【アジア新興経済レビュー】底堅い内需も輸出不振の長期化が足枷に

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【アジア新興経済レビュー】韓国・台湾・マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・インド 韓国と台湾、内需に違い

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

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スライド 1

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

○ユーロ

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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経済・物価情勢の展望(2016年10月)

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

インド経済見通し~公共投資と農村部の回復で7%台半ばの成長を維持

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

PowerPoint プレゼンテーション

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

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第1章

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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Invesco Premia Plus Fund

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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経済・物価情勢の展望(2017年10月)

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

スライド タイトルなし

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

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物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

Microsoft Word ECB利下げ.doc

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金融政策決定会合における主な意見

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[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

現代資本主義論

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マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

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○ユーロ

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

○ユーロ

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

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株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved


ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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平成10年7月8日

PowerPoint プレゼンテーション

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

月例経済報告

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

【ロシア最新経済金融週報】

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

2. トピックス 中国 インドを除くアジア主要国の特徴について 中国やインドが高い成長を続けている中にあって 韓国 台湾 タイ インドネシアなどの東南アジアの国々の成長率は過去 7 年間を平均すると 4.3% と安定している しかし 成長率には国によって差があり フィリピン ベトナム インドネシアな

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平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

月例経済報告

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【アジア・新興国】東南アジア経済の見通し~19年は底堅い成長も、輸出鈍化と利上げの影響で減速傾向

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株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

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資料1

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

Microsoft Word - N_ _2030年の各国GDP.doc

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平成 21 年第 1 回 ( 平成 21 年 2 月 1 日実施 ) 鳥取県企業経営者見通し調査報告 目次ヘ ーシ 御利用にあたって 1 1 業界の景気判断 3 2 自己企業の売上高判断 5 3 自己企業の経常利益判断 7 4 生産数量の判断 9 5 在庫水準の判断 10 6 生産設備の規模判断 1

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

北陸 短観(2019年6月調査)

Transcription:

ニッセイ基礎研究所 2016-02-01 アジア新興経済レビュー 底堅い内需も輸出不振の長期化が足枷に韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド経済研究部研究員斉藤誠 TEL:03-3512-1780 E-mail: msaitou@nli-research.co.jp 1. ( 実体経済 ) 生産面の伸び率 の動きを見ると 内需が底堅いものの 輸出の低迷で持ち直しの動きが鈍い状況が続いている タイ インドネシア フィリピンが 3 ヵ月 6 ヵ月平均を上回る一方 韓国と台湾は輸出不振や在庫増を受けた生産調整により電子部品や機械設備を中心に低迷した 2. ( 消費者物価上昇率 ) 12 月の消費者物価上昇率 は 14 年後半の原油価格下落による物価下押し圧力が後退して緩やかな上昇傾向にはあるものの 景気減速や原油一段安の影響で上昇ペースは鈍い インドが食品価格を中心に上昇する一方 インドネシアが補助金付き燃料価格値上げの上昇要因の剥落により 中央銀行のインフレ目標圏内 (2015 年は 3-5%) の下方まで低下した 3. ( 金融政策 ) 1 月は 韓国 マレーシア インドネシアの中央銀行で金融政策会合が開かれ インドネシアが政策金利を 0.25% 引き下げ その他の会合では据え置きとなった 4. (1 月の注目ニュース ) - 韓国 台湾 フィリピン :10-12 月期 GDPを公表 (26 日 28 日 29 日 ) - 台湾 : 正副総統 立法院選挙で民進党が勝利 (16 日 ) -インドネシア: 首都ジャカルタでテロ発生 (14 日 ) -マレーシア: 原油一段安を受け 2016 年度補正予算案を公表 (28 日 ) 5. (2 月の主要指標 ) 2 月は マレーシア タイ インドネシア インドで 10-12 月期の GDP 統計が公表される マレーシアは GST 導入によって鈍化した個人消費が下げ止まるか インドネシアは矢継ぎ早に打ち出された経済政策パッケージや予算執行の加速による公共投資の拡大で景気が上向くか そしてインドでは 2015 年に実施した 4 度に渡る利下げが民間部門を刺激することができるかに注目したい 1

1. 生産活動 ( 韓国 台湾 タイ :12 月 その他の国 :11 月 ) アジア新興国 地域の生産指数の伸び率 ( 前 年同月比 ) を見ると 内需は底堅いものの 輸 出の低迷で持ち直しの動きが鈍い状況が続いて いる ( 図表 1) フィリピンは前年同月比 7.5% 増と 内需が好 調で電気機械に加え これまで足枷となってい た非電気機械と石油製品がプラスに転じ 大き く上昇した さらにタイは同 1.3% 増となり 物品税導入を前に需要が拡大した自動車や中国 向け輸出が増加したゴムなどが上昇した ( 図表 1) 1 6カ月平均 8% 3カ月平均 6% 一方 韓国と台湾は 輸出不振や在庫増を受けた生産調整により電子部品や機械設備が低迷し それぞれ伸び率が低下した またインドは前年同月比 3.2% 減と 祭事期需要の終了を受けて減少 に転じた 2014 年 10 月以来のマイナスとなった さらにマレーシアはリンギ安による価格競争力 の向上を受けてリンギ安が追い風に製造業が堅調だったが 鉱業の不調で鈍化した 4% 2% 2% 4% 6% 8% 生産指数 ( 注 ) 月は韓国 台湾 タイが 12 月 その他の国 地域が 11 月 2. 貿易 ( 韓国 台湾 タイ インドネシア インド :12 月 その他の国 :11 月 ) 輸出 ( 通関ベース ) の伸び率 は 原油一段安や中国をはじめ世界経済の回復 が鈍いことから輸出に下押し圧力が掛かり フ ィリピン タイを除いて二桁マイナスと低迷し ている ( 図表 2) フィリピンは 主力の電子製品の好調が一次 産品やその他製造品のマイナスを下支えし マ イナスが大きく縮小した 一方 韓国は供給過剰感がある鉄鋼や液晶パ ネルなど マレーシアは通貨安で好調だった電 気 電子製品が鈍化し 3 ヵ月 6 ヵ月平均を下 回った 台湾は主力の電子製品 化学製品 プ ラスチック製品などの低迷が続いている また インドネシアは石油 ガスの価格下落や非石油 ガスの輸出鈍化により 8 ヵ月連続の二桁マイナ スを記録した 輸入の伸び率 は 加工貿易の 縮小による大幅マイナスが続いているものの 景気刺激策や公共投資の執行加速などによる内需回 復により 総じて上昇傾向が見られる ( 図表 3) ( 図表 2) 1 15% 2 25% フィリピンは同 10.1% 増と 投資需要が旺盛で資本財や原材料 中間財が牽引役となり 2 ヵ月 連続の二桁増となった インドは通信機器や金などの輸入が増加してマイナス幅が大きく縮小した 5% 6 カ月平均 3 カ月平均 輸出 ( 注 ) ドルベース 月は韓国 台湾 タイ インドネシア インドが 12 月 その他の国 地域が 11 月 ( 図表 3) 15% 1 5% 5% 1 15% 2 25% 6 カ月平均 3 カ月平均 輸入 ( 注 ) ドルベース 月は韓国 台湾 タイ インドネシア インドが 12 月 その他の国 地域が 11 月 2

3. 自動車販売 (12 月 ) 12 月の自動車販売台数の伸び率 を見ると 韓国 フィリピン インドは堅調に推移し マレーシア タイが大きく上昇するなど 幅広く持ち直しの動きが見られた ( 図 ( 図表 4) 3 25% 2 15% 新車販売台数 表 4) 韓国は同 13.7% 増と 引き続き新車効果や個別消費税の引下げ 1 が追い風となり 5 ヵ月連続の二桁増を記録した インドは同 +10.7% と 金利引下げによる消費者心理の回復や新車投入を受けて 3 ヵ月連続の二桁増となった またタイ 1 5% 5% 1 15% 6 カ月平均 3 カ月平均 ( 注 ) 台湾は登録台数 ( ナンバープレート交付数 ) は同 13.3% 増となり 1 月からの自動車の物品税改定を前に駆け込み需要が増加し 自動車買い替え促進策が終了した 2013 年 12 月以来の二桁増を記録した さらにマレーシアは同 7.3% 増と リンギ安を背景とする 1 月からの値上げを前に駆け込み需要が生じ 3 ヵ月ぶりに上昇した このほか 台湾は同 0. 増と 1 月から実施される自動車買い換え促進策 (2016 年施行 ) で減免の対象外となる者らの買い控えの動きが弱まって 2 ヵ月連続のプラスとなった 一方 インドネシアは同 7. 減と 3 ヵ月 6 ヵ月平均を上回ったものの 販売台数は直近 5 ヵ月で最も少ない 7.3 万台となった 景気減速による消費者の購買力低下が影響したと見られる 4. 消費者物価指数 (12 月 ) 12 月の消費者物価上昇率 ( 前年同月比 以下 CPI 上昇率 ) は 14 年後半の原油価格下落による物価下押し圧力が後退して緩やかな上昇傾向にはあるものの 景気減速や原油一段安の影響で上昇ペースは鈍っている ( 図表 5) インドは前年同月比 5.6% 増と 豆類をはじ ( 図表 5) 7% 6% 6カ月平均 3カ月平均 5% 4% インフレ目標 3% 2% 1% 消費者物価指数 め香辛料 油 油脂といった食品価格を中心に 4 ヵ月連続の上昇となった またフィリピンは同 1.5% 増と 力強い経済成長やペソ安によるインフレ圧力 そして 12 月の台風被害を受けて 1% 2% ( 注 ) インフレ目標を採用している国は韓国 タイ インドネシア フィリピン インド 3 ヵ月連続の上昇となった 一方 インドネシアは同 3.4% 増と 14 年 11 月の補助金付き燃料価格値上げの上昇要因が剥落し 中央銀行のインフレ目標圏内 (2015 年は 3-5%) の下方まで低下した またタイは同 0.9% 減と 国内ガソリン価格の値下げや食料供給量の増加から低迷しており 本稿対象 7 カ国中で唯一伸び率がマイナスとなった 5. 金融政策 (1 月 ) 1 政府は 8 月に消費刺激策として 同月 27 日から年末までの期間限定で乗用車や大型家電製品に課される個別消費税を引き下げることを決めた 乗用車の個別消費税は従来の 5% から 3.5% に引き下げられた 3

1 月は 韓国 マレーシア インドネシアの 中央銀行で金融政策会合が開かれた 政策金利 はインドネシアが引下げ その他の会合では据 え置きとなった インドネシアは 14 日に 政策金利を 0.25% 引き下げて 7.25% とした 11 月の会合では イ ンフレ率や経常収支などマクロ経済環境の安定 を材料に先行きの緩和余地を示していたものの 12 月は米国の利上げ決定の翌日だっただけに 先送りしていた 1 月は金融市場でリスク回避 の動きが進んでいたものの 景気浮揚に向けた 利下げを決めた ( 図表 6) アジア新興国 地域の政策金利の状況 2014 年末 (13 年対比 ) 2015 年 2015 年末 2015 年現在 Q1 Q2 Q3 Q4 (14 年対比 ) Q1 (14 年対比 ) 韓国 2.00 1.50 1.50 (7 日物レポ金利 ) ( 0.50) ( 0.50) (+0.00) 台湾 1.875 1.625 1.625 ( 公定歩合 ) (+0.00) ( 0.25) (+0.00) マレーシア 3.25 3.25 3.25 ( 翌日物銀行間取引金利 ) (+0.25) (+0.00) (+0.00) タイ 2.00 1.50 1.50 ( 翌日物レポ金利 ) ( 0.25) ( 0.50) (+0.00) インドネシア 7.75 7.50 7.25 ( 翌日物銀行間借入金利 ) (+0.25) ( 0.25) ( 0.25) フィリピン 6.00 6.00 6.00 ( 翌日物銀行間貸出金利 ) (+0.50) (+0.00) (+0.00) インド 8.00 6.75 6.75 ( 翌日物レポ金利 ) (+0.25) ( 1.25) (+0.00) ( 注 ) 国名のカッコ内は政策金利 もしくは誘導目標対象の金利 は利上げ は利下げを表す またマレーシアは 国内金融市場の流動性を確保するために預金準備率を 0.5% 引き下げた 6. 金融市場 (1 月 ) 1 月のアジア新興国 地域の株価は タイ インドネシアを除いて下落した ( 図表 6) もっ とも中国株や資源国株 先進国株と比べると本 稿 7 ヵ国 地域の株価下落は小幅であった 月中旬までは 12 月の米国の利上げ開始をは じめ中国経済の減速懸念や原油一段安 地政学 的リスクの高まり ( サウジアラビアとイランの 国交断絶 北朝鮮の水爆実験 ) などが重なって 世界的にリスク回避姿勢が強まり アジア株も 下落基調で推移した しかし 月下旬は欧州中 央銀行 (ECB) が 3 月の追加の金融緩和策の 可能性を示唆し 日本銀行が新たな金融緩和策 としてマイナス金利導入を打ち出したこと ま た原油の協調減産の可能性が浮上して 株価は 買い戻される展開となった 国別に見ると インドは原油安や鉱工業生産 指数の悪化 台湾は主要取引相手である中国の 景気減速懸念や輸出不振 政治情勢の先行きの 不透明感が株価下落に繋がった 一方 インドネシアはテロ発生も 1 月の利下げ実施と先行きの追 加利下げの期待が株価上昇に繋がった ( 図表 7) (%) 5 0 5 10 6 カ月 3 カ月 株価上昇率 1カ月 15 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド ( 図表 8) (%) 5 0 5 通貨上昇率 ( ドル安 自国通貨高 ) ( ドル高 自国通貨安 ) 6 カ月 3 カ月 1 カ月 10 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド 為替 ( 対ドル ) は 月中旬までは 12 月の米国の利上げ開始や人民元の下落などを背景に アジア新興国の通貨も総じて下落傾向が続き その後はリスク回避姿勢が和らいで通貨上昇に転じた ( 図表 7) 国別に見ると 韓国は北朝鮮の水爆実験や人民元安の加速 インドは米利上げ開始による海外投 4

資家の資金流出などが通貨下落に繋がった 一方 マレーシア インドネシアの資源国通貨は原油 の協調減産の可能性が浮上したことから上昇した 7. 1 月の注目ニュース 今後の注目点など 1 韓国 台湾 フィリピン :10-12 月期 GDPを公表 (26 日 28 日 29 日 ) 1 月は 韓国 (26 日 ) と台湾 (29 日 ) フィリピン(28 日 ) で2015 年 10-12 月期のGDP 統計が公表された 10-12 月期の実質 GDP 成長率は 韓国が前年同期比 3. 増 ( 前期 : 同 2.7% 増 ) フィリピンが同 6.3% 増 ( 前期 : 同 6.1% 増 ) とそれぞれ上昇した 台湾も同 0.3% 減と前期の同 0.6% 減から上昇したものの 2 期連続のマイナス成長となった 韓国は 10 月前半のコリア ブラックフライデーの開催や個別消費税の引き下げ 低インフレの継続 雇用環境の改善など個人消費の拡大が景気回復の主因となった フィリピンは 低インフレの継続や雇用 所得環境の改善 海外就労者の送金額 ( ペソ建て ) の拡大によって民間消費が堅調を維持し 年初に遅れた予算執行が加速したことによってインフラ支出など政府部門が景気を押上げた 台湾は 政府の消費刺激策を背景とする民間消費の持ち直しによって成長率が上昇したものの 輸出と投資が低迷してマイナス成長となった 2 台湾 : 正副総統 立法院選挙で民進党が勝利 (16 日 ) 台湾では 16 日に正副総統 立法委員選挙が投開票され それぞれ最大野党 民主進歩党 ( 民進党 ) が勝利した 新たに正副総統となる民進党の蔡英文 陳建仁ペアは過半数を超える 689 万 4744 票 ( 得票率 56.12%) を獲得し 与党 国民党の朱立倫 王如玄ペアの 381 万 3,365 票 ( 得票率 31.04%) 野党 親民党の宋楚瑜 徐欣瑩ペアの 157 万 6,861 票 ( 同 12.84%) に大差をつけて勝利した 立法院選では 113 議席を争った民進党が 68 議席 (28 議席増 ) を獲得し 初の単独過半数の議席を獲得した 国民党は 35 議席 (29 議席減 ) と惨敗し 14 年春の ひまわり学生運動 の関係者らによる新党 時代力量 が若者中心に支持を集めて 5 議席を確保した 独立志向を持つ民進党 新政権が中国との関係改善を進めずして 閉塞感が強まる台湾経済を浮揚させることができるか 新たに打ち出される経済政策に期待がかかる 3インドネシア : 首都ジャカルタでテロ発生 (14 日 ) インドネシアでは 14 日に首都ジャカルタ中心部で爆弾テロ事件が発生し 民間人 4 名と実行犯 4 名が死亡した 後日 テロに関与したとされる容疑者 13 名が逮捕されるなど 事件は収束に向かっている しかし これまでイスラム国 (IS) に参加し 帰国したインドネシア人は多く テロ再発の可能性は燻る 大規模テロが起きれば 海外からの投資が激減してしまう恐れがある 政府は再発阻止に向けて取締りを強化している 4マレーシア : 原油一段安を受け 2016 年度補正予算案を公表 (28 日 ) マレーシアでは 28 日に政府が2016 年度補正予算案を公表した 予算の前提となる原油価格の下落と景気低迷を背景に2016 年度予算の見直すこととなった 今回の補正予算では 原油価格の想定を当初予算の1バレル52ドルから30~35ドル 経済成長率を当初の4~5% から4~4.5% に引き下げたことから 歳入額が70~90 億リンギ減少した これを受けて歳出の見直しを図り 一般歳出が4~4.5 億リンギ 開発予算が4~5 億リンギ削減された 財政 5

収支 ( 見込み ) は GDP 比 3.1% の赤字で据え置かれた 42 月の注目指標 :: マレーシア タイ インドネシア インドで GDP 公表 2 月は マレーシア (18 日 ) タイ (16 日 ) イ ンドネシア (5-7 日 ) インド (8 日 ) で 2015 年 10-12 月期の国内総生産 (GDP) が公表される マレーシアは 昨年 4 月の GST 導入やリンギ安 による物価上昇を受けて 7-9 月に鈍化した個人 消費が下げ止まるか またインドネシアは政府 が矢継ぎ早に打ち出してきた経済政策パッケー ジや予算執行の加速による公共投資の拡大で景 気を上向かせることができるか そしてインド では 2015 年に実施した 4 度に渡る利下げが民間 部門の消費 投資を刺激したかどうかに注目し たい 当研究所では マレーシアが前年同期比 +4.2% タイが同 +2.7% インドネシアが同 +4.8% フィリピンが同 +5.9% インドが同 +7.4% を予想する (12 月 25 日時点の見通し ) ( 図表 9) 新興国経済指標カレンダー 2 月 1 日月貿易 CPI CPI 2 月 2 日火 CPI 金融政策 2 月 3 日水金融政策 2 月 5 日金 CPI 貿易 5-7 日 CPI 2 月 7 日日 GDP 7-18 日 2 月 8 日月 生産 GDP 2 月 10 日水 輸出生産 10-15 日貿易 2 月 11 日木生産金融政策 2 月 12 日金生産 2 月 15 日月貿易海外送金 WPI 2 月 16 日火金融政策貿易 GDP 2 月 18 日木 GDP 金融政策 2 月 24 日水 輸出受注 CPI 24-27 日 輸入 2 月 25 日木 貿易 25-29 日 2 月 26 日金 生産 生産 経常収支 2 月 29 日月 生産 ( 資料 ) 各種報道資料 生産指数の対象月は 韓国 台湾 タイが 1 月 その他が 12 月 貿易統計の対象月は 韓国 台湾 タイ インドネシア インドが 1 月 その他が 12 月 貿易統計については フィリピンは輸出と輸入の公表日が異なる 公表日は変更になる可能性がある 特に斜体字については日程が不確実なもの CPI ( お願い ) 本誌記載のデータは各種の情報源から入手 加工したものであり その正確性と安全性を保証するものではありません また 本誌は情報提供が目的であり 記載の意見や予測は いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません 6