会 議 視 察 報 告 National Committee on North Korea 西 海 岸 メンバー 会 議 三 村 光 弘 2015 年 5 月 8 日 米 国 カリフォルニア 州 スタンフォード 大 学 にてThe National Committee on North Korea 西 海 岸 メ ンバー 会 議 が 開 かれた この 会 議 には 西 海 岸 を 中 心 とする 全 米 の 北 朝 鮮 専 門 家 約 25 名 が 集 まり 北 朝 鮮 の 政 治 経 済 等 の 現 状 や 米 国 および 各 国 の 北 朝 鮮 との 連 携 の 状 況 が 報 告 さ れた 筆 者 はこの 会 議 に 発 表 者 として 招 請 され 北 朝 鮮 経 済 の 現 状 について 報 告 を 行 い 参 加 者 から 有 益 なコメントをいただ いた これまであまり 交 流 することのなかった 米 国 の 専 門 家 との 交 流 を 通 じて 米 国 の 北 朝 鮮 政 策 や 民 間 の 北 朝 鮮 への 関 与 の 動 きについて 詳 しく 知 ることができた 14 th E-Trade International Forum 参 加 について 中 島 朋 義 5 月 23 日 韓 国 ソウル 市 COEX 国 際 会 議 場 で 開 催 された 14 th E-Trade International Forum The Role of E-Trade and E-Logistics with Spread of Regional Agreements in Northeast Asia に 参 加 した 同 フォーラムは 中 央 大 学 校 韓 国 電 子 貿 易 研 究 所 (KETRI)が 主 催 し 学 術 研 究 助 成 を 行 う 韓 国 政 府 の 基 金 で あ るNational Research Foundation of Koreaの 助 成 により 開 催 された 私 個 人 は 同 フォーラムへは 昨 年 11 月 に 続 き 二 回 目 の 参 加 となる 今 年 4 月 にERINAとKETRIは 研 究 交 流 協 定 を 締 結 し 国 際 貿 易 研 究 北 東 アジア 地 域 研 究 等 の 分 野 で 協 力 をし ていくことに 合 意 した 今 回 は 研 究 交 流 の 一 環 として 私 と 新 井 調 査 研 究 部 長 の 二 名 が 報 告 者 として 参 加 した 新 井 部 長 か ら は Regional Cooperation to Promote Northeast Asian Transportation Corridors と 題 し て ERINAが 継 続 的 に 取 り 組 んできている 北 東 アジア 輸 送 回 廊 について 報 告 を 行 った 私 は China s FTA policy and TPP と 題 し 中 国 のFTA 政 策 とTPPをはじめとするアジア 太 平 洋 地 域 の 広 域 経 済 統 合 の 関 連 について 報 告 を 行 った 会 議 全 体 としては 日 中 韓 をはじめ マレーシア 米 国 など 各 国 から 多 数 の 参 加 者 があり 電 子 貿 易 及 び 地 域 経 済 統 合 に ついて 広 範 かつ 活 発 な 議 論 が 行 われた KETRIとERINAの 研 究 上 の 関 心 領 域 は 重 なりあう 部 分 も 多 く 今 後 とも 研 究 協 力 を 進 めていくことは 有 意 義 と 認 識 す る 機 会 となった 56
会 議 視 察 報 告 都 市 建 設 が 進 む 羅 先 経 済 貿 易 地 帯 三 村 光 弘 2015 年 6 月 19 日 22 日 の 日 程 で 朝 鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 ( 北 朝 鮮 )の 羅 先 経 済 貿 易 地 帯 ( 特 別 市 )を 訪 問 した 今 回 は 往 路 はモスクワ 平 壌 間 を 月 2 回 運 行 している 国 際 列 車 を 利 用 して ロシア 沿 海 地 方 のウスリースク 市 からハサンを 経 て 羅 先 市 にある 国 境 駅 である 豆 満 江 駅 へと 入 り 復 路 は 元 汀 税 関 から 豆 満 江 を 渡 り 中 国 の 圏 河 税 関 へと 出 た 2014 年 8 月 から 約 10カ 月 ぶりの 訪 問 であったが 羅 先 市 内 では 中 国 企 業 が 建 設 していた 羅 先 国 際 貿 易 中 心 (センター) が 完 成 していたほか 金 日 成 主 席 金 正 日 総 書 記 銅 像 革 命 事 績 館 海 岸 園 (プール 理 容 食 堂 などを 兼 ね 備 えた 住 民 便 宜 施 設 ) 三 次 元 ( 3 D ) 映 画 館 新 し い 羅 津 市 場 の 建 物 な ど が 完 成 し 室 内 体 育 館 ( 中 国 吉 林 省 琿 春 市 政 府 の 寄 贈 ) 学 生 少 年 宮 殿 屋 外 屋 内 プール 中 朝 共 同 管 理 委 員 会 庁 舎 など が 建 設 中 であった 写 真 1 羅 先 国 際 貿 易 中 心 写 真 2 新 しい 羅 津 市 場 の 建 物 写 真 3 海 岸 園 の 外 観 写 真 4 海 岸 園 のプール ロシアが 投 資 している 羅 津 港 第 3 埠 頭 では 改 修 した 鉄 道 を 使 ってロシアから 運 んできた 石 炭 を 大 韓 民 国 ( 韓 国 ) 向 け に 中 継 輸 送 するための 荷 役 作 業 が 行 われており 北 東 アジア の 物 流 拠 点 としての 羅 津 港 の 潜 在 力 を 感 じさせる 姿 を 垣 間 見 た 59 頁 からのレポートにもあるように モンゴルも 自 国 産 の 石 炭 をロシア 羅 津 経 由 で 韓 国 に 輸 出 する 構 想 を 持 ってお り これが 実 現 すれば 羅 津 港 はより 活 気 づくであろう 57
写 真 5 羅 津 港 第 3 埠 頭 の 荷 役 作 業 写 真 6 第 2 回 羅 先 黒 龍 江 商 品 展 示 会 訪 問 期 間 中 第 2 回 羅 先 黒 龍 江 商 品 展 示 会 が 開 催 (6 月 18 22 日 )されており 黒 龍 江 省 の 企 業 と 羅 先 市 内 の 企 業 を 主 にして 商 品 の 展 示 即 売 が 行 われていた 今 年 第 5 回 を 迎 え る 予 定 の 夏 の 羅 先 国 際 商 品 展 示 会 と 比 べるとまだ 出 展 者 数 出 展 品 目 数 とも 少 ないが 羅 先 市 内 の 企 業 は 展 示 に 力 を 入 れ ており 羅 先 成 強 貿 易 会 社 ( 水 産 品 ) 羅 先 溥 浦 農 業 会 社 ( 農 産 品 ) 羅 先 大 興 貿 易 会 社 ( 水 産 品 ) 羅 津 飲 料 工 場 ( 酒 類 飲 料 水 ) 羅 先 恵 星 貿 易 会 社 ( 衣 類 ) 先 鋒 被 服 工 場 ( 衣 類 ) 羅 先 知 識 製 品 交 流 所 ( 漢 方 薬 ) 羅 先 青 鶴 開 発 会 社 (ミネラルウォー ター) 羅 先 総 合 食 品 工 場 ( 食 品 )などが 出 展 していた 写 真 7 羅 先 恵 星 貿 易 会 社 の 製 品 写 真 8 羅 先 総 合 食 料 工 場 の 製 品 復 路 は 元 汀 税 関 からの 出 国 となったが 現 在 の 元 汀 橋 の 上 流 側 に 片 側 2 車 線 の 道 路 橋 ( 新 豆 満 江 / 図 們 江 大 橋 )が 建 設 中 であった 筆 者 の 羅 先 側 案 内 人 によれば 2016 年 秋 の 完 成 を 予 定 しており 2015 年 は 橋 脚 部 分 16 年 は 桁 の 部 分 を 建 設 する 予 定 であるとのことであった 橋 の 建 設 は 北 朝 鮮 側 中 国 側 とも 中 国 山 東 省 の 企 業 が 請 け 負 っているようで 川 の 浅 い 北 朝 鮮 側 に 小 型 生 コンプラン トを 設 置 して 工 事 を 行 っているようであった 58
会 議 視 察 報 告 写 真 9 橋 脚 工 事 の 様 子 ( 北 朝 鮮 側 ) 写 真 10 同 ( 中 国 側 ) 大 図 們 江 地 域 横 断 輸 送 回 廊 促 進 の 動 き ERINA 調 査 研 究 部 長 主 任 研 究 員 新 井 洋 史 大 図 們 江 イニシアチブ(GTI)では 運 輸 分 野 での 協 力 の 柱 として 輸 送 回 廊 の 整 備 利 用 の 促 進 を 精 力 的 に 進 めている 現 在 は 2013 年 に 策 定 した GTI 地 域 運 輸 戦 略 (GTI Regional Transport Strategy) および 行 動 計 画 (Action Plan) に 基 づいて 活 動 している 具 体 的 には 大 図 們 江 地 域 (GTR) 内 外 を 結 ぶ6 本 のルートを 大 図 們 江 地 域 横 断 (Trans-GTR) 輸 送 回 廊 に 設 定 して その 整 備 および 利 用 促 進 を 図 っている こ うした 中 2015 年 6 月 15 日 ウランバートル 市 (モンゴル)にお いて 第 5 回 GTI 運 輸 部 会 ならびに GTR 陸 海 複 合 一 貫 輸 送 促 進 セミナー が 開 催 され GTI 構 成 国 4カ 国 の 運 輸 政 策 所 管 官 庁 の 担 当 者 や 国 際 機 関 民 間 の 専 門 家 らが 現 状 確 認 や 今 後 の 取 組 について 議 論 した 以 下 では 筆 者 が 特 に 注 目 した3 点 について 紹 介 していきたい 第 1に 羅 津 ~ハサン プロジェクトを 取 り 上 げたい 現 在 GTIの 構 成 国 は 中 国 モンゴル 韓 国 ロシアの4カ 国 であ り 北 朝 鮮 は 脱 退 し た ま ま と な っ て い る に も か か わ ら ず 各 国 は 北 朝 鮮 北 部 の 羅 津 港 に 強 い 関 心 を 示 している 既 に 北 朝 鮮 とロシアの 共 同 プロジェクトとして 羅 津 ~ハサン 間 の 鉄 道 と 羅 津 港 第 3ふ 頭 改 修 工 事 が 完 了 し 2014 年 から 運 用 が 始 まっている 今 回 のロシア 代 表 団 からの 報 告 では 羅 津 港 ( 第 3ふ 頭 )の 取 扱 能 力 は 年 間 500 万 トンで 2015 年 の 取 扱 計 画 量 ( 契 約 済 )は150 万 トンとのことであった またモンゴルは 自 国 産 石 炭 をシベリア 鉄 道 羅 津 港 経 由 で 韓 国 に 輸 出 することを 検 討 している モンゴル 代 表 団 の 報 告 によれば 年 内 にも 試 験 輸 送 を 実 現 すべく 準 備 中 とのこと であった コーヒーブレークの 際 に 聞 いたところでは ロシア 鉄 道 との 間 の 交 渉 は 一 定 程 度 進 捗 しているが 運 賃 交 渉 がカ ギとなっているようだ GTIとしても 2014 年 に 羅 津 ~ハサン プロジェクトの 現 状 評 価 や 長 期 的 展 望 等 についての 調 査 を 実 施 した この 作 業 を 担 当 したのは 韓 国 鉄 道 研 究 院 であり その 背 景 には 韓 国 が 将 来 的 に 朝 鮮 半 島 縦 貫 鉄 道 とシベリア 横 断 鉄 道 を 結 ぶ 列 車 の 運 行 することへの 強 い 関 心 を 持 っていることを 指 摘 す ることができるだろう 現 実 にも 韓 国 に 羅 津 港 経 由 でのロシ ア 産 石 炭 の 輸 入 が 行 われている 上 述 のモンゴル 産 石 炭 の 試 験 輸 出 先 としても 韓 国 が 想 定 されている こうした 状 況 もあ り 今 回 の 会 議 で 韓 国 代 表 団 は 2016 年 にGTIが 北 朝 鮮 の 越 境 ロジスティクスに 関 する 調 査 を 実 施 することを 提 案 した 第 2に 中 国 モンゴル ロシアの3カ 国 によるトランジッ ト( 通 過 輸 送 ) 協 定 に 向 けた 動 きに 注 目 したい 現 在 モンゴル と 中 国 モンゴルとロシアのそれぞれぞれの 間 では 二 国 間 の トランジット 協 定 が 存 在 している これらは 主 にモンゴルの 輸 出 入 貨 物 が 中 国 あるいはロシアの 領 土 を 通 過 することを 念 頭 に 置 いたものである これに 対 して 現 在 交 渉 が 進 んで いるのは モンゴルの 西 部 を 経 由 するアジアハイウェー 整 備 の 一 環 と の 位 置 づ け で あ り モ ン ゴ ル 自 体 が 通 過 国 に な る こ とも 想 定 されたものである アジアハイウェーを 推 進 してい るのは 国 連 アジア 太 平 洋 経 済 社 会 委 員 会 (UNESCAP)であ り このトランジット 協 定 締 結 に 関 しても 交 渉 が 円 滑 に 進 む ようにサポートを 行 っている 各 国 とも 真 摯 に 対 応 している 59
地 方 との 知 事 サミットを 継 続 するなど 北 東 アジア 協 力 に 非 常 に 熱 心 である 日 本 からロシアへの 事 実 上 の 最 短 航 路 であ るDBSフェリー 航 路 ( 境 港 ~ 東 海 ( 韓 国 )~ウラジオストク(ロ シア))の 利 用 促 進 のために 関 係 国 の 協 力 を 得 たいという 思 惑 もあって GTIの 活 動 に 参 加 している LCCの 設 立 は2013 年 であるが 鳥 取 県 は 設 立 準 備 段 階 から 関 与 し 2014 年 8 月 に はLCCの 会 議 を 米 子 市 で 開 催 するなど 積 極 的 な 役 割 を 果 た している 鳥 取 県 が ロジスティクス 委 員 会 を 提 案 している のはこのLCCの 分 科 会 的 な 位 置 づけである 今 回 の 運 輸 部 会 で 異 論 が 出 なかったので 2015 年 秋 には 設 置 されることにな ると 思 われる 中 央 の 運 輸 省 担 当 者 から 構 成 される 運 輸 部 会 ようであるが 交 渉 妥 結 の 可 能 性 については 明 確 な 言 及 が 無 く やや 不 透 明 な 状 況 のようである 中 国 東 北 部 の 貨 物 をロシ ア 極 東 港 湾 ( ウ ラ ジ オ ス ト ク ボ ス ト ー チ ヌ イ ナ ホ ト カ な ど ) を 利 用 して 輸 送 する 場 合 のトランジット 輸 送 の 円 滑 化 にも 寄 与 する 法 的 な 基 盤 となりうるものであり 早 期 の 協 定 締 結 が 望 まれる 他 方 中 ロ 二 国 間 でもトランジット 輸 送 協 定 の 協 議 が 進 んでいるとの 情 報 もあり やや 錯 綜 している 第 3に GTIの 枠 組 みの 中 の 新 たな 機 構 として ロジスティ クス 委 員 会 を 設 置 する 準 備 が 進 行 中 だ これは 鳥 取 県 の 提 案 によるものである 日 本 はGTIの 構 成 国 ではないが 鳥 取 県 はGTI 地 方 協 力 委 員 会 (LCC)の 構 成 員 となっている 周 知 の とおり 鳥 取 県 は 韓 国 江 原 道 中 国 吉 林 省 ロシア 沿 海 と 地 方 政 府 担 当 者 から 構 成 されるロジスティクス 委 員 会 と が 連 携 して 相 乗 効 果 が 生 まれることを 期 待 したい このほかにも 各 国 における 政 策 展 開 の 状 況 として 中 国 の 一 帯 一 路 政 策 の 紹 介 やモンゴルにおけるインフラ 整 備 プロジェクトの 進 捗 状 況 の 説 明 韓 国 が2015 年 9 月 9-11 日 に 開 催 す るASEM 国 際 シ ン ポ ジ ウ ム Seamless Eurasia: Making Connections の 案 内 ロシアの ウラジオストク 自 由 港 の 準 備 状 況 の 説 明 などがあった 現 在 の 国 際 環 境 は この 地 域 での 輸 送 分 野 での 協 力 にとっ て 望 ましい 状 況 にある 実 務 的 な 協 力 が 目 に 見 える 成 果 を あげられるよう 筆 者 としても 協 力 していきたいと 考 えてい る 60