Discussion Paper Series University of Tokyo Institute of Social Science Panel Survey 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクト ディスカッションペーパーシリーズ 初 職 非 正 規 就 業 が 結 婚 タイミングへ 及 ぼす 影 響 の 男 女 比 較 Reconsidering the Impact of the First Job on Marriage Timing: A Comparison of Males and Females 吉 田 崇 ( 静 岡 大 学 人 文 社 会 科 学 部 ) Takashi YOSHIDA September 2012 No.64 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 INSTITUTE OF SOCIAL SCIENCE UNIVERSITY OF TOKYO
東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクト ディスカッションペーパーシリーズ No.64 2012 年 9 月 初 職 非 正 規 就 業 が 結 婚 タイミングへ 及 ぼす 影 響 の 男 女 比 較 吉 田 崇 ( 静 岡 大 学 人 文 社 会 科 学 部 ) 本 稿 では 若 年 層 の 雇 用 悪 化 が 家 族 形 成 ( 結 婚 )に 与 える 影 響 について 検 討 する 先 行 研 究 の 多 くは 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることは 男 女 とも 結 婚 に 不 利 にはたらく( 結 婚 を 遅 ら せる)ことで 一 致 している しかし 非 正 規 雇 用 の 女 性 が 結 婚 が 遅 いということは 経 済 合 理 性 からはうまく 説 明 できない そこで JLPS データを 用 いてこの 問 題 を 再 検 討 したと ころ 男 性 では 先 行 研 究 と 同 様 の 結 果 が 得 られたが 女 性 では 非 正 規 雇 用 の 及 ぼす 影 響 が 学 歴 によって 異 なることが 示 された 高 学 歴 女 性 で 非 正 規 雇 用 が 結 婚 を 遅 らせるという 結 果 について さらに 検 討 するために 初 職 の 職 業 分 布 を 確 認 したところ 大 卒 の 非 正 規 雇 用 には 多 くの 専 門 職 が 含 まれているという 特 徴 がみられた 本 研 究 は 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 (S)( 18103003, 22223005)の 助 成 を 受 けたもの である 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 の 実 施 にあたっては 社 会 科 学 研 究 所 研 究 資 金 株 式 会 社 アウトソーシングからの 奨 学 寄 付 金 を 受 けた パネル 調 査 データの 使 用 にあ たっては 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 企 画 委 員 会 の 許 可 を 受 けた
1. 問 題 の 所 在 本 稿 の 目 的 は 初 職 の 従 業 上 の 地 位 ( 雇 用 形 態 )が 非 正 規 雇 用 であることが 結 婚 タイミ ングに 及 ぼす 影 響 を 再 検 討 することである Becker の 家 族 理 論 によれば 晩 婚 化 は 女 性 の 経 済 的 自 立 によって 説 明 される(Becker 1981) すなわち 女 性 の 高 学 歴 化 が 進 み 経 済 的 自 立 が 高 まることによって 結 婚 の 便 益 が 低 下 し 結 婚 に 至 らないとするものである(これを 経 済 的 自 立 仮 説 と 呼 ぶ) さらに 日 本 では 結 婚 出 産 による 就 業 継 続 が 依 然 として 困 難 である 就 業 継 続 が 困 難 であるこ とは 結 婚 出 産 による 機 会 費 用 が 大 きいことを 意 味 し このことが 晩 婚 化 ( 結 婚 先 延 ば し)を 進 行 させる 大 きな 要 因 ともなっている( 八 代 1993) はじめに 若 年 層 の 晩 婚 化 未 婚 化 や 雇 用 情 勢 について 官 庁 統 計 を 用 いて 確 認 してお こう まず 年 齢 階 級 別 の 未 婚 率 の 推 移 をみると 次 の 図 1a,b のようになっている 100 90 80 70 60 % 50 40 30 20 10 0 1975 80 85 90 95 2000 05 2010 年 20-24 歳 25-29 歳 30-34 歳 35-39 歳 図 1-a 年 齢 階 級 別 未 婚 率 の 推 移 ( 男 ) 100 90 80 70 60 % 50 40 30 20 10 0 1975 80 85 90 95 2000 05 2010 年 20-24 歳 25-29 歳 30-34 歳 35-39 歳 図 1-b 年 齢 階 級 別 未 婚 率 の 推 移 ( 女 ) ( 出 所 ) 総 務 省 国 勢 調 査 未 婚 率 は 男 女 ともすべての 年 齢 階 級 において 上 昇 している たとえば 女 性 の 25-29 歳 で -1-
は 1990 年 には 40%であった 未 婚 率 が 2010 年 には 60%にもなっており この 20 年 間 で 未 既 婚 の 比 率 が 逆 転 している 以 上 のように 結 婚 タイミングが 後 方 へシフト( 晩 婚 化 ) していることがうかがえる 次 に 若 年 層 の 雇 用 情 勢 について 確 認 しよう 雇 用 情 勢 をとらえるための 指 標 には 失 業 率 をはじめとする 様 々な 指 標 があるが 本 稿 では 非 正 規 雇 用 が 婚 姻 に 及 ぼす 影 響 に 関 心 があるため 非 正 規 就 業 率 についてみておこう 図 2a,b は 年 齢 階 級 別 非 正 規 雇 用 率 の 経 年 変 化 を 示 したものである 70 60 50 40 % 30 20 15-24 歳 * 25-34 歳 35-44 歳 45-54 歳 10 0 1985 1990 95 2000 05 2010 年 図 2-a 年 齢 階 級 別 非 正 規 雇 用 率 の 推 移 ( 男 ) 70 60 50 40 % 30 20 15-24 歳 * 25-34 歳 35-44 歳 45-54 歳 10 0 1985 1990 95 2000 05 2010 年 図 2-b 年 齢 階 級 別 非 正 規 雇 用 率 の 推 移 ( 女 ) ( 出 所 ) 総 務 省 労 働 力 調 査 ( 注 ) 役 員 を 除 く 雇 用 者 に 占 める 非 正 規 雇 用 (パート アルバイト, 契 約 社 員, 派 遣 社 員, 契 約 社 員 嘱 託 社 員,その 他 )の 割 合 (%) 15-24 歳 は 学 生 アルバイトを 除 く これによると 1990 年 代 半 ば 以 降 の 非 正 規 雇 用 率 の 増 加 傾 向 は ほとんどすべての 年 齢 階 級 において 観 察 される 男 性 では 年 齢 が 若 いほどこの 傾 向 が 顕 著 であり 2000 年 代 半 ば 以 降 15-24 歳 男 性 の 約 3 割 が 非 正 規 就 業 している 一 方 女 性 では 35-44 歳 45-54 歳 の 非 正 規 雇 用 率 はもともと 高 い 水 準 にあったが(これらの 年 齢 層 は 出 産 子 育 てによ る 就 業 中 断 後 のパート 就 業 による 労 働 市 場 への 再 参 入 の 時 期 に 相 当 する) 1990 年 代 半 ば -2-
以 降 は 未 婚 者 の 多 く 含 まれる 若 年 層 とりわけ 15-24 歳 での 増 加 傾 向 が 著 しい 2000 年 代 半 ば 以 降 15-24 歳 女 性 の 約 4 割 が 非 正 規 就 業 している さいごに 就 業 状 態 と 婚 姻 状 態 の 関 係 についてみてみよう 図 3 に 示 したのは 年 齢 階 級 ごとの 未 婚 率 を 就 業 形 態 ごとにプロットしたものである ここでいう 非 正 規 とは 派 遣 社 員 とパート アルバイトを 加 えたものである 100 80 60 % 正 規 40 非 正 規 20 0 15-19 歳 20-24 歳 25-29 歳 30-34 歳 35-39 歳 40-44 歳 45-49 歳 図 3-a 雇 用 形 態 と 未 婚 率 ( 男 ) 100 80 60 % 正 規 40 非 正 規 20 0 15-19 歳 20-24 歳 25-29 歳 30-34 歳 35-39 歳 40-44 歳 45-49 歳 図 3-b 雇 用 形 態 と 未 婚 率 ( 女 ) ( 出 典 ) 総 務 省 国 勢 調 査 これによると 男 性 では 非 正 規 雇 用 で 未 婚 率 が 高 く 女 性 では 正 規 雇 用 で 未 婚 率 が 高 い という 逆 の 傾 向 があることが 分 かる もちろん 結 婚 した 後 に 非 正 規 就 業 する 女 性 も 含 まれるため これらの 図 を 就 業 形 態 の 違 いが 婚 姻 状 態 に 与 える 影 響 として 読 み 取 ることは できない 雇 用 形 態 と 結 婚 の 関 係 について 分 析 するためには 1 時 点 の 横 断 データではなく 履 歴 情 報 を 含 むデータの 利 用 が 不 可 欠 である そこで 3 節 では 履 歴 情 報 を 含 む 個 票 データを 用 い この 問 題 を 検 討 する その 前 に 次 節 で 既 存 研 究 を 概 観 しておこう -3-
2. 先 行 研 究 初 職 の 雇 用 形 態 と 結 婚 タイミングの 関 係 については 多 くの 研 究 蓄 積 がある 酒 井 樋 口 (2005)は 初 職 が 非 正 規 雇 用 であった 場 合 正 規 雇 用 であった 場 合 と 比 べると 結 婚 タ イミングが 遅 くなる ということを 示 し フリーター 経 験 は 結 婚 に 不 利 に 働 く ことへの 関 心 を 高 めた 類 似 の 知 見 は 永 瀬 (2002) 津 谷 (2009)などでも 得 られている 表 1 雇 用 状 態 と 結 婚 タイミングに 関 する 研 究 ( 出 版 順 ) データ 年 齢 1) イベント 非 正 規 統 制 変 数 結 果 3) 方 法 2) 経 験 時 期 学 歴 生 年 その 他 男 女 永 瀬 (2002) 厚 生 省 第 11 回 出 18~49 歳 19 歳 ~ 結 婚 結 婚 前 また 親 同 居 K-M, 生 動 向 基 本 調 査 学 卒 ~ 結 婚 は 現 職 4) DTL ** (1997) 樋 口 酒 井 (2004) 家 計 研 パネル 結 婚 25 歳 時 有 配 偶 率 負 酒 井 樋 口 (2005) 酒 井 岩 松 (2005) 津 谷 (2009) 津 谷 (2011) 慶 應 義 塾 家 計 パネ 20~52 歳 結 婚 年 齢 学 卒 1 年 後 ル または (KHPS2004) 2 年 後 5) 失 業 率 Cox ** ** ( 卒 年 ) 世 代 とジェンダーパ 18~49 歳 結 婚 年 齢 初 職 なし Cox ** ネル(JGGS2004, ** 07) 吉 田 (2012) 社 研 パネル 1~5 20~40 歳 経 過 年 数 初 職 初 職 K-M, (JLPS2007-11) 男 :16 歳 ~ 職 種 Cox * 女 :18 歳 ~ 注 1) 年 齢 は 調 査 対 象 ではなく 分 析 に 使 用 したもの またパネル 調 査 の 場 合 は 初 回 調 査 時 の 年 齢 注 2)K-M はカプランマイヤー(Kaplan-Meier) 法 DTL は 離 散 時 間 ロジットモデル Cox は 比 例 ハザー ドモデル 注 3) 多 変 量 解 析 における 非 正 規 雇 用 の( 負 の) 効 果 の 有 意 確 率 (** p<.01, * p<.05, p<.1) 注 4) 男 性 は 現 職 女 性 の 既 婚 者 は 結 婚 直 前 職 女 性 の 未 婚 者 は 現 職 注 5)フリーターを 学 卒 後 未 婚 で 無 業 もしくは 臨 時 雇 用 であった 者 と 定 義 しているため 失 業 者 だ けでなく 無 業 者 全 てが 含 まれている ns ここで 重 要 なのは これらの 研 究 の 多 くが 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることは 男 女 ともに 結 婚 に 不 利 にはたらく( 結 婚 タイミングを 遅 らせる)としていることである しかし 女 性 については 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることが 結 婚 タイミングを 遅 らせるという 結 果 は ベッカーの 家 族 理 論 と 整 合 的 でなく また なぜそうなるかについても 論 文 中 で 十 分 には 説 明 されていない 次 節 では これらの 知 見 の 追 試 を 行 ってみる -4-
3. 分 析 本 節 では 若 年 層 を 対 象 とするパネル 調 査 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 働 き 方 とライフ スタイルの 変 化 に 関 する 全 国 調 査 ( JLPS)を 用 い 初 職 の 雇 用 形 態 と 結 婚 タイミングの 違 いについて 検 討 する 調 査 時 に 既 婚 のケースだけでなく 調 査 時 点 では 未 婚 ( 観 察 打 ち 切 り)のケースも 含 め て 扱 えるイベントヒストリー 分 析 を 行 う 再 婚 経 験 者 (W1 情 報 )を 除 いた 上 で 結 婚 可 能 年 齢 ( 男 性 18 歳 女 性 16 歳 )から 結 婚 に 至 るまでの 期 間 の 未 婚 残 存 ( 生 存 ) 率 を Kaplan-Meier 法 を 用 いて 男 女 別 にプロットした( 図 4a,b) なお 時 間 軸 は 男 性 は 18 歳 か らの 女 性 は 16 歳 からの 経 過 年 数 である 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Kaplan-Meier survival estimates 0 10 20 30 analysis time 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Kaplan-Meier survival estimates 0 10 20 30 analysis time regular non-regular regular non-regular 図 4-a 正 規 非 正 規 の 比 較 ( 男 ) 図 4-b 正 規 非 正 規 の 比 較 ( 女 ) (Log-Rank test χ 2 =32.1, p=<.001) (Log-Rank test χ 2 =8.6, p=.<010) これによると 確 かに 男 性 は 初 職 が 正 規 雇 用 である 方 が 非 正 規 雇 用 である 場 合 よりも 結 婚 が 早 いことが 分 かる 一 方 女 性 は 階 段 グラフが 交 差 しており 明 瞭 ではないが 10 年 目 (20 代 半 ば) 以 降 は 男 性 と 同 様 正 規 雇 用 の 方 が 非 正 規 雇 用 よりも 結 婚 が 早 い 傾 向 がみられ るが 20 代 半 ばまではむしろ 非 正 規 雇 用 の 方 が 正 規 雇 用 よりも 結 婚 が 早 いことが 分 かる 結 婚 年 齢 は 学 歴 によって 大 きく 異 なることが 知 られているため 女 性 のデータについて 学 歴 を 中 学 高 校 卒 と 短 大 大 学 卒 に 層 化 して 同 様 の 分 析 を 行 った( 図 5a,b) -5-
0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Kaplan-Meier survival estimates 0 10 20 30 analysis time 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Kaplan-Meier survival estimates 0 10 20 30 analysis time regular non-regular regular non-regular 図 5-a 正 規 / 非 正 規 比 較 ( 中 学 高 校 卒 ) 図 5-b 正 規 / 非 正 規 比 較 ( 短 大 大 学 卒 ) (Log-Rank test χ 2 =0.12, ns) (Log-Rank test χ 2 =15.78, p<.001) これによると 中 学 高 校 卒 では 正 規 非 正 規 のグラフは 交 わっており 有 意 差 はない 一 方 短 大 大 学 卒 では 正 規 雇 用 で 結 婚 が 早 く 非 正 規 雇 用 で 結 婚 が 遅 いという ダイン 性 と 類 似 した 傾 向 がみられる 以 上 まとめると 男 性 の 場 合 初 職 が 非 正 規 であることは 男 性 の 結 婚 タイミングを 遅 ら せていることが 分 かった これは 先 行 研 究 でも 繰 り 返 し 指 摘 されたことである 一 方 女 性 の 場 合 初 職 が 非 正 規 であることが 結 婚 タイミングを 遅 らせる 傾 向 は 明 瞭 でなく むし ろ 20 歳 代 半 ばごろまでは 初 職 が 非 正 規 雇 用 であった 者 の 方 が 結 婚 が 早 いという 結 果 が 得 られた さらに 学 歴 で 層 化 した 分 析 によって 中 学 高 校 卒 では 初 職 の 就 業 形 態 によっ て 結 婚 タイミングに 差 はなく 短 大 大 学 卒 のみ 初 職 が 非 正 規 であれることが 結 婚 タイ ミングを 遅 らせるという 傾 向 がみられた なぜ 短 大 大 学 卒 の 女 性 は 初 職 が 非 正 規 であれば 結 婚 が 遅 れるのであろうか ここ では 初 職 の 仕 事 内 容 すなわち 職 種 の 情 報 を 手 掛 かりに この 問 題 を 考 えてみたい 表 2 に 示 したのは 学 歴 および 初 職 の 従 業 上 地 位 ごとの 初 職 の 職 種 (SSM 職 業 小 分 類 ) 分 布 で 表 2-a は 初 職 正 規 雇 用 の 表 2-b は 初 職 非 正 規 雇 用 のものである これによると 初 職 が 正 規 雇 用 であれば 多 くは 事 務 系 のホワイトカラーだが 高 卒 で は 販 売 サービスなどのグレーカラー( 店 員 理 美 容 師 給 仕 係 )が 目 立 つ また 専 門 職 は 高 卒 では 医 療 系 ( 看 護 士 その 他 医 療 )が 短 大 卒 では 保 母 幼 稚 園 教 員 が 大 卒 では 情 報 処 理 (SE)や 学 校 教 員 が 多 く 同 じ 専 門 職 であっても 学 歴 によって 就 いている 就 くことのできる 職 種 が 大 きく 異 なることが 分 かる 一 方 非 正 規 職 については 全 体 的 に 正 規 職 と 比 べて 事 務 職 が 少 なくグレーカラー( 販 売 給 仕 )が 目 立 つ また 大 卒 については グレーカラーも 多 いが 専 門 職 なかでも 教 員 比 率 が 高 く これは 正 規 雇 用 と 比 べてもこの 傾 向 が 強 いことが 分 かる -6-
表 2-a 学 歴 別 の 初 職 職 業 小 分 類 構 成 比 ( 学 歴 ごとの 初 職 正 規 職 に 占 める%) 高 卒 短 大 卒 大 卒 1 位 一 般 事 務 W 16.7 一 般 事 務 W 27.7 一 般 事 務 W 24.3 2 位 看 護 士 P 11.6 会 計 事 務 W 11.3 営 業 事 務 W 11.2 3 位 販 売 店 員 G 8.4 保 母 P 8.7 会 計 事 務 W 7.4 4 位 会 計 事 務 W 8.3 営 業 事 務 W 8.7 販 売 店 員 G 6.3 5 位 その 他 医 療 P 5.9 販 売 店 員 G 6.9 情 報 処 理 P 6.0 6 位 他 事 務 W 5.5 幼 稚 園 P 5.6 外 交 員 G 4.9 7 位 美 容 師 G 4.7 その 他 事 務 W 3.8 小 学 教 員 P 3.3 8 位 営 業 事 務 W 4.0 その 他 医 療 P 3.3 9 位 給 仕 係 G 3.3 表 2-b 学 歴 別 の 初 職 職 業 小 分 類 構 成 比 ( 学 歴 ごとの 初 職 非 正 規 職 に 占 める%) 高 卒 短 大 卒 大 卒 1 位 販 売 店 員 G 16.7 一 般 事 務 W 21.1 一 般 事 務 W 17.9 2 位 給 仕 係 G 15.7 販 売 店 員 G 19.7 販 売 店 員 G 12.2 3 位 レジ 係 G 8.6 給 仕 係 G 7.9 中 学 教 員 P 8.1 4 位 一 般 事 務 W 8.1 保 母 P 6.6 給 仕 係 G 6.5 5 位 理 美 容 師 G 4.8 レジ 係 G 5.3 個 人 教 師 P 5.7 6 位 小 学 教 員 P 4.9 7 位 高 校 教 員 P 4.9 ( 注 ) 記 号 は 職 業 4 分 類 で P( 専 門 職 ) W(ホワイトカラー 事 務 職 ) G(グレーカラー 販 売 サービス 職 ) B(マニュアル 職 + 農 業 )を 表 す 1 正 規 職 で 3% 非 正 規 職 で 4% 未 満 の 表 示 は 省 略 した このことから 考 えられるのは 大 卒 女 性 の 初 職 が 非 正 規 の 専 門 職 であれば 正 規 職 への 転 換 というキャリア 形 成 を 優 先 されるため 結 果 として 結 婚 イベントが 先 延 ばしされてい るという 可 能 性 である もちろん ここで 示 した 初 職 の 職 種 分 布 だけでは このことを 裏 付 ける 十 分 な 証 拠 とはいえない 4. 結 論 本 稿 では 非 正 規 雇 用 就 業 と 結 婚 の 関 係 について 初 職 の 従 業 上 の 地 位 による 結 婚 タイ ミングの 違 いを 若 年 層 を 対 象 とするパネル 調 査 を 用 いて 検 討 した 先 行 研 究 で 繰 り 返 し 示 された 通 り 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることは 男 性 の 結 婚 タイミングを 遅 らせているこ 1 この 4 分 類 は 原 盛 山 (1999)が 若 年 層 (25~34 歳 )の 社 会 移 動 分 析 に 使 用 した 分 類 (ホワイト グレー ブルー 農 業 )を 参 考 にして 作 成 した 具 体 的 には SSM 職 業 大 分 類 ( 専 門 管 理 事 務 販 売 熟 練 半 熟 練 非 熟 練 農 業 の 8 分 類 )を 元 に 専 門 (P) 事 務 管 理 (W) 販 売 サービス(G) ブルーカラー(B)とした なお JGSS-2000 から 採 用 された レジ 係 (701)は 会 計 事 務 員 ( 事 務 職 )から 独 立 したものだが 職 業 分 類 を 作 成 する 際 には 販 売 職 として 扱 っている なお 農 業 従 事 者 が 極 めて 少 ないため( 有 職 者 の 0.5%) ブルーと 合 わせて 集 計 した -7-
とが 確 認 された 一 方 で 同 様 の 傾 向 は 女 性 には 見 られなかった 女 性 のデータを 学 歴 別 に 分 析 したところ 中 学 高 校 卒 の 女 性 では 初 職 の 就 業 形 態 によって 結 婚 タイミングの 違 いはなかったが 高 学 歴 女 性 では 男 性 と 同 様 に 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることが 結 婚 タイミ ングを 遅 らせていることが 分 かった 以 上 から 初 職 が 非 正 規 雇 用 であることが 結 婚 タイ ミングに 及 ぼす 影 響 は 学 歴 によって 異 なっており 女 性 全 体 について 一 様 の 効 果 をもつ 訳 ではないことが 示 唆 された 高 学 歴 女 性 において 初 職 が 非 正 規 であることが 結 婚 を 遅 らせることの 原 因 を 検 討 する ために 初 職 の 職 種 ( 職 業 小 分 類 ) 分 布 を 見 たところ 大 卒 初 職 非 正 規 の 中 には 多 く の 専 門 職 が 含 まれることが 分 かった このことから 初 職 が 非 正 規 の 専 門 職 であれば 正 規 職 への 転 換 というキャリア 形 成 が 優 先 されるため 結 婚 が 先 延 ばしされるという 可 能 性 を 提 示 した もちろん これは 試 論 にとどまっており より 厳 密 な 議 論 が 必 要 であること は 言 うまでもない 男 女 で 結 婚 タイミングに 及 ぼす 要 因 が 異 なると 想 定 することは 自 然 で あり 職 業 をはじめとするその 要 因 の 検 討 は 今 後 の 課 題 としたい 文 献 Becker, G. S., 1981, A Treatise of the Family, Harvard University Press. 原 純 輔 盛 山 和 夫,1999, 社 会 階 層 豊 かさの 中 の 不 平 等 東 京 大 学 出 版 会. 樋 口 美 雄 酒 井 正,2004, 均 等 法 世 代 とバブル 崩 壊 後 世 代 の 就 業 比 較 樋 口 美 雄 太 田 清 家 計 経 済 研 究 所 女 性 たちの 平 成 不 況 日 本 経 済 新 聞 社,29-56. 永 瀬 伸 子,2002, 若 年 層 の 雇 用 の 非 正 規 化 と 結 婚 行 動 人 口 問 題 研 究 58(2): 22-35. 酒 井 正 樋 口 美 雄,2005, フリーターのその 後 就 業 所 得 結 婚 出 産 日 本 労 働 研 究 雑 誌 535: 29-41. 酒 井 正 岩 松 尚 吾,2005, フリーター 以 前 とフリーター 以 後 樋 口 美 雄 慶 應 義 塾 大 学 経 商 連 携 21 世 紀 COE 編 日 本 の 家 計 行 動 のダイナミズム [I] 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会, 139-62. 津 谷 典 子,2009, 学 歴 と 雇 用 安 定 性 のパートナーシップ 形 成 への 影 響 人 口 問 題 研 究 65(2): 45-63. 津 谷 典 子,2011, 未 婚 化 の 要 因 ジェンダーからみた 学 歴 と 雇 用 阿 藤 誠 西 岡 八 郎 津 谷 典 子 福 田 亘 孝 編 少 子 化 時 代 の 家 族 変 容 東 京 大 学 出 版 会,19-44. 八 代 尚 宏,1993, 結 婚 の 経 済 学 結 婚 とは 人 生 における 最 大 の 投 資 二 見 書 房. 吉 田 崇,2012, 若 年 女 性 の 初 期 キャリアとライフコースの 動 態 社 会 学 研 究 90: 75-96. -8-
東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクトについて 労 働 市 場 の 構 造 変 動 急 激 な 少 子 高 齢 化 グローバル 化 の 進 展 などにともない 日 本 社 会 における 就 業 結 婚 家 族 教 育 意 識 ライフスタイルのあり 方 は 大 きく 変 化 を 遂 げ ようとしている これからの 日 本 社 会 がどのような 方 向 に 進 むのかを 考 える 上 で 現 在 生 じている 変 化 がどのような 原 因 によるものなのか あるいはどこが 変 化 してどこが 変 化 し ていないのかを 明 確 にすることはきわめて 重 要 である 本 プロジェクトは こうした 問 題 をパネル 調 査 の 手 法 を 用 いることによって 実 証 的 に 解 明 することを 研 究 課 題 とするものである このため 社 会 科 学 研 究 所 では 若 年 パネル 調 査 壮 年 パネル 調 査 高 卒 パネル 調 査 の3つのパネル 調 査 を 実 施 している 本 プロジェクトの 推 進 にあたり 以 下 の 資 金 提 供 を 受 けた 記 して 感 謝 したい 文 部 科 学 省 独 立 行 政 法 人 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 S:2006 年 度 ~2009 年 度 2010 年 度 ~2014 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 政 策 科 学 推 進 研 究 :2004 年 度 ~2006 年 度 奨 学 寄 付 金 株 式 会 社 アウトソーシング( 代 表 取 締 役 社 長 土 井 春 彦 本 社 静 岡 市 ):2006 年 度 ~2008 年 度 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクト ディスカッションペーパーシリーズについて 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクトディスカッションペーパーシリーズは 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 におけるパネル 調 査 プロジェクト 関 連 の 研 究 成 果 を 速 報 性 を 重 視 し 暫 定 的 にまとめたものである
東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 パネル 調 査 プロジェクト http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/