E-Book 2.0 Magazine 2015 年 1 月 29 日号 Vol.5, No.20, 1/29/2015 [ 無償公開版 ] 目次 ANALYSIS & COLUMN 拡大する自主出版世界 (2): 実用書への拡大 2 雑誌帝国の世界戦略の一石二鳥 ( ) 3 NEWS & COMMENTS 拡大する自主出版世界 (2): 教科書エディタ KTC 4 定額サービスは販売を補完していた 7 音楽 販売モデル の凋落は何を語るか 10 E-Book 2.0 Magazine 2015 年 1 月 29 日発行 ( 第 5 巻第 20 号 ) ISSN: 2185-954-X (2010 年 9 月 15 日創刊 ) 編集兼発行人 : 鎌田博樹発行 : オブジェクトテクノロジー研究所 185-0003 東京都国分寺戸倉 3-15-22 www.otij.org Email : newsletter@ebook2forum.com c2010-1014 by Object Technology Institute, Inc 1
ANALYSIS & COLUMN 拡大する自主出版世界 (2): 実用書への拡大 アップルが ipad ibooks Author ibooks Store という 完結した ios エコシステムを前提としているのに対して アマゾンは KDP プログラムの教育系への拡張のために Textbook Creator を提供した しかもターゲットはモバイル系だけでなく Mac/PC も開かれている このモデルは教育系だけでなく B2B/ 実務系にも拡張されそうだ [ 全文 = 会員 ] 拡大する自主出版世界 (1): 教科書エディタ KTC から続く 従来資産を継承しつつデジタル機能を拡張 実用書へ拡大する自主出版 2
ANALYSIS & COLUMN 雑誌帝国の世界戦略の一石二鳥 ( ) 出版ビジネスの国際化とはローカライズのことであり コンテンツ 制作 流通 広告 ブランドも含めて地元のパートナーと組む形がとられた 莫大な投資をして成功したか見えても継続性にはつねに疑問符が付く しかし そうした 20 世紀の常識はもはや通用しないのかも知れない デジタルでは読者に訴求するものさえあれば 80% の問題は解決しているのだ [ 全文 = 会員 ] デジタル ファーストをグローバルに徹底 周辺から中心へ は日本でも有効かつ必要 記事タグ 本誌カテゴリ : コンテンツビジネス, ニュースメディア, 出版 製作, 有料記事 タグ :E-Mag, デジタルファースト, ハースト 3
NEWS & COMMENTS 拡大する自主出版世界 (2): 教科書エディタ KTC アマゾンは 1 月 22 日 KDP の新部門 KDP EDU を通じて教材用オーサリングツール Kindle Textbook Creator (KTC) ベータ版を公開した ( リリース ) アップル ibooks Author に相当するもので それ以上が期待できるわけではない EPUB3 でなく PDF をベースに Kindle の E-Text を構成する点も前向きではない しかし KDP を背景にし かつ複数のデバイスをサポートする点が大いに違う PDF と EPUB の中間? E-Book は読者側のリーダと制作側のエディタで機能する 両者をつなぐのはフォーマットだ アマゾンは Kindle という専用リーダを提供しているが エディタは特別なものを必要としていなかった これまでの Kindle フォーマットは HTML5 をベースとして EPUB3 との近縁性を維持しており 付かず離れずの関係にあったからだ それでも コミックや絵本ではツールを KDP 作家用に提供している 制作のプロではなく著者用とする点では一貫している しかし例外がある 教科書だ 構造性が高く コンテンツとレイアウトとの関係が緊密なので そのままレプリカにする以外 既存のタイトルの利用が困難なので PDF を使っている これはデジタルのメリットを利用することは 4
できない KTC はレプリカのデジタルへの移行を図るためのツールだ 試行錯誤の末のものなので 迷いはないだろう ユーザーにとっても新鮮なものではない もちろん Kindle エコシステムの一環だが 教材制作者および教師が Kindle クラウドサービス ( とくにストア ) を利用することを前提とし Kindle Fire とともに ipad iphone Android Mac PC をサポートする 機能的には ハイライトをカテゴリ別カラーで表示するほか 構造化されたノートブック機能 フラッシュカード ( 暗記メモ ) 辞書 Wikipedia 記事へのアクセス 複数デバイス間の同期が可能になっている しかしビデオなどのリッチ コンテンツは含まれておらず これだけでは不十分 アマゾンによれば 正式版までにさらに多くの機能が追加されるというので ibooks Author との機能比較はそれを待つべきだろう ツールを評価するには 想定する環境 プロダクト ユーザーにとってどう役立つかを問題にすることになるのだが アマゾンのツールの場合は アマゾンのアプリの中と決まっている そして多くの機能はアマゾンのクラウドを通じて利用することになるし その限りでは過不足ないものとなることは分かっているので 単独で取り上げる意味はあまりない これはアドビなどのプロ用製品と競合するものではなく Kindle で出版しやすくするためのものだ 現段階で言えること まず注目すべきことは以下の 3 点だと思われる 第 1 に アマゾンは現存する膨大な PDF 資産 を継承すること ( つまり紙の教科書の転用 ) を E-Text 制作環境の主軸に デバイスでは 5
Mac/PC をメインにしたということ モバイルは必ずしもメインにならない 第 2 に これまではもっぱらフィクション ライターに活用されて一大市場を築いてきた KDP プラットフォームで E-Text を扱うということ Kindle Unlimited/Lending Library でコンテンツを流通させることをも意味する 第 3 に 前号で科学技術医学 ( いわゆる STM) 出版について述べたように STM と教科書 教材 専門書市場とは隣接しているから KDP EDU は 専門書 / 学者 専門家の自主出版 という性格も有している KDP の性格は大きく変わった 以下 これらを具体的に検討してみよう (2) に続く ( 鎌田 01/27/2015) 拡大する自主出版世界 (2): 実用書への拡大 記事タグ 本誌カテゴリ : コンテンツビジネス, テクノロジー, 出版 製作 タグ :E-Text, Kindle Textbook Creator, アマゾン, ビジネスモデル 6
NEWS & COMMENTS 定額サービスは販売を補完していた 先日 アマゾンのグランディネッティ副社長が Kindle Unlimnited について サービス利用者の消費額が増えていると発言したことを紹介したが このほど Neilsen Book という中立的調査会社からそれを確認する消費者データが一部公開された (The Digital Reader, 1/27) 販売市場と違う傾向が出ているのは 定額制が販売を損なうものでないことを示している 定額利用者は 怠惰 な読者 書籍購入者の 4% が専門の E-Book 定額サービスのいずれかに加入し 7
ており Kindle Unlimnited も加えると 10% に達する つまり KU のシェアは他のサービス全体の 2.5 倍ということで これは小売市場の状況とあまり変わらないことになる アマゾンは大手出版社のタイトルがなく 自主出版が中心なので アマゾンのパフォーマンスは凄いと言える 同じ条件なら勝負にならないだろう KU に大手出版社のタイトルが並べば 定額サービスの性格が一変するくらいの影響があるかも知れない 性別では男性が 59% と 通常の購入者では女性が 6 割あまりなのと対照的だ 男性の場合は 他のメディアへの接触が多く 平均的に女性より 可処分時間 が少ないために読書人口 購入人口はもともと女性優位なのだが 定額制の男性優位は このモデルがとくに ( 書店に寄る機会の少ない ) 男性に有効であることを示しているのかも知れない 年齢階層的には どのサービスでもほぼ 18-44 歳が 8 割あまりを 8
占める 購入者では 45 歳以上が 4 割近くを占め また購入数では他を圧するほどなので 保守的な愛書家ほどこのサービスを利用しないということかも知れない だとすればアマゾンの思惑 (?) 通り 重要顧客である中年以上の多読層ではなく 定額制を読書に怠惰な男性を取り込む手段になっている可能性がある さらに重要なことは 調査対象者は一様に毎月かなりの金額を本に遣っており 定額サービス利用者で 58 ドル 非利用者で 34 ドルとなっている また前者は約 10 ドルという定額料金のほかに 購入するつもりがあると回答している こちらは男性が 17 ドル 女性は 14 ドル これまでのところ定額制は マクロ的には販売を補完するものとして機能しており 出版社に新しいチャネルの確立を期待させるものと言えよう Scribd や Oyster にとっては追い風だ アマゾンはこのチャネルを主に自主出版やヒットシリーズのためのチャネルとして育てており それでも機能させている しかし 個々の自主出版作家にとっては 刊行ごとに 販売 と 貸本 のバランスを判断しなければならず 最適なパターンを発見することは容易ではない ( 鎌田 01/28/2015) 記事タグ 本誌カテゴリ : コンテンツビジネス, マーケット データ, 流通 書 店 図書館 タグ :Kindle Unlimited, Nielsen BookScan, 定額サービス 9
NEWS & COMMENTS 音楽 販売モデル の凋落は何を語るか CD 売上の定常的減少はもはや常識だが 最近ではダウンロード (DL) も CD 販売を追っている 替って増えているのは定額のストリーミング (ST) とアナログ LP という両極である これに YouTube も加えるべきだと思うが これは業界の売上に入っていない この現象は書籍の将来に何を暗示しているのだろうか マスマーケティングの限界 Atlantic 誌のデレク トムソン編集長は最近 音楽販売の死 と題する記事を書いた もちろん 死 というのは誇張だが 2013-14 年の変化率が CD の-15% に対して DL が-13% というのだから これは構造変化と言うしかない どこへ? ST が 54% 増なのだから そちらへの移行が起きているということになる itunes SoundCloud Spotify Pandora iheartradio などなど LP( 米国人は ビニール と呼ぶ ) が 51% も伸びている しかし 全体の 3.5% にすぎないから これをアナログの反攻と見ることもできない その他の数字も販売の終焉を告げるかのようだ チェーンストアの販売は -20% ニューアルバムの販売は-14% 新曲のオンライン販売も -10.3% 10
人々は音楽を主に消費の対象と考えるようになり CD はおろか DLすら厭うようになったというのだろうか 販売市場では上位 1% のアーチスト / バンドがレコード音楽収入の 80% を占めていると言われる しかし ST 市場はそれほど集中しておらず トップ 10 の曲でも売上の 2% に過ぎない Spotify には 3,500 万曲が収録されているから 毎日数時間を聴くユーザーが毎日トップ 10 の曲を聴いたとしても一部でしかない どうやらメディアを通じて トレンド や ヒット をつくり出し 購入すべき価値があるものを推奨して販売に至る音楽産業の精巧で巨大なサプライチェーンが機能しなくなりつつあるということだ 人々はそれらが所有する意味のないものであり ( いつでも聴ける ) 音楽が生活に必要なものであるなら巨大でより民主的な巨大ジュークボックスである ST サービスで十分だと考えるようになったのだろう 所有する意味のあるものなら DL や CD ではなく紙と印刷物が付属している LP のような実在感のあるものがよい これは E-Book の 販売 と定額制 紙と E-Book の関係について考える上でも参考になる もちろん音楽はほとんど受動的なメディアなのに対して E-Book はより能動的に関われる可能性がある DL の利 11
点は音楽よりは大きい しかし 1% を富ませるための伝統的なマーケティング手法が歴史的使命を終えつつあることも確かだ 人は毎日ある時間音楽を聴いていたいし それが最新のヒット曲である必要はない 日常の時間には無償で聴くもの あるいは定額のサービスがフィットする 出版でもインディーズものが入り込んでいるのは そうした空間であろう 音楽業界の現状は 筆者にはメディアビジネスにおける 絶対的非対称性 の時代が終わったことを示しているように思われる ( 鎌田 01/28/2015) 記事タグ 本誌カテゴリ : エンターテイメント, コンテンツビジネス, 流通 書 店 図書館 タグ : ストリーミング, 定額モデル, 音楽業界 12
E-Book2.0 Magazine V5N20 Copyright 2015 オブジェクトテクノロジー研究所 ISSN 2185-954X 発行日 :2015 年 1 月 29 日発行者 : 鎌田博樹発行所 : オブジェクトテクノロジー研究所 185-0003 東京都国分寺市戸倉 3-15-22 Web サイト http://www.ebook2forum.com/members/ Email : newsletter@ebook2forum.com 13