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本論第 2 章では 静脈怒張を高めるために臨床で用いられている方法を明らかにすることを目的とし 看護師 309 名を対象にアンケート調査を行った その結果 最もよく用いる方法としてガイドラインが推奨するマッサージ 温める タッピングを選んだ人は それぞれ 20.7% 20.1% 15.9% であった このうち マッサージとタッピングは物品が不要で手軽に短時間で行える方法で 多忙な臨床現場で利用しやすい方法である 従って 次章ではタッピングとマッサージの静脈怒張効果を検証した 本論第 3 章では タッピングとマッサージの静脈怒張効果を検証した 研究方法は 対象者を 20 歳代の 40 名とし 非利き手の肘窩部正中皮静脈を対象血管とした 静脈怒張度の評価には上述した 4 段階の触知怒張度尺度を一部改変し 7 段階尺度にして用いた また静脈要因は本論第 1 章の結果に基づき 静脈の深さ 膨らみの高さ 静脈断面積を測定した これらは各介入前後に評価 撮影した タッピングの手技は 人差し指と中指で 1 秒間に 2 回の速さで血管を軽く 10 回叩いた マッサージは 手首から肘に向けて前腕を 2 秒間に 1 回の速さで 10 回マッサージした 実験手順は 5 分間安静の後に 60 mmhg で駆血し 介入試験では駆血 40 秒後からタッピングまたはマッサージを実施し 対照試験では何もしなかった その結果 タッピングの介入の有無による比較では 触知怒張度は対照試験よりも介入試験の方が有意に増加した さらに 膨らみの高さと静脈断面積は介入後に有意に増加 ( 膨らみの高さ [Median] 対照 0.74 mm 介入 0.83 mm: 面積 [Mean] 対照 17.8 mm 2 介入 18.5 mm 2 ) し 介入後の血管拡張を認めた 一方 静脈の深さ [Median] は介入後に有意に短縮 ( 対照 1.80 mm 介入 1.60 mm) し タッピングにより皮膚表面から静脈までの距離が短縮した結果と考えられた 即ちタッピングにより静脈を触知しやすくなったことが 触知怒張度の客観的指標からも裏付けられた 一方 マッサージでは 静脈の深さ [Median] は介入後に有意に短縮 ( 対照 1.79 mm 介入 1.70 mm) したが 触知怒張度や他の静脈要因に有意差はなく 今回実施した方法ではマッサージに静脈怒張効果は認められなかった 以上の結果から 本学位論文ではタッピングに静脈怒張効果があることを明らかにし タッピングが効果のある看護技術であるという一つのエビデンスを得た さらに 静脈怒張法の効果を検証する際の客観的指標を明らかにしたことにより 今後の研究がより客観的に行えると期待される

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