傷寒・金匱方剤解説

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はじめに 連携パス とは 地域のと大阪市立総合医療センターの医師が あなたの治療経過を共有できる 治療計画表 のことです 連携パス を活用し と総合医療センターの医師が協力して あなたの治療を行います 病状が落ち着いているときの投薬や日常の診療はが行い 専門的な治療や定期的な検査は総合医療センターが

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第41回 漢方を服用すれば夏もまた涼し(漢方)

現代薬と漢方薬 上手な使い方       蓮村 幸兌

Transcription:

傷寒 金匱方剤解説 137 しー 26 方剤名 生薬構成および製法 服用方法 音順 傷寒論 金匱要略条文 読みおよび解訳 その他 しー 26 小柴胡湯 柴胡 ( 苦平 )8g 黄芩( 苦平 )3g 人参( 甘微寒 )3g 甘草( 甘平 )3g 半夏( 辛平 )5g 生姜( 辛温 )3g 大棗 ( 甘平 )4g 上の7 味を水 480mlを以って 240mlに煮詰め 滓を去り 再び煎じて 120mlとなし 1 日 3 回に分けて温服する 弁太陽病脈証併治中第六第 69 条 ( 傷寒論 ) 傷寒 5 6 日 中風 往来寒熱 胸脇苦満 黙黙として飲食を欲せず 心煩喜嘔或は胸中煩して嘔せず 或いは渇し 或いは腹中痛み 或 つかさどいは脇下痞硬し 或いは心下悸し 小便利せず 或いは渇せずして身に微熱有り 或いは咳する者は小柴胡湯を与えて之を主る 太陽病の表邪が少陽経に伝わったもので 少陽経は身体の外側 ( 側頭部 耳 側頸部 脇腹 大腿部外側 ) を循り 腑である胆につながっている 少陽経に邪気が内攻すると腑である胆も邪気を受け 胆が邪気を受けると すぐ近くにある胃や肺が邪気を受け易い 解訳傷寒 或いは中風が 5~6 日も経つと 外邪が少陽に伝入する半表半裏の位置で正邪が互いに争うことになる 正気が勝てば邪気を陽まで退けて発熱が生じる 邪気が勝り陰まで侵入すると悪寒する この様に邪気が浅く表まで戻りかけたり 深く裏に傾いたり揺れることにより往来寒熱 ( 寒気と発熱を繰り返す ) になる この往来寒熱は定時的反復ではなく不定時に発生し 無熱の時もある 参考太陽病の発熱 悪寒は同時に現われて繰り返すことは無い 瘧病の時は 寒熱が定時的にしかも発作的に繰り返す 胸脇苦満 ( 胸や脇腹が張って苦しい ) は 邪気が少陽経脈を犯して経気の流れを滞らせたために発生し 主に右側の側胸部から季肋部が張って 重苦しい感じになる 胸満は表証で 腹脹滿は裏証である 黙黙 ( 黙りこくって ) は 少陽経の胆は肝と表裏関係にあり 肝は胆と同様に疏泄を主り 疏泄により肝気は伸び伸びと体の中に広がり 気持ちが明るく穏やかになる この肝気が邪気によって欝滞すると表情が沈んで話したがらなくなる ( 参考癇癪の場合は 肝気が流れず固まって爆発したものである ) この肝 胆の気が長く停滞すると 火と化して肝火 胆火となり 煩躁 怒り易くなるといった症状が現われると共に 胆火が隣の脾胃に影響すると 胃気の働きが失調して食欲が無くなる 参考陽明病では 胃熱による胃の機能失調により食べられなくなる胃気が下がらず上逆すれば 吐き易くなる 更に胆火が脾胃に強く横逆すれば 腹中痛が現われる ( 木剋土 ) また胆火が上炎して心陽が乱れると心煩が現われる 胸中煩 は 胆火が上炎して胸中に停滞したもので これは心煩より局在性の不明瞭な軽い症状である 胃に影響が及んでいなければ イライラはあるが吐き気は無い 口渇は胆火により津液を損傷したもので 咽乾よりは症状が強いが 大煩渇 の陽明病証とは発生機序が異なる 参考陽明病の 大煩渇 は 陽明経は陽気が盛んな所であり 邪気が入り込むと熱邪に化熱して 正邪の争いが激しく起こるので強く発熱する この発熱により発汗が生じ 津液が消耗されるので 激しい口渇が現われる 脇下痞鞭は 邪気の停滞が肝に及んだもので 脇下に有形の痞鞭が現われる これは胸脇苦満よりも更に発展したものである 心下悸は 邪気が少陽三焦経に侵入すると 三焦の水の流れが悪くなり 水飲が三焦に停滞し この水飲の邪が下焦 ( 膀胱 ) に蓄水すれば 膀胱の気化作用が失調して小便不利になる これらの心下悸 小便不利は 病勢が一層進んで より裏の陰証に近くなったものである 邪気が表に近い時には 寒邪が多いので不渇になり 微熱になる また寒邪が表に近く肺への停滞が残っておれば 咳が出る 胃は体表や手足に陽気を送る働きがあり もし胃が邪気を受けると胃熱となり 体表や手足に送る陽気が病的に多くなって陽明内実証となり 悪寒は無くなり 発熱だけになる 小柴胡湯は 以上の様な半表半裏証に対して 昇と下降 開と閉 袪邪と扶正の作用を全て具えている この治療法は発汗 下法などと異なり 清透 疎通の作用によって病邪除去の目的を果たしているので 和解 法と言っている 小柴胡湯は 半表半裏の熱症状の病理があれば 急 慢性を問わず種々の病に応用できる 小柴胡湯の柴胡 黄芩は 少陽経腑の胆の熱を清し 肝胆の気滞を疏泄し また胃熱も取り去る 半夏 生姜は 下降 発散により体内の欝結を外へ発散させ 嘔気を下降させる 人参 甘草 大棗は 補脾の作用を持ち 正気を助け 邪気を除去し 病が太陰に移行するのを防ぐ 小柴胡湯の加減方胸中が苦しいだけで吐き気のない場合には 小柴胡湯 -( 半夏 人参 ) + 栝楼根 5gとする 咽を乾かして水を欲しがるものには 小柴胡湯 - 半夏 +( 人参 1.5g 栝楼根 4g) とする 脇下の痞鞭 ( 痞えて堅い ) が治らない場合には 小柴胡湯 - 大棗 + 牡蠣 4gとする 小便の出が悪い場合には 小柴胡湯 - 黄芩 + 茯苓 4gとする 渇が無くて外に少し熱のある場合には 小柴胡湯 - 人参 + 桂枝 3gとして 覆って少し汗を取ってやる 咳をする者には 小柴胡湯 ( 人参 大棗 生姜 ) +( 五味子 3g 乾姜 2g) とする 以上はいずれの場合でも小柴胡湯を最初用い それでも各その病状に対し効果が不十分な時に行なう方法である 小柴胡湯証新古方薬囊によれば 身に熱ありて 食を欲しがらず 又その熱の工合が初めゾクゾクと寒氣し 寒氣終りてカーッと熱が出て来るものあり 又朝の中は熱無く 午後に至りて熱出で 又寒気は知らざるものあり 或ひは咳出で 或ひは頭痛して胸中塞がりたるが如く 又は胸の脇より背中へかけて張りたる如き氣持ちがあって 又は痛みのあるもの 又は前の證にて嘔き氣あるもの 風邪などにて発汗剤を服用し数回汗を取り 寒気 頭痛などは取れたるも身熱が取れず 元氣なく ただうつらうつらとして臥し食べ物を欲しがらず 時々渇して水を欲し 或ひは咽乾かず 心中煩して芯から眠ることが出来ず 便通の無いもの 汗を取りたると云ふも 洋薬のアスピリン アミノピリン等で汗を取りたるものには所謂漢方的な表証は抜けきらざるものあり この場合は 未だ柴胡湯を用いるには早く 先ず葛根湯 麻黄湯等にて更に汗を発するのが宜しい これにて大概は解するものなり もしそれでも解せざる際には 柴胡湯の證を調べて与えるべきである 或ひは風邪の後で 高熱は既に去りたれどもさっぱりとせず 飲食進まず 毎日午後に至れば多少の寒氣と発熱あり 或ひは寒氣はせぬこともあり 胸中が痞え塞がって 或ひは脇腹の辺りから背中にかけてチクチクと痛みがあり 或ひは左 或ひは右 或ひは両脇にかかるもの 小児など突然嘔吐して発熱し うつらうつらと眠るもの 耳の中が痛み 又は耳の下が腫れて痛み 気分甚だ勝れず 此の場合発熱するものもあり 又は熱ありて寒氣を伴うものもあり 又は熱の無いものもあり 又風邪等で発熱して 耳の痛むものに 葛根湯 桂枝湯などにてよく治るものもあり 甚だ柴胡の證にまぎれ易し 注意あるべし しかし気分勝れず 食を欲しがらざるものには柴胡湯の證が多し これは その見分け方の一つの手立てなり 又風邪など引いていなくて 急に耳が痛み出して 柴胡にて応ぜざるものもあり しかもその證はすこぶる柴胡に似たり この場合は小建中湯を与うべし 大人 小児を通じて甚だ効のあることあり 黄疸にて腹が痛み ムカムカと嘔き氣あるもの 大病が一旦軽快して後少し身体に無理をなし更に発熱するもの 婦人が風邪で熱がある時に月経が来去して その爲に熱が血に絡んで抜けず 毎日一定の時間になると 先ず寒氣が来たり 次いで発熱し その症状があたかも瘧の如くして癒えないもの 婦人産後に 外氣に触れて発熱して 手足ほてりて頭痛するもの 産後便通なくして吐き氣ありて食し難きもの 本方はなかなか用いる所多くして 極めて興味深き薬方なり 以上に列ねたるが如きは ほんの一例に過ぎざるなり と記されている 弁太陽病脈証併治中第六第 7 条 ( 傷寒論 )

がたしなすで 太陽病十日以去 脈浮細にして臥を嗜む者は外已に解する也 設し胸満脇痛する者は小柴胡湯を与え 脈ただ浮の者は麻黄湯を与う 解訳太陽病に罹って 10 日を過ぎてこの方 脈が浮いて細く 横になっていたがるものは 表の邪が既に解したのである もしその場合に胸満脇痛のあるものは 小柴胡湯を与えてやりなさい 脈が浮いて ( 細の無いもの ) いるだけのものには 麻黄湯を与えなさい 太陽病に罹って 10 日を過ぎて表証が治ってくると 脈は浮でも落ち着いて穏やかになるが しかし治ったばかりの時には体力が回復していないので 脈は力が無く細であり まだ正気不足なので 静かに寝てばかりいる もしこれが脈沈細で嗜臥 ( 寝たがる ) ならば 悪化して少陰病になってしまった状態になる 胸満や胸脇痛があるのは 少陽病になってしまったもので 脈は弦となる 小柴胡湯が主治する 脈が浮のままで細が無いなら 身痛もあるはずで 麻黄湯を与えなさい 弁太陽病脈証併治中第六第 70 条 ( 傷寒論 ) 血弱く気尽き 腠理開けば邪気因って入り 正気と相搏ち 脇下に結ぼれ 正気分争し 往来寒熱 休作時有り 黙黙として飲食を欲せず 臓腑相連れば 其の痛み必ず下る 邪高く痛み下し 故に嘔せしむる也 小柴胡湯之を主る きつそうりよしょうきあいうしょうききゅうさくじあいつらなくだひく気尽き 腠理 因って 正気 相搏ち 正気 休作時 相連れば 下る 痛み下し 主 つかさどる 解訳血は営であるから 身体内を養う営気が弱り循りが悪くなり 皮膚が温まらず 外を守る気の衛気が虚してしまうと 表 即ち皮膚の張りがなくなって 腠理が開きっぱなしになってしまい そのために病邪がそれによって身体内に入って 正しい営衛の気と邪気とが正面衝突して それが陰陽の境である脇下に結ぼれてしまい 身体内の正気と 邪気とがその分野を争う様になり そのために悪寒と発熱とが行ったり来たりするのである 陽不足は悪寒であり 陰不足は発熱であるから 陰陽のバランスがくずれて起こると考えてもよい そしてその発作に一定の時があり 気が沈んで何となく吐き気があり 飲んだり食べたりしたがらなくなるのである 邪気は 経に沿って臓腑に入って痛みを生じ 胸から脇下の方に下ってくる 初め邪は上焦の方にあるが やがて下って腹が痛むのである 邪気が腹に入ると 正気と争って気が上逆して嘔が起こるのである 小柴胡湯が主治する 弁太陽病脈証併治中第六第 71 条 ( 傷寒論 ) おわもっ 柴胡湯を服し己りて渇する者は陽明に属する也 法を以て之を治せ 解訳柴胡湯を服し終わって 半表の邪が取れて 半裏の邪熱が裏に入って渇を生ずるのである 邪熱が陽明に入ったのであるから 原則どおりに陽明病を治する薬方で治療するべきである 弁太陽病脈証併治中第六第 72 条 ( 傷寒論 ) 病得て 6 7 日 脈遅浮弱 風寒を悪み手足温 医 2 3 之を下し 食する能わず 而して脇下満痛 面目及び身黄 頚項強り小便難の者は柴胡湯を与うれば 後必ず下重す 本渇して水を飲み嘔する者は柴胡湯を与うるに中らざる也 穀を食する者は噦す にくくだあたしかこわばあたえつ悪み 下し 食する能わず 而して 強り 中らざる 噦す 解訳病に罹ってから 6 7 日経って 脈が遅く浮いていて弱く 悪風と寒を悪み 手足が温かいのは 未だ病が表に残っている それなのに医が 2~3 回下してしまった しかし脈は遅であるから裏が冷えている 下したために胃が益々虚冷してしまって食べられなくなってしまった そして脇腹が満して痛み 顏や目から身体まで黄色くなり 頚やうなじまでが強わばり 小便が出にくいものに柴胡湯を投与すると 後で必ず腹がしぶり下痢を起してしまう また前々からの咽が乾いている者が 水を飲んで嘔く様な者には 柴胡湯を与えても効果が無いのである この様な人が食べ物を食すると 胃が虚冷しているからシャックリが出てくるのである 方剤決定のコツ の注釈 脈が遅く浮いていて弱く は 遅は寒であり 浮は病が表にあり 弱は虚の現われである 悪風と寒を悪み は 陽虚の現われであり 手足が温かい は陰虚が原因している 脇腹が満して痛み は 病が少陽と太陰にあって起こる証である 顏や目から身体まで黄色くなり は 熱が表に在り しかも血虚する証である 頚やうなじまでが強わばり は少陽の証で 小便が出にくい は 陽微と血虚とに原因がある これらを総合して考えてみると 裏の虚寒であると考えられる 本渇して水を飲み嘔する すなわち前々からの咽が乾いている者が水を飲んで嘔くは 血虚 内熱によって起きる渇であり 嘔するのは飲んだ水を消せられず 血虚より生ずる内熱は実熱ではなく虚熱であるから水を消せられず 水を飲み過ぎると 嘔を生じる そして裏寒を生じることになり 裏寒は表虚につながり もしこの様な時に柴胡剤を服用すれば 内の陽気が更に虚して 穀を食すれば噦を発するに至るのである 弁太陽病脈証併治中第六第 73 条 ( 傷寒論 ) こわばつかさど 傷寒 4 5 日身熱悪風 頚項強り脇下満 手足温にして渇する者は小柴胡湯之を主る 解訳寒に侵されて 4~5 日経って 身が熱し また寒気がして 頚 ( 耳の下 ) やうなじがこわばり 脇腹が張って 手足が温かく咽の渇くものは小柴胡湯が主治する この条文は前条文とよく似ているが 前条文は脈が遅浮弱で 裏寒と表虚があって起きているのであり この条文は病邪が半表半裏にあって 熱を持っているために起きているので この点が大変違うのである 方剤決定のコツ の注釈傷寒に罹って 4 5 日目頃 この時期は熱が裏に入り易い太陰の時期で 何かの変化が起きると熱が裏に入るけれども 表になお邪気が残る 故に体が熱くなり 悪風が起こるのであるが悪風は表解しないのである 半表半裏に邪熱がかかりて上焦に於いては頚項強を発し 少陽の部に於いては脇下満を生じ 熱が内に入って手足温と渇を生じる 弁太陽病脈証併治中第六第 74 条 ( 傷寒論 ) じゅうまさいつかさど 傷寒 陽脈渋 陰脈弦 法当に腹中急痛すべき者には 先ず小建中湯を与え 瘥えざる者には小柴胡湯を与えて之を主る 解訳寒に侵されて 陽脈である寸口が渋っていて 陰脈の尺中が弦である場合は 法則として腹中が急に痛むはずである 寸口の渋は 陽気の不足であり 尺中の弦は 寒で裏の寒がある 先ず脾胃の虚を補い 虚労を治する小建中湯を与えてやるべきである もしそれでも治らないものは 少陽の熱を治する小柴胡湯を与えて主治するべきである 病を治する場合には 先ず虚を先に治するのが順序である 方剤決定のコツ の注釈腹中痛に対して 脾虚から起こる小建中湯と 半表半裏から起こる小柴胡湯とを区別して論じている 弁太陽病脈証併治中第六第 75 条 ( 傷寒論 ) ただあらわすなわこれことごとそな 傷寒 中風 柴胡の証ある時は 但一証を見せば便ち是 必ずしも悉くを具えず 解訳傷寒であったり 中風であって 柴胡湯の証が幾つかある時に ただ一つの証だけがあればそれで良い 必ずしも全部揃わなくても良い しかしながら柴胡湯は 半表半裏に熱がなくては使えないのである 弁太陽病脈証併治中第六第 76 条 ( 傷寒論 )

凡そ柴胡湯の病証にして之を下し 若し柴胡の証罷まざる者は復た柴胡湯を与う 必ず蒸蒸として振い 却って発熱し汗出でて解す おおよくだもやまむしむしふるかえい凡そ 下し 若し 罷まざる 復た 蒸蒸として振い 却って 汗出でて解 解訳一般に柴胡湯の病証があった場合 柴胡湯証は発汗 吐 下は禁忌であるのに 中焦 下焦に熱を持って便秘していたことから 下剤で下したことにより 半表の熱が裏の方に入り込んだのである ところが未だ半表に病邪が残っているために 柴胡湯を服用させた場合で 深い半裏の方の熱が強いから 発汗する場合には 蒸蒸として振い立って発熱して汗が出て解するのである 一般に柴胡湯の病証があったのに 他の下剤で下した場合に もし柴胡湯の証が未だ在るものは 柴胡湯をやり治してやると 必ずむしむしと奮い立って発熱して汗が出て解するのである これは柴胡湯証の場合には 発汗 吐 下は禁忌であるが 恐らく中焦 または下焦に熱を持って 便秘していたのであろう それで柴胡湯証がありながら下剤を服用させて下したら 半表の熱は裏の方に入り込んだのである ところが未だ半表に病邪が残っているために 下した後でも柴胡湯の証がある そこで改めて柴胡剤を服用させたのである ところが半裏の方が熱が強いから 汗が出る場合 蒸蒸として奮い立って 深い熱が出る症状を現わしたのである 弁太陽病脈証併治中第六第 78 条 ( 傷寒論 ) 太陽病 過経十余日 反って 2 3 之を下して後 4 5 日 柴胡の証乃お在る者は先ず小柴胡湯を与う 嘔止まず心下急 欝欝微煩する者は未だ解せずと為す也 大柴胡湯を与えて之を下せば則ち癒ゆ かえくだなあいまげすなわ反って 下して 乃お在る 未だ解せず 則ち 解訳太陽病の状態が 10 余日も続いているのは 発汗すべきであるのに 2 3 回下しをかけてやった その上更に 4 5 日経って柴胡湯の証がなおあるものは 先ず小柴胡湯を与えてやりなさい それでも嘔が止まらずに 心下部の辺りが引き締まったり痛んだりする急迫症状があって 身体に熱がこもって熱く 少し苦しがるものは 未だ治ろうとしていないのである 大柴胡湯を与えて下してやれば それで治るのである 太陽病が 10 余日経過すると 大抵邪気が裏に入って陽明裏実証になっていると思い まだ陽明裏実になっていないのに誤って 2~3 回下して治らなかった訳で この様な誤治を行なうと 一般には正気が衰えて裏が冷えて津液不足を伴う少陰病などに陥る しかし本条は 幸いにして正気がなお旺盛で 誤下しても変証を起こさず 表邪が半表半裏に入り込んだ柴胡の証があったと思われる その後 4 5 日経っても柴胡の証が残っている場合は 先ず半表半裏の熱が半表の方に入り込んだものに作用する小柴胡湯を与えると 和解して胸脇苦満 心煩 喜嘔なども治る それでも嘔が止まらずに 心下部の辺りが引きまったり 痛んだりする急迫症状があって 身体に熱がこもって熱く 少し苦しがるものは 半表半裏の熱が半裏の方に入り込んだもので 未だ治ろうとしていないのである 大柴胡湯を与えて下してやればそれで治る 最初下したために 表が虚して半表半裏に表邪の熱が入り込んでしまったが その場合は主に半表の方に作用する小柴胡湯を服用させてみて その後半裏の方に作用する大柴胡湯を服用させて治すのである 大柴胡湯は 小柴胡湯証 ( 芯に熱があって食欲が無く 往来寒熱があって 胸から脇にかけて引きつりや痛み 咳 その他心煩 口渇などがある ) があって 嘔気や胃痛があり 心下が張って気持ちが悪い場合に用いる また応用として 常に食欲があって 下痢すると気持ちがよいという丈夫なタイプの胃腸病や肝臓病に用いる 弁太陽病脈証併治中第六第 79 条 ( 傷寒論 ) 傷寒十三日解せず胸脇満して嘔し 日晡所潮熱を発し 已りて微痢するは 此れ本柴胡の証 之を下して痢を得ず 今反って痢する者は医 丸薬を以て之を下したるを知る 之其の治に非ざる也 先ず宜しく小柴胡湯を以て外を解すべし 後柴胡芒硝湯を以て之を主る にっぽしょ日晡所 已 おわもとかえもっあらげのちりて 本 下して 反って 以て 非ざる 解すべし 後 主 げす つかさどる 解訳傷寒 13 日経っても治らず 病が続いて裏に伝変しようとしている時期で 胸が張って ( 胸脇苦満 ) 嘔吐があるのは少陽証であり 夕暮れになると身の中の方から熱がポーッと出て来る日晡所潮熱は陽明証であるので 少陽兼陽明裏実証で 半表半裏より裏証に偏っていて 正気が傷ついていない実証であるので 大柴胡湯を用いれば治るのに これを陽明証と誤って 辛熱の巴豆で出来た丸薬で瀉下したために 軽い下痢が続いているのである そして瀉下した後でも胃腸に熱がこもっているために発生する日晡所潮熱の陽明証も 胸脇苦満 嘔吐の少陽病の柴胡証も残っているので 軽い下痢はあっても正気は余り傷ついていない実証である しかし瀉下により その作用が残っていて 軽い下痢が続いているので 正気もやや傷めてしまっているもので 少陽陽明合病といえども 苦寒攻下薬の大黄が入った大柴胡湯では正気を更に傷めてひどくなる この様な場合は 先ず小柴胡湯を用いて和解により少陽の邪を取り去って その後に陽明潮熱を去るために 小柴胡湯 1/3 の薬量と穏やかな潤下剤の芒硝を合わせた柴胡加芒硝湯を用いて完治させる 芒硝は陰気を補い 津液を多くして胃腸を潤す 柴胡加芒硝湯証小柴胡湯証より一段と裏熱が強く そのために胃腸が乾燥している 午後になると必ず発熱し その後で下痢する 胸脇部の痛みや嘔気もある 悪寒はない 柴胡加芒硝湯証新古方薬囊によれば 芯に熱ある為午後に至れば微熱を発し その熱の後で必ず下痢を起こし 食欲がなく 身體がだるく唯うとうととし 或は胸中脇の下 ( 脇の下とは横腹の上のアバラ骨の附近を言う 腋下とは異なる ) などに痛み 又は重苦しき感じがあって 吐き気があり 又は吐く者 この証は幾日も高熱続きたる病人等に多いものである と記されている 弁太陽病脈証併治下第七第 17 条 ( 傷寒論 ) 婦人雑病脈証併治第二十二第 1 条 ( 金匱要略 )

婦人中風 7 8 日 続いて寒熱を得 発作時有り 経水適ま断つ者は 此れ熱血室に入ると為す 其の血必ず結す 故に瘧状の如く発作時有らしむ 小柴胡湯之を主る たまたた適ま断つ 主る 血室 ( 子宮 ) は 月経を主り 胎児を成長させる 衝脈は血海なり 肝は血を蔵す により 血液の供給と栄養があって血室は正常な月経と胎児の成長を主る 故に血室 ( 子宮 ) と衝脈 肝とは密接な関係がある 解訳婦人が風邪に侵されて 7 8 日経っても治らずに 引き続いて悪寒と発熱があり この悪寒と発熱が一定の時間に発作の様に起こる その時に たまたま月経があるはずであったのが来なかったのは これは熱が血室に入ったのである そしてその熱のために下るべき血が結ばれて マラリアの様に往来寒熱するのである この様な場合は小柴胡湯が主治する 経水 ( 月経 ) 断つは 風邪が血室 即ち厥陰経脈に入ったことを意味し このことは血室の血がそのために結するので 往来寒熱を起こす 月経中或いは丁度月経が終った時 或いは産後は血室 ( 子宮 ) が空虚になる この様な状況の所に 傷寒 或いは中風に罹り 7~8 日続いて 寒気と発熱が時間を期して起きるようになった これは 丁度その頃に毎月来るべき月経の予定日が過ぎても来ない者は 表証の邪熱が 血室 ( 子宮 ) の空虚に乗じて血室に侵入して血と結合して停滞したために 悪寒と発熱が交互に 1 日 1 回位づつ現われる瘧病の様な往来寒熱となったのである これは正気と邪熱の争いが少陽に影響したために生じたもので 正気が勝てば邪熱が表まで退けて発熱が生じ 邪熱が勝り陰まで侵入すると悪寒がする この様な時は小柴胡湯を用いて血室 ( 子宮 ) にある熱邪を除去し 少陽の流通を改善する 表証の熱邪が 血室 ( 子宮 ) の虚に乗じて血室へ侵入して血と結合して停滞すると 少陽に影響するために肝胆不利 気血不和も起こり 結胸の様な胸脇下満といった病証も生じる また血熱が心に影響すると 夜鬼を見る様なうわごとが現われる 心は血を主り 血と夜は陰に属する それ故に血熱が心に影響するのは夜であり すると意識はもうろうとして 鬼を見る様なうわごとを言うのである 昼間の精神状態はハッキリしている この様な場合も 熱邪は胃に侵入した陽明病では無いので 承気湯類で下してはならず 小柴胡湯を用いて血室 ( 子宮 ) にある熱邪を除去し 少陽の流通を改善する 方剤決定のコツ の注釈血室とは 肝臓とか子宮とか言われているが 一応 肝臓と考えた方がよいと思われる 肝臓の方が半表半裏とつながり易い 婦人の月経の予定日頃になると 体温が下がり 出血する その時期は血が虚に傾く その血の虚がある時に風邪を引き その熱が血に影響を及ぼして 邪熱が血にからまるのであるが その邪熱が血室に入って血と結ぼれると 小柴胡湯の証を起こすのである 血は 寒を得ればこごり 熱を得れば流れるが 熱大過すれば結を生ず よって下ること能わずとなる よって小柴胡湯で血熱の大過を取る 弁太陽病脈証併治下第七第 21 条 ( 傷寒論 ) 傷寒 5 6 日 頭汗出で微悪寒し 手足冷え 心下満 口 食するを欲せず 大便硬く 脈細の者は此れ陽 微に結すると為す 必ず表に有り復た裏に有る也 脈沈も亦裏に在る也 汗出ずるを陽微と為す たとえば純陰に結すれば復た外証有るを得ず 悉く入りて裏に在り 此れ半裏に在り 半外に在りと為す也 脈沈緊と雖も少陰病と為すを得ず 然る所以の者は陰 汗有るを得ざるに 今頭汗出ずるが故に少陰に非ざるを知る也 小柴胡湯を与う可し もし了了たらざる者は屎を得て解す かすかま微に 復た 亦 またよう 陽 びことごと微 悉く 雖 いえども 然 しかゆえんいあらべしる所以の 汗出ずる 非ざる 与う可し 屎 解 解訳傷寒に罹って 5 6 日経って 頭から汗が出て 少し悪寒がして 手足が冷え みぞおちの辺りが一杯に張って 口がパサパサして食べることが出来ず 大便が硬くて思うように出ないもので 脈が細い ( 多分沈緊が含まれているのではないかと思われる ) 者は 表熱が少し中に入って結ぼれたとするのである そういう場合には 必ず表証も現わし また裏証も現わすものである 脈が沈んでいるものは 病が裏にあるが 完全に裏に入ってしまえば汗が出ないはずであるが この場合は頭汗が出るのであるから陽気が少ないのである もしも陰にだけが結ばれているとするならば 外の証があるはずが無い その場合には 病邪がすべて裏に入ってしまうから頭汗が出るはずがないのである この場合は 病邪が半分ば裏にあって 半分ば外にあると判断されるのである であるから脈が細くて沈緊であっても 少陰病と断定することは出来ない なぜならば陰病であれば汗が出るはずは無いのに 今頭に汗が出ているから 少陰病では無いということが判る この様な場合は 小柴胡湯を与えてやるべきである もし小柴胡湯を服して具合はよくなったが それでもさっぱりしない時は 表熱は取れても裏の熱が取り切れていないのであるから 大便が出ると 裏の熱が取れてさっぱりと治るのである 弁太陽病脈証併治下第七第 22 条 ( 傷寒論 ) 傷寒 5 6 日 嘔して発熱する者は柴胡湯の証具わる 而るに他薬を以て之を下し 柴胡の証仍お在る者は復た柴胡湯を与う 此れ已に之を下すと雖も逆を為さず 必ず蒸蒸として振い 却って発熱汗出でて解す 若し心下満して硬痛する者は此れを結胸と為す也 大陥胸湯之を主る 但満して痛まざる者は此れを痞と為す 柴胡之に与うるに中らず 半夏瀉心湯に宜し そなしかもっくだなますで具わる 而るに 以て 之を下し 仍お 復た 已に 雖 いえどむしも 蒸 げす むしかえいげも蒸として 却って 出でて解す 若し 主 つかさどあたる 中らず 解訳傷寒に罹って 5 6 日経ち 吐き気が出て それから発熱するものは 柴胡湯の証が具わっているのに 柴胡湯以外の薬で下した場合 下したことによって 三つの証に分かれたしまったもので その一つ目は 他薬で下した後 未だ柴胡湯証が依然としてあれば もう一度柴胡湯を与えてやればよい これは他薬で下したけれども柴胡湯証が崩れていないから逆治とはならない 柴胡湯を与えると 必ず身体が蒸される様に熱くなり 発汗するために震えが来て熱を発して汗が出て治る 二つ目は 他薬で下した後で 心下より下腹部まで硬満して 痛みを起こすものは 下したために熱が内に陥ち込んで結胸になったのである この場合は大陥胸湯が主治する 三つ目は 他薬で下した後 ただ心下部が張るだけで硬くならずに痛まないものは 痞であって気だけが痞えているのであるから 柴胡湯証でもないし 結胸でもない 半夏瀉心湯がよい 参考傷寒に罹って 5~6 日経つと 病邪は太陽より少陽に伝入して 少陽証の吐き気 発熱があるから 柴胡桂枝湯または小柴胡湯を用いるべきであるのに 誤って下してしまうと 体質により 3 通りの転帰がある 1 正気が比較的旺盛な場合は 誤って下しても症状が変わらず 少陽証のままであり 正気が少し消耗しただけであるので 柴胡剤を服用させると 正気が快復し奮起して邪と激しく闘って 発熱 発汗して邪を追い払って病が治る 2 元来 胸膈から心窩部に痰飲の邪があると 誤って下したために 邪熱が内陥して 邪熱が少陽より更に深く入り 胸中で邪熱と痰飲が凝結して 胸膈部の気の流れが不通となり熱実結胸証になる すると心下部が硬くなり 膈内 ( 横隔膜下の心窩部 ) に圧痛 拒按 その他胸苦しく 口渇 発熱 時に便秘などの症状が現われる この様な熱実結胸には大陥胸湯を用いる 3 元来 脾胃気虚があると 誤って下したために 更に脾胃を損傷して虚寒が生じる この様な状況のところに 虚に乗じて内陥した熱邪と共に寒熱錯雑して心窩に滞って痞えた心下痞証になる ( 胃が冷えて 胸に熱がこもり 上下の陰陽の気が交流しなくなったために痞えが起こる ) この場合 心窩部は硬くはなく 圧痛もない 軽い腸鳴 下痢があることもある この様な時は半夏瀉心湯を用いる 弁陽明病脈証併治第八第 51 条 ( 傷寒論 )

とうかつかさど 陽明病 潮熱を発し 大便溏し 小便自ら可 胸脇満去らざる者は小柴胡湯之を主る 解訳陽明病で 潮熱を発して 大便がアヒルの便の様に軟らかく 小便は自然と変わりなく 胸や脇腹の張っているのが取れないものは小柴胡湯が主治する 陽明病で潮熱を発するのは 胃が実していて大便が硬く 小便の回数が多い この条文の場合は 潮熱があっても 大便が軟らかく 小便は自然と変わりないので 熱が胃に完全に入ったものではなく 水と穀を分けることが出来ないもので 邪熱が半表半裏にある証拠であるため 小柴胡湯を用いるのである 弁陽明病脈証併治第八第 52 条 ( 傷寒論 ) 陽明病 脇下硬満 大便せずして嘔し 舌上白胎の者は小柴胡湯を与う可し 上焦通ずるを得 津液下るを得て 胃気因って和し 身濈然として汗出で解する也 はくたいあた白胎 与う可 べくだよしゅうぜんいげし 下る 因って 濈然として 汗出で解する 解訳陽明病で 脇腹の下が硬くて張り 大便が出ないで 嘔き気があり 舌に白い苔があるものは小柴胡湯を与えるべきである 小柴胡湯を服用すると 胸の熱のこもりが取れて 身体が順調に循る様になって 胃気が調和して それによって体からしっとりと熱が出て治るのである 弁陽明病脈証併治第八第 53 条 ( 傷寒論 ) 陽明の中風は脈弦浮大にして短気し 腹都て満ち 脇下及び心痛み 久しく之を按ずれども気通ぜず 鼻乾汗するを得ず 臥を嗜み 一身及び面目悉く黄 小便難 潮熱有り 時時噦し 耳前後腫れ 之を刺せば小しく瘥ゆれども外解せず 病十日を過ぎ脈続いて浮なる者は小柴胡湯を与う 脈但だ浮にして余証なき者は麻黄湯を与う 若し尿せず腹満 噦を加うる者は治せず すべたしなことごとえつすこたも都て 嗜み 悉く 噦し 小しく 解せず 但だ 若し 解訳陽明の経が風に当てられると 脈は弦で 浮いて大きく 呼吸が早くて苦しく 腹全体が張って脇腹の下から心臓の辺りまで痛み 長い間腹や脇をさすっても気が通じないために 痛みや張りが治らずに 鼻が乾いて 汗が出ないで 横になりたがり 体全体から顏や目まで全て黄色になり 小便が出にくく 時々シャックリをする 耳の前や後が腫れているものを鍼してやれば少し良くなって軽くなるが 熱は取れない この様な病状が 10 日も続いて 脈が浮いているものは 小柴胡湯を与えてやればよい 脈がただ浮いて 裏の証の無いものは 小柴胡湯では治らないので 麻黄湯を与えるとよい ただし小便不利 腹満 シャックリは 麻黄湯では治らない 弁少陽病脈証併治第九第 4 条 ( 傷寒論 ) もとしょくあたいま 本太陽病解せず 転じて少陽に入る者は脇下硬満し 乾嘔して食す能わず 往来寒熱す 尚未だ吐下せず 脈沈緊の者は小柴胡湯を与 う 解訳元々風邪を引いて 太陽病が治らないうちに病邪が少陽の部位に入って行ったものは 脇腹が硬く張って 吐き気を催し食べることが出来ず 悪寒と発熱が交互に起こる様になってしまう その場合に 未だ吐いたり下したりせずに 脈が沈んで緊であるものは 小柴胡湯を与えるべきである 参考少陽病は 半表半裏に熱がこもった状態で 表証と裏の胆の病症が同時に現われる また少陽病は 太陽経や陽明経の熱が少陽経に伝わる 或いは少陽経が 直接外邪を受けて病むこともある また三陰経寒証の時 陽気が回復して少陽病証を現わすケースもある 少陽病症状として 口が苦い 咽喉が渇く 目がくらむ 脇下が硬くなって張る 乾嘔 食欲不振 往来寒熱などがある 弁厥陰病脈証併治第十二第 54 条 ( 傷寒論 ) 嘔吐噦下痢病脈証併治第十七第 17 条 ( 金匱要略 ) つかさど 嘔して発熱する者小柴胡湯之を主る 解訳嘔吐して熱が出るものには 小柴胡湯が主治する 厥陰肝経と 太陰肺経は連結しており 肺の濁陰に制せられた肝の熱欝が 発嘔 発熱を同時に引き起こす また少陽と 厥陰は表裏の関係で 病も交互に変化する 例えば少陽病が重篤になると厥陰病に転じることもあるし また逆に厥陰病が軽快して少陽病になることもある 厥陰病の症候の特徴に微熱 下痢 嘔逆があり これが少陽病に転じた症候が 嘔して発熱 である これも柴胡証の主証の一部であり 小柴胡湯を用いる 方剤決定のコツ の注釈半表半裏に熱があって嘔気があるもので 嘔くと体内の水分が少なくなる 水は身体を潤ほし 熱をさますので その水が少なくなると 更に発熱を起こし易くなるのではないかと思われる 弁陰陽易瘥後労復病脈証併治第十四第 3 条 ( 傷寒論 ) いおえたあとつかさどもっげもっげ 傷寒瘥已後更に発熱する者は小柴胡湯之を主る 脈浮の者は汗を以て之を解し脈沈実の者は下を以て之を解す 解訳傷寒の症状が一応回復した後になって更に発熱したものは 小柴胡湯が主治する この場合に 脈が浮いているものは汗が出て治るし 脈が沈んで実している場合には 大便が出て治るのである 婦人産後病脈証併治第二十一第 1 条 ( 金匱要略 )

問うて曰く 新産婦人に三病有り 一なる者痙を病み 二なる者欝冒を病み 三なる者大便難しとは何の謂いぞや 師曰く 新産血虚するに汗出ずること多く喜風に中る故に痙を病ましむ 亡血復汗し寒多きが故に欝冒せしむ 津液を亡い胃燥く 故に大便難し 産婦欝冒は其の脈微弱 嘔して食す能わず 大便反って堅く但頭汗出ず 然る所以の者は血虚して厥す 厥すれば必ず冒す 冒家解せんと欲すれば必ず大いに汗出ず 血虚下厥 孤陽上に出ずるを以ての故に頭汗出ず 産婦喜汗出ずる所以の者は陰亡びて血虚し陽気独り盛 故に当に汗出でて陰陽乃ち復すべし 大便堅く嘔して食す能わざるは小柴胡湯之を主る 病解し能く食し 7 8 日更に発熱する者 此れ胃実すると為す 大承気湯之を主る うつぼうがた欝冒 大便難し 喜 しばしばふう風に中 まさすなわよよ当に 乃ち 能く 主る 能く食し あたまたうしなあたかえる 復 亡い 食す能わず 反って 但 ただ 然 しかる所以 ゆえんかの 下 けついもっ厥 上に出ずる 以て 喜 解訳お尋ねしますが 産後直ぐに起こし易い病に 次の三つがある その一つは痙病である その二つは欝冒を病む その三つは大便の出にくいのを苦しむが どういう訳でしょうか? 師が曰われるには 産後すぐには 血が虚していて陰が虚してしまったために 陽が多すぎることが原因して熱がって汗がよく出る そのために 風に当たりたがるのである そこで体を冷やしたために 表が虚して痙病を病む様になるのである 血虚して貧血し その上に発汗をし熱を奪われて 表が虚して冷えが生じたために 気が頭部にこもって冒を病む様になるのである 血虚の上に 発汗して体液のムラを生じて そのために胃がカラカラに燥いて熱を持ち それで大便が出にくくなるのである 産婦が欝冒を病むと 脈が微かで弱くなり 表が塞がって 嘔いて食べられず 大便は反って堅くなり ただ頭からだけ汗が出る そうなる理由は 産後は 血虚して貧血しているから 血の循りが悪くなり身体が冷える 気血の循りが悪くなると 営血衛気が頭面に発達できなくなるので 必ず冒が起きるのである 冒を起こしている病人は 回復する時には大変汗が出るのである これは血虚して 下半身が冷え 裏位腎の命門の陽気が守位の陰を離れて 陽気だけが上に浮昇するから 頭から汗が出るのである 血である陰が少なくなって血虚し そのために陽気だけが盛んになってしまうから それで汗が出て陰陽の調和をするのである 産婦で欝冒している者で 大便が堅くて 嘔いて 食欲が無い者は 小柴胡湯で胃の陽気を回復すると 浮昇した命門の陽気も守位腎に復帰し 胃と腎が正常になり 血熱が鎮まると 全身から汗が出て病は治るのである 小柴胡湯を服用して病が回復し 食欲が出て来てよく食べられる様になったのに 7 8 日して再び熱が出て来たものは これは胃が実しているのであるから 大承気湯が主治する 痙病は 熱性病中に現われる病証で 身熱足寒 頚項反張 背反張 突然の口噤 頭が自然に動く 脈沈細あるいは強急などがある 痙病は 六淫 ( 風邪 寒邪 湿邪 火邪 燥邪 暑邪 ) の侵襲 化燥 化風によって起こる 熱が盛んで陰を傷り 更に誤って発汗吐下した重症なものは 痙を起こし易い 発熱無汗 反って悪寒するものを剛痙といい 発熱汗出で 悪寒しないものを柔痙という 婦人産後病脈証併治第二十一第 10 条 ( 金匱要略 ) そうじょくかしらただ 附方千金三物黄芩湯は婦人草蓐に在り 自ら発露し 風を得たるを治す 四肢苦煩熱頭痛する者に小柴胡湯を与え 頭痛まず 但煩 する者は 此の湯之を主る そうじょく草蓐に在 あかしらただり 頭痛まず 但 主 つかさどる 草蓐は 出産のための寝床のこと 発露は 着物をはいで身体をあらわにすること 解訳産後間もない婦人が 熱がって自然に着物をはいでしまって体をむき出しにして そのために風邪を引いて 手足がほてって苦しく 頭痛する者には小柴胡湯が主治するが もし同じ様な状況で頭痛せず ただ四肢苦煩 熱があって頭痛のしない者には 千金方に記載されている三物黄芩湯が主治するのである 産後の中風で 熱が血室に入ったのは 小柴胡湯が主治する 三物黄芩湯 ( 千金方 ) は 下焦の血熱が甚だしく脾陰を攻めると 脾胃の主る手足がほてり苦しむ 故に表証の頭痛はない 三物黄芩湯は 黄芩で血室の熱を 苦参で下焦の熱を冷まし 地黄で下焦の陰気を補い 血熱を去る ( 参照百合狐惑陰陽毒病第三第 9 条 ( 金匱要略 ) 陽病を現わした者には陰を養って病を治す ) 三物黄芩湯は 手足煩熱する皮膚病に卓効を奏することがある しばしば