はじめに 八尾市は大阪府東部に位置する人口270,119 人 2013年2月1日現在 の特例市で 早くから 大阪市の近郊都市として発展し 中小企業を中心 に高度な技術力と製品開発力を誇るものづくりの まちとして知られるようになった また 市の東部にある高安山麓には200基以 上の古墳群が存在し 江戸時代の古い町屋のおも かげが残る久宝寺寺内町など 数多くの歴史的遺 産が保全されているまちでもある そして何より 全国的に有名な 河内音頭 の発祥地として 毎 年夏になると各地域で盆踊りが開催される賑わい と人情味の豊かなまちである 八尾市消防本部の概要 当市の消防本部は 1本部 1消防署 1分署 4出張所で組織しており 260名を職員定数と し 誰もが安全で安心して住み続けられる八尾 をめざし 災害に強い消防体制づくりに取り組ん でいる 平成26年4月には 高機能消防指令セ ンターの更新と共に 消防救急デジタル無線の運 用を開始する予定である 写真1 河内音頭まつり 38 月刊フェスク 13.5 1201.indd 38 13/04/12 19:47
写 真 2 八 尾 市 消 防 本 部 予 防 業 務 体 制 は 消 防 本 部 予 防 課 に 防 火 啓 発 係 査 察 係 建 築 係 危 険 物 保 安 係 の4 係 17 名 で 組 織 されており 主 な 業 務 として 災 害 予 防 知 識 の 普 及 啓 発 消 防 対 象 物 の 予 防 査 察 消 防 同 意 事 務 危 険 物 関 係 の 許 認 可 及 び 検 査 等 を 行 っている 本 稿 では 違 反 対 象 物 に 対 して 当 市 消 防 本 部 が 初 めて 消 防 用 設 備 等 の 設 置 維 持 命 令 ( 消 防 法 第 17 条 の4)を 発 し 違 反 是 正 に 取 り 組 んだ 事 例 に ついて 紹 介 する 違 反 の 概 要 今 回 紹 介 する 事 例 は ホテル(5 項 イ)から 個 室 ビデオ 試 写 室 (2 項 二 )に 用 途 変 更 されており 一 部 改 造 したために 消 防 用 設 備 等 ( 屋 内 消 火 栓 設 備 自 動 火 災 報 知 設 備 等 )が 未 設 置 となり 有 事 の 際 大 惨 事 になり 得 る 違 反 対 象 物 であった 変 更 前 (ホテル 時 ) 建 物 の 状 況 屋 外 階 段 あり(2カ 所 ) 2 階 部 分 の 各 部 屋 に 開 口 部 ( 窓 )あり 消 防 用 設 備 等 の 設 置 状 況 自 動 火 災 報 知 設 備 誘 導 灯 消 火 器 の 設 置 確 認 変 更 後 ( 個 室 型 ビデオ 試 写 室 時 ) 建 物 の 状 況 屋 外 階 段 切 断 (2カ 所 )( 写 真 3) 2 階 部 分 の 各 部 屋 の 開 口 部 なし( 窓 閉 鎖 )( 写 真 4) 消 防 用 設 備 等 の 設 置 状 況 自 動 火 災 報 知 設 備 なし( 取 り 外 されていた) 誘 導 灯 消 火 器 の 設 置 確 認 幾 度 となく 所 有 者 占 有 者 へ 電 話 訪 問 し 是 正 意 思 を 喚 起 するために 懸 命 に 指 導 を 行 った 所 有 者 の 態 度 占 有 者 が 勝 手 に 建 物 を 改 造 した 占 有 者 に 言 え! わしは 知 らん と 時 には 罵 声 を 浴 びせ られ 消 防 側 の 意 思 を 伝 える 暇 もなく 対 処 でき ない 状 態 であった 占 有 者 の 態 度 消 防 からの 電 話 連 絡 を 受 けると 来 庁 して 改 善 計 画 や 確 約 書 の 提 出 をするとともに 指 示 事 項 に ついて はいはい わかりました ちゃんとや るよ 等 の 返 事 はするものの 一 向 に 是 正 の 動 き が 見 受 けられなかった やるよ 姿 勢 に 何 度 も 裏 切 られ 消 防 を 軽 視 している 態 度 であった そのうち 担 当 者 が 変 わり 放 置 状 態 となるであろうという 態 度 がありありと 見 受 けられた このような 違 反 対 象 物 に 対 して 通 常 の 予 防 業 務 として 違 反 処 理 を 行 っている 消 防 本 部 において は なんら 問 題 点 もなく 処 理 できるものと 考 える が 当 消 防 本 部 が 初 の 措 置 命 令 を 発 動 し 違 反 処 理 を 行 った 過 程 で 問 題 点 の 解 決 に 向 け 苦 慮 した 部 分 について 時 間 を 追 って 紹 介 する 月 刊 フェスク 13.5 39
写 真 3 切 断 された2 階 屋 外 階 段 写 真 4 内 部 から 閉 鎖 されている 窓 防 火 対 象 物 の 概 要 用 途 : 個 室 型 ビデオ 試 写 室 (2 項 ニ) 構 造 : 鉄 骨 造 地 上 2 階 建 (2 階 部 分 : 無 窓 ) 規 模 : 建 築 面 積 393.96m2 延 べ 面 積 789.20m2 違 反 事 項 屋 内 消 火 栓 設 備 未 設 置 (2 階 部 分 ) 自 動 火 災 報 知 設 備 未 設 置 避 難 器 具 未 設 置 (2 階 部 分 ) 消 火 器 の 設 置 単 位 数 不 足 誘 導 灯 の 技 術 上 の 不 備 防 火 対 象 物 使 用 開 始 の 未 届 命 令 書 交 付 までの 指 導 経 緯 平 成 20 年 7 月 15 日 に 実 施 した 定 期 の 立 入 検 査 において 本 件 は 防 火 対 象 物 の 用 途 がホテルか ら 個 室 型 ビデオ 試 写 室 に 変 更 されていることを 確 認 した 平 成 20 年 10 月 1 日 に 発 生 した 大 阪 市 浪 速 区 の 個 室 ビデオ 店 火 災 事 件 と 同 日 に 令 別 表 第 1( 二 ) 項 関 係 の 改 正 法 令 が 施 行 されたこともあり 当 市 においても 特 に 注 目 する 対 象 物 として 市 の 建 築 指 導 を 担 当 する 建 築 部 局 と 合 同 で3 回 にわたり 立 入 検 査 等 を 実 施 した このとき 所 有 者 に 対 して 不 備 事 項 の 通 知 を 行 お うとしたが 前 述 のとおり わしは 知 らん の 一 点 張 りであった やむを 得 ず 占 有 者 へ 立 入 検 査 結 果 通 知 書 勧 告 書 の 交 付 改 善 計 画 書 を 提 出 させ るなどの 是 正 指 導 を 行 ったが 占 有 者 の 態 度 も 前 述 したとおりであった その 後 数 回 にわたり 継 続 的 に 不 備 事 項 の 改 善 を 促 す 連 絡 は 行 っていたが 所 有 者 占 有 者 共 に 全 く 是 正 の 意 思 がうかがえず 消 防 法 違 反 は 放 置 されたままとなっていた 平 成 23 年 2 月 中 旬 担 当 係 員 が 他 市 において 実 施 している 違 反 処 理 の 実 務 研 修 を 受 講 したこと を 契 機 とし 当 該 関 係 者 に 対 する 命 令 の 発 動 を 視 野 に 入 れた 違 反 処 理 に 向 けて 準 備 を 開 始 した 平 成 23 年 3 月 には 違 反 状 態 の 確 認 から 約 2 年 半 の 間 違 反 処 理 に 着 手 していなかったことや 占 有 者 に 発 している 文 書 の 内 容 等 過 去 の 経 緯 の 中 で 消 防 側 に 問 題 がなかったかなど 命 令 書 交 付 を 前 提 に 市 の 総 務 部 の 法 規 担 当 と 協 議 検 討 を 重 ねた その 結 果 法 的 には 特 に 問 題 なし との 結 論 に 至 った 平 成 23 年 3 月 30 日 付 けで 占 有 者 に 対 し 消 防 用 設 備 等 未 設 置 (2 階 部 分 の 屋 内 消 火 栓 設 備 自 動 火 災 報 知 設 備 避 難 器 具 ) 技 術 上 の 不 備 ( 消 火 器 誘 導 灯 ) 防 火 対 象 物 使 用 開 始 の 未 届 けについて 警 告 を 行 った 履 行 期 限 は 違 反 処 理 標 準 マニュア ル を 参 考 に 屋 内 消 火 栓 設 備 設 置 に 係 る 工 事 期 間 の 最 長 を 約 3カ 月 と 見 込 み 平 成 23 年 6 月 30 日 を 期 日 とした この 時 名 宛 人 を 占 有 者 のみと してしまったことは 反 省 点 として 後 述 する その 後 幾 度 となく 所 有 者 宅 への 訪 問 や 占 有 者 の 出 社 時 刻 を 見 計 らって 連 絡 を 行 い 違 反 状 態 において 事 故 が 発 生 した 時 の 建 物 関 係 者 が 問 われ 40 月 刊 フェスク 13.5
る 責 任 の 重 大 さを 諭 し 是 正 意 思 の 有 無 の 確 認 を 行 うとともに 確 約 書 の 提 出 を 指 導 した 平 成 23 年 4 月 19 日 には 占 有 者 から 依 頼 を 受 けた 設 備 業 者 が 来 庁 し 警 告 書 の 内 容 を 期 日 ま でに 履 行 する 旨 の 確 約 を 得 たが 平 成 23 年 5 月 中 旬 設 備 工 事 に 取 り 掛 かっている 様 子 がなかっ たため 占 有 者 に 何 度 も 連 絡 を 試 みたが 不 通 で あった また 設 備 業 者 に 状 況 確 認 したところ 設 備 業 者 と 占 有 者 との 間 も 連 絡 が 取 れない 状 態 であった 改 善 計 画 書 確 約 書 の 文 書 は 提 出 され ちゃ んとやるよ の 是 正 に 向 けた 姿 勢 は 見 られるが 懸 命 に 行 っている 消 防 側 の 改 善 指 導 をものの 見 事 に 裏 切 った 行 為 であった このような 状 況 から 平 成 23 年 5 月 下 旬 に 本 件 について 消 防 内 部 で 検 討 を 行 った 結 果 当 該 防 火 対 象 物 をこのまま 放 置 しておけば 有 事 の 際 大 惨 事 になり 得 る 違 反 対 象 物 と 判 断 し 本 部 が 一 体 となり 初 の 措 置 命 令 発 動 に 向 けて 違 反 処 理 を 行 う 意 思 決 定 がなされた 平 成 23 年 7 月 20 日 には 命 令 後 に 改 善 が 全 く 見 られない 事 態 を 想 定 して 告 発 へと 進 展 したと きのことも 考 慮 し 速 やかに 対 応 できるよう 八 尾 警 察 署 へ 情 報 を 提 供 し 連 携 を 図 った 平 成 23 年 8 月 3 日 には 占 有 者 から 消 火 器 避 難 はしごを 設 置 したとの 連 絡 を 受 け 確 認 を 行 った 届 出 は 未 提 出 であるものの 命 令 内 容 か ら 削 除 した この 時 消 防 側 の 意 思 が 相 手 に 伝 わったように 思 え 改 善 を 期 待 したが これまでの 経 緯 の 中 で 幾 度 となく 裏 切 られたことにより 信 頼 度 は 完 全 で はなかったことも 事 実 である 命 令 書 の 交 付 および 公 示 ⑴ 命 令 書 の 交 付 平 成 23 年 8 月 5 日 付 けで 所 有 者 を 名 宛 人 と して 手 交 するも 頑 なに 受 領 拒 否 されたため 内 容 証 明 郵 便 で 送 達 した 履 行 期 限 は 屋 内 消 火 栓 設 備 設 置 については 設 置 に 係 る 工 事 期 間 を 見 込 んで 約 3カ 月 とし 自 動 火 災 報 知 設 備 については 約 2カ 月 誘 導 灯 につい ては 約 1カ 月 とした ⑵ 公 示 平 成 23 年 8 月 8 日 命 令 書 が 相 手 方 に 送 達 さ れたことを 確 認 後 標 識 を 店 舗 入 口 に 公 示 した( 写 真 5) ⑶ 公 示 に 関 する 苦 情 公 示 後 占 有 者 から 営 業 妨 害 だ! との 苦 情 時 系 列 ( 抜 粋 ) 平 成 20 年 1 7 月 15 日 定 期 の 立 入 検 査 実 施 (1 回 目 ) 占 有 者 へ 立 入 検 査 結 果 通 知 文 交 付 210 月 1 日 浪 速 区 の 個 室 ビデオ 火 災 を 受 け 立 入 検 査 実 施 (2 回 目 ) 310 月 7 日 占 有 者 へ 勧 告 書 交 付 410 月 23 日 市 の 建 築 部 局 と 合 同 検 査 (3 回 目 ) 511 月 4 日 立 入 検 査 実 施 (4 回 目 ) 主 に 改 善 計 画 書 の 提 出 を 指 導 611 月 21 日 所 有 者 から 改 善 計 画 書 提 出 される 引 き 続 き 継 続 的 に 指 導 は 行 っているが 全 く 是 正 の 意 思 なし 平 成 23 年 72 月 中 旬 違 反 処 理 に 向 けて 始 動 83 月 2 日 市 の 建 築 都 市 部 審 査 指 導 課 と 合 同 検 査 (5 回 目 ) 93 月 中 旬 市 総 務 部 法 規 担 当 課 へ 相 談 10 3 月 30 日 警 告 書 交 付 11 4 月 19 日 設 備 業 者 来 庁 設 備 の 設 置 相 談 にくるも 進 展 せず 125 月 下 旬 命 令 に 向 けて 始 動 消 防 内 部 で 会 議 を 開 く 13 7 月 20 日 八 尾 警 察 相 談 告 発 時 の 対 応 について 相 談 148 月 3 日 消 火 器 避 難 はしごの 設 置 を 確 認 158 月 5 日 所 有 者 へ 命 令 書 交 付 16 8 月 19 日 占 有 者 から 確 約 書 が 提 出 される 17 8 月 22 日 市 の 顧 問 弁 護 士 に 相 談 1810 月 24 日 占 有 者 による 改 善 事 実 を 確 認 命 令 に 関 する 違 反 はすべて 終 了 1910 月 25 日 防 火 対 象 物 使 用 開 始 届 提 出 すべての 違 反 事 項 について 完 結 月 刊 フェスク 13.5 41
の 電 話 が 数 回 あり 標 識 が 剥 がされる 事 態 が 複 数 回 発 生 した その 都 度 貼 付 を 繰 り 返 した ⑷ 市 の 顧 問 弁 護 士 への 相 談 主 な 内 容 ⑴ 標 識 が 剥 がされることについて 消 防 が 消 防 法 上 の 違 反 として 警 察 へ 告 発 もし 火 災 等 の 事 故 が 発 生 し 被 害 があった 場 合 標 識 が 剥 がされていることに 気 づいてい る 消 防 に 責 任 があるか ⑵ 命 令 後 是 正 されなかった 場 合 の 対 応 策 1 消 防 法 第 17 条 の4 第 1 項 ( 設 置 命 令 ) 命 令 違 反 で 告 発 2 消 防 法 第 5 条 の2 第 1 項 ( 使 用 停 止 命 令 ) 命 令 発 動 3 消 防 法 第 5 条 の2 第 1 項 ( 使 用 停 止 命 令 ) 命 令 発 動 かつ 消 防 法 第 17 条 の4 第 1 項 ( 設 置 命 令 ) 命 令 違 反 で 告 発 回 答 ⑴ 標 識 が 剥 がされることについて 標 識 が 剥 がされることで 告 発 することは 消 防 の 主 たる 目 的 ではない 標 識 が 剥 がされる 度 に 消 防 が 取 り 付 けてい る 事 実 を 警 察 へ 情 報 提 供 しておく 必 要 がある ⑵ 命 令 後 是 正 されなかった 場 合 の 対 応 策 1から3のすべてが 間 違 いとは 言 えないが 市 民 の 安 全 を 第 一 に 考 え まずは 2の 消 防 法 第 5 条 の2 第 1 項 ( 使 用 停 止 命 令 ) 命 令 発 動 が 妥 当 である 命 令 書 の 交 付 後 関 係 者 の 対 応 平 成 23 年 8 月 19 日 占 有 者 から 命 令 書 に 記 載 された 期 日 どおりに 履 行 する 内 容 の 確 約 書 が 提 出 された 後 日 占 有 者 から 依 頼 を 受 けた 設 備 業 者 が 相 談 に 訪 れ 屋 内 消 火 栓 設 備 設 置 については 2 階 部 分 に 開 口 部 を 設 け 有 窓 階 としたいとの 申 し 入 れがあった 履 行 状 況 及 び 是 正 完 結 へ 平 成 23 年 9 月 12 日 には 自 動 火 災 報 知 設 備 誘 導 灯 避 難 はしご 消 火 器 の 設 置 届 出 書 が 提 出 されたことを 受 け 同 日 検 査 を 行 い 適 正 に 設 置 さ 写 真 5 店 舗 入 口 に 掲 出 した 標 識 れていることを 確 認 した 平 成 23 年 9 月 13 日 には 自 動 火 災 報 知 設 備 誘 導 灯 避 難 はしご 消 火 器 の 検 査 済 証 を 交 付 した 平 成 23 年 10 月 24 日 2 階 部 分 が 有 窓 階 に なったことを 確 認 し( 写 真 6) これにより 屋 内 消 火 栓 設 備 が 不 要 となったことで 命 令 に 関 する 違 反 は 全 て 是 正 されたことを 確 認 した 平 成 23 年 10 月 25 日 には 防 火 対 象 物 使 用 開 始 届 が 提 出 され すべての 違 反 事 項 について 是 正 が 完 結 した 本 件 違 反 処 理 を 振 り 返 って 以 上 のように 本 件 事 案 は 当 市 初 の 消 防 用 設 備 等 の 設 置 命 令 を 行 い 違 反 是 正 に 至 ったことは 当 市 消 防 本 部 にとって 大 変 意 義 のある 事 案 であっ た その 反 面 多 くの 反 省 点 も 認 められた 当 市 消 防 本 部 の 今 後 の 予 防 行 政 に 対 する 自 戒 の 意 味 を 込 め また 他 の 消 防 機 関 の 参 考 になればと 思 い その 主 な 内 容 を 記 載 する ⑴ 命 令 処 理 に 着 手 するまで3 年 の 期 間 を 要 したこと 各 消 防 本 部 において 今 回 の 事 例 のような 重 大 違 反 のある 対 象 物 を 抱 えているものの 違 反 処 理 を 行 う 専 門 知 識 を 持 った 職 員 不 足 等 の 理 由 で 命 令 措 置 まで 着 手 できず 対 応 に 苦 慮 しているケー スも 少 なくないのではないかと 思 慮 する タイミングを 逃 してしまうと 多 くの 違 反 者 は 42 月 刊 フェスク 13.5
写 真 6 改 修 された2 階 部 分 消 防 は 何 もできない 消 防 は 行 政 処 分 ( 命 令 告 発 )まで 発 動 することはないだろう 放 って おけばそのうち 何 とかなるだろう と 思 っている のではないだろうか 我 々の 過 去 の 査 察 指 導 が 建 物 関 係 者 ( 所 有 者 占 有 者 等 )にとってそれほど 重 みのあるものでなかったとしたら それは 消 防 の 予 防 行 政 のあり 方 を 問 われると 同 時 に 我 々が 反 省 しなければならない 点 でもある 今 後 は 危 険 度 の 優 先 順 位 をつけ 今 までのよ うに 任 意 による 是 正 を 促 す 程 度 の 行 政 指 導 ではな く 熱 意 をもって 違 反 是 正 に 取 り 組 んでいるのだ という 姿 勢 を 見 せることが 必 要 であると 学 んだ ⑵ 通 知 書 勧 告 書 警 告 書 の 交 付 の 名 宛 人 がすべて 占 有 者 のみであったこと 建 物 付 属 設 備 ( 固 定 設 備 )となるものについて は 所 有 者 の 設 置 義 務 は 逃 れられないものと 考 え る よって 今 回 の 事 例 の 場 合 理 論 的 には 屋 内 消 火 栓 設 備 と 自 動 火 災 報 知 設 備 については 所 有 者 に 設 置 責 任 があることは 明 白 であることから 本 件 において 命 令 の 際 名 宛 人 を 所 有 者 としたことに ついては 正 しかったと 考 える しかしながら 警 告 書 までの 行 政 指 導 の 文 書 を 頑 なに 所 有 者 が 受 領 拒 否 していたため 占 有 者 に 対 し 行 政 指 導 を 進 めてきたことが 所 有 者 にい きなり 命 令 書 を 交 付 するという 形 になり 結 果 的 に 所 有 者 の 態 度 を 硬 化 させてしまった 反 省 点 として 所 有 者 が 頑 なに 受 領 を 拒 否 した にせよ 所 有 者 に 対 し 配 達 記 録 配 達 証 明 郵 便 を 使 うなど 法 的 到 達 手 段 を 尽 くすべきであった また 2 月 に 着 手 してからはスムーズに 流 れて いるが 初 期 段 階 において 通 知 書 勧 告 書 警 告 書 命 令 書 へと 処 理 を 進 めていくある 程 度 のプラ ンニング( 違 反 是 正 計 画 )を 事 前 に 作 成 していれ ば 一 層 スムーズに 進 んだのではないかと 考 える おわりに 今 回 の 違 反 是 正 は 当 消 防 本 部 が 初 めて 消 防 用 設 備 等 の 設 置 命 令 ( 行 政 処 分 )を 進 めた 事 例 である 命 令 書 交 付 までの 経 過 の 中 で 不 備 がなかった か また 交 付 後 消 防 が 法 的 措 置 の 公 示 として 標 識 を 貼 付 するが このことより 予 想 される 相 手 の 苦 情 や 命 令 が 履 行 されず 告 発 へと 進 展 したときのこ とを 考 慮 し 市 長 部 局 の 法 規 担 当 者 顧 問 弁 護 士 及 び 警 察 などと 事 前 に 相 談 等 を 行 い 詳 細 なアド バイス 等 を 受 けながら 予 防 課 員 が 粘 り 強 く 違 反 是 正 を 進 めたことで 行 政 処 分 ( 措 置 命 令 )に 着 手 し てからはスムーズに 処 理 が 進 捗 し 完 結 できたと 考 えている 最 後 に 今 回 の 事 例 に 多 くの 職 員 が 携 わり 様 々 な 経 験 を 積 んでいく 過 程 において 多 くの 知 識 を 得 たことが 一 番 の 収 穫 であったと 同 時 に 組 織 と しても 大 きな 成 長 を 遂 げたと 確 信 している 月 刊 フェスク 13.5 43