まう博士の簡単にわかる STAP 細胞解説 チュウ太 : 先生 STAP 細胞 大きく話題になっていますね まう博士 : そうじゃな 生物界の常識を覆したといわれる素晴らしい成果じゃ チュウ太 : その成果に梨大の先生が大きく関わっているってほんとですか? まう博士 : そうじゃよ 山梨大学生命環境学部生命工学科の若山照彦教授じゃ チュー子 : その発表は理化学研究所の小保方晴子博士が神戸でしたものでしょ? なんでこんな遠くの山梨大学の先生が関わってたのかしら まう博士 : それは 若山教授が山梨大に来る前に理化学研究所で行っていた研究の成果じゃからだよ チュウ太 : そうだったのか まう博士 : 一年くらい前から小保方博士は自分の研究室を神戸理研で立ち上げているんじ ゃ あの若さでリーダーとはすごいのぅ チュー子 : 同じ女子として憧れちゃうわね まう博士 : 憧れだけじゃいかんぞ 君たちは今回の成果 STAP 細胞についてきちんと理解をしているのかね チュウ太 : うーんチュー子 : うーんチュウ太 : 博士 実はなんだか最近いろんな名前の細胞が出てきてよくわからないんです チュー子 : そうそう どれがどう違うのか 多能性細胞 万能細胞 未分化細胞とか まう博士 : そうじゃな ES 細胞に始まり クローン ES 細胞 ips 細胞 そして今度の STAP 細胞 どれも似ているようで似ていない その似ていない部分がとても重要 チュウ太 : ややこしいー! チュウ子 : 博士 もったいぶらないで解説してください
まう博士 : すまんすまん では まず ES 細胞からじゃ ES 細胞は英語で Embryonic Stem Sell の略じゃ 日本語では胚性幹細胞という ここに出てくる Embryonic というのは胚を意味する 胚とは卵子と精子が受精して発生を始めた受精卵のことをいう チュー子 : 胚っていうのはまだ手も足もできていない とーっても早い段階のことなのかしら まう博士 : そうじゃ そして ES 細胞というのはその胚から作られておる だから ES 細胞は体のどの部分にもなる力を秘めておるのじゃ 科学者たちは その状態を未分化と呼び どの部分へも発育できる能力を多能性と呼んでおる ES 細胞は理論上体のすべての細胞へ分化できるのじゃぞ チュウ太 : へぇー だから ES 細胞は多能性幹細胞とか万能細胞と呼ばれるのか そして ES 細胞からいろいろな細胞や臓器が作れるんでしょう チュー子 : ん? ちょっと待って ES 細胞を作るために赤ちゃんの素の胚を利用しちゃったら 元の胚は赤ちゃんになれないじゃない! まう博士 : そうなんじゃ そこじゃよ大きなポイントは 受精卵はまだ意志を持たない細胞にすぎないが それでもそれは人間と呼べないこともない 生命の萌芽という人もいる ES 細胞は生命の萌芽と言われる受精胚を壊して作るため 大きな倫理問題があったのじゃ チュー子 : 壊されてしまった受精卵がかわいそう まう博士 : じつは ES 細胞にはもう一つ大きな問題があるのじゃ 患者さんが ES 細胞を使って治療をしようと思っても その ES 細胞は壊されてしまった受精卵の細胞なので 免疫の問題が出てきてしまうのじゃ チュー子 : 免疫って? まう博士 : 自分のじゃない細胞を治療で体内に入れても それは異物だと判断して移植した臓器を拒絶する仕組みが人間の体に備わっているのじゃ だから せっかく ES 細胞で臓器を作ることができるようになっても このままでは患者さんの体がその臓器を拒絶してしまい役に立たない可能性があるのじゃ チュー太 : えー せっかく ES 細胞から臓器を作ってもだめなのか まう博士 : もちろん免疫拒絶を解決する方法も研究されておるから 無駄にはならないが それよりももっといい方法がある 患者さん本人の体から ES 細胞を作る方法じゃ チュー子 : 体の中に ES 細胞があるの? まう博士 : そんなものは存在しない 作るのじゃ 初めて体の細胞から作られた ES 細胞がクローン ES 細胞じゃ
チュウ太 : クローン動物なら知っているけどクローン ES 細胞? まう博士 : ふたりは核移植とかクローン技術については知っているかね チュー子 : 世界初のクローン羊ドリーって聞いたことがあるわ 体の細胞から核を取り出して卵子の核と入れ替えると もとの動物と同じ動物がたくさん作れることでしょう まう博士 : チュー子はよく知っておるな じつは山梨大の若山教授は世界で初めてクローンマウスを作った人なのじゃ チュウ太 : へぇー まう博士 : クローン動物は分化した体の細胞から作られることはわかったかな? チュウ太 : わかりました でもどうして体の細胞が受精卵の状態に戻るんですか? まう博士 : それが一番重要なことじゃ いまからそのことを説明しよう 核移植技術で卵子の中へ体細胞の核を入れると 卵子の中で体細胞の核は初期化されるのじゃ チュー太 : 初期化? まう博士 : すまん すまん 初期化の意味を言ってなかったな 体の細胞は皮膚なら皮膚 神経なら神経とそれぞれ役割が決まっておる このような状態を分化した状態というのじゃが 初期化はいったん分化してしまった情報を消去して 何も分化してない真っ白な状態に戻すといった意味になる チュー太 : ゲームとかの初期化しますか? って聞いてくるあれと同じと考えればいいですかね? まう博士 : ま そんな感じじゃな 遺伝子も情報じゃしな 大事なことは 動物の場合一度分化してしまった細胞は 自然には絶対に戻らないと信じられていたことだ 植物は接ぎ木のように枝の一部から根っこや茎が生えてくることは普通のことじゃ だが動物では とくに哺乳類のような高等動物では 体の一部から体が再生するなんてことは不可能だったのだ チュー子 : 動物は植物と違って 一度分化したら もう元には戻れないということですね まう博士 : そうじゃ 過去数百年にわたってそう信じられてきた みんなの理科の教科書にもそう書かれておる ところがじゃ 核移植技術を使って分化した体の細胞を卵子の中に入れてやると 体細胞の核は初期化され 受精卵の状態に戻ってしまうのじゃ チュー子 : 体の細胞が受精卵になるの? すごーい まう博士 : ただし普通の受精卵ではなく クローン技術で作られた受精卵なので クローン胚と呼ばれておる そしてクローン ES 細胞というのはクローン胚を培養して作り出すのじゃ チュー太 : だからクローン ES 細胞は自分の体から作られた ES 細胞と呼べるのか!
まう博士 : そうじゃ そしてそれを最初に成功した人こそ山梨大の若山教授じゃ チュー子 : すごいのね! まう博士 : じゃが クローン ES 細胞には問題があってな ********** チュー太 ; 技術が難しいこと? まう博士 : それも1つの問題じゃ だが最大の問題は 核移植には卵子が不可欠ということじゃ チュー太 : 女性から卵子をもらって核移植するからでしょう それが問題なの? チュウ子 : あたりまえでしょう! チュー太には女のデリカシーというものがわからないの? 私だってそんな実験のために自分の卵子を手術で取り出すなんて 絶対に嫌よ まう博士 : そうじゃろ クローン技術は家畜への応用には問題ないのだが ヒトへの応用となると 卵子の提供という非常に難しい問題が出てきてしまうのじゃ チュー太 : そうかぁ すごい役に立つ技術だと思ったんだけどなぁー まう博士 : まあ 絶滅動物の復活など クローン技術でしか解決できない利用方法もあり クローン技術が全く役に立たなくなったわけではないが とにかくヒトへの利用は難しいのじゃ チュー子 : 卵子を使わないで体細胞を初期化して ES 細胞を作る方法はないの? まう博士 : それが ips 細胞じゃ チュウ太 : ノーベル賞を受賞した山中教授の成果だね まう博士 :ips 細胞は induced Pluripotent Stem cell の略で 人工多能性幹細胞を略したものじゃ 山中教授らは2006 年に 受精卵を使わず山中因子といわれる 4 つの遺伝子を皮膚や血液から取り出した体の細胞に導入して ES 細胞とほとんど同じ性質の細胞を作ることに世界で初めて成功したのじゃ これで卵子の提供という倫理問題解決じゃ チュー子 : よかった いまはどのくらいまで研究が進んでいるの? まう博士 : 現在 理化学研究所で ips 細胞を使った目の治療を行う計画を立てておるし 世界中で治療に向けた動きが出ておる チュウ太 : ニンゲンの医療が一気に進みますね チュー子 : でも 私たちマウスには関係ないのかしらね まう博士 : なにを言っておるのじゃ!! これらの実験はすべてマウスで成功してからヒト
へ応用されているのじゃよ! チュー子 : ええー! じゃ マウスではじめに ES 細胞や体細胞の初期化が成功したのね 私たち 役に立ってるわね ふふふ チュウ太 : はかせ~ 早く STAP 細胞の解説をしてくださいよー いつになったらでてくるんですかー? まう博士 : そうあせるでない 2 人とも体細胞を初期化することの価値と難しさを理解できたかな チュウ太 : はーい チュー子 : はーい まう博士 : よろしい ではいよいよ STAP 細胞の話じゃ STAP 細胞もクローン ES 細胞や ips 細胞と同じように体細胞から作られる 違いは STAP 細胞は自然に存在する簡単な刺激を与えることで作られることじゃ チュー子 : でも遺伝子の代わりに刺激を与えるという違いじゃ STAP 細胞は ips 細胞の一種ってことになっちゃうわよ 大騒ぎしている理由がわからないわ まう博士 : 体細胞を多能性幹細胞に変えたという点だけならそう見えなくもないがな 大きなポイントは 自ら という違いだ クローン ES 細胞は核移植で ips 細胞は遺伝子を入れて体細胞を無理やり初期化しているのに対して STAP 細胞というのは簡単な刺激がきっかけとなり 体細胞自身が自らを初期化するのじゃ チュウ太 : 細胞が自分から初期化!? チュー子 : 分化した細胞が未分化に戻ったということ? でも博士はさっき 動物の細胞は植物とは違い 分化した細胞は絶対に未分化状態に戻らないって言ったわ まう博士 : そうなんじゃ この STAP 細胞が発表されるまで 世界中の生物学者は分化した体細胞は未分化に戻らないと信じていたのじゃ このわしも絶対に不可能だと思っておった チュウ太 : でもクローン ES 細胞や ips 細胞は体細胞から未分化に戻しているよ 違いがよくわからないなぁ まう博士 :ips 細胞は 分化した体細胞を未分化に戻したという点で画期的で ノーベル賞をとったのも当然のことじゃ じゃが その方法は人工的で 自然ではありえないことなのじゃ たとえばクラゲの遺伝子をマウスに入れることなど今では簡単にできるが そんな動物は自然には存在しない 遺伝子工学を使えば 自然ではありえないことでも簡単にできてしまうのだ
********** チュー子 :STAP 細胞は人工的じゃないの? まう博士 : その通り!STAP 細胞は 自然にある普通の刺激を分化した細胞へ与えただけで そこから先は細胞自身が 自分で未分化の状態に戻った細胞なのじゃ テレビや新聞では第 3の万能細胞という風に紹介されているが この発表の本当の価値は 動物細胞も植物細胞と同じように 分化した細胞にも未分化状態に戻る能力があった という発見についてなのじゃ チュー太 : それまでの常識を覆したということ? まう博士 : そうじゃ わしら生物学者たちが過去数百年にわたって信じていたことを この STAP 細胞を作ったことで覆してしまったのじゃ チュー太 : なんだか本当にすごいという気がしてきたよ 博士 まう博士 : しかもじゃ なんと STAP 細胞は胎盤にも分化できることがわかったのだ チュー太 : 胎盤ってなんですか? チュー子 : そんなことも知らないの? 胎盤は私たちが生まれるまで育ててくれた子宮の中にある臓器でお母さんが作るのよ まう博士 : うーん それも間違いだ 胎盤は私たちがまだ受精卵だったころ 自分で作った臓器であり お母さんが作ったのではないのだよ 生まれてくるときに捨ててしまうのだが チュー子 : はかせ STAP 細胞から胎盤ができることがなぜ重要なのですか? ********** まう博士 : 受精卵は胚盤胞期になる直前に最初の分化を行う 赤ちゃんになる部分と胎盤になる部分に分化するのじゃ 分化した後は もう赤ちゃんになる部分から胎盤を作ることはできないし ES 細胞は赤ちゃんになる部分から作られているため胎盤へは分化できない チュー太 :ips 細胞も胎盤を作ることはできないの? まう博士 : そうじゃ ips 細胞は体細胞を初期化することに成功した画期的なものなのだが 胎盤を作ることはできない つまり ips 細胞の技術では 体細胞を胚盤胞の赤ちゃんになる部分までしか初期化できないのだ チュー子 : 胎盤を作るためには 最初の分化よりも前の状態にまで戻さなければならないということね まう博士 : その通り STAP 細胞から胎盤ができたということは STAP 細胞はもっと前の段階まで初期化されたことを意味しているのじゃ チュウ太 : 最初の分化の前?
まう博士 :STAP 細胞はかなり受精卵に近いということじゃ チュー子 : ええっ!! それじゃ もしかしたら STAP 細胞をそのまま子宮へ移植したら子供になっちゃうんじゃない? まう博士 : いや まだまだそこまで受精卵に近づいてはおらんのじゃ それは今後の研究のお楽しみだな チュウ太 : なるほど より細胞が進化した いや戻った? わけだ すごい発見だ 科学はどんどん進歩するなぁ チュー子 : だから 生物の進化での大発見になるのね やっぱり この成果も私たちマウスの細胞からできたの? まう博士 : そうじゃよ 今回の細胞はマウスの生まれたての赤ちゃんからじゃ 大人の細胞からはこれからの課題じゃな チュー子 : そうね ニンゲンの治療に使うには大人からもできないとね まだまだこれからいっぱい実験することがありそうね チュウ太 :!!? まう博士 : ん? どうした? ********** チュウ太 : 山梨大の若山教授がどうして STAP 細胞にかかわっていたのかわかったんだ なんでクローン技術とか発生工学の権威の若山教授がこの仕事に関係しているのか不思議だったんだけど STAP 細胞もクローン技術の一種になるかもしれないからなんだね まう博士 : よくぞ見破った! チュー子 : そうか でもその仕事は山梨大に来る前 理化学研究所で行ったんでしょう そんなすごい研究を山梨大でできるの? まう博士 : もちろんじゃ 山梨大に新しく作られたライフサイエンス実験施設には 世界でも最高といえるほど発生工学の研究を行う設備が整っており 日夜実験を行っている STAP 細胞やクローン技術だけでなく キメラ技術や不妊治療に役立つ技術 宇宙での繁殖実験も行っておるぞ チュー子 : そんなすごい研究がこの山梨大でできるなんて知らなかったわ まう博士 : 地方の大学だからって侮れんぞ チュウ太 : まう博士 ありがとうございました よくわかった気がします 僕たちもなんかやる気が出てきました これからもよろしくお願いします まう博士 : よしよし その調子 そのうち 君たちの名前の由来も明らかとなるじゃろうて チュウ太 :?!
チュー子 :?! おわり