に加え 病院勤務医の負担が増えるなかで 平成 16 年に始まった新臨床研修制度は疲弊した勤務医を直撃し 医療崩壊が決定的なものとなりました 新臨床研修制度では 卒業後に 2 年間の初期研修があり この間は医局員の補充がありません こうした状況を考慮して 研修医を除いた医療施設従事者の推移をみると 平

Similar documents
1. 北海道 ( 医師数データ集 )(218 年版 ) 目次 北海道 南渡島医療圏 南檜山医療圏 北渡島檜山医療圏 札幌医療圏 後志医療圏 南空知医療圏 中空知医療圏 北空知医

医師確保のための実態調査(H )

診療所ごとの診療状況 一方 診療所では 外来診療を実施 と回答した診療所は 73 か所 (36.3%) 入院診療を実施 と回答した病院は 2 か所 (1.0%) となっており いずれも実施していない との回答が 124 か所 (61.7%) であった 診療所のてんかん診療実施状況 ( 有効回答数 =

PowerPoint プレゼンテーション

表紙

(2) スタッフ数診療所 ( 医科 歯科合計 ) に勤務するスタッフ数 ( 常勤換算 ) は 3 年前より 7 万人 (+7.4%) 増加し 104 万人となりました 医科診療所 73 万人 歯科診療所 31 万人の内訳です 1 施設平均のスタッフ数 ( 右図 ) は 医科診療所は 2002 年から

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

平成30年度 患者様満足度調査 【外 来】

Microsoft PowerPoint - 参考資料

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向について 横ばい との見方が拡大自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (40.0%) が最も多く 続いて 横ばい (35.6%) 増加 (23.3%) の順となっている また 1 年後 については 横ばい (41.1%) が最も

2009年8月17日

調査要領 1. 調査の目的 : 人口減少による労働力不足が懸念されるなかで 昨年 4 月には女性活躍推進法 ( 正式名称 : 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 ) が施行されるなど 女性の社会進出がさらに進むことが期待されている そこで 女性の活躍に向けた取り組み状況について調査を実施す

最終.indd

63-3.ren

水光No49 最終.indd

きずな 第9号.indd

2009年8月17日

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

調査結果の概要 1. 自社チャンネルの加入者動向については消極的な見通しが大勢を占めた自社チャンネルの全体的な加入者動向としては 現状 では 減少 (50.6%) が最も多く 続いて 横ばい (33.7%) 増加 (13.5%) の順となっている 1 年後 についても 減少 (53.9%) 横ばい

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

名称未設定

2014 年 11 月 13 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会 4 若手医師のための企画 2 生粋の皮膚科開業医が行う美容皮膚科 川端皮膚科クリニック 理事長川端康浩 はじめに皮膚科開業医として日々の皮膚科診療の中で 患者から しみ や しわ お化粧のことについて尋ねられることは日常茶飯事です

2017年度患者さん満足度調査結果(入院)

1

山梨県地域医療再生計画 ( 峡南医療圏 : 救急 在宅医療に重点化 ) 現状 社保鰍沢病院 (158 床 ) 常勤医 9 名 実施後 社保鰍沢病院 峡南病院 (40 床 ) 3 名 市川三郷町立病院 (100 床 ) 7 名 峡南病院 救急の重点化 県下で最も過疎 高齢化が進行 飯富病院 (87 床

求人施設案内一覧.xlsx

親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

平成 27(2015) 年エイズ発生動向 概要 厚生労働省エイズ動向委員会エイズ動向委員会は 3 ヶ月ごとに委員会を開催し 都道府県等からの報告に基づき日本国内の患者発生動向を把握し公表している 本稿では 平成 27(2015) 年 1 年間の発生動向の概要を報告する 2015 年に報告された HI

< F2D906C8CFB93AE91D48A77322E6A7464>

< F2D95F18D908F E D8A EF98B8B>

図 3. 新規 HIV 感染者報告数の国籍別 性別年次推移 図 4. 新規 AIDS 患者報告数の国籍別 性別年次推移 (2) 感染経路 1 HIV 感染者 2016 年の HIV 感染者報告例の感染経路で 異性間の性的接触による感染が 170 件 (16.8%) 同性間の性的接触による感染が 73

TKC医業経営指標に基づく経営動態分析

CW6_A3657D13.indd

都道府県別 不足感 ランキング 危機的に不足 不足 どちらかと言えば不足 の合計が高い順 順位 都道府県 どちらかと危機的にどちらかと不足合計足りている言えば足り不足言えば不足ている 合計 わからない 回答数 1 福島県 33.3% 40.0% 13.3% 86.7% 2.2% 2.2% 4.4%

多摩けいざい78号

Microsoft PowerPoint - gennjyou.ppt [互換モード]

政策課題分析シリーズ14(本文2)

日本のプロ野球に対する関心を示した表 3.1 および図 3.1 をみると スポーツニュース で見る (52.9) に対する回答が最く テレビで観戦する (39.0) 新聞で結果を確 認する (32.8) がこれに続く また 特に何もしていない (30.8) も目立った 2) 性別とのクロス集計の結果

第2部

Microsoft Word _発刊にあたって.doc

ECONOMY TOPICS

世帯収入 DI 大幅な改善現在の 世帯収入 DI ( 増えた やや増えた ) と回答した割合から 減った やや減った と回答した割合を引いた値 ) は で前回 (11 年 6 月 :-24.6) から +6.8 ポイント上昇した 震災後に混乱していた企業のサプライチェーンが回復し生産体制

スライド 1

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

親と同居の壮年未婚者 2014 年

03 日欧流通比較調査 (3)

第2部

Microsoft Word - meti-report

表紙.indd


図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

PowerPoint プレゼンテーション

10_12A-20.pdf

IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

TOHOKU UNIVERSITY HOSPITAL 今回はすこし長文です このミニコラムを読んでいただいているみなさんにとって 救命救急センターは 文字どおり 命 を救うところ という印象が強いことと思います もちろん われわれ救急医と看護師は 患者さんの救命を第一に考え どんな絶望の状況でも 他



< C964D91E58A77914F8AFA97D58FB08CA48F C512E786C73>

<4D F736F F D20819A8E9197BF B8BE682CC8CBB8FF382C6906C8CFB90848C >

図 1 左側は 全病院における病床規模の分布を 右側は回答者施設の病床規模の分布を示す 200 床以上 ~500 床未満 500 床以上では全体に占める割合に比べて回答者の割合がやや高く 200 床未満では やや低い 以下 回答施設全体の統計要約は この点を考慮に入れてみる必要がある 図 1 全病院

平成27年版高齢社会白書(全体版)

目次 要旨 1 Ⅰ. 通信 放送業界 3 1. 放送業界の歩み (1) 年表 3 (2) これまでの主なケーブルテレビの制度に関する改正状況 4 2. 通信 放送業界における環境変化とケーブルテレビの位置づけ (1) コンテンツ視聴環境の多様化 5 (2) 通信 放送業界の業績動向 6 (3) 国民

H I T A C H I 課題を解決する方策 高梁 新見及び真庭における課題を解決する方策 (1) 課題 : 圏域面積が県の 32% を占める広い圏域であるが 救命救急センターや周産期母子医療センターがなく 中小規模 の病院が救急医療を担っている また 救急搬送では 圏域外搬送の割

人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背

各質問項目の単純集計結果 設問 1. 性別 男性 女性 無回答 設問 2. 年齢 合計 ( 改 3) 代 代 代 代 代 1767

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

質問 1 何歳から 長生き だと思いますか? 男性 女性ともに 80 歳 がトップ ( 合計 :42.3% 男性 :43.2% 女性 41.3%) 平均すると 男性が 81.7 歳 女性が 83.0 歳 と女性の方がより高年齢を 長生き と思うという 傾向があり 女性の 5 人に 1 人 (20.8

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

東邦大学羽田空港国際線クリニック 高木賢治 大森病院臨床研修プログラム 選択専攻科目 各診療科 東京医科大学病院 平山陽示 循環器内科 森山記念病院 伊藤 嘉晃 森山リハビリテーション病院 関東

調査の概要

2. 身体障がいの状況 (1) 身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) 平成 28 年 6 月 30 日現在の身体障害者手帳所持者の身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) をみると 肢体不自由が 27,619 人 (53.3%) と全体の過半数を占めて最も多く 次いで 内部障がいが 15,9

2017 年 2 月 27 日株式会社カカクコム 価格.com 生命保険 に関する調査結果を発表加入率は約 8 割 若年層ほど低い傾向 加入中の生命保険は終身タイプがトップ将来への不安?20 代の加入目的 老後保障 貯蓄 が他世代よりも高い結果に補償内容への理解度 十分理解できていない加入者が 53

Slide 1

日本医師会「2008年度緊急レセプト調査(4~6月分)」結果報告(2008年8月6日)

2 院内処方 ( 入院外 投薬 ) 及び院外処方 ( 薬局調剤 ) における薬剤点数薬剤点数階級別件数の構成割合を入院外の投薬 ( 以下 院内処方 という ) 薬局調剤( 以下 院外処方 という ) 別にみると ともに 500 点未満 が最も多く それぞれ 67.0% 59.4% となっている また

2005 年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要 2005 年 5 月 31 日 目次 調査方法...2 ファイル交換ソフトの利用者数の実態 ファイル交換ソフトの利用率とその変化 ファイル交換ソフトの利用者数とその変化...5 ファイル交換の実態 利用されてい

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D C837282C98AD682B782E9837D815B F B835E91E688EA92652E707074>

2) 親子関係 家族との生活に満足している について と の調査と比較した 図 12-2 に 示しているように の割合は 4 かとも増加傾向が見られた 日 本 米 中

スライド 1

トラック運送事業の経営実態 全日本トラック協会は全国のトラック運送事業者 2,188 社 ( 有効数 ) の平成 25 年度事業報告書に基づき集計 分析した 経営分析報告書 ( 平成 25 年度決算版 ) をまとめた 全日本トラック協会が平成 4 年度から発行しているこの報告書は 会員事業者が自社の

緊急臨時的医師派遣事業について 派遣元医療機関 ( 登録医師 ) 派遣先医療機関募集 会員 各位 会長長瀬清 本道では医師不足 偏在の影響により地域医療が崩壊寸前であり 住民は大きな不安を感じ 現実に他地域での受療 あるいは転院等を余儀なくされている地域も出現し 非常に憂慮しております 当会では 北

【資料1-1】人口ビジョン編・表紙(案) 省略版

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

< F2D F D834F EC924F8F4390B3817A2E6A7464>

Microsoft PowerPoint - ○150828【資料3】小児医療に関するデータ


長期失業者の求職活動と就業意識

( 様式 1-1) 日本専門医機構認定形成外科専門医資格更新申請書 20 年月日フリガナ 氏 名 生年月日年月日 所属施設 ( 病院 医院 ) 名 勤務先住所 連絡先 ( 電話 : - - ) ( FAX : - - ) アドレス 1: アドレス 2: 専門医登録番号 - 医籍登録番号

h

II 章. 都道府県別 二次医療圏別データ 1. 北海道 宗谷 後志 札幌 留萌 南空知 上川北部 北空知上川中部中空知 富良野 十勝 遠紋 北網 釧路 北渡島檜山 西胆振 東胆振 日高 南檜山 南渡島 32

40,000 人 36,000 人 32,000 人 被保険者 被保険者数の年間推移 [ 年齢階層別 ] ( 5 カ年比較 / 平成 25 年 ~ ) 被保険者数が多い年齢層は 25~49 歳で 中でも最も多いのは 40~44 歳の階層となっています 28,000 人 24,000 人 20,000

Microsoft Word - 【最終版】花粉症_0531.doc

ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

平成12年

<4D F736F F F696E74202D208F9790AB82CC94FC976588D38EAF82C68D7393AE82C98AD682B782E9837D815B F B835E E838A836A E D >

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

「オリンピック・レガシーに関する意識調査」(第2回)結果概要

Transcription:

2016 年 1 月 28 日放送 第 31 回日本臨床皮膚科医会 3 シンポジウム 3-1 皮膚科医療を取り巻く現状について 若林皮膚科医院院長若林正治はじめに平成 16 年に始まった新臨床研修制度の影響で 地方都市を中心に医師不足が深刻化し 医療崩壊という言葉も生まれました 各診療科とも研修制度開始により医師数は減少しますが その後の回復程度は診療科によって異なっています 医師数の増加率だけをみると皮膚科は恵まれた科として扱われていますが 病院の皮膚科勤務医はほとんど増えていないのが現状です ここでは最近の主たる診療科の医師数の推移について分析するとともに 皮膚科の置かれている現状について考えてみたいと思います 医師数の年次推移について厚労省の医師 歯科医師 薬剤師調査をみると 平成 24 年 12 月時点で医師の総数は 30 万人を超えました そのうち病院や診療所に勤める医療施設従事者は 28.9 万人です ( 図 1) 平成 6 年から平成 24 年までの病院や診療所の医師数の推移をみると 病院勤務医の割合は 64% 前後とほとんど変化はありませんが 最近 10 年では病院勤務医の増加数は診療所医師の増加数を上回って少しづつ増えています ところで 平成 18 年頃から医師不足が表面化し 医療崩壊が社会問題化しました 医療崩壊の一因に挙げられるのが長年続けられた低医療費政策だと考えられますが 医師不足

に加え 病院勤務医の負担が増えるなかで 平成 16 年に始まった新臨床研修制度は疲弊した勤務医を直撃し 医療崩壊が決定的なものとなりました 新臨床研修制度では 卒業後に 2 年間の初期研修があり この間は医局員の補充がありません こうした状況を考慮して 研修医を除いた医療施設従事者の推移をみると 平成 16 年 平成 18 年の病院勤務医は前回調査より 2,500 人程度減少しています ( 図 2) これは新臨床研修制度により医局員の補充がないばかりか 開業や定年により病院を離れる先生がいたためで 平成 14 年と同じ勤務医数に回復するまでに数字上は 6 年を要しており 病院勤務医にとって新臨床研修制度の導入がいかに大変だったかを物語っています 主たる診療科の医師数の増加についてそこで 新臨床研修制度の影響が大きかった病院勤務医の医師数の伸び率について調べてみますと 多くの診療科で平成 18 年を分岐点として急速に回復していることがわかります ( 図 3) 病院勤務医全体の医師数は平成 10 年に比べて 13% 伸びていますが 勤務医の半数以上を占める 内科 外科 の医師数は逆に減少しています これは 内科 外科領域が多くの専門分野に細分化しているためで 単に一般内科 一般外科という分類では現状を正確に把握することができません そこで 細分化した内科 外科領域を再分類し 内科系 外科系 として集計し直してみますと 平成 18 年以降は 内科系 外科系 の勤務医数は順調に回復していることがわかります ( 図 4) 一方で 眼科や耳鼻科では病院勤務の医師数は回復が遅れています 平成 10 年から平成 24 年までの病院勤務

医の実際の増加数を男女別に集計してみますと 約 9 割近くが女性医師の増加であることがわかります ( 図 5) 近年 医学部入学者に占める女性医師の割合は約 3 分の 1 まで増え 若年層における女性医師の増加は目を見張るものがありますが 男性医師は世代交代などの影響もあり あまり増えていないのが現状です 内科系 精神科 小児科 整形外科は男性 女性医師ともに順調に増加しています 外科系 では女性医師が急激に増えていますが 元来 外科系 はほとんどが男性医師ばかりでしたので女性医師の進出が際立っています 産婦人科も女性医師が急速に増えたことで病院勤務の医師数はなんとか確保されていますが 男性医師の減少は非常に目立ちます ところで 従来より眼科 皮膚科は女性医師の多い診療科として有名ですが これらについてみてみますと 眼科では男性医師が減少しており 女性医師も増えていないことから眼科の勤務医数は平成 10 年より 1 割程減少しています 一方 皮膚科は男性医師が減少するなかで 女性医師の増加により病院勤務の医師数を辛うじて維持しているという状況です 皮膚科の医師数の増加について平成 24 年 12 月時点での皮膚科医の数は 8,686 人ですが これは医療施設従事者 28.9 万人のわずか 3.0% にしか過ぎません 平成 10 年から平成 24 年までの 14 年間に勤務医 開業医を含む皮膚科全体の医師数の増加は 1,614 人になっています ( 図 6) 新臨床研修医制度の影響もあって 皮膚科医の増加の 9 割は開業医が増えたことによるもので 勤務医はわずかしか増えていません 皮膚科医全体の増加数を男女別に集計してみますと 男性医師の数は平成 12 年から変化していませんが 増加した皮膚科医のほとんどが女性医師であることがわかります 病院の皮膚科勤務医はこの 14 年間に 183 人しか増加していません ( 図 7) 新臨床研修医制度が始まる前から男性医師はやや減少傾向にありましたが 研修制度開始とともに男性

医師は急激に減少しています 平成 18 年以降は男性医師の減少もやっと歯止めがかかり 横ばい状態を何とか維持している状況です 皮膚科勤務医の全体数は平成 18 年以降は増加に転じていますが 主に女性医師が増えるという構図になっており 皮膚科勤務医に占める女性医師の割合は平成 10 年には 38% でしたが 平成 24 年には男性医師を逆転し 51% まで上昇しています 一方で 皮膚科開業医はこの 14 年間で 1,431 人増加していますが その 7 割は女性医師が増えたことによるものです ( 図 8) 男性医師も増えてはいますが 世代交代もあり 平成 20 年以降は男性医師の数はほぼ横ばい状態で増えていないのが現状です 皮膚科開業医においても女性医師は着実に増加しており 開業医全体に占める女性医師の割合は平成 10 年に 28% でしたが 平成 24 年には 40% まで上昇しています 皮膚科一人医長の現状について日本臨床皮膚科医会の勤務医委員会では 平成 21 年に皮膚科常勤医がいる一般病院を対象に 一人医長 の施設の割合を全国調査しました また 平成 26 年にも同様な調査を行いましたので この 5 年間の変化について分析をしてみたいと思います ( 図 9) 全国的にみると 一人医長 の施設は 55% から 50% とやや減少しています 常勤医施設は全国で 892 施設から約 100 施設ほど減少しましたが 複数勤務の施設数はほとんど変化しておらず 一人医長 の施設だけが減少した結果になっています また 一般病院における常勤医数の推移をみると 全国で 1,510 人から 65 人減少していますが 1 施

設あたりの常勤医数は 1.69 人から 1.81 人にやや増えており 複数勤務体制への整備が行われていることが伺えます 特に前回調査で 最も 一人医長 の施設割合が多かった四国ブロックでは 84% から 69% に減少しています 常勤医数は 44 人から 47 人に増えており 一人医長 の施設が 9 施設減少する中で 複数勤務の施設が 4 施設増えたことは医師の集約化が図られたものと思われます 一方で 前回も 一人医長 の施設割合が多かった東北ブロック 北関東信越ブロックでは常勤医数も 1 割以上減少したために 一人医長 の施設を削減したり 複数勤務の施設から 一人医長 の施設になるなど厳しい状況が続いています 北海道ブロックも同様に厳しい状況で 常勤医数が 2 割程減少する中で 複数勤務の施設も維持できなくなり 常勤医のいる施設数も全体的に減少しています その他の地域では 常勤医数に大きな変化はないものの 一人医長 の施設はかなり減少しています 複数勤務の施設数がほぼ変わらないことから常勤医のいる施設への増員が少しづつ進んでいるものと思われます 各地域における皮膚科常勤医の置かれている状況は大学の医局人事によって大きく左右されるため 実態を把握しにくい面もありますが 全国的にみると東日本の状況が相変わらず厳しいと言わざるをえないようです おわりに最近の皮膚科の医師数の推移をみますと 勤務医 開業医を問わず 男性医師に代わって女性医師が急速に増えていることがわかります 皮膚科入局者の 4 人のうち 3 人は女性医師という状況であり 皮膚科勤務医の過半数は女性医師となりました 今後もますます女性医師の進出が顕著になることは想像に難くないところですが 病院勤務医の置かれている状況は地域によって大きな差があり 一人医長 の施設は全国でまだ半数を数えています 皮膚科の勤務医が元気で活躍するためにも 女性医師への支援体制無くして皮膚科診療が成り立たない状況にあります 今後 皮膚科は女性医師が最も多い診療科として いわゆる 女性医師問題 も含めて 皮膚科勤務医が安心して働ける環境作りに率先して取り組んでいく必要があるものと考えます