平 成 28 年 5 月 23 日 発 生 年 月 概 要 原 因 宿 泊 者 従 業 員 21 名 が 目 の 痛 みを 訴 え 融 雪 のため 引 き 込 んでいた 沢 水 が 硫 化 水 素 を 含 んで 00 年 2 月 医 療 機 関 で 手 当 てを 受 ける おり, 硫 化 水 素 が 旅 館 施 設 に 拡 散 温 泉 の 湯 が 無 くなったため 自 宅 前 のマンホール 内 の 店 舗 兼 自 宅 の 引 き 込 み 温 泉 のマンホー バルブを 点 検 しようとした 際 に 硫 化 水 素 とみられる 04 年 2 月 ルの 中 で 男 女 4 名 が 倒 れ1 名 意 識 不 明 の ガスを 吸 い 転 落 残 り3 名 はこの1 名 の 救 出 作 業 中 に 重 体,1 名 重 症, 残 り2 名 軽 傷 ガスを 吸 引 05 年 10 月 05 年 12 月 06 年 2 月 06 年 8 月 07 年 6 月 地 熱 井 戸 の 噴 出 試 験 中 に 作 業 員 8 名 が 倒 れ, 内 7 名 が 病 院 に 入 院 駐 車 場 脇 の 雪 洞 に 落 下 した 一 家 4 名 が 死 亡 地 熱 蒸 気 に 含 まれる 硫 化 水 素 とみられるガスを 吸 引 母 子 3 名 が 雪 洞 に 落 下 し, 雪 洞 内 の 高 濃 度 硫 化 水 素 を 吸 引 し 死 亡 3 名 を 救 助 しようとした 父 も 雪 洞 内 に 落 下 し 死 亡 雪 崩 に 従 業 員 及 び 入 浴 客 が 巻 き 込 まれ 露 天 風 呂 を 雪 崩 が 襲 い, 除 雪 作 業 中 の 従 業 員 と 入 浴 る 従 業 員 1 名 死 亡 従 業 員 及 び 入 浴 客 客 が 被 災 16 人 重 軽 傷 温 泉 沈 殿 槽 清 掃 作 業 を 行 っていたとこ ろ 作 業 員 1 名 意 識 不 明 重 体 温 泉 施 設 の 別 棟 で 爆 発 事 故 発 生 3 名 死 亡,8 名 重 軽 傷 硫 化 水 素 中 毒 別 棟 地 下 の 温 泉 井 戸 から 漏 れ 出 したメタンガスに 引 火, 爆 発 10 年 6 月 タケノコ 採 りの 女 子 中 学 生 が 死 亡 火 山 性 ガスの 吸 引 が 原 因 と 考 えられる 12 年 1 月 浴 室 で2 名 死 亡 脱 衣 所 と 浴 室 の 温 度 差 が 原 因 と 考 えられる 12 年 2 月 雪 崩 で3 名 死 亡 岩 盤 浴 を 利 用 中 に 雪 崩 に 巻 き 込 まれる 12 年 12 月 入 浴 利 用 者 8 名 がレジオネラ 症 を 発 症 13 年 6 月 貯 湯 槽 タンク 内 で 作 業 員 1 名 死 亡 1 名 意 識 不 明 重 体,その 後 重 体 の 従 業 員 も 死 亡 入 浴 施 設 から 採 取 された 菌 と 一 部 患 者 の 喀 痰 から 採 取 された 菌 の 遺 伝 子 パターンが 一 致 消 防 署 は 事 故 後 硫 化 水 素 4ppm, 一 酸 化 炭 素 6ppmをタ ンク 内 で 検 出 硫 化 水 素 中 毒 の 疑 い 14 年 6 月 貯 湯 槽 タンク 内 で 作 業 員 2 名 死 亡 司 法 解 剖 の 結 果, 硫 化 水 素 中 毒 の 疑 いと 発 表 される 宿 泊 施 設 の 温 泉 ( 内 湯 )を 利 用 したと 14 年 10 月 ころ, 意 識 不 明 の 重 体 温 泉 施 設 改 修 工 事 において 貯 湯 タンク 14 年 12 月 の 清 掃 作 業 中 一 時 意 識 を 失 う 源 泉 保 守 作 業 中 の 作 業 員 2 名 市 職 員 1 15 年 3 月 名 が 雪 の 中 の 窪 地 で 死 亡 15 年 5 月 15 年 12 月 温 泉 を 原 因 とする 中 毒 事 故 の 防 止 公 益 財 団 法 人 中 央 温 泉 研 究 所 第 1 部 研 究 員 滝 沢 英 夫 2000( 平 成 12) 年 以 降 に 温 泉 施 設 や 温 泉 地 で 発 生 した 重 大 事 故 事 例 ( 新 聞 報 道 等 で 確 認 したもの) 入 浴 利 用 者 3 名 がレジオネラ 症 を 発 症 内 1 名 死 亡 湯 量 湯 温 調 整 室 で 作 業 員 2 名 が 一 時 意 識 を 失 い 病 院 に 搬 送 される 硫 化 水 素 中 毒 の 疑 い 硫 化 水 素 中 毒 雪 の 中 の 窪 地 で 高 濃 度 の 硫 化 水 素 を 検 出 硫 化 水 素 中 毒 の 疑 い 入 浴 施 設 から 採 取 された 菌 と 死 亡 した 患 者 の 喀 痰 か ら 採 取 された 菌 の 遺 伝 子 パターンが 一 致 温 泉 配 管 から 漏 れ 出 た 温 泉 から 硫 化 水 素 が 調 整 室 内 に 充 満 1
田 沢 湖 高 原 温 泉 で 発 生 した 死 亡 事 故 を 伝 える 記 事 ( 平 成 27 年 3 月 19 日 読 売 新 聞 朝 刊 ) 2
硫 化 水 素 中 毒 で3 名 が 死 亡 した 雪 の 窪 地 を 調 査 中 の 警 察 職 員 と 火 山 ガス 専 門 家 写 真 の 調 査 時 は 事 故 発 生 から19 日 後 で 発 生 当 時 よりも 窪 地 は 大 きくなっていた 温 泉 配 管 にあけられた 空 気 抜 き 穴 に 形 成 された 硫 黄 の 結 晶 ( 上 の 写 真 とは 別 の 温 泉 ) 温 泉 配 管 の 空 気 抜 き 穴 からは, 高 濃 度 の 硫 化 水 素 が 漏 れ 出 ることがある さらに 積 雪 時 には 空 気 抜 き 穴 の 周 辺 に, 一 呼 吸 で 即 死 するレベルの 高 濃 度 硫 化 水 素 を 蓄 えた 雪 洞 や 窪 地 が 形 成 される 3
温 泉 付 随 ガスの 特 徴 一 般 的 な 温 泉 付 随 ガスは 以 下 の3 成 分 を 主 成 分 とする 二 酸 化 炭 素 (CO 2 ) 窒 素 (N 2 ) メタン(CH 4 ) 酸 素 (O 2 )や 硫 化 水 素 (H 2 S)はわずかしか 含 まれていない ただし 100 近 い 温 泉 や 噴 気 孔 では 水 蒸 気 (H 2 O)が 主 成 分 となることがあ り 水 素 (H 2 ), 二 酸 化 硫 黄 (SO 2 )や 塩 化 水 素 (HCl)がわずかに 含 まれる ことがある 1000 近 い 火 山 ガスには 一 酸 化 炭 素 (CO)がわずかに 含 まれ ることがある 温 泉 付 随 ガスには 人 を 死 に 至 らしめる 濃 度 の 硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 が 含 まれ ている また 酸 素 がわずかしか 含 まれていないので 硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 が 含 まれ ていなくても 酸 欠 により 人 を 死 に 至 らしめる 温 泉 を 原 因 とする 中 毒 事 故 の 特 徴 これまで 温 泉 施 設 や 温 泉 地 で 温 泉 付 随 ガスや 火 山 ガスによる 中 毒 死 亡 事 故 で 原 因 とされたガスは 硫 化 水 素 や 二 酸 化 硫 黄 であり わずかに 八 甲 田 山 で 自 衛 隊 が 遭 遇 した 事 故 が 二 酸 化 炭 素 が 原 因 とされている 温 泉 付 随 ガス は, 多 くの 温 泉 から 放 出 されているが, 基 本 的 にガスが 滞 留 する 環 境 がな いと 事 故 は 起 きない 報 告 された 死 亡 原 因 は 硫 化 水 素 中 毒 喘 息 発 作 急 性 循 環 不 全 が 多 い 近 年 多 く 発 生 している 貯 湯 槽 や 配 湯 設 備 で 発 生 した 死 亡 事 故 は 労 働 災 害 と して 扱 われている 事 故 の 詳 細 については 記 録 が 残 っていないものが 多 い 温 泉 浴 室 で 死 亡 した 場 合 心 不 全 や 神 経 調 節 性 失 神 による 溺 死 であると 検 案 さ れることが 多 い この 中 には 硫 化 水 素 中 毒 が 原 因 となった 溺 死 も 含 まれている 可 能 性 がある 4
日 本 国 内 で 報 告 された 火 山 ガス 中 毒 死 亡 事 故 ( 小 坂 他 :1998)に 加 筆 No. 発 生 年 発 生 場 所 死 者 ガス 事 故 の 状 況 1 1951 湯 の 花 沢 2 H 2 S 男 子 2 人 野 天 風 呂 で 中 毒 死 2 1952 湯 の 花 沢 1 H 2 S 女 子 1 人 浴 室 内 で 死 亡 3 1954 地 獄 谷 1 H 2 S 40 才 男 性 客 露 天 風 呂 で 中 毒 死 4 1958 御 鉢 平 2 H 2 S 有 毒 温 泉 で 大 学 生 2 人 死 亡 5 1961 地 獄 谷 1 H 2 S 道 に 迷 い27 才 男 性 カジャ 付 近 で 中 毒 死 6 1961 御 鉢 平 2 H 2 S 旧 火 口 で 大 学 生 2 人 死 亡 7 1967 地 獄 谷 2 H 2 S 男 子 2 人 がキャンプ 中 に 中 毒 死 8 1969 鳴 子 温 泉 1 H 2 S 自 宅 浴 場 で 女 子 1 人 死 亡 9 1970 地 獄 谷 1 H 2 S 温 泉 源 泉 で 山 小 屋 の 作 業 員 死 亡 10 1971 振 子 沢 6 H 2 S スキー 中 の6 人 死 亡 11 1972 大 涌 谷 1 H 2 S 8 人 倒 れうち1 人 死 亡 12 1972 湯 本 1 H 2 S 入 浴 中 1 人 死 亡 13 1972 地 獄 谷 1 H 2 S 温 泉 源 泉 で19 才 作 業 員 中 毒 死 14 1975 地 獄 谷 1 H 2 S 15 才 男 子 少 年 ガス 中 毒 で 失 神 死 15 1976 白 根 沢 3 H 2 S 集 団 登 山 中 の36 人 中 3 人 死 亡 16 1980 くろがね 小 屋 1 H 2 S 大 学 2 年 生 雪 洞 に 転 落 死 亡 17 1985 地 獄 谷 1 H 2 S 湯 溜 りで 男 性 1 人 中 毒 死 18 1986 叫 沢 1 H 2 S 付 近 の 沢 で1 人 中 毒 死 19 1989 中 岳 1 SO 2 火 口 付 近 で67 才 男 性 死 亡 20 1989 新 湯 2 H 2 S 脱 衣 所 で 母 娘 2 人 死 亡 21 1990 中 岳 1 SO 2 火 口 付 近 で 観 光 客 70 才 男 性 死 亡 22 1990 中 岳 1 SO 2 火 口 付 近 で 観 光 客 78 才 男 性 死 亡 23 1990 中 岳 1 SO 2 火 口 付 近 で 観 光 客 54 才 女 性 死 亡 24 1994 中 岳 1 SO 2 観 光 の69 才 女 性 心 不 全 で 死 亡 25 1997 田 代 平 3 CO 2 窪 地 に 転 落 自 衛 隊 員 3 人 死 亡 26 1997 沼 の 平 4 H 2 S 登 山 中 の14 人 中 女 性 4 人 死 亡 27 1997 中 岳 2 SO 2 火 口 付 近 で 観 光 客 2 人 別 々に 死 亡 28 * 2005 泥 湯 4 H 2 S 旅 館 付 近 で1 家 4 人 死 亡 29 * 2013 雲 仙 温 泉 2 H 2 S 温 泉 貯 湯 槽 で 作 業 中 に 死 亡 30 * 2014 登 別 温 泉 2 H 2 S 温 泉 貯 湯 槽 で 作 業 中 に 死 亡 31 * 2015 田 沢 湖 高 原 3 H 2 S 源 泉 付 近 で 作 業 中 に3 名 死 亡 * 今 回 加 筆 したもの H 2 S: 硫 化 水 素,SO 2 : 二 酸 化 硫 黄,CO 2 : 二 酸 化 炭 素 死 亡 事 故 に 至 らない 中 毒 事 故 は 数 多 く 発 生 している 重 体 のまま 意 識 が 戻 らない 事 例 や, 中 毒 が 原 因 となり 意 識 を 失 い 溺 水 死 したことが 疑 われる 事 例 がある 5
硫 化 水 素 中 毒 の 特 徴 硫 化 水 素 中 毒 では, 硫 化 水 素 ガスの 数 回 の 呼 吸 による 意 識 消 失 呼 吸 停 止 心 停 止 を 起 こすことが 知 られており,この 状 態 がノックダウンと 呼 ばれている ノックダウンを 起 こす 濃 度 は 個 人 差 がある 上 寝 不 足 や 飲 酒 等 当 日 の 健 康 状 態 も 影 響 する 特 に 子 供 や 高 齢 者 既 往 症 のある 者 は 硫 化 水 素 代 謝 能 力 が 低 くなることがあり 注 意 が 必 要 硫 化 水 素 中 毒 は 極 めて 重 篤 な 症 状 をもたらすので 有 効 な 救 助 方 法 はない 酸 素 欠 乏 硫 化 水 素 危 険 作 業 主 任 技 術 者 講 習 テキストから 引 用 6
硫 化 水 素 中 毒 事 故 の 特 徴 硫 化 水 素 中 毒 は, 被 災 者 にきわめて 重 篤 な 症 状 をもたらす 死 亡 事 故 や 植 物 状 態 となる 事 例 が 多 く 報 告 されている 作 業 中 の 事 故 では, 二 次 災 害 が 多 く 発 生 し, 作 業 員 全 員 が 亡 くな る 事 故 も 発 生 している 硫 化 水 素 の 危 険 を 知 っており, 手 慣 れた 作 業 を 行 っている 状 況 で あっても 事 故 が 発 生 している 貯 湯 槽 では, 貯 湯 槽 内 に 溜 まった 湯 の 花 を 取 り 除 く 作 業 中 に 死 亡 事 故 が 発 生 している 浴 室 で 発 生 する 重 大 事 故 では, 設 備 構 造 等 基 準 を 満 たしていない 構 造 の 浴 槽 が 見 られる 酸 素 欠 乏 症 等 防 止 規 則 ( 昭 和 47 年 労 働 省 令 第 42 号 以 下 酸 欠 則 とい う ) に 定 める 酸 素 欠 乏 危 険 個 所 で 行 う 作 業 については, 酸 素 欠 乏 危 険 作 業 として, 酸 欠 則 に 基 づき, 各 種 措 置 を 講 ずるよう 定 められており, 特 に 労 働 安 全 施 行 令 ( 昭 和 47 年 政 令 第 318 号 ) 別 表 第 6 第 3 号 の3 及 び9 号 の 場 所 にお いては, 酸 素 欠 乏 症 の 防 止 のみならず, 硫 化 水 素 中 毒 防 止 のための 各 種 措 置 も 講 ずるよう 定 めている 労 働 安 全 施 行 令 ( 昭 和 47 年 政 令 第 318 号 ) 別 表 第 6 第 3 号 の3 海 水 が 滞 留 しており, 若 しくは 滞 留 したことのある 熱 交 換 器, 管, 暗 きょ, マンホール, 溝 若 しくはピット( 以 下 この 号 において 熱 交 換 器 等 とい う ) 又 は 海 水 を 相 当 期 間 入 れてあり, 若 しくは 入 れたことのある 熱 交 換 器 等 の 内 部 労 働 安 全 施 行 令 ( 昭 和 47 年 政 令 第 318 号 ) 別 表 第 6 第 3 号 の9 し 尿, 腐 泥, 汚 水,パルプ 液 その 他 腐 敗 し,または 分 解 しやすい 物 質 を 入 れ てあり, 又 は 入 れたことのあるタンク, 船 倉, 槽, 管, 暗 きょ,マンホール, 溝 又 はピットの 内 部 現 在 温 泉 施 設 は 酸 素 欠 乏 症 等 防 止 規 則 対 象 外 7
酸 素 欠 乏 症 の 特 徴 温 泉 付 随 ガスには 酸 素 が 含 まれていないので 温 泉 付 随 ガスが 滞 留 す する 貯 湯 槽 やガスセパレータの 排 気 口 は 注 意 が 必 要 特 に 高 所 や 貯 湯 槽 のふたにおいて 作 業 する 場 合 脱 力 により 高 所 から 墜 落 したり 貯 湯 槽 内 に 落 下 し 溺 れる 危 険 性 がある 酸 欠 は 体 調 の 影 響 を 受 けやすい ので 手 慣 れた 作 業 を 行 う 際 にも 注 意 が 必 要 酸 欠 は 極 めて 重 篤 な 症 状 をもたらすので 有 効 な 救 助 方 法 はない 酸 素 欠 乏 硫 化 水 素 危 険 作 業 主 任 技 術 者 講 習 テキストから 引 用 8
二 酸 化 炭 素 中 毒 の 特 徴 これまで 自 然 由 来 の 二 酸 化 炭 素 が 死 亡 事 故 を 起 こしたとされる 公 式 報 告 は 1997 年 の 八 甲 田 山 の 事 故 * だけであるが 二 酸 化 炭 素 中 毒 が 疑 われる 事 故 事 例 が 存 在 する 二 酸 化 炭 素 泉 でないものの 多 量 の 湧 出 量 があり 貯 湯 槽 内 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 が100[vol.%]に 達 する 温 泉 施 設 が 存 在 する そのような 貯 湯 槽 では 一 呼 吸 で 死 に 至 る 可 能 性 がある 0.5 vol.% 二 酸 化 炭 素 の 濃 度 とヒトに 対 する 作 用 許 容 濃 度 ( 米 国 国 立 職 業 安 全 衛 生 研 究 所 NIOSH, 米 国 産 業 衛 生 専 門 家 会 議 ACGIH) 3 vol.% 短 時 間 暴 露 許 容 濃 度 ( 同 上 ) 4 vol.% 脱 出 限 界 濃 度 ( 米 国 国 立 職 業 安 全 衛 生 研 究 所 NIOSH) 3~5 vol.% めまい, 呼 吸 困 難, 頭 痛, 錯 乱 (Dreisbach1987,Thienes1972) 9 vol.% 5 分 最 小 致 死 濃 度 ( 化 学 物 質 毒 性 登 録 RTECS) 10 vol.% 視 覚 障 害, 耳 鳴 り,ふるえ,1 分 で 意 識 消 失 10 vol.% 1 分 最 小 致 死 濃 度 ( 化 学 物 質 毒 性 登 録 RTECS) 30 vol.% ほとんど 即 時 に 意 識 消 失 (Dreisbach1987,Thienes1972) * 八 甲 田 山 の 事 故 ( 滝 口 1998. 中 毒 研 究,11 巻,221-225.) 内 藤 裕 史 (2002) 中 毒 百 科 から 引 用 9
硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 ガスの 特 徴 硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 は 空 気 より 重 いガスなので, 基 本 的 に 低 所 程 高 濃 度 になる 子 供 は 大 人 より 呼 吸 器 の 位 置 が 低 いため,より 高 濃 度 の 硫 化 水 素 にさらされやすい しかしながら, 温 度 の 高 いガスは 比 重 が 低 下 する ガスが 風 に 流 されると,すぐに 拡 散 せず,ガスの 塊 (プリューム) となって 移 動 することがある 貯 湯 槽 の 蓋 をあけた 際 など, 硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 を 含 むプリュームにさらされることがある 貯 湯 槽 底 部 のガス 測 定 左 写 真 貯 湯 槽 の 測 定 結 果 硫 化 水 素 濃 度 17 000 ppm 貯 湯 槽 上 部 から 放 出 されるプリューム 左 写 真 貯 湯 槽 内 部 のガス 測 定 二 酸 化 炭 素 濃 度 87vol.% 10
温 泉 施 設 で 起 きる 中 毒 事 故 を 無 くしましょう 温 泉 地 では 温 泉 と 共 に 発 生 するガス( 温 泉 付 随 ガス) による 中 毒 で 重 大 事 故 が 発 生 しています 発 生 年 発 生 場 所 概 要 平 成 17 年 平 成 18 年 平 成 25 年 平 成 26 年 平 成 26 年 平 成 26 年 平 成 27 年 平 成 27 年 秋 田 県 駐 車 場 脇 長 野 県 沈 殿 槽 長 崎 県 貯 湯 槽 北 海 道 分 湯 槽 北 海 道 浴 槽 大 分 県 貯 湯 槽 秋 田 県 温 泉 配 管 群 馬 県 湯 量 湯 温 調 整 室 旅 館 付 近 の 駐 車 場 で 宿 泊 客 4 名 死 亡 清 掃 作 業 中 の 従 業 員 1 名 が 重 体 清 掃 作 業 中 の 従 業 員 2 名 が 死 亡 清 掃 作 業 中 の 従 業 員 2 名 が 死 亡 入 浴 中 の 宿 泊 客 が 意 識 不 明 の 重 体 ( 疑 い) 作 業 員 1 名 が 一 時 意 識 不 明 となる 配 管 整 備 中 の 作 業 員 等 3 名 死 亡 作 業 員 2 名 が 一 時 意 識 不 明 となる 温 泉 付 随 ガスは 硫 化 水 素 や 二 酸 化 炭 素 のような 中 毒 を 起 こすガス を 含 むことがあるだけでなく 酸 素 を 全 く 含 んでいないので 酸 素 欠 乏 症 を 起 こすガスです 最 悪 一 呼 吸 で 意 識 を 失 うノックダウンとい う 症 状 を 起 こします ノックダウンを 起 こす 濃 度 には 個 人 差 があり 当 日 の 体 調 も 影 響 します 硫 化 水 素 中 毒 や 酸 素 欠 乏 症 は 極 めて 致 死 率 が 高 く 危 険 ですが 適 切 な 対 策 を 講 じることで 防 止 できます 11
以 下 の 注 意 事 項 を 守 り 入 浴 客 や 温 泉 施 設 従 業 員 の 安 全 を 守 りましょう 浴 室 での 注 意 事 項 環 境 省 告 示 の 設 備 構 造 等 基 準 を 順 守 し 濃 度 測 定 や 換 気 設 備 等 の 日 常 点 検 を 実 施 しましょう 浴 室 内 の 温 度 管 理 に 注 意 し 入 浴 客 がお 湯 の 落 ち 口 に 近 づきすぎな いように 注 意 しましょう 飲 酒 後 の 入 浴 を 避 けることや,1 人 での 入 浴 は 注 意 が 必 要 であることを 明 記 しましょう 施 設 従 業 員 の 注 意 事 項 体 調 管 理 に 努 め 無 理 な 作 業 は 行 わないようにしましょう 寝 不 足 や 二 日 酔 いも 中 毒 に 影 響 します 貯 湯 槽 等 密 閉 される 場 所 の 清 掃 は 酸 素 欠 乏 硫 化 水 素 危 険 作 業 主 任 技 術 者 のいる 専 門 業 者 に 作 業 を 依 頼 しましょう 硫 化 水 素 の 危 険 性 について 熟 知 してください 施 設 作 業 員 は 酸 素 欠 乏 硫 化 水 素 危 険 作 業 主 任 技 術 者 講 習 を 受 けることをお 勧 めしま す 作 業 は 必 ず2 名 以 上 で 行 い 風 向 きに 注 意 し 常 に 風 上 で 作 業 してくだ さい 作 業 員 とは 別 に 監 視 人 を 置 いてください 防 毒 マスク 硫 化 水 素 検 知 警 報 器 酸 素 検 知 警 報 器 を 携 行 しましょ う 警 報 が 鳴 ったらすぐに 避 難 しましょう 防 毒 マスクは 適 正 に 吸 収 缶 を 交 換 しましょう ただし 防 毒 マスク を 酸 素 の 無 いところで 使 用 してはいけません 一 呼 吸 で 死 亡 します 12
作 業 場 所 での 注 意 事 項 日 常 管 理 を 行 う 場 所 は うっかり 顔 を 入 れ 高 濃 度 硫 化 水 素 を 吸 いこ まないように 人 の 顔 が 入 らない 大 きさの 開 口 部 としましょう 中 毒 事 故 を 起 こせば 命 を 失 うことや 温 泉 地 のイメージダウンまで 起 きかねないことを 認 識 しておきましょう 温 泉 付 随 ガスが 滞 留 しやすい 温 泉 タンクのハッチは 施 錠 し はしご やタンクの 入 り 口 及 びタンク 本 体 には 中 毒 事 故 や 酸 欠 事 故 が 発 生 する 可 能 性 があることを 明 記 しましょう 温 泉 タンクに 溜 まった 湯 の 花 を 不 用 意 にかきまぜてはいけません 湯 の 花 から 硫 化 水 素 が 発 生 することがあります 事 故 発 生 時 の 救 護 体 制 や 連 絡 先 など 事 前 に 決 めておきましょう 救 護 を 行 う 場 合 二 次 災 害 に 遭 う 可 能 性 が 極 めて 高 くなります 救 護 策 を 万 全 にするよりも 作 業 を 行 う 前 に 中 毒 事 故 が 起 きないよう 作 業 手 順 を 定 めた 作 業 計 画 を 作 成 し 全 ての 作 業 員 が 理 解 しましょう エア 抜 き 管 の 位 置 や 配 管 の 漏 れやすい 場 所 修 理 履 歴 を 記 録 し だ れでも 危 険 個 所 がわかるようにしておきましょう 作 業 場 所 や 温 泉 の 周 辺 での 注 意 事 項 温 泉 施 設 の 周 囲 の 危 険 個 所 を 日 頃 から 把 握 し 立 入 禁 止 柵 の 設 置 及 び 維 持 管 理 を 行 いましょう 地 熱 地 帯 では 地 面 を 踏 み 抜 く 陥 没 事 故 も 頻 発 しています また 地 形 により 無 風 状 態 となる 時 間 がある 場 合 には その 時 間 の 立 入 を 禁 止 しましょう 注 意 喚 起 は 児 童 にもわかりやすい ものとしましょう 二 酸 化 炭 素 を 多 く 発 生 する 温 泉 については 炭 酸 泉 でなくても 貯 湯 槽 等 で 作 業 する 際 に 二 酸 化 炭 素 中 毒 に 注 意 しましょう 二 酸 化 炭 素 中 毒 もノックダウンを 起 こし 一 呼 吸 で 死 にいたることがあります ガス 発 生 施 設 のガスセパレータ 等 の 排 気 口 からは メタンガスを 主 成 分 とする 酸 欠 ガスが 排 気 されています メタンガス 自 体 は 中 毒 を 起 こ すガスではありませんが 酸 欠 に 注 意 しましょう たとえ 酸 欠 で 死 に いたらなくても 酸 欠 により 体 が 麻 痺 し 高 所 から 落 下 して 死 亡 する こともあります 13