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事業紹介 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 1. はじめに 石油天然ガス 金属鉱物資源機構 JOGMEC は 我が国周辺海域に存在する海洋資源の探査 開発を加速するた め 現在運航中の調査船 第2白嶺丸 に代わる新たな海洋資源調査船 以下 新調査船 の建造調達を行っている この新調査船は 海底や地質の状況に応じて選択できる2種類の大型掘削装置や各種の最新調査機器を搭載し 効率 的かつ安全に海底鉱物資源の賦存量調査や海洋環境基礎調査の実施が可能である 新調査船は 平成 22 年7月に三菱重工業株式会社下関造船所 山口県下関市 で起工し 平成 23 年3月 23 日に 進水式が執り行われ 今後 調査機器の据付など艤装を経て 平成 24 年1月末に完成 就航の予定である 本稿では 新調査船や搭載する調査機器の概要について報告する 2. 新海洋資源調査船調達プロジェクトの背 景と経緯 1 海底鉱物資源と第2白嶺丸 海洋には 石油 天然ガス メタンハイドレートな どのエネルギー資源やマンガン団塊 海底熱水鉱床 コバルト リッチ クラストなどの海底鉱物資源 表 1 が賦存する JOGMEC は 昭和 55 年就航の深海底鉱物資源探査 専用船 第2白嶺丸 図 1 を用いて マンガン団塊 調査 昭和 50 平成8年度 海底熱水鉱床調査 昭 和 60 平成 15 年度 平成 20 年度 コバルト リ ッチ クラスト鉱床調査 昭和 62 年度 などを実施 してきた 今年度 平成 22 年度 までの 31 年間で 総調査日数は 8,120 日 航走距離は延べ 144.6 万海里 268 万 km 地球 67 周に相当 に及ぶ マンガン団塊調査 では昭和 62 年にハワイ南東方海域 公海 に鉱区 7.5 表1. 海洋鉱物資源の概要 2011.3 金属資源レポート 1 801 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 新調査船プロジェクトグループ

事業紹介 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 万 km2 を取得し 海底熱水鉱床調査では沖縄トラフ海 域や伊豆 小笠原海域で新鉱床を発見した また 政 府開発援助事業として実施した南太平洋海域海洋資源 調査 昭和 60 平成 17 年度 では SOPAC 加盟諸国 12 か国の海底鉱物資源の賦存状況を把握した 更に日 本近海における大陸棚延長の可能性のある海域 243 地点でボーリング調査 470 孔 延べ掘削長 2,313 m を大陸棚調査の一環として実施し 我が国大陸棚延伸 申請に貢献する等々多くの成果を挙げている 図1. 第2白嶺丸 このように 第2白嶺丸 が長期にわたり活躍して きたのは 対象とする海底鉱物資源の特徴に対応した 最新の調査機器を順次搭載し 最新の調査能力を維持 してきたことによるところが大きい しかし 船の大 きさ 船体構造 機能などの船固有の制約から a 海 底熱水鉱床の資源量を把握するための掘進長 20 m以上 の深部におけるボーリングができない b 長時間の掘 削作業を可能とする自動定点保持機能を有していない c 大型かつ大重量の調査機器や採掘要素技術試験機の 搭載 試験ができない d 環境 生態系保全のための 詳細な環境基礎調査ができない など調査能力の限界 が生じている 2 プロジェクト成立の背景 海洋に関する基本理念を定め 国の海洋政策を一元 的に推進するため 平成 19 年7月 海洋基本法 が 施行された また 同法に基づき 平成 20 年3月には 海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るた め 海洋基本計画 が閣議決定され 我が国では新た な海洋立国の実現に向けて具体的な取組が始まった 特に この計画には 排他的経済水域等における当面 の探査 開発の対象を石油 天然ガス メタンハイド レート 海底熱水鉱床とし 必要な政策資源を集中的 に投入すること 商業化されていない メタンハイ ドレート及び海底熱水鉱床は 今後 10 年程度を目処に 商業化の実現を目標とすること が明記された 更に これを確実に推進するため 目標達成までの探査 開 発の道筋と必要な技術開発テーマ等を具体的に定めた 海洋エネルギー 鉱物資源開発計画が策定され 平成 21 年3月 総合海洋政策本部会合で了承された 日本の領海を含めた排他的経済水域は世界第6位の 広さで 約 447 万 km2 大陸棚延伸海域 国連に申請 中 約 74 万 km2 を含め その海底にはレアメタル等 金属鉱物資源 メタンハイドレート等が豊富に存在す ることが期待されている しかし 海底下のこれらの 資源の賦存量が商業化を検討するのに必要な精度で十 分に把握されている訳ではなく また 生産技術や開 発による環境への影響等 開発に向けては様々な課題 が存在しているため 最先端の調査機器を用いた計画 的 加速的な調査や深海底における生産技術開発の推 進が必要とされている こうした探査 開発を加速す るための調査船について 海洋基本計画 では 政府 が総合的にかつ計画的に講ずべき施策として 老朽化 が著しい調査船の維持 更新の方法について検討し 適切な措置を講ずる 第2部3 2 海洋資源の計画的 な開発等の推進 イ. エネルギー 鉱物資源 と記載 された また 海洋関係の国会議員や研究者等有識者 からも シンポジウムやパブリックコメント等様々な 場や機会において 日本の海洋資源確保のために最新 設備を備えた海洋資源調査船を早急に整備すべきと強 調された 3 プロジェクトの成立 予算 これまでの経緯 このような背景の下 平成 21 年初頭 資源エネルギ ー庁で平成 21 年度補正予算により老朽化した 第2白 嶺丸 の後継船を調達する計画が持ち上がった 海洋調 査研究会 平成 14 年 検討結果 国内外の調査船 最 新調査機器動向などの情報 資料を基に概略の新調査 船のイメージを固め 5月までに予算要求作業を実施し た 5月 29 日 第1次補正予算が成立 新調査船予算 として 船体 220 億円 調査機器 75 億円 総額 295 億 円 JOGMEC 船舶建造費補助金 が計上され 新海洋 資源調査試験船 1 を早急に調達することとなった 9月に鳩山新政権が発足し 補正予算の見直しが行 なわれた 9月 28 日 松下忠洋 経済産業副大臣と高 橋千秋 経済産業大臣政務官 当時 が下関港停泊中 の 第2白嶺丸 を視察され この調達事業の見直し がなされ 海洋資源調査が重要である 新調査船の調 達が必要であるとの判断の下 平成 21 年度補正予算 200 億円で船本体の建造調達を実行することとなった 平成 21 年 10 月 16 日 閣議決定 また 付属調査機 器の調達は平成 22 年度予算で 75 億円が確保された この調達事業を円滑かつ着実に推進するため 資源 1 海底熱水鉱床開発のため生産技術の開発に資する採掘要素技術試験機などの機器 運用を可能とする調査船であることから ここでは 試験 という名称が入っている 2 2011.3 802 金属資源レポート

海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 名からなる 新海洋資源調査試験船調達委員会 ( 表 2 委員名簿 ) を設置し 新調査船及び搭載機器の仕様 委員会では 最初に調査対象資源 調査目的を明確にし そのために必要な調査手法と調査機器を検討し それらの搭載調査機器を用いて効率的かつ安全に調査を可能とする調査船の機能 大きさ等が審議された 調達方法は中古船等の改造ではなく新造すべきであることが答申され 船主要求事項を提示し提案公募方式によって新調査船を建造調達することとなった この委員会での審議を経て決まった新調査船の基本コンセプトは a) 創造性のある資源調査 技術試験が可能 b) 安全性 信頼性に優れた機能を保持 c) ライフサイクルコストの最適化を実現 d) 地球環境に優しい先見的設計の四つである 船主要求事項は 世界初 世界最速等に拘らず運用のコストパフォーマンスに十分配慮すること 就航後の修繕なども加味したライフサイクル エンジニアリングによる設計に努めること 乗員船室を多めにすること 将来的にヘリポート設置が可能な船体構造とすることなど 様々な委員の指導 助言を踏まえ策定したものであり JOGMEC が 第 2 白嶺丸 で培った海底鉱物資源調査などの豊富な知識 経験をベースに 委員会委員を通じて大学 研究機関等が有する海洋調査 造船等に係るノウハウが反映 活用されたものでもある この意味において新調査船は 海屋 ( 海洋調査 造船工学等 ) と 山屋( 陸上資源調査等 ) との融合 協力に基づき誕生する調査船となった 8 月初旬に決定した新調査船の要求仕様に基づき 8 月 10 日から 新海洋資源調査試験船の調達に係る企画競争 の公募が開始された 10 月 9 日の提出期限までに受けた提案書の評価を 9 名の評価委員を選定し ( 外部有識者 7 名 JOGMEC 内部 2 名 ) 実施した こ 表 3. 調達委員会開催実績と審議内容 調達方法に関する技術的検討事項等について 専門的見地から指導 助言を得ることとした 委員会の開催実績と主な審議内容を表 3 に示す 表 2. 新海洋資源調査試験船調達委員会委員名簿 ( 敬称略 ) 委員名所属平朝彦 ( 独 ) 海洋研究開発機構理事 ( 委員長 ) 池田良穂 ( 公 ) 大阪府立大学大学院工学研究科海洋システム工学分野教授浦辺徹郎 ( 国 ) 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授徳山英一 ( 国 ) 東京大学大気海洋研究所海洋底科学部門海洋底地質学分野教授前田久明日本大学理工学部海洋建築工学科教授 開催日 ( 平成 21 年 ) 主な審議事項 5 月 29 日 ( 準備会合 ) 新調査船のコンセプト 6 月 30 日 ( 第 1 回 ) 世界の調査船の現状 7 月 22 日 ( 第 2 回 ) 新調査船に搭載する主な調査機器 ( 案 ) の検討 新調査船の建造提案公募に係る船主要求事項( 案 ) 8 月 5 日 ( 第 3 回 ) 新調査船の建造提案公募に係る船主要求事項最終案 の結果 三菱重工業株式会社を新調査船の調達契約候補先として選定した (10 月 30 日 ) その後 提案された仕様に対して同社と JOGMEC 側の考え方 ( 実際の海洋資源調査での船体の操作性 安全性 効率性 居室の配置等の機能の改善等 ) について調整を図るため 詳細な仕様打合せ作業を繰り返し実施し 平成 22 年 1 月 12 日に同社と調達契約を締結した 詳細仕様の協議 基本設計 水槽試験 実物大模型 ( モックアップ ) 審議等を経て 7 月 8 日 下関造船所において起工式が執り行われた 新調査船は 65 の船体ブロックからなり 順次 各ブロックが製作 組み立てられ ブロック検査を経て 12 月 10 日には船台へのブロック搭載が開始され 本年 ( 平成 23 年 )3 月 23 日 進水式を迎えた 新調査船に搭載する調査機器については 始めに船体構造 機能に関連する主な大型調査機器 ( 掘削装置 音響調査機器 地震探査機器 採掘要素試験機 ROV( 遠隔操作無人探査機 ) 等の搭載要 不要等を新海洋資源調査試験船調達委員会で審議した後 外部有識者 12 名からなる 新海洋資源調査試験船に係る調査機器調達アドバイザリーグループ ( 表 4 委員名簿 機器毎に4 5 名を選任 ) を設置し 各調査機器の仕様及び調達に関する技術的検討事項 機種選定等について 専門的見地から指導 助言を得て調達を実施した この事業を実施するための JOGMEC 内部体制は 予算要求段階から6 月末までは金属資源技術部深海底技術課が担当し 7 月 1 日付で 特命グループ 新調査船プロジェクトグループ ( 企画チーム 船舶チーム 調査機器チーム ) が設置された 当初 7 名 ( 資源技術 2011.3 金属資源レポート 3 新(803) 事業紹介海洋地質学 造船工学などを専門とする外部有識者 5

事業紹介新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 4 系職員 5 名 事務系職員 2 名 ) でスタートし その後 官庁の船舶技官や民間企業 OB の造船船舶関連技術者 ( 電気 機関 船長 ) 等が着任し 現在は金属技術 金融支援本部長 特別顧問の下 13 名体制で新調査船や搭載機器の調達手続き 建造監督業務等に当たっている また この新調査船は 海底鉱物資源のみならずメタンハイドレートなどの調査にも活用できるものとしたことから 当機構内の R&D 推進部メタンハイドレート研究チームや技術調査部基礎調査課 物理探査船チームからも適宜 助言を得てきた さらに社団法人海洋水産システム協会 ( 白嶺丸 第 2 白嶺丸 の設計承認等も担当 ) には 造船コンサルタントとして調査船の詳細設計に対する技術的指導や建造現場での施工監督などの技術的支援を依頼している 3. 新海洋資源調査船の概要 (1) 船体の特徴 1 基本仕様海底鉱物資源の調査では (2) 項 1 表 10 に掲げるような最新の大型調査機器による海底のサンプリングやリモートセンシング調査などが必要である これらの調査機材を効率的かつ安全に運用するために 新調査船の基本仕様には次のような条件が織り込まれている 船上設置型掘削装置や海底着座型掘削装置をはじめとするサンプリング装置を多用するため 黒潮などの強い潮流がある場所や荒天時においても新調査船が長時間にわたり船位を一定の範囲内にとどまることができること 船底に装備する音響観測装置に影響がでないよう 航走時にプロペラ及び船体から発生する雑音を低減すること 低速で使用する曳航調査機器も多いため 安定かつ効率的な低速連続航行が可能であること 2011.3 金属資源レポート (804) 表 4. 調査機器調達アドバイザリーグループ委員名簿 各種調査機器の海面への投入 揚収の作業性を考慮し 作業甲板の海面からの高さを抑えること 水中に投下あるいは曳航する調査機器を運用するための観測補助設備 ( ウィンチ Aフレームなど ) を有すること 大型調査機器の運用 採取した岩石サンプル等の処理やデータの解析のため 十分な広さの作業甲板 サンプル処理室及び研究室を有すること 推進システムの信頼性及び冗長性確保のため 主発電機 4 台と推進電動機 2 台による電気推進を採用し 1つの装置の故障が運航障害にならないようにすること 調査業務の安全性確保のため MODU コード ( 移動式海底資源掘削船構造設備規則 (2 項参照 )) 及び日本海事協会 (NK)B 級自動船位保持設備 (3 項参照 ) を取得すること 観測時の安全性を担保するため 船体の動揺を抑えるアンチローリングタンクを有すること ライフサイクルコストの最適化( 建造 就役 維持 修理にかかるコストの低減が目的 ) のために 例えば需要負荷状況により発電機関の運転台数を制御して燃料費の削減やメンテナンスの容易さ及び調査機器の設置 修理 追加 換装を容易とすこと NOx 二次規制の先行適用 バラスト水処理装置の採用 生活排水 ( グレイウォーター ) 貯蔵機能の採用 新調査船の主仕様を表 5 に示す 表 5. 新海洋資源調査船の主な仕様 ( 敬称略 ) 委員名 所 属 荒井 晃作 ( 独 ) 産業技術総合研究所地質情報研究部門海洋地質研究グループ 主任研究員 井上 朝哉 ( 独 ) 海洋研究開発機構海洋工学センター先端技術研究プログラム高性能無人探査機技術研究グループ技術研究主任 薦田 靖志 住鉱資源開発 資源調査本部試錐部長 斎藤 洋男 深海資源開発 資源調査部 主席技師長 皿田 滋 ( 独 ) 産業技術総合研究所知能システム研究部門 主任研究員 月岡 哲 ( 独 ) 海洋研究開発機構海洋工学センター 応用技術部 探査技術グループ グループリーダー 徳山 英一 ( 国 ) 東京大学大気海洋研究所海洋底科学部門 海洋底地質学分野 教授 福井 勝則 ( 国 ) 東京大学大学院工学系研究科 准教授 松本 勝時 元深海資源開発 資源調査部 上級調査員 村山 信行 深海資源開発 資源調査部次長 山崎 俊嗣 ( 独 ) 産業技術総合研究所地質情報研究部門地球変動史研究グループ長 山冨 二郎 ( 国 ) 東京大学大学院工学系研究科 教授 全長 118.3m 幅 19.0m 深さ 9.2m 総トン数 約 6,200t 航海速力 15.5kt 航続距離 約 9,000 海里 最大搭載人員 70 人 ( 乗組員 調査員 )

新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために ② 船体及び調査観測関係 船 体 新調査船の完成予想図 図2 に示すように船体の 形状は 船体前部に居住区及び研究室を配置し 船体 の中央から後部にかけて広い作業甲板がある特徴的な 姿 専門的には 長船首楼付一層甲板船 と呼ぶ と なっている 現在の世界の海洋調査船では 第2白嶺 丸 のように船体の中央に居住区画を配置するものも 多いが 新調査船のような船型は石油掘削 調査船や 石油リグ等に物資の補給あるいは設備の設置作業等を 行う作業船に多いタイプである 図2A. 新海洋資源調査船の完成予想図 二つの姿を持つ調査船 図2B. 新海洋資源調査船の完成予想図 二つの姿を持つ調査船 2011.3 事業紹介 また 以下に船体の各部門別に詳細を紹介する 金属資源レポート 5 805

事業紹介 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 船首船底部は球状船首 バルバスバウ と呼ばれる 突き出した構造を持っており 船首付近での波の発生 を抑える効果を持ち これにより船体への波による抵 抗 造波抵抗 を軽減させると共に船で発生する泡が 音響機器へ影響を与えないようにしている また バ ルバスバウの後方には2組のトンネル型 船体横に孔 が貫通するタイプ のスラスターと昇降旋回式 360 旋回が可能で かつ昇降して船体内に格納可能なタイ プ のスラスターを装備する 一方 船尾部分の船底はバトックフロー船型 平ら な形状 をしており 2基のアジマス推進器 360 旋 回が可能 や船の直進性を向上させるためセンタース ケグと針路安定フィン ヒレのような形状 が設置さ れる また 停船状態や低速航走状態にて長時間のサンプ リング調査や観測作業を行うことから 船体動揺を軽 減するためのビルジキール 船底部に装着する細長い ヒレ状の板 及び減揺タンク アンチローリングタン クとも呼ばれタンク内の水を揺れに合わせて移動させ ることにより動揺を低減させる を装備する この結果 耐航性能としては 最大風速 15m/s 有義波高3mの 気象海象条件下で 船体の横揺れを5度以内 縦揺れ を2度以内 上下揺れを 1.5 m以内 いずれも片振幅 に押さえることが可能である 船体中央部にはムーンプール 船体中央に設置され る開口部 を配置し 大型のつり下げ型調査機材の投入 揚収が可能である また ムーンプールの船底部と作 業デッキレベルにはそれぞれ2枚の蓋からなる扉を装 備しており 巡航時やムーンプール作業等の状況に応 じて扉の開閉 観音開き が可能である また 新調査船ではこのムーンプールを利用して船 上設置型掘削装置 取り外し可能 による掘削作業を 予定している 作業の安全性の確保や事故による影響 を最小限にするために 国際海事機関 IMO が定め る掘削船の設計 構造及び安全措置に関する基準であ る MODU コード 移動式海底資源掘削船構造設備規則 という安全基準に基づいた船体設計が行われている 居住区画 研究室等 船は 全8層 図3 から成り 後部の作業甲板部 は第3層 C甲板 となっている 船楼部の最上階に 操舵室 図4 と各種の観測やウィンチ操作を行う第 1研究室 図5 を配置しており 特に第1研究室は 後部作業甲板の作業状況が直接視認できるように船尾 方向に向けて配置されている 主要な研究室は 各種 のサンプリング試料の持込や調査機器へのアクセスを 容易にするため作業甲板レベル C甲板 に配置した また 第1研究室からC甲板まではエレベーターを設 置している 380m2 を超える研究室には 機器固定用ボルト穴 ケーブルホールなど可搬式研究機材への対応も考慮さ れている 研究室の区分及び用途を表6に示す 内底 図3A. 居住区画 研究室等 6 2011.3 806 金属資源レポート

の探査 開発を加速するために 図 3C. 居住区画 研究室等 2011.3 金属資源レポート 7 新海洋資源調査船の建造につい(807) 事業紹介図 3B. 居住区画 研究室等 て 海洋資源

事業紹介 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 図4. 操舵室 図5. 第1研究室 表6. 研究室の区分と用途 また 食堂 調理室はDデッキ 研究員や乗組員の 居室はB C E Fデッキに配置し 特に 70 名を収 容可能な食堂については 大人数の会議室やレセプシ ョン会場としても使用できるように配慮した配置と装 備を備えている 大型の機器を格納する機関室 ウィ ンチ室は上甲板下に配置される 船内 LAN システム 新調査船では専用の LAN システムを構築しており 信頼性 安全性を考慮し用途別の系統に区分し 一般 調査員 観測の3つのネットワーク系統とそれらを結 ぶサーバー系統の4つで構成される 一般系統は 主に乗員が使用するネットワークで航 海情報の入出力 船内外通信管理等に利用する 調査員系統は 主に調査員 研究員が使用するネッ トワークである 観測系統は 研究室で使用するネットワークで 観 測計器及び音響機器等のデータ入出力管理を行い 主 に研究 作業関連に利用する また この LAN システムの画面 機能としては 船内情報表示 航法専用画面 各種レポート作成機能 航海プロット 航海計画作成 データ検索 予備品管理 8 2011.3 808 金属資源レポート 定時ログ等があり 多くの機能を乗船者に提供するこ とが可能である ムーンプール 船体中央部のムーンプールでは船上設置型掘削装置 海底着座型掘削装置やパワーグラブをはじめとする大 型調査機材の運用が可能である ムーンプールの開口 部の大きさは 7.5 m 7.5 mを確保し 新規開発の大型 海底着座型掘削装置 掘削能力 50 m 後述 の投入 揚収が容易に行える仕様となっている さらに 船体動揺時も 吊り下げ型の調査機器を安 全に揚げ降ろしするため ムーンプール上部 内部には ハンドリングタワー ガイドレール付の把持 はじ 装置が装備される ムーンプール上に設置するハンド リングタワー 図6 は 1本の大型主脚と2本の補 助脚による3本脚構造で全高が 16 mもある巨大なもの であるが 取り外しが可能であり 調査内容に応じて 船上設置型掘削装置と換装して使用する タワーの横 左舷側 にはコントロールキャビンが 5.5 mの支柱上に設置されており ハンドリングタワー のガイド装置やウィンチ類の操作 監視が可能である

図6. ムーンプールハンドリングタワー 図7. Aフレームクレーン 作業甲板 ムーンプールより後部の作業甲板は木甲板とし 可 搬式機材を固定するための埋め込みボルト穴を多数配 置した また 海底着座型掘削装置やパワーグラブ等 の大型調査機器を状況に応じてムーンプールとAフレ ームの両方で使い分けるために 作業甲板にはレール を敷設し 2台の電動油圧式大型移動台車 大6 6 m 小 5.5 4.6 m によりムーンプールとAフレーム 間で機器の安全な移動を可能とした 図8 さらに 作業甲板については 各種調査機器の海面 への投入 揚収の作業性を考慮し 海面からの高さを 3mに抑えることとした 図8. 作業甲板 クレーン類 2011.3 金属資源レポート 9 809 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために Aフレームクレーン 一方 海底着座型掘削装置やパワーグラブ等の吊り 下げ型装置やサイドスキャンソナー等の曳航型の調査 機器については船尾からも運用するため 船尾に大型 の起倒式Aフレームを装備する 図7 Aフレームは 電動油圧駆動であり フレームのクリア幅は約 10 m クリア高さ約 11 mで 耐荷重は振出観測時 50t 静 荷重 起倒動作時 20t 動荷重 と大型の調査機器 を安全に運用可能な仕様となっている ま た A フ レ ー ム か ら は 38.1mmφ 24.6mmφ 16mmφ の3種類のケーブル ワイヤーを使用するた め シ ー ブ が 多 数 装 備 さ れ る さ ら に 38.1mmφ 24.6mmφ の大口径のケーブルについてはウィンチと シーブの配置に工夫があり 通常のAフレームでは起 倒作動時にフレームの振出位置によってつり下げるケ ーブルの繰り出し長が変化してしまうが 新調査船の Aフレームでは起倒作動時にもケーブル繰り出し長が 変化しない構造となっている さらに上述のように 38.1mmφ 24.6mmφ のケーブルについては ムーン プールハンドリングタワーでも使用するため Aフレ ームからの架け替えが可能な構造となっている 事業紹介 監視カメラはハンドリングタワー両舷上部に設置され コントロールキャビン内のジョイスティック操作によ りカメラを下側全周の任意の方向に向けることが可能 となっている ま た 船 尾 A フ レ ー ム で も 使 用 す る 38.1mmφ 24.6mmφ 16mmφ の3種類のケーブル ワイヤー 後 述 についてはハンドリングタワーにもシーブ 滑車 が装備されており ウィンチコントローラーにより荷 重や繰り出し / 巻き込みのスピード制御が可能である

事業紹介 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために ウィンチ クレーン類 各種の調査機器を海中に投入又は曳航するために 新調査船では 10 セットのケーブルを使用する 表7 このため作業の効率性と安全性を最大限にするため それぞれのケーブルに専用のインバーター制御方式の 電動ウィンチを装備する 10 台のうち No.1 5 ウィ ンチは 船体動揺を吸収するオートヒーブコンペンセ ート機能及びオートテンション機能付となっている なお ROV 用ウィンチのみ 電動油圧式である 特に No.1 3 のウィンチからのケーブル 38.1mm φ 5,000 m 24.6mmφ 5,000 m 24.6mmφ 10,000 m については Aフレームとムーンプールで付け替 えて使用可能なように 両者に導けるシーブが配置さ れている 一方 調査や機材の取扱いに使用するクレーン類は 作業甲板の全域で機器の取扱いや移動が円滑にできる ように配置されており 最大のものは右舷後方に設置 される 20 トン中折れ式クレーンで 18 mのリーチを持 ち ムーンプール周辺からAフレーム手前までの広い 範囲をカバーして作業が可能である 図8 また 左 舷後方側には 7.5 トン中折れ式クレーン 15 mリーチ を配置し 20 トン中折れ式クレーンでカバーできない 左舷最後方部での作業等に使用する 船尾のAフレームの両舷側には それぞれ 11 mの伸 縮可能なブームを持つ2トンの作業クレーンを配置し 曳航式の反射法地震探査や重力調査等に使用する各種 機器の揚収 投入作業に使用する 表7. ケーブルの種類 ウィンチ類 10種類のウィンチ /ケーブルシステム 船底音響ドームと雑音低減対策 船首船底部にはドームを設け マルチビーム音響測 深装置 ナロービーム表層断面探査器などの音響観測 装置を配置する これらの装置による調査を可能とす る た め 水 中 放 射 雑 音 は 船 速 10kt で 60dB 12kHz 以下にすることを設計目標とした このため新調査船 では プロペラ形状の最適化 発電機関の2重防振 機関室その他の外板への制振材の採用 気泡が船体に 回り込みにくい船体形状の設計などの水中放射雑音対 策を取っている 一般的に 推進器による雑音やムー ンプールの設置により静粛性を確保することは困難を 極めるが 新調査船は高い定点保持能力を持つ推進器 とムーンプールを有しながら 大水深対応のマルチビ ーム音響測深装置やナロービーム表層断面探査器を運 用できる高い静粛性を有した高性能な調査船であり 世界的に見ても例がない ③ 機関部及び電気部 推進方式 新調査船は電動機駆動による電気推進船であり 第 2白嶺丸 のようにディーゼルエンジンで直接プロペ ラを回転させる方式と異なり ディーゼルエンジンに 10 2011.3 810 金属資源レポート 直結させた発電機により インバーター制御の電動機 でプロペラを回転させて船の推進力を得る この方式 はプロペラの回転数の制御が容易で操縦性が良く ま た振動が少ない等のメリットがあるため 調査船向き の推進システムである さらに使用電力の負荷に応じ て4系列の発電機関の運転台数を制御することで 効 率的 経済的な運用が可能なパワーマネジメントシス テムを備えている また エンジンで直接プロペラを 回転させる方式では船体におけるエンジンの設置箇所 に制約があるが 電気推進方式ではエンジン 発電機 セットの設置箇所は自由にレイアウトすることが可能 となり 調査船の用途に合わせた最適な船体の設計が 可能となる 近年建造される世界の海洋調査船の多く が この電気推進システムを採用している 主機関 新調査船の発電 推進システムの諸元を表8に示す ディーゼルエンジンと発電機は船体中央の船底部の 区画に格納され 前述したように発電機関の2重防振 機関室その他の外板への制振材の採用により 音響調 査機器への雑音の影響を最小限にするように配慮され ている

船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 表 8. 新海洋資源調査船の発電 推進システムの諸元 主発電機関( ディーゼルエンジン ): 最大出力 2,635kW 720min -1 4 基 ( 補助発電機関 : 最大出力 860kW 900min -1 1 基 ) 主発電機 :AC6,600V 60Hz 2,450kW 4 基 新( 補助発電機 :AC450V 60Hz 800kW 1 基 ) ( 非常発電機 :AC450V 60Hz 250kW 1 基 ) 2011.3 金属資源レポート 11 推進電動機( プロペラ駆動用電動機 ): 船尾アジマス推進器 3,200kW 2 基 バウスラスター( トンネル式 )790kW 2 基 バウスラスター( 昇降旋回式 )820kW 1 基 下 ( 最大 5ノット程度 ) に置かれることが多く 掘削 Positioning System)) 装置による岩石コア掘削調査のように海上の一点に留 新調査船の船尾に搭載するアジマス推進器 2 基は まる調査を行うために強力な定点保持能力が必要にな 360 の水平旋回が可能となっている ( 図 9) プロペ る 現在の 第 2 白嶺丸 では定点保持能力が小さい ラの形式は 4 翼固定ピッチの大直径 低速回転型ハ ため これらの海域における調査は難航を極めるもの イスキュープロペラである これは翼の後退角が大き となっている このため 新調査船は表 9に掲げる強 いプロペラで 翼を回転させた際に発生する気泡を減 力な定点保持能力を有しており 黒潮の潮流下でも船 少させることが可能である また船首にはトンネル式 体を規定の範囲内に留めての調査 観測が可能となっ バウスラスター 2 基及び昇降旋回式バウスラスター 1 ている また DPS は 日本海事協会 (NK 2) が定 基を装備しており 船尾のアジマス推進器と合わせて めるB 級自動船位保持設備の性能を満足するもので 自動船位保持装置 (DPS) により総合制御される これは信頼性 冗長性確保の観点から船の動きに関連 現在 我が国周辺で海底熱水鉱床の徴候が確認され する発電機 プロペラ ポンプ 遠隔操作等のシステ ている地域は 伊豆 小笠原列島や沖縄トラフの周辺 ムにおいて いずれの一つが損傷したとしても位置保 海域であり これらの海域はいずれも黒潮の強い潮流 持能力が喪失しない設備となっている 図 9. アジマス推進器 ( 船尾船底部 ) 表 9. 新調査船の定点保持能力 定点保持能力および気象海象条件 項目 条件 1 条件 2 最大風速 15m/s 有義波高 3m 潮流 5ノット ( 船首方向からのみ受ける ) 5ノット 位置保持精度水深の3% or 半径 30mの大きい方 水深の3% or 半径 50mの大きい方 *) 自動船位保持装置 (DPS) は NK B 級自動船位保持設備を取得する ( 2 ) 日本海事協会 (NK) は 国土交通省所管の財団法人で 船級や品質システムに関する諸規則の制定やそれらの規則及び国際条約などに基づいて船舶および海洋構造物に関する検査や船舶の安全管理に関する品質システムの審査など 各種の業務を行う組織 (811) 事業紹介海洋資源調査( プロペラ及び自動船位保持装置 (DPS:Dynamic

事業紹介新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために12 ( 安全関連設備 ) 新調査船ではより安全な運航 調査のために以下のような設備を導入している 船舶の安全に関する国際条約及び日本国の船舶安全法を満足する全世界的な海上における遭難安全システム (GMDSS) 航海関連設備として ジャイロコンパス レーダー ( 衝突予防援助装置付 ) 音響測深機 AIS( 船舶自動識別装置 ) DGPS 受信機 ( 衛星航法装置 ) 等 電子海図情報表示装置(ECDIS): 本装置は 2012 年 7 月 1 日以降 設置義務が生じるものであり 電子海図 (ENC) 上に 各種レーダー情報をはじめ 船位 方位 船速などの航海情報を1つのスクリーン上に表示し 安全で効率的な航行をサポートするシステム 暗視機能付探照灯: 夜間の調査活動中 周辺の障害物 ( 船舶を含め ) の確認を闇夜でも人間の目で直接に正確に視認できるため 安全な調査活動が確保される 入退室管理システム: 舷門や船体外面部に面した扉 操舵室 機関室等重要箇所の入退室を管理することで不審者の侵入阻止やテロ対策を強化する ( ライフサイクルコストの最適化 ) ライフサイクルコストの低減を目指すシステムとなっており かつ 将来の保守点検が行いやすい仕様を導入している 船内 LED 照明化 : メンテナンスフリー ( 寿命が従来の蛍光灯に比べ6 倍以上 ) であり 莫大な量の灯器の保守点検等船内作業の省力化となる また 省エネルギー ( 必要電力が従来の蛍光灯に比べ約 1/8 程度 ) であり 排ガス低減と発電機関の燃料油の節約に寄与する なお LED 照明適用範囲は操舵室 研究室 甲板照明等を除いた全室 ( 機関室等も含む ) であり 我が国では初の試みである 高耐久性部材 器具等の採用: 諸管装置 手すり 支柱 階段等の錆びやすい箇所にステンレス材を多用する等 耐久性のある部材や器具等を採用することにより 将来の保守点検を少なくし ライフサイクルコストの低減を図る ( エコロジー対策 ) 環境へ配慮するための仕様として 以下のものを導入している 2011.3 金属資源レポート (812) 電源周波数変換装置: 近年 排ガス規制により 港湾内で停泊中の船舶の発電を抑制し 陸上からの受電が強制される方向にある ( 釧路港で平成 22 年 5 月から試験的に実施し 順次全国に適用される見込み ( 国交省北海道開発局 )) 特に新調査船の特殊性を勘案し 安定した電源の質 ( 船内電源は 60Hz) を確保するために陸電設備として電源周波数変換装置 ( 関東地区 50Hz 電源 船内電源と同じ 60Hz 電源に変換 ) を装備する なお 通常は停泊基地に陸上保管とするが 必要により船上にも搭載して他港での利用も可能としている 太陽光発電装置: 太陽光エネルギーを電気に変換し 船内需要電力の補助とする 変換された電力分の発電機関の燃料油の節約と排ガスの低減に寄与する 船内 LED 照明 との同時採用による相乗効果が期待される 航海船橋甲板 ( 操舵室 ) の屋根にあたる羅針儀甲板に太陽光パネルは設置される ( 図 2) 4 船名及びファンネルマーク等 a. 船名 ( 図 10) 新調査船の船名については これまでに運航してきた 白嶺丸 / 第 2 白嶺丸 の名称が マンガン団塊 海底熱水鉱床などの調査をはじめ南太平洋諸国 12 か国での海底鉱物資源調査 (SOPAC) や大陸棚調査等を通じて海洋調査の分野では世界的に広く知られていること また 海底熱水鉱床である小笠原海域ベヨネーズ海丘の 白嶺鉱床 伊是名海穴の Hakurei site 及び南極の 白嶺海山 の名称も 白嶺丸 / 第 2 白嶺丸 に由来して付けられたことなどから これらを踏襲 継承し 白嶺 ( はくれい ) としたいという当機構の関係者の強い思いが 関連する有識者 学会 団体等からの意見によって支持され 機構幹部によって最終案として採択し その後 経済産業大臣により決定された 白嶺丸( 昭和 49 年 3 月竣工 ) の元々の由来は 建造時に親しみやすい名称が必要として新聞紙上で公募し 最終選考の結果 日本を代表する富士山をイメージする 白嶺丸 と命名 ( 昭和 48 年 5 月 ) されたものである b. ファンネルマーク ( 図 11) 化粧煙突のファンネルマークは 白嶺丸 第 2 白嶺丸 で採用された赤丸 ( 日の丸 ) に白で富士山を形取ったものであるが 新調査船もこのファンネルマークを踏襲することとした

事業紹介 c. 船体カラー 船体カラーは 海面に接する喫水部分に深海をイメ ージする濃紺を 船体部には船名 白嶺 の白を ま たその白地に JOGMEC または JAPAN の頭文字の J と空の色をデザイン化したブルーのラインを施すこと とした 2 搭載調査機器の概要 ① 調査機器の選定経緯 新調査船へ搭載する主な調査機器は 新海洋資源調 査試験船調達委員会において調査対象資源や目的につ いて検討され 調査手法とともに決定されたものであ る 具体的には 海底熱水鉱床やコバルト リッチ ク ラストといった海底鉱物資源を対象とした調査だけで なく 環境調査やメタンハイドレート調査も可能とす る調査船とするために 様々な調査機器を搭載するこ ととなった 表 10 に搭載調査機器とその使用目的を示 す 表10. 新調査船に搭載する主な調査機器と使用目的及び対象 調査項目 音響調査 物理探査 海底観察 サンプリング 調査機器 マルチナロービーム音響測深機 MBES ナロービーム表層断面探査機 n-sbp サブボトムプロファイラー サイドスキャンソナー SSS 極深海測深機 船上重力計 船上3成分磁力計 曳航式プロトン磁力計 二次元反射法地震探査装置 ファインダー付き深海カメラ FDC 遠隔操作無人探査機 ROV 船上設置型掘削装置 海底着座型掘削装置 ファインダー付きパワーグラブ FPG 有索自航式深海サンプル採取システム NSS その他 ドレッジ フリーフォールグラブ スペード コアラ マルチプルコアラ ピストンコアラ ドレッジバケット 採掘要素技術試験機 岩石処理 分析装置 環境分析装置 使用目的 詳細海底地形図作成 海底面近くの地質構造の把握 堆積物の層厚把握 海底面の詳細構造把握 画像化 海底面からの高度を把握 地下の地質構造把握 地下の地質構造把握 火成岩分布 地下の地質構造把握 火成岩 変質帯分布 比較的表層付近の地下の構造把握 堆積物 BSRの把握 海底面 鉱床の賦存状況の観察 海底面 鉱床の賦存状況の観察 作業 サンプリング 最大水深2,000mにおいて掘削長400mのコア採取 最大水深3,000m 6,000m における50m 20m のコア 採取 数字は新型 内は従来機 最大水深6,000m 3,000m における海底面の試料採取 数字は6本爪型 内はシェル型 最大水深4,000mにおける任意の場所における海底堆積物 等の試料採取 海底の状況に合せた試料採取 実海域における運用環境下での試験データの取得 採取試料のカッティング 薄片作成 コアの分析 記録等 採水試料等の前処理 分析 保管 2011.3 金属資源レポート 13 813 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 図11. ファンネルマーク 図10. 船名

事業紹介新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 14 これらの調査機器を適切かつ円滑に調達するために 前掲のとおり 平成 21 年 9 月に 新海洋資源調査船に係る調査機器調達アドバイザリーグループ を設置した 以下の調査機器については アドバイザリー委員からの助言等を基に 調達機器の要求仕様を作成した後 公募方式又は一般競争入札によって機種を選定した a ) 音響調査機器 : マルチビーム音響測深装置 ナロービーム表層断面探査器 (n-sbp) サイドスキャンソナー 極深海測深機等 b ) 物理探査機器 : 二次元反射法地震探査装置 船上重力計 船上 3 成分磁力計 c ) 掘削装置 : 船上設置型 ( 最大掘進長 400m) 海底着座型 ( 最大掘進長 50 m) d) 採掘要素技術試験機 : e) 遠隔操作無人探査機 (ROV): f) ファインダー付きパワーグラブ (FPG): 2 調査機器の概要新調査船に搭載する調査機器は 主にその利用目的 装置機種別に a. 音響調査機器 ( 海底の地形図 断面図 分布図など基礎図面作成 ) b. 物理探査機器 ( 海底面下の地質構造の把握 ) c. 海底観察機器 ( 海底面の状況 鉱床の賦存状況 産状の確認 ) d. サンプリング機器 ( 岩石 鉱石及び生物 海水試料等の採取 ) e. その他支援装置 ( 特殊な調査機器及び船内分析装置等 ) に分類することができる 本項では それぞれの機器の特徴 主な仕様等を後掲の表形式で記載した 新調査船の最大の特徴は 様々なサンプル採取に秀でていることである 搭載調査機器の中で特筆すべきものは 選択搭載可能な船上設置型及び海底着座型の 2 種類の掘削装置である これまで 深海底鉱物資源の探査 特に海底熱水鉱床の探査を行う際には 第 2 白嶺丸 に搭載する海底着座型掘削装置 (BMS) を使って ボーリングコアを採取している 今後の海底鉱物資源の開発検討においては 資源量評価を行う観点から BMS が最も重要な機器となっている 船上から海底に着座させサンプリングが行えるという 装置の機動性が大きな特徴である BMS ではあるが 一方で 1 装置の構造上 海底の着座位置 斜面の傾斜等に制限があり 資源量評価を行うために欠かせな 2011.3 金属資源レポート (814) いグリットボーリング ( 地形に関係なく等間隔で行うサンプリング ) が困難である 2 掘進長が最大 20m であり 海底下の鉱床の連続性を把握するには 十分な性能を有していない 3 掘進方式が 長さ2m のコアバレルを1 本毎に取り換える方式であるため 掘削深度が深くなると取り換えに多くの時間を要すること といった点が課題として挙げられていた このような背景を基に 従来の BMS の能力をより向上させた新型の BMS の導入を進める一方で 新調査船にムーンプールを設置し 船上から海底までドリルパイプをつなぎ直接掘削する船上設置型掘削装置を導入し 2つの掘削システムを搭載可能とする特徴的な船体デザインとすることが新海洋資源調査試験船調達委員会において決定され 両システムは 設計 製作が進められた a. 音響調査機器新調査船に搭載する音響調査機器は 海底地形図という調査の基本データを作成するためのデータを取得するとともに 広範囲の調査範囲から対象範囲を絞り込むために必要なデータを取得する装置である 音響調査機器は 様々な波長の音波 ( 超音波 ) を海底面に向け発振し 反射してきた音波 ( 超音波 ) を受信 処理することで 海底面や海底下の状況を可視化する装置の総称で これらの中には単純な水深を計測する測深機や海底の状況を立体的に連続して可視化するマルチビーム音響測深装置などがある 音響調査機器は 1 目的に応じた周波数の音波 ( 超音波 ) を海底に向けて発振する発振器 2 海底又は海底下の地層などで反射したデータを捉える受波機 3 受信したデータを処理し さまざまな音響データとしてイメージングする処理装置から構成されている 装置の運用方法の違いにより 調査地域を広くマッピングするためのマルチビーム音響測深装置 (MBES) 及びナロービーム表層断面探査器 (n-sbp) の発振器と受波器は 新調査船の船底前方音響ドームに設置され 新調査船が移動航行している際も連続使用可能としている なお サイドスキャンソナー (SSS) は より解像度を高めたデータを取る特性から 新調査船から発振器と受信器が格納された筺体を海底面近くで曳航する方式となっている 搭載する音響観測装置は次のとおりである

資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために Depth profiler 塩分 水温 圧力 ( 深度 ) センサー ) 対地速度ナロービーム表層断面探査器Kongsberg 社製 (EM710 及び EM122) ルチビーム音響測船底ドームの受発信器 ( 第 2 白嶺丸の例 ) 深装置(MBES )イドスキャンソナー処理結果例 Teledyne Benthos 社製 (C3D) SSS 本体(SSS )処理結果例 (n-sbp )ATLAS 社製 (PARASOUND) 船底ドームの受発信器 処理結果例 機能海底に向けて扇状に音波を発信し 海底からの反射信号を処理して海底の地形図を作成する装置 主な仕様 1 EM710: 高分解能海底地形マッピングシステム周波数 :70~100kHz 最大発信間隔 :25Hz 測深点数 :800(400 2 スワス (*)) 測深範囲 :3~2,000m 分解能 :1cm 2 EM122:11,000m 測深仕様海底地形マッピングシステム周波数 :12kHz 最大発信間隔 :5Hz 測深点数 :864(432 2 スワス (*)) 測深範囲 :20~11,000m 分解能 :1cm 2011.3 金属資源レポート 15 新海洋(*) スワス (Swath): 芝刈りの刈り幅の意 海底を面的に測深することを意味する サ 機能海底表面の地質や性状および海底地形を音波により調査する装置 取得したデータを処理し 海底画像が得られる 主な仕様周波数 :100kHz ビーム幅 ( 水平 ): 送受信 1.25 度ビーム幅 ( 垂直 ): 送信 60 度 受信 70 度最大探知距離 : 片側 500m 耐圧 :3,000m その他センサー : 表層断面探査器 (SBP) CTD(Conductinity Temperature 機能海底表層下の地質構造を音波により調査する装置 主な仕様 1 次周波数 ( 高周波 ):18-33kHz( 可変 ) 2 次周波数 ( 低周波 ):0.5-6kHz( 可変 ) 2 次周波数 ( 高周波 ):36-40kHz( 可変 ) 測深範囲 :10-11,000m 透過深度 ( 往復走時 ):200m 以上測深分解能 :6cm 測深精度 :0.2% あるいは水深の 0.2% の大きい方堆積層分解能 :15cm 事業紹介(815) マ

事業紹介 b. 物理探査機器 物理探査機器は 海底面下の地質構造を把握するこ とを目的とした 重力値 磁力値といった地球物理学 データを捉える装置や ハイドロフォンを内蔵したス トリーマーケーブルを曳航する二次元反射法地震探査 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために Micro-g LaCoste社製 Air-Sea System II 装置などからなる 音響調査機器が主に海底面の平面 的なデータを捉えるのに対し 物理探査機器は海底面 下の垂直方向の地質構造を捉える 搭載する物理探査機器は次のとおりである 船上重力計 機能 海底の重力値の変動を精密に測定することで海底の地下構造を調査する 装置 主な仕様 測定レンジ 12,000mgal 精度 海上 1.0mgal 分解能 0.01mgal ドリフト誤差 3mgal/month サンプリング周波数 1,000Hz 重力計本体 船上3成分磁力計 有 テラテクニカ製 川崎地質 製 機能 地球の地磁気を3成分 水平分力 偏角 鉛直分力 で測定する装置 主な仕様 成分数 3成分 磁場測定範囲 ±70,000nT 直交度 ±20分 測定精度 ±200nT 温度安定性 0.5nT/ 分解能 1nT プロトン磁力計 機能 海底の地磁気の変動を精密に測定することで海底の地下構造を調査する 装置 主な仕様 測定範囲 30,000 70,000nT 分解能 0.01nT 測定間隔 10秒 20秒 1分 曳航ケーブルを巻いたウィンチと 磁力計センサー部 GeoMetrix社製ストリーマーケーブル 及び深度調整器 二次元反射法地震探査装置 ストリーマーケーブル 及びウィンチ 深度調整器 Sercel社製音源 音源 エアガン 本体 SeaMap社製音響制御装置 制御画面例及び本体 16 2011.3 816 金属資源レポート 機能 地層境界面の深度や形状を調べるために 海上で圧縮空気 エアーガン によって地震波を発生させ 地下で反射して戻ってきた地震波をストリ ーマーケーブルに内蔵したで受振器で受けて解析する装置 主な仕様 ①ストリーマーケーブル チャンネル数 96chソリッドケーブル チャンネル間隔 12.5m及び6.25m ②エアガン エアガン圧力 2000psi エアガン チャンバー 容量 250 105 30cu.inch

洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 音響観測や物理探査により ある程度調査範囲の絞 り込みを実施した後 海底の地質 鉱床の状況を TV カメラ等により視覚的に把握する調査機器が 海底観察機器である 海底観察機器としては ファインダー付き深海カメ フ深海資源開発 製ァインダー付き深海カメラ(FDC )FDC 本体 Perry Slingsby 社製 (Triton XLR 125HP) 遠隔操作無人探査機(ROV )ROV 本体 d. サンプリング機器新調査船において 最も重要な位置付けとなるのがサンプリング機器である 対象とする海底鉱物資源のタイプや目的により使い分けられるよう 各種のサンプリング機器が搭載される予定である サンプリング機器には 海底熱水鉱床 コバルト リッチ クラスト マンガン団塊などの鉱物資源の採 (817) ラ (FDC) のように新調査船から装置を曳航しながら 連続的に海底の状況を TV 画像として撮影する機能を有すものの他 遠隔操作無人探査機 (ROV) のように海底の状況を船上で直接 TV 画像として観察しながら作業も可能な装置も搭載する予定である 搭載する海底観察機器は次のとおりである 2011.3 金属資源レポート 17 新海 機能 TV カメラやスチールカメラを搭載した装置をケーブルにより曳航し 連続的に海底面をリアルタイムで観測する装置 主な仕様稼働水深 :6,000m 搭載機器 : 高感度 TV カメラ デジタルスチルカメラ CTD( 電気伝導度 温度 深度計測装置 ) 音響ピンガー ( 発音体 ) 機能船上からの遠隔操作により海中を自由に動き回ることができ 搭載された TV カメラによりリアルタイムな海底観察が可能で マニュピュレータ ( ロボットアーム ) により試料採取や様々な作業を実施することができる装置 主に サンプリング機器による掘削地点等の選定のために使用する予定 主な仕様稼働水深 :3,000m 寸法 (mm):2,626(l)x1,719(w)x1,970(h) 空中重量 :3,400kg ペイロード :150kg 高感度 TV カメラ搭載マニュピュレ - ター (2 本 ) を搭載サンプルバスケットを取り付け可能 取に特化したサンプリング機器や 海底の岩石や堆積物等を採取する汎用的なサンプリング装置の他 海底熱水鉱床等の将来の開発に備えた環境影響調査等に用いるネット類も搭載することとしている 本調査船に搭載する装置の中でも特筆すべきものは 海底着座型掘削装置及び船上設置型掘削装置である 搭載するサンプリング機器は次のとおりである 事業紹介c. 海底観察機器

事業紹介新海洋資源調査船の海建底造着に座つ型掘い削て装 置海洋資源の探査 開発を加速するために 18 (818) 日油技研工業 Williamson & Associates 社製 (BMS BMS50M) BMS 現有機 BMS50M のイメージ図 2011.3 金属資源レポート 機能 BMS(Benthic Multi-coring System) は平成 8 年 (1996 年 ) 世界に先駆けて JOGMEC( 旧金属鉱業事業団 ) が開発 第 2 白嶺丸 に導入された小型有索式掘削システムで 新調査船に搭載予定の現有機は 3 号機目にあたる また ワイヤーライン型の掘削方式を採用し より効率的な掘削が可能な新型掘削装置 (BMS50M) も調達予定であり 新調査船では 20m 掘削可能な現有機と 50m 掘削が可能な新型の 2 台を搭載予定である 主な仕様 1 BMS: 現有機稼働水深 :6,000m 掘削長 :20m コア径 :44mm 寸法 : 幅 3.6m 奥行き 4.4m 高さ 5.5m 空中重量 :4.8t( コア満載時 ) 2 BMS50M: 新型稼働水深 :3,000m 掘削長 :50m コア径 :63.5mm (HQ サイズ ) 寸法 : 幅 5.7m 奥行き 5.2m 高さ 6.8m 空中重量 : 約 15t( コア満載時 ) 特徴新型の BMS50M は AC3,000V 3φ 60Hz の電力を供給する 38.1mmφ の光 動力複合ケーブルにより接続され 海底に着座する水中部本体と 船上から本体をコントロールする船上部で構成される 水中部は電動モーター 油圧ポンプからなる動力ユニット パワースイベル等の掘削ユニット ドリルビット インナーチューブ等の掘削ツールを格納するマガジン状のラック ( ストレージマガジン ) などから構成される 本体の下部の 3 脚の接地脚が独立に垂直方向に伸縮することで 1m の段差 30 度の平面傾斜地に設置可能 また BMS50M は 新調査船のムーンプール及び船尾の A フレーム両方での運用が可能で ムーンプールでの運用の場合 ムーンプールタワーのガイドレールに取り付けられたカーソルと呼ばれる BMS を固定する金具が取り付けられるため 多少の波浪がある海象条件下でも 安全に投入 回収が可能となっている

海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 船上設置型掘削装置Fugro Seacore 社製マリンドリル R140 Fugro Seacore 社の R100 船上設置型ボーリングの設計イメージ図三菱重工業 製ァイ(6 本爪型及びシェル型 ) ンダー付きパワーグラブ(FPG ) 機能船上部に掘削機本体を設置し ムーンプールから掘削ロッドを海底に降ろして海底下を掘削する装置 掘削対象の土質条件に併せて 掘削ツールが変更可能である 圧力保持掘削ツールを搭載することで海底下に賦存するメタンハイドレート試料の採取が可能 主な仕様稼働水深 : 最大水深 2,000m 掘削能力 :400m 新掘削システム : ライザーレス パワースイベル駆動 特徴マリンドリルのドリルデリックは 掘削機器及びダウンホールツール ( ドリルパイプ内を通過する各種サンプル採取 測定装置類 ) を 安全かつ問題なく広く安定したサンプリングプラットフォームに装備し 動揺補正装置を備えた堅固なツインタワー形式の装置で 新調査船の中央部にあるムーンプールに合せて設置される 本マリンドリルシステムは MODUコード ( 国際海事機関 (IMO) が定める移動式海底資源掘削船構造設備規則 ) に準拠するため デリックについては DNV(Det Norske Veritas AS) 及び NK( 日本海事協会 ) の設計 製造の承認を得た認定証を取得する予定である 通常 石油掘削など大規模 大深度の掘削の場合 ライザーと呼ばれるドリルパイプと掘削泥水が通る二重構造のパイプを船底から海底面に設置された噴出防止装置まで取り付ける ライザー掘削方式 が採用されるが 本システムの場合 掘削深度が400mであり ガスや石油の噴出の可能性が極めて低いことから ライザーレス掘削方式 つまり ドリルパイプだけを用いた掘削方式を採用している また ドリルパイプによる掘削動力には 15kNmのトルクを持つパワースイベルを使用する なお 船上設置型掘削装置を使用している間は 他の調査機器が使用できないため 船上設置型掘削装置は 取り付け 取り外しが容易に可能な設計の下 製作されている また デリック本体も含め 各種装置類は 40フィートコンテナに格納できる構造となっており 輸送等が容易なシステムとなっている フ 機能 6 本の鉄の爪や 大きなシェル型のバケットを油圧で開け閉めし 海底の試料を採取する装置 船上で観察しながら試料を採取することが可能 主な仕様 16 本爪型稼働水深 : 水深 6,000m 空中重量 : 約 6.2t 採取容量 : 約 1m 3 2シェル型稼働水深 :3,000m 空中重量 : 約 6.3t 採取容量 : 約 2m 3 2011.3 金属資源レポート 19 (819) 事業紹介

事業紹介新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 20 有索自航式サンプリング装置フリーフォールグラブ(FC )三井造船 製 (NSS) NSS 本体 2011.3 金属資源レポート (820) 機能大口径コアラー マルチプルコアラ ボックスコアラー, 採水器等の各種サンプリング機器と CTD 等のセンサーを取り付け ハイビジョン TV カメラで海底状況を確認しながら 任意地点でサンプリング及び計測ができる装置 主な仕様稼働水深 : 水深 4,000m 空中重量 : 約 1.5t 機能自由落下式のグラブにより海底表層の試料を採取する装置 主な目的は)マンガン団塊の採取 スペ 機能ードコアラ(SC )も採取することができる ピストンコアラ海底の未固結堆積物 ( 約 50cm 50cm) を直方体状に採取する装置 マル 機能チ内径 74mm 長さ600mmのアクリル製の採泥管を8 本有し 海底の未固結プ堆積物を攪乱することなく柱状に採泥できる装置 また海底直上の海水ルコアラ(MC ) 機能鉄製の筒 (20m) を海底面に突き刺し 地層を柱状に採取する装置

SBE-9plus CTD採水器 機能 電導度 Conductivity 水温 Temperature および圧力 深度 Depth センサーを標準装備した採水器 船上からリアルタイム観測及び任意水 深からの採水を行うことが可能 主な仕様 稼働水深 6,000m 採水容量 12リットルニスキン採水ボトル36本 機能 船上でネット深度をモニターしながら任意の水深でネットの開閉を行い プランクトンを採取する装置 主な仕様 稼働水深 6,000m 曳網開口面積 4m2 ネット枚数 5枚 ネットメッシュ 0.1mm 0.3mm 米国 B.E.E.S社製 MOCNESS-4 機能 水平引きでプランクトンや稚魚を採取する装置 曳航中の水深 ろ水量 ネット開閉状態をメモリーに記録できる 主な仕様 稼働水深 2,000m 曳網開口面積 4m2 ネット枚数 5枚 ネットメッシュ 1/8インチノットレス 鉛直多層式ネット 鶴見精機 製 VMPS 水平多段式ネット e. その他の装置 新調査船には 海底鉱物資源探査のための調査機器 以外にも 様々な装置の搭載を予定している 採掘要素技術試験機は 将来 商業的開発が期待さ れている海底熱水鉱床の採鉱システムを構成する採掘 ユニットを開発するための技術的な基礎データを取得 することを目的としている 試験機が完成した後に 新調査船に搭載し 洋上での試験実施が予定されてい る また 新調査船のサンプリング機器で採取された各 種試料について 前処理 分析等を行う装置も多数搭 載する予定である 岩石等を適切に切断し 顕微鏡観 察用の薄片を作成する装置や 採取されたボーリング コアを非破壊で自動分析を行うコアロガーなどの他 環境調査で採取された海水や試料等を新鮮な状態で 速やかに船上で分析するための各種前処理装置 分析 装置等も搭載予定である 新調査船に搭載する主な分析装置類は次のとおりで ある 岩石処理 分析装置 大型岩石切断機 小型岩石切断機 薄片製造機 卓上半自動研磨機 薄片観察用偏光顕微鏡 コア ロガー 環境分析装置 培養用インキュベータ 低温 生物顕微鏡 実体 顕微鏡 標本撮影装置 クリーンベンチ 高速冷 却遠心機 超純水製造機 溶存酸素測定装置 オ ートアナライザー 冷蔵庫 冷凍庫 超低温冷凍庫 乾燥機 アルカリ度計 蛍光顕微鏡 塩分計 2011.3 金属資源レポート 21 821 新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために DB Sea-Bird社製 事業紹介 ドレッジバケッ ト 機能 ワイヤーの先端に付けたバケットで試料を採取する装置 主にマンガン 団塊を採取するのに用いる

事業紹介新海洋資源調査船の建造について 海洋資源の探査 開発を加速するために 22 4. おわりに近年 海底熱水鉱床をはじめとする海底鉱物資源が 新たな資源ポテンシャルとして世界的に注目を浴びている 平成 22 年 5 月には国連の国際海底機構において公海域における海底熱水鉱床の探査規則案が採択され それをうけて同年 5 月に中国 12 月にロシアが鉱区を申請した 平成 23 年にはコバルト リッチ クラストの探査規則案についても採択される見込みであり 採択後は各国の速やかな鉱区申請が予測される また 民間企業では カナダの Nautilus Mineral 社がパプアニューギニア沖で海底熱水鉱床の鉱区を取得し 平成 25 年以降に世界で初となる生産開始を目指して探査 生産技術開発を推進している かかる状況下の中 我が国としても海洋基本法 海洋基本計画 海洋エネルギー鉱物資源開発計画等の成立という大きな流れを受けて ますます海底資源開発への期待は高まっている さらに平成 22 年 9 月に起きた尖閣諸島事件は単に近隣諸国との領土問題というだけでなく 国家にとっての海洋資源の重要性を明確に浮き彫りにした EEZ を含めた自国内の海底に海底資 2011.3 金属資源レポート (822) 源を確保することは 海外に頼らない我が国独自の資源を確保することを意味する 海洋資源元年ともいわれるこのような時期に 海洋資源調査のための最高のハードウェアとして 新調査船が平成 24 年 1 月末に竣工する この調査船を充分に活用し 新たな時代を切り開くのは人である 船の竣工までには 運航体制の整備 膨大な最新鋭の調査機器のオペレーションの訓練 海洋資源探査の専門家の育成など これを使う人的資産としてのソフトウェアもきちんと準備していきたい 最後に 新調査船の調達を事業化して頂いた経済産業省関係者に厚くお礼申し上げる また 本調査船の調達事業を極めて短期間で進めることができたのは 新調査船調達委員会並びに調査機器調達アドバイザー委員 さらには資源産業 海洋産業 研究機関 学会等の専門家 有識者 関係者の方々に適切かつ貴重なご指導 ご助言を頂いた賜である 本誌面をお借りして深く感謝の意を表するとともに 今後ますますのご指導 ご鞭撻を賜るようお願いする次第である (2011.3) ( 文責 : 塩川智 大岡隆 神田慶太 )