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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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15,000 例の分析では 蘇生 bundle ならびに全身管理 bundle の順守は, 各々最初の 3 か月と比較し 2 年後には有意に高率となり それに伴い死亡率は 1 年後より有意の減少を認め 2 年通算で 5.4% 減少したことが報告されています このように bundle の merit

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第 71 回日本産科婦人科学会学術講演会 (2018, 4, 11 名古屋 ) 専攻医教育セミナー 絨毛性疾患の疫学 診断 治療 名古屋大学 新美薫

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Transcription:

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起炎菌が経腟的に子宮頸管から子宮内膜 卵管 卵巣へと上行感染を起こすことにより生ずる 骨盤腹膜を含む内性器の炎症性疾患の呼称である

臨床的には卵管を含めた子宮付属器 骨盤腹膜における炎症性疾患 子宮付属器炎骨盤腹膜炎卵管留膿症ダグラス窩膿瘍 これらを合わせて骨盤内炎症性疾患 (pelvic inflammatory disease : PID) と総称することが多い

PID の危険因子

(PID の危険因子 ) 25 歳以下の若年者 PIDの既往 腟炎 細菌性腟症 頸管炎 複数の性的パートナー 排尿痛や尿道炎の症状をもつ男性との性交渉 子宮内避妊器具 ( intrauterine device : IUD) 挿入 免疫不全状態 (Bakken IJ et al, 2009 : BMC infect dis)

PID の症状

(PID の症状 ) 下腹痛 帯下の増量 発熱 性交痛 不正性器出血 右上腹部痛 ( 肝臓周囲炎発症時 )

PID の診断基準 (CDC) ( 米国 Centers for Disease Control and Prevention : CDC) { 必須診断基準 } 子宮頸部可動痛または子宮の圧痛または付属器の圧痛 { PID の診断に役立つ所見 } 1 口腔温 >38.3 2 異常な頸部または腟内の粘調膿性帯下 3 腟分泌物の検鏡で白血球異常増多 4 赤沈亢進 5CRP 上昇 6 淋菌またはクラミジアの子宮頸管内感染の存在 (CDC : MMWR, 2010)

PID の診断基準 (CDC) ( 米国 Centers for Disease Control and Prevention : CDC) { 特異的診断基準 } 1 子宮内膜組織診による子宮内膜炎の診断 2 経腟超音波や MRI による卵管肥厚や卵管留水症の所見 3 ドップラー検査で卵管の血流増加などの感染を推測させる所見 4 腹腔鏡での PID に一致する所見 ( 卵管留膿症の存在 ) (CDC : MMWR, 2010)

{ 必須診断基準 } 1. 下腹痛 下腹部圧痛 2. 子宮 / 付属器の圧痛 { 付加診断基準 } 1. 体温 38 2. 白血球増多 3. CRP の上昇 { 付加診断基準 } PID の診断基準 ( 産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2011) 1. 経腟超音波や MRI による膿瘍像確認 2. ダグラス窩穿刺による膿汁の確認 3. 腹腔鏡による炎症の確認

( 下腹痛 (PID 他 ) の鑑別診断 ) 1. 産婦人科領域 異所性妊娠 卵巣出血 卵巣腫瘍茎捻転 卵管炎 卵管腫瘍 子宮留血症 卵管留膿症 人工妊娠中絶時の子宮穿孔に伴う腸管損傷 2. 産婦人科以外の疾患 虫垂炎 大腸癌の穿孔 憩室炎 尿管結石

下腹痛内診で子宮周辺に圧痛 発熱 白血球増加 ( + ) ( - ) 経腟超音波断層法検査骨盤内腫瘤 経腟超音波断層法検査骨盤内腫瘤 ( + ) ( - ) ( + ) ( - ) 卵管留膿症ダグラス窩膿瘍 付属器炎骨盤腹膜炎虫垂炎 卵巣腫瘍茎捻転卵巣チョコレート嚢腫出血性黄体嚢胞子宮留血症 尿中 hcg ( + ) ( - ) 異所性妊娠流産 卵巣出血 ( 性感染症診断 治療ガイドライン 2011 より引用 一部改変 )

(PID の起炎菌 ) クラミジア 淋菌 子宮頸管から検出され 15% が上行感染を起こし発症 好気性グラム陰性桿菌 ( 大腸菌 : Escherichia Coli 他 ) 嫌気性菌 ( グラム陰性桿菌 :Bacteroides 属 ) ( グラム陽性球菌 :Peptostreptococcus 属 )

クラミジア感染症

( クラミジア検査法 ) 核酸増幅法 (PCR 法 TMA 法 SDA 法 ) 最も感度が高い 血清抗体測定法 免疫クロマトグラフィー法 分離同定法 核酸検出法

(PID の治療法 ) 外来治療が可能な場合 体温 38 未満 白血球 11,000 / μl 未満 腹膜炎を発症していない 腸蠕動の低下がない 経口摂取が可能 (The Stanford guide to antimicrobial therapy 2009)

(PID の治療法 ) 入院治療の適応 1 外科的な緊急疾患 ( 虫垂炎など ) を除外出来ない症例 2 妊婦 3 経口抗菌剤が無効であった症例 4 経口抗菌剤投与が不可能な症例 5 悪心 嘔吐や高熱を伴う症例 6 卵管 卵巣膿瘍を伴う症例 ( 産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2011)

クラミジア感染が原因と推定される PID の場合 マクロライド系またはキノロン系薬のうち 抗菌力の あるもの あるいはテトラサイクリン系薬を投薬する ( 性感染症診断 治療ガイドライン 2011)

( クラミジア感染症の PID の治療法 ) 1) アジスロマイシン ( ジスロマック ) 1 日 1,000mgX1: 1 日間 -- 妊婦 非妊婦 : 推奨レベル A 2) アジスロマイシン ( ジスロマック SR ) 1 日 2gX1: 1 日間 -- 妊婦 非妊婦 : 推奨レベル B 3) クラリスロマイシン ( クラリス クラリシッド ) 1 日 200mgx2:7 日間 -- 非妊婦 : 推奨レベル A 非妊婦 : 推奨レベル B 4) レボフロキサシン ( クラビット ) 1 日 500mgx1:7 日間 -- 非妊婦 : 推奨レベル B ( 性感染症診断 治療ガイドライン 2011)

クラミジア感染以外が原因と推定される PID の場合 軽症 ( 外来治療 ) : セフェムやニューキノロン系の内服薬を投与 中等症 : セフェム系 ( 第二世代まで ) 点滴静注 重症 : 第 3 世代以降のセフェムやカルバペネム系薬の点滴静注クリンダマイシンやミノサイクリンの点滴静注を併用可能 ( 産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2011)

( クラミジア感染症以外の PID の治療法 ) ( 軽症 ) 1. 経口セフェム系薬 1) セフジトレン ( メイアクト ) 300mg3X: 5 ~ 7 日間 2) セフカペン ( フロモックス ) 300mg3X: 5 ~ 7 日間 3) セフジニル ( セフゾン ) 300mg3X: 5 ~ 7 日間 2. 経口ニューキノロン系薬 1) レボフロキサシン ( クラビット ) 500mg1X: 5 ~ 7 日間 2) トスフロキサシン ( オゼックス ) 450mg3X: 5 ~ 7 日間 3) シプロフロキサシン ( シプロキサン )300mg3X: 5 ~ 7 日間 ( 産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2011)

( クラミジア感染症以外の PID の治療法 ) ( 中等症 ) 1. 注射用セフェム系薬 1) セフメタゾール ( セフメタゾン ) 1~2g 2X: 5 ~ 7 日間 2) フロモキセフ ( フルマリン ) 1~2g 2X: 5 ~ 7 日間 3) セフピロム ( ブロアクト ) 1~2g 2X: 5 ~ 7 日間 4) セフトリアキソン ( ロセフィン ) 1~2g 1~2X: 5 ~ 7 日間 ( 重症 ) 2. 注射用カルバペネム系薬 1) イミペネム ( チエナム ) 0.5~1g 2X: 5 ~ 7 日間 2) ドリペネム ( フィニバックス )0.5~0.75g 2~3X: 5 ~ 7 日間 ( 産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2011)

卵巣や卵管に骨盤内の炎症が波及した最も重篤な骨盤炎症性疾患 (PID) の 1 つ 卵管卵巣膿瘍 (tubo-ovarian abscess) 卵管留膿症

膿瘍を形成しないPID 抗生剤治療に反応し 保存的に治療が可能 膿瘍を形成したPID 抗生剤など保存的な治療にしばしば抵抗性

卵管卵巣膿瘍 卵管留膿症の診断 骨盤の自発痛 子宮頸部可動痛 付属器痛 発熱

閉経前の場合 経頸管による上行感染骨盤内手術後 閉経後の場合 子宮内操作の有無悪性疾患の有無に注意

( 卵管卵巣膿瘍 卵管留膿症の起炎菌 ) グラム陰性桿菌 ( 連鎖球菌 大腸菌 ) 嫌気性菌 ( バクテロイデス プレボテラ ) 淋菌やクラミジアが起因となることは少ない 緑膿菌 セラチア カンジダなど ( 易感染性患者 IUD 長期挿入 )

( 卵管卵巣膿瘍 卵管留膿症の治療法 ) 入院加療が原則 破裂および敗血症を合併した際の救命率は 25% ~50%* 破裂が疑われる際にはバイタルサインの安定が得られたら速やかに手術療法が必要 * (Angus DC et al, Crit Care Med : 2001) (Dombrovskiy VY et al, Crit Care Med : 2003)

( 卵管卵巣膿瘍 卵管留膿症の治療法 ) 抗生剤による保存的治療 経腟的ドレナージ CTガイド下ドレナージ 腹腔鏡下手術 開腹手術

( 卵管卵巣膿瘍 卵管留膿症の治療 : 抗生剤治療 ) 1 アンピシリン 2g 6 時間毎 点滴静注 2 硫酸ゲンタマイシン 初回投与 2mg/kg/body 点滴静注 2 回目以降の維持投与 1.5mg/kg/body 8 時間毎点滴静注 3 クリンダマイシン 900mg 点滴静注 8 時間毎

経腟的ドレナージ 穿刺 排膿 抗生剤注入 93% の症例で開腹手術を回避 (Gjelland K et al, 2005: Am J Obstet Gynecol)

腹腔鏡手術 膿瘍の切開 ドレナージを主目的 90%~95% の症例で治癒 (Henty-Suchet J et al, 1984 : J Reprod Med) (Henty-Suchet J et al, 2002 : J Am Assoc Gyne Laparoscopy)

開腹手術 抗生剤による保存治療無効例 膿瘍の破裂が疑われる 腹腔鏡操作不能例 洗浄 ドレナージのみ 片側付属器摘出術 両側付属器摘出術 + 単純子宮全摘出術

まとめ

PID は一般的に抗生剤治療が奏功する クラミジア感染は特に卵管通過障害や癒着を生じる原因となるため 確実な診断と治療が重要 重症化し膿瘍形成の場合 積極的に経静脈的な抗生剤投与や手術などの対応を行う