の合併症を起こしたことが分かりました そのなかで一番多かったのは肺炎です 合併症を起こした子どもの約半数が肺炎になりました また 発病者の40% 以上が入院し 9 人の子ども達が脳炎になり いまだに後遺症で苦しんでいる子どももいます 2007 年度の麻しん流行においては 子どもたちよりも10 代 2

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ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

報告風しん

Microsoft Word - 緊急風疹情報2019年第20週.docx

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

健康た?よりNo107_健康た?より

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3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

Microsoft Word - 最終_緊急風疹情報2019年第10週.docx

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顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

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妊婦の推定感染経路 2 番目は 妊婦さんの推定感染経路です 2011 年は中国 ベトナムなど海外で感染した夫や本人です 海外からの感染に注意が必要でした ところが 2012 年は夫 同僚から妊婦さんへの感染が認められたので 同居家族 同僚のワクチン接種を勧めるよう喚起しました さらに 2013 年に

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

H30_業務の概要18.予防接種

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]

参考資料 5 MR の接種勧奨の取り組みについて MR1 期 (1 歳 ~2 歳未満 ) 1 歳となる月の前月末に予診票及びお知らせを発送 1.6 歳児健診時 個別チェックによりお知らせ配布 ( 通年 ) 2 歳となる前々月に未接種者に案内を発送 ( 別紙 1) MR2 期 ( 小学校に入学する前年

生ワクチン 不活化ワクチン ジフテリア 百日咳 破傷風 不活化ポリオ混合ワクチン の接種から20~24 週あけて3 回目を接種 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 27 日 ( いわゆる4 週間 ) 以上あけて受けます 別の種類のワクチンを接種する場合は 中 6 日 ( いわゆる1 週間 ) 以

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

会計 10 一般会計所管課健康推進課款 4 衛生費事業名インフルエンザ予防接種費項 1 保健衛生費目 2 予防費補助単独の別単独 前年度 要求段階 財政課長内示 総務部長 市長査定 最終調整 予算計上 増減 1 当初要求 2 追加要求等 3 4( 増減額 ) 5( 増減額 ) 6=

とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

(Microsoft PowerPoint \217\254\216\231\227\\\226h\220\332\216\355\202\314\214\273\217\363.ppt)

生ワクチン乳幼児の予防接種スケジュール ( 例 : その 1) 同時接種を希望するが 1 回に受ける数は 2 種類以下を希望する場合 ( 受診回数 : インフルエンザを除いて 18 回回または 19 回 ) 0 歳 0カ月 カ月 カ月 1 歳 カ月 13 カ月 1 15 カ月 16 カ月 17 カ月

2012 年同期 (~9 月 19 日 ) と比較すると約 8.5 倍となった 2013 年 1 月 1 日 ~9 月 18 日までに報告された地域 ( 報告数 ) は東京都 (3337) 大阪府(3165) 神奈川県(1639) 兵庫県 (1156) 千葉県(698) 埼玉県(599) の 6 都

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定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

Vol. 32 Suppl.II,2017 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ( ムンプス ) に関する Q&A の公開にあたって 日本環境感染学会では 平成 21 年 5 月に 院内感染対策としてのワクチンガイドライン第 1 版 を 平成 26 年 9 月に 医療関係者のためのワクチンガイドライン

今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

Microsoft Word - 麻しんQA.doc

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

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院内感染対策マニュアル

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

水痘(プラクティス)

プリント

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症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

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熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

2 位 混みに かない 感染 が強いので感染しないようにするのが 番 毎年ワクチン打ったのにかかったという がたくさんいる (30 代 般内科 ) 感染の機会が多ければ多いほど感染の可能性が上がるので 出歩かないのが 番だと思います (40 代 整形外科 スポーツ医学 ) 通勤電 や職場 込みなどで

ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

平成 24 年 7 月改定版 すべての予防接種につきましては 次のページに記載してあります 平成 24 年度予防接種日程表 ( 国の通知により 内容が変わる場合があります 毎月の 広報みなみちた でご確認ください 新 麻しん風しん混合 3 期 4 期 ( 個別 ) 対象 :3 期 ( 中学 1 年生

9 予防接種

Microsoft Word - 感染症と予防接種について(A-2麻疹).doc

スライド 1

インフルエンザ、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違い

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

第1 入間市の概要

Microsoft Word - 案1 week14-21

図 3. 新規 HIV 感染者報告数の国籍別 性別年次推移 図 4. 新規 AIDS 患者報告数の国籍別 性別年次推移 (2) 感染経路 1 HIV 感染者 2016 年の HIV 感染者報告例の感染経路で 異性間の性的接触による感染が 170 件 (16.8%) 同性間の性的接触による感染が 73

Microsoft Word - tebiki_51-60.doc

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

Microsoft PowerPoint 記者懇談会ver0313 [互換モード]

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り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

Microsoft Word - WIDR201839

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

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横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

平成 27(2015) 年エイズ発生動向 概要 厚生労働省エイズ動向委員会エイズ動向委員会は 3 ヶ月ごとに委員会を開催し 都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表している 本稿では 平成 27(2015) 年 1 年間の発生動向の概要を報告する 2015 年に報告された HI

Microsoft Word - 感染症の説明と調査2012.doc

熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

ヒブ ( インフルエンザ菌 b 型 ) 対象者 : 生後 2ヶ月から5 歳未満までのお子さん標準的な接種開始期間は 生後 2ヶ月から7ヶ月未満です 生後 2ヶ月を過ぎたら 早目に接種しましょう 接種方法 : 接種開始時の年齢により接種方法が異なります 接種開始が生後 2ヶ月から7ヶ月未満の場合 (

現在にいたっております その結果 現在 HPVワクチンは定期接種でありながら 接種対象となる12 歳から16 歳の女子に対する接種がほとんど行われていないのが現状です このような状況は先進国では日本だけで見られていることであり 将来 子宮頸がんの発症が他国に比べて著しく高くなるというような事態が起き

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

小児用肺炎球菌ワクチン 対象者 : 生後 2カ月 ~5 歳未満の方接種費用 : 無料ただし 接種開始が2 歳以上の場合は自己負担あり (1100 円 ) 接種回数 : 接種開始年齢によって異なります 接種開始月 年齢接種回数 接種間隔接種費用 生後 2 月から 7 月未満 生後 7 月から 12 月

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DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

< HTLV 1 ウイルスについて > HTLV 1 ウイルスはヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型と呼 ばれ 成人 T 細胞白血病などの原因であることが分かっています 日本は先進国の中でHTLV 1 抗体の陽性者が最も多く 100 万人を越えています 西日本に多くみられましたが 人口の移動とともに


両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

麻しん 2

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Microsoft Word - 予防接種2011

あり 一人の感染者が周囲の免疫のないヒトに感染させる数である基本再生産数は 10 流行を抑制するための集団免疫率は 90% 以上です 水痘の潜伏期間は通常 14~16 日間です 水痘ワクチンの定期接種が行われている米国では 1 回定期接種を行っていた 1996 年から 2004 年までの間に 水痘患

〒102―8232

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

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Transcription:

したがって 体内で増えるけれども症状が出ない 無症候性の病原体保有者というケー スもあります 図 2 2 麻しん 風疹 水痘 流行性耳下腺炎について (1) 麻しん麻しんは 麻しんウイルスというウイルスによってひき起こされる感染症です 麻しんは 前述した空気感染 飛沫感染 接触感染とさまざまな感染経路を示し その感染力はきわめて強いのが特徴です 比較するのは難しいですが 麻しんの感染力は あらゆる感染症の中で一番強いといえるかもしれません まったく免疫のない集団の中に一人発病者がでた場合 その人が何人に感染させる可能性があるかという計算があります ( 感染効率といいます ) 麻しんは約 15 20 人に感染させるといわれています 毎年流行するインフルエンザでも 感染効率は 実はせいぜい 1 人か2 人です それに比べると麻しんの感染効率は非常に高いことがわかります 麻しんのウイルスに免疫を持たない人が このウイルスに曝露感染した場合 すぐに発病はせず 10 日間前後の潜伏期間を経て発病します これがインフルエンザやノロウイルスとの大きな違いです 例えば 保育所で1 人だけ患者が出た時 スタッフは不安を感じながらも 翌日もその翌日も患者が出ないために安心してしまいます しかし 10 日ほどが過ぎて忘れた頃に5 6 人まとめて患者が出る つまり忘れたころに他の人が発病するというのが麻しんの特徴です 麻しんの合併症には肺炎 脳炎 中耳炎 グループ症候群 SSPEなどがあります 2000 年に大阪で麻しんの調査を行ったところ 大阪では推定で9,000 人 子どもたちを中心に麻しんの患者さんが出ました 合併症発症率は32.6% で つまり10 人中 3 人が何らか

の合併症を起こしたことが分かりました そのなかで一番多かったのは肺炎です 合併症を起こした子どもの約半数が肺炎になりました また 発病者の40% 以上が入院し 9 人の子ども達が脳炎になり いまだに後遺症で苦しんでいる子どももいます 2007 年度の麻しん流行においては 子どもたちよりも10 代 20 代の人の脳炎が多く報告されました 先進国では致死率は低下していますが 合併症発症率 入院率は高く 日本においても同様であり いまなお重篤な病気であることに変わりはありません また よく受ける質問に 麻しんは子どものうちにかかったほうが軽くすむのですか? 大人になってからの麻しんは重症化するのですか? というものがあります 私は 子どもであろうと大人であろうと 重症化します とお答えしています 年齢による違いはありません 確かに大人が麻しんにかかった場合に入院する率は高いのですが 1998 年に沖縄で麻しんの流行があった際には 子どもばかりが約 10 人 麻しんにかかり結果的には亡くなりました 0 歳 2 歳の子どもが中心でしたが 肺炎で亡くなった子どもが一番多く 次に多かったのが脳炎でした 麻しんでは やはり大人よりも子どもが多く亡くなっています なお 当然のことながら 大人であっても症状は軽くはありません 特に妊娠している女性がかかると まずお母さんの命に危険が及びます また 流産 死産 早産の危険性が高くなります 一方 風疹の場合は 先天性風疹症候群と呼ばれる奇形を持った子どもが産まれる可能性がありますが 麻しんにおいては そういった可能性は低いです 図 3 麻しんには 麻しんワクチンが非常に高い効果があり その有効性は95% 以上です これ以上効果の高いワクチンは他のワクチンでもあまりありません 10 代 20 代で発病する人の中に ワクチンを1 回接種したにもかかわらず免疫がつかなかった方が多く見られます さまざまな集団感染の調査結果を見る機会がありましたが 1 回のワクチン接種でも90% 前後の人には免疫が持続しています しかし やはり10% 前後の人については 免疫が落ちてきており そういった方の発病も確認されています

現在は 日本でも2006 年から接種回数が2 回になりました 韓国に遅れること10 年 アメリカに遅れること20 年です 麻疹のワクチンの副反応というのは 多くは発熱です しかし これは弱毒化された麻疹のウイルスが体に入ったために起こる反応なので ワクチン反応と呼んでもいいかもしれません このように軽く麻しんにかかることによって免疫がつくのです 20 30% の方が発熱し 約 10% の人に発疹が出ます 副反応における脳炎発症というのは100 150 万接種に1 例といわれていますが 実際はもっと低いと考えられます 実際に麻しんにかかると500 1,000に1 人が脳炎になります 麻しんの感染時の合併症は先進国でも約 30% また日本における脳炎あるいは死亡する確率は1,000 人に1 2 人です 有効な治療法はなく 唯一の医学的対抗手段はワクチン接種です 図 4 上記の図は臨床経過を示している図ですが 麻しんは 潜伏期 カタル期 発疹期 回復期の4つに病期が分かれます 潜伏期は感染してから発病するまでの期間を指します 問題となるのは 次のカタル期です 発疹はカタル期には ほとんど出ませんが コプリック斑とよばれるものが口内にできます 大臼歯の反対側 頬の内側に赤いプツプツができるのですが それをコプリック斑といいます 小児科の先生は そのコプリック斑を見て麻しんであることの診断をしますが コプリック斑を見たことがない先生であれば見落としてしまいます したがって カタル期における平均 3 日間は麻しんだと気づかれずに過ごしてしまうことが多いのです この他には 目やに 鼻水 くしゃみ の症状が出ますが これは麻しんの特徴的な症状とはいいがたいものです しかし ウイルス排出のグラフが示しているとおり ウイルスが最も排出されるのはカタル期の末期です つまり 非常に感染しやすい時期というこ

とです カタル期の次の段階である発疹期に入り 発疹を見て麻しんだと気がついたときは 既にある程度の日数が経っていることになります 熱が出始めるカタル期の1 日前 ( 潜伏期末期 ) から感染性はあるといわれています 例えば 保育所で あの子が麻しんだ と分かるまでに5 日くらいかかるのです そしてその子どもが毎日通園するとして 仮に火曜日に熱が出たとすると その1 日前の月曜日から木曜日までの4 日間が感染可能期間となります 金曜日に発疹が出て 病院に連れていき麻しんだと診断された場合 保育所に連絡があるのがおそらく土曜日となります そうすると月曜日から金曜日まで5 日もたっていることになります 麻しんは 感染後 72 時間以内にワクチンを打てば発病を防ぐことができる可能性があるとされていますが 5 日たつとワクチンを接種しても間に合いません 麻しんの特徴であるコプリック斑をより早く見つければ良いですが なかなかそういうわけにいきません コプリック斑に気づかない場合 カタル期に麻しんと診断することは困難なため 周囲に感染拡大させてしまう場合が多くあります 特に10 代 20 代の人が麻しんに感染した場合 少々熱があっても仕事に行く 遊びに行く あるいは旅行に行くため 広範囲に感染を広げてしまう可能性が高くなります もし 保育士が麻しんだった場合 たくさんの人 子どもたちに麻しんのウイルスを感染させてしまうことにつながりますので 慎重に対応していただきたいと思います 特に周囲で流行している場合や 保育所内で麻しんの患者さんが出た場合は 十分に注意をしてください 感染症情報センターのホームページ (http://idsc.nih.go.jp/index-j.html) には その場合の対応についても載っていますので ご覧下さい 麻しん 感染症発生動向調査 2007 年の麻しんの発生動向調査について説明をします 全国 3000カ所の小児科医院からの報告です 基本的に届出の対象は14 歳以下の子どもたちです 図 5は 1997 2007 年までのグラフを重ねていて 横軸が1 年間を週割りしたものです 第 1 週 53 週 それから縦軸が1 件のお医者さんに 全国平均で1 週間に何人の患者さんが来たかをあらわしています 2007 年の麻しんはグラフにもあるとおり 過去の2001 年の流行や 例えば1997 年 2000 年 2002 年の流行などに比べて 非常に少ないですが 2004 年 2005 年 2006 年の過去 3 年に比べると多くなっています 2001 年の大流行のあとで全国に 1 歳の子どもたちに麻しんのワクチンをプレゼントしよう というキャンペーンが始まり 急速に流行が治まってきましたが 2007 年は過去 3 年に比べるとずっと多い発病者数になっています 10

図 5 図 6 図 6は年齢別グラフです 0 歳の子どもたちの割合はあまり変わっていません 0 歳児の大半はワクチンを接種していません 感染機会が増えて その分だけ患者発生数も増えています 違うのは1 5 歳児の割合が 例年に比べると非常に少ないことです 例年であれば5 歳以下の子どもたちというのが60 70% を占めていたのですが 平成 19 年には 40% を切っています これは明らかにワクチン接種率が上がっている効果です 1 歳でのワクチン接種率が上がっているので1 歳から5 歳まではワクチンによって守られているということ 11

になります 逆に ワクチンを接種してから長い年月がたっている 10 14 歳が 例年に比べると ずっと多いことが分かります 成人麻しん の感染症発生動向調査次に 保育士に非常に深く関係がある成人麻しんのことにふれます 成人麻しんは1999 年の4 月から調査が開始されましたが 下記グラフが示すとおり患者発生数が過去最高を更新中です (2007 年 6 月時点 ) 図 7 しかし 先程の小児科医療機関の3000 ヶ所という定点数に比べると 成人麻しんの基幹定点は450 ヶ所しかなく 非常に少ない数であるため 推計値を出すことは困難です 例えば450 ヶ所から何人の患者さんが出ているので 推計で全国で何人の発病者がいる ということはいえません しかし 例年と比べた場合 非常に多いことは事実です 2001 年の流行の時の数字も超えています 過去の麻しんの流行における成人麻しんの発病者数は 子どもの麻しんの10 分の1 程度であるといわれています したがって 流行規模そのものは 約 30 万人が発病したといわれている2001 年の大流行のほうがはるかに大きいといえます 2007 年において このようになっているのは 2001 年の流行時の10 分の1にあたる 2 3 万人が大人の麻しん患者であるという理由からです これは調査開始以来 最大値を更新しています 12

図 8 次は年齢別グラフです 2007 年 6 月現在 麻しんの患者さんは20 代前半が最も多く 次が20 代後半です では その理由は何でしょうか 実は 1978 年に麻しんのワクチンは定期予防接種として公費負担化されことがあります そのときの1 歳児が現在の30 歳です したがって 今の30 歳以下の人は大半がワクチンを1 回受けていることになります しかも その世代においては 麻しんが大きく流行することはなくなっていました 一方 現在の30 代前半の年齢の人は 麻しんにかかるのが普通でした あるいは ワクチンを接種している人と そうでない人が混ざっているという状況です それは 麻しんのワクチンが定期予防接種化されたとき 今の30 代前半は当時 2 歳 5 歳だったためです 30 歳以下の人については 同世代の人が全員 普通にワクチンを受けている世代で 大半がワクチン1 回接種の人です こうした30 歳以下のワクチン1 回接種の人が麻しんの自然感染を受ける機会もないまま ワクチン接種から長い年月がたってしまったことが 現在 20 歳前半を中心に発病者が出ている理由です 20 代の患者さんの報告数が全体の約半数以上を占め 15 歳から20 代後半までで全数報告の約 8 割 30 代前半までを入れると9 割を超えます 麻しん流行のニュースが流れた際 50 歳以上 特に70 歳 80 歳の人から 不安です との声が寄せられますが 60 歳以上の人はだれも発病したという報告はないから安心です とお伝えしました その世代の人が子どものときにはワクチンなどなかったため ほとんどの人は麻しんにかかっているはずだからです 基幹定点からの成人麻しんの報告では 報告地域及び南関東地域を含めた報告数はともに増加傾向が続いています 第 21 週の報告数は 1999 年の調査開始以降では最高値となりました この関東地域における麻しんの流行の特徴は 10 代 20 代での患者発生数が増加 13

していることによるものです 麻しんは春から夏にかけて流行する感染症であり その流行のピークは日本では5 月中となることが多いのですが 2007 年の流行では5 月下旬になってもまだ報告数の減少が見られませんでした ワクチン接種の奨め 2007 年の麻しんの流行の理由には 先程もお話しました1978 年の麻しんワクチンの定期予防接種化以降に幼児期を迎え 麻しんワクチンを1 回接種している10 代 20 代における麻しん発生数の増加が大きく関与しているものと考えられます したがって 10 代 20 代の保育士で いまだに麻しんにかかったことがなくて ワクチンも接種したことがない人がいたら早期にワクチンを接種してください また ワクチンを既に接種した人のごく一部 (20 人に1 人程度 ) が免疫未獲得者といわれています むかしは こういう人は麻しんの流行時に麻しんにかかっていましたが 最近の免疫未獲得者には流行がほとんどなかったために 麻しんにかからず過ごしてきているという状況があります 加えて ワクチンを1 回接種して免疫も獲得できた人でも 麻しんのウイルスの曝露感染機会 ( 発病にいたらないまでにも感染する機会 ) が激減していることにより 感染によって免疫力を維持する機会がないのです この状況は 実は日本だけではなく過去にアメリカや韓国でも見られ 特異的な現象ではありません 1 回接種の人が非常に増え しかも麻しんそのものの流行が非常に減った場合には起こる現象です 2007 年の傾向は少し違いますが 2001 年の大流行も あるいはそれ以外の過去の大流行も やはり流行の中心は1 歳児でした したがって 過去にわが国において見られたような麻しんの大流行を防ぐためには 1 歳早期における麻しんワクチン接種率を高く維持しなければなりません 1 歳の子ども達における麻しんワクチンの接種率が下がると 麻しんが大流行します ワクチンを接種していない1 歳児は麻しんに一番かかりやすいので 1 歳になったらすぐにワクチンを接種するように勧奨してください なお なぜ0 歳児で接種しないのかと思われるかもしれません これは難しい話ですが 産まれてきた赤ちゃんには お母さんからもらった抗体があります これを移行抗体といいますが この移行抗体の中には 麻しんの抗体も含まれています ( お母さんが麻しんの抗体を持っていない場合と一部の例外を除く ) この抗体によって産まれてすぐの赤ちゃんは麻しんにかかりません そのため 0 歳児に麻しんのワクチンを接種しても お母さんからもらった抗体が邪魔をして麻しんのワクチン由来のウイルスが体の中で増えないため 免疫はつきません お母さんからもらった抗体が100% 完全になくなるのが1 歳であるという理由から 1 歳でワクチンを接種するように指導されています しかし 大半の子どもたちは生後 9か月で抗体がなくなってしまいます また 最近では多くの子どもたちが6か月ぐらいでなくなるという事実も報告されています まさに この6 11か月までの子どもたちが麻しんにかかっています 何とかしなければなりませんが 見境なくワクチンを接種するのは大変に効率が悪く 非常に難しい問題です ただ言えることは 1 歳 14

児には絶対に免疫が無いので 1 歳になったらすぐにワクチンを打つことが必要だということです 麻しんワクチン既接種者の多くが1 回接種である現状が続くかぎり 今回の流行が治まったとしても今後再び同じようなことが繰り返されるだろうと思われます この1 回接種の人についても対策が必要です それには1 回接種の人達が全員 2 度目のワクチンを接種することが最も効果的な方法ですが それを推奨したことにより1 歳児用のワクチンが足らない事態にでもなったら それはそれで大変なことです 別の方法としては ワクチンを接種したことがない人 麻しんにかかったことがない人を最優先にワクチンを接種するという方法です つまり 最優先されるべきは 麻しんのウイルス感染によって重篤化が容易に想定される未接種 未罹患者 次いで第 1 期の定期接種を受けた後で長い年月が経過した人であると考えられます 当然のことですが 保育所に通っている2 歳 5 歳の子どもで まだワクチンを接種したこともなく 麻しんにかかったこともないという子どもは 早急にワクチンを接種するよう勧奨してください なお 保育所で麻しんが流行り始めた場合 その施設にいる0 歳児の子どもに接種するかしないかというのは医師の判断になりますので 相談が必要です 場合によっては緊急接種が必要です 図 9 保育所で平時からしておくことでは 麻しんのワクチン未接種 麻しんにかかったことのない子どもたちを まず把握することが必要です 入園前 転入前などには 健康状況調査において ワクチンの接種歴と麻しんの既往歴については把握されているところが大半だと思いますが 未接種 未罹患者にはワクチン接種を勧奨してください 特に麻しんのワクチン接種は大切です 入園後には接種状況を確認してください そして 状況把握をする際に よく抜けているのが職員のみなさんの状況です 病院な 15

どでは既に常識になっていますが 勤務開始前の健康状況調査において 保育士のみなさんが麻しんのワクチンを接種したか 接種していないか 麻しんにかかったことがあるかどうか確認することが必要です 特に20 代の人というのは こうしたことをおろそかにしがちです いまの大学生にも共通していることですが 麻しんワクチンの接種が済んでいるか否か あるいは麻しんにかかったことがあるかないかを聞いても 不明 である場合が圧倒的に多いですが こうしたことは母子手帳などで確認できます 未接種 未罹患者にはワクチン接種を勧奨してください 図 10 ( たった1 人でも ) 麻しんの患者さんが出たら何をすべきか まず他の欠席者の欠席理由を把握してください 場合によっては 1 人出たときには既に複数名の感染者が出ていることが非常に多くあります 感染者と濃厚接触をしていた人に対して適切に対応しなければなりません 保育所で考えられる濃厚接触者とは 特に同じクラスの子どもたちです 接触者の範囲を明らかにする必要があります ただ 保育所などの施設内にいる子どもたちに関しては 同じフロアの子どもたちを中心に ほとんど接触していると考えるべきです 感染者に対する発病予防については 医師と相談となりますが 接触してから3 日以内であればワクチン接種によって感染発病を予防できる可能性があります これは健康保険が適用となります さらに6 日以内であれば ガンマグロブリンを注射することによって発病を抑えることができる可能性がありますが これは血液製剤なので ガンマグロブリンを接種するべきかどうかについては 保護者と医師の相談により決定することになります 血液製剤は 私は個人的にはあまり推奨しませんが 入院するよりは良いという理由で投与される場合もあります 16

図 11 次に 感染拡大防止策についてです まずは 麻しん発生状況を保育所を利用する家庭に知らせてください パニックや風評被害を防ぐ正しい方法とは 正確な情報を正確に流すことだと考えます 保育所や学校などで麻しんの患者さんが出た場合 通園 登校前に 自宅にて検温を実施し 37.5 以上あった場合は休むことを指導していただきたいです 図 12 次は よくある麻しんアウトブレーク ( 病気の感染が爆発的に広がること ) の際の誤った対応です これはいまだにあることですが 施設内に第一例が出た場合に すぐ対応すれば間に合うにもかかわらず たかが麻しん と軽く見て何も対応をしないことです 10 日以上が過ぎ 数名の発病者が出て いわゆる第二波が認められても 最初の先入観が邪魔をするのか やはり適切な対応がされないのです そして さらに10 日が経過し より多くの発病者が出てくることになります 発病者が次々に現れ 慌てて未発病者にワ 17

クチン接種を行うことがありますが 結局は多大な労力と費用を要します しかも この 時点ですでに手遅れで 麻しんが地域レベルで流行し広がっているということが多く見ら れます 図 13 上記はワクチンの接種のスケジュールですが こちらは2006 年から変わりました 麻しん 風疹の混合ワクチンになり 第 1 期 第 2 期となっています もし保育所内に1 歳以上の子どもでワクチンを接種していない子どもを発見された場合は ぜひワクチン接種を勧奨してください (2) 風疹風疹もワクチン接種率が上がったことにより 流行の規模は 過去に比べ 非常に小さくなりました 風疹は麻しんほど重症化しませんし 入院率も高くありません 放っておいたとしても 水痘やおたふくかぜに比べ 症状は軽いと思います では なぜ風疹が麻しんと同じように定期予防接種化されているかです 風疹の症状は発熱 発疹 リンパ節腫脹の3つがありますが 症状持続期間がいずれも短く 発熱も 麻しんでは免疫未獲得者であれば全員が発症しますが 風疹は患者数の約半数程度の割合です 重篤な合併症として血小板が減る あるいは脳炎になることはありますが 脳炎の確率も麻しんより低く また血小板減少性紫斑病は3000 人に1 人であり これもしばらくしたら治る場合が大半です しかし 障害や合併症を持った子どもたちはできる限り罹患しないほうが良いのは当然です ただ 風疹には先天性風疹症候群と呼ばれるものがあります 18

図 14 これは 抵抗力のない妊婦さんが妊娠初期に風疹に感染した場合をいいます 妊婦さんが発症しなくても 風疹ウイルスが胎盤を通じて胎児に感染します その結果 出生児が先天性風疹症候群となることがあります その主な症状には聴力障害 視力障害 心奇形 知的障害 糖尿病などがありますが 特に聴力障害はよく知られています 保育所で風疹が流行ると 保育所に来ている子どもたちの母親のなかには 妊娠しているケースも多く こうした危険にさらされています ちなみに2004 年は 先天性風疹症候群の子どもの出生報告が前年よりも増加しています なお 風疹が定期予防接種化されていることにはもう一つ理由があります 風疹が流行すると 妊娠初期に風疹にかかり 先天性風疹症候群で産まれる子どもたちよりも多くの人工妊娠中絶の数が増えます 風疹に感染したことが理由による中絶は 統計が取りにくい状況であり 風疹の隠れた負の側面です (3) 水痘水痘は例年冬から春にかけて流行し 夏休み期間中に一気に収まり 冬に再び復活するという流行形態をとっています 水痘とおたふくかぜに関しては 日本ではいまだにワクチンが定期予防接種化されていません 特に水痘は保育所では毎年のように集団感染が起こっていると考えられます この状況は あまりよいことではありません 水痘は水痘になるだけではなく 水痘 帯状疱疹ウイルスの初感染によって発生し このウイルスはそのまま人の神経細胞に一生住み続けます そして 体力が低下したときに帯状疱疹が出る原因となるのです 通常は 2 週間前後の潜伏期間を経て発病し 発疹 倦怠感 発熱を主症状として発症します 感染経路については 麻しんと同じ空気感染ですので非常に感染力が強いということがあります 19

図 15 現在 わが国における水痘は 発症者の多くが学童期前であり 遅い場合でも小学校低学年ごろまでに大半の小児が罹患します 最も多いのは保育所や幼稚園の子どもたちです 健康な小児においては 水痘は罹患者 ( 発病者 ) の大半が順調に経過し その予後は良好です ただし 免疫力が低下している子ども ネフローゼでステロイドを飲んでいる子ども 小児癌になっている子ども あるいは成人が発症した場合は重症化します 特に免疫が低下している子どもたちは命にかかわることもあり 場合によっては死亡することもあります (4) おたふくかぜ 図 16 20

おたふくかぜは2005 年の夏まで流行していましたが その後 秋ぐらいから流行が収まり 今年 2007 年における流行は小さいものとなっています 通常は4 年 5 年に1 度の割合で大きな流行になります おたふくかぜもワクチン接種が唯一の予防方法であり ワクチン接種には90% 以上の効果があるといわれています おたふくかぜのワクチンが原因で無菌性髄膜炎になることがあり 日本では現在 MMRワクチン ( 麻疹 おたふくかぜ 風疹の三種混合ワクチン ) は使用してはいけないことになっていますが 世界の他の国では現在でもMMRワクチンが使われています 患者との接触時における予防策については 接触当日のワクチン接種には症状を軽くする効果はありますが 発症予防は困難であると考えます なお 先ほどの麻しんや水痘の場合は 接触後 3 日以内にワクチンを打てば 高い確率で発病を防ぐことが可能であるといわれています 図 17 おたふくかぜは 麻しんや水痘の患者さんに比べると もう少し年齢が高い3 6 歳の子どもが中心になります 通常は1 2 週間で軽快する予後良好の病気ですが 10 人に1 人が髄膜炎になるといわれています また 500 1000 人に1 人が難聴になることが最近分かってきました これは片方の耳が聞こえなくなり 回復の余地がないことを意味しています 聞こえないのが片方だけの耳であるため 保護者や保育士たちも気がつかないことが多く 小学校入学時の聴力検査で初めて分かる場合もあります あるいは 電話を取るときに決まって片方でしか聞かないなどから分かることもあります これまでは 20,000 30,000 人に1 人といわれていましたが 最近では もっと多いということが分かってきています ほかにも おたふくかぜが 睾丸炎 卵巣炎 膵炎等の合併症を起こす場合があります ウイルスに免疫を持たない乳幼児が集団で生活している保育所等の施設では 集団発生を起こす場合もしばしばあります 21

保育所に通っている子どものワクチン接種率は 通っていない子どもよりも低いことが 実際に調べた結果で明らかとなっています 水痘のワクチン接種率も同様に低い結果となりました 施設内の集団感染を防御するには ワクチン接種を勧奨し 免疫を持っている子どもの割合を増やすしかありません 2005 2006 年 堺市と吹田市 愛媛県松山市の保育施設の人にご協力をお願いし 水痘とおたふくかぜのワクチン接種率を調べてたところ 結果は通常 30% 前後であるものが 20% 以下の接種率でした 保育所に通っている子どもたちの接種率が低いということは そのぶん集団感染も起こりやすいと考えられます (5) まとめ 図 18 これまで挙げた疾患というのはワクチン予防可能疾患といいます 有効な治療法はなく 感染力が強いためにワクチン以外に確実に予防する手段はありません 当然のことですが 子どもにワクチンを接種することは 子ども個人を将来にわたって守ることででもあり その子が守られることによって施設内の周りの子どもたちも守られます また 保育所は先に述べた4つの病気に関しては高いリスクのある職場であるので 保育士は子どもたちのみならず その家族のため そして自身のためにも 特に麻しん 風疹 ついで水痘 おたふくかぜに免疫があるかを調べておくことをお奨めします 子どもたちにうつされたとしても 発病して保育士から別の子どもたちにうつしてしまうと それはもう言い訳できないことであると考えてください 22