まず 適応となる褥創はステージ III IV と呼ぶ褥創であり ステージ I II 褥創には使わないとのことでした また 閉塞性動脈硬化症例ではラップ療法は禁忌とのことでした そしてポケット内部に壊死のある褥創にはラップ療法を安易に使わず まずはポケットの切開開放が前提であるとのことでした これはラ

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帯広厚生病院広報誌 とかち野 2016年7月 vol.52

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Transcription:

ラップ療法の光と影 < 食品用ラップは安全に使えるのか?> (2007.9.20) 高岡駅南クリニック院長塚田邦夫 食品用ラップは 安価で創傷治癒効果も高く手軽に手に入るため 介護施設や在宅を中心にかなり広く使われ始めています そこで はたしてラップを使った局所療法は有効であるのか また使うにあたって安全性はどうか さらに法的にどうかなどいろいろな問題が浮かび上がってきます 第 9 回日本褥瘡学会学術集会 ( 群馬県前橋市 ) のシンポジウム ラップ療法 - 過去 現在 未来 - の企画と司会をする機会がありました シンポジストにはラップ療法の創始者鳥谷部俊一先生 および推進者水原章浩先生を迎えました またラップ療法には慎重派 ( 反対派?) である 湿潤療法を日本に普及させた柵瀬信太郎先生 最新の創傷治療を推進していらっしゃる市岡滋先生 また看護師の立場から専門看護師の小林和世先生をお迎えしました その結果 最新のラップ療法に関する情報がわかりましたのでこれをお知らせいたします なお 以下にお知らせする内容は私のメモによるもので 実際の発表内容と多少異なっている可能性は否定できません また発表者に内容の確認も行っておりませんのでご了承願います ラップ療法の考え方ラップ療法は 1950 年代より研究されており 人工的な水疱という考え方が妥当のようです この時代は創周囲皮膚の浸軟が問題となり その解決としてフィルム材 ( オプサイトやテガダームなど ) が 1970 年代に発明され それが現在使用されているものです しかし 1990 年代後半に鳥谷部先生が褥創に使用し有用性を報告されました ラップ療法はインターネットを使って従来の治療法に疑問を持つ医師の間に広がっていきました 広がりをみせる中 食品用ラップをそのまま使う方法から ラップに穴を開けたり 台所の水切りに使われる穴空きポリ袋を吸収パッドにかぶせて使うなど ラップ療法の持つ皮膚の浸軟対策法がいろいろと検討され いろいろな褥創への応用がきくようになってきました ラップ療法派の考え方 このシンポジウムの中で ラップ療法派の褥創治療の考え方 ( 適応 ) がはっきりしてき ました それを御紹介いたします

まず 適応となる褥創はステージ III IV と呼ぶ褥創であり ステージ I II 褥創には使わないとのことでした また 閉塞性動脈硬化症例ではラップ療法は禁忌とのことでした そしてポケット内部に壊死のある褥創にはラップ療法を安易に使わず まずはポケットの切開開放が前提であるとのことでした これはラップ療法に限らずどのようなドレッシング法を行う場合にも必要な処置であることはラップ派に限らずほぼ全員の一致した考え方でした また さらに重要な一致点として 体圧分散 栄養改善などをしっかり行うという点でした そして創傷のアセスメントができる医師が責任をもって行うことが前提であるとのことでした 看護師が自分の判断でラップ療法を行うことは想定しておらず 看護師の自己判断で行うことには危惧をしているとのことでした そしてラップ療法を行う際は しっかりと医師が患者さんから承諾書をとることが重要とのことでした このように ラップ療法を行うにあたっての心構えは ラップ療法を積極的に行わない方達とほとんど同じ考え方でした ラップ慎重派 ( 反対派?) の考え方ラップ療法を積極的に行っていない方達も ラップは使ったことがあるようで 事情によっては決して完全に否定するものではないようでした また 創傷治癒効果もみられ 少なくとも従来のガーゼドレッシングよりかなり有用と認めていました しかし 以下の点で積極的に使わないことが解りました ラップは創傷に使うことは承認されておらず 製造メーカーも創傷に使用しないよう声明を出している また政府 ( 厚生労働省 ) は沈黙しており 医療費削減効果があり 医師が自己責任でやってくれることにはむしろ喜んでいる気配がある どのようなドレッシング材を使っても一定の割合でうまくいかない例が発生するが それにラップ療法が関与していた場合 四面楚歌になり どこも助けてくれない 政府の医療費削減のために 医師が一人で危険をしょい込むほど殊勝な気になれないとのことでした 現在のラップ使用状況調査急性期病院 一般病院 介護施設でラップ療法がどのようにして行われているかの調査が報告されました その結果は予想されていたとはいえ 大変危険で驚くべき結果でした 以下に発表者の承諾はありませんがメモから概要を示します ラップの使用は 急性期病院では少なく 一般病院 介護施設の順で多くなっていた 褥創治療は日進月歩であり 卒後教育が重要だが 卒後の褥創教育を受けているものは 急性期病院では多い しかし介護施設ではほとんど行われていなかった ラップ療法では承諾書が要ることを含め ラップ療法を行うにあたっての注意点など使い方の教育を

受けたかの質問に対し 急性期病院ではラップ療法はあまり行われていないにも関わらず かなりの方がラップ療法の教育を受けていた ところがラップ療法がよく行われていた介護施設では ほとんどラップ療法の教育は受けていなかった さらに急性期病院では創処置法は医師によって選択されていたが 介護施設では 医師による処置法選択はあまり行われておらず 看護師による選択がかなり行われていた 以上から臨床現場では大変危険な状態であることが解りました つまり より知識が高く 医師の多い病院では ラップ療法はその法的危険性ゆえにあまり選択されていませんでした ところが 介護施設では処置法の選択ができないはずの看護師などによってラップ療法が選択され その背景としてラップ療法の法的な危険性を知らないで安易に使われていることが解りました ラップ療法がもたらす危険性ラップ療法は 他のドレッシング法より合併症が多いかどうかについては 必ずしも ハイ とは言い切れないようです 他のドレッシング法も十分危険性があります どのようなドレッシング法でも 褥創において創感染や合併症は起こりえます そのために 創のアセスメントがしっかりできることが 褥創の局所療法を行うための前提条件です さらに 褥創治療において合併症を少なくするためには 局所療法だけではなく 栄養改善 体圧分散など いろいろな要因を総合的に判断して治療に当たることが重要です 裁判所が出した法的解釈として スキンケア 体位変換 褥創予防などに関しては 看護師が第一責任を負います しかし 局所療法に関しては医師が第一責任を負います そして医療用具でないラップを創傷に使う場合は 医師の裁量権で行うことになりますが その際患者 ( 家族 ) に十分な説明が必要で その証拠として同意書をもらうことが重要です 以上の点をふまえて 医療現場を考えてみましょう 病院や介護施設において 褥創感染が起こって患者家族が問題にした場合や 内部告発があった場合を想定します ドレッシング法として医療用具の中から選択されていた場合は このようなドレッシングを行う場合は もちろん患者家族への説明は必要ですが その証拠としての同意書までは求められないと思います このような場合 医師の指示で看護師がこのドレッシング材を用いていても看護師が第一責任を負うことはなく 局所療法の第一責任者である医師が責任を問われます 介護福祉士が処置を行っていた場合もある程度は言い逃れが可能と思われます

では ラップ療法ではどうなるでしょうか 医師が創処置を行っていた場合 第一責任者である医師が責任を問われます 看護師や介護福祉士らが処置をしていても同意書があれば 医師との連帯責任となる可能性はありますが看護師らのみが責を負うことは少なくとも無いと思います しかし 同意書が無い状況下で看護師や介護福祉士がラップによる処置を行っていた場合 大問題になります この場合は医師は説明していないので 病院側や医師は逃げる可能性があります あるいは黙秘権を行使する可能性があります そうなると責を負うのは 一人看護師や介護福祉士ということになり トカゲの尾切りとなります ラップ療法を行う場合の留意点ラップ療法を行うにあたっては 何をおいても医師による同意書をとる必要があります 同意書の無い状況下では 絶対に看護師や介護福祉士はラップ療法を行ってはなりません ( 実は介護福祉士やヘルパーは創処置を行えません ) 医師は 他職種にラップ療法を行わせた場合 多大な迷惑を与える可能性があることを認識し 自らが行う以外はラップ療法を看護師当に行わせないことが大切です 医師がドレッシング法を選択するにあたって 特にラップ療法を選択する場合には 創のアセスメントをしっかりできる能力 技術が必要です 褥創においては 創感染徴候の診断 危険な壊死組織かどうかの判断 全身のアセスメント 栄養状態の評価 体圧分散用具の適切な選択と使用 などの基本的な知識を持っていることが求められます そして 他の方法で治療可能であれば 医療用具からの選択を行うほうが無難です ただし そうは言ってもいろいろな事情があります ある程度の法的危険性を覚悟で 患者家族と良好な関係ができていれば ラップ療法も選択の一つとして考えましょう ところで在宅でのラップ療法ですが 在宅で家族がラップ療法を行う場合は これは自己責任となるためとやかく言う必要はありません 家族が望む場合は 通常のドレッシング法と同様に 危険徴候の見分け方や適切なドレッシング交換頻度などを丁寧に指導してあげればよいと思います ここでも看護師が家族の求めでラップ療法を行う場合はちょっと厄介かもしれません 現場での苦労はあると思いますが 家族との関係によって判断することになると思います 一般的なアドバイスとしては 在宅においては 看護師やヘルパーはラップには手を出さないほうが良さそうだという点です ラップ療法は今のところ医師にませておきましょう