPS 残 存 映 像 を 確 認 しながら 実 況 見 分 を 実 施 し,さらに 原 告 を 巡 視 艇 に 乗 船 させて 事 故 現 場 海 域 にて 実 際 に 変 針 地 点 やレーダーレンジを 切 り 替 えた 地 点, 緑 灯 灯 火 の 船 に 気 付 いた 地 点 などを 指 示 させて, 巡 視 艇 のGPS 機 能 を 組 み 込 んだ レーダーで 計 測 したのであるが,その 計 測 結 果 は,AのGPSの 情 報 とは 齟 齬 がないことが 確 認 されている( 甲 81ないし83) さらに, 他 船 船 長 らからも 事 情 を 聴 取 した 上, 他 船 のGPS 情 報 の 収 集 とこれに 基 づく 実 況 見 分 を 実 施 し,これらの 関 連 する 多 くの 証 拠 と 整 合 性 を 勘 案 し,Aの 航 跡 上 の 各 地 点 を 特 定 し, 速 力 を 算 定 しているのである 以 上 によれば, 高 松 海 上 保 安 部 がAの 船 橋 に 搭 載 されたGPSに 記 録 されている 情 報 に 基 づき 認 定 したAの 航 跡 情 報 は, 事 故 当 時 の 状 況 をより 正 確 に 分 析 した 合 理 的 なものと 評 価 することが 相 当 である したがって,これを 採 用 すべきであり,Aの 針 路 及 び 速 力 についての 被 告 の 主 張 は, 採 用 することができない ウ 被 告 は,Bの 針 路 及 び 速 力 について,00 時 27 分 ころにゆっくりした 速 度 で 徐 々に 南 方 に 向 けて 発 進 し,00 時 30 分 ころ, 衝 突 地 点 とιの 北 西 端 を 結 ぶ215 度 の 針 路 にて5.3ノット 前 後 で 航 行 を 開 始 し,00 時 30 分 から00 時 30 分 24 秒 までは5.3ノットから8.85ノットま で 増 速 中 で, 以 後 は 衝 突 まで 全 速 力 の8.85ノットで 航 行 を 継 続 したと し,Bの 航 行 開 始 位 置 について,この 航 行 速 力 と 経 過 時 間 を 計 算 し, 衝 突 地 点 から215 度 の 方 向 に1070m 遡 った 地 点 である 北 緯 度 分, 東 経 度 分 であると 主 張 する そこで 判 断 するに, 被 告 の 主 張 の 根 拠 は, 転 覆 したBの 実 況 見 分 におい - 28 -

て,スロットルが 全 速 力 となっていたことなどを 根 拠 とする しかし, 本 件 においては,1 漁 船 が 航 行 を 開 始 して 一 定 の 速 力 となるためには, 一 定 の 時 間 を 要 し,Bと 同 型 のKの 場 合, 停 船 から 全 速 力 まで 約 1 分 程 度 を 要 すること( 甲 105),2KのL 船 長 は,00 時 30 分 ころに,Bを 見 た ときの 速 力 について6 割 くらいの 速 力 であり,Kを 実 際 に 走 らせて 計 測 し た 結 果,L 船 長 が 見 たBの 速 力 は5.3ノット 程 度 と 供 述 していること, 3 漁 業 従 事 者 としては, 全 速 力 で 航 行 することは 燃 費 効 率 が 悪 いことは 十 分 に 認 識 しており, 燃 料 費 が 高 騰 している 折 から,Bが 終 始 全 速 力 で 航 行 していた 蓋 然 性 は 経 験 則 上 高 くないと 思 われること,4 原 告 は,00 時 3 3 分 すぎころに 自 船 左 前 方 約 500mの 地 点 に 南 下 してくるBに 気 付 き, 探 照 灯 を 照 射 するとともに 汽 笛 を 鳴 らしており,D 甲 板 手 は, 漁 船 は 本 船 の 針 路 方 向 に 接 近 していて, 段 々 速 度 を 上 げていたように 見 えたと 供 述 し ていることから,H 船 長 は,Aからの 探 照 灯 や 汽 笛 などの 警 告 信 号 に 気 付 き, 衝 突 を 避 けるため,Bの 速 度 を 全 速 力 に 増 速 したと 考 えるのが 前 後 の 事 実 から 合 理 的 であること,5L 船 長 は,Kが 揚 網 開 始 位 置 のとき,Bは, 自 船 から 見 て 船 首 右 舷 方 向 約 30mのところでごみ 処 理 中 で,5 分 後 の0 0 時 30 分 ころ,Bはιへ 向 け 走 り 始 めたが,このときのBの 位 置 は,K の 略 南 西 方 約 150mのところで, 揚 網 開 始 位 置 と 終 了 位 置 の 略 中 間 の 位 置 であったというのであり,Kに 搭 載 されたGPSに 記 録 された 航 跡 の 解 析 結 果 から,00 時 30 分 ころのBの 位 置 はβからの 真 方 位 196 度, 距 離 約 2200mと 判 明 していること,6βからBの 発 進 地 点 までの 距 離 は 2200mであり,βから 衝 突 地 点 とされるまでの 距 離 は 約 2850mで あり,その 角 度 ( 方 位 差 )は4 度 であり, 三 角 形 の 二 辺 の 長 さとその 角 度 が 判 明 しているから,Bの 発 進 地 点 から 衝 突 地 点 までの 距 離 を 計 算 により 求 めると 約 673mとなるところ, 被 告 の 主 張 する 衝 突 地 点 から1070 m 遡 った 地 点 がBの 発 進 地 点 というのは 約 400mも 誤 差 があることが - 29 -

重 要 である そして,これらのことからすると, 被 告 の 主 張 するBの 速 力 と 発 進 地 点 は, 他 の 事 情 と 整 合 しないことが 少 なからずみられ 合 理 的 なも のと 評 価 することはできない したがって, 被 告 の 上 記 主 張 を 採 用 することはできない 3 争 点 1について 以 上 を 前 提 として,AとBとの 位 置 関 係 及 び 衝 突 の 状 況 について, 予 防 法 1 5 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 がなく, 予 防 法 38 条 及 び39 条 の 船 員 の 常 務 によ り 律 せられるべきであるか( 争 点 1)について 検 討 する (1) AとBの 相 対 的 位 置 関 係 について ア 上 記 1 及 び2(1)によれば,AとBの 相 対 的 位 置 関 係 及 び 衝 突 の 状 況 は 以 下 のとおりであった (ア) Aは,00 時 23 分 ころ, 針 路 を116 度 に 変 針 し, 速 力 約 16. 5ノットで 航 行 し, 以 後 衝 突 直 前 に 右 舵 10 度 などを 取 り 右 転 するま で, 同 じ116 度 で 続 航 し,00 時 30 分 ころ, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 241 度 3300m) 付 近 に 達 した (イ) 一 方,Bは,00 時 25 分 ころ, 揚 網 を 終 え,00 時 27 分 ころア イドリング 運 転 がされ,00 時 30 分 ころ, 真 方 位 196 度, 約 220 0mの 地 点 からιに 向 け, 針 路 214 度 で 航 行 を 開 始 し, 約 30 秒 程 度 で 速 力 約 4~5ノットの 半 速 力 に 達 した (ウ) 原 告 は,00 時 30 分 ころ, 北 緯 度 分, 東 経 度 分 (β 灯 台 から 真 方 位 241 度 3300m)の 地 点 でレーダーレンジを 3 海 里 から1.5 海 里 に 切 り 替 えたときに, 自 船 船 首 方 向 からやや 左 に 約 1.25 海 里 ( 約 2315m) 付 近 に1つ, 船 首 前 方 2.5 海 里 (4630m) 付 近 の 左 右 に1つずつの 船 の 映 像 を 見 たが,1.25 海 里 の 映 像 は, 前 に 自 船 を 横 切 って 行 った 船 で 北 上 していると 思 い 込 - 30 -

み,00 時 33 分 に 緑 灯 を 見 せて 南 下 してくるBに 気 付 くまで, 針 路 116 度, 速 力 16.5ノットで 続 航 した (エ) 原 告 は,00 時 33 分 ころ, 緑 灯 を 見 せて 南 下 しているBに 気 付 き, 衝 突 する 切 迫 した 危 険 を 感 じ, 自 身 でAの 舵 を 右 10 度 に 切 り,D 甲 板 手 を 呼 んで 右 20 度 に 切 り,さらに 右 舵 一 杯 の35 度 に 切 らせた また, BのH 船 長 も 危 険 を 感 じ, 直 進 していたBを 左 転 させるべく, 取 り 舵 一 杯 に 舵 を 切 ったが, 間 に 合 わず, 両 船 は 衝 突 した イ Bは, 発 進 地 点 から 衝 突 地 点 まで 約 673m 航 行 しているところ,K 船 長 は,Bがアイドリング 状 態 から 発 進 し, 約 5.3ノットで 航 行 している のを 見 たと 述 べているが,アイドリング 状 態 から 約 5.3ノットの 速 力 に 達 するには, 約 30 秒 程 度 を 要 し,その 後,00 時 33 分 まで 約 5.3ノ ットで 航 行 したとすれば,00 時 30 分 から00 時 33 分 までを 平 均 約 4.8ノットで 航 行 したと 考 えられ,この 間 の 航 行 距 離 は 約 444mとな り,H 船 長 が,Aからの 探 照 灯 の 照 射 や 汽 笛 に 気 付 き,00 時 33 分 ころ, 全 速 力 に 増 速 したとすると 約 5.3ノットから9ノットの 全 速 力 に 達 する まで 約 30 秒 を 要 することから,00 時 33 分 から00 時 34 分 までの1 分 間 を 平 均 約 8ノットで 航 行 することとなり,この 間 の 航 行 距 離 は 約 24 6mとなり, 結 局,00 時 30 分 から00 時 34 分 までを 合 計 約 690m 航 行 することとなるのであって, 実 際 にBが 航 行 したと 考 えられる 距 離 で ある 約 673mに 近 似 する 以 上 からすると,Bは,00 時 30 分 ころから00 時 33 分 ころまでは 平 均 約 4.8ノットで,00 時 33 分 ころから00 分 34 分 ころまでは, 平 均 約 8ノットで 針 路 214 度 に 定 めて 航 行 していたと 考 えられるが, 衝 突 時 刻 が00 時 34 分 ころと 一 定 の 幅 があること, 衝 突 地 点 がGPSの 情 報 を 解 析 したものであるとしても, 通 信 機 器 の 誤 差 から 相 当 程 度 の 誤 差 は 生 じると 考 えられること, 実 際 に,Bが 約 673mを 航 行 するにあたって - 31 -

の 増 速 状 況 が 必 ずしも 明 らかでないことからすると,00 時 30 分 から0 0 時 33 分 までの 間 の1 分 間 のAからBを 見 た 場 合 の 方 位 変 化 の 詳 細 は, 不 明 といわざるを 得 ない しかしながら,AとBは,00 時 30 分 から00 時 33 分 まで, 互 いに, 相 手 船 の 存 在 に 気 付 くことなく,それぞれが 定 めた 針 路 を 直 進 していたこ とにより,00 時 33 分 の 時 点 で 互 いに 衝 突 の 切 迫 した 危 険 を 感 じる 状 況 が 発 生 し,それぞれが 回 避 行 動 を 取 っていることからすると,00 時 30 分 から00 時 33 分 までの 間, 両 船 は 衝 突 の 危 険 がある 相 対 的 位 置 関 係 で それぞれ 航 行 したものというべきである (2) 本 件 における 適 用 航 法 について ア 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 の 航 法 が 適 用 されるためには, 二 隻 の 動 力 船 が 互 いに 針 路 を 横 切 る 場 合 において, 衝 突 のおそれがあるとき に 該 当 することを 要 するところ, 本 件 においては,(1)に 判 断 した 両 船 の 相 対 的 位 置 関 係 からすると,この 要 件 に 該 当 すると 評 価 すべきものと 解 される したがって, 本 件 事 故 については, 予 防 法 15 条 の 規 定 する 横 切 り 船 の 航 法 を 適 用 するのが 相 当 である イ そうすると,Bは, 他 の 動 力 船 であるAを 右 舷 側 に 見 る 動 力 船 であるか ら,Bが 避 航 船 に 該 当 し, 他 の 動 力 船 であるAの 進 路 を 避 けなければ ならず,やむを 得 ない 場 合 を 除 き, 当 該 他 の 動 力 船 であるAの 船 首 方 向 を 横 切 ってはならない( 予 防 法 15 条 1 項 ) 避 航 船 は, 当 該 他 の 船 舶 から 十 分 に 遠 ざかるため,できるだけ 早 期 に,かつ, 大 幅 に 動 作 をとらなけれ ばならない( 同 法 16 条 ) ウ また,Aは 保 持 船 として,その 針 路 及 び 速 力 を 保 たなければならな い( 同 法 17 条 1 項 )のであり, 避 航 船 が, 法 律 の 規 定 に 基 づく 適 切 な 動 作 をとっていないことが 明 らかになった 場 合 は, 同 項 の 規 定 にかかわらず, 直 ちに 避 航 船 との 衝 突 を 避 けるための 動 作 をとることができる この 場 合 - 32 -

において 保 持 船 は,やむを 得 ない 場 合 を 除 き, 針 路 を 左 に 転 じてはならな い( 同 法 17 条 2 項 ) (3) 上 記 (1)(2)に 説 示 した 認 定 判 断 に 対 して, 本 件 裁 決 は,AとBとの 位 置 関 係 について, 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 航 法 の 適 用 を 否 定 し, 予 防 法 38 条 及 び39 条 の 船 員 の 常 務 により 律 するとして, 原 告 に 対 し, 三 等 海 技 士 ( 航 海 ) の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 懲 戒 処 分 とした これは,Bの 発 進 地 点 と 速 力, 衝 突 時 刻,Aの 速 力 など 重 要 な 事 実 の 認 定 を 誤 り,その 前 提 のもとに, 両 船 が 互 いに 針 路 を 横 切 ることになるものの,1 分 間 に2 度 以 上 の 方 位 変 化 があ るから 衝 突 のおそれがないと 判 断 したものであり, 適 用 航 法 を 誤 ったものと いうほかない したがって, 本 件 事 故 前 の 両 船 の 位 置 関 係 からすると 横 切 り 船 航 法 の 適 用 があるというべきである 4 争 点 2について 本 件 について, 横 切 り 船 航 法 の 適 用 があるとした 場 合 において, 原 告 に 対 し, 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1か 月 停 止 するとした 処 分 は 相 当 であるか( 争 点 2)について 検 討 する (1) 被 告 は, 横 切 り 船 航 法 の 適 用 があるとした 場 合 にも, 見 張 りを 常 に 行 う という 義 務 は, 船 舶 運 航 者 にとって 常 識 中 の 常 識 であり, 船 員 に 要 求 される 最 も 基 本 的 注 意 義 務 であるが, 原 告 は,この 見 張 り 義 務 に 違 反 して 本 件 事 故 を 惹 起 したものであり,その 責 任 は 重 大 であり, 結 果 もBと 衝 突 して 転 覆 さ せ,H 船 長 を 溺 死 させたものであるから, 原 告 の 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 懲 戒 は, 本 件 事 故 発 生 の 一 因 を 構 成 した 原 告 の 過 失 行 為 に 照 らし, 何 ら 相 当 性 を 欠 くものではない 旨 主 張 する( 予 備 的 主 張 ) そこで 判 断 するに, 上 記 3(1) 及 び(2)に 認 定 判 断 したとおり, 本 件 事 故 に ついては 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 の 航 法 が 適 用 されるべきであるところ,こ れを 前 提 として, 原 告 の 見 張 り 義 務 違 反 について 検 討 する - 33 -

原 告 は, 本 件 事 実 関 係 の 下 において,00 時 30 分 の 時 点 でレーダーに 自 船 左 前 方 1.25 海 里 に 漁 船 と 思 われる 映 像 を 認 めたのであるから,その 船 の 船 種 や 針 路 について, 特 に, 南 下 して 自 船 の 針 路 を 横 切 るものであるかを 直 接, 当 該 船 舶 の 灯 火 を 目 視 するなどして 確 認 し,これが 自 船 の 針 路 を 横 切 るものであって, 衝 突 のおそれがある 態 勢 で 接 近 していることが 確 認 された ときには, 保 持 船 として, 自 船 の 針 路, 速 力 を 維 持 した 上 で 相 手 船 に 避 航 を 促 すべく, 早 期 に 警 告 信 号 を 発 するとともに, 相 手 船 に 避 航 の 動 作 が 見 られ ず, 衝 突 を 避 けることができないと 認 めたときは, 衝 突 を 避 けるための 協 力 動 作 をとることにより 衝 突 を 回 避 すべき 注 意 義 務 があった ところが, 原 告 は, 自 船 左 前 方 1.25 海 里 に 見 えたレーダーの 船 影 を 北 上 船 と 思 い 込 み, 自 船 右 舷 前 方 2.5 海 里 付 近 の 漁 船 との 見 合 い 関 係 を 気 に して,その 動 静 を 監 視 していたため, 自 船 左 舷 前 方 の 見 張 りが 不 十 分 となり, Bが, 左 前 方 から 自 船 前 方 を 横 切 る 態 勢 で 接 近 していることに 気 付 かず, 衝 突 の 約 1 分 前 にBを 左 舷 前 方 約 500mに 発 見 後, 目 視 でその 動 きを 見 て, 衝 突 するとの 切 迫 した 危 険 を 感 じ, 探 照 灯 を 照 射 し, 汽 笛 を 吹 鳴 するととも に 右 舵 10 度 を 取 り, 甲 板 手 に 指 示 して 右 舵 20 度,さらに 右 舵 一 杯 の35 度 を 指 示 し, 右 転 したが 間 に 合 わず, 自 船 船 首 をB 右 舷 中 央 付 近 に 衝 突 し, 同 船 を 転 覆 させ, 乗 船 していたHを 溺 死 させた そうすると,AとBとの 相 対 的 位 置 関 係 からは,Aが 保 持 船 となり, 自 船 の 針 路, 速 力 を 維 持 すべきこ とにはなるが, 原 告 が, 衝 突 の 約 4 分 前 の00 時 30 分 ころに,レーダーに おいて, 自 船 左 前 方 1.25 海 里 に 船 影 を 見 たときに, 直 ちに,その 船 の 動 静 を 目 視 して 確 認 していれば,より 早 期 に 警 告 措 置 を 講 じることができ,B との 衝 突 を 避 けることができたといえるのであり, 原 告 に 見 張 り 不 十 分 の 過 失 ( 見 張 り 義 務 違 反 )が 認 められることは 明 らかである 一 方,Hは, 長 年, 現 場 海 域 における 底 びき 網 漁 に 携 わっていたのである から, 揚 網 作 業 を 終 えて00 時 30 分 ころ, 停 止 していた 状 況 から 発 進 地 点 - 34 -

から 航 行 を 開 始 するについては, 同 地 点 はα 東 航 路 の 東 口 付 近 で 同 航 路 を 通 行 する 船 舶 が 輻 輳 する 海 域 であり, 自 身 が 針 路 としたι 方 向 に 航 行 すれば, 同 航 路 を 横 切 ることとなり, 通 行 する 貨 物 船 やフェリーなどの 船 舶 と 衝 突 す る 危 険 があることを 十 分 認 識 していたと 推 認 される したがって,Hは, 発 進 地 点 から 航 行 を 開 始 するにあたり, 自 船 針 路 方 向 に 航 行 してくる 船 舶 の 有 無, 動 静 を 確 認 し,Bが 東 航 路 を 航 行 してくるAの 針 路 を 横 切 ることとなり, かつ, 衝 突 のおそれがあることを 確 認 した 場 合 には, 早 期 に 右 方 に 転 舵 する などして,Aの 進 路 を 避 ける 措 置 を 講 じ, 衝 突 を 回 避 すべき 注 意 義 務 があっ た ところが,Hは, 周 囲 の 見 張 りを 十 分 に 行 わず 漫 然 と 航 行 を 開 始 し,Aと 衝 突 のおそれを 生 じさせ,その 状 態 のまま 衝 突 直 前 まで 何 らの 避 航 措 置 を 講 ずることなく, 続 航 して 本 件 事 故 を 発 生 させたものであり,Hにも 少 なから ぬ 過 失 があるといわなければならない そして,Hのこの 過 失 は,Aが 予 防 法 上 の 保 持 船 であり,Bが 避 航 船 に 該 当 する 本 件 状 況 の 下 においては, 本 件 事 故 発 生 の 主 因 と 評 価 されるべきものである (2) 以 上 の 検 討 によれば, 原 告 が 見 張 り 義 務 違 反 の 過 失 が 認 められることは, 上 記 (1)のとおりであるが, 上 記 2(2)に 判 断 したとおり, 本 件 裁 決 は,Bの 発 進 地 点 及 び 速 力, 衝 突 時 刻,Aの 速 力 などの 本 件 事 故 の 発 生 にかかわる 重 要 な 事 実 につき, 不 正 確 な 認 定 をしたうえ, 本 件 事 故 につき 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 の 航 法 の 適 用 がないとの 誤 った 前 提 のもとに, 本 件 事 故 により 生 じ た 結 果 について, 原 告 の 過 失 の 軽 重 を 論 じているところ, 本 来 適 用 されるべ きである 予 防 法 15 条 の 横 切 り 船 の 航 法 の 規 範 を 適 用 すれば, 本 件 事 故 発 生 の 主 たる 原 因 は,Hが 見 張 り 不 十 分 のまま,Bの 針 路 をAの 針 路 を 横 切 るこ ととなるιに 向 けて 発 進 させ,その 後, 衝 突 約 1 分 前 に 至 るまで 何 らの 避 航 措 置 をも 講 じなかった 過 失 にあると 評 価 することが 相 当 である さらに, 結 果 的 に 衝 突 を 避 けることができなかったものの, 衝 突 1 分 前 ころ, 原 告 がB - 35 -

を 発 見 した 後, 探 照 灯 を 照 射 し, 汽 笛 を 吹 鳴 する 等 の 警 告 措 置 を 講 じている ことも 斟 酌 すべきである そうすると, 原 告 は,その 職 務 上 の 過 失 が, 結 果 的 に 本 件 事 故 発 生 の 一 因 となっているが,Hの 過 失 が 本 件 事 故 発 生 の 主 因 で あること 及 びその 過 失 の 大 きさとの 比 較 において, 原 告 の 処 分 を 考 えた 場 合 には, 原 告 の 三 級 海 技 士 ( 航 海 )の 業 務 を1 箇 月 停 止 するとの 懲 戒 は, 重 き に 失 し 相 当 性 を 欠 くものというべきである また, 本 件 事 故 により,Hの 死 亡 という 重 大 な 結 果 が 生 じているが,この 点 を 勘 案 してもなお 上 記 判 断 を 維 持 することが 適 切 であると 解 する 5 結 論 以 上 によれば, 原 告 の 被 告 に 対 する 本 件 請 求 は, 理 由 があるから 認 容 すべき である よって, 主 文 のとおり 判 決 する 東 京 高 等 裁 判 所 第 1 特 別 部 裁 判 長 裁 判 官 加 藤 新 太 郎 裁 判 官 柴 田 秀 裁 判 官 加 藤 美 枝 子 - 36 -