中 国 における 少 子 高 齢 化 の 実 態, 発 生 要 因 と 対 策 復 旦 大 学 人 口 研 究 所 王 桂 新 公 益 財 団 法 人 アジア 成 長 研 究 所 戴 二 彪 Working Paper Series Vol. 2015-07 2015 年 3 月 この Working Paper の 内 容 は 著 者 によるものであり 必 ずしも 当 センターの 見 解 を 反 映 したものではない なお 一 部 といえども 無 断 で 引 用 再 録 されてはならない 公 益 財 団 法 人 アジア 成 長 研 究 所
中 国 における 少 子 高 齢 化 の 実 態, 発 生 要 因 と 対 策 王 桂 新 ( 復 旦 大 学 人 口 研 究 所 教 授 ) 戴 二 彪 (アジア 成 長 研 究 所 主 席 研 究 員 ) 要 旨 高 速 な 経 済 成 長 を 続 けている 中 国 において, 少 子 高 齢 化 も 急 速 に 進 行 している 2001 年 に, 中 国 の 総 人 口 における 65 歳 以 上 の 高 齢 者 人 口 の 割 合 が 7%を 超 え, 近 隣 の 日 本 や 韓 国 に 続 き 中 国 も 高 齢 化 社 会 に 入 った 少 子 高 齢 化 が 中 国 の 経 済 社 会 に 与 える 様 々なマイナ スの 影 響 はすでに 顕 在 化 しており, 中 国 が 目 指 している 持 続 可 能 な 発 展 に 対 して 大 きなチ ャレンジとなっている 本 稿 は, 中 国 における 少 子 高 齢 化 の 実 態, 発 生 要 因 とその 対 策 を 考 察 するものである まず, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 実 態 とその 特 徴 を 明 らかにする そして, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 発 生 要 因 を 考 察 する 最 後 では, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 実 態 特 徴 発 生 要 因 に 関 する 考 察 結 果 に 基 づいて,どのように 人 口 少 子 高 齢 化 のチャレンジに 対 応 する かについて 幾 つかの 対 策 を 提 案 する 1
1. はじめに 中 国 は, 過 去 30 数 年 間 に 年 平 均 10% 近 い GDP 成 長 率 を 達 成 し,2010 年 以 降 世 界 第 二 の 経 済 大 国 に 躍 進 したと 同 時 に, 人 口 構 造 の 少 子 高 齢 化 も 急 速 に 進 行 している 2001 年 ごろ に, 中 国 の 総 人 口 における 65 歳 以 上 人 口 の 割 合 が 7%を 超 え, 中 国 は 日 本 韓 国 などの 東 アジア 近 隣 国 に 続 き 人 口 高 齢 化 社 会 に 入 った 少 子 高 齢 化 が 中 国 の 経 済 社 会 に 与 える 様 々 なマイナスの 影 響 はすでに 顕 在 化 しており, 中 国 が 目 指 している 持 続 可 能 な 発 展 にとって 大 きなチャレンジとなっている 今 後, 少 子 高 齢 化 が 中 国 の 新 常 態 ( ニューノーマル ) 1 の 一 側 面 として 長 期 化 すると 予 想 され,それによってもたらした 各 種 のチャレンジへの 対 応 は, 中 国 にとって 大 きな 政 策 課 題 となっている( 杜 鹏 等,2014; 林 家 彬 等,2014) 注 意 すべきことは, 中 国 は 世 界 第 二 位 の 経 済 大 国 になったとはいえ,まだ 発 展 途 上 国 の 一 つであり, 一 人 当 たり 平 均 所 得 水 準 も 社 会 制 度 の 成 熟 度 も, 先 進 諸 国 と 比 べかなり 遅 れ ている 中 国 では, 長 期 間 において 戸 籍 制 度 を 土 台 とする 都 市 農 村 二 元 社 会 体 制 や 計 画 出 産 政 策 を 厳 しく 実 行 してきたため, 経 済 発 展 の 早 い 段 階 に 少 子 高 齢 化 が 急 速 に 進 み, 中 国 独 自 の 少 子 高 齢 化 特 徴 が 形 成 されている また, 人 口 統 計 において 常 住 人 口 と 戸 籍 人 口 という 2 つの 統 計 基 準 が 存 在 しており, 中 国 の 地 域 別 ( 都 市 と 農 村 別 や 省 別 など) 少 子 高 齢 化 に 関 する 実 態 把 握 さえ,かなり 複 雑 な 作 業 となっている このため, 中 国 の 少 子 高 齢 化 問 題 を 分 析 する 際 に,まずこうした 特 徴 と 複 雑 性 を 認 識 する 必 要 がある 本 稿 は, 中 国 における 少 子 高 齢 化 の 実 態, 発 生 要 因 と 対 策 を 考 察 するものであり,4 節 か ら 構 成 される 第 2 節 では, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 実 態 とその 特 徴 を 明 らかにする 第 3 節 では, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 発 生 要 因,すなわち 少 子 高 齢 化 への 影 響 要 因 を 考 察 する 第 4 節 では, 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 実 態 特 徴 およびその 発 生 要 因 に 関 する 考 察 結 果 に 基 づいて, どのように 人 口 少 子 高 齢 化 のチャレンジに 対 応 するかについて 幾 つかの 対 策 を 提 案 する 2. 中 国 における 少 子 高 齢 化 の 実 態 2.1 少 子 高 齢 化 の 推 移 本 稿 では,65 歳 以 上 (65 歳 を 含 む)の 人 口 と 0-14 歳 の 人 口 を,それぞれ 高 齢 人 口 と 年 少 人 口 と 定 義 している 人 口 高 齢 化 とは 65 歳 以 上 人 口 の 総 人 口 に 占 める 割 合 が 増 大 することを 意 味 し,65 歳 以 上 人 口 の 総 人 口 に 占 める 割 合 を 人 口 高 齢 化 率 として, 人 口 高 齢 化 の 進 行 状 況 ( 水 準 )を 表 す また, 人 口 の 少 子 化 とは 0-14 歳 の 年 少 人 口 の 総 人 口 に 占 め 1 中 国 の 習 近 平 国 家 主 席 は,2014 年 5 月 に 河 南 省 を 視 察 した 際, 我 が 国 は 依 然 として 重 要 な 戦 略 的 チャ ンス 期 にあり, 自 信 を 持 ち, 現 在 の 経 済 発 展 段 階 の 特 徴 を 生 かし, 新 常 態 に 適 応 し, 戦 略 的 平 常 心 を 保 つ 必 要 がある と 語 った さらに, 習 主 席 は,2014 年 11 月 に 北 京 で 開 催 された APEC 会 議 の 講 演 で, 中 国 経 済 が 高 速 成 長 から 中 高 速 成 長 へ 移 行 している 現 在 の 段 階 を 新 常 態 (ニューノーマル)と 表 現 した これ を 受 けて, 新 常 態 という 言 葉 は, 中 国 経 済 を 議 論 する 時 のキーワードとして, 中 国 国 内 外 で 流 行 するよ うになっている 2
る 割 合 が 減 少 することを 意 味 し,0-14 歳 の 年 少 人 口 の 総 人 口 に 占 める 割 合 を 年 少 人 口 率 と して, 人 口 少 子 化 の 進 行 状 況 ( 水 準 )を 表 す 中 国 人 口 の 年 齢 構 造 の 変 化 は, 図 1 と 表 1 に 示 されている 図 1 と 表 1 から 見 られるように, 中 華 人 民 共 和 国 建 国 (1949 年 ) 後 の 1953 年 に, 中 国 の 年 少 人 口 率 と 高 齢 化 率 はそれぞれ 36.3%と 4.41%であったが,1964 年 には 40.7%,3.53% となった すなわち,この 期 間 の 中 国 人 口 の 年 齢 構 造 には, 若 年 化 が 進 行 していたといえ る しかし,10 年 余 りの 若 年 化 が 続 いた 直 後, 中 国 人 口 の 少 子 高 齢 化 トレンドが 開 始 した 人 口 の 高 齢 化 について 見 ると,1982 年 と 1995 年 の 高 齢 化 率 はそれぞれ 4.9%と 6.2%へ 上 昇 し, 大 体 日 本 の 1950 年 と 1965 年 の 水 準 (4.9%と 6.3%)に 相 当 する これを 見 る 限 り, 中 国 の 人 口 高 齢 化 は 日 本 よりおよそ 30 年 遅 くなっている 一 方, 少 子 化 を 表 す 年 少 人 口 率 は, 高 齢 化 率 と 逆 の 方 向 に 変 動 し,1982 年 と 1995 年 の 年 少 人 口 率 がそれぞれ 33.59%と 26.60%へ 低 下 した 2001 年 になると, 中 国 人 口 の 高 齢 化 率 と 年 少 人 口 率 はさらにそれぞれ 7.1%と 22.50%に なり, 両 者 に 基 づいて 計 算 される 老 年 化 指 数 (= 高 齢 化 率 / 年 少 人 口 率 )は 31.56%と 高 く なった 国 家 の 年 齢 類 型 の 区 分 基 準 によると( 表 1), 中 国 は 2001 年 にすでに 老 年 型 国 家 になったと 判 断 できる その 後, 中 国 の 少 子 高 齢 化 が 持 続 的 に 進 み,2013 年 に 高 齢 化 率 と 年 少 人 口 率 はそれぞれ 9.7%と 16.4%になり, 少 子 高 齢 化 の 深 刻 度 は 一 層 増 大 している 図 1 中 国 の 人 口 高 齢 化 の 推 移 資 料 : 中 国 の 人 口 センサスより 作 成 ( 注 ): 左 軸 : 高 齢 人 口 数 ; 右 軸 : 高 齢 人 口 の 割 合 3
表 1 国 家 の 年 齢 類 型 の 区 分 基 準 年 齢 類 型 1-14 歳 65 歳 以 上 老 年 化 指 数 人 口 の 割 合 人 口 の 割 合 若 年 型 40% 以 上 4% 未 満 20% 未 満 成 年 型 30-40% 4-7% 20-30% 老 年 型 30% 未 満 7% 以 上 30% 以 上 表 2 中 国 人 口 の 年 齢 構 造 の 変 化 年 次 0-14 歳 15-64 歳 65 歳 以 上 老 年 化 指 数 1953 36.3 59.3 4.4 12.12 1964 40.7 55.7 3.6 8.85 1982 33.59 61.50 4.91 14.62 1987 28.68 65.86 5.40 19.04 1990 27.69 66.74 5.57 20.12 1995 26.60 67.20 6.20 23.31 1996 26.39 67.20 6.41 24.24 1997 25.96 67.50 6.54 25.19 1998 25.70 67.60 6.70 26.07 1999 25.40 67.70 6.90 27.16 2000 22.89 70.10 6.96 30.40 2001 22.50 70.40 7.10 31.56 2005 20.30 72.00 7.70 37.94 2010 16.60 74.53 8.87 53.43 2013 16.40 73.97 9.70 59.15 資 料 : 中 国 統 計 年 鑑 2014 より 作 成 2.2 少 子 高 齢 化 の 特 徴 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 動 向 を 考 察 すると, 主 に 次 の 特 徴 が 見 られる (1) 中 国 の 人 口 高 齢 化 の 開 始 は 遅 れたが, 進 行 スピードはかなり 速 くて,しかも 加 速 化 している 前 述 したように, 中 国 の 人 口 高 齢 化 のトレンドは 1960 年 代 半 ばから 開 始 したが, 2001 年 までのわずか 約 36 年 間 をかけて 老 年 型 国 家 となった 欧 米 や 日 本 など の 先 進 諸 国 と 比 べ, 高 齢 化 の 開 始 は 遅 れたが,その 進 行 スピードはかなり 速 いと 言 える 表 3 に 示 すように, 人 口 高 齢 化 率 が 7%を 超 えてからその 倍 にあたる 14%に 達 するまでにかかった 年 数 ( 倍 化 年 数 )を 見 ると, 日 本 と 韓 国 の 場 合 はわずか 24 年 と 18 年 であるが, 欧 米 諸 国 はほとんど 日 本 韓 国 の 2 倍 以 上 の 年 数 かかった 一 4
方, 中 国 は 約 26 年 であり, 同 じ 東 アジアにある 日 本 と 韓 国 の 倍 化 年 数 に 近 い 表 3 人 口 高 齢 化 速 度 の 国 際 比 較 国 高 齢 人 口 割 合 の 到 達 年 次 7% 14% 倍 化 年 数 フランス 1864 1978 114 オーストラリア 1939 2012 73 アメリカ 1942 2014 72 オランダ 1940 2005 65 ドイツ 1932 1972 40 日 本 1970 1994 24 韓 国 1999 2018 19 中 国 2001 2027 26 資 料 : 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所, 人 口 資 料 集 2014 表 4 中 国 と 日 本 の 人 口 高 齢 化 速 度 の 比 較 資 料 : 人 口 資 料 集 2014 と 中 国 統 計 年 鑑 ( 各 年 )より 作 成 ( 注 )この 表 における 人 口 高 齢 化 速 度 はT m =(Ln(A t+n )-Ln(A t ))/n)とい う 連 続 的 平 均 変 化 率 の 計 算 式 で 計 算 した ただし,T m は 人 口 高 齢 化 の 速 度,A t とA t+n はそれぞれt 年 とt+n 年 の 高 齢 化 率 である nは 期 間 の 年 数 で,2010 年 までの 各 期 間 は 5 年,2010 年 ~2013 年 の 期 間 は 3 年 である さらに 考 察 すると, 表 4 に 示 すように, 日 本 と 同 様, 中 国 の 人 口 高 齢 化 はその 速 度 が 速 いだけでなく, 徐 々に 加 速 していることがわかる 日 本 人 口 の 高 齢 化 率 は 1940 年 の 4.8% 5
から 9.6%( 1982 年 頃 )へ 倍 増 したまでの 所 要 期 間 は 40 年 余 りで,1970 年 の 7.1%から 1994 年 の 14.1%へ 倍 増 したまでの 所 要 期 間 は 約 24 年 となり, 前 の 倍 増 期 間 より 約 16 年 短 くな った 一 方, 中 国 の 場 合, 高 齢 化 率 が 1964 年 の 3.5%から 7.10%(2001 年 )へ 倍 増 したま での 所 要 期 間 は 37 年 であり,1982 年 の 4.9%から 2013 年 の 9.7%への 倍 増 期 間 は 31 年 とな り, 前 の 倍 増 期 間 より 約 6 年 短 くなった また, 人 口 の 高 齢 化 速 度 を 見 ると( 表 4), 日 本 と 同 じ, 中 国 も 総 じて 次 第 に 速 くなる たとえば,1980 年 代 に 人 口 高 齢 化 の 速 度 は 2%を 下 回 ったが,1990 年 代 から 徐 々に 上 昇 し,21 世 紀 に 入 ってからは 2.7%を 超 えている (2) 中 国 は 世 界 最 大 規 模 の 高 齢 人 口 を 抱 えており,その 1 年 あたり 増 加 数 は 増 大 しつつあ る 中 国 は 13 億 人 以 上 の 人 口 を 有 する 世 界 一 の 人 口 大 国 であり, 人 口 高 齢 化 率 はまだそれ ほど 高 くないものの, 高 齢 人 口 の 規 模 はすでに 世 界 一 となっている 図 2 に 見 られるよう に, 総 人 口 の 増 加 および 人 口 高 齢 化 の 進 展 とともに 中 国 の 65 歳 以 上 高 齢 人 口 の 規 模 も 増 大 しつつある 1982 年 に, 中 国 の 高 齢 人 口 規 模 は 約 5000 万 人 で, 日 本 の 2005 年 の 規 模 (2567 万 人 )の 2 倍 程 度 であったが,2012 年 になると, 中 国 の 高 齢 人 口 規 模 は 1.27 億 人 へ 増 大 し, 日 本 の 2012 年 の 高 齢 人 口 (3085 万 人 )の 4 倍 あるいは 総 人 口 (1.28 億 人 )の 規 模 に 相 当 し ている また, 図 3 に 示 す 中 国 の 高 齢 人 口 の 増 加 動 向 を 見 ると,1964~1982 年 の 間 に 1 年 あたり 平 均 増 加 数 は 191.06 万 人 であり,1982~1990 年 の 間 に 同 平 均 増 加 数 は 254.13 万 人 となった さらに,1990~2000 年 と 2010~2010 年 の 間 には,1 年 あたり 平 均 増 加 数 はそれぞれ 330 万 人 と 476.10 万 人 になり, 明 らかに 加 速 するようになっている 図 2 中 国 の 高 齢 人 口 の 増 加 資 料 : 中 国 統 計 年 鑑 より ( 注 ): 左 軸 : 高 齢 人 口 数 ; 右 軸 : 高 齢 人 口 の 割 合 6
図 3 中 国 の 高 齢 人 口 の 1 年 あたり 増 加 数 ( 万 人 ) 資 料 : 図 2 のデータより 計 算 (3) 中 国 において, 人 口 の 超 高 齢 化 はもっと 速 いスピードで 進 んでいる 高 齢 人 口 の 増 加 に 伴 い, 高 齢 人 口 扶 養 類 型 区 分 の 需 要 などによって 高 齢 人 口 を 前 期 高 齢 人 口 人 と 後 期 高 齢 人 口 に 分 けられる 75 歳 未 満 の 高 齢 人 口 を 前 期 老 人,75 歳 以 上 の 高 齢 人 口 を 後 期 老 人 (あ るいは 超 高 齢 人 口 )として 多 く 用 いられるが, 本 稿 ではデータの 制 約 で,80 歳 未 満 の 高 齢 人 口 を 前 期 老 人,80 歳 以 上 の 高 齢 人 口 を 後 期 老 人 ( 超 高 齢 人 口 )としている また, 人 口 高 齢 化 の 概 念 を 参 考 として,ここでは 80 歳 以 上 の 超 高 齢 人 口 の 65 歳 以 上 の 高 齢 人 口 に 占 める 割 合 ( 超 高 齢 化 率 )が 増 大 することを 人 口 の 超 高 齢 化 と 呼 ぶこととする 図 4 に 示 すように,65 歳 以 上 の 高 齢 人 口 と 80 歳 以 上 の 超 高 齢 人 口 の 規 模 を 見 ると,1964 ~1982 年 の 18 年 間 に, 両 者 がそれぞれ 1 倍 と 1.79 倍 増 加 し,2000~2010 年 の 10 年 間 にそ れぞれ 35%と 75% 増 加 した また 超 高 齢 化 の 速 度 を 見 ると,1990~2000 年 以 外 の 各 期 間 に はいずれも 超 高 齢 化 の 進 行 スピードが 高 齢 化 のスピードよりも 速 い 以 上 から, 中 国 の 人 口 高 齢 化 において 高 齢 人 口 がさらに 超 高 齢 化 し, 人 口 の 超 高 齢 化 は 高 齢 化 よりも 速 いスピ ードで 進 んでいる,という 動 向 がわかる 7
図 4 中 国 人 口 の 高 齢 化 と 超 高 齢 化 の 進 行 資 料 : 図 1 と 同 じ (4) 少 子 化 は,より 速 いスピードで 高 齢 化 とともに 進 行 している 少 子 化 は 中 国 の 人 口 構 造 変 化 のもう 一 つの 重 要 な 特 徴 である 高 齢 化 率 の 上 昇 と 逆 に,0~14 歳 の 年 少 人 口 の 総 人 口 に 占 める 割 合 は, 減 少 しつつある 表 2 と 図 5 からは, 中 国 の 少 子 化 の 特 徴 がわかる 50 年 間 の 人 口 の 年 齢 構 造 の 変 化 を 見 ると, 年 少 人 口 率 は 1964 年 の 40.7%から 2013 年 の 16.4%へと 24.3 ポイントも 低 下 し, 高 齢 化 率 の 上 昇 幅 (6.1 ポイント)の 約 4 倍 となっている スピードをみると,21 世 紀 に 入 っ てからの 2000 年 ~2010 年 の 10 年 間 に, 中 国 の 人 口 高 齢 化 は 2.48%の 年 平 均 伸 び 率 で 進 行 しているのに 対 して, 年 少 人 口 率 はそれ 以 上 の 3.21%の 減 少 率 で 低 下 している したがっ て 中 国 人 口 の 少 子 化 の 進 行 状 況 は 高 齢 化 よりも 深 刻 になっている 少 子 化 と 高 齢 化 が 同 時 に 進 行 した 結 果 は, 高 齢 化 の 加 速 である 高 齢 人 口 対 年 少 人 口 の 比 率 で 示 す 老 年 化 指 数 は, 人 口 高 齢 化 の 進 行 水 準 ( 深 刻 さ)をより 敏 感 に 示 す 指 標 である 老 年 化 指 数 は,1964 年 にわずか 8.85%であったが,2013 年 に 59.15%になり,50.3 ポイン トも 上 昇 した 特 に 1995 年 からは, 中 国 の 老 年 化 指 数 の 上 昇 が 加 速 しており, 人 口 高 齢 化 が 深 刻 化 しつつあることがわかる 8
図 5 中 国 の 年 少 人 口 率, 高 齢 化 率,および 老 年 化 指 数 の 推 移 資 料 : 図 1 と 同 じ (5) 日 本 など 先 進 諸 国 の 先 富 後 老 と 異 なって, 中 国 の 人 口 高 齢 化 は 未 富 先 老 の 状 態 になっている 人 口 高 齢 化 は, 一 般 的 に 社 会 経 済 の 発 展 水 準 と 高 く 相 関 している 欧 米 先 進 諸 国 では, 社 会 経 済 の 発 展 が 先 行 し 高 齢 化 社 会 に 入 ったのは 早 く, 所 得 水 準 も 人 口 高 齢 化 率 も 高 い 同 じ 東 アジアにある 日 本 と 韓 国 は, 人 口 高 齢 化 は 世 界 で 最 も 速 いスピ ードで 進 行 しているが,いずれもすでに 先 進 国 になっている これらの 国 の 共 通 点 は, 経 済 発 展 がかなり 高 い 水 準 になってから 高 齢 化 社 会 に 入 ったということである 多 くの 先 進 国 は1 人 当 たり GDP が 2000 ドル 以 上 に 達 したとき, 高 齢 化 社 会 に 入 ったのである 欧 米 諸 国 より 遅 れて 先 進 国 になった 日 本 の 場 合, 高 齢 化 率 が 7%を 超 え 高 齢 化 社 会 に 入 った 1970 年 に,1 人 当 たり GDP は 1964 ドルに 達 した このような 経 済 発 展 と 高 齢 化 の 状 況 は, 先 富 後 老 と 言 われている 一 方, 中 国 は, 全 体 として 今 までもまだ 経 済 発 展 が 遅 れている 途 上 国 である 2001 年 に 高 齢 化 社 会 に 入 ったときに, 一 人 当 たり GDP はわずか 1000 ドル であった したがって 先 進 諸 国 の 先 富 後 老 に 対 して, 中 国 の 人 口 高 齢 化 は 逆 の 未 富 先 老 の 状 態 になっていると 言 えよう 2 (6) 人 口 高 齢 化 の 進 行 には, 大 きな 地 域 格 差 が 存 在 している ただし, 戸 籍 人 口 と 常 住 人 口 という 二 種 類 の 統 計 基 準 に 基 づいてそれぞれ 計 測 された 人 口 高 齢 化 率 の 地 域 格 差 2 購 買 力 平 価 (PPP)ベースの 中 国 の 所 得 水 準 はより 高 くなるが, 購 買 力 平 価 (PPP)で 測 る 場 合, 商 品 サービスの 質 について 先 進 国 と 途 上 国 の 間 の 差 が 十 分 に 考 慮 されておらず, 発 展 途 上 国 の 所 得 水 準 は 過 大 評 価 されていると 思 われる 9
が 大 きく 異 なっている 改 革 開 放 以 来, 多 くの 農 村 人 口 ( 主 に 若 者 )が 戸 籍 を 農 村 部 に 置 いたまま, 農 村 部 から 都 市 部 に 移 動 し 都 市 部 で 就 職 居 住 しており,つまり 都 市 部 の 常 住 人 口 の 一 部 になっている しかし, 厳 しい 戸 籍 制 度 の 下 で, 彼 らはほとんど 都 市 戸 籍 を 取 得 できないため, 常 に 外 来 人 口 と 呼 ばれる このため, 中 国 の 人 口 統 計 の 特 徴 の 一 つとして, 都 市 人 口 の 統 計 には, 外 来 人 口 が 含 まれていない 戸 籍 人 口 と 転 入 先 で 半 年 以 上 滞 在 している 外 来 人 口 も 含 まれる 常 住 人 口 という 2 つの 統 計 項 目 ( 基 準 ) が 存 在 している この 2 つの 統 計 項 目 のデータに 基 づいてそれぞれ 計 算 された 人 口 高 齢 化 率 は, 言 うまでもなく,かなり 異 なっている たとえば, 戸 籍 人 口 データと 常 住 人 口 データを 用 いて 計 算 した 2000 年 の 上 海 の 人 口 高 齢 化 率 は,それぞれ 14.46%と 11.98%であ り, 両 者 の 間 には 約 2.5 ポイントの 差 が 存 在 している 上 海 の 例 からみられるように,もし 常 住 人 口 に 基 づいて 高 齢 化 率 を 計 算 すれば, 多 くの 若 い 農 村 人 口 が 都 市 部 に 常 住 しているため, 一 般 的 に 都 市 部 の 高 齢 化 率 は 低 くなるが, 農 村 部 の 方 は 高 くなる 改 革 開 放 以 来, 図 6 に 示 すように,およそ 1990 年 を 境 としてその 前 の 時 期 に 都 市 部 と 農 村 部 の 高 齢 化 率 はかなり 近 いが,それ 以 降, 農 村 部 の 若 者 が 大 量 に 都 市 部 へ 流 出 した 結 果, 農 村 の 人 口 高 齢 化 が 都 市 部 よりも 速 いスピードで 進 行 しているため, 農 村 部 と 都 市 部 の 高 齢 化 率 格 差 が 拡 大 している 2010 年 に, 農 村 部 と 都 市 部 の 高 齢 化 率 は それぞれ 10.06%と 7.80%になり,2.26 ポイントの 格 差 が 形 成 された 図 6 中 国 の 都 市 部 と 農 村 部 の 人 口 高 齢 化 率 の 比 較 (%) 資 料 : 図 1 と 同 じ また, 図 7 を 見 ると, 中 国 の 人 口 高 齢 化 率 は 省 間 ( 省 直 轄 市 自 治 区 という 省 レベル 行 政 区 の 間 )にも 大 きな 格 差 が 存 在 するということがわかる 隣 接 する 四 川 省 とチベット 10
自 治 区 の 高 齢 化 率 は,それぞれ 10% 以 上 と 6% 未 満 であり,かなり 大 きな 格 差 がある 高 齢 化 率 が 10%を 超 える 省 レベル 地 域 には, 東 部 の 上 海, 遼 寧, 江 蘇 など 沿 海 先 進 省 市 もあ れば, 中 西 部 の 安 徽, 重 慶, 四 川 など 流 出 人 口 規 模 が 極 めて 大 きい 内 陸 省 市 もある 図 7 中 国 人 口 高 齢 化 の 地 域 格 差 資 料 : 図 1 と 同 じ 3. 中 国 における 少 子 高 齢 化 の 発 生 要 因 一 般 的 に, 人 口 高 齢 化 を 引 き 起 す 基 本 的 な 要 因 は, 経 済 社 会 の 発 展 に 伴 う 出 生 率 の 低 下 と 寿 命 の 伸 長 である これらの 要 因 と 計 画 出 産 政 策 や 戸 籍 制 度 など 中 国 特 有 的 な 要 因 の 共 同 影 響 で, 中 国 の 人 口 少 子 高 齢 化 における 独 自 な 特 徴 が 形 成 された 3.1 出 生 率 の 低 下 中 国 人 口 の 少 子 高 齢 化 の 進 行 には, 中 国 特 色 があるものの, 言 うまでもなく, 人 口 転 換 の 一 般 的 法 則 にも 左 右 されている 人 口 転 換 とは, 人 口 が 伝 統 社 会 の 高 出 生 率 高 死 亡 率 低 増 加 率 の 段 階 から, 高 出 生 率 低 死 亡 率 高 増 加 率 の 段 階 を 経 て, 最 後 に 現 代 社 会 11
1949 1952 1955 1958 1961 1964 1967 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012 の 低 出 生 率 低 死 亡 率 低 増 加 率 の 段 階 に 至 るという 転 換 過 程 である 世 界 中 の 状 況 を 見 ると, 欧 米, 日 本 などの 先 進 国 が 既 に 先 行 して 人 口 転 換 を 実 現 したが, 中 国 も 途 上 国 であ りながら 初 歩 的 に 人 口 転 換 が 済 んだ 人 口 転 換 が 人 口 変 動 の 一 般 的 法 則 だと 思 われる 通 常, 人 口 転 換 の 終 了 に 伴 って 人 口 増 加 が 次 第 に 緩 やかになり, 少 子 高 齢 化 の 進 展 が 徐 々 に 著 しくなっていく(エイジング 総 合 研 究 センター 編,2009; 日 本 統 計 協 会 編,1995) こ のため, 人 口 高 齢 化 は 人 口 転 換 と 密 接 に 関 連 しており, 人 口 転 換 による 必 然 的 な 結 果 であ るとも 言 える 少 子 高 齢 化 が 人 口 転 換 の 必 然 的 な 結 果 である 以 上, 中 国 の 少 子 高 齢 化 も 人 口 転 換 という 基 本 的 な 法 則 に 左 右 されているはずである 出 生 力 転 換 は 人 口 転 換 の 核 心 であり, 人 口 転 換 が 中 国 人 口 の 少 子 高 齢 化 に 与 える 影 響 は まず 出 生 率 の 低 下 である 図 8 における 出 生 率 の 推 移 を 見 ると,1950 年 代 前 半 までの 長 期 間 においてずっと 35 以 上 の 高 水 準 が 維 持 されたが,それからは 長 期 的 な 低 下 トレンドに 入 った 即 ち, 中 国 において, 人 口 転 換 の 核 心 としての 出 生 力 転 換 は 新 中 国 建 国 (1949 年 ) 以 降 の 1950 年 代 半 ばからスタートしたと 言 える( 王 桂 新,2001a) 図 8 中 国 の 出 生 率, 死 亡 率 と 自 然 増 加 率 (1949~2014 年 ) 50 40 30 出 生 率 死 亡 率 自 然 増 加 率 20 10 0-10 資 料 : 国 家 統 計 局 : 中 国 統 計 年 鑑 (2000 年 版,2013 年 版 ); 国 民 経 済 和 社 会 発 展 統 計 公 報 (2014 年 版,2015 年 版 ) ( 注 ):1960 年 に 天 災 人 害 による 大 飢 饉 が 多 数 の 非 正 常 死 亡 をもたらした ところが,1950 年 代 後 半 から, 中 央 政 府 の 大 躍 進 政 策 の 誤 りや 自 然 災 害 などの 影 響 によって, 人 口 転 換 の 正 常 的 な 経 路 が 突 然 に 変 わった 死 亡 率 の 急 激 な 変 化 に 対 して, 出 12
1949 1952 1955 1958 1961 1964 1967 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012 生 率 も 1957 年 の 34.0 から 急 落 し,1961 年 になると,18.0 へとほぼ 半 減 した それ 以 降, 経 済 政 策 の 調 整 と 経 済 の 回 復 によって, 国 民 の 生 活 水 準 と 栄 養 水 準 が 当 時 の 正 常 レベルに 戻 り, 出 生 率 も 急 速 に 上 昇 に 転 じた ピークの 1963 年 に, 出 生 率 は 43.4 という 建 国 後 の 最 高 水 準 を 記 録 した しかし,その 後, 中 国 が 文 化 大 革 命 (1966~1976 年 )という 政 治 経 済 の 混 乱 期 に 入 った 国 防 工 業 重 工 業 が 優 先 的 に 推 進 された 当 時 の 中 国 では, 農 業 と 労 働 集 約 型 の 軽 工 業 が 犠 牲 になり 人 口 増 加 に 対 して 十 分 な 食 糧 消 費 財 と 雇 用 機 会 を 提 供 できなかったため, 世 界 一 の 人 口 規 模 を 抱 えた 中 国 の 最 も 緊 要 な 政 策 課 題 は 人 口 増 加 の 抑 制 だと 判 断 された このため, 主 に 1970 年 代 以 降, 中 国 政 府 が 一 人 っ 子 政 策 を 柱 とする 計 画 出 産 政 策 を 実 施 し 始 め, 人 口 出 生 率 および 人 口 増 加 を 強 く 抑 制 してきた( 図 9) 同 政 策 を 30 年 余 り 厳 しく 実 施 してきた 結 果, 中 国 の 出 生 率 は 低 下 し 続 き,1976 年 から 20 以 下 となり,さ らに 21 世 紀 に 入 ってからは 12 前 後 の 低 水 準 で 安 定 している 出 生 率 の 低 下 による 直 接 な 結 果 は 少 子 化 であるので, 中 国 は 経 済 発 展 の 早 い 段 階 に 少 子 高 齢 化 を 迎 えたのである 図 9 中 国 の 出 生 率 と 出 生 数 の 変 化 (1949~2014 年 ) 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 出 生 数 总 和 生 育 率 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0.00 資 料 : 図 8 と 同 じ ( 注 ): 左 軸 は 出 生 数 で, 単 位 は 万 人 である; 右 軸 は 総 和 生 育 率 (= 特 殊 合 計 出 生 率,TFR) 13
3.2 死 亡 率 の 低 下 と 寿 命 の 伸 長 人 口 高 齢 化 に 影 響 するもう 一 つの 直 接 な 要 因 は 死 亡 率 の 低 下 および 平 均 寿 命 の 伸 長 であ る 中 国 の 人 口 変 動 については,1940 年 代 後 半 までは, 基 本 的 にまだ 高 出 生 高 死 亡 低 増 加 の 状 態 にあった 高 い 幼 児 死 亡 率 のため,1840 年 から 1947 年 までの 107 年 の 間 にわず か 4278 万 人 増 加 し, 年 平 均 増 加 率 は 0.92 であった しかし, 中 国 の 死 亡 率 は,1960 年 前 後 の 急 激 な 変 化 を 経 験 した 後,1960 年 代 前 半 の 約 10 から 徐 々に 低 下 し,1970 年 代 末 から 約 7 へとかなり 安 定 している 特 に 21 世 紀 に 入 ってから,0~1 歳 の 幼 児 死 亡 率 は 著 しく 改 善 されており,2000 年 の 32.20 から 2013 年 の 9.53 へと 大 きく 低 下 した 幼 児 死 亡 率 の 低 下 とともに, 中 国 人 口 の 平 均 寿 命 は 伸 長 しつつある 中 国 政 府 が 公 表 し た 中 国 医 療 衛 生 事 業 発 展 報 告 2014 によると, 生 活 水 準 の 向 上, 生 活 環 境 の 改 善 および 医 療 技 術 公 共 衛 生 技 術 の 発 展, 公 共 医 療 保 健 サービスの 普 及 など 諸 要 因 が, 幼 児 死 亡 率 の 低 下 と 平 均 寿 命 の 伸 長 をもたらした 表 5 に 示 されるように 1953 年 の 平 均 寿 命 は 男 性 39.8 歳, 女 性 40.8 歳 であったが,1970 年 に 男 女 とも 60 歳 を 越 えた 2010 年 になると 男 72.4 歳, 女 77.4 歳 へとさらに 伸 長 した 平 均 所 得 水 準 の 最 も 高 い 上 海 の 場 合,2013 年 に 人 口 の 平 均 寿 命 は 82.47 歳 となっており, 長 寿 の 国 日 本 の 平 均 寿 命 水 準 に 近 づいている 表 5 中 国 人 口 の 平 均 寿 命 ( 歳 ) 年 次 合 計 男 性 女 性 1953 40.3 39.8 40.8 1955 44.6 43.8 45.5 1960 24.6 24.3 25.3 1965 57.8 56.3 59.3 1970 61.4 60.3 62.5 1975 63.8 62.7 64.8 1980 64.9 64.4 65.3 1982 67.8 66.3 69.7 1985 69.0 67.0 71.0 1990 68.6 66.8 70.5 1996 70.8 68.7 73.0 2000 71.4 69.6 73.3 2005 73.0 71.0 74.0 2010 74.8 72.4 77.4 資 料 : 高 尔 生 (2009);2010 人 口 センサスより 3.3 計 画 出 産 政 策 の 実 施 前 述 した 計 画 出 産 政 策 が 30 年 以 上 も 厳 しく 実 施 されているのは, 中 国 の 人 口 政 策 の 顕 著 な 特 徴 である 途 上 国 としての 中 国 では, 短 い 時 間 で 出 産 率 が 急 速 に 低 下 し 人 口 転 換 が 実 14
現 できた 最 も 重 要 な 原 因 も,この 計 画 出 産 政 策 である 1950 年 代 の 上 海 では, 計 画 出 産 の 試 みが 実 験 的 に 施 行 されたことがあったが, 全 国 範 囲 で 一 人 っ 子 を 柱 とする 計 画 出 産 政 策 の 本 格 的 実 施 は,1970 年 代 末 から 始 まった(( 王 桂 新,2001b; 陶 涛 杨 凡,2011) 計 画 出 産 政 策 が 実 施 された 以 前 では, 一 組 の 夫 婦 の 子 供 出 産 数 に 対 する 制 限 はまったく なかったが, 計 画 出 産 政 策 が 実 施 されてから 一 組 の 夫 婦 が 子 供 一 人 しか 生 めないようにな っている いうまでもなく, 一 人 っ 子 を 柱 とするこの 計 画 出 産 政 策 の 実 施 は 出 生 率 を 大 きく 抑 制 し( 図 9), 出 生 数 の 減 少 と 少 子 高 齢 化 に 直 接 寄 与 した( 王 桂 新,2012a,2012b) それと 同 時 に, 計 画 出 産 政 策 の 実 施 は, 人 々の 結 婚 と 生 育 の 意 識 を 変 化 させ, 結 婚 年 齢 と 出 産 年 齢 も 延 長 させている 表 6 に 示 すように, 中 国 における 女 性 の 平 均 初 婚 年 齢 は 1971 年 の 20.32 歳 から,1995 年 の 22.85 歳 へ,そして 2010 年 の 23.89 歳 へと 徐 々に 上 昇 してい る また 女 性 の 初 産 年 齢 も 明 らかに 上 がっている 上 海 の 場 合,2000 年 に 女 性 の 初 婚 年 齢 は 23.75 歳, 初 産 年 齢 は 26.11 歳 であったが,2012 年 になると,それぞれ 27.3 歳 と 28.5 歳 になっている 女 性 の 初 婚 年 齢 と 初 産 年 齢 の 上 昇 は, 出 産 期 間 を 短 縮 させたため, 当 然 な がら 出 生 率 の 低 下 にも 寄 与 した 表 6 中 国 の 女 性 人 口 の 初 婚 年 齢 と 初 育 年 齢 ( 歳 )の 変 化 1971 1975 1980 1985 1987 1989 1990 1995 2000 2005 2010 初 婚 20.32 21.86 23.03 21.77 21.90 22.0 22.02 22.85 23.17 23.47 23.89 初 育 21.97 22.91 24.44 23.17 23.04 23.42 - - - - - 資 料 : 国 家 統 計 局 より 以 上 では, 中 国 の 少 子 高 齢 化 に 影 響 を 与 える 要 因 として, 出 生 率 の 低 下, 死 亡 率 の 低 下 と 寿 命 の 伸 長,および 計 画 出 産 政 策 の 実 施 などが 別 々 挙 げられているが, 出 生 率 の 低 下 は, 計 画 出 産 政 策 の 実 施 と 経 済 社 会 の 発 展 などの 要 因 が 共 同 で 引 き 起 した 結 果 だと 考 えられ る ただし, 出 生 率 低 下 の 主 因 は, 時 期 によって 変 化 する 大 ざっぱに 区 分 すると,2000 年 以 前 は, 計 画 出 産 政 策 の 実 施 が 主 な 要 因 だったが,2000 年 以 降 は 経 済 社 会 発 展 に 伴 う 若 者 の 結 婚 生 育 に 関 する 考 え 方 行 動 の 変 化 が 主 な 要 因 になっていると 見 られる 3.4 特 有 の 戸 籍 制 度 この 要 因 は 主 に 中 国 の 少 子 高 齢 化 の 地 域 構 造 に 影 響 を 与 えている 前 述 したように, 中 国 では, 長 期 間 において 戸 籍 制 度 を 土 台 とする 二 元 社 会 体 制 が 形 成 され, 農 村 人 口 の 都 市 部 への 転 入 を 厳 しくコントロールしていたが, 改 革 開 放 政 策 の 実 施 に 伴 い, 都 市 部 にお ける 雇 用 機 会 が 大 きく 増 大 し, 食 糧 住 宅 の 供 給 も 確 保 できるようになっているため, 農 村 - 都 市 間 の 人 口 移 動 が 実 質 的 に 自 由 になっている ただし, 農 村 戸 籍 の 人 々は, 都 市 部 で 就 職 居 住 して,つまり 転 入 先 地 の 常 住 人 口 になっていても,ほとんど 現 住 地 の 都 市 戸 籍 を 取 得 できないため, 彼 らは 常 に 外 来 人 口 と 呼 ばれている このため, 都 市 な どの 地 域 人 口 の 統 計 において, 常 に 戸 籍 人 口 と 常 住 人 口 という 2 つの 統 計 基 準 ( 統 15
計 項 目 )が 存 在 している この 2 つの 統 計 基 準 ( 統 計 項 目 )に 基 づいて 計 算 された 少 子 高 齢 化 率 の 数 値 は,いうまでもなくかなり 異 なる 図 10 と 表 7 に 示 すように, 改 革 開 放 以 降, 中 西 部 ( 内 陸 ) 地 域 の 農 村 人 口 が 東 部 ( 沿 海 ) 地 域 の 都 市 部 への 流 入 が 中 国 の 都 市 - 農 村 間 および 地 域 間 人 口 移 動 の 主 流 となっ ている( 王 桂 新,2015) これらの 移 動 者 の 90% 以 上 は 労 働 年 齢 人 口 であるため, 人 口 の 純 流 入 地 域 では 常 住 人 口 基 準 で 計 算 された 人 口 高 齢 化 率 が 戸 籍 人 口 基 準 で 計 算 され た 人 口 高 齢 化 率 より 低 くなるのに 対 して, 人 口 の 純 流 出 地 域 では 常 住 人 口 ベースの 高 齢 化 率 は 戸 籍 人 口 ベースの 高 齢 化 率 より 高 くなっている 図 10 に 示 されるように, 主 な 人 口 流 出 地 の 安 徽, 重 慶, 四 川 など 内 陸 省 市 では, 大 規 模 の 若 年 労 働 者 が 流 出 したため, 常 住 人 口 基 準 で 計 算 された 高 齢 化 率 がかなり 高 くなっているのに 対 して, 戸 籍 人 口 ベースの 高 齢 化 率 が 中 国 一 高 い 上 海 では, 多 くの 若 者 が 流 入 しているため, 常 住 人 口 ベ ースの 2010 年 の 高 齢 化 率 は,2000 年 よりも1ポイント 下 がっている このため, 上 海 のよ うな 人 口 純 流 入 地 にとっては, 増 大 しつつある 外 来 常 住 人 口 が 少 子 高 齢 化 を 顕 著 に 緩 和 し ている,という 効 果 が 明 らかである 図 10 長 三 角 ( 長 江 デルタ)と 珠 三 角 ( 珠 江 デルタ) 地 域 の 流 入 人 口 の 主 な 流 出 地 資 料 :2010 人 口 センサスより 16
表 7 長 三 角 ( 長 江 デルタ) 地 域 と 珠 三 角 ( 珠 江 デルタ) 地 域 の 男 女 別 年 齢 構 造 (%) 資 料 : 図 10 と 同 じ 4. 中 国 の 少 子 高 齢 化 対 策 への 提 言 前 述 したように, 中 国 がすでに 少 子 高 齢 化 という 新 常 態 に 入 った 人 口 の 少 子 高 齢 化 による 社 会 経 済 へのマイナスの 影 響 が 顕 在 化 しつつある 中, 中 国 経 済 の 持 続 的 な 発 展 を 実 現 するために, 少 子 高 齢 化 という 新 しいチャレンジに 対 して 適 切 な 対 応 策 を 取 らなけ ればならない( 王 桂 新,2009; 林 家 彬 等,2014; 乔 晓 春 等 ;2014)) 4.1 基 本 的 な 考 え 方 と 視 点 少 子 高 齢 化 への 対 策 を 考 えるときに, 最 近 の 気 候 温 暖 化 対 策 から 有 益 な 示 唆 が 得 られる と 思 われる ご 存 知 のように, 人 類 の 生 産 消 費 活 動 の 拡 大 によって 地 球 の 平 均 気 温 が 上 昇 しつつあると 観 察 されている 近 年, 地 球 の 温 暖 化 は(かなり 長 い 時 期 に 渡 る) 不 可 逆 の 自 然 現 象 であるという 認 識 に 基 づいて, 気 候 温 暖 化 に 対 して 緩 和 策 と 適 応 策 を 取 るべきである,という 考 えが 広 く 支 持 されている 実 は 人 口 転 換 および 少 子 高 齢 化 も, 人 口 変 動 の 法 則 に 従 って 進 行 しており, 地 球 の 温 暖 化 と 類 似 する 不 可 逆 の 社 会 現 象 であると 思 われる 地 球 温 暖 化 への 対 応 策 を 参 考 すると, 少 子 高 齢 化 への 対 応 についても, 緩 和 策 と 適 応 策 を 取 るべきであると 考 える つまり, 一 つは 緩 和 策 で,できるだけ 少 子 高 齢 化 の 進 行 を 減 速 させることである もう 一 つは 適 応 策 で, 少 子 高 齢 化 に 伴 う 経 済 社 会 環 境 の 変 化 にできるだけ 早 く 適 応 できるように 準 備 してお くことである 17
4.2 少 子 高 齢 化 への 緩 和 策 第 3 節 の 考 察 からわかるように, 中 国 人 口 の 少 子 高 齢 化 は 一 人 っ 子 を 柱 とする 計 画 出 産 政 策 の 実 施 による 影 響 を 強 く 受 けている この 計 画 出 産 政 策 の 長 期 間 実 施 こそ, 中 国 の 人 口 転 換 と 人 口 高 齢 化 を 加 速 させる 最 重 要 な 要 因 といえる したがって, 人 口 高 齢 化 の 進 行 を 減 速 させる 緩 和 策 の 最 も 効 果 的 措 置 は, 全 国 でできるだけ 速 く 計 画 出 産 政 策 の 施 行 を 中 止 し, 出 生 率 を 徐 々に 高 めるということである 実 際, 中 国 政 府 も, 計 画 出 産 政 策 の 見 直 しを 進 めている 2014 年 1 月 から, 中 国 政 府 は, 二 人 目 の 子 供 の 出 産 条 件 を 大 幅 に 緩 め, 結 婚 した 夫 婦 の 内, 片 方 が 一 人 っ 子 (= 単 独 ) であれば,2 人 の 子 供 (= 2 子 )を 生 める,という 単 独 2 子 政 策 を 実 施 し 始 めた ちなみに, 夫 婦 とも1 人 っ 子 (= 双 独 )であれば, 以 前 から 2 人 の 子 供 を 生 めると 規 定 されている ただし,この 政 策 緩 和 の 効 果 はまだ 楽 観 できない 国 家 衛 生 と 計 画 生 育 委 員 会 ( 中 央 政 府 の 主 管 省 )の 当 初 の 予 測 では, 単 独 2 子 という 新 政 策 を 実 施 すると 2014 年 に 全 国 で 約 200 万 人 多 く 生 まれると 期 待 されていたが, 実 際 にこの 政 策 の 適 用 条 件 を 満 たす 単 独 夫 婦 の 内, 二 人 目 の 子 供 の 出 産 申 請 を 提 出 した 夫 婦 は 106.9 万 組 にとどまっている 出 産 された 子 供 の 数 を 見 ると,2014 年 に 全 国 で 1687 万 人 が 生 まれ,2013 年 と 比 べわずか 47 万 人 増 加 した 実 際 の 増 加 数 は, 予 想 より 大 幅 に 少 なくなっている まだ 新 政 策 実 施 の 一 年 目 なので,この 政 策 の 適 用 者 の 出 産 計 画 の 調 整 準 備 の 所 要 時 間 を 考 えると, 二 年 目 (2015 年 ) 以 降 は,この 新 政 策 による 出 生 数 増 大 効 果 がより 大 きくなる 可 能 性 があると 考 えられ る しかし, 前 述 したように,2000 年 からは, 中 国 の 計 画 出 産 政 策 が 人 々の 出 産 行 動 に 与 える 影 響 は 徐 々に 弱 くなっているとみられる 例 え 計 画 出 産 政 策 が 撤 廃 され, 完 全 に 自 由 に 出 産 できるようになったとしても, 出 産 育 児 コスト( 総 合 コスト)の 上 昇 などの 要 因 の 影 響 で, 出 生 率 は 必 ずしも 期 待 通 りに 上 昇 するわけではない また, 出 生 率 を 低 下 させ るほかの 要 因 もある 中 国 計 画 生 育 协 会 の 調 査 によると, 中 国 では, 不 妊 不 育 症 を 抱 える 女 性 患 者 の 数 は,15~49 歳 の 出 産 年 齢 の 女 性 人 口 全 体 の 12.5%という 高 い 割 合 を 占 め ている 生 活 様 式 と 生 活 環 境 の 変 化 に 伴 うこうした 症 状 の 上 昇 は, 計 画 出 産 政 策 の 見 直 し による 出 産 増 大 効 果 を 弱 くしている 計 画 出 産 政 策 の 見 直 しによる 2015 年 以 降 の 実 際 効 果 を 注 意 深 く 検 証 する 必 要 があるが, 日 本 韓 国 台 湾 など 東 アジア 諸 国 ( 地 域 )の 経 験 から 考 えると, 社 会 全 体 の 出 産 育 児 環 境 を 改 善 しないと, 単 独 2 子 政 策 の 実 施 だけは, 大 きな 効 果 があまり 期 待 できないと 思 われる 今 後, 効 果 的 な 緩 和 策 を 継 続 的 に 模 索 施 行 する 必 要 がある 4.3 少 子 高 齢 化 への 適 応 策 計 画 出 産 政 策 の 見 直 しや 女 性 の 出 産 育 児 環 境 の 改 善 によって, 少 子 高 齢 化 の 進 行 をあ る 程 度 で 緩 和 させることは 可 能 でるが,そのトレドは, 将 来 のかなり 長 い 期 間 に 継 続 して いくとみられる このため, 少 子 高 齢 化 という 新 常 態 をしばらく 転 換 できない 現 象 と して 受 け 止 めて, 少 子 高 齢 化 に 伴 うさまざまの 経 済 社 会 環 境 の 変 化 に 対 して,できるだ 18
け 早 くそれに 適 応 できるような 対 策 を 講 じる 必 要 がある こうした 適 応 策 の 施 行 は, 中 国 の 少 子 高 齢 化 への 最 も 必 要 で 且 つ 有 効 な 対 応 策 であると 思 われる 人 口 高 齢 化 への 適 応 策 として, 少 なくとも 次 の 諸 措 置 を 取 るべきである (1) 経 済 体 制 と 社 会 保 障 制 度 の 改 革 を 推 進 し, 公 平 合 理 持 続 可 能 な 社 会 養 老 保 障 体 系 を 構 築 する 中 国 では, 長 期 以 来 戸 籍 制 度 の 下 で 二 元 社 会 体 制 が 形 成 され, 国 民 の 身 分 が 複 雑 多 様 であり, 福 祉 待 遇 も 千 差 万 別 となっている このような 不 平 等 な 古 い 制 度 の 存 在 は, 社 会 矛 盾 を 激 化 させ, 少 子 高 齢 化 及 びそれによる 諸 矛 盾 と 問 題 の 解 決 に 阻 害 している 少 子 高 齢 化 の 挑 戦 に 対 応 するためには, 制 度 上 の 保 証 を 提 供 しなければいけない まず, 政 治 経 済 体 制 改 革 をさらに 推 進 し, 二 元 社 会 体 制 を 次 第 に 打 ち 破 り, 社 会 保 障 待 遇 の 都 市 - 農 村 間 格 差 を 徐 々に 縮 小 させることを 近 い 将 来 の 目 標 として 目 指 すべきでる 次 に 当 面 の 体 制, 資 金 などの 諸 制 約 で, 保 障 対 象 の 貢 献 の 大 きさに 基 づき 優 先 順 番 を 決 めて 異 な る 養 老 保 障 対 象 に 応 じる 社 会 保 障 体 系 を 構 築 するべきである 第 三 に 高 齢 社 会 と 高 齢 人 口 の 特 徴 に 基 づき, 高 齢 者 を 対 象 とする 老 年 介 護 保 険 制 度 をいち 早 く 構 築 する 日 本,ドイ ツなどの 先 進 国 は 既 に 新 しい 老 年 介 護 保 険 制 度 を 構 築 したが( 内 閣 府,2013), 介 護 ニーズ が 拡 大 しつつある 中 国 はこれらの 先 進 国 の 経 験 を 参 考 にし, 老 年 介 護 保 険 制 度 を 国 内 で 徐 々に 構 築 すべきである 第 四 に, 政 府 ( 中 央 政 府, 地 方 政 府 ), 企 業, 個 人,NGO, 市 場 ( 資 本 市 場 を 含 む)などの 多 様 なルートから 資 金 を 調 達 し, 持 続 可 能 な 社 会 養 老 保 険 体 系 の 財 政 基 盤 を 固 める 第 五 に 監 督 機 制 を 強 化 し, 社 会 保 障 基 金 の 使 用 範 囲 をコントロール し, 社 会 保 障 基 金 の 使 用 効 率 と 透 明 性 公 平 性 を 向 上 させる (2) 社 会 の 老 人 サービス 事 業 の 発 展 を 加 速 させ, 敬 老, 助 老, 養 老 の 社 会 意 識 を 一 層 強 化 する 世 帯 規 模 が 小 型 化 しつつあり,また 高 齢 者 家 庭 が 増 加 しているという 背 景 のもとで, 一 世 帯 のみの 力 で 老 人 介 護 扶 養 の 重 任 が 支 えられないから,まず, 社 会 の 老 人 サービス 事 業 を 発 展 させなければならない 社 会 養 老 保 障 基 金 の 調 達 のように, 政 府, 民 間 ( 企 業 団 体 ), 個 人 など 多 方 面 の 積 極 性 と 創 造 性 を 引 き 出 し, 制 度 化 と 市 場 化 メカニズムに 基 づい て 社 会 の 老 人 サービス 市 場 を 開 拓 し, 社 会 老 人 サービス 事 業 を 発 展 させるべきである こ こ 数 年, 中 国 では 数 多 くの 企 業 や NGO がこの 領 域 に 参 入 したが, 全 般 的 にみると 成 長 性 が 欠 け, 経 営 に 不 順 である 社 会 の 老 人 サービス 事 業 は 普 通 の 産 業 と 違 って, 主 に 非 営 利 あ るいは 薄 利 経 営 を 運 営 特 徴 として, 社 会 に 奉 仕, 老 人 に 対 するサービスを 基 本 宗 旨 とする から,ローンや 納 税 などの 金 融 税 制 面 の 政 策 支 援 が 必 要 であり,また 国 民 の 理 解 と 社 会 全 体 の 協 力 も 必 要 である 特 に 中 央 政 府 地 方 政 府 としては, 社 会 の 老 人 サービス 事 業 を それぞれの 発 展 計 画 に 取 り 組 んで 推 進 させるべきである 次 に, 敬 老, 助 老, 養 老 の 社 会 意 識 を 育 成 強 化 ことも 大 変 重 要 である 現 代 の 社 会 生 活 観 念 の 影 響 で, 若 者 が 家 族 の 年 寄 りと 団 欒 する 時 間 は 短 くなり, 老 人 を 尊 敬 する,また 扶 養 する 観 念 と 意 識 も 次 第 に 薄 くなる このような 状 況 を 変 えなければいけない 今 後, 高 齢 社 会 に 関 する 教 育 を 強 化 し, 生 涯 教 育 を 通 して 老 人 を 尊 敬 しよう, 老 人 を 可 愛 がろ う, 老 人 を 扶 養 しよう という 中 国 の 良 い 文 化 伝 統 を 若 者 に 継 承 させ, 若 い 時 に 敬 老, 助 19
老, 養 老 し, 老 後 に 尊 敬 され, 助 けられ, 扶 養 される という 良 好 の 社 会 風 習 を 形 成 しな ければいけない (3) 安 定 な 経 済 発 展 を 目 指 し, 少 子 高 齢 化 による 変 化 に 適 応 するための 経 済 基 礎 を 固 め る 日 本, 欧 米 などの 先 進 国 と 違 って, 中 国 はまだ 発 展 途 上 国 であり, 中 国 人 口 の 少 子 高 齢 化 の 進 行 は 経 済 発 展 段 階 より 先 行 しているから, 典 型 的 な 未 富 先 老 という 状 態 にあ る 経 済 は 社 会 発 展 の 基 礎 であるから, 安 定 な 経 済 発 展 と 国 民 全 体 の 所 得 水 準 の 向 上 は 中 国 の 少 子 高 齢 化 問 題 に 対 する 最 も 基 本 的 な 対 策 ともいえる 今 後, 教 育 人 材 育 成 の 促 進 と 科 学 技 術 の 発 展 を 通 じて, 労 働 資 本 資 源 の 投 入 拡 大 に 依 存 する 従 来 の 経 済 成 長 モデ ルを 転 換 させ, 短 期 間 の 高 成 長 よりも 持 続 可 能 な 安 定 成 長 と 相 対 的 に 公 平 な 所 得 分 配 を 目 指 すべきである また, 中 央 地 方 政 府 としては, 経 済 の 高 度 成 長 に 伴 って 財 政 支 出 にお ける 社 会 養 老 保 障 基 金 の 割 合 を 次 第 に 増 大 させ, 公 平 合 理 かつ 持 続 可 能 な 社 会 養 老 保 障 体 系 を 支 えるための 主 要 財 源 を 確 保 しなければいけない 4.4 地 域 別 少 子 高 齢 化 の 実 態 を 正 確 に 反 映 できる 人 口 統 計 システムの 構 築 中 国 における 地 域 間 移 動 者 ( 流 動 人 口 ) は 若 者 が 中 心 であるから, 人 口 流 動 が 流 出 地 と 流 入 地 の 少 子 高 齢 化 に 正 反 対 の 影 響 を 与 えている 上 述 した 高 齢 化 対 策 をより 効 果 的 に 実 施 するために, 現 行 の 複 雑 かつ 不 平 等 な 戸 籍 制 度 と 複 雑 な 人 口 登 録 制 度 をできるだけ 早 く 改 革 しなければならない しかし, 戸 籍 制 度 が 完 全 に 改 革 ( 撤 廃 )されるまでは,まだ かなり 時 間 が 必 要 と 予 想 される 当 面, 全 国 共 通 かつ 明 確 な 統 計 基 準 で 地 域 別 少 子 高 齢 化 の 実 態 を 正 確 に 反 映 できる 人 口 統 計 システムを 構 築 し,そして 明 確 な 統 計 基 準 に 基 づく 関 連 統 計 情 報 を 分 かりやすく 社 会 に 公 表 することは, 緊 急 課 題 として 行 う 必 要 がある 20
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