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NFC による安全な私的情報の交換 1 二宮啓聡 2 伊東栄典 2 廣川佐千男 近接通信規格である NFC を用いたカードや, スマートフォンが増えている. 本研究では NFC を用いて, 安全に自分の私的情報を交換する手法を研究する. ここで私的情報とは, 自分の氏名住所や, メールアドレス, アカウント情報などである. 私的情報の交換についての要素定義と設計を示す. また具体的な応用として,NFC による会議の参加者管理システムについて述べる. A study of safety private data exchange using NFC HIROAKI NINOMIYA 1 EISUKE ITO 2 SACHIO HIROKAWA 2 RFID tag and IC card are very spreading to our society. Recently, a smart phone and a tablet terminal with a NFC function are spreading by standardization of NFC technology. We are interested in safety private data exchange using NFC. Private data is own personal records such as phone number, name, address, a mail address, and so on. We define private data exchange, and consider data element, methods, and design exchange system briefly. We also describe an private data exchange application in case of conference 1. はじめに 近年,NFC (Near Field Communication) が普及しつつある. NFC は,RFID (Radio Frequency ID) 及びその応用である IC カードで培われた知見を基にした技術で,ISO/IEC 18092 と ISO/IEC 21481 で標準化されている. 現在多くの国で IC カードを用いた交通運賃管理が実現しているのは特筆する までもない. またそれだけでなく, 乗客のチケットおよび 乗客状況管理に IC カードを利用する航空会社もある.NFC 機能を持つスマートフォンやタブレット端末も多く販売さ れており, 多数の人が NFC 機能を持つスマートフォンまた はタブレットを所有することも想定できる. NFC の応用として電子マネーやポイントサービスが検 討および一部実装されている. 交通系電子マネーの IC カー ド同様に使うことは検討されている. また, 会員証として 扱い, 会員の利用ポイント蓄積などにも使われている. 本論文では,NFC を用いて利用者の個人的な情報である, 私的情報を安全に交換することを考える. ここで私的情報 とは, いわゆる個人情報保護法で定める個人情報のうち, 本人に関する情報とする. この法律は, 他者の情報を扱う 法人 個人事業者に対して課された法律である. 一方, 本 論文が対象とするものは, 基本的に利用者本人に関する情 報である. 私的情報交換の具体的応用として, 会議やセミナー等の イベントでの参加者管理に使うことを考える. 会議主催者 からの会場情報等の提供と, イベント参加の際の真正性証 1 九州大学大学院システム情報科学府 Grad. School of ISEE, Kyushu University 2 九州大学情報基盤研究開発センター Research Institute for IT, Kyushu University 明を NFC で提供することを考える. また, 参加者間で電話番号やメールアドレスなどの私的情報を交換することも考える. 本論文では, 私的情報交換に必要な要素等について検討する. 私的情報交換の具体的応用例として, 会議やセミナー等イベントにおける, 主催者と参加者の参加情報管理における NFC を用いた私的情報交換, 参加者間の交流を促進する私的情報交換について述べる. また試作したシステムについても説明する. 2. NFC NFC は RFID の拡張技術であるといえる. ここでは最初に RFID について述べ, ついで NFC 技術について概説する. 2.1 RFID RFID は Radio Frequency IDentification の略で, 無線通信を用いて個体を識別する技術の総称である.RFID は, 近年の量産化による価格低下, 通信距離や速度などの読み出し性能の向上と, インターフェイスの国際的標準化から, 2000 年代に入り様々な分野で利用が進んでいる. 文献 [1] では,RFID の未来について次のように記述している. まず, 非接触バーコードとしてのような単体で利用可能な利用方法 ( 技術革新 ) にはじまり, 次第に自動に新規ツールとして ( 用途革新 ) や, モノの個体 ( インスタンス ) 管理データベースとして ( 対象革新 ) のように, ネットワークやデータベース システムと連携した, より複雑な利用方法に変化していくと見られています. 文献 [1] の記述にあるとおり,2012 年現在, 様々な場面に普及し, 更に革新が進んでいる. c2012 Information Processing Society of Japan 1

2.2 非接触 IC カード非接触 IC カードには,ISO/IEC 10536, 14443, 15693 の3 つの規格が存在する. (1) ISO/IEC 10536 密着型 IC カード交信距離 2mm まで. 搬送周波数 4.9152MHz. 電磁結合または静電結合により交信. (2) ISO/IEC 14443 近接型 IC カード交信距離 10cm まで. 搬送周波数 13.56MHz. 電磁誘導により交信する.Mifare の別名を持つ Type A と, 運転免許証などに採用されている Type B がある. (3) ISO/IEC 15693 近傍型 IC カード交信距離 70cm まで. 搬送周波数 13.56MHz. 電磁誘導により交信する. 物流管理等での使用を想定された規格であるため, 非接触 IC カードとしての製品は少ない. 2.3 NFC と NFC Forum NFC (Near Field Communication) は近接無線通信の国際規格で,NFCIP-1 (ISO/IEC 18092) と NFCIP-2 (ISO/IEC 21481) の二つがある.NFCIP-1 (Interface Protocol-1) は, ソニー (FeliCa を推進 ) と NXP セミコンダクターズ (MIFARE を推進, 旧フィリップス ) の共同開発である.FeliCa や ISO/IEC 14443(MIFARE) のような既に普及している IC カード非接触無線通信技術との下位互換性を維持している. 使用周波数は MIFARE などと同じ 13.56MHz である. NFCIP-2 (ISO/IEC 21481) は,NFCIP-1 の拡張規格である. ISO/IEC14443(Type B) と ISO/IEC 15693 にも対応している.NFC Forum は,NFC の普及と規格の細部 ( 実装規格 ) を決めるために NXP セミコンダクターズ, ソニー, ノキアの 3 社が 2004 年に立ち上げた業界標準団体である. 広義の NFC には FeliCa や MIFARE の製品も含まれるが, 厳密に NFC タグというと NFC Forum で取り決められているデータフォーマットに準拠したタグ (NFC Forum Tag) を指す. NFC と NFC Forum,FeliCa のスコープを次の図に示す. 準拠であることに着目し, カード ID (UID, IDm, NFCID な どと呼ばれる ) を参加者識別に使用する. 2.4 NFC の 3 つのモード NFC には Card emulation mode, P2P mode,r/w mode の 3 つのモードがある. 図 2 にその関係を示す. 図 2 NFC の 3 つのモード 3. NFC を用いた私的情報交換 3.1 私的情報 本研究で検討する NFC を用いた私的情報交換について 述べる. まず私的情報を述べる前に, 個人情報 について 述べる. Card Emulation Mode Card Emulation NFC Activity Peer to Peer Mode Application Protocol Binding IP,OBEX etc LLCP Mode Switch RF Layer NFC-A, NFC-B, NFC-F (ISO/IEC 18092 + ISO/IEC 14443) 個人情報の保護に関する法律 ( 平成十五年五月三十日法 律第五十七号 ) の第二条にある個人情報の定義を次に示す. 生存する個人に関する情報であって, 当該情報に含ま れる氏名, 生年月日その他の記述等により特定の個人 を識別することができるもの ( 他の情報と容易に照合 することができ, それにより特定の個人を識別するこ とができることとなるものを含む.) Reader/Writer Mode RTD & NDEF Type 1,2,3,4 Tag NFC Digital Protocol NFC Forum FeliCa MIFARE Data Format NFC Data Format Application Middleware Security File System Use Case Development Host Controller Interface N.A. FeliCa OS MIFARE OS NFCIP-1 (ISO/IEC 18092) NFCIP-2 (ISO/IEC 21481) A B C a 1 b 1 c 1 SNS ID a 2 b 2 c 2 a 3 b 3 c 3 a 4 b 4 c 4 Wireless Comm. Protocol Device Communication Protocol (Transport Protocol) FeliCa Interface ISO/IEC 14443 Type A ISO/IEC 14443 Type B ISO/IEC 15693 図 3 個人情報と私的情報 図 1 NFC 技術のスコープ なお, 本研究では FeliCa,MIFARE の通信レイヤが NFC 本論文では, 私的情報を, 個人情報保護法で定める個人 情報のうち, 本人に関する情報とする. 図 3 にその関係を 示す. 図 3 に有るように, 個人情報保護法は, 他者の情報 c2012 Information Processing Society of Japan 2

を扱う主体 ( 主に法人 ) に対して課されたものである. 例えば, 組織の構成員の氏名 住所 電話番号のリストを組織が管理する場合, 個人情報として法に則って管理しなければならない. 一方, 本論文が考える私的情報は図 3 の縦方向のもので, 自分の氏名 住所 電話番号である. 私的情報は本人の意思に応じて管理すれば良い. 家族などの自分が信頼する他者へ, 自分の電話番号やメールアドレス, 住所を教える場合は多い. 逆に相手から相手の私的情報を教えてもらう場合もある. 相手は所属企業などの法人の場合もあるだろう. 本論文では, 自分が信用する相手 ( 法人を含む ) に, 自分の私的な情報を渡す, あるいは, 信用する相手から相手または自分の私的情報を受け取ることを私的情報交換とする. 3.2 NFC での私的情報交換 NFC の利点は近接通信であることである.2 節で述べたように,NFC の通信距離は 10cm 以下である. そのため, NFC カードや端末を持つ人は, 必ず通信現場に居ることになり, かつ情報交換を行う端末またはカードは接触している必要がある. この特性があるため,NFC は混信や漏洩の心配がなく, 安全に私的情報を交換できる. 3.3 想定する応用ここでは本研究で想定する私的情報交換の応用例を示す. 既に実現されているものもある. 3.3.1 電話帳データ交換スマートフォン内に自分の電話帳データを保持しておく. 信頼する相手に電話番号等を渡す場合, 渡す人 (sender) と受け取る人 (receiver) は, その役割をツールに手動指定し, タッチ時に NFC でデータを送付 受信する. 渡す人は, 与える情報として SNS ID を選択する. タッチ時に NFC でデータを送付 受信する. 3.3.2 名刺交換電話帳データ交換とほぼ同様である. スマートフォンあるいは NFC タグ付き名刺に自分の名刺データ ( 氏名, 住所, 電話, メールアドレス等 ) を保管する. 名刺を渡す人 (sender) と受け取る人 (receiver) は, その役割をツールに手動指定する. 3.3.3 SNS ID 交換ビジネス上の新たな知り合いやと SNS で繋がる場合, 相手の SNS ページ (SNS ID) を知ることが面倒な場合がある. また, 企業のページを消費者にフォローして貰いたい場合, 企業ページ (SNS ID) を手動入力で消費者に設定してもらうことは面倒であろう. まず, 個人と個人の間を考える. スマートフォン内に自分の SNS ID を保持しておく. 情報交換は名刺交換や電話帳データ交換と同様である. 渡す人 (sender) と受け取る人 (receiver) は, その役割をツールに手動指定する. 渡す人は, 与える情報として SNS ID を選択する. タッチ時に NFC でデータを送付 受信する. 3.3.4 チケットコンサート等のイベントでは参加者にチケットを配付する. イベントに参加登録した参加者へ, 主催者からメールでのチケットコード配付等の方法でチケット情報を送付する. この情報をスマートフォン内に格納する. イベント当日,NFC で渡す情報として参加者はチケット情報を選択する. イベントの入場ゲートでタッチして NFC でのチケット確認を行う. 3.4 私的情報交換の要素私的情報交換の要素はとして, データの入手経路, 情報交換メソッド, および情報アクセス制御になる. 私的情報は,3つのデータ入手経路がある.(a) 自分で入力するもの,(b) ネットワーク上から入手するもの,(c) NFC 経由で受け取るものがある.(a) は自分の氏名や電話番号などである. これらは手動で入力することが多いだろう.(b) には, メールアドレスや,Facebook や twitter などの SNS ID がある. これらは入力しても良いものの, ネットワーク経由で入手しても良いだろう.(c) については, 例えば学生へ大学が提供する大学アカウント情報や, 社員へ提供する会社アカウント情報がある. これらは IC 学生証 (IC 社員証 ) や,NFC のリーダ ライタ経由で入手するだろう. 情報交換メソッドには, 送信と受信がある.NFC の P2P モードの場合, 送信側と受信側を明示する必要がある. アクセス制御については, 未だ詳細化していない. ブラックリスト ( 拒否リスト ), ホワイトリスト ( 許可リスト ) などの制御はありうる.Signed NDEF が検討されており, 相手の真正性に応じての制御も将来可能であろう. 3.5 実装方法後の具体例を実装するに当たり, 既に NFC forum 等の公的機関で仕様策定がなされ, 実装も行われているものがあれば, それを利用することにした. 具体的には, データ交換には NFC Forum 策定の NDEF (NFC Data Exchange Format) を用いた.NDEF は図 2 に示す Reader/Writer mode で使われるデータ交換時のデータ表現形式である. 他にも, データ交換として,Peer 2 Peer mode で使える SNEP(Simple NDEF Exchange Protocol) も有る. これらの技術は実装されて販売中の NFC デバイス ( スマートフォンやタブレット ) で使えるため, 本研究の応用であるイベントにおける参加者管理および参加者間の私的情報交換システムでも利用した. 4. 類似技術との比較 4.1 他の近接情報交換技術 NFC と類似する近接情報交換技術について述べる. c2012 Information Processing Society of Japan 3

4.1.1 IrDA 規格まず,IrDA 規格での赤外線通信がある. フィーチャーフォンと呼ばれる, 日本国内で販売された携帯電話機の多くは,IrDA 規格の赤外線通信装置を備えており, これを用いて携帯電話機間で電話番号などの私的情報交換を行うことが出来た.NFC と同様に混信や漏洩がおこりにくい通信方法である. フィーチャーフォンでの赤外線通信は, そのためのアプリを起動する必要があった. そのため情報交換までに手間と時間が掛かっていた. また, 機器毎に赤外線通信の操作が異なるため, 情報交換に利便性を残っていた. 現在, スマートフォンでは赤外線通信機能を持つものは少ない. スマートフォンでは Wi-Fi 通信や後述するカメラでの通信,NFC 等の代替手法があるため, コスト削減により赤外線通信装置が無いのであろう. 4.1.2 QR コードアプリスマートフォンは画面が精細で, またカメラを備えている. そのため, 情報送信側が QR コードを生成し, 受信側がカメラで取得した画像をデコードする機能を持てば, 近接情報交換を実現できる. QR コードアプリの問題は, そのためのアプリ起動が必要であることである. 起動までに時間がかかるため, 利便性が下がっている. 4.2 類似機能近接情報交換ではないが, 後に述べる 4.2.1 Passbook Apple 社の iphone (ios6 以降 ) に附属するようになったチケット情報保持アプリである. 外部との情報交換にはバーコードを利用する. 4.2.2 Bump および LINE の ふるふる Bump は Bump Technologies 社が提供する iphone 用の私的情報交換アプリである. 位置情報と加速度センサーを用いている. 私的情報交換を行いたい二人は Bump を起動し, 名前や連絡先などを入力する. 次に同時に iphone を軽くぶつけ合う. うまくいくと, 私的情報交換相手の名前がでる. 接続 を選ぶと相手の連絡先が表示される. この連絡先は電話帳に登録できる. LINE は NHN Japan 社が提供するスマートフォン用アプリである.LINE には ふるふる と名付けた私的情報交換機能があり,LINE ユーザ間で LINE アカウント (LINE ID) を交換出来る. ふるふる を選択し, その間, スマートフォンを振ると, 相手の氏名や LINE ID が表示される.LINE 内の連絡帳に登録できる. 二つのアプリは, 地理的位置が近く, ネットワークが近く, かつ同時刻に同じような加速度センサー情報を持つものを, 通信相手として認識する.2 つの私的情報交換はサー バを経由しているため, サーバ側に知られたくない譲歩交換はできない. また, たまたま近い場所で同じアプリを起動すると, 混信する可能性がある. 5. 応用 1: 会議における参加者管理私的情報交換の具体例として, 会議やセミナー等のイベントにおける参加者管理システムを構築した. 会議参加の事前登録は, 現在, 会議費用が有料無料に関係なく,Web ベースの参加登録システムを使うことが多い. 会議主催者は, 受付にて参加予定者が実際に会場に現れたかの確認を行う. 参加者が少数であれば受付作業は楽であるものの, 大人数の場合は本人確認が大変である. そこで,Web での事前登録,SNS,NFC を用いての受付確認を行うシステムを構築した. なお, この事例では, 会議参加登録システムとして, ATND システムを利用した.ATND では利用者登録により ATND 専用アカウントを取得可能である. また,Twitter などの外部サービスのアカウントを使うこともできる. この場合, 利用者認証は Twitter などの外部サービスを使う. また, 会議参加は全員 NFC 機能をもつスマートフォンまたはタブレットを保有するとしている. 5.1 会議の要素会議の要素となる人は主催者と参加者に分けられる. ここで主催者は個人または法人で会議を企画する. 主催者により企画された会議を C とする. 次に会議はセッション, 参加者そしてメタデータから構成されるものとする. セッションの集合を S とおき, 参加者の集合 P, メタデータの集合を M とする. 会議やセッションは一般にプログラムとメタデータを持つ. メタデータには, 会議名, 開催日時, 開催場所, 主催者名, 参加費などの情報が格納される. そこで, 会議 C を次の3つ組で表現する. C = <S, P, M>, S と P は次のように表現できる. S = {s 1, s 2,..., s m }, s はセッション.(m はセッション数 P = {p 1, p 2,..., p n }, p は参加者. 次に, セッション s の参加者を P s とする.Ps は P の部分集合である. P s : セッション s の参加者集合,P s P. 5.2 事前の参加登録会議主催者は, 会議を ATND システムに登録する. 参加者は ATND 上で参加登録を行う. 参加登録する際,Twitter 等の SNS ID で登録しても良い. 主催者は ATND から参加予定者のリスト ( 各セッション s の P s ) を入手する. その後, 会議およびセッションに紐付けした NFC タグを用意し, タグ情報を DB に保存する. c2012 Information Processing Society of Japan 4

6.1 参加者間の交流支援 Participant Registration. <C, s, p> ATND NFC Tag <C,s> Metadata, Program <C, S> <C, s, Ps> Organizer Set a conference and a session. Check all participants. 図 4 事前の会議参加登録 Prepare NFC tag for session s, and write <C,s> into a NFC tag. 会議参加者は NFC リーダ機能を持つモバイル端末を携 帯し, 端末内に本事例専用のアプリケーションソフトを導 入する. アプリケーションには, 自分が会議参加登録時に 用いた ID(ATND ID または SNS ID) を登録しておく. 会議参加者間の交流を促進するシステムについて述べる. 参加予定者の来場状態 ( 来場 or 未 ) を保持する Web 上のデータ管理サーバを用意する. NFC 端末内で動作するアプリケーションを構築する. 本アプリに, 会議参加者は自分の SNS ID を登録する. 会議当日, 参加者は会議場に来場した際に, 会議情報を含む NFC タグを読み取る. 端末側のアプリケーションは, 自分の SNS ID を,Web 上のデータ管理サーバへ通信し, サーバは送られてきた SNS ID が来場状態になったと保持する. 端末側の提起的にデータ管理サーバへ問合せ, 誰が来場したか, していないかの情報を更新する. 6.2 データフローこの応用では, 前節の会議参加管理システムと,NFC 端末を, オンライン上の SNS ID と, 実際の人間をつなぐ方法を提案する. 図 2に, 本論文で提案するシステムのワークフローを示す. Participant s own device Participant Side Organizer Side NFC Tag <C,s> Participant s mobile device with NFC (1) Get session identifier. NFC Tag (1) SNS ID (3) (2) Session ID (2) Get session participants. <Ps, SNS_IDs> <C,s> Web DB SNS Twitter, Yahoo 5.3 受付作業 図 5 事前の ID 設定 会議当日, 受付には NFC リーダを置く. 参加者は自分の SNS ID を予め登録しておく. 主催者は受付に NFC リーダ を置く. また各セッション会場に, セッション名を書き込 んだ NFC タグを置く. 参加者は携帯する NFC 端末を受付 にある NFC リーダにかざす. リーダは端末内部に保持され ている ID と会議名を読み取る. これにより, 参加者の本 人確認および来場確認を行う. 6. 応用 2:NFC と SNS による参加者間交流促進システム NFC と SNS を用いた会議参加者の情報交換を促進する システムについて説明する. 日本の情報技術のセミナーや 会議では,Twitter などを用いてオンラインでは情報交換を しているにもかかわらず, 参加者間の議論が活発にならな い場合がある. 議論が活発化しない原因の一つは, 実際の 人とオンラインにおける ID(SNS ID) が紐付いていないた めであろう. そこで, この問題を解決するシステムを提案 する. Relation by ATND (3) Get SNS status of each participant. <SNS_ID> (4) Draw Human network, Show participant s status 図 6 参加者間交流システムのデータフロー 6.3 利用者 SNS ID 会議との紐付け 参加者間の交流支援システムを実現するには, 実空間の 実体と, 仮想空間の識別子の間を繋ぐ必要がある. そのた め, 会議参加者とその人の SNS ID, 会議あるいはセッショ ンと NFC タグ,NFC タグと参加者の紐付ける. 会議参加者とその人の SNS ID との紐付けは容易に実現 できる. 本応用で利用する ATND では,Twitter などの外部 サービスのアカウントを用いて参加登録ができる. 一時的 な会議のために ATND 専用のアカウントを開設するのは 面倒な作業であり, 参加者識別のためであれば Twitter など の外部 ID による識別で問題無い. 会議あるいはセッションと,NFC タグとの紐付けである. この紐付けについては, 会議主催者が事前に準備する. NFC タグと参加者の紐付けは, 所有する携帯端末に導入し たアプリケーションソフトで実現する. 参加者は個人所有 c2012 Information Processing Society of Japan 5

の端末に, 本サービス用のアプリを導入し, そのアプリ内に自分の SNS ID 情報を設定する. 7. 試作システム 7.1 会議参加管理および参加者間交流支援システム試作した会議参加者管理および参加者間交流支援システムについて述べる. 試作システムでは, 広い機能を実現するのではなく, 限定した条件にした小さい機能で実現することにした. 会議への参加者登録には ATND を利用する. 参加者は Twitter アカウントを使うと想定する. これは外部 SNS アカウントと結びつけることで, オンラインにある人間関係の情報を利用するためである. 会議参加者が NFC 端末で動作させるアプリケーションは,Android 4.0 上で動作するものを作成した.NFC 機能を持つ Samsung 社製の Galaxy Nexus 端末で, アプリケーションを動作させた. 会議の設定がされた NFC タグを読むと, 本アプリケーションが利用者が来場したと DB システムに登録する. 参加者が来場しているか, していないかの情報を保持する DB システムは,Google App Engine を利用実現した. 図 7 と図 8 に試作システムの動作画面を示す. 8. 関連研究 Kamei らは [9],community organizer と名付けた, 人のコミュニティ構築を支援するシステムを提案している. 本システムは, ユーザが興味ある人を見つけること, 人々の間で生じるコミュニケーションを新たなコミュニティ形成に繋げることを目的としている. そのため, 洗剤的なコミュニティを可視化する手法を提案し, 評価している. 亀井らの手法および評価は, 我々が NFC 端末用アプリケーションに実装する人間関係表示に参考となる. Yamashita らは [10], センサーを用いて室内に居る人を識別するシステムを提案している.Yamashita らのシステムは会議のセッションにおける参加者識別にも利用可能であろう. センサーによる識別システム構築は高いコストが掛かるとかんがえられる. 一方, 我々の提案するシステムは, NFC タグの費用だけであるため, 低コストで実現できる. Hrastinski らは [11], 大学生を対象に Social media の利用状況をインタビュー調査し, 教育分野における効果について議論している. 本文献で, 多くの学生が SNS を用いていることを指摘している. 多くの大学生が Facebook および twitter 利用していると想定して良く, 会議参加者は SNS ID を持つという本研究の仮定は妥当であろう. Ozdenizci らは NFC を用いてナビゲーションを行うシステムを提案している [12]. 美術館や博物館では, バーコードを用いたナビゲーションおよび展示物説明支援システムは提案されていた. 館内の案内情報には私的情報は含まれていない. 9. おわりに 図 7 NFC アプリ ログイン NFC$tags 近年,NFC 機能を備えたスマートフォンやタブレット端末は増加しており, 将来 NFC を用いたアプリケーションが増加すると考えられる. 本研究では NFC を用いた安全な私的情報交換について述べた. 私的情報を定義し, 交換における要素を検討した. また, 他の類似技術と NFC 技術とを比較した. また, 具体例として, 会議などのイベントに置ける参加者管理システムと, 参加者間で意見交換を促進するシステムを試作した. 試作システムでは, 本人の NFC 端末と, オンラインの SNS ID, および会議を結びつける. 会議参加者管理では,NFC による参加者受付システムを提案した. また,NFC 端末と Web を用いて, 会議参加者間の交流を促進するシステムを実装した. 今後, 実際の会議などのイベントで, 試作したシステムを運用実験したい. 図 8 参加者の来場情報表示図 8 の右図にあるように, 会議参加予定者の SNS ID が表示されている. また,NFC タグに触れた人の SNS ID には来場という表示になっている. 参考文献 1) NFC IP-1, ISO/IEC 18092, 2003. 2) NFC IP-2, ISO/IEC 21481, 2005. 3) Ian Keen, NFC Technology Overview, http://www.nfc-forum.org/resources/presentations/nfcforum_technica l_wima09.pdf, April, 2009. c2012 Information Processing Society of Japan 6

4) Facebook, http://www.facebook.com/ 5) Twitter, http://www.twitter.com/ 6) ATND, http://atnd.org/ 7) Ninomiya, H, Ito, E., Flanagan, B, and Hirokawa, S.: Near friends communication encouragement system using NFC and SNS, AAI2012 (International Conference on Advanced Applied Informatics), pp.145-148, 2012. 8) Ninomiya, H, Ito, E., Flanagan, B, and Hirokawa, S.: Bridging SNS ID and User Using NFC and SNS, Proc. of IEEE ASID2012 (The sixth IEEE International Conference on Anti-counterfeiting, Security, and Identification), pp.311-315, 2012. 9) Kamei, K., Jettmar, E., Fujita, K., Yoshida, S., and Kuawabara, K.: A study on the information visualization method of "community organizer" -a system supporting their information of network community-, Trans. IEICE D-I, Vol.J84-D-I, No.9, pp.1440-1449, 2001. (in Japanese) 10) Yamashita, M., Utsunomiya, H., and Fujita, S.: User awareness detection in the room with multiple sensor device, Proc. NBiS2010(13th International Conference on Network-Based Information Systems), pp.420-423, 2010. 11) Hrastinski, S., and Aghaee, N.M.: How are campus students using social media to support their studies? An explorative interview study, Education and Information Technologies, Vol. 17, Issue 4, pp.451-464, 2012. 12) Ozdenizci, B., Coskun, K. Ok, V., and Aydin, M.N.: Development of an indoor navigation system using NFC technology, Proc. ICIC 2011 (4th International Conference on Information and Computing), pp.11-14, 2011. c2012 Information Processing Society of Japan 7