東 日 本 大 震 災 の 被 災 状 況 と 復 興 への 課 題 ~ 分 野 別 エリア 別 分 析 ~
目 次 サマリー P. 2 1. 総 括 P. 9 2. 生 活 社 会 インフラ P.11 3. 住 宅 P.19 4. 医 療 福 祉 P. 27 5. 製 造 業 P.35 6. 非 製 造 業 P.43 7. 農 林 水 産 業 P.51 補 論 被 害 額 の 推 定 プロセスの 概 要 P.59 1
1 全 体 概 況 被 災 状 況 今 次 震 災 は 地 震 津 波 原 発 事 故 と 被 害 は 複 合 的 で 被 災 範 囲 は 広 域 的 かつ 多 様 次 頁 以 降 の5つのエリアに 分 けられる の 被 害 率 は 岩 手 県 沿 岸 部 が47.3%と 最 も 高 く 同 被 害 額 は 宮 城 県 沿 岸 部 が4.9 兆 円 と 最 も 大 きくなっている 復 興 の 基 本 方 針 一 律 的 な 復 興 計 画 ではなく 地 域 の 個 性 を 活 かしたきめ 細 かな 復 興 計 画 を 検 討 する 必 要 がある 復 興 計 画 にあたっては カラミティプルーフ(= 免 災 : 天 災 にあっても 被 害 を 最 小 化 し 何 事 もな かったかのように 復 興 すること)の 先 進 地 域 を 目 指 すとともに 雇 用 創 出 住 民 参 加 を 促 す 息 の 長 い 取 り 組 みとする 必 要 がある 2
1 全 体 概 況 今 後 の 留 意 事 項 1 震 災 から2ヶ 月 半 が 経 過 し ライフラインが 復 旧 途 上 の 地 域 やさらに 厳 しい 地 域 もあるが 東 北 全 体 の 早 期 復 興 のためには できる 地 域 から 復 旧 フェーズから 復 興 フェーズに 移 行 し 地 域 経 済 の 活 力 を 取 り 戻 す 必 要 がある 2 産 業 面 では 仙 台 港 や 沿 岸 部 の 工 業 団 地 などの 産 業 基 盤 インフラは 物 流 の 拠 点 であると 同 時 に 企 業 活 動 の 前 提 であり ひいては 地 域 住 民 の 雇 用 の 源 泉 でもあるため 早 期 に 着 実 に 機 能 回 復 を 進 めるとともに 未 来 を 見 据 えた 産 業 競 争 力 強 化 の 観 点 からの 対 応 も 必 要 である ま た 東 北 大 学 などの 知 的 インフラは 東 北 地 域 のイノベーションの 中 核 であることから 早 期 復 旧 が 求 められている 3 生 活 面 では 仮 設 住 宅 の 早 期 建 設 をはじめ 三 陸 沿 岸 部 等 に 立 地 する 病 院 で 人 員 不 足 施 設 不 足 により 震 災 後 に 亡 くなる 高 齢 者 が 多 数 でており 医 療 福 祉 の 早 期 の 機 能 回 復 が 喫 緊 の 課 題 となっている 4 以 上 の 復 興 の 取 り 組 みに 際 しては 莫 大 な 資 金 が 必 要 とされるが 地 方 財 政 の 現 状 を 鑑 み 財 政 面 からのサポート PPP PFIなどによる 積 極 的 な 民 間 資 金 活 用 の 検 討 も 必 要 とされる 3
2 岩 手 県 沿 岸 部 二 戸 市 一 戸 町 八 幡 平 市 岩 手 町 滝 沢 村 盛 岡 市 雫 石 町 矢 巾 町 軽 米 町 九 戸 村 葛 巻 町 洋 野 町 久 慈 市 野 田 村 普 代 村 田 野 畑 村 岩 泉 町 宮 古 市 1,001-2,000 3,001 - 被 災 状 況 3.5 兆 円 ( 全 の47.3%) 4,427 人 3,010 人 34,200 人 被 災 者 数 計 人 口 被 災 者 比 率 41,637 人 282,866 人 14.7% 推 定 被 害 率 は 全 エリア 中 最 大 大 槌 町 陸 前 高 田 市 野 田 村 山 田 町 では 過 半 の 世 帯 が 浸 水 水 産 業 従 事 者 比 率 は 約 2 割 と 高 く 漁 港 など 水 産 業 関 連 インフラは 壊 滅 的 被 害 製 造 業 も 鉄 鋼 セメントの 主 要 工 場 で 被 害 ホテル 旅 館 は 殆 どの 主 要 施 設 で 休 業 西 和 賀 町 紫 波 町 花 巻 市 北 上 市 金 ヶ 崎 町 奥 州 市 平 泉 町 一 関 市 山 田 町 大 槌 町 遠 野 市 釜 石 市 住 田 町 大 船 渡 市 陸 前 高 田 市 復 興 への 課 題 この 地 域 については まず 避 難 住 民 の 安 定 した 生 活 環 境 の 確 保 が 急 がれる 次 の 津 波 リスクを 考 えれば 住 宅 と 生 活 社 会 インフラを 高 所 に 移 転 し 低 地 は 農 地 とし 高 所 の 住 宅 から 漁 港 や 農 地 に 通 うなど 抜 本 的 な まちづくりの 見 直 しが 必 要 宅 地 造 成 に 適 する 高 所 がない 場 所 では 谷 筋 奥 の 水 田 の 宅 地 化 を 進 める その 際 に 農 地 を 宅 地 化 するスキームの 検 討 が 必 要 主 力 産 業 の 水 産 業 ( 漁 業 水 産 加 工 業 )は 法 人 化 集 約 化 大 型 化 を 進 めながら 強 い 水 産 業 として 生 まれ 変 わる 必 要 漁 港 について は 優 先 順 位 をつけた 復 旧 復 興 プランの 策 定 が 必 要 藤 沢 町 ( 備 考 ) 国 土 地 理 院 公 表 の 津 波 マッ プ 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (500mメッシュ) より 当 行 作 成 4
3 宮 城 県 沿 岸 部 気 仙 沼 市 栗 原 市 大 崎 市 登 米 市 南 三 陸 町 加 美 町 涌 谷 町 色 麻 町 美 里 町 大 衡 村 石 巻 市 女 川 町 大 和 町 大 郷 町 松 島 町 東 松 島 市 富 谷 町 青 葉 区 泉 区 利 府 町 塩 竃 市 多 賀 城 市 七 ケ 浜 町 宮 城 野 区 太 白 区 川 崎 町 若 林 区 1,001-2,000 名 取 市 蔵 王 町 村 田 町 岩 沼 市 柴 田 町 3,001 - 七 ケ 宿 町 大 河 原 町 亘 理 町 白 石 市 角 田 市 山 元 町 丸 森 町 人 口 集 積 地 の 被 害 は 宮 城 県 沿 岸 部 が 大 きい ( 備 考 ) 国 土 地 理 院 公 表 の 津 波 マップ 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (500mメッシュ) より 当 行 作 成 宮 城 被 県 災 状 況 4.9 兆 円 ( 全 の21.1%) 8,842 人 5,682 人 30,310 人 被 災 者 数 計 人 口 被 災 者 比 率 44,834 人 981,373 人 4.6% 推 定 被 害 額 が 全 エリア 中 最 大 南 三 陸 町 東 松 島 市 女 川 町 石 巻 市 では 全 世 帯 の3 分 の2 以 上 が 浸 水 水 産 業 従 事 者 比 率 は 約 8%と 比 較 的 高 く 漁 港 など 水 産 業 関 連 イン フラは 壊 滅 的 被 害 製 造 業 も 食 料 品 や 石 油 精 製 紙 パルプなどの 工 場 が 軒 並 み 被 災 ホテル 旅 館 は 約 半 数 の 主 要 施 設 で 休 業 水 産 業 従 事 者 比 率 は 約 8% 復 興 への 課 題 石 巻 市 以 北 岩 手 県 沿 岸 部 と 同 様 東 松 島 市 以 南 仙 台 市 域 に 近 いエリアは 東 北 全 体 を 牽 引 する 工 業 拠 点 物 流 拠 点 としての 集 積 も 高 く サプライチェーンの 重 要 な 鍵 を 握 っている 企 業 も 存 在 するほか 内 陸 部 物 流 との 重 要 な 結 節 点 であるので 早 期 復 旧 の 重 要 度 が 高 い 津 波 被 災 住 宅 の 津 波 エリア 外 への 移 転 等 まちづくりの 検 討 必 要 津 波 被 害 を 受 けた 農 地 については 塩 害 問 題 を 考 えると 代 替 農 地 対 策 を 核 にした 復 興 プランの 策 定 が 必 要 5
4 福 島 県 沿 岸 部 福 島 県 福 島 市 国 見 町 桑 折 町 伊 達 市 新 地 町 相 馬 市 喜 多 方 市 北 塩 原 村 飯 舘 村 西 会 津 町 川 俣 町 南 相 馬 市 会 津 坂 下 町 磐 梯 町 猪 苗 代 町 二 本 松 市 大 玉 村 湯 川 村 本 宮 市 葛 尾 村 浪 江 町 金 山 町 三 島 町 会 津 若 松 市 柳 津 町 三 春 町 双 葉 町 会 津 美 里 町 郡 山 市 田 村 市 大 熊 町 富 岡 町 川 内 村 昭 和 村 只 見 町 須 賀 川 市 天 栄 村 小 野 町 楢 葉 町 下 郷 町 鏡 石 町 玉 川 村 平 田 村 広 野 町 矢 吹 町 西 郷 村 泉 崎 村 南 会 津 町 石 川 町 中 島 村 白 河 市 浅 川 町 古 殿 町 いわき 市 桧 枝 岐 村 鮫 川 村 棚 倉 町 矢 祭 町 塙 町 30km 20km ( 備 考 ) 国 土 地 理 院 公 表 の 津 波 マップ 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (500mメッシュ) より 当 行 作 成 原 発 30km 圏 内 人 口 ( 人 ) 人 口 計 うち 原 発 原 発 30km 内 陸 部 うち 原 発 原 発 30km 沿 岸 部 うち 原 発 原 発 30km 30km 圏 内 圏 内 比 率 人 口 30km 圏 内 圏 内 比 率 人 口 30km 圏 内 圏 内 比 率 A B B/A C D D/C E F F/E 2051626 2,051,626 142,125125 69% 6.9% 1,514,541 541 1184 1,184 01% 0.1% 537,085 140,941 26.2% 2% ( 備 考 )1.1kmメッシュ 統 計 のうち 境 界 線 上 のメッシュについては 人 口 を 面 積 按 分 して 当 行 試 算 2. 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (1kmメッシュ) より 作 成 被 災 状 況 1.9 兆 円 ( 全 の11.7%) 1,481 人 720 人 90,260 人 被 災 者 数 計 人 口 被 災 者 比 率 92,461 人 537,085 人 17.2% 原 発 事 故 に 伴 う 避 難 者 数 が 多 く 被 災 者 数 は 全 エリア 中 最 大 津 波 被 害 も 小 さくないものの 原 発 事 故 避 難 住 民 は10 万 人 以 上 に 達 する 見 込 み 自 動 車 製 紙 などの 工 場 が 被 災 原 発 20km 圏 内 の 企 業 は 全 て 操 業 停 止 漁 協 農 業 は 放 射 能 被 害 風 評 被 害 により 出 荷 制 限 や 作 付 け 休 止 が 続 出 1,001-2,0002 復 興 への 課 題 原 発 問 題 の 最 大 被 災 地 域 であり 現 時 点 で 計 画 を 立 てがたい 難 局 3,001 - 原 発 にあるが 避 難 住 民 の 安 定 した 生 活 環 境 を 作 ることが 喫 緊 の 課 題 緊 急 時 避 難 区 域 避 難 住 民 の 行 政 サポートも 不 足 していることから 行 政 サービスを 計 画 的 避 難 区 域 含 めたバックアップ 体 制 の 構 築 が 必 要 医 療 的 課 題 もこの 地 域 で 特 に 大 きく 緊 急 避 難 的 サポートを 横 断 的 に 行 う 実 施 体 制 が 組 まれる 必 要 がある 6
5 茨 城 県 沿 岸 部 桜 川 市 大 子 町 高 萩 市 常 陸 太 田 市 日 立 市 常 陸 大 宮 市 城 里 町 笠 間 市 那 珂 市 東 海 村 ひたちなか 市 水 戸 市 北 茨 城 市 筑 西 市 大 洗 町 結 城 市 茨 城 町 石 岡 市 古 河 市 下 妻 市 小 美 玉 市 八 千 代 町 鉾 田 市 五 霞 町 境 町 つくば 市 土 浦 市 かすみがうら 市 坂 東 市 常 総 市 行 方 市 阿 見 町 美 浦 村 鹿 嶋 市 つくばみらい 市 牛 久 市 稲 敷 市 潮 来 市 守 谷 市 取 手 市 龍 ケ 崎 市 河 内 町 利 根 町 神 栖 市 1,001-2,000 3001 3,001 - 茨 城 被 県 災 状 況 1.5 兆 円 ( 全 の6.8%) 14 人 9 人 0 人 被 災 者 数 計 人 口 (2010 年 ) 被 災 者 比 率 23 人 701,073 人 0.0% 原 発 事 故 に 伴 う 被 害 大 も 総 じて 被 害 規 模 は 中 程 度 北 部 は 津 波 鹿 嶋 市 神 栖 市 など 南 部 は 液 状 化 による 住 宅 被 害 あ り 重 要 港 湾 の 鹿 島 港 のインフラや 石 油 化 学 コンビナートで 津 波 被 害 主 要 工 場 で 生 産 休 止 が 続 く 漁 業 はコウナゴから 放 射 性 物 質 が 検 出 風 評 被 害 も 加 わり 休 漁 が 続 出 復 興 への 課 題 石 油 精 製 石 油 化 学 といった 川 上 産 業 の 早 期 復 旧 が 加 工 品 など の 川 下 産 業 の 稼 働 率 を 向 上 させ 日 本 全 体 のサプライチェーンを 回 復 す るために 必 要 港 湾 機 能 の 早 期 回 復 も 必 要 風 評 被 害 を 受 けている 漁 業 については 網 羅 的 継 続 的 な 放 射 線 量 の 測 定 など 正 確 な 情 報 提 供 による 被 害 の 極 小 化 が 必 要 ( 備 考 ) 国 土 地 理 院 公 表 の 津 波 マップ 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (500mメッシュ) より 当 行 作 成 7
64 県 内 陸 部 茨 城 県 被 災 状 況 1,001-2,000 3,001-4.6 兆 円 ( 全 の3.3%) 3%) 53 人 6 人 10,020 人 被 災 者 数 計 人 口 被 災 者 比 率 10,079 人 6,202,719 人 0.2% 沿 岸 部 に 比 べ 被 害 状 況 は 物 的 人 的 ともに 小 規 模 住 宅 被 害 は 軽 微 であったが 主 力 産 業 の 電 気 機 械 や 自 動 車 産 業 では 一 部 設 備 が 損 壊 工 場 は 設 備 面 では 復 旧 するも 部 品 調 達 がネッ ク 役 所 などの 公 的 施 設 建 物 に 被 害 あり 復 興 への 課 題 電 機 自 動 車 など 工 場 の 早 期 回 復 により 地 域 経 済 の 活 力 を 復 活 さ せ 沿 岸 部 の 牽 引 役 となる 必 要 東 北 大 学 はイノベーションの 重 要 拠 点 であり 早 期 復 旧 が 不 可 欠 内 陸 部 においても 原 発 事 故 による 農 業 や 観 光 の 風 評 被 害 は 甚 大 で 工 業 製 品 にも 被 害 が 拡 大 しており 網 羅 的 継 続 的 な 放 射 線 量 の 測 定 など 正 確 な 情 報 提 供 による 風 評 被 害 の 極 小 化 が 必 要 ( 備 考 ) 国 土 地 理 院 公 表 の 津 波 マップ 総 務 省 地 域 メッシュ 統 計 (500mメッシュ) より 当 行 作 成 8