平成 28 年 7 月 2 日 地図と街道に学ぶ 全国街道交流会議福島大会事前勉強会 前国土地理院長 越智繁雄 1
内 容 1. 明治の黎明期を拓いた 2 つの街道 ~ 奥州街道と万世大路 ~ 2. 地理教育の推進と支援 ~ 今こそ 地理教育を ~ 3. 測ること 描くこと 守ることの大切さ ~ 熊本地震対応など ~ 2
1. 明治の黎明期を拓いた 2 つの街道 ~ 奥州街道と万世大路 ~ 3
五街道 東海道江戸 ~ 京都 126 里半約 500km 日光街道江戸 ~ 日光 36 里約 140km 奥州街道江戸 ~ 松前 290 里約 1140km 中山道江戸 ~ 京都 120 里約 470km ( 東海道を含めると 136 里弱約 530km) 甲州街道江戸 ~ 甲州 55 里約 215km 出典 : 奥州街道と明治水準原点 ( 箱岩英一 関善治 ) 4
奥州街道に残る謎の刻印 福島市松川八丁目天満宮 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 5
奥州街道に残る謎の刻印 福島市清水町西裏出雲大神宮 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 6
奥州街道に残る謎の刻印 福島市伏拝共楽公園 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 7
奥州街道に残る謎の刻印 福島県内の奥州街道沿いの 20 箇所で確認 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 8
近代日本の測量事始 近代日本の基礎づくりとしての日本列島の測量は 内務省地理寮が明治 7 年 (1874) に 関八州大三角測量 として開始 その後 大三角測量 として全国展開されることになり 地理局が実施 その三角網に大きさを与えるため那須基線測量が実施され さらに高さを与えるため 明治 9 年に東京 塩釜間の水準測量が開始され翌年に終了 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 9
近代日本の測量事始 那須基線 ( 約 3 km 栃木県大田原 ) の標高を二方向から確認することが目的 塩釜まで実施した理由は 石巻湾開港のため東京湾との海面高の違いを調査する目的もあったといわれる これらの測量は英人マクヴィーンなどの指導で実施されたことから 水準点にはイギリスで使用されている 不 状の記号を石柱 華表 ( 鳥居 ) 石垣 欄干などの構造物に刻んだものが使用された 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 10
几号水準点 内務省より 水準点の設置は この記号を構造物に彫刻するなどの方法によることが布達 ( 明治 9 年 1876) 當省地理寮於テ高低測量ノ際自今海面ヨリノ高低ヲ表スル記號別紙第一圖式ノ通沿路適宜ノ地ニ於テ在来ノ不朽物ニ彫刻シ又ハ第二圖石柱建設永存ノ筈ニ候條為心得此旨布達候事 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 11
几号水準点 几号 の 几 は机の意味 水準点として標石などに彫られた記号が三脚のついた机に似ていることから 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 12
几号水準点 東京 塩竃間には 130 点の几号水準点が設置され 63 点の現存 ( 移設を含む ) が確認 福島県内では 20 点 几号水準点は このほか東京府下においても設置され 40 点ほどの現存が確認 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 13
几号水準点 ( どうやって測量したのか ) 当時の記録は残されていないが 英国では几号の横線に標尺を支持する金具を差し込み 膝で支えて使用していた 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 14
東京 塩竃水準測量 水準測量に先立ち 東京湾 ( 霊岸島 ) で 1873 年 ( 明治 6) からの 3 年間 塩竃港で 1876 年 ( 明治 9) に 3 ヶ月間の潮位観測が行われ平均潮位が求められた 測量は 東京 大田原 (156km) と 塩竃 大田原 (231km) でそれぞれ行われ 大田原での整合差は 2.638 尺 ( 約 78.8cm) であった 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 15
几号水準点の廃止 その後 測量 地図作成の業務は 明治 21 年に 参謀本部陸地測量部に移された 測量方式も欧州の原書やドイツで陸軍の技術者が習得した知識による方法に変更 また 水準点標石の仕様も標石上部に丸い突起のあるものに変更 几号水準点は廃止となった 残存几号は日本の近代化の遺産 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 16
福島県の几号水準点 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 17
福島県の几号水準点 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏のHP 論文等を引用 18
変り種 二本松市亀谷観音堂石垣 ( 後に石垣を積みなおした際に逆さまに置いたものと思われる ) 几号水準点については上西勝也氏 山岡光次氏 箱岩英一氏の HP 論文等を引用 19
万世大路 ~ 東北の近代化を支えた道 ~ 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 20
万世大路 明治初期 福島県と山形県を結ぶ幹線路は 上山と桑折を金山峠 小坂峠経由で結ぶ羽州街道 福島城下から板谷峠を経て米沢城下に至る板谷街道 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 21
万世大路 1876 年 ( 明治 9 年 ) 山形県の初代県令に就任した三島通庸は 県内の道路の状況が劣悪で 産出される農作物を もっぱら人が背負って運搬しているという有様を目の当たりにした 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 22
万世大路道路の整備の必要性を痛感した三島は 反対意見を押し切り隣県との間に多数の大規模な道路建設を推進した 米沢 福島間は最新技術を駆使し馬車の通れる道として計画された 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 23
万世大路 途中には 新沢橋 烏川橋 大平橋 杭甲橋の4つのコンクリート橋 苅安隧道 栗子山隧道 二ツ小屋隧道の3 本の隧道 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 24
万世大路 中でも県境の栗子峠に掘られた栗子山隧道は 当時 わが国の最長トンネルであった静岡県の 宇津ノ谷隧道 の4 倍を越える876メートルもあった 地盤の固さとあいまった難工事 このトンネル掘削のために三島はアメリカ製のトンネル掘削機を日本で初めて購入 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 25
万世大路 ( 第一世代 ) 工事は4 年あまりの歳月をかけて完成 1881 年 ( 明治 14 年 )10 月 3 日に 明治天皇の行幸を迎えて開通式を挙行 明治天皇から 後に福島県側も含めたこの新道に 萬世ノ永キニ渡リ人々ニ愛サレル道トナレ という願いを込めて 万世大路 と名を賜る 当時の社会経済活動上 画期的な出来 事であった 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 26
万世大路 ( 第二世代 ~ 第三世代 ) 昭和初期に モータリゼーションの進展に呼応して 改良工事を実施 ( 第二世代 ) 1957 年 ( 昭和 32 年 ) より大改修の調査が開始され 1961 年 ( 昭和 36 年 ) から工事が開始 1966 年 ( 昭和 41 年 )5 月に現在の栗子道路が開通し 県境付近が付替と なった ( 第三世代 ) 万世大路については福島河川国道事務所 山形河川国道事務所の HP ウィキペディア等を引用 27
万世大路 ( 第一世代 ) ~ 明治末期 ~ 第一世代の万世大路が明記 28
万世大路 ( 第二世代直前 ) ~ 昭和初期 ~ 第二世代の万世大路の直前集落の形成も窺える 29
万世大路 第三世代 昭和43年 万世大路 昭和43年 第三世代の万世大路が明記 第二世代と共用 30
万世大路 ( 第三世代 ) ~ 昭和 49 年 ~ 第二世代の万世大路の途絶第三世代にバトンタッチ 31
万世大路 ( 第三世代 ) ~ 平成 ~ 第二世代の万世大路は徒歩道に 32
万世大路 ( 第四世代 ) ~ 次世代に向けて ~ 万世大路は いよいよ第三世代 から第四世代へと 歴史をつなぐ 道のネットワークが 命 経済 暮らし 歴史 文化 環境 観光 などを築く 33
2. 地理教育の推進と支援 ~ 今こそ 地理教育を ~ 34
国土地理院の重点的取組 G K K 技術 (G) 技術力を磨き より実践的な技術として昇華させる 広報 (K) 国民に地図作りの素晴らしさ 大切さを知ってもらう 教育 (K) 地理教育により 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継いでいく 35
地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (1) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理空間情報活用社会 社会のグローバル化が進展 複雑で変化が激しい社会 災害から命と生活を守る災害特性の理解 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継いでいくための地理教育が急務 平成 27 年 11 月国土地理院内に 地理教育支援チーム を設置 地理教育の現状と課題について調査 国土地理院における地理教育支援のあり方を議論 院幹部と支援チームによる 地理教育勉強会 を平成 28 年 5 月までに計 8 回実施 36
地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 2 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために 高等学校の地理歴史科における 地理総合 仮称 の必修化 地理歴史科においては 世界史 の必修を見直し 共通必履修科目として 中略 持続可能な社会づくりに必要な地理的な見方や考え方を育む科 目 地理総合 仮称 の設置を検討することが求められる 中央教育審議会教育課 程部会 教育課程企画特 別部会 論点整理 平 成27年8月26日 より 地理を専門としない教員の支援が急務 教員が地図や地理空間情報を容易に扱えるよ う 情報の提供方法の工夫や教員の理解の促 進などの支援が必要 出典 jiji.comより引用 37
地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (3) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理教育の課題 若年層の基礎的な地理的知識の低下 地理空間情報リテラシー教育の必要性 高等学校における教育課程の問題 地理を専門としない教員の支援 十分活用されていない国土地理院の情報 土地との関わりの希薄化 防災教育の支援促進 自主的活動のネットワーク 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐ基盤を構築するためのつの目標 ( アウトカム ) 教員の地理の指導力が向上する 児童生徒の地理空間情報リテラシーが向上する 児童生徒 ( 及び関係者 ) が地理空間情報技術 測量技術に親しみをもち 将来の職業の選択肢として認識する 地理系学科 測量系学科の志望者が増加する 地理や地図に関するイベントへの参加者が増加する 児童生徒の地域の災害特性の理解が向上する 地理 地図を楽しむ自主的活動の交流の場が確立する 38
地理教育の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 (4) ~ 国土の豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために ~ 地理教育の推進に向けた具体的な取組 1 教育現場の支援 教育支援ポータル 教育の道具箱 の作成 教員研究会 教員研修等への参加 教科書会社への説明会 学会等との連携による地理空間情報リテラシー教育のあり方検討 2 児童生徒と保護者へのアプローチ インターンシップ ( サマースクール ) 地理系学科 測量系学科学生の就業先拡大支援 地理オリンピック 地学オリンピック支援 学校へ行こうプロジェクト : 地方測量部等の取組促進 3 防災教育支援の強化 国土交通省防災課と連携 地方測量部と地方整備局 気象台によるチーム国交省での取組 ハザードマップポータル 防災地理情報提供の充実 4 若年層に親しんでもらうために 親しみやすいメディアや若年層に魅力的な活動の推進 ( 遊びからの地理 ) 自発的な活動をつなぐ ひろば づくり 5 継続的取組に必要な措置 39
土地の成り立ちと災害 我孫子市資料 2008 年国土地理院撮影 40 宇根寛ほか (2015) より引用
土地の成り立ちと災害 2008 年国土地理院撮影 41
土地の成り立ちと災害 2008 年国土地理院撮影 1947 年米軍撮影 42
土地の成り立ちと災害 国土地理院撮影 43
土地の成り立ちと災害 重力と水循環により 水や土砂が高い場所から低い場所に移動する 地理院地図 globe により作成 44
土地の成り立ちと災害 都市圏活断層図 熊本 45
今こそ地理教育を 不透明感が増す現代に生きる我々は 地理教育の重要性を正しく理解し 恵み豊かな国土を次の世代の若者たちに伝えていく責務がある 地理教育の 20 年の負の遺産を早急に払拭し 次世代の若者たちが 我々の地球 我々の国土が持つ豊かな恵みを肌で感じつつ 山積する課題に取り組み 我が国の未来を切り開いていけるようにすることが喫緊の課題である 地理教育勉強会は 本提言にまとめられた具体的な活動に 国土地理院をはじめ 関係者が一丸となって取り組んでいくことを期待する 46
3. 測ること 描くこと 守ることの大切さ ~ 熊本地震対応など ~ 47
測量 地図の役割 地 図 と 測 量 は 社 会 の あ ら ゆ る 場 面 で 役 立 っ て い ま す 国民の豊かな生活への貢献 施設の建設 維持管理 土地の境界の測量 都市計画 など 安全 安心への貢献 地震 火山 水害等 への対応 地殻変動の監視 災害地形の調査 など 産業の発展への貢献 移動支援 人や物の 移動経路の選定の支援 観光 農業 資源開発 など 準天頂衛星 陸域観測技術衛星 地図と測量における国土地理院の役割 測位衛星 測量用航空機 防災 災害対応 自然環境保 全 維持管理 土地利用 都市計画 観光 教育 歴史 文化への貢献 地理教育 教材作成等 土地の変遷の把握 遺跡調査 など 国土地理院は 基準の決定 確立 すなわち 1) 世界の中での日本の原点をVLBIで決定し 2) 基準点により経度 緯度 高さ 測地基準 系 及び地殻変動を明らかにし 3) 基準となる正確な地図を作成し 4) 国土の現状と変化を把握 記録 公開し 5) 関連する技術支援 調査研究の実施を通じて 地理空間情報の活用を推進します 財産 所有権 農業 資源開発 建設 移動支援 施工 航空 屋内を含むナビ 物流 自動運転 測位衛星 Environment 教育 降水予測 45 測位衛星 40 145 35 30 電子基準点 世界中の VLBI 135 140 北米プレート 130 ユーラシアプレート 地磁気 磁気コンパスにより方 位決定するもので スマホや カーナビでも利用されています 重力 石岡 VLBI VLBI Very Long Baseline Interferometry 超長基線電波干渉法 数十億光年離れた星からの電波を観測して 地球上の位置と地球自体の姿勢を決定する技 術 GPS等の精度向上やうるう秒の挿入など にも利用 太平洋プレート 重力 高さの決定 に重力分布測定の 結果が用いられま す 世界中の VLBI フィリピン海プレート 地磁気 48
熊本地震における取組の概要 被災状況の把握 分析 公開 地殻変動の把握 分析 公開 4 電子基準点 1 無人航空機 基準点での地殻変動 震源断層のモデル 5 合成開口レーダー SAR だいち2号 2 航空写真撮影 斜め写真撮影 UAV撮影 垂直写真撮影 正射画像作成 災害前後の比較等 SARによる変動の面的な把握 6 レーザ計測 レーザ計測による標高変化の解析 3 写真判読等 航空写真の判読で土砂崩壊地分布図等の作成 甚大な被災地の立体地図作成 7 基準点成果の改定 地理院地図 Webページ による 各種情報の統合利用 共有化 地理院地図で情報提供 測量成果を改 定した電子基 準点 災害対策本部 現地本部 等 災害時の対応検討 国土交通省DiMAPS 地震調査研究推進本部 これら取組を支える測量技術 電子基準点 緊急測量調査 SAR解析 写真撮影 GSI-LB 地図作成 防災用地図 Web地図提供 等 49
TEC-FORCEの派遣 4月14日21:26の地震発生を受け 翌15日からTEC-FORCEを延べ170人日 5月27日現在 派遣し 被災状況の把握や地理空間情報の提供を実施 航空機による緊急撮影 無人航空機による緊急動画撮影 緊急地殻変動観測 広域な被災状況を迅速に把握 立入りが困難な土砂災害現場の状況把握 地震による地盤の沈下 隆起の全体像を把握 益城町長へ地盤沈下の状況報告 断層の走向計測 断層モデルを作る 熊本城における地上レーザ計測 国の重要文化財を守る 地域の安全 安心に寄与する 50
1.UAV による被災状況把握 阿蘇大橋周辺 南阿蘇村河陽周辺の断層 撮影 :4 月 16 日 11:00 (7 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 撮影目的 : 阿蘇大橋周辺における土砂崩れの状況把握 撮影 :4 月 16 日 12:00(4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 益城町下陳周辺の断層 撮影目的 : 断層が出現した範囲の確認 山王谷川 ( 南阿蘇村大字長野 ) の土砂災害 撮影 :4 月 16 日 16:30 (4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 16 日 23:30 撮影目的 : 断層が出現した範囲の確認 撮影 :4 月 17 日 15:15 (4 分 30 秒間 ) 公開 :4 月 17 日 23:00 撮影目的 : 土砂崩壊の状況把握 51
1.UAV による被災状況把握 熊本城天守閣 撮影 :5 月 12 日 16:20 (3 分 32 秒間 ) 公開 :5 月 19 日 15:30 撮影目的 : 熊本市からの要請に基づく 熊本城の石垣等の被災箇所確認 熊本城飯田丸五階櫓 撮影 :5 月 12 日 15:30 (1 分 39 秒間 ) 公開 :5 月 19 日 15:30 撮影目的 : 熊本市からの要請に基づく 熊本城の石垣等の被災箇所確認 52
国土地理院ランドバード (GSI-LB)( 平成 28 年 3 月 16 日発足 ) 平常時 : 技術力の確保と向上 災害時 : 緊急撮影と情報提供 航空法の例外規定の適用を想定 i-construction への対応 公共測量への助言 訓練風景 平成 27 年 9 月関東 東北豪雨での対応 ( 鬼怒川破堤箇所 ) 国土地理院 Land-Bird(GSI-LB) 緊急撮影にも対応できる高度な技術 安全管理 操縦技術 精度管理 本院 ( つくば市 ) のみでなく全国の地方測量部等に順次展開 航空法に基づいて ルールによらない飛行の許可 承認が容易に得られるレベル 注視 連携 民間における様々な取り組み 技術開発 熊本地震に伴う国土地理院ランドバードの活動状況 1 南阿蘇村 益城町の被害状況調査 4/15 4/16~18 2 熊本城の被災状況把握 ( 熊本市要請 ) 5/10 5/11~13 53 出動 活動
2. 航空写真撮影 緊急撮影実施区域図 20 16 17 6 3 11 4 19 5 7 2 15 18 21 約 10,000 枚の航空写真を撮影 12 8 9 14 13 垂直写真 オルソ画像を迅速に提供 公開 高解像度 (20cm の解像度 ) で A4 版紙を判別 災害対応初動期 復旧期に不可欠 災害記録としても重要 22 23 10 4/14 21:26 地震 (M6.5 最大震度 7) 発生 4/15 4/16 4/17 ~19 1 2 3 4 5 熊本県益城地区 熊本県益城地区 熊本市南区地区 熊本県宇城地区 熊本市 八代市 宇土市 宇城市 美里町 菊陽町 西原村 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 01:25 地震 (M7.3 最大震度 7) 発生 合志地区 熊本市 八代市 山鹿市 菊池市 宇土市 宇城市 阿蘇市 合志市 美里町 大津町 菊陽町 高森町 西原村 南阿蘇 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 別府市 日出町 写真公開 オルソ公開 4/15-4/16 4/16 4/16 4/16 4/16 4/16 4/17 4/17 6 熊本中央地区 4/18 4/18 7 西原地区 4/17 4/17 8 阿蘇地区 4/17 4/17 9 南阿蘇地区 4/17 4/17 10 別府地区 4/17 4/17 11 宇土地区 4/16 4/17 17 日降雨 18 19 日最大震度 5 強の地震発生 4/19 12 小国地区 4/20 大牟田市 柳川市 みやま市 熊本市 八代市 荒尾市 玉名市 山鹿市 菊池市 宇土市 上天草市 宇城市 阿蘇市 天草市 美里町 玉東町 南関町 長洲町 和水町 大津町 菊陽町 南小国町 産山村 高森町 西原村 南阿蘇村 御船町 嘉島町 益城町 甲佐町 山都町 氷川町 4/20 4/20 13 阿蘇 2 地区 4/21 4/22 14 南阿蘇 2 地区 4/20, 21 4/20, 21 15 菊池地区 4/21 4/24 16 山鹿地区 4/21 4/22 17 玉名地区 4/22 4/24 18 御船地区 4/24 4/24 54 19 八代地区 4/21 4/22
2. 航空写真撮影 都市部の例 ( 益城町役場周辺 ) 山間部の例 ( 南阿蘇村大字立野周辺 ) たての < 提供先 > 現地対策本部 内閣官房 内閣府を初めとする関係府省庁 TEC-FORCE 熊本県等 < 主な活用事例 > 行方不明者捜索時の参考資料 ( 警察 消防 自衛隊 ) 家屋や土砂崩壊による被害状況の把握 (TEC-FORCE 等 ) がれき除去 ( 環境省 ) 罹災証明発行時の現況資料 ( 熊本県 ) 等 55
2 航空写真での被災前後の比較 阿蘇大橋周辺 スライドして境目を移動 被災後 左側 4月16日撮影 と被災前 右側 平成25年撮影 の 状況をホームページ上で比較 ホームページ公開 4月17日 56
2 航空写真での被災前後の比較 ながの 長野地区 南阿蘇村 の土砂流出箇所 被災後 4月16日撮影 被災前 平成25年撮影 ホームページ公開 4月17日 熊本城 熊本市 付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成20年撮影 ホームページ公開 4月17日 阿蘇神社 阿蘇市 付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成25年撮影 ホームページ公開 4月17日 益城町中心部付近 被災後 4月16日撮影 被災前 平成20年撮影 ホームページ公開 4月17日 57
3 被災状況把握 写真判読による 土砂崩壊地分布図 4月16日 19日及び20日撮影の写真 から 土砂崩壊地の分布を判読 4月18日に公開 その後の写真か ら図を更新 現地対策本部やTEC-FORCE等により 現地調査資料として活用 4月16日撮影の写真から 地震によ り生じたと推定される地表の亀裂を 判読 4月20日に公開 5月13日に更 新 TEC-FORCEや専門家等により現地調 査 断層の把握に活用 亀裂分布図 58
3 写真判読による土砂崩壊の体積計測 土砂崩壊現場における土砂崩れの体積を計測し 行方不明者の捜索 に活用 たかのだい 南阿蘇村高野台地区 南阿蘇村阿蘇大橋周辺 A 崩落部 河床部 C B 崩壊前の地形データと 崩壊後の写真測 量により求めた地形データを比較し 土 砂が堆積したエリアの体積を計測 崩壊前の地形データと 崩壊後の写真測量 により求めた地形データを比較し 土砂が えぐられた 堆積したエリアの体積を計測 59
4 電子基準点による地殻変動観測 地震時に南阿蘇村の電子基準点 長陽 が南西に97cm移動 地殻変動情報から 断層モデル を推定 4月18日に公表 政府地震調 査委員会に提供 ちょうよう 電子基準点 熊本 東北東に75cm移動 電子基準点 長陽 南西に97cm移動 電子基準点 60
5 干渉SARによる広域な地殻変動の把握 地震前後の衛星画像を比較し 地殻変動の 大きさを面的に把握 変動前 変動後 地表 SAR干渉画像 水平方向 垂直方向 西向き 最大50cm以上 最大1m以上沈降 東向き 最大1m以上 最大30cm以上隆起 水平方向には 断層の北側で東向きに最大1m以上 断層の南側で西向きに最大 50cm以上の変動 上下方向には 断層の北側で最大1m沈降 断層の南側で最大30cm以上隆起 61 4月19日までの観測結果をもとに推定 4月20日に公表
5 干渉SARによる広域な地殻変動の把握 干渉SARで明瞭な干渉が得られなかった箇所を中心に 緊急GNSS観測を実施 速報値 ⑨ -0.6m ⑦ -1.1m +0.4m ⑩-1.0m ⑤ -0.5m ③ -0.8m ② -0.1m ① -0.2m ⑫+0.1m ⑬+0.2m 2. GNSSと干渉SARで整合 的な結果だった(干渉SARで 上下変動量が得られている 観測点①②⑤⑨⑩⑪) 3. 干渉SARでは明瞭な干渉 が得られなかった西原村西部 も含め 布田川断層の北西 側では周辺地盤全体が緩や かな傾斜で最大2m程度の 沈降が生じたものと考えられ る ⑧ -1.3m ⑥ -1.8m ④ -2.1m ⑪-0.6m 1. 地震前の基準点の成果と比 べて最大で2.1mの沈降が 確認 3km 活断層(地震調査研究推進本部 背景は地理院地図に干渉SARで得られた地殻変動の準上下変動成分を重ねたもの 4. なお 水平位置についても断 層に近い④⑥⑧⑩の観測点 で東北東に約1.4mの変動 が観測 62
6 航空レーザ計測による地盤の上下変動の把握 益城町の要請により 5/8に益城町 周辺の航空レーザ計測を実施 平成17年度と今回の航空 レーザ計測により求めた標高 の差分を解析 広域に上下変動しており 基本的には河床 堤防等は 一体的に上下変動していると 考えられる 63
7. 災害復旧等の事業に必要な基準点の復旧測量 測地基準点 ( 三角点 水準点 ) が大きく変動して現況と合わなくなっており 被災地の災害復旧等の事業に必要な位置情報 ( 三角点 水準点 ) の提供が急務 測量成果を停止していた電子基準点 38 点の内 千丁 ( 熊本県八代市 ) を除く 37 点の改定成果を 5 月 19 日に公表 64
おわりに 東日本大震災の辛い経験と厳しい教訓は 過去 現在 そして未来をつなぐ証拠として また 災害に負けない国土づくり 地域づくりへの知恵として 永遠に引き継がなければならない 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震 津波対策に関する専門調査会報告 ( 中央防災会議 ) ( 平成 23 年 9 月 28 日 )
ご清聴 誠にありがとうございました 66