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地方公共団体の財務制度の 見直しに関する報告書 平成 27 年 12 月 地方公共団体の財務制度に関する研究会

地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書

地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書 < 目次 > Ⅰ 地方公共団体の財務制度の見直しの必要性 1 Ⅱ 地方公共団体の財務制度の見直しの基本的方向性 1 1 財務制度の今日的な課題 1 2 財務制度の見直しの基本的な考え方 2 Ⅲ 地方公共団体の財務制度の見直しのあり方について 3 1 会計年度の独立の原則の弾力化 3 (1) 歳出の会計年度所属区分の見直し (2) 予算年度開始前入札の可能化 (3) 事故繰越し要件の見直し 2 収入方法の多様化 6 (1) クレジットカードによる収入方法の見直し (2) 電子マネーによる収入方法の導入 3 支出方法の多様化 8 (1) クレジットカードによる支出方法の導入 (2) 電子マネーによる支出方法の導入 (3) 口座引き落としによる支出方法の導入 4 新たな契約方法等の導入 10 (1) リバースオークションの導入 (2) インターネットを利用した物品購入のあり方 5 指定金融機関に係る制度の見直し 12 (1) 市町村における金融機関の指定のあり方 (2) 指定金融機関の担保提供義務のあり方 6 その他の事項について 15 (1) 金銭債権の消滅時効 (2) 行政財産の貸付け範囲の拡大 (3) 公金に係る私人への徴収 収納委託のあり方 Ⅳ むすび 16

Ⅰ 地方公共団体の財務制度の見直しの必要性 現行の地方公共団体の財務制度の枠組みは 昭和 38 年の地方自治法改正により形作られ それ以後 時代の要請に応じ 個々の事項についての改正が行われてきたものの この間における情報通信技術 (ICT) の進展などの社会経済情勢の変化を踏まえた俯瞰的な見直しは行われていない 他方 地方公共団体の財務制度は 地方公共団体が行財政運営を行う上で 必ず経なければならない内部的な管理作用としての意義を持っている このため 地方公共団体の行政が公正で かつ効率的に行われるためには 地方公共団体の財務制度が社会経済情勢の変動を踏まえた合理的なものであることが求められる また 我が国は少子高齢化が進行し 人口減少社会となった中において 地方公共団体は医療 介護 教育 交通 災害対応等 幅広い分野においてサービス提供を行っていくことが必要となっており 行政コストの増大が見込まれることから 地方公共団体の事務執行には一層の効率化が求められる これは財務事務についても例外ではなく 社会経済情勢の変化に対応し 適正性を担保しつつ 最少の経費で最大の効果を挙げるため より効果的 効率的な財務事務の仕組みに改変していかなければならない これらのことを踏まえると 地方公共団体の財務制度を時代のニーズに合致したものとすることにより 地方公共団体の行政運営の円滑化や合理化に資するため 制度の見直しを実施すべきである Ⅱ 地方公共団体の財務制度の見直しの基本的方向性 1 財務制度の今日的な課題 (1)ICT の進展への対応近年における社会経済情勢の大きな変化の一つとして インターネット等をはじめとする ICT の進展と普及が挙げられる 我が国の経済活動では インターネットを介した取引が幅広く行われるとともに 決済手段についてもクレジットカードによる方法のみならず電子マネーによる決済方法も飛躍的に拡大してきているところである -1-

他方 地方公共団体においても電子納税等行政手続のオンライン化の取組が進められているものの 決済手続についてはマルチペイメントネットワークの利用やクレジットカードによる決済は一部にとどまっている 更に電子マネーについては その活用がこれからの課題である このように 地方公共団体の決済手続の ICT 化は一部に留まっており その原因の一つは財務制度が今日の ICT 化にキャッチアップしていないためであると考えられ これに対応した制度改正が期待されている (2) 財務制度における柔軟性の確保また 少子高齢 人口減少社会にあって 地方公共団体の自主性及び自立性を高めるための累次の地方分権改革の成果を活かして地域のニーズにあった行政を展開するためには 民間における経営の視点も取り入れ 効果的 効率的に行財政運営を行うことが必要である これらの課題に対応するためには 地方公共団体の経営資源を柔軟に活用することが求められるが 会計手続や財産管理に関する制度が画一的 硬直的なものとなっていることが制約になることが考えられる 最近の構造改革特区や規制改革特区等において 画一的な制度の特例を求める提案が多数みられるのは 現行の財務制度が 最近の地方公共団体の現場のニーズとマッチしていないことを表していると考えられ この観点での制度改正も必要である これは 地方公共団体における柔軟性の確保という点において 地方分権改革の推進に資するとともに 不適正な会計処理の防止にも寄与するものである 2 財務制度の見直しの基本的な考え方 当研究会では 財務制度の今日的な課題を踏まえ これからの時代を見据えた俯瞰的な検証 検討を行ったところであり 現時点において 見直しを行うべき事項について 制度化の方向性を明らかにしたものである 具体的には インターネット等をはじめとする ICT の進展等の社会経済情勢の変化に的確に対応するとともに 地方公共団体の財務会計手続における選択肢を多様化することや 財務制度の柔軟性を確保するこ -2-

とにより 地方公共団体の能率的な行政運営の確保を図り もって住民の福祉の増進に寄与することを目的に 現行の財務制度について 次の視点で所要の見直しを行うこととしたものである 1 現行制度では許容されていないため実施できないことを可能にすすること例 : 会計年度所属区分の見直し 口座引き落としによる支出等 2 現行制度ではその取扱いが不分明であるため実施が困難となってている事項について明確にすること例 : 電子マネーによる収入方法の導入等 3 現行制度において実施可能であるが 実態を踏まえて必要な制度的手当を行うこと例 : クレジットカードによる収入方法の見直し等 この基本的な考え方に基づき 財務制度についての見直しを行うべき具体的な事項は次のとおりである Ⅲ 地方公共団体の財務制度の見直しのあり方について 1 会計年度の独立の原則の弾力化 平成 20 年次からの会計検査院による国庫補助金の検査において 地方公共団体における預け金や一括払い等の不適正経理が指摘された これらの不適正経理の発生は 会計年度独立の原則や予算単年度主義等の会計制度が硬直的であることに起因しているという指摘もある 具体的には 地方公共団体における会計年度開始前や終了間際における予算執行の実態として 現行制度に適応させるために窮屈な運用になっていることから より実態に即した制度に見直すことが必要ではないかということである したがって 会計年度開始前及び終了間際における円滑な予算執行を確保するため 次の方針で制度の見直しをすべきである -3-

(1) 歳出の会計年度所属区分の見直し会計年度独立の原則に基づき 歳入及び歳出の会計年度所属区分を明確にする必要があり 現行制度上 工事請負費 物件購入費 運賃の類及び補助費の類で相手方の行為の完了があった後支出するものについての歳出の会計年度の所属区分については 当該行為の履行があった日の属する年度と整理され 当該行為の履行があった日 とは履行確認 ( 検査 ) の日と解されている しかし 庁舎管理や警備委託業務 電話交換業務及び補助費等 相手方の行為の完了が会計年度の末日近くまで要するような経費については 当該行為の履行確認 ( 検査 ) の時間が十分に確保できないことのほか 過重な事務負担が生じているという問題が指摘されている このことから 相手方の行為の履行があった日の属する年度を歳出の会計年度所属区分とする現行制度の基本的な考え方は維持しつつ 当該行為の完了が 支出負担行為を行った日の属する会計年度の末日までにあり かつ 当該会計年度の翌年度に当該行為の完了の確認等が行われ 一定期間内に当該行為の履行があったと認めたものについては 当該行為の完了があった日の属する年度に区分することとすべきである なお 翌年度の一定期間内に 履行確認できなかったことも想定され その場合は 履行確認が行われた会計年度 すなわち翌年度において支出することとなるものの その歳出予算については 支出負担行為を行った会計年度 ( 旧年度 ) において措置されているため これを翌年度において執行するには 予算を繰り越す必要があるが 会計年度経過後では繰越しの手続ができないという問題が生じる このため 翌年度の一定期間内において履行確認できなかった場合に 翌年度において新たに予算措置を講ずることなく 円滑に支出を行うことができるよう 履行確認できなかった場合には 旧年度の予算は翌年度の予算に繰越ししたものとみなす旨の規定を 併せて整備することが必要である (2) 予算年度開始前入札の可能化地方公共団体の支出の原因となる契約その他の行為 ( 支出負担行為 ) については 法令又は予算の定めるところに従い これをしなければならないものである このため 予算年度開始前においては 契約の -4-

締結はできないものであるが 入札手続についてどの段階まで実施可能かについても明確とはなっていないところである 一方 地方公共団体が調達するものの中には 情報システムの保守管理や警備委託業務など 予算年度当初には契約相手方との契約が締結され 予算年度当初から契約の効力を発生させなければ地方公共団体の事務の取扱いに支障を及ぼすと考えられるもので 毎年度調達するものが含まれている このような一定の調達については 毎年度 債務負担行為として予算でこれを定めることを繰り返すまでもなく 年度開始時から効力が発生する契約を 年度開始前に締結することができるようにすることが考えられる その際は 契約の相手方から見ても 予算が成立し 予算年度が開始しなければ契約の効力は発生しないことが明らかとなるように工夫をする必要がある また そのような扱いは 債務負担行為を設定しない点で 予算措置の例外となるものであり 財政の民主的統制を確保する観点からも 対象となる契約は条例で定める必要があるものと考えられる これらを制度化する際は 債務負担行為を設定することにより対処するべき案件との違いが明確になるようにし 具体的な契約対象について整理する必要があると考えられる (3) 事故繰越し要件の見直し現行制度上 事故繰越しについては 避けがたい事故のため年度内に支出が終わらなかったもの について可能であるところであるが 避けがたい事故 以外の事故繰越しの要件の必要性について 地方公共団体に調査を行ったところ 要件を追加しなければならないような事例は特段無かったところである このため 現状において 避けがたい事故 とは異なる要件を設ける必要はないものと考えられる -5-

2 収入方法の多様化 クレジットカードによる公金納付については 指定代理納付者制度として 平成 18 年の地方自治法の一部改正により制度化されたが 改正から 9 年が経過し 制度創設時と比べ クレジットカード決済の仕組みは複雑 多様化してきている また 民間の経済活動において電子マネーによる決済の件数や総額は飛躍的に拡大しており その利便性 効率性から 地方公共団体においても使用料 手数料等の収入方法として一定のニーズがあるものと想定される したがって 民間取引での決済方法の多様化を踏まえて 次の方針で規定の整備をすべきである その際には 今後 新たに生じる民間の決済方法を地方公共団体においても柔軟に取り入れることができるようにすることにも配慮すべきである (1) クレジットカードによる収入方法の見直し現行の指定代理納付者制度については 地方公共団体と納入義務者 指定代理納付者たるクレジットカード会社 ( イシュア兼アクワイアラー ) の三者を念頭に制度設計されている しかし クレジットカード決済の方法については 近年多様化してきており イシュアとアクワイアラーとが分離しているケースや決済代行業者が介在するケースが多く見られるようになっている このように クレジットカードの発行業務と代理納付業務とが分離してきている実情を踏まえ 現行規定上 指定代理納付者が 交付し又は付与する クレジットカード等に限定した仕組みとなっていることについて より柔軟に指定代理納付者が代理納付をできるようにするべきと考えられる また 地方公共団体は 納入義務者が指定代理納付者に歳入を納付させることを申し出た場合には これを承認することができ その場合に指定代理納付者が地方公共団体に歳入を納付したときは 当該承認があったときに遡って 当該歳入の納付がされたものとみなすこととされている しかしながら 水道料金などのように定期的に納入義務者から納付 -6-

がある歳入については クレジットカードで支払うことを最初に申し出ることで それ以降は個別の納入義務毎に申出をしなくてもクレジットカードで納付されることが一般的であるものの 制度上 個別の納入義務に係る承認がどの時点と整理されるものかが不分明ではないかとの指摘がある このことから 水道料金などについての納付時期について規定の明確化を図るべきと考えられる (2) 電子マネーによる収入方法の導入民間取引における電子マネーの普及や公金の納付方法の多様化の観点から 地方公共団体においても 電子マネーによる収入方法を可能とすべきと考えられる 民間取引におけるプリペイド方式の電子マネー決済の弁済効果については 一般的に 電子マネー取扱規則や加盟店契約上 電子マネー決済を行った時点 つまり 利用者の電子マネーが加盟店の端末に移転したときに 利用者の加盟店に対する弁済が完了するものとされている そして 地方公共団体においても電子マネーによる収入方法を可能とする場合には 民間取引における電子マネーの利点を活用でき 地方公共団体の運用においても混乱が生ずることがないと考えられることから 弁済効果の発生時期については 民間取引と同様にすることが適切であると考えられる この場合 電子マネーを使用した時点では 現金による納付はされていないことから 電子マネーを使用した時点で歳入が納付されたものとみなす必要があると考えられる これにより電子マネーを使用した時点で納付の効果を発生させることが可能となると考えられる このように 電子マネーを使用した時点で歳入が納付されたものとみなした場合 その時点では 地方公共団体に実際に現金は納付されていないことから 電子マネー事業者から地方公共団体への現金の確実な納付を確保する必要がある したがって 現金の確実な納付を確保する観点から 電子マネー事業者に必要な要件を設けることや 現金の納付に関して事故等がある -7-

場合に 地方公共団体が当該電子マネー事業者に対する調査などを行える権限を付与することも 制度化に当たって検討すべきであると考えられる 制度化する際には これら以外にも 納付の対象とすべき経費や電子マネーの定義についても併せて検討する必要があると考えられる 特に地方税の取扱いができるよう検討を行うことが必要である 3 支出方法の多様化 民間企業はもとより 国においては 既に 海外出張時の支払等においてクレジットカードによる支出が利用されており 資金前渡による支出と比べ 現金の紛失 盗難等のリスクを低減するといったメリットがあると考えられる また 電気 ガス及び水道料金などの公共料金の支払いについて 一般家庭や民間企業では いわゆる口座引き落としの方法として広く用いられている したがって 収入方法の多様化と同様に 民間取引での決済方法の多様化を踏まえて 次の方針で規定の整備をすべきである (1) クレジットカードによる支出方法の導入現在 国や地方公共団体において 高速道路料金や公用車の燃料給油代金の支払い 更に水道料金の支払いや海外出張経費の精算 少額の物品調達などにおいて クレジットカードを利用した支出が行われている これらの実施状況を分析すると 会計担当部署等においてカード決済を行う場合と 個別の職員にクレジットカードを貸与して 当該職員限りでカード決済を行う場合が考えられる このうち 会計担当部署等においてカード決済を行う場合には 物品の調達や役務の提供の対価として支払う場面で利用するものであり 現行制度上 特段問題となることはないと考えられる 一方 個別の職員がカード決済を行う場合 例えば海外出張時の使 -8-

用を想定すると 物品の調達や役務の提供を受ける契約を締結する権限及びクレジットカードを使用する権限の 2 つの支出負担行為権限を 職員が単独で行使しうることになる その場合には 支出負担行為という意思決定過程で期待される内部牽制機能が働かないことを踏まえ 本来 地方公共団体の長が有している支出負担行為の権限を個別の職員に分掌させる場合には あらかじめ 限度額及び内訳を定めることとする必要があると考えられる また 併せて 個別の職員に分掌可能な支出負担行為の範囲や支出負担行為を行った後の職員に対する報告手続についても定めることにより 適正な執行を確保するようにすべきと考えられる これらを制度化するとしても なおクレジットカードの不適正使用が発生する可能性があることから その対策として クレジットカード会社からカードの利用明細書が届いた際 職員からの報告と照らし合わせて確認を行い 不適正使用があった場合には 地方公共団体が負担するのは適正使用と認められた分とし 不適正使用の部分については職員個人に負担させるような仕組みとすることが考えられる このような方法を採る場合には クレジットカードに係る契約の運用実態や職員の賠償責任との関係などを踏まえ 更なる検討が必要であると考えられる したがって 適正利用を確保できる方策と併せてクレジットカードによる支出方法をより活用しやすくすることを考えるべきである (2) 電子マネーによる支出方法の導入電子マネーの使用については 一部の地方公共団体において 近距離の鉄道運賃の支払の場面で主に用いられているところである そして 地方公共団体の支出については 電子マネーカードに電子マネーをチャージした時点で行われたものと整理され その後は切手などと同様に 物品と考えられることから こうした範囲での使用については 現行制度においても許容されていると考えられる しかしながら 電子マネーへのチャージを支出と捉えるとしても 電子マネーの使途は 一般的に限定されておらず 様々な物品の調達や役務の提供を受ける際に使用することが可能であるため 適切な時期に必要最小限度の額をチャージする運用とすべきである その上で -9-

目的外の使用を防止し 予算で定める区分に沿った適正な使用を確保する観点から 管理簿などにより 使用履歴について記録 保管をすることが望ましいと考えられる また 一枚の電子マネーカードに複数の使途を持たせることは 支出科目の整理が煩雑なものとなるため 経費別に電子マネーカードを作成 保管することが適当ではないかと考えられる (3) 口座引き落としによる支出方法の導入現行制度における口座振替は 指定金融機関等に預金口座を設けている債権者から申出があったときは 会計管理者は指定金融機関等に通知する方法に限り認められているところである 一方 民間取引で用いられる口座引き落としについては 預金口座間の預金額の移転を行い これにより債権債務等の決済を行う点については 口座振替 に他ならないものの 現行制度と異なり サービス提供者 ( 債権者 ) が口座振替を申し出るものではないことや会計管理者から指定金融機関等への通知に相当する手続がないことから 現行制度上は許容されていないものと考えられる このため 現行制度に加えて 地方公共団体は 公共料金の支払い等の定期的に地方公共団体が支出する一定の経費については 当該指定金融機関等に預金口座を設けている債権者から当該指定金融機関に対する通知に基づき 当該指定金融機関をして口座振替の方法により支出させる方法についても許容すべきと考えられる その際は 現行の口座振替と異なり 債権者からの通知に基づき 当該指定金融機関の判断で口座引き落とし ( 口座振替 ) を行うこととなることから 口座引き落とし ( 口座振替 ) が完了後 会計管理者が支出額の確認を行うことや口座引き落としの対象となる経費についても併せて明確にすべきと考えられる 4 新たな契約方法等の導入 地方公共団体の契約については 一般競争入札 指名競争入札 随意契約又はせり売りの方法により契約を締結することとされている -10-

他方 民間での経済活動においては インターネットを使用した物品の購入やリバースオークション ( いわゆる競り下げ ) が利用されているところであり 国や地方公共団体においても試行的に実施されているところである これらの調達方式は 地方公共団体における従来の調達方式と比べると 調達に要する費用が少なく済む可能性があるとの指摘がある (1) リバースオークションの導入リバースオークションについては 定められた時間の範囲内に最低の価格を確認し 何度でもより安い価格を提示できることから 例えば 一般競争入札や指名競争入札における各一回限りの価格の提示による調達方法に比べて 調達費用を削減できる可能性があるとの指摘がある リバースオークションの対象については 現行制度で認められているせり売りの対象や 国や地方公共団体における試行的な実施の検証結果を踏まえると まずは 仕様が複雑ではない汎用的な物品の買入れ及び借入れを対象とし 段階的に拡大していくことが適当ではないかと考えられる 一方で 現在 国にはない調達方式であることや 国と比べると地元の中小企業との距離が近く また 地域経済の活性化の重要な担い手である地方公共団体の調達方式として 積極的に導入すべき利点があるか等については なお 課題として残るところである これらを踏まえれば 国や地方公共団体における現行制度の運用による試行的な実施状況を見極め 今後 地方公共団体の調達方式として積極的に導入するメリットが明らかとなった段階で改めて制度化の検討を行うことが望ましいと考えられる (2) インターネットを利用した物品購入のあり方インターネットを利用した少額の物品購入については 通常の地方公共団体の調達とは異なる点として インターネット上のショッピングサイトでの申し込みと同意 承諾により契約が成立すること 契約書や見積書の作成が一般的ではないこと 配送による納品には一定程度の日数を要すること 代金の決済はクレジットカードによることが -11-

一般的であることなどが挙げられる これらを踏まえると 現行の少額の随意契約の範囲内での運用であれば許容できるものと考えられる ただし インターネットによる調達に特有の商慣行を踏まえると 調達の対象となる物品は 実際の現物を確認できないことから 仕様が複雑ではない汎用的な物品で 組み立てや設置等の付随作業が必要でないものに限定することが適当ではないかと考えられる また 地方公共団体の内部意思決定を経て 調達する物品や調達の相手方を決定する場合には 当該決定までの間に 当該商品の在庫の品切れや商品の額や送料の変動などが生じることの無いように あらかじめ調達相手方にこれらの点を確認する必要がある なお 個別の職員に支出負担行為の一定の権限を分掌させることにより 注文の決定を即時に行うことが可能となり 上記の確認が不要となると考えられるものの こうした方法はクレジットカードによる支出と同じ課題を有しているところである そのほか 商品の未達 代替品の未発送等の調達相手方の原因による問題が生じた場合には 割賦販売法による支払停止の抗弁の適用がある場合のほか これらの問題が生じた場合を想定して 地方公共団体は クレジットカード会社との契約内容の中に 地方公共団体からの通知に基づき 当該調達の相手方に対するクレジットカード会社からの支払を留保する旨の条項を設けておくことも考えられる 5 指定金融機関に係る制度の見直し 指定金融機関制度は 昭和 38 年の地方自治法改正において法制化され 現在は 都道府県はその指定が義務付けられ 市町村は任意の指定となっている 元来金融機関は 現金の取扱いに最も熟達しており 公金取扱いの効率的運営と安全を図る見地からすれば 市町村においても指定金融機関を指定することを原則とするように見直すことが必要ではないかとの指摘がある また 指定金融機関については 地方公共団体への担保の提供が義務 -12-

付けられており この担保の目的については 将来発生する債務の履行を確保するために提供させるもので 最終的にはその担保の実行により賠償を受けることができることとしている (1) 市町村における金融機関の指定のあり方平成 26 年 4 月 1 日現在 指定金融機関を指定していない市町村は 全体の 3% 未満となっており その理由としては 収納事務取扱金融機関の指定のみで事務に支障がないことや 金融機関と条件面での折り合いが付かないことなどが挙げられた このような理由のある中で 市町村に一律に指定金融機関の指定を原則とすることは現実的ではなく 未だ指定していない市町村においては 近年の ICT の進展や決済制度の高度化等を踏まえ 指定金融機関の指定のあり方について検討することが望ましいものと考えられる なお 検討に当たっては 平成 24 年の郵政民営化法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令 ( 平成 2 4 年政令第 202 号 ) による地方自治法施行令の改正により 従前 指定金融機関として指定することができなかった郵便貯金銀行について 一般の金融機関がない市町村の区域に主たる事務所が所在する市町村については指定できることとなったことにも留意する必要がある (2) 指定金融機関の担保提供義務のあり方指定金融機関が提供する担保の内容については その種類及び価格等を指定契約中に定めておくことが通例となっており その際は 制度上 指定金融機関が 指定代理金融機関及び収納代理金融機関の責任も併せて地方公共団体に対して負うこととされていることも踏まえて定める必要があると考えられる この担保は 将来発生する債務の履行を確保するために提供させるものであるが 地方公共団体の決済用預金については預金保険制度により全額保護の対象であることや指定金融機関から提供される担保の処分については過去 10 年間実績はないなど 形骸化しており 担保の管理コストなどの負担が生じていることから 義務付けを見直すべきとの意見がある -13-

しかし 担保提供の前提となる損害賠償責任が生じる 公金の出納事務の義務を履行しないケースとしては 例えば 指定金融機関の決済システムのトラブル等により 一時的に指定金融機関の決済サービスが使用できない場合 支払いを適切なタイミングで行えないことによる住民への賠償に充当することが考えられる また 預金事務の義務を履行しないケースとして 例えば 金融機関の破綻時を想定すると 地方公共団体の有する決済用預金については預金保険制度により全額保護の対象であるものの 地方公共団体から債権者への支払いが滞ったことにより発生する遅延利息や損害賠償金など保護対象外の損害に充当することが考えられる こうしたケースが想定されないわけではないことを踏まえると 担保提供義務の必要性が全くないとはいえないと考えられる ただし 各地方公共団体においては 指定金融機関に求める担保の種類及び価格等をこれまでの慣例にとらわれることなく 想定される場面や額などを考慮して定めることが望ましいと考えられる また 金融機関の状況や取り扱う事務の内容によっては あらかじめ担保を提供させるほどの損害賠償責任が発生するリスクがほとんど考えられない場合もあると思われる このため 担保提供義務は維持した上で 指定金融機関は地方公共団体が指定する仕組みであることから 長等が実態的に不要と判断した場合に その義務を解除する方策が考えられる 更に進んで 一般的に 担保提供義務は無くした上で 指定契約や私法による損害賠償責任によるのではなく 地方自治法上 指定金融機関の賠償責任に関する規定を設けることで 安全な公金の出納や保管を確保する方策が考えられるところである このように 担保提供義務のあり方について考えられる方策を整理したところであるが 見直しに関しては様々な意見があるところであり 見直しを行った場合の影響などを見極めた上で 具体的な見直しをすることが必要である -14-

6 その他の事項について 本研究会では 上記の事項のほか 民法の見直しや地方公共団体からの意見を踏まえて次の事項についても検討を行ったところである (1) 金銭債権の消滅時効地方自治法で定める金銭債権の時効については 他の法律に定めがあるものを除くほか 5 年間で消滅することとされている 地方自治法の適用を受けるのか 又は他の法令の適用を受けるのかについては 個々の債権により判断され 他の法律 には民法も含まれることから 適用関係がしばしば不明確となる場合がある 今般 民法の一部を改正する法律案が国会に提出されており 改正案では これまで職業別に定められていた短期消滅時効が削除されるとともに 新たに 権利を行使することができることを知った時 という債権者の主観を考慮した起算点から 5 年の消滅時効が設けられた また 民法改正案に伴い 地方自治法第 236 条の規定についても 地方公共団体の金銭債権の消滅時効の時効期間の起算点を客観的起算点とすることのほか 民法と同様の文言に改める改正を行おうとしているところである 今回の民法改正案により 従来の短期消滅時効に係る債権の時効期間が地方自治法で定める金銭債権と同一となったことで 未だ課題はあるものの 実務上の支障は相当程度解消されるものと考えられる 地方自治法の時効に係る議論については 民法改正案の審議の動向を踏まえたものとすべきであり 今後の国会審議を注視する必要がある (2) 行政財産の貸付け範囲の拡大行政財産の貸付けについては 国有財産制度にならって平成 18 年にその対象が拡大されたところであり 庁舎等の余裕部分については その床面積又は敷地が貸付けの対象とされている 近年 再生可能エネルギーの普及 拡大に伴い 地方公共団体の庁 -15-

舎等の屋根を太陽光発電事業者に貸し付けることにより 太陽光パネルを設置させたいとの要望があるところである この点に関しては 現行の行政財産の目的外使用許可によっても対応可能であるものの 地方公共団体以外の者に長期安定的な財産利用を行わせるためには 行政財産の貸付けの対象に 屋根や内外壁面を加えることが考えられるところである (3) 公金に係る私人への徴収 収納委託のあり方現行制度上 原則 公金の徴収等の権限を私人に委任等をさせることは禁止されており 法律又はこれに基づく政令に特別の定めがある場合には例外的に私人への徴収等の委託が認められている 現行制度では 徴収又は収納を委託できる歳入として 使用料や手数料などが 収納のみを委託できる歳入として 地方税が定められているところであり 私人に委託できる歳入については 平成 15 年以降 地方公共団体の要望を踏まえて 逐次追加されてきたところである 今回 更に追加すべき具体的な歳入は特段見いだせなかったところであるが 地方公共団体において収納を委託できる歳入を柔軟に追加することができる仕組みとしては 現行の地方税の私人への収納委託の制度と同様の枠組みにおいて 歳入の対象を条例又は規則で定める仕組みが考えられるところである Ⅳ むすびこれまでの地方公共団体の財務制度は 公金の適正執行や現金 財産の安全な管理を重視して構築されていたということができ 今後もこれらの視点は基礎とすべきと考えられる しかし 昭和 38 年の抜本的な見直しから 時代は推移し 社会経済情勢は大きな変化を遂げた ICT が進展し 社会システムの効率化やサービス水準の高度化が進むと同時に 人口減少社会にあって 資産 人材等の有効活用により 活力や生産性を維持 向上することが求められている 地方公共団体の行財政運営も例外ではなく 中でも財務制度について -16-

は 我が国の社会経済情勢の変化に対応していくことが求められている すなわち これまで重きを置いていた適正執行や安全管理といった視点は担保しつつ 時代の変化に合わせて どのように より効率性や柔軟性を持った制度へと変革させていくかが問われているといえる 地方公共団体の財務制度は まさに変革の時期を迎えており 今後とも検討の歩みを止めることなく 一つ一つの課題に丁寧に取り組み 着実に進めていくことが必要である なお 地方公共団体の財務制度の基本的事項については 法律又はこれに基づく政令で規定することが必要である 同時に 地方公共団体の判断や意思決定に委ねるべき事項については 条例又は規則により定めるという視点も重要であると考えられる また 財務制度に関する本質的な理念として 公金の適正執行の確保や自主的統制の保障等は将来にわたり通用すると考えられるところである 今後 これらの点にも留意しつつ 本報告書の内容をもとに 地方公共団体の意見などを踏まえながら 具体的な法制化に向けた作業を進めていくべきである -17-

地方公共団体の財務制度に関する研究会 開催要綱 構成員名簿 開催実績

地方公共団体の財務制度に関する研究会開催要綱 第 1 目的 地方公共団体の財務制度の見直しについて これまでの地方分権改革推進会議や地方行財政検討会議での議論を踏まえ 制度化に向けた検討を詳細に行う 第 2 名称 本研究会は 地方公共団体の財務制度に関する研究会 ( 以下 研究会 という ) と称する 第 3 構成 研究会は別紙のメンバーをもって構成する 第 4 座長 (1) 研究会に 座長 1 人を置く (2) 座長は 会務を総理する (3) 座長に事故があるとき又は座長が欠けたときは 座長が指名する者がその職務を代理する 第 5 議事 (1) 研究会の会議は 座長が招集する (2) 座長は 必要があると認めるときは 必要な者に研究会への出席を求め その意見を聴取することができる 第 6 その他 (1) 研究会の事務局は総務省自治行政局行政課に置く (2) 本要綱に定めるもののほか 研究会に関し必要な事項は 座長が定める -21-

地方公共団体の財務制度に関する研究会構成員名簿 ( 座長 ) うすい碓井 ( 座長代理 ) もりた森田 みつあき光明 ひろき宏樹 明治大学法科大学院教授 東京大学大学院法学政治学研究科教授 ( 構成員 ) かない金井きむら木村しらはま白濱たてべ建部とおやま遠山なかやま中山 はやさか 早坂みよし三好やまもと山本 ( 前構成員 ) いむら井村ひろた廣田 わたなべ渡邉あだち安達いりえ入江 まる丸 えりか惠里可 たくまろ琢麿ひろと博人 みやび雅 ひろゆき宏幸まさゆき正行 かつじ 勝治のりまさ規正りゅうじ隆司 たく琢 みちと達人 じん仁 としかず利一 だい大 ひろゆき裕之 文教大学国際学部准教授千葉大学大学院専門法務研究科教授東京都会計管理局管理部会計企画課長 [ 平成 27 年度第 3 回 ~] 成蹊大学法学部准教授千葉銀行地方創生部長 [ 平成 27 年度第 2 回 ~] さいたま市財政局契約管理部長山形県会計局会計課長 [ 平成 27 年度第 1 回 ~] 山梨学院大学法科大学院教授 [ 平成 26 年度第 1 回 ~] 東京大学大学院法学政治学研究科教授 ( 構成員は 五十音順 敬称略 ) 東京都会計管理局管理部会計企画課長 [ 平成 25 年度第 1~7 回 ] 横浜国立大学大学院国際社会科学 [ 平成 25 年度第 1~7 回 ] 常陽銀行公務部公務グループ次長 [ 平成 25 年度第 1~7 回 ] 山形県会計局会計課長 [ 平成 26 年度第 1~4 回 ] 東京都会計管理局管理部会計企画課長 [ 平成 26 年度第 1~4 回 平成 27 年度第 1~2 回 ] 横浜銀行営業統括部公務金融渉外副部長 [ 平成 26 年度第 1~4 回 平成 27 年度第 1 回 ] ( 前構成員は 参加当時の役職名 敬称略 ) -22-

地方公共団体の財務制度に関する研究会開催実績 平成 25 年度 ( 計 7 回 ) 平成 25 年 7 月 25 日第 1 回研究会 地方公共団体における財務制度について 地方公共団体における財務制度の検討の視点について フリーディスカッション 8 月 28 日第 2 回研究会 財務制度の見直しの基本的な考え方について 本研究会における具体的な検討項目について 10 月 17 日第 3 回研究会 会計年度 予算及び決算に関する具体的な検討項目について 収入に関する具体的な検討項目について 11 月 18 日第 4 回研究会 収入に関する具体的な検討項目について 支出に関する具体的な検討項目について 12 月 12 日第 5 回研究会 支出に関する具体的な検討項目について 現金等に関する具体的な検討項目について 平成 26 年 2 月 7 日第 6 回研究会 契約に関する具体的な検討項目について 財産に関する具体的な検討項目について 3 月 4 日第 7 回研究会 時効に関する具体的な検討項目について 地方公共団体の財務制度の見直しに関する中間的な論点整理 ( 案 ) について -23-

平成 26 年度 ( 計 4 回 ) 平成 27 年 1 月 30 日第 1 回研究会 平成 25 年度の研究会のとりまとめ内容について 今後の検討の方向性について 2 月 13 日第 2 回研究会 地方公共団体における収入方法の制度化の検討 ( 電子マネー クレジットカード ) 2 月 27 日第 3 回研究会 地方公共団体における収入方法の制度化の検討 ( 電子マネー クレジットカード ) 地方公共団体における支出方法の制度化の検討 ( クレジットカード ) 3 月 19 日第 4 回研究会 地方公共団体における支出方法の制度化の検討 ( クレジットカード 電子マネー ) その他の収入 支出に関する論点 平成 27 年度 ( 計 6 回 ) 6 月 9 日第 1 回研究会 口座引き落としによる支出方法の導入に係る論点と対応 ( 案 ) について クレジットカード及び電子マネーによる支出方法の制度化の方向性 電子マネーによる収入方法の制度化の方向性 ( 弁済効果の発生時期 ) 7 月 2 日第 2 回研究会 電子マネーによる収入方法の制度化の方向性 ( 弁済効果の発生時期 ) 公金に係る私人への徴収 収納委託のあり方に係る論点と対応 ( 案 ) について 会計年度及びその独立の原則の弾力化に係る論点について -24-

8 月 6 日第 3 回研究会 会計年度及びその独立の原則の弾力化に係る論点と対応 ( 案 ) について 指定金融機関制度のあり方に係る論点について 8 月 31 日第 4 回研究会 会計年度及びその独立の原則の弾力化に係る論点と対応 ( 案 ) について 指定金融機関制度のあり方に係る論点と対応 ( 案 ) について 入札契約制度のあり方に係る論点について 9 月 15 日第 5 回研究会 入札契約制度のあり方に係る論点と対応 ( 案 ) について その他の論点について 地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書 ( 骨子案 ) について 11 月 9 日第 6 回研究会 地方公共団体の財務制度の見直しに関する報告書 ( 案 ) について -25-