東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 における 福 島 県 南 部 地 域 の 木 造 建 築 物 の 被 害 調 査 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 被 害 調 査 福 島 県 南 中 部 域 在 来 木 軸 構 法 大 谷 石 土 蔵 1. はじめに 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 は 福 島 県 南 中 部 域 にも 甚 大 な 被 害 を 及 ぼしている 地 震 後 約 28 日 を 経 過 した 4 月 7~8 日 に 福 島 県 中 域 部 におけ る 木 造 住 宅 を 中 心 とした 被 害 の 現 地 調 査 を 白 河 市 を 中 心 として 矢 吹 町 鏡 石 町 須 賀 川 市 二 本 松 市 に 至 る 被 害 調 査 を 実 施 した ( 注 : 本 報 告 書 の 内 数 字 の 写 真 番 号 は 調 査 位 置 図 と 対 応 させた) 正 会 員 吉 川 盛 一 *1 同 稲 山 正 弘 *2 また 白 河 市 の 震 災 後 の 土 蔵 の 調 査 結 果 によると 市 街 地 周 辺 の 土 蔵 全 245 棟 に 対 し 被 害 無 し 81 棟 (33%) 外 壁 の 破 損 亀 裂 屋 根 瓦 の 被 害 集 計 155 棟 (63%)そ の 他 ( 調 査 できないもの 4%)が 報 告 されており 土 蔵 に 関 しては 倒 壊 には 至 っていないとのこと( 写 真 2~4) 2. 被 害 調 査 白 河 市 から 二 本 松 市 に 至 る 調 査 概 要 調 査 日 程 は 4 月 7~8 日 の 2 日 間 で 2 名 により 主 に 外 観 写 真 撮 影 による 調 査 を 行 った 7 日 は 白 河 市 地 区 周 辺 から 矢 吹 町 鏡 石 町 須 賀 川 市 本 宮 市 を 郡 山 市 は 日 没 で 断 念 8 日 は 天 候 をみて 二 本 松 市 周 辺 を 中 心 に 調 査 した 調 査 に 先 駆 け 震 災 から 1 ヶ 月 近 くが 経 過 したという 時 間 的 経 緯 を 考 慮 し 白 河 市 役 所 建 築 部 建 築 住 宅 課 を 訪 問 し 現 状 の 被 害 状 況 を 確 認 具 体 的 な 調 査 活 動 域 などを 整 理 木 造 住 宅 関 係 における 被 害 調 査 箇 所 を 選 定 するこ ととした 栃 木 県 を 3 月 16 日 より 2 日 間 先 行 調 査 した 同 東 大 チームの 情 報 によると 丘 の 低 地 よりも 丘 の 尾 根 から 麓 にかけての 高 台 の 方 に 被 害 が 集 中 している 傾 向 がある との 情 報 からそのような 市 内 近 隣 地 区 に 出 向 き 調 査 を 実 施 することとした 白 河 市 の 旧 周 辺 市 街 地 は 一 級 河 川 である 阿 武 隈 川 とその 支 流 である 谷 津 田 川 に 挟 まれた 形 で 旧 市 街 地 が 形 成 されており 江 戸 時 代 には 白 河 小 峰 城 の 城 下 町 として 商 業 地 域 として 発 展 を 遂 げきている 小 峰 城 より 南 方 1~2km 圏 内 には 400mクラスの 小 高 い 山 があり 多 く 点 在 その 中 から 市 中 心 の 南 方 側 に 位 置 する 三 本 松 地 区 栄 町 地 区 域 を 中 心 に 調 査 を 行 った この 周 辺 は 近 隣 にある 白 河 第 一 小 学 校 が 建 設 される 昭 和 54 年 頃 に 新 たに 宅 地 造 成 され 土 地 区 画 整 理 がなされた 比 較 的 新 しい 住 宅 地 とされている その 他 二 本 松 市 に 至 る 国 道 4 号 沿 線 地 区 において 時 間 的 な 経 過 だからであろうか 倒 壊 した 木 造 住 宅 は 調 査 中 に 多 くは 確 認 できていない 3. 白 河 市 の 伝 統 木 造 構 法 建 築 の 被 害 旧 市 街 地 エリアは 国 道 294 号 ( 旧 奥 州 街 道 )に 面 して おり 北 側 に JR 白 河 駅 白 河 小 峰 城 ( 写 真 1)があり 土 蔵 や 大 谷 石 による 建 築 が 数 多 く 点 在 している 今 回 の 地 震 被 害 で 小 峰 城 石 垣 のおよそ 6 割 が 崩 落 している 図 1 上 福 島 県 中 域 部 調 査 地 域 下 白 河 市 調 査 地 区 詳 細 The damege investigation of timber buildings in South Fukushima area from the 2011 Tohoku District off the Pacific Coast Earthquake YOSHIKAWA Seiichi, INAYAMA Masahiro
[ 白 河 市 旧 市 街 周 辺 と 市 南 側 地 区 での 被 害 状 況 調 査 ] 写 真 1: 白 河 小 峰 城 石 垣 の 被 害 写 真 2: 民 家 の 土 蔵 の 被 害 表 面 漆 喰 の 剥 落 写 真 3: 国 道 294 号 沿 い 旧 市 街 地 周 辺 大 谷 石 を 用 いた 建 築 ( 理 容 店 ) 外 観 からは 大 きな 損 傷 は 確 認 できない 目 地 部 でのひび 割 れ 一 部 石 材 の 割 れのみ 写 真 5: 土 蔵 (なまこ 壁 )の 被 害 同 一 の 敷 地 に 立 つ 4 つの 蔵 写 真 左 が 住 居 として 利 用 している 部 分 で 外 周 はすべて 漆 喰 仕 上 げ 下 地 の 荒 土 壁 が 崩 れ 木 軸 組 下 地 が 露 出 した 写 真 右 仕 上 げにタイルを 使 用 したなまこ 壁 の 土 蔵 妻 側 のタ イル 仕 上 げ 下 地 の 漆 喰 部 分 が 剥 落 写 真 4: 酒 蔵 の 被 害 表 面 中 塗 り 部 分 の 剥 落 写 真 6: 栄 町 地 区 昭 和 54 年 あたりから 造 成 されたという 高 台 に 建 つの 木 造 住 宅 地 震 による 地 盤 のずれから 全 体 が 傾 いた 写 真 7: 栄 町 地 区 1 階 部 分 のコーナー 柱 の 座 屈 破 壊 によ 写 真 8: 栄 町 地 区 地 震 による 地 割 れより 南 る 補 強 工 事 の 状 況 に 遭 遇 外 装 はラスモルタル 塗 り 一 北 方 向 に 90cm ほど 地 盤 が 移 動 した *1 部 大 東 谷 京 石 大 厚 学 農 30mm 学 特 張 定 り 研 究 仕 員 上 げ 博 士 柱 ( の 農 腐 学 ) 朽 が 進 行 していた *1 Researcher, Engineer, Dept.of Agricultural and Life Sciences,Univ. of Tokyo. Dr.of Agri. *2 東 京 大 学 大 学 院 准 教 授 博 士 ( 工 学 ) *2 Associate Professor, Dept.of Agricultural and Life Sciences.,Univ.of Tokyo. Ph.D.Eng. *1 東 京 大 学 農 学 特 定 研 究 員 博 士 ( 農 学 ) * *1 Researcher, Engineer, Dept.of Agricultural and Life Sciences,Univ. of Tokyo. Dr.of Agri. *2 東 京 大 学 大 学 院 准 教 授 博 士 ( 工 学 ) *2 Associate Professor, Dept.of Agricultural and Life Sciences.,Univ.of Tokyo. Ph.D.Eng. 2/6
[ 白 河 市 南 方 面 造 成 地 での 被 害 状 況 調 査 ] 写 真 9: 栄 町 地 区 2 階 建 て 軽 量 鉄 骨 構 造 のアパート 地 割 れが 生 じた 棟 (Ⅱ 号 棟 写 真 )の み 土 台 が 陥 没 し 傾 いた Ⅰ 号 棟 (Ⅱ 号 棟 左 に 位 置 )は 外 観 からの 大 きな 変 化 は 見 られなかっ た 写 真 右 2 点 地 割 れにより 90cm ずれた 隣 地 境 界 部 の 擁 壁 アスファルト 舗 装 のずれとアパ ートの 陥 没 三 本 松 地 区 高 台 より 市 内 方 向 を 望 む 写 真 10: 三 本 松 地 区 高 台 にある 住 木 造 宅 の 被 害 状 況 の 様 子 地 震 による 地 割 れに より 遥 へ 擁 壁 がずれ 落 ちた 屋 根 瓦 はほぼ 完 全 に 落 下 している 写 真 11: 三 本 松 地 区 木 造 住 宅 被 害 木 造 銅 板 葺 き による 門 の 倒 壊 母 家 は 柱 が 曲 げ 破 壊 し 変 形 した The damege investigation of timber buildings in South Fukushima area from the 2011 Tohoku District off the Pacific Coast Earthquake 3/6 YOSHIKAWA Seiichi, INAYAMA Masahiro
[ 福 島 県 中 域 部 での 被 害 状 況 調 査 ] 白 河 市 より 北 方 方 面 において 福 井 県 災 害 報 告 を 参 考 に 比 較 的 木 造 住 宅 の 被 害 報 告 が 大 きい 地 域 として 矢 吹 町 鏡 石 町 須 賀 川 市 本 宮 市 周 辺 地 域 方 面 に 国 道 4 号 線 を 北 上 し 調 査 を 実 施 した 写 真 12 : 矢 吹 町 花 の 里 地 区 なまこ 壁 の 重 厚 な 土 蔵 外 壁 のおよそ 半 分 に 剥 落 の 被 害 が 見 られた 写 真 13: 矢 吹 町 花 の 里 地 区 2 階 建 ての 大 谷 石 による 石 造 建 築 1 階 は 納 屋 2 階 は 居 室 として 使 用 外 壁 には 大 きな 損 傷 は 確 認 されない ものの 四 方 出 隅 部 分 に 亀 裂 が 多 く 見 られた 写 真 14: 鏡 石 町 笠 石 原 町 地 区 寄 棟 造 りによる 大 きな 木 造 真 壁 造 による 伝 統 木 造 住 宅 屋 根 瓦 がすべて 落 ち 2 階 出 隅 部 分 の 小 舞 壁 ( 耐 力 壁 ) また 窓 ガラス も 損 傷 1 階 の 壁 にも 多 くのひ び 割 れが 確 認 された 写 真 15 : 鏡 石 町 笠 石 原 町 地 区 2 階 建 ての 大 谷 石 による 石 造 建 築 の 2 階 部 分 の 倒 壊 右 同 敷 地 の 無 筋 によ る 大 谷 石 塀 の 倒 壊 *1 東 京 大 学 農 学 特 定 研 究 員 博 士 ( 農 学 ) *2 東 京 大 学 大 学 院 准 教 授 博 士 ( 工 学 ) 写 真 16 : 鏡 石 町 不 時 沼 地 区 竣 工 を 目 前 した 木 造 2 階 建 住 宅 開 口 部 *1 Researcher, Engineer, Dept.of Agricultural and Life 周 Sciences,Univ. 辺 でのせん of 断 Tokyo. ひび 割 Dr.of れ Agri. 出 隅 部 分 はひ *2 Associate Professor, Dept.of Agricultural and Life Sciences.,Univ.of び 割 れは 見 受 Tokyo. けられなかった Ph.D.Eng. 外 装 材 は 軽 量 気 泡 コンクリート 板 * 4/6
写 真 17: 須 賀 川 市 大 黒 町 屋 根 瓦 の 落 下 母 屋 の 損 傷 外 周 の 土 壁 がほぼ 崩 れ 補 修 工 事 を 行 う 前 の 状 況 に 遭 遇 家 主 に 許 可 を 得 て 内 部 を 拝 見 したが 内 部 の 土 壁 には 多 くのひび 割 れが 生 じているものの 外 部 壁 のよ うな 崩 壊 状 態 は 見 受 けられななかった 写 真 19: 須 賀 川 市 仁 井 田 地 区 2 階 部 分 は 対 角 方 向 の 壁 (サ イディング)が 脱 落 してい る 下 地 の 木 摺 りを 撤 去 し た 後 の 状 況 1 階 部 分 は 南 面 のコーナー 部 分 の 外 壁 筋 かいの 脱 落 などの 損 傷 を 受 けた 写 真 18: 須 賀 川 市 森 宿 ( 森 宿 区 民 会 館 ) 壁 サイディングの 脱 落 サッシュの 変 形 によるガラスの 破 損 写 真 20 : 本 宮 市 花 掛 ( 東 北 病 院 ) RC 造 ラー メン 構 造 かつての 古 い 病 棟 の 被 災 後 の 様 子 震 災 後 木 造 平 屋 建 ての 仮 宿 泊 施 設 の 工 事 が 進 行 し ていた The damege investigation of timber buildings in South Fukushima area from the 2011 Tohoku District off the Pacific Coast Earthquake YOSHIKAWA Seiichi, INAYAMA Masahiro 5/6
[ 福 島 県 中 域 部 二 本 松 市 内 での 被 害 状 況 調 査 ] 写 真 1: 二 本 松 市 旧 市 街 地 地 区 周 辺 ( 陸 羽 街 道 周 辺 ) 3 月 11 日 時 点 での 被 害 に 対 しての 修 理 下 地 に 土 壁 ではなくモ ルタルを 塗 りの 応 急 下 地 を 施 していた 市 内 では 木 造 住 宅 に 関 する 大 きな 被 害 の 様 子 は 見 受 けられなかった 写 真 2: 二 本 松 市 市 街 地 地 区 ( 陸 羽 街 道 周 辺 ) かつて 街 道 に 面 してあったという 煉 瓦 造 であった 酒 屋 の 塀 のなごり 縦 にひび 割 れが 入 った 程 度 で 大 きな 損 傷 は 無 い 写 真 4: 二 本 松 市 ( 岳 温 泉 地 区 ) 左 同 地 域 柱 頭 部 の 大 理 石 の 落 下 右 築 30 年 ほどの S 造 4 階 建 て 旅 館 RC 造 5 階 建 ての 旅 館 1 階 柱 周 辺 での 損 傷 状 況 *1 東 京 大 学 農 学 特 定 研 究 員 博 士 ( 農 学 ) *2 東 京 大 学 大 学 院 准 教 授 博 士 ( 工 学 ) 写 真 3: 二 本 松 市 若 宮 郭 内 ( 福 島 県 男 女 共 生 センター) 二 本 松 北 小 学 校 前 山 を 割 り 込 んで 建 設 した 4 階 建 て RC 造 仕 上 げ 材 構 造 体 には 損 傷 な どは 確 認 されない 施 設 は 自 衛 隊 11 分 写 真 5: 二 本 松 市 ( 岳 温 泉 深 堀 地 区 ) 団 の 常 駐 施 設 となっていた 3 月 11 日 時 点 ですでに 営 業 をしていないと 見 られる 平 屋 建 て 大 谷 石 造 3 月 11 日 の 地 震 では 建 物 損 傷 は 屋 根 の 損 傷 以 外 は 無 かったようだが 調 査 中 に 発 生 した(4 月 7 日 M7.4) 地 震 により 軒 が 一 部 脱 落 し 破 損 した *1 Researcher, Engineer, Dept.of Agricultural and Life Sciences,Univ. of Tokyo. Dr.of Agri. *2 Associate Professor, Dept.of Agricultural and Life Sciences.,Univ.of Tokyo. Ph.D.Eng. * 6/6