ハザードマップで 災害に備える

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【集約版】国土地理院の最近の取組

スライド 1

2019 年1月3日熊本県熊本地方の地震の評価(平成31年2月12日公表)

小特集熊本地震に関する地理空間情報部の対応 207 熊本地震に関する地理空間情報部の対応 Responses of Geospatial Information Department to the 2016 Kumamoto Earthquake 地理空間情報部災害対策班 Geospatial In

平成28年4月 地震・火山月報(防災編)

Microsoft PowerPoint 「平成28年熊本地震活動記録(第17報) 案-2.pptx

目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

202 国土地理院時報 影の違いなどを総合的に判断して取得した また 今回の地震で生じた亀裂かどうか容易に識別できな い場合は 地震発生前に撮影された空中写真と比較 して確認を行った ただし すべての範囲を同じ縮 尺レベルで判読できている訳ではないうえ 判読者 の違いにより取得基準に若干のぶれがある

概要 気象の状況 6 月 10 日に九州の南海上にあった梅雨前線が 11 日には九州北部までゆっくり北上し 前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み 前線活動が活発化した 熊本県では 九州の西海上から発達した雨雲が次々に流れ込んで 大雨が降りやすい気象状況となった 大雨の状況 熊本県では 11 日朝

被害情報 平成 29 年 11 月 13 日 16 時 30 分発表熊本県危機管理防災課 平成 28(2016) 年熊本地震等に係る被害状況について 第 258 報 1 この数値は 現段階の速報値であって 確定値ではありません 速報値 1 1 被害状況 ( 平成 29 年 11 月 13 日 13:

186

本日の内容 1. 無人航空機 (UAV) とは 2. 国土地理院によるUAVを活用した災害調査事例 3.UAVの測量での活用について 4. 国土地理院ランドバードについて 3 無人航空機 (UAV) とは 無人航空機 (UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン ) 空撮

2016年(平成28年) 熊本地震

緊急地震速報の発表状況 この地震に対し 地震検知から 3.9 秒後の 20 時 42 分 7.9 秒に緊急地震速報 ( 警報 ) を発表 しました 震源要素の切り替え 4 月 18 日 20 時 42 分頃に発生した熊本県阿蘇地方の地震の震源要素を 22 時 15 分に速報値 から暫定値へ切り替えま

この資料は速報値であり 後日の調査で変更されることがあります 時間帯 最大震度別回数 震度 1 以上を観測した回数 弱 5 強 6 弱 6 強 7 回数 累計 4/14 21 時 -24 時 /15 00 時 -24 時 30

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交付金事業実施状況報告及び推進事業実績報告並びに基金事業実施状況報告及び活性化事業実績報告について 別紙 1. 今年度に都道府県及び市町村が実施した推進事業及び活性化事業 ( 交付金等 ) 事業名 ( 事業メニュー ) 1. 消費生活相談機能整備 強化事業 都道府県は被災 4 県のみ 都道府県 -

H19年度

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小特集熊本地震に関する基本図情報部の対応 189 熊本地震に関する基本図情報部の対応 Responses of National Mapping Department to the 2016 Kumamoto Earthquake 基本図情報部災害対策班 National Mapping Depar

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熊本地震の緊急調査報告

累積火災件数 本震震最大震度 6 強の揺れを伴う地震の発生日時前累積火災件数 最大震度 7 の揺れを伴う地震の発生日時 0 4/14 4/15 4/16 4/17 4/18 4/19 4/20 4/21 図 地震の発生日時と火災の出火推定日時の関係

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

Microsoft PowerPoint - ①【最終】防災・減災に向けた国土地理院の取り組み

九州地方の主な地震活動

(2 / 5) 震度 1 以上を観測した地震の状況は以下のとおりです 1. 平成 28 年 (2016 年 ) 熊本地震 の活動域における地震の発生状況 2016 年 4 月 14 日から始まった熊本県から大分県 ( 領域 a) にかけての 平成 28 年 (2016 年 ) 熊本地震 の一連の地震

報道発表資料 ( 地震解説資料第 44 号 ) 平成 29 年 7 月 2 日 04 時 30 分 熊本地方気象台 平成 28 年 (2016 年 ) 熊本地震 について - 平成 29 年 7 月 2 日 00 時 58 分頃の熊本県阿蘇地方の地震について - 熊本県産山村で震度 5 弱を観測今後

GPS仰角15度

【資料3-2】光格子時計の測地分野での利用可能性

平成17年7月11日(月)

経営理念 宇宙と空を活かし 安全で豊かな社会を実現します 私たちは 先導的な技術開発を行い 幅広い英知と共に生み出した成果を 人類社会に展開します 宇宙航空研究開発を通して社会への新たな価値提供のために JAXAは 2003年10月の発足以来 宇宙航空分野の基礎研究から開発 利用に至るまで一貫して行

2018 年の山形県とその周辺の地震活動 1. 地震活動の概況 2018 年に 山形県とその周辺 ( 図 1の範囲内 ) で観測した地震は 2,250 回 (2017 年 :2,447 回 ) であった 山形県内で震度 1 以上を観測した地震は 図の範囲外で発生した地震を含めて 47 回 (2017

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地震発生後の九州地方整備局の活動 4 月 16 日の夜明け 本震の後に再度調査を実施しておりま す その際は 道路崩壊の調査 土砂崩壊の箇所の調査 被 災地に入るための安全ルートの確認等を実施しております 次に九州地方整備局の活動について紹介させていただき ます まず最初に地震発生後の初動体制につい

9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

平成28年(2016年)熊本地震の評価

Microsoft PowerPoint - 06_安田HP用(永山) [互換モード]

推計震度分布図 ( 気象庁 ) 出典 気象庁ホームページ 推計震度分布図 (2) 平成 28 年 4 月 16 日 1 時 25 分頃に発生した地震ア発生日時 : 平成 28 年 4 月 16 日 1 時 25 分頃イ震央地名 : 熊本県熊本地方 ( 北緯 32 度 45.2 分 東経 130 度

長崎県 : 諫早市 島原市 雲仙市熊本県 : 荒尾市 南関町 人吉市 あさぎり町 山江村 水俣市 津奈木町大分県 : 大分市 臼杵市 津久見市 佐伯市 玖珠町宮崎県 : 延岡市鹿児島県 : 長島町 (3) 津波津波注意報平成 28 年 4 月 16 日 1 時 27 分気象庁発表有明 八代海 16

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溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

1 想定地震の概要南海トラフで発生する地震は 多様な地震発生のパターンが考えられることから 次の地震の震源域の広がりを正確に予測することは 現時点の科学的知見では困難です そのため 本市では 南海トラフで発生する地震として 次の2つの地震を想定して被害予測調査を行いました (1) 過去の地震を考慮し

火山ガスの状況( 図 8-5 図 9-4) 12 日 18 日 25 日 27 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の1 日あたりの放出量は 900~1,600 トン (11 月 :700~1,800 トン ) と 増減を繰り返しながら概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の状

177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

Microsoft Word - 2章170327

佐賀県の地震活動概況 (2018 年 12 月 ) ( 1 / 10) 平成 31 年 1 月 15 日佐賀地方気象台 12 月の地震活動概況 12 月に佐賀県内で震度 1 以上を観測した地震は1 回でした (11 月はなし ) 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 図 1 震央分布図 (2018 年 1

(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

( 熊本県防災情報メールサービスに関すること ) 熊本県危機管理防災課電話

地理院地図に関する話題

Microsoft Word - 熊本地震現地調査速報(福島) rev.docx

161019_発表資料_後日訂正版_HP用

火山ガスの状況 ( 図 8-5 図 9-4) 10 月 2 日 9 日 17 日 18 日 23 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の 1 日あ たりの放出量は 500~1,700 トン (9 月 :90~1,400 トン ) と 概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の状況

地震の概要 検知時刻 : 1 月 3 日 18 時分 10 発生時刻 : 1 月 3 日 18 時 10 分 マグニチュード: 5.1( 暫定値 ; 速報値 5.0から更新 ) 場所および深さ: 熊本県熊本地方 深さ10km( 暫定値 ) 発震機構 : 南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型 ( 速報

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スライド 1

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

熊本地震災害調査レポート(速報)

報告書

国土籍第 376 号平成 29 年 3 月 23 日 マルチ GNSS 測量マニュアル - 近代化 GPS Galileo 等の活用 - 平成 29 年 4 月 国土交通省土地 建設産業局地籍整備課

Microsoft PowerPoint - 資料2-別冊

(/9) 07 年に発生した地震の概要. 佐賀県の地震活動 07 年に佐賀県で震度 以上を観測した地震は 9 回 (06 年は 85 回 ) でした ( 表 図 3) このうち 震度 3 以上を観測した地震はありませんでした (06 年は 9 回 ) 表 07 年に佐賀県内で震度 以上を観測した地震

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ハザードマップポータルサイト広報用資料

市町村支援の状況について

地 震 解 説 資 料 第 1 号 平成 27 年 7 月 13 日 05 時 30 分 福 岡 管 区 気 象 台 熊 本 地 方 気 象 台 平成 27 年 7 月 13 日 02 時 52 分頃の大分県南部の地震について 大分県佐伯市で震度 5 強を観測熊本県では阿蘇市 産山村で震度 5 弱を

Microsoft Word - 概要版(案)_ docx

平成28年(2016年)熊本地震の評価

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火山ガスの状況( 図 8-5 図 9-4) 1 日 6 日 8 日 14 日 20 日 22 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の1 日あたりの放出量は700~1,800 トン (10 月 :500~1,70 トン ) と増減しながら 概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の


7 人口 2 人口 2-1 住民登録人口 世帯数 資料 : 市市民課 年次世帯数 計 人口 ( 人 ) 男 昭和 44 年 11,643 44,273 20,379 23, 年 11,669 43,122 19,803 23, ,

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図 東北地方太平洋沖地震以降の震源分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 ) 図 3 東北地方太平洋沖地震前後の主ひずみ分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 )

Microsoft Word 最終【資料-4】.docx

1 平成 28 年熊本地震の概要 発生日時 前震 平成 28 年 4 月 14 日 21 時 26 分 本震 平成 28 年 4 月 16 日 1 時 25 分 震央地名熊本県熊本地方同左 マグニチュード 震度 6 弱以上を観測した自治体 震度 7 益城町益城町 西原村 震度 6 強

水俣市 津奈木町大分県 : 大分市 臼杵市 津久見市 佐伯市 玖珠町宮崎県 : 延岡市鹿児島県 : 長島町 (3) 津波津波注意報平成 28 年 4 月 16 日 1 時 27 分気象庁発表有明 八代海 4 月 16 日 2 時 14 分解除 (4) 地震活動状況 (4 月 14 日 21 時 26

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Microsoft PowerPoint - 技術概要・有効性資料

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

多様な入札 契約特集 2. 技術提案 交渉方式について 技術提案 交渉方式は, 品確法 第 18 条の規 定により, 発注者が, 当該工事の性格等により, 仕様を確定することが困難な場合に適用される 今回のケースでは, 北側復旧ルートは 1 日も早い完成が望まれるが, 本トンネルの十分な調査が完了し

案の理由書 1 南大浜地区本地区は石垣島の南部に位置し 字大浜 字真栄里 字平得の3 字を含み 用途地域が指定されている市街地の東側に隣接する地区です 本地区は 農振農用地区域が除外されたことにより 農業的土地利用と都市的土地利用が混在し 道路 公園 下水道等の都市基盤整備が不十分なまま無秩序な開発

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Microsoft PowerPoint - 科学ワインバー#6

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歳入合計 地方税地方交付税 国庫支出金 地方債積立金地方債本年発現在高現在高行額 債務負実質債将来負積立金地方債担行為務額 担額 現在高現在高 額 債務負実質債将来負担行為務額担額額 嘉島町

平成 28 年 4 月 16 日 01 時 25 分頃の熊本県熊本地方の地震 震度分布図 各地域の震度分布 : 震央 各観測点の震度分布図 ( 震央近傍を拡大 )

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

国土地理院として地震本部に期待すること、取り組むべきこと

PowerPoint プレゼンテーション

長崎県 : 諫早市 島原市 雲仙市熊本県 : 荒尾市 南関町 人吉市 あさぎり町 山江村 水俣市 津奈木町大分県 : 大分市 臼杵市 津久見市 佐伯市 玖珠町宮崎県 : 延岡市鹿児島県 : 長島町 (3) 津波津波注意報平成 28 年 4 月 16 日 1 時 27 分気象庁発表有明 八代海 16

2 活断層との関係 第 1 章熊本地震の概要第 1 節熊本地震の発生状況や特徴等 2 活断層との関係 熊本地震の地震活動領域には 布田川断層帯 日奈久断層帯が存在しており 国の地震調査研究推進本部地震調査委員会によると M6.5 の前震は日奈久断層帯の高野 白旗区間の活動 M7.3 の本震は布田川断

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2022年 高等学校「地理」必修化で変わる空間情報教育 「地理院地図」やGISリテラシーの教育現場で対応

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

浦河沖を震源とする地震(第2報)

Transcription:

平成 28 年 7 月 2 日 地図と街道に学ぶ 全国街道交流会議福島大会事前勉強会 前国土地理院長 越智繁雄 1

内 容 1. 明治の黎明期を拓いた 2 つの街道 ~ 奥州街道と万世大路 ~ 2. 地理教育の推進と支援 ~ 今こそ 地理教育を ~ 3. 測ること 描くこと 守ることの大切さ ~ 熊本地震対応など ~ 2

1. 明治の黎明期を拓いた 2 つの街道 ~ 奥州街道と万世大路 ~ 3

五街道 東海道江戸 ~ 京都 126 里半約 500km 日光街道江戸 ~ 日光 36 里約 140km 奥州街道江戸 ~ 松前 290 里約 1140km 中山道江戸 ~ 京都 120 里約 470km ( 東海道を含めると 136 里弱約 530km) 甲州街道江戸 ~ 甲州 55 里約 215km 出典 : 奥州街道と明治水準原点 ( 箱岩英一 関善治 ) 4

奥州街道に残る謎の刻印 福島市松川八丁目天満宮 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 5

奥州街道に残る謎の刻印 福島市清水町西裏出雲大神宮 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 6

奥州街道に残る謎の刻印 福島市伏拝共楽公園 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 7

奥州街道に残る謎の刻印 福島県内の奥州街道沿いの 20 箇所で確認 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 8

近代日本の測量事始 近代日本の基礎づくりとしての日本列島の測量は 内務省地理寮が明治 7 年 (1874) に 関八州大三角測量 として開始 その後 大三角測量 として全国展開されることになり 地理局が実施 その三角網に大きさを与えるため那須基線測量が実施され さらに高さを与えるため 明治 9 年に東京 塩釜間の水準測量が開始され翌年に終了 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 9

近代日本の測量事始 那須基線 ( 約 3 km 栃木県大田原 ) の標高を二方向から確認することが目的 塩釜まで実施した理由は 石巻湾開港のため東京湾との海面高の違いを調査する目的もあったといわれる これらの測量は英人マクヴィーンなどの指導で実施されたことから 水準点にはイギリスで使用されている 不 状の記号を石柱 華表 ( 鳥居 ) 石垣 欄干などの構造物に刻んだものが使用された 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 10

几号水準点 内務省より 水準点の設置は この記号を構造物に彫刻するなどの方法によることが布達 ( 明治 9 年 1876) 當省地理寮於テ高低測量ノ際自今海面ヨリノ高低ヲ表スル記號別紙第一圖式ノ通沿路適宜ノ地ニ於テ在来ノ不朽物ニ彫刻シ又ハ第二圖石柱建設永存ノ筈ニ候條為心得此旨布達候事 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 11

几号水準点 几号 の 几 は机の意味 水準点として標石などに彫られた記号が三脚のついた机に似ていることから 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 12

几号水準点 東京 塩竃間には 130 点の几号水準点が設置され 63 点の現存 ( 移設を含む ) が確認 福島県内では 20 点 几号水準点は このほか東京府下においても設置され 40 点ほどの現存が確認 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 13

几号水準点 ( どうやって測量したのか ) 当時の記録は残されていないが 英国では几号の横線に標尺を支持する金具を差し込み 膝で支えて使用していた 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 14

東京 塩竃水準測量 水準測量に先立ち 東京湾 ( 霊岸島 ) で 1873 年 ( 明治 6) からの 3 年間 塩竃港で 1876 年 ( 明治 9) に 3 ヶ月間の潮位観測が行われ平均潮位が求められた 測量は 東京 大田原 (156km) と 塩竃 大田原 (231km) でそれぞれ行われ 大田原での整合差は 2.638 尺 ( 約 78.8cm) であった 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 15

几号水準点の廃止 その後 測量 地図作成の業務は 明治 21 年に 参謀本部陸地測量部に移された 測量方式も欧州の原書やドイツで陸軍の技術者が習得した知識による方法に変更 また 水準点標石の仕様も標石上部に丸い突起のあるものに変更 几号水準点は廃止となった 残存几号は日本の近代化の遺産 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 16

福島県の几号水準点 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 17

福島県の几号水準点 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 18

変り種 二本松市亀谷観音堂石垣 ( 後に石垣を積みなおした際に逆さまに置いたものと思われる ) 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 19

万世大路 ~ 東北の近代化を支えた道 ~ 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 20

万世大路 明治初期 福島県と山形県を結ぶ幹線路は 上山と桑折を金山峠 小坂峠経由で結ぶ羽州街道 福島城下から板谷峠を経て米沢城下に至る板谷街道 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 21

万世大路 1876 年 ( 明治 9 年 ) 山形県の初代県令に就任した三島通庸は 県内の道路の状況が劣悪で 産出される農作物を もっぱら人が背負って運搬しているという有様を目の当たりにした 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 22

万世大路道路の整備の必要性を痛感した三島は 反対意見を押し切り隣県との間に多数の大規模な道路建設を推進した 米沢 福島間は最新技術を駆使し馬車の通れる道として計画された 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 23

万世大路 途中には 新沢橋 烏川橋 大平橋 杭甲橋の4つのコンクリート橋 苅安隧道 栗子山隧道 二ツ小屋隧道の3 本の隧道 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 24

万世大路 中でも県境の栗子峠に掘られた栗子山隧道は 当時 わが国の最長トンネルであった静岡県の 宇津ノ谷隧道 の4 倍を越える876メートルもあった 地盤の固さとあいまった難工事 このトンネル掘削のために三島はアメリカ製のトンネル掘削機を日本で初めて購入 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 25

万世大路 ( 第一世代 ) 工事は4 年あまりの歳月をかけて完成 1881 年 ( 明治 14 年 )10 月 3 日に 明治天皇の行幸を迎えて開通式を挙行 明治天皇から 後に福島県側も含めたこの新道に 萬世ノ永キニ渡リ人々ニ愛サレル道トナレ という願いを込めて 万世大路 と名を賜る 当時の社会経済活動上 画期的な出来 事であった 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 26

万世大路 ( 第二世代 ~ 第三世代 ) 昭和初期に モータリゼーションの進展に呼応して 改良工事を実施 ( 第二世代 ) 1957 年 ( 昭和 32 年 ) より大改修の調査が開始され 1961 年 ( 昭和 36 年 ) から工事が開始 1966 年 ( 昭和 41 年 )5 月に現在の栗子道路が開通し 県境付近が付替と なった ( 第三世代 ) 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 27

万世大路 ( 第一世代 ) ~ 明治末期 ~ 第一世代の万世大路が明記 28

万世大路 ( 第二世代直前 ) ~ 昭和初期 ~ 第二世代の万世大路の直前集落の形成も窺える 29

万世大路 第三世代 昭和43年 万世大路 昭和43年 第三世代の万世大路が明記 第二世代と共用 30

万世大路 ( 第三世代 ) ~ 昭和 49 年 ~ 第二世代の万世大路の途絶第三世代にバトンタッチ 31

万世大路 ( 第三世代 ) ~ 平成 ~ 第二世代の万世大路は徒歩道に 32

万世大路 ( 第四世代 ) ~ 次世代に向けて ~ 万世大路は いよいよ第三世代 から第四世代へと 歴史をつなぐ 道のネットワークが 命 経済 暮らし 歴史 文化 環境 観光 などを築く 33

2. 地理教育の推進と支援 ~ 今こそ 地理教育を ~ 34

国土地理院の重点的取組 G K K 技術 (G) 技術力を磨き より実践的な技術として昇華させる 広報 (K) 国民に地図作りの素晴らしさ 大切さを知ってもらう 教育 (K) 地理教育により 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継いでいく 35

地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (1) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理空間情報活用社会 社会のグローバル化が進展 複雑で変化が激しい社会 災害から命と生活を守る災害特性の理解 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継いでいくための地理教育が急務 平成 27 年 11 月国土地理院内に 地理教育支援チーム を設置 地理教育の現状と課題について調査 国土地理院における地理教育支援のあり方を議論 院幹部と支援チームによる 地理教育勉強会 を平成 28 年 5 月までに計 8 回実施 36

地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 2 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために 高等学校の地理歴史科における 地理総合 仮称 の必修化 地理歴史科においては 世界史 の必修を見直し 共通必履修科目として 中略 持続可能な社会づくりに必要な地理的な見方や考え方を育む科 目 地理総合 仮称 の設置を検討することが求められる 中央教育審議会教育課 程部会 教育課程企画特 別部会 論点整理 平 成27年8月26日 より 地理を専門としない教員の支援が急務 教員が地図や地理空間情報を容易に扱えるよ う 情報の提供方法の工夫や教員の理解の促 進などの支援が必要 出典 jiji.comより引用 37

地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (3) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理教育の課題 若年層の基礎的な地理的知識の低下 地理空間情報リテラシー教育の必要性 高等学校における教育課程の問題 地理を専門としない教員の支援 十分活用されていない国土地理院の情報 土地との関わりの希薄化 防災教育の支援促進 自主的活動のネットワーク 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐ基盤を構築するためのつの目標 ( アウトカム ) 教員の地理の指導力が向上する 児童生徒の地理空間情報リテラシーが向上する 児童生徒 ( 及び関係者 ) が地理空間情報技術 測量技術に親しみをもち 将来の職業の選択肢として認識する 地理系学科 測量系学科の志望者が増加する 地理や地図に関するイベントへの参加者が増加する 児童生徒の地域の災害特性の理解が向上する 地理 地図を楽しむ自主的活動の交流の場が確立する 38

地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (4) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理教育の推進に向けた具体的な取組 1 教育現場の支援 教育支援ポータル 教育の道具箱 の作成 教員研究会 教員研修等への参加 教科書会社への説明会 学会等との連携による地理空間情報リテラシー教育のあり方検討 2 児童生徒と保護者へのアプローチ インターンシップ ( サマースクール ) 地理系学科 測量系学科学生の就業先拡大支援 地理オリンピック 地学オリンピック支援 学校へ行こうプロジェクト : 地方測量部等の取組促進 3 防災教育支援の強化 国土交通省防災課と連携 地方測量部と地方整備局 気象台によるチーム国交省での取組 ハザードマップポータル 防災地理情報提供の充実 4 若年層に親しんでもらうために 親しみやすいメディアや若年層に魅力的な活動の推進 ( 遊びからの地理 ) 自発的な活動をつなぐ ひろば づくり 5 継続的取組に必要な措置 39

土地の成り立ちと災害 我孫子市資料 2008 年国土地理院撮影 40 宇根寛ほか (2015) より引用

土地の成り立ちと災害 2008 年国土地理院撮影 41

土地の成り立ちと災害 2008 年国土地理院撮影 1947 年米軍撮影 42

土地の成り立ちと災害 国土地理院撮影 43

土地の成り立ちと災害 重力と水循環により 水や土砂が高い場所から低い場所に移動する 地理院地図 globe により作成 44

土地の成り立ちと災害 都市圏活断層図 熊本 45

今こそ地理教育を 不透明感が増す現代に生きる我々は 地理教育の重要性を正しく理解し 恵み豊かな国土を次の世代の若者たちに伝えていく責務がある 地理教育の 20 年の負の遺産を早急に払拭し 次世代の若者たちが 我々の地球 我々の国土が持つ豊かな恵みを肌で感じつつ 山積する課題に取り組み 我が国の未来を切り開いていけるようにすることが喫緊の課題である 地理教育勉強会は 本提言にまとめられた具体的な活動に 国土地理院をはじめ 関係者が一丸となって取り組んでいくことを期待する 46

3. 測ること 描くこと 守ることの大切さ ~ 熊本地震対応など ~ 47

測量 地図の役割 地 図 と 測 量 は 社 会 の あ ら ゆ る 場 面 で 役 立 っ て い ま す 国民の豊かな生活への貢献 施設の建設 維持管理 土地の境界の測量 都市計画 など 安全 安心への貢献 地震 火山 水害等 への対応 地殻変動の監視 災害地形の調査 など 産業の発展への貢献 移動支援 人や物の 移動経路の選定の支援 観光 農業 資源開発 など 準天頂衛星 陸域観測技術衛星 地図と測量における国土地理院の役割 測位衛星 測量用航空機 防災 災害対応 自然環境保 全 維持管理 土地利用 都市計画 観光 教育 歴史 文化への貢献 地理教育 教材作成等 土地の変遷の把握 遺跡調査 など 国土地理院は 基準の決定 確立 すなわち 1) 世界の中での日本の原点をVLBIで決定し 2) 基準点により経度 緯度 高さ 測地基準 系 及び地殻変動を明らかにし 3) 基準となる正確な地図を作成し 4) 国土の現状と変化を把握 記録 公開し 5) 関連する技術支援 調査研究の実施を通じて 地理空間情報の活用を推進します 財産 所有権 農業 資源開発 建設 移動支援 施工 航空 屋内を含むナビ 物流 自動運転 測位衛星 Environment 教育 降水予測 45 測位衛星 40 145 35 30 電子基準点 世界中の VLBI 135 140 北米プレート 130 ユーラシアプレート 地磁気 磁気コンパスにより方 位決定するもので スマホや カーナビでも利用されています 重力 石岡 VLBI VLBI Very Long Baseline Interferometry 超長基線電波干渉法 数十億光年離れた星からの電波を観測して 地球上の位置と地球自体の姿勢を決定する技 術 GPS等の精度向上やうるう秒の挿入など にも利用 太平洋プレート 重力 高さの決定 に重力分布測定の 結果が用いられま す 世界中の VLBI フィリピン海プレート 地磁気 48

熊本地震における取組の概要 被災状況の把握 分析 公開 地殻変動の把握 分析 公開 4 電子基準点 1 無人航空機 基準点での地殻変動 震源断層のモデル 5 合成開口レーダー SAR だいち2号 2 航空写真撮影 斜め写真撮影 UAV撮影 垂直写真撮影 正射画像作成 災害前後の比較等 SARによる変動の面的な把握 6 レーザ計測 レーザ計測による標高変化の解析 3 写真判読等 航空写真の判読で土砂崩壊地分布図等の作成 甚大な被災地の立体地図作成 7 基準点成果の改定 地理院地図 Webページ による 各種情報の統合利用 共有化 地理院地図で情報提供 測量成果を改 定した電子基 準点 災害対策本部 現地本部 等 災害時の対応検討 国土交通省DiMAPS 地震調査研究推進本部 これら取組を支える測量技術 電子基準点 緊急測量調査 SAR解析 写真撮影 GSI-LB 地図作成 防災用地図 Web地図提供 等 49

TEC-FORCEの派遣 4月14日21:26の地震発生を受け 翌15日からTEC-FORCEを延べ170人日 5月27日現在 派遣し 被災状況の把握や地理空間情報の提供を実施 航空機による緊急撮影 無人航空機による緊急動画撮影 緊急地殻変動観測 広域な被災状況を迅速に把握 立入りが困難な土砂災害現場の状況把握 地震による地盤の沈下 隆起の全体像を把握 益城町長へ地盤沈下の状況報告 断層の走向計測 断層モデルを作る 熊本城における地上レーザ計測 国の重要文化財を守る 地域の安全 安心に寄与する 50

1.UAV による被災状況把握 阿蘇大橋周辺 南阿蘇村河陽周辺の断層 撮影 :4 月 16 日 11:00 (7 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 撮影目的 : 阿蘇大橋周辺における土砂崩れの状況把握 撮影 :4 月 16 日 12:00(4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 益城町下陳周辺の断層 撮影目的 : 断層が出現した範囲の確認 山王谷川 ( 南阿蘇村大字長野 ) の土砂災害 撮影 :4 月 16 日 16:30 (4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 撮影目的 : 断層が出現した範囲の確認 撮影 :4 月 17 日 15:15 (4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 17 日 23:00 撮影目的 : 土砂崩壊の状況把握 51

1.UAV による被災状況把握 熊本城天守閣 撮影 :5 月 12 日 16:20 (3 分 32 秒間 ) 公開 :5 月 19 日 15:30 撮影目的 : 熊本市からの要請に基づく 熊本城の石垣等の被災箇所確認 熊本城飯田丸五階櫓 撮影 :5 月 12 日 15:30 (1 分 39 秒間 ) 公開 :5 月 19 日 15:30 撮影目的 : 熊本市からの要請に基づく 熊本城の石垣等の被災箇所確認 52

国土地理院ランドバード (GSI-LB)( 平成 28 年 3 月 16 日発足 ) 平常時 : 技術力の確保と向上 災害時 : 緊急撮影と情報提供 航空法の例外規定の適用を想定 i-construction への対応 公共測量への助言 訓練風景 平成 27 年 9 月関東 東北豪雨での対応 ( 鬼怒川破堤箇所 ) 国土地理院 Land-Bird(GSI-LB) 緊急撮影にも対応できる高度な技術 安全管理 操縦技術 精度管理 本院 ( つくば市 ) のみでなく全国の地方測量部等に順次展開 航空法に基づいて ルールによらない飛行の許可 承認が容易に得られるレベル 注視 連携 民間における様々な取り組み 技術開発 熊本地震に伴う国土地理院ランドバードの活動状況 1 南阿蘇村 益城町の被害状況調査 4/15 4/16~18 2 熊本城の被災状況把握 ( 熊本市要請 ) 5/10 5/11~13 53 出動 活動

2. 航空写真撮影 緊急撮影実施区域図 20 16 17 6 3 11 4 19 5 7 2 15 18 21 約 10,000 枚の航空写真を撮影 12 8 9 14 13 垂直写真 オルソ画像を迅速に提供 公開 高解像度 (20cm の解像度 ) で A4 版紙を判別 災害対応初動期 復旧期に不可欠 災害記録としても重要 22 23 10 4/14 21:26 地震 (M6.5 最大震度 7) 発生 4/15 4/16 4/17 ~19 1 2 3 4 5 熊本県益城地区 熊本県益城地区 熊本市南区地区 熊本県宇城地区 熊本市 八代市 宇土市 宇城市 美里町 菊陽町 西原村 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 01:25 地震 (M7.3 最大震度 7) 発生 合志地区 熊本市 八代市 山鹿市 菊池市 宇土市 宇城市 阿蘇市 合志市 美里町 大津町 菊陽町 高森町 西原村 南阿蘇 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 別府市 日出町 写真公開 オルソ公開 4/15-4/16 4/16 4/16 4/16 4/16 4/16 4/17 4/17 6 熊本中央地区 4/18 4/18 7 西原地区 4/17 4/17 8 阿蘇地区 4/17 4/17 9 南阿蘇地区 4/17 4/17 10 別府地区 4/17 4/17 11 宇土地区 4/16 4/17 17 日降雨 18 19 日最大震度 5 強の地震発生 4/19 12 小国地区 4/20 大牟田市 柳川市 みやま市 熊本市 八代市 荒尾市 玉名市 山鹿市 菊池市 宇土市 上天草市 宇城市 阿蘇市 天草市 美里町 玉東町 南関町 長洲町 和水町 大津町 菊陽町 南小国町 産山村 高森町 西原村 南阿蘇村 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 4/20 4/20 13 阿蘇 2 地区 4/21 4/22 14 南阿蘇 2 地区 4/20, 21 4/20, 21 15 菊池地区 4/21 4/24 16 山鹿地区 4/21 4/22 17 玉名地区 4/22 4/24 18 御船地区 4/24 4/24 54 19 八代地区 4/21 4/22

2. 航空写真撮影 都市部の例 ( 益城町役場周辺 ) 山間部の例 ( 南阿蘇村大字立野周辺 ) たての < 提供先 > 現地対策本部 内閣官房 内閣府を初めとする関係府省庁 TEC-FORCE 熊本県等 < 主な活用事例 > 行方不明者捜索時の参考資料 ( 警察 消防 自衛隊 ) 家屋や土砂崩壊による被害状況の把握 (TEC-FORCE 等 ) がれき除去 ( 環境省 ) 罹災証明発行時の現況資料 ( 熊本県 ) 等 55

2 航空写真での被災前後の比較 阿蘇大橋周辺 スライドして境目を移動 被災後 左側 4月16日撮影 と被災前 右側 平成25年撮影 の 状況をホームページ上で比較 ホームページ公開 4月17日 56

2 航空写真での被災前後の比較 ながの 長野地区 南阿蘇村 の土砂流出箇所 被災後 4月16日撮影 被災前 平成25年撮影 ホームページ公開 4月17日 熊本城 熊本市 付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成20年撮影 ホームページ公開 4月17日 阿蘇神社 阿蘇市 付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成25年撮影 ホームページ公開 4月17日 益城町中心部付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成20年撮影 ホームページ公開 4月17日 57

3 被災状況把握 写真判読による 土砂崩壊地分布図 4月16日 19日及び20日撮影の写真 から 土砂崩壊地の分布を判読 4月18日に公開 その後の写真か ら図を更新 現地対策本部やTEC-FORCE等により 現地調査資料として活用 4月16日撮影の写真から 地震によ り生じたと推定される地表の亀裂を 判読 4月20日に公開 5月13日に更 新 TEC-FORCEや専門家等により現地調 査 断層の把握に活用 亀裂分布図 58

3 写真判読による土砂崩壊の体積計測 土砂崩壊現場における土砂崩れの体積を計測し 行方不明者の捜索 に活用 たかのだい 南阿蘇村高野台地区 南阿蘇村阿蘇大橋周辺 A 崩落部 河床部 C B 崩壊前の地形データと 崩壊後の写真測 量により求めた地形データを比較し 土 砂が堆積したエリアの体積を計測 崩壊前の地形データと 崩壊後の写真測量 により求めた地形データを比較し 土砂が えぐられた 堆積したエリアの体積を計測 59

4 電子基準点による地殻変動観測 地震時に南阿蘇村の電子基準点 長陽 が南西に97cm移動 地殻変動情報から 断層モデル を推定 4月18日に公表 政府地震調 査委員会に提供 ちょうよう 電子基準点 熊本 東北東に75cm移動 電子基準点 長陽 南西に97cm移動 電子基準点 60

5 干渉SARによる広域な地殻変動の把握 地震前後の衛星画像を比較し 地殻変動の 大きさを面的に把握 変動前 変動後 地表 SAR干渉画像 水平方向 垂直方向 西向き 最大50cm以上 最大1m以上沈降 東向き 最大1m以上 最大30cm以上隆起 水平方向には 断層の北側で東向きに最大1m以上 断層の南側で西向きに最大 50cm以上の変動 上下方向には 断層の北側で最大1m沈降 断層の南側で最大30cm以上隆起 61 4月19日までの観測結果をもとに推定 4月20日に公表

5 干渉SARによる広域な地殻変動の把握 干渉SARで明瞭な干渉が得られなかった箇所を中心に 緊急GNSS観測を実施 速報値 ⑨ -0.6m ⑦ -1.1m +0.4m ⑩-1.0m ⑤ -0.5m ③ -0.8m ② -0.1m ① -0.2m ⑫+0.1m ⑬+0.2m 2. GNSSと干渉SARで整合 的な結果だった(干渉SARで 上下変動量が得られている 観測点①②⑤⑨⑩⑪) 3. 干渉SARでは明瞭な干渉 が得られなかった西原村西部 も含め 布田川断層の北西 側では周辺地盤全体が緩や かな傾斜で最大2m程度の 沈降が生じたものと考えられ る ⑧ -1.3m ⑥ -1.8m ④ -2.1m ⑪-0.6m 1. 地震前の基準点の成果と比 べて最大で2.1mの沈降が 確認 3km 活断層(地震調査研究推進本部 背景は地理院地図に干渉SARで得られた地殻変動の準上下変動成分を重ねたもの 4. なお 水平位置についても断 層に近い④⑥⑧⑩の観測点 で東北東に約1.4mの変動 が観測 62

6 航空レーザ計測による地盤の上下変動の把握 益城町の要請により 5/8に益城町 周辺の航空レーザ計測を実施 平成17年度と今回の航空 レーザ計測により求めた標高 の差分を解析 広域に上下変動しており 基本的には河床 堤防等は 一体的に上下変動していると 考えられる 63

7. 災害復旧等の事業に必要な基準点の復旧測量 測地基準点 ( 三角点 水準点 ) が大きく変動して現況と合わなくなっており 被災地の災害復旧等の事業に必要な位置情報 ( 三角点 水準点 ) の提供が急務 測量成果を停止していた電子基準点 38 点の内 千丁 ( 熊本県八代市 ) を除く 37 点の改定成果を 5 月 19 日に公表 64

おわりに 東日本大震災の辛い経験と厳しい教訓は 過去 現在 そして未来をつなぐ証拠として また 災害に負けない国土づくり 地域づくりへの知恵として 永遠に引き継がなければならない 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震 津波対策に関する専門調査会報告 ( 中央防災会議 ) ( 平成 23 年 9 月 28 日 )

ご清聴 誠にありがとうございました 66