求 償 権 の 管 理 回 収 に 関 する 事 例 研 究 (その2) - 平 成 23 年 度 求 償 権 管 理 回 収 等 事 務 研 修 会 から- 農 業 第 二 部 前 号 に 引 き 続 き 昨 年 9 月 に 開 催 された 求 償 権 管 理 回 収 等 事 務 研 修 会 で 求 償 権 の 管 理 回 収 事 例 研 究 として 掲 げられたテーマから4つの 事 例 について 紹 介 します Ⅰ. 司 法 書 士 が 債 務 整 理 を 行 う 場 合 の 留 意 点 について 債 務 者 から 依 頼 を 受 けた 司 法 書 士 が 債 務 整 理 を 行 う 場 合 代 理 人 弁 護 士 が 行 う 債 務 整 理 との 相 違 点 や 留 意 事 項 について 教 えてほしい 例 えば 1. 債 務 者 への 督 促 などしてはいけなくなるのか 2. 債 権 額 を 通 知 する 義 務 はあるのか( 債 務 整 理 受 任 の 段 階 ( 方 針 未 定 )でも 司 法 書 士 か ら 債 権 額 を 教 えてほしいと 言 われた 場 合 に 通 知 すべきなのか) 1. 質 問 1について 基 本 的 には 代 理 人 弁 護 士 から 受 任 通 知 が 送 達 された 場 合 と 同 様 に 考 えてよい 貸 金 業 法 21 条 1 項 9 号 は 以 下 のとおり 定 めており 弁 護 士 と 司 法 書 士 を 区 別 してい ない ( 取 立 て 行 為 の 規 制 ) 第 21 条 貸 金 業 を 営 む 者 又 は 貸 金 業 を 営 む 者 の 貸 付 けの 契 約 に 基 づく 債 権 の 取 立 てにつ いて 貸 金 業 を 営 む 者 その 他 の 者 から 委 託 を 受 けた 者 は 貸 付 けの 契 約 に 基 づく 債 権 の 取 立 てをするに 当 たつて 人 を 威 迫 し 又 は 次 に 掲 げる 言 動 その 他 の 人 の 私 生 活 若 し くは 業 務 の 平 穏 を 害 するような 言 動 をしてはならない (9) 債 務 者 等 が 貸 付 けの 契 約 に 基 づく 債 権 に 係 る 債 務 の 処 理 を 弁 護 士 若 しくは 弁 護 士 法 人 若 しくは 司 法 書 士 若 しくは 司 法 書 士 法 人 ( 以 下 この 号 において 弁 護 士 等 という )に 委 託 し 又 はその 処 理 のため 必 要 な 裁 判 所 における 民 事 事 件 に 関 する 手 続 をとり 弁 護 士 等 又 は 裁 判 所 から 書 面 によりその 旨 の 通 知 があつた 場 合 におい て 正 当 な 理 由 がないのに 債 務 者 等 に 対 し 電 話 をかけ 電 報 を 送 達 し 若 しく 41
はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 することを 要 求 すること 基 金 協 会 が 同 法 の 直 接 適 用 を 受 けないとしても 貸 金 業 者 が 弁 護 士 介 入 後 に 債 務 者 に 対 して 直 接 弁 済 を 請 求 することが 弁 護 士 に 対 しても 不 法 行 為 を 構 成 するとされた 事 案 があるので( 東 京 地 判 平 成 13 年 7 月 13 日 判 例 タイムズ 1087 号 212 頁 ) 司 法 書 士 か ら 受 任 通 知 を 受 領 した 場 合 であっても 正 当 な 理 由 なく 債 務 者 に 督 促 をした 場 合 は 不 法 行 為 と 認 定 されるおそれがある なお 時 効 成 立 のおそれがある 等 の 場 合 については 後 述 の 質 問 に 対 する 解 説 を 参 照 2. 質 問 2について 司 法 書 士 が 債 務 整 理 に 関 する 代 理 権 を 有 していることを 前 提 とすれば 通 知 する 義 務 があると 解 される Ⅱ. 時 効 到 来 直 前 の 求 償 権 に 弁 護 士 が 介 入 した 場 合 の 対 応 について 時 効 到 来 直 前 ( 例 : 時 効 まで 残 1 年 )の 求 償 権 が 破 産 申 立 や 債 務 整 理 などの 準 備 中 ( 弁 護 士 等 の 代 理 人 が 介 在 している)の 場 合 時 効 中 断 に 向 けた 対 処 方 法 と 留 意 点 について 教 えてほしい 1. 時 効 について 時 効 は 1 請 求 2 差 押 え 仮 差 押 え 又 は 仮 処 分 3 承 認 によって 中 断 する( 民 法 147 条 ) 請 求 としては 民 法 上 は 裁 判 上 の 請 求 ( 民 法 149 条 ) 支 払 督 促 の 申 立 て( 民 法 150 条 ) 和 解 及 び 調 停 の 申 立 て( 民 法 151 条 ) 破 産 再 生 更 生 手 続 参 加 ( 民 法 152 条 )についての 規 定 が 置 かれている 差 押 え 仮 差 押 え 仮 処 分 については それぞれ 法 定 の 差 押 え 等 の 手 続 を 経 ることによって 時 効 中 断 効 が 生 じ( 民 法 154 条 155 条 ) 承 認 については 債 務 者 が 債 務 の 存 在 を 承 認 すれば その 時 点 で 時 効 が 中 断 されることになる ( 民 法 156 条 ) 2. 本 件 事 例 について 本 件 の 場 合 時 効 を 阻 止 するためには 時 効 の 問 題 があることを 代 理 人 に 通 知 し 了 42
解 を 得 た 上 で 債 務 承 認 書 を 徴 求 するか 債 務 者 又 は 代 理 人 が 協 力 的 でない 等 の 理 由 で 債 務 承 認 書 が 徴 求 できない 場 合 は 時 効 中 断 のために 行 うことを 代 理 人 に 通 知 の 上 支 払 督 促 又 は 訴 えの 提 起 を 検 討 すべきである これらの 手 続 においては やりとりを 書 面 で 残 しておくことや 申 立 書 訴 状 に 時 効 中 断 のためであることを 記 載 しておくことが 後 のトラブルの 防 止 に 繋 がり 時 効 中 断 のためであることが 明 確 であれば 正 当 な 理 由 があるので 不 法 行 為 等 は 成 立 しないと 考 えられる Ⅲ. 事 業 資 金 における 時 効 について 消 滅 時 効 の 期 間 として 民 法 で10 年 ( 商 法 5 年 )と 定 められており 以 前 の 研 修 で J Aの 事 業 は 商 法 上 の 営 業 ではないことから 消 滅 時 効 の 期 間 は 民 法 (10 年 )と 解 説 があっ たが 事 業 資 金 であっても 問 題 はないか 1. 商 事 時 効 については 債 権 が 商 行 為 によって 生 じたものである 場 合 には 5 年 の 消 滅 時 効 となる ( 商 法 522 条 ) そして JA 及 び 基 金 協 会 の 事 業 は 商 法 上 の 営 業 では なく JAの 行 為 が 商 人 の 営 業 のためにする 行 為 として 商 行 為 となるものではないと 考 えられるので 原 則 的 には 商 事 時 効 の 適 用 はない 2.ただし 貸 付 の 相 手 方 が 商 人 である 場 合 には 商 行 為 によって 生 じたことになる ので 5 年 の 消 滅 時 効 が 適 用 されることとなる たとえば 旅 館 業 者 が 借 主 である 場 合 旅 館 業 は 営 業 的 商 行 為 ( 商 法 502 条 7 号 )に 該 当 するので 旅 館 業 を 業 として 行 ってい る 者 は 商 人 となり( 商 法 4 条 1 項 ) 借 り 入 れが 営 業 のための 行 為 と 推 定 され 商 行 為 と なる 結 果 ( 商 法 503 条 ) 貸 金 についても 原 則 的 に 商 事 時 効 の 適 用 があることとなる 3. 単 純 化 すると 貸 付 先 が 商 人 でない 場 合 には 10 年 の 消 滅 時 効 になると 思 われるが 貸 付 先 が 会 社 である 場 合 や 事 業 主 である 場 合 (ただし 農 業 は 商 行 為 ではない )など については 5 年 の 消 滅 時 効 の 可 能 性 があるということとなります 4. 以 下 に 商 法 の 絶 対 的 商 行 為 及 び 営 業 的 商 行 為 の 規 定 を 示 すので これらを 業 として 行 っている 者 が 貸 付 先 である 場 合 には 5 年 の 消 滅 時 効 となる また 貸 付 先 が 会 社 である 場 合 には 原 則 として5 年 の 消 滅 時 効 となる( 会 社 法 5 条 ) ( 絶 対 的 商 行 為 ) 第 501 条 次 に 掲 げる 行 為 は 商 行 為 とする 43
(1) 利 益 を 得 て 譲 渡 する 意 思 をもってする 動 産 不 動 産 若 しくは 有 価 証 券 の 有 償 取 得 又 はその 取 得 したものの 譲 渡 を 目 的 とする 行 為 (2) 他 人 から 取 得 する 動 産 又 は 有 価 証 券 の 供 給 契 約 及 びその 履 行 のためにする 有 償 取 得 を 目 的 とする 行 為 (3) 取 引 所 においてする 取 引 (4) 手 形 その 他 の 商 業 証 券 に 関 する 行 為 ( 営 業 的 商 行 為 ) 第 502 条 次 に 掲 げる 行 為 は 営 業 としてするときは 商 行 為 とする ただし 専 ら 賃 金 を 得 る 目 的 で 物 を 製 造 し 又 は 労 務 に 従 事 する 者 の 行 為 は この 限 りでない (1) 賃 貸 する 意 思 をもってする 動 産 若 しくは 不 動 産 の 有 償 取 得 若 しくは 賃 借 又 はその 取 得 し 若 しくは 賃 借 したものの 賃 貸 を 目 的 とする 行 為 (2) 他 人 のためにする 製 造 又 は 加 工 に 関 する 行 為 (3) 電 気 又 はガスの 供 給 に 関 する 行 為 (4) 運 送 に 関 する 行 為 (5) 作 業 又 は 労 務 の 請 負 (6) 出 版 印 刷 又 は 撮 影 に 関 する 行 為 (7) 客 の 来 集 を 目 的 とする 場 屋 における 取 引 (8) 両 替 その 他 の 銀 行 取 引 (9) 保 険 (10) 寄 託 の 引 受 け (11) 仲 立 ち 又 は 取 次 ぎに 関 する 行 為 (12) 商 行 為 の 代 理 の 引 受 け (13) 信 託 の 引 受 け Ⅳ. 相 続 人 が 相 続 放 棄 した 場 合 の 期 限 の 利 益 喪 失 等 の 手 続 について 1. 東 日 本 大 震 災 により 債 務 者 A(64 歳 )が 死 亡 した 協 会 保 証 資 金 は 営 農 ( 牛 舎 の 増 築 ) 資 金 であり 残 高 がまだ1,846 千 円 程 ある 2. 法 定 相 続 人 を 調 査 したところ 妻 長 男 も 被 災 による 同 時 死 亡 であり 他 相 続 人 は 相 続 放 棄 をしている 3. 当 該 借 入 金 の 期 限 の 利 益 喪 失 については 金 銭 消 費 貸 借 契 約 証 書 兼 債 務 保 証 委 託 証 書 第 6 条 により 請 求 喪 失 となっている 4.なお 農 地 にはJAの 根 抵 当 権 が 設 定 されており 他 にも 無 保 証 資 金 がある 5.このような 状 況 下 で 期 限 の 利 益 喪 失 手 続 ( 通 知 等 )はどのようにまた 誰 に 対 し 44
てしなければならないのか 6. 代 位 弁 済 については JAにおいて 期 限 の 利 益 を 喪 失 しなければ 応 じることはでき ないと 思 われるが 何 か 良 い 方 法 があるか 7. 相 続 財 産 管 理 人 の 選 任 に 係 る 家 庭 裁 判 所 への 申 立 てについて JA 等 が 震 災 により 費 用 に 満 たない 資 産 ( 費 用 対 効 果 )また 復 旧 に 長 時 間 を 要 することを 理 由 に 選 任 申 立 てを 拒 否 した 場 合 どのような 対 応 が 望 ましいのか 8.また 仮 に 相 続 開 始 について 当 然 喪 失 となっている 場 合 ( 極 度 貸 付 等 )はどのよ うな 対 応 となるのか 期 限 の 利 益 喪 失 通 知 の 要 不 要 等 は 1.5について 相 続 財 産 管 理 人 にするほかないと 思 われる 2.6について 期 限 の 利 益 喪 失 通 知 を 送 れないのであれば 最 終 弁 済 期 限 の 到 来 を 待 った 上 でないと 代 位 弁 済 できないと 考 えられる 3.7について 相 続 財 産 管 理 人 がいなければ 期 限 の 利 益 を 喪 失 させることができないので 最 終 弁 済 期 限 の 到 来 まで 代 位 弁 済 しないという 対 応 になると 考 えられる 4.8について 当 然 喪 失 の 場 合 については 期 限 の 利 益 を 喪 失 させる 債 権 者 の 意 思 表 示 を 不 要 とする 明 確 な 合 意 なので 当 然 喪 失 事 由 を 客 観 的 具 体 的 に 証 明 しうる 限 り 期 限 の 利 益 喪 失 通 知 は 不 要 と 考 える ただし 当 然 喪 失 の 場 合 も 喪 失 事 由 喪 失 日 を 明 記 した 期 限 の 利 益 喪 失 通 知 書 を 債 務 者 等 に 送 付 しなければならないとする 見 解 もある 45