第 1 回 京 と大型実験施設との連携利用シンポジウム 2014 年 9 月 2 日東京 秋葉原 UDX(NEXT-1) タイヤ用ゴム材料の 大規模分子動力学シミュレーション 住友ゴム工業株式会社材料開発本部研究開発本部内藤正登
1 タイヤを取り巻く社会動向とタイヤに求められる性能 2 材料シミュレーションを活用したタイヤ材料の開発 3 材料シミュレーション活用における課題と取り組み 大型実験施設を用いた構造ダイナミクスの計測 京コンピュータを用いた大規模分子動力学シミュレーション 4 シミュレーションによる更なる高機能材料開発に向けて 2
自動車関連での CO2 削減の為の規制事例 タイヤ関連への提言 IEA( 国際エネルギー機関 ) (08 年 7 月洞爺湖サミットにて提言 ) タイヤで自動車燃費を 5% 削減 3% : タイヤの転がり抵抗 2% : 空気圧管理 自動車の燃費へのタイヤ転がり抵抗の寄与 約 20% 資源枯渇への対応 省資源化 ( 原材料の高強度化 ) 3
低燃費 高グリップ 省資源に対応できる高機能ゴム材料開発が必要 ゴム内部のナノの領域を可視化する材料シミュレーションの開発 燃費 2 次元 -FEM グリップ ゴムを構成する原材料 高分子ポリマー 補強フィラー ( カーボン シリカ ) 架橋剤 ( 硫黄 ) 結合剤 ( ポリマー変性基 カップリング剤 ) ( 課題 ) 分子レベルで検討できるナノレベルのシミュレーションが必要 4
低燃費性 安全性 ( グリップ ) 背反関係 省資源 ( ゴム強度 ) 先進シミュレーション先端実験 背反するタイヤ性能を全て向上させる 5
ゴム中のイメージ図 ポリマーフィラー架橋剤 100nm 原材料 ポリマー フィラー ゴムの骨格材料 天然ゴム 合成ゴム 柔らかく良く伸びる ゴムの補強材料 カーボン シリカ 1 強く 摩耗性能を上げる 2 エネルギーロスを生じる 燃費やグリップに影響する カップリング剤 ポリマー 架橋剤 硫黄 ゴムとしての強度を発現させる添加剤 結合剤 原材料の性能を引き出す添加剤 変性基 シリカ ポリマー変性基 カップリング剤 ナノレベルで非常に複雑な構造を形成し 機能を発現している 6
新ポリマー 新結合剤を開発し シリカの分散改良により タイヤの低燃費化に寄与 7
現状 SPring-8 静的構造測定による物性との相関解析 材料開発に寄与してきたが 技術飽和により新材料開発が難しくなってきた 将来 材料の機能理解には構造研究に加えダイナミクス研究が重要 実験 : ダイナミクス計測が難しい J-PARC/SPring-8 ダイナミクス計測によるシミュレーション検証 コンピュータ : 空間 時間スケールの制約 京コンピュータ大規模シミュレーション 京 と大型実験施設の相補利用による大規模高精度シミュレーション 8
材料構造の運動速さ マクロ分散 1s ネットワーク 1ms 界面吸着 1µs 界面擦れ マクロ相分離 1ns 1ps 1fs 界面拘束 側鎖運動 1nm ミクロ相分離架橋点 不均一性ポリマー絡み合いポリマーセグメント運動主鎖運動 10nm 100nm 1µm 10µm 材料構造の大きさ 構造が同じ大きさでも異なる速度で動く部分がありそれをコントロールできれば先進的な材料創出が可能!! 9
材料構造の運動速さ マクロ分散 1s SPring-8( 大強度 X 線 ) ネットワーク 1ms 界面吸着 1µs 1ns 1ps 1fs 界面拘束側鎖運動 界面擦れマクロ相分離 J-PARC( 大強度中性子 ) SACLA(X 線自由電子レーザセグメント運動 ) 主鎖運動 ミクロ相分離架橋点 不均一性絡み合い 1nm 10nm 100nm 1µm 10µm 材料構造の大きさ 時空間階層構造の研究 材料開発への応用が可能に! 10
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コヒーレント ( 位相が揃った )X 線の応用 SPring-8 のコヒーレンスを活用する新しい技術 ( 日本で世界に先駆けて実施 ) 緩和時間 時間相関関数 12
緩和時間 緩和時間 散乱ベクトルq 4π = sinθ λ 波長 散乱角 シリカ界面とポリマーの結合によってダイナミクスが大きく変わるシリカとポリマーの結合によってミクロ粘弾性が変わる 13
グリップ ゴム強度の向上のために ミリメートルマイクロメートルナノメートルサブナノメートル 高次凝集構造 2 次凝集構造 1 次凝集構造カップリング剤ポリマー 直接観ることが必要なスケール範囲 吸着ゴム 変性基 シリカ フィラーネットワーク ポリマー 薬品すべてを分子レベルで丸ごとシミュレーション SPring-8 で得られたフィラーの不均質構造 偏りの大きさ シミュレーションモデル ( 従来モデル ) 14
マイクロメートルナノメートルサブナノメートル 高次凝集構造 2 次凝集構造 1 次凝集構造 カップリング剤ポリマー 変性基 シリカ 構造解析 + ( ダイナミクス ) ダイナミクス 融合 予測 新材料設計 機能 / 物性 新素材創出 (2016 年以降商品に採用 ) 15
東京大学大学院新領域創成科学研究科雨宮慶幸教授 篠原佑也助教 Tadanori Koga Associate Professor, Stony Brook University 京都大学化学研究所増渕雄一准教授株式会社 JSOL 富士通株式会社 16
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