(2) 目次 序章 3 第 1 節修己治人と中国近代 郭嵩燾の位置 3 第 2 節先行研究の再検討と本論文の意義 6 第 3 節郭嵩燾の経歴および本論文の構成 14 第 Ⅰ 部あるべき士大夫の模索とその過程で認識された西洋 22 第 1 章士大夫の商賈化への批判 22 第 1 節初期の問題意識 士大

Similar documents
2-1_ pdf

( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 法学 ) 氏名小塚真啓 論文題目 税法上の配当概念の意義と課題 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 法人から株主が受け取る配当が 株主においてなぜ所得として課税を受けるのかという疑問を出発点に 所得税法および法人税法上の配当概念について検討を加え 配当課税の課題を明



( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 経済学 ) 氏名 蔡美芳 論文題目 観光開発のあり方と地域の持続可能性に関する研究 台湾を中心に ( 論文内容の要旨 ) 本論文の目的は 著者によれば (1) 観光開発を行なう際に 地域における持続可能性を実現するための基本的支柱である 観光開発 社会開発 及び

Try*・[

人間科学部専攻科目 スポーツ行政学 の一部において オリンピックに関する講義を行った 我が国の体育 スポーツ行政の仕組みとスポーツ振興施策について スポーツ基本法 や スポーツ基本計画 等をもとに理解を深めるとともに 国民のスポーツ実施状況やスポーツ施設の現状等についてスポーツ行政の在り方について理

年間授業画 地理 歴史 2 年必修世界史 A( 理系 ) 数 2 2 年 56 組 書 教材世界史 A( 実教出版 ) プロムナード世界史 ( 浜島書店 ) 1 近代ヨーロッパの成立以後の近現代史を全世界的観点から体系的に理解させる 今日的な諸課題の解決の一助として歴史的理解 意識を習得させる 2

学習指導要領

教科 : 地理歴史科目 : 世界史 A 別紙 1 (1) 世界史へのいざない 学習指導要領ア自然環境と歴史歴史の舞台としての自然環境について 河川 海洋 草原 オアシス 森林などから適切な事例を取り上げ 地図や写真などを読み取る活動を通して 自然環境と人類の活動が相互に作用し合っていることに気付かせ

平成 30 年度年間授業計画 教科 : 地理歴史科目 : 世界史 A 校内科目名 : 世界史 A 対象年次 :1 2 単位 使用教科書 教材 教科書 現代の世界史 改訂版( 山川出版社 ) 補助教材 ニューステージ世界史詳覧 ( 浜島書店 ) 1 学期 2 学期 指導内容指導目標評価の観点 方法 <

博士学位論文審査報告書

学習指導要領


第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

スモールワールドネットワークを用いた人工市場シミュミレーションの研究

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名井藤 ( 小木曽 ) 由佳 論文題目 ユング心理学における個別性の問題 ジェイムズの多元論哲学とブーバーの関係論からの照射 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 分析心理学の創始者カール グスタフ ユング (Jung, Carl Gustav 18 75

<4D F736F F D20906C8AD489C88A778CA48B8689C881408BB38A77979D944F82C6906C8DDE88E790AC96DA95572E646F6378>

Title ベトナム語南部方言の形成過程に関する一考察 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 近藤, 美佳 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL


( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 地域研究 ) 氏名 佐藤麻理絵 現代中東における難民問題とイスラーム的 NGO 論文題目 - 難民ホスト国ヨルダンの研究 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 中東地域研究における重要な研究課題である難民問題について 難民研究 持続型生存基盤論 臨地研究などを総

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

年間授業計画09.xls

博士学位論文審査報告書

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

131 はじめに エコノミア 第 64 巻第 1 号 (2013 年 5 月 ), 頁 [Economia Vol. 64 No.1(May 2013),pp ]

Post truth Post truth CAPS からのお知らせ 開催予告 成蹊大学アジア太平洋研究センター主催ドキュメンタリー連続上映会 沖縄の戦後に向き合うシリーズ を開催いたします 第 1 回 米軍が最も恐れた男その名は カメジロー (2017 年 佐古忠彦監督 ) 日時 : 2018 年

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名伊達平和 論文題目 現代アジアにおける家族意識の計量社会学的研究 東アジアならびに東南アジア 7 地域を対象として ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 東アジア 4 地域 ( 日本 韓国 中国 台湾 ) ならびに東南アジア 3 地域 ( ベトナム北部

Microsoft Word - youshi1113

<4D F736F F D D A81698D918AD6816A BC82CC985F95B682CC93E CC97768E7C8B7982D1985F95B690528DB882CC8C8B89CA82CC97768E7C82CC8CF6955C2E646F63>

平成 0 年度 (018 年度 ) 教科年間授業計画表 教科 地歴 科 日本史 A 目 年 1 本城 今井 日本史 A 現代からの歴史 ( 東京書籍 ) 図説日本史通覧 ( 帝国書院 ) 中校までの歴史習の上に 世界的視野に立った歴史認識を形成する 現代社会を形成してきた人間の営みとして歴史を正しく

( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 経済学 ) 氏名衣笠陽子 論文題目 医療経営と医療管理会計 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 医療機関経営における管理会計システムの役割について 制度的環境の変化の影響と組織構造上の特徴の両面から考察している 医療領域における管理会計の既存研究の多くが 活動基準原


0900167 立命館大学様‐災害10号/★トップ‐目次

指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

Microsoft Word - 中世武家礼法における中国古典礼書の影響.doc

高橋公明 明九辺人跡路程全図 神戸市立博物館 という地図がある 1663年に清で出版された地 図で アジア全域 ヨーロッパ さらにはアフリカまで描いている 系譜的には いわゆ る混一系世界図の子孫であることは明らかである 高橋 2010年 この地図では 海の なかに 日本国 と題する短冊形の囲みがあ

授業科目 展開講義 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 比較憲法 佐々木教授 3,4 年次対象 租税法 2 1 澁谷教授 3,4 年次対象 刑事訴訟法特論 4 2 井上准教授 4 年次対象 国際法 植木教授 2,3,4 年次対象 現代民法特論 Ⅱ

5. 政治経済学部 ( 政治行政学科 経済経営学科 ) (1) 学部学科の特色政治経済学部は 政治 経済の各分野を広く俯瞰し 各分野における豊かな専門的知識 理論に裏打ちされた実学的 実践的視点を育成する ことを教育の目標としており 政治 経済の各分野を広く見渡す視点 そして 実践につながる知識理論

*4 [7, 8] (942 ) 2 28 [5] [2] [5] *4 [2] [7] [7] 28 [9] [5] [5] ( ) 7 28 [6] (916-11

第213回幹事会資料5別添2-3

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

Microsoft Word - 10(陳 静_8).doc

( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 法学 ) 氏名朴艶紅 論文題目 現代中国の社会保険制度の形成と変遷 ( )- 広東省深圳市の労災保険制度を中心に ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 中国広東省深圳市の労災保険制度の1983 年から2000 年頃までの形成過程と変遷過程を記述 分析す

社会系(地理歴史)カリキュラム デザイン論発表


表紙.indd

目次序章本論文の目的と構成 1 本論文の研究背景と目的 2 本論文の構成と本論文の研究方法 第一部中国のネガティブな流行語について説明と問題所在 第一章中国のネガティブな流行語について紹介第 1 節ネガティブな流行語の歴史第二章中国のネガティブな流行語について先行研究及び先行研究の問題第 1 節中国

フ ロ ー テ ィ ン グ か け る た め 段 組 枠 に し て ま す 論文 民国時期における職業会計士制度生成の諸相 Some Aspects of Professional Accountants during the Period of Republic of China 藍 要 旨

2 202

Japan Academy of Personal Finance パーソナルファイナンス研究 No.2 総量規制の導入経緯と問題点 伊藤 幸郎 東京情報大学大学院 堂下 浩 東京情報大学 要旨 貸金業法は 2006 年 12 月に国会へ上程され 2010 年 6 月に完全施行へと至った 新たに導入

三田学会雑誌 9 9 巻 3 号 ( 年 1 0 月 ) 小特集 : 社会史の実証と方法 < 社会史の実証と方法 > を総合テーマとした経済学会ミニコンファレンスは2006 年 7 月 2 1 日 ( 金 ) から 2 3 日 ( 日 ) まで箱根で開催された 慶應義塾大学経済学部から

DV問題と向き合う被害女性の心理:彼女たちはなぜ暴力的環境に留まってしまうのか

1,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,, Christian Henriot, Little Japan in Shanghai: An Insulated Community,, Robert Bickers and Christian H

博士前期課程 (1) 地域文化形成専攻 1 記録情報教育研究分野ア. 記録情報教育研究分野が求める入学者世界の諸地域に文字として蓄積されてきた, 歴史 文学等に関する記録情報を文化資源として維持し活用するための総合的 実践的な研究を行い, 専門的知識と国際感覚を身に付けた研究者, または高度専門職業

論文目次はじめに 1. 多文化共生の歴史 2. 共生すべきなのは人間か文化か 3. 狭すぎる文化の概念 4. 歴史的文脈の忘却 5. マイノリティとマジョリティ 6. 未来共生プログラムの可能性キーワード多文化共生文化の脱政治化単一民族国家論マジョリティとマイノリティ未来共生学 3(69-88) 6

~

清末における中国人日本留学の実態 表 1-1 文部省直轄学校における中国人留学生の在籍者数 (1907 年 12 月 ) 表 1-2 在東京公私立

学習指導要領


学習指導要領

谷達彦氏博士論文審査報告書201401

shippitsuyoko_

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

資料2 資料編(2/6)

学習指導要領

九州鉄道会社改革運動の初期段階に見る明治期鉄道企業の経営者と株主

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス

更新履歴 更新日 2019 年 1 月 5 日 [ 更新 ] 学部 学科 文学部英米文学科 更新内容 における科目 ( 出題範 囲 ) を訂正

39

ICTを軸にした小中連携

人材育成 に関するご意見 1) 独立行政法人情報通信研究機構富永構成員 1 ページ 2) KDDI 株式会社嶋谷構成員 8 ページ 資料 7-2-1

寛永17年 (1640) ポルトガル使節団長崎受難事件 (2)

法学部法律学科カリキュラムマップ 科目別ディプロマボリシー対応表 法学部法律学科ディプロマポリシー ( 卒業認定 学位授与に関する方針 ) 法律学科は 法治社会が立ち向かう課題を発見 予測し その要因と構造を調査 分析し 公共と秩序の観点からその解決のための方略 戦略を策定 構築する者として 下に掲

どにしばしば寄稿し 1917 年には 憲法制定会議とは何か ~ ~ 大臣の責任 ~ ~ 戦争と革命 な

.A...ren

平成 年度授業改善 ( 中学校社会 ) 第 2 学年社会科 ( 歴史的分野 ) 学習指導案 1 単元名 近代国家の歩みと国際社会 - 新しい価値観のもとで - ( 帝国書院 ) 2 単元について 本単元は, 学習指導要領の内容 (1) ウ及び (5) イを受け, 開国とその影響, 富国強

にん氏名任 [33] むけい夢渓 博士の専攻分野の名称 博士 ( 文化交渉学 ) 学 位 記 番 号 東アジア文化博第 25 号 学位授与の日付学位授与の要件 平成 29 年 3 月 31 日学位規則第 4 条第 1 項該当 学 位 論 文 題 目 日本近世における儒教と女子教育 論 文 審 査 委


講義要項-日本文化科目-1年

Microsoft Word - 医療学科AP(0613修正マスタ).docx

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名奥村好美 論文題目 現代オランダにおける学校評価の展開と模索 ( 論文内容の要旨 ) オランダにおける学校評価は オランダの国是とされる 教育の自由 ( 学校設立の自由 各学校の教育理念の自由 各学校におけるカリキュラムの自由 ) のもとで 公立 私

学習指導要領

「改訂版 世界史A(世A019)」教科書シラバス案

GHQ , GHQ 8

XCX~ 角 'l' À(;)aacx

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

神戸法学雑誌 66 巻 2 号 1 神戸法学雑誌第六十六巻第二号二〇一六年九月 ALAI JAPAN B

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

KONNO PRINT

大学病院ニュース25.indd

Powered by TCPDF ( Title 近代中国におけるギリシア文学 : 周作人と羅念生を中心に : ( 付 : 古代ギリシア文学翻訳年表 ) Sub Title Greek literature in modern China : Zhou Zuoren an

Microsoft Word - 東京文化資源区構想最終報告書 docx

環東アジア研究no.9

Kyoto University * Filipino Students in Japan and International Relations in the 1930s: An Aspect of Soft Power Policies in Imperial Japan

諸君は,この冊子を頼りにして,これから東京工業大学で学部の学習を進めていくことになります


台湾における日本料理の受容についての研究 ~ いわゆる 日式料理 を例に ~ 王淳鋒 要旨本研究は 日本料理が台湾で受容される中でどのように変容したかについて考察する まず 文献調査によって日本料理の概念を整理する 次に 台湾でのフィ ルドワ クを通じて 台湾で受容された日本料理の実態を記述し 日本

Microsoft Word - 09(平田 昌子_7) .doc

Transcription:

(1) 表紙 博士論文 ( 要約 ) 論文題目清末における士大夫像の模索 郭嵩燾の修己治人を中心に 氏名小野泰教

(2) 目次 序章 3 第 1 節修己治人と中国近代 郭嵩燾の位置 3 第 2 節先行研究の再検討と本論文の意義 6 第 3 節郭嵩燾の経歴および本論文の構成 14 第 Ⅰ 部あるべき士大夫の模索とその過程で認識された西洋 22 第 1 章士大夫の商賈化への批判 22 第 1 節初期の問題意識 士大夫の商賈化 22 第 2 節士 商関係および士 士関係の正常化 郭嵩燾の釐金政策 25 第 3 節西洋の 官 との遭遇 夷税と西洋領事 32 第 4 節小結 36 第 2 章士大夫の持つべき資質 38 第 1 節宣講について 38 第 2 節真の士を抜擢しともに任務にあたること 郷評をめぐって 40 第 3 節徳性の発揮の仕方 条約と宣講 43 第 4 節小結 48 第 Ⅱ 部社会における士大夫の位置と西洋政治像 49 第 3 章渡英直前の郭嵩燾と劉錫鴻の士大夫像 49 第 1 節同治末から光緒初期にいたる洋務人材についての議論 49 第 2 節郭嵩燾 条議海防事宜 における士大夫像と西洋政治像 朝廷と商賈の理想的分業 53 第 3 節劉錫鴻の士大夫像と西洋政治像 商賈による商賈のための政治 59 第 4 節小結 66 第 4 章郭嵩燾 劉錫鴻の士大夫像とイギリス政治像 67 第 1 節郭嵩燾と劉錫鴻のイギリス観察の核 67 第 2 節郭嵩燾と劉錫鴻の官民関係に対するまなざし 議会観を中心に 74 第 3 節士大夫同士の関係 郭嵩燾のアソシエーション観 87 1

第 4 節小結 94 第 5 章イギリス政治像と士大夫批判 97 第 1 節富民を統括すべき士 郭嵩燾 97 第 2 節 界限劃然 たる官職と人心風俗との関係 劉錫鴻 100 第 3 節風俗の改良と禁煙公社 104 第 4 節小結 108 第 Ⅲ 部郭嵩燾における修己 治人 内 外の関係をめぐって 110 第 6 章内面の修養と外面への教化のつながり 大学 中庸 解釈 110 第 1 節郭嵩燾の修己治人 110 第 2 節内と外との関係をめぐって 誠中形外 恕と絜矩 114 第 3 節慎独の担い手 119 第 4 節小結 121 第 7 章 是非の辯を押し付けること と 己を俗と同じくすること の克服 荘子 解釈 123 第 1 節郭象への批判と聖人像の模索 123 第 2 節是非と彼是との関係 125 第 3 節有待 相待を目指して 128 第 4 節小結 133 終章 134 第 1 節本論文の総括 134 第 2 節今後の展望 136 参考文献一覧 140 付録 : 郭嵩燾思想 行動および中国近代思想 政治の動向に関する年表 153 2

(3) 本文 博士論文本文は学位授与後 5 年以内に出版予定 3

(4) 参考文献一覧 ( 脚注に明記したもの以外も含む ) 一次史料 < 中国語文 > 碑伝集三編 全 50 巻 ( 汪兆鏞編 近代中国史料叢刊続編第 73 輯 台北 : 文海出版社 1980 年 ) 陳宝箴集 下( 汪叔子 張求会編 北京 : 中華書局 2005 年 ) 籌辦夷務始末 咸豊朝 全 80 巻 ( 近代中国史料叢刊第 59 輯 台北 : 文海出版社 1970 年 ) 籌辦夷務始末 同治朝 全 100 巻 ( 近代中国史料叢刊第 62 輯 台北: 文海出版社 1971 年 ) 船山全書 全 16 冊 ( 船山全書編輯委員会編校 長沙 : 岳麓書社 1988-1996 年 ) 大清文宗顕( 咸豊 ) 皇帝実録 全 356 巻 ( 台北 : 華文書局影印本 1964 年 ) 大清穆宗毅( 同治 ) 皇帝実録 全 374 巻 ( 台北 : 華文書局影印本 1964 年 ) 大清徳宗景( 光緒 ) 皇帝実録 全 597 巻 ( 台北 : 華文書局影印本 1964 年 ) 大学章句質疑 全 1 巻 ( 郭嵩燾撰 光緒 16 年刊思賢講舎本 続修四庫全書 第 159 冊 所収 ) 読四書大全説 全 2 冊 ( 王夫之撰 北京 : 中華書局 1975 年 ) 郭氏佚書六種 ( 光緒 24 年男郭焯瑩養知書屋校刊本 ) 郭侍郎奏疏 全 12 巻 ( 光緒 18 年刊 近代中国史料叢刊第 16 輯 台北 : 文海出版社 1968 年 ) 郭嵩燾 郭崑燾致曾国藩書札 ( 任光亮整理 歴史文献 第 6 輯 2004 年 ) 郭嵩燾日記 全 4 巻 ( 郭嵩燾撰 長沙 : 湖南人民出版社 1981-1983 年 ) 郭嵩燾未刊手札 ( 劉金庫整理 近代史資料 総 88 号 1996 年 ) 郭嵩燾遺札 ( 任光亮整理 歴史文献 第 15 輯 2011 年 ) 郭嵩燾致陸心源書札 ( 任光亮整理 歴史文献 第 9 輯 2005 年 ) 郭嵩燾致瞿鴻禨書札 ( 任光亮整理 歴史文献 第 7 輯 2004 年 ) 郭嵩燾奏稿 ( 楊堅校補 長沙 : 岳麓書社 1983 年 ) 皇朝経世文編 全 120 巻 ( 賀長齢輯 同治 12 年鉛印本 近代中国史料叢刊第 74 輯 台北 : 文海出版社 1966 年 ) 4

皇朝経世文続編 全 120 巻 ( 葛士濬輯 光緒 27 年鉛印本 近代中国史料叢刊第 75 輯 台北 : 文海出版社 1972 年 ) 皇朝経世文続編 全 840 巻 ( 盛康輯 光緒 23 年刊 近代中国史料叢刊第 84 輯 台北 : 文海出版社 1972 年 ) 湖南図書館蔵近現代名人手札 全 5 冊 ( 湖南図書館編 岳麓書社 2010 年 ) 礼記質疑 ( 鄔錫非 陳戍国点校 長沙 : 岳麓書社 1992 年 ) 劉光禄( 錫鴻 ) 遺稿 ( 劉錫鴻撰 近代中国史料叢刊 3 編第 45 輯 台北 : 文海出版社 1988 年 ) 倫敦与巴黎日記 ( 郭嵩燾撰 走向世界叢書 長沙 : 岳麓書社 1984 年 ) 史記札記 ( 郭嵩燾著 上海 : 商務印書館 1957 年 ) 水窓春囈 ( 歐陽兆熊 金安清撰 謝興堯点校 北京 : 中華書局 1984 年 ) 四国新檔 英国檔下( 中央研究院近代史研究所編 台北 : 中央研究院近代史研究所 1966 年 ) 四書章句集注 ( 朱熹撰 北京 : 中華書局 1983 年 ) 湘軍志 全 16 巻 ( 王闓運撰 宣統元年重刊本 ) 宣講集要 全 15 巻首 1 巻 ( 光緒 32 年刊 宝慶呉氏経元堂刊本 ) 洋務運動 全 8 冊 ( 中国史学会主編 上海 : 上海人民出版社 1961 年 ) 養知書屋文集 全 28 巻 ( 郭嵩燾撰 光緒 18 年刊 近代中国史料叢刊第 16 輯 文海出版社 ) 英軺私記 ( 劉錫鴻撰 走向世界叢書 長沙 : 岳麓書社 1986 年 ) 玉池老人自叙 ( 郭嵩燾撰 光緒 19 年刊 近代中国史料叢刊第 11 輯 台北 : 文海出版社 1967 年 ) 曾文正公( 国藩 ) 全集 ( 曾国藩撰 光緒 2 年刊 近代中国史料叢刊続集第 1 輯 台北 : 文海出版社 1974 年 ) 浙江省嘉善縣志 全 36 巻首 1 巻 ( 江峰青修 顧福仁纂 光緒 18 年刊 中国方志叢書 ( 華中地方 第 59 号 ) 台北: 成文出版社 1970 年 ) 中庸章句質疑 全 2 巻 ( 郭嵩燾撰 光緒 16 年思賢講舎刊本 続修四庫全書 第 159 冊 所収 ) 周礼注疏 全 3 冊 ( 鄭玄注 賈公彦疏 彭林整理 上海古籍出版社 2010 年 ) 荘子 王闓運注( 同治 8 年長沙王氏刊本 ) 5

荘子集釈 全 4 冊 ( 郭慶藩撰 北京 : 中華書局 1961 年 ) 二次文献 < 中国語文 > 車行健 台湾学界対郭嵩燾研究之重要成果簡述 ( 中国文哲研究通訊 第 14 巻 第 1 期 2004 年 ) 陳玫琪 郭嵩燾 礼記質疑 駁議鄭 注 孔 疏 之研究 以礼制為例 ( 台北 : 銘伝大学応用中文系在職碩士班学位論文 2007 年 ) 鄧李志 郭嵩燾的文献学成就研究 ( 湖南師範大学碩士論文 2010 年 ) 范継忠 郭嵩燾与釐金制略議 ( 清史研究 2000 年第 2 期 ) 孤独前駆 郭嵩燾別伝 ( 北京 : 人民文学出版社 2002 年 ) 方勇 郭嵩燾的 荘子扎記 ( 同 荘子学史 第 3 冊 所収 ) 荘子学史 第 3 冊 ( 北京 : 人民出版社 2008 年 ) 宮明 劉錫鴻的反洋務思想及其演変 ( 中国人民大学学報 1987 年第 5 期 ) 郭廷以編定 尹仲容創稿 陸宝千補輯 郭嵩燾先生年譜 上下巻 ( 台北 : 中央研究院近代史研究所 1971 年 ) 黄康顕 郭嵩燾在英国的外交活動 ( 大陸雑誌 72 巻第 4 期 1986 年 ) 金培喆 郭嵩燾的対外意識和地域活動 以思賢講舎及禁煙公社為中心 ( 周維宏等主編 世紀之交的抉択 北京 : 世界知識出版社 2000 年 所収 ) 雷俊玲 清末駐欧使節劉錫鴻対西方的認識 ( 輔仁歴史学報 10 1999 年 ) 李細珠 晩清保守思想的原型 倭仁研究 ( 北京 : 社会科学文献出版社 2000 年 ) 李永春 郭嵩燾与晩清釐金 ( 史学月刊 2001 年第 3 期 ) 郭嵩燾与湖南釐金総局 ( 株洲工学院学報 2003 年第 1 期 ) 李長莉 晩清士人趨利之風与観念的演変 ( 薛君度 劉志琴主編 近代中国社会生活与観念変遷 中国社会科学出版社 2001 年所収 ) 黎志剛 郭嵩燾的経世思想 ( 近世中国経世思想研討会論文集 台北: 中央研究院近代史研究所 1984 年 所収 ) 柳定生 郭嵩燾伝 ( 史地雑誌 創刊号 1937 年 ) 劉怡伶 試析朱熹与郭嵩燾対 大学 絜矩之道 詮解之異同 ( 経学研究論叢 第 12 輯 2004 年 ) 6

羅玉東 中国釐金史 上下冊 ( 上海 : 商務印書館 1936 年 ) 陸宝千 郭嵩燾之洋務思想 ( 中華文化復興運動推進委員会主編 中国近代現代史論集第六編自強運動 ( 一 ) 通論 台北 : 台湾商務印書館 1985 年 所収 ) 郭嵩燾先生年譜補正及補遺 ( 台北 : 中央研究院近代史研究所 2005 年 ) 茂木敏夫 劉錫鴻 英軺私記 的世界観 ( 南京大学学報 社会史専輯 1989 年 ) 潘光哲 晩清中国 政党 的知識系譜 : 思想脈絡的考察 (1856-1895) ( 中国文化研究所学報 第 48 期 2008 年 ) 彭沢益 郭嵩燾之出使欧西及其貢献 ( 包遵彭 李定一 呉相湘編 中国近代史論叢維新与保守 第 1 輯第 7 冊 台北 : 正中書局 1956 年 ) 企予 肯容疑謗道才尊 朱克敬与郭嵩燾的思想交往 ( 蘭州教育学院学報 1989 年第 2 期 ) 沈雲竜 首任出駐英法公使郭嵩燾 ( 同 近代外交人物論評 台北 : 伝記文学出版社 1968 年 所収 ) 史革新 晩清理学研究 ( 台北 : 文津出版社 1994 年 ) 石井剛 荘子 斉物論 的清学閲読 反思啓蒙的別様径路 (Nakajima Takahiro, Zhang Xudong, Jiang Hui, eds., Rethinking Enlightenment in Global and Historical Contexts, Tokyo : UTCP, 2011, 所収 ) 孫致文 郭嵩燾 礼記質疑 解経方法及態度初探 ( 中壢 : 国立中央大学中国文学系所編 第六届近代中国学術研討会論文集 2000 年 3 月 所収 ) 湯一介 郭象与魏晋玄学 ( 武漢 : 湖北人民出版社 1983 年 ) 王栻 孫応祥 論郭嵩燾的洋務思想 ( 南京大学学報( 哲学社会科学 ) 1981 年第 3 期 ) 王維江 郭嵩燾与劉錫鴻 ( 学術月刊 1995 年 4 期 ) 王暁天 胥亜主編 郭嵩燾与近代中国対外開放 ( 長沙 : 岳麓書社 2000 年 ) 王興国 郭嵩燾評伝 ( 南京 : 南京大学出版社 1998 年 ) 郭嵩燾論 荘子 ( 王暁天 胥亜主編 郭嵩燾与近代中国対外開放 所収 ) 郭嵩燾研究著作述要 ( 長沙 : 湖南大学出版社 2009 年 ) 汪栄祖 走向世界的挫折 郭嵩燾与道咸同光時代 ( 北京 : 中華書局 2006 年 ) 王曾才 中国駐英使館的建立 ( 中華文化復興運動推行委員会主編 中国近代現代史論集第 7 編自強運動 (2) 外交 台北 : 台湾商務印書館 1985 年 ) 王子超 郭嵩燾経世致用思想研究 以 中庸章句質疑 和 大学章句質疑 為例証 ( 北 7

京 : 中国政法大学碩士論文 2011 年 ) 呉保森 郭嵩燾三 質疑 研究 ( 上海 : 華東師範大学碩士論文 2010 年 ) 呉宝暁 初出国門 中国早期外交官在英国和美国的経歴 ( 武漢 : 武漢大学出版社 2000 年 ) 呉鵬翼 中国現代化運動的異士 郭嵩燾的洋務観 ( 周陽山等編 近代中国思想人物論 晩清思想 台北 : 時報文化出版事業有限公司 1980 年 所収 ) 呉義雄 洋務運動的批判者 郭嵩燾 ( 学術研究 1990 年 2 期 ) 熊秋良 試析郭嵩燾在長沙的洋務宣伝活動 ( 湖南師範大学社会科学学報 1998 年第 4 期 ) 熊月之 論郭嵩燾 ( 近代史研究 1981 年第 4 期 ) 論郭嵩燾与劉錫鴻的紛争 ( 華東師範大学学報( 哲社版 ) 1983 年第 6 期 ) 西学東漸与晩清社会 ( 上海人民出版社 1994 年 ) 許順富 論郭嵩燾与思賢講舎和禁煙公社 ( 船山学刊 2002 年 4 期 ) 薛化元 潘光哲 晩清的 議院論 与伝統思惟相関為中心的討論 (1861-1900) ( 中国史学 第 7 巻 1997 年 ) 楊立華 郭象 荘子注 研究 ( 北京 : 北京大学出版社 2010 年 ) 伊藤桃子 首任駐英副公使劉錫鴻的思想与西洋観感 以華夏観為中心 ( 大仁学報 第 32 期 2008 年 ) 曾永玲 郭嵩燾大伝 中国清代第一位駐外公使 ( 瀋陽 : 遼寧人民出版社 1989 年 ) 張建華 郭嵩燾与万国公法会 ( 近代史研究 2003 年第 1 期 ) 張静 郭嵩燾思想文化研究 ( 天津 : 南開大学出版社 2001 年 ) 張良俊 論郭嵩燾 条議海防事宜 的思想価値 ( 江西社会科学 1994 年第 4 期 ) 張寿安 十八世紀礼学考証的思想活力礼教論争与礼秩重省 ( 台北 : 中央研究院近代史研究所 2001 年 ) 張宇権 思想与時代的落差 晩清外交官劉錫鴻研究 ( 天津 : 天津古籍出版社 2004 年 ) 鍾叔河 論郭嵩燾 ( 歴史研究 1984 年第 1 期 ) 走向世界 近代中国知識分子考察西方的歴史 ( 北京 : 中華書局 1985 年 ) 朱維錚 求索真文明 晩清学術史論 ( 上海 : 上海古籍出版社 1996 年 ) < 日本語文 > 青山治世 清末の出使日記とその外交史研究における利用に関する一考察 ( 現代中国研究 第 22 号 2008 年 ) 8

清末中国の在外公館と博覧会 19 世紀後半における博覧会知識の受容と博覧会開催の試み ( 柴田哲雄編 地方博覧会の文化史的研究 平成 17 年度 ~ 平成 19 年度科学研究費補助金 ( 基盤研究 (C)) 研究成果報告書 2008 年 所収 ) 吾妻重二 朱子学の新研究 近世士大夫の思想史的地平 ( 創文社 2004 年 ) 安部健夫 清代史の研究 ( 創文社 1971 年 ) 阿部泰記 宣講の伝統とその変容 ( アジアの歴史と文化 第 7 輯 2003 年 ) 四川に起源する宣講集の編纂 方言語彙から見た宣講集の編纂地 ( アジアの歴史と文化 第 9 輯 2005 年 ) 有田和夫 清末における士人意識 ( 有田和夫 大島晃編 朱子学的思惟 中国思想史における伝統と革新 汲古書院 1990 年 所収 ) 飯島渉 久保亨 村田雄二郎編 シリーズ 20 世紀中国史 1 中華世界と近代 ( 東京大学出版会 2009 年 ) 伊東貴之 思想としての中国近世 ( 東京大学出版会 2005 年 ) 井上徹 中国の宗族と国家の礼制 宗法主義の視点からの分析 ( 研文出版 2000 年 ) 岩井茂樹 中国近世財政史の研究 ( 京都大学学術出版会 2004 年 ) 16 世紀中国における交易秩序の模索 互市の現実とその認識 ( 中国近世社会の秩序形成 京都大学人文科学研究所 2004 年 ) 内村嘉秀 郭象 荘子注 の世界観 自生 独化論をめぐって ( 倫理思想研究 第 4 号 1979 年 ) 大谷敏夫 清代政治思想史研究 ( 汲古書院 1991 年 ) 清代政治思想と阿片戦争 ( 同朋舎出版 1995 年 ) 同治中興考 ( アジア文化学科年報 第 8 号 2005 年 ) 大野誠 ジェントルマンと科学 ( 山川出版社 1998 年 ) 王賓 近代中日両国における対外認識の比較研究 郭嵩燾と横井小楠を中心として ( 大阪大学博士論文 1994 年 ) 岡本隆司 朝貢 と 互市 と海関 ( 史林 第 90 巻第 5 号 2007 年 ) 洋務 外交 李鴻章 ( 現代中国研究 第 20 号 2007 年 ) 近代中国と海関 ( 名古屋大学出版会 1999 年 ) 馬建忠の中国近代 ( 京都大学学術出版会 2007 年 ) 19 世紀中国における自由貿易と保護関税 裁釐加税 の形成過程 ( 左近幸 9

村編 近代東北アジアの誕生 跨境史への試み 北海道大学出版会 2008 年 所収 ) 中国 反日 の源流 ( 講談社選書メチエ 2011 年 ) 李鴻章 東アジアの近代 ( 岩波新書 2011 年 ) 岡本隆司編 中国近代外交史の基礎的研究 19 世紀後半期における出使日記の精査を中心として 平成 17 年 ~19 年度科学研究費補助金 ( 基盤研究 (C)) 研究成果報告書 2008 年 岡本隆司 川島真編 中国近代外交の胎動 ( 東京大学出版会 2009 年 ) 小野和子 明代の党争 ( 木村尚三郎ほか編 中世史講座第 6 巻中世の政治と戦争 学生社 1992 年 所収 ) 小野川秀美 清末政治思想研究 ( みすず書房 1969 年 ) 小野泰教 郭嵩燾 劉錫鴻の士大夫観とイギリス政治像 ( 中国哲学研究 第 22 号 2007 年 ) 書評: 岡本隆司著 馬建忠の中国近代 ( 洛北史学 第 10 号 2008 年 ) 陳宝箴と黄遵憲の官僚制観 湖南変法運動の諸相 ( 中国哲学研究 第 24 号 2009 年 ) 咸豊期郭嵩燾の軍費対策 仁政 西洋との関係から見た ( 中国 社会と文化 第 26 号 2011 年 ) 郭嵩燾の 荘子 解釈 郭象 自得 独化 への批判とその背景 ( 日本中国学会第一回若手シンポジウム論文集中国学の新局面 日本中国学会 2012 年 ) 清末士大夫の見た西洋議会制 いかにして理想の君民関係を築くか ( アジア遊学東アジアの王権と宗教 勉誠出版 2012 年 ) 郭嵩燾の政治思想 誠意 慎独 絜矩を中心に ( 孫文研究 第 51 号 2012 年 ) 川北稔編 結社のイギリス史 クラブから帝国まで ( 山川出版社 2005 年 ) 川尻文彦 戊戌以前の変革論 鄭観応の 議院 論を手がかりに ( 中国文化論叢 第 7 号 1998 年 ) 清末の 富強 をめぐって ( 中国哲学研究 第 14 号 2000 年 ) 岸本美緒 風俗と時代観 ( 古代文化 第 48 巻第 2 号 1996 年 ) 明清交替と江南社会 17 世紀中国の秩序問題 ( 東京大学出版会 1999 年 ) 明清時代における 風俗 の観念 ( 小島毅編 東洋的人文学を架橋する 東京大 10

学大学院人文社会系研究科多分野交流演習論文集 2001 年 所収 ) 風俗と時代観 ( 研文出版 2012 年 ) コーエン, ポール ( 佐藤慎一訳 ) 知の帝国主義 オリエンタリズムと中国像 ( 平凡社 1988 年 ) 古勝隆一 中国中古の学術 ( 研文出版 2006 年 ) 小島毅 朱子学と陽明学 ( 放送大学教育振興会 2004 年 ) 小関隆 近代都市とアソシエイション ( 山川出版社 2008 年 ) 近藤秀樹 清代の捐納と官僚社会の終末 ( 上 )( 中 )( 下 ) ( 東洋史研究 第 46 巻第 2 号 第 3 号 第 4 号 1963 年 ) 坂井秀夫 近代イギリス政治外交史 Ⅰ( 創文社 1974 年 ) 佐々木正哉 湖南の排外守旧派と開明派の系譜 (1)( 2) ( 近代中国 20 1988 年 21 1990 年 ) 佐々木揚 郭嵩燾 (1818-1891) における中国外交と中国史 アロー戦争期 ( 佐賀大学教育学部研究論文集 第 37 集第 1 号 1989 年 ) のち同 清末中国における日本観と西洋観 に収録 郭嵩燾(1818-1891) の西洋論 清国初代駐英公使が見た西洋と中国 ( 佐賀大学教育学部研究論文集 第 38 集第 1 号 1990 年 ) のち同 清末中国における日本観と西洋観 に収録 清国初代駐英公使郭嵩燾の明治初期日本論 ( 東方学 83 輯 1992 年 ) のち同 清末中国における日本観と西洋観 に収録 清末中国における日本観と西洋観 ( 東京大学出版会 2000 年 ) 佐藤慎一 1890 年代の 民権 論 張之洞と何啓の 論争 を中心に ( 金谷治編 中国における人間性の探求 創文社 1983 年 所収 ) 鄭観応について 万国公法 と 商戦 (1)( 2)( 3) ( 法学 第 47 巻第 4 号 1983 年 第 48 巻第 4 号 1984 年 第 49 巻第 2 号 1985 年 ) 模倣と反発 近代中国思想史における 西洋モデル について ( 法学 第 51 巻 6 号 1988 年 ) 清末啓蒙思想 の成立 世界像の変容を中心にして (1)( 2) ( 国家学会雑誌 第 92 巻 5 6 号 1979 年 第 93 巻第 1 2 号 1980 年 ) 近代中国の知識人と文明 ( 東京大学出版会 1996 年 ) 11

佐藤慎一編 近代中国の思索者たち ( 大修館書店 1998 年 ) 佐野公治 四書学史の研究 ( 創文社 1988 年 ) 島田虔次 大学 中庸 ( 朝日新聞社 1967 年 ) 朱子学と陽明学 ( 岩波新書 1967 年 ) シュウォルツ, ベンジャミン ( 平野健一郎訳 ) 中国の近代化と知識人 厳復と西洋 ( 東京大学出版会 1978 年 ) ジュリアン, フランソワ ( 中島隆博訳 ) 勢効力の歴史 中国文化横断 ( 知泉書館 2004 年 ) 鈴木智夫 洋務運動の研究 19 世紀後半の中国における工業化と外交の革新についての考察 ( 汲古書院 1992 年 ) 近代中国と西洋国際社会 ( 汲古書院 2007 年 ) 関正郎 荘子の思想とその解釈 郭象 成玄英 ( 三省堂 1999 年 ) 高田淳 清末における王船山 ( 学習院大学文学部研究年報 第 30 号 1983 年 ) 高橋孝助 中国の常関 釐金 海関 商人 商品流通と専制国家 ( 濱下武志ほか シリーズ世界史への問い 3 移動と交流 岩波書店 1990 年 所収 ) 笠沙雅章 宋代の士風と党争 ( 木村尚三郎ほか編 中世史講座第 6 巻中世の政治と戦争 学生社 1992 年 所収 ) 手代木有児 清末初代駐英使節 (1877-79) における西洋体験と世界像の変動 (1)-(4) 文明観と国際秩序観 ( 商学論集 第 67 巻第 1 号 第 68 巻第 1 号第 2 号 第 70 巻第 3 号 1998 年 -2002 年 ) 厳復の英国留学 その軌跡と西洋認識 ( 中国 社会と文化 第 9 号 1994 年 ) 寺田浩明 清代土地法秩序における 慣行 の構造 ( 東洋史研究 第 48 巻第 2 号 1989 年 ) 明清法秩序における 約 の性格 ( 溝口雄三 浜下武志 平石直昭 宮嶋博史編 アジアから考える4 社会と国家 東京大学出版会 1994 年 所収 ) 土居智典 清末湖南省の省財政形成と紳士層 ( 史学研究 第 227 号 2000 年 ) 戸川芳郎 郭象の政治思想とその 荘子注 ( 日本中国学会報 第 18 集 1966 年 ) のち同 漢代の学術と文化 ( 研文出版 2002 年 ) に収録 戸川芳郎 蜂屋邦夫 溝口雄三 儒教史 ( 山川出版社 1987 年 ) 中島隆博 荘子 鶏となって時を告げよ ( 岩波書店 2009 年 ) 12

共生のプラクシス 国家と宗教 ( 東京大学出版会 2011 年 ) 新村容子 清末四川省における局士の歴史的性格 ( 東洋学報 第 64 巻第 3 4 号 1983 年 ) アヘン貿易論争 イギリスと中国 ( 汲古書院 2000 年 ) 西里喜行 郭嵩燾の琉球自立 = 独立論とその周辺 ( 琉球大学教育学部紀要 第 61 集 2002 年 ) 箱田恵子 清末領事派遣論 1860 年 1870 年代を中心に ( 東洋史研究 第 60 巻第 4 号 2002 年 ) のち同 外交官の誕生 に収録 清朝在外公館の設立について 常駐使節派遣の決定とその意味を中心に ( 史林 第 86 巻第 2 号 2003 年 ) のち同 外交官の誕生 に収録 科挙社会における外交人材の育成 在外公館の設立から日清戦争まで ( 京都大学大学院文学研究科 21 世紀 COE プログラム グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成 編 人文知の新たな総合に向けて :21 世紀 COE プログラム グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成 第 4 回報告書 下巻 2006 年 所収 ) のち同 外交官の誕生 に収録 在外公館の伝統と近代 洋務時期の在外公館とその人材 ( 岡本隆司 川島真編 中国近代外交の胎動 所収 ) 外交官の誕生 近代中国の対外態勢の変容と在外公館 ( 名古屋大学出版会 2012 年 ) 林正子 黄冕 もう一人の釐金創始者 ( 史苑 第 36 巻第 1 号 1975 年 ) 原朝子 清末四川の経徴局について ( 近代中国研究彙報 第 21 号 1999 年 ) 坂野正高 天津条約 (1858 年 ) 調印後における清国外政機構の動揺 (1) 欽差大臣の上海移駐から米国公使ウォードの入京まで ( 国際法外交雑誌 第 55 巻第 6 号 1957 年 ) 近代中国外交史研究 ( 岩波書店 1970 年 ) 近代中国政治外交史 ( 東京大学出版会 1973 年 ) 中国近代化と馬建忠 ( 東京大学出版会 1985 年 ) 福永光司 郭象の荘子解釈 ( 哲学研究 第 37 巻第 2 号 第 37 巻第 3 号 1954 年 ) のち同 魏晋思想史研究 に収録 荘子 中国古代の実存主義 ( 中公新書 1964 年 ) 13

魏晋思想史研究 ( 岩波書店 2005 年 ) 松村昌家他編 新帝国の開花 ( 研究社出版 1996 年 ) 溝口雄三 光緒初期の議会論 ( 中国 社会と文化 第 1 号 1986 年 ) ある反 洋務 劉錫鴻の場合 ( 伊藤漱平退官記念論集 汲古書院 1986 年 所収 ) のち同 方法としての中国 に収録 方法としての中国 ( 東京大学出版会 1989 年 ) 溝口雄三 伊東貴之 村田雄二郎 中国という視座 ( 平凡社 1995 年 ) 三石善吉 伝統中国の内発的発展 ( 研文出版 1994 年 ) 宮崎市定 支那側史料より見たる英仏聯合軍の北京侵入事件 特に主戦論と和平論 ( アジア史研究第 2 東洋史研究会 1959 年 ) 宮沢礼克 太平天国期の湖南財政について 咸豊 5 年 (1855) における釐金導入と湘潭章程制定を中心に ( 史流 第 43 号 2010 年 ) 村岡健次 ヴィクトリア時代の政治と社会 ( ミネルヴァ書房 1980 年 ) 村岡健次 川北稔編 イギリス近代史 ( ミネルヴァ書房 2003 年改訂版 ) 村田雄二郎編 新編原典中国近代思想史万国公法の時代 ( 岩波書店 2010 年 ) 茂木敏夫 近代中国のアジア観 光緒初期 洋務知識人の見た 南洋 ( 中国哲学研究 第 2 号 1990 年 ) 馬建忠の世界像 世界市場 地大物博 中国 朝鮮宗属関係 ( 中国哲学研究 第 7 号 1993 年 ) 中国における近代国際法の受容 朝貢と条約の並存 の諸相 ( 東アジア近代史 第 3 号 2000 年 ) 森正夫 明末の社会関係における秩序の変動について ( 名古屋大学文学部三十周年記念論集 1979 年 ) 明末における秩序変動再考 ( 中国 社会と文化 第 10 号 1995 年 ) 山下龍二 大学 中庸 ( 集英社 1974 年 ) 山田賢 移住民の秩序 清代四川地域社会史研究 ( 名古屋大学出版会 1995 年 ) 山田央子 1 明治前半期における政党の誕生 (-1890 年 ) ( 季武嘉也 武田知己編 日本政党史 吉川弘文館 2011 年 所収 ) 山本進 清代財政史研究 ( 汲古書院 2002 年 ) 横山英 鄭観応の議院論 ( 史学研究 第 129 号 1975 年 ) 14

吉澤誠一郎 補論風俗の変遷 ( 同 天津の近代 所収 ) 天津の近代 清末都市における政治文化と社会統合 ( 名古屋大学出版会 2002 年 ) シリーズ中国近現代史 1 清朝と近代世界 19 世紀 ( 岩波新書 2010 年 ) 吉田公平 朱子学 陽明学における 大学 ( 源了圓編 江戸の儒学 大学 受容の歴史 思文閣出版 1988 年 所収 ) 林毓生 ( 丸山松幸他訳 ) 中国の思想的危機 ( 研文出版 1989 年 ) 渡辺浩 近世日本社会と宋学 ( 東京大学出版会 1985 年 ) 東アジアの王権と思想 ( 東京大学出版会 1997 年 ) < 欧米語文 > Chang, Hao. Liang Chʿi-chʿao and Intellectual Transition in China, 1890-1907, Cambridge, Mass. : Harvard University Press, 1971. Chinese Intellectuals in Crisis--Search for Order and Meaning(1890-1911), Berkeley : University of California Press, 1987. Evans, Eric J. Parliamentary reform in Britain, c.1770-1918, New York: Longman, 2000. Frodsham, J. D. trans. and annot., The First Chinese Embassy to the West: The Journals of Kuo Sung-T ao, Liu Hsi-hung and Chang Te-yi, Oxford: Clarendon Press, 1974. Hao, Yen-p ing and Wang, Erh-min. Changing Chinese Views of Western Relations, 1840-95, John K. Fairbank and Kwang-ching Liu, eds., The Cambridge History of China, vol. 11, Cambridge, 1980. Hsü, Immanuel C. Y. China's Entrance into the Family of Nations : the Diplomatic Phase, 1858-1880, Cambridge : Harvard University Press, 1960. Kuhn, Philip A. Rebellion and Its Enemies in Late Imperial China, Cambridge, Mass. :Harvard University Press, 1970. Mair, Victor H. Language and Ideology in the Written Popularizations of the Sacred Edict, in D. Johnson, A. J. Nathan, E. S. Rawski, eds., Popular culture in late Imperial China, Berkeley, Calif. : University of California Press, 1985. Polachek, James M. The Inner Opium War, Cambridge, Mass. : Council on East Asian Studies, Harvard University, 1992. Stödter, Rolf. International Law Association, in Rudolf Bernhardt, ed., Encyclopedia of Public International Law, Vol. 2, 1995. 15

Tsui, man-shing, A Advocate of Conciliation: Kuo Sung-tao s Attitude towards Sino-Western Relations, Ph. D. Dissertation, University of Toronto, 1974. Wagner, Rudolf G. The Shenbao in Crisis: The International Environment and the Conflict between Guo Songtao and the Shenbao, Late Imperial China, Vol.20, No.1, 1999. Ward, Humphry. History of the Athenaeum, 1824-1925 : with Portrait and Illustrations, London : Athenaeum Club,1926. Wong, Owen Hong-hin. A New Profile in Sino-Western Diplomacy: The First Chinese Minister to Great Britain, Hongkong: Chung Hwa Book Co., 1987. Wright, Mary Clabaugh. The Last Stand of Chinese Conservatism: The Tung-Chih Restoration, 1862-1874, Stanford: Stanford University Press, 1957. Yang, Lien-sheng. Historical Notes on the Chinese World Order, John K. Fairbank, ed., The Chinese World Order: Traditional China s Foreign Relations, Cambridge(Mass. ): Harvard University Press, 1968. 初出一覧本論文の各部分をなす原型論文は以下の通りである ただしいずれも本論文において大幅な加筆修正を行い 場合によっては分解のうえ新たに構成しなおすなど 原型をとどめていない場合もある 第 1 章 ~ 第 5 章 小野泰教 郭嵩燾 劉錫鴻の士大夫観とイギリス政治像 ( 中国哲学研究 第 22 号 2007 年 ) 第 1 章 第 2 章 小野泰教 咸豊期郭嵩燾の軍費対策 仁政 西洋との関係から見た ( 中国 社会と文化 第 26 号 2011 年 ) 第 4 章 小野泰教 清末士大夫の見た西洋議会制 いかにして理想の君民関係を築くか ( アジア遊学東アジアの王権と宗教 勉誠出版 2012 年 ) 第 6 章 小野泰教 郭嵩燾の政治思想 誠意 慎独 絜矩を中心に ( 孫文研究 第 51 号 2012 年 ) 第 7 章 小野泰教 郭嵩燾の 荘子 解釈 郭象 自得 独化 への批判とその背景 ( 日本中国学会第一回若手シンポジウム論文集中国学の新局面 日本中国学会 2012 年 ) 16

(5) 論文の内容の要旨 論文の内容の要旨 論文題目清末における士大夫像の模索 郭嵩燾の修己治人を中心に 氏名小野泰教 修己治人とは 大学 に見られるような 自己の修養が他人を治めることにつながるとする発想であり 士大夫の理想の在り方とされてきたものである そのため これまで伝統中国の思想を代表する要素として語られ 時にはその発想の前近代性が指摘されてきた しかしながら そもそも内面の修養が外面の秩序にいかにしてつながりうるのだろうか 筆者の根本的な関心はこの点にある 本論文は 清末の士大夫として有名な郭嵩燾 (1818-1891) を題材に この問いに取り組んだものである 郭嵩燾の名は 一般には初代駐英公使という肩書によって知られている そのため研究史において郭は まず中国近代外交の創成という文脈で取り上げられ 彼の 日記 の公刊後は 伝統士大夫の西洋認識という観点から分析されてきた これら先行研究の問題点は 郭の思考を 伝統中国と近代西洋というあらかじめ定められた座標上に位置づけることに関心が偏り 郭自身の主体的な思考をうまく描ききれなかったことにある これに対し本論文は 清末において修己治人の発想を誰よりも主体的に貫こうとした士大夫という理由から郭嵩燾を取り上げ 自己の修養を他者の感化につなげるという発想自体に強い関心を抱くものである 郭はその生涯において 社会秩序が動揺する重大な局面 17

に何度も立ち会わされている アヘン戦争を幕友として経験し 咸豊期には湘軍の中で軍費獲得業務を任された 同治期には署広東巡撫となり 西洋諸国との条約交渉や排外運動への対応に追われた また光緒初期にはマーガリー事件の謝罪使としてイギリスに派遣され そのまま初代駐英公使に就任した そして帰国後は 多くの派閥が存在する故郷湖南で郷紳として活躍した こうした郭が生涯一貫して修己治人の発想を保持したことは その発想が いかなる現実の下 なぜ有効とされたのかを考える恰好の題材となるだろう また郭嵩燾は 修己治人の問題を 西洋社会の在り方とも関連付けて論じている 郭の駐英公使時期の日記には 為政者の修己治人が実現された社会として当時のイギリスが描かれている こうしたユニークな見方は 次のことを示している すなわち 郭にとって西洋は 直接対峙すべき問題自体ではなく 自己の主体的な思考を展開するための方法や根拠として認識され解釈されたものだったということである さらに郭の周辺には 同じく修己治人を重視しながら 郭とは異なる現状認識や西洋政治像を抱いた士大夫たちが存在していた 特に本論文では 郭の比較対象として 彼とともにイギリスに渡り駐英副使を務めた劉錫鴻を随時取り上げた また郭自身が時代を超えて対話しようとした朱熹や郭象といった人物にも言及した このように 郭とその周辺は 中国近代における修己治人の展開を跡付けるのに最も適した題材と言える 本論文は 郭嵩燾の士大夫像の模索と修己治人の追求を 次の構成を以って検討した 第 Ⅰ 部 あるべき士大夫の模索とその過程で認識された西洋 では 郭嵩燾が いかなるきっかけで士大夫像を模索するに至ったのか また士大夫の資質として何を想定していたのかを検証した さらにその模索の中で西洋が視野に入りはじめたことを指摘した 第 1 章 士大夫の商賈化への批判 では 郭がしばしば口にする 士大夫が商賈のように利をむさぼる という批判の背景を考察した そこには 彼が咸豊 同治期に湘軍の軍費獲得のため内地通行税の一種である釐金の業務に携わったという事実が関係していた 郭にとって釐金は 徴税効率が良いのみならず 人心風俗の安定に資するものであった つまり 有能な士が 利を独占する商賈の上に立って徴税を行い 天下のために役立てることができるからである しかしながら郭によれば 同時代の人々は釐金の重要性を理解せず 士と商とは癒着しているのが常であった さらには 商と癒着した士が他の士を批判し 士同士の合意形成が図れないありさまだったのである 一方 商の上に立ち適切な徴税を行う士を模索していた郭にとり 当時中国に駐在していた西洋領事 ( 貿易監督官 ) は興味深い存在として立ち現われてくるのであった 18

第 2 章 士大夫の持つべき資質 では 士大夫の持つべき資質について 郭嵩燾がいかに考えていたかを分析した 郭は咸豊期に 皇帝の言葉を分かりやすく民衆に伝える 宣講 という教化儀礼に関わっていた 郭はこの宣講を語る際 そこに次のような理想の士大夫像と秩序を想定していた 皇帝の言葉の下に士大夫たちが一つにまとまるということ そして士大夫たちが皇帝の意図を具体的に分かりやすく下々の者に伝達していくという在り方である 郭は 釐金事業や西洋との条約交渉 排外暴動への対処において しばしば業務効率に抵触してまで上記の士大夫像や秩序を追い求めたのであった 第 Ⅱ 部 社会における士大夫の位置と西洋政治像 では 郭嵩燾が西洋における官の在り方に着目したことの特異性を 劉錫鴻の思想と比較しながら論じた 第 3 章 渡英直前の郭嵩燾と劉錫鴻の士大夫像 では 前述の通り徴税活動を通して士と商とを区別し その発想の下で西洋の領事官に着目していた郭嵩燾が その思考を推し進めることにより あらゆる社会階層の中での士の重要性を説くとともに 西洋社会にも同じような階層の構図を見出すことができると考えていたことを明らかにした 一方で こうした郭の見方に終始反対していた劉錫鴻の事例を取り上げた 劉も 中国においては士が重要な階層であると考えていた しかし劉によれば 西洋においては士以外の階層 特に商が圧倒的な力を持っており 中国と西洋とでは政治主体が根本的に異なると説いた 第 4 章 郭嵩燾 劉錫鴻の士大夫像とイギリス政治像 では 渡欧した郭と劉が 西洋政治 特にイギリス政治をいかに観察したかを論じた 両者の最大の相違は イギリスの官民関係への見方にあり これは両者の議会観の違いに表れている 郭は議会に対し 議員という民の上に立つ者たちが 自らと政見を異にする相手の存在を認め 最終的に一つの国是を形成するうえ その礼儀正しい議論を公開することで 下々の者たちを感化していく機関であるとの見方をとった 一方 劉は 議員が民の代表であることに注目し 議会は民が国政に自らの意見を反映させるための機関であるとした しかし劉によれば 民の強さは彼らの 富 に原因があり それは可変的であるばかりか時に人間の徳性を損なうものでもあった 郭と劉は全く異なる視点から議会を評価していたのである さらに郭は 為政者たちが異なる意見を持つ相手を認め合い 最終的に互いを画一化していく在り方として イギリスの各種アソシエーションに着目し それを 周礼 に附会することで正当化しようとした 第 5 章 イギリス政治像と士大夫批判 では 郭嵩燾と劉錫鴻がイギリス体験を通して構築した士大夫批判を 彼らの鉄道論等から考察した 郭は西洋体験を通じ 士の集団が 19

他の階層を導くという政治に一層の確信を得 当時の中国社会の問題は 士農工商の各階層がそれぞれの役割を認識していない点にあるとした 一方劉は 中国で士や官が堕落する原因は まさに士農工商という構図自体にあると考えた つまり この構図があるかぎり 農工商は士になることを目指し 民は官にすり寄ろうとするからであった 劉のような発想をとらない郭は 上述の確信をもとに地元の名士を集め 禁煙公社という一種のアソシエーションを実践していくことになる 第 Ⅲ 部 郭嵩燾における修己 治人 内 外の関係をめぐって では 西洋体験を経て士大夫集団の自己修養に基づく風俗改良の重要性を確信した郭嵩燾の論理を 彼が晩年に刊行した著作から検証した 第 6 章 内面の修養と外面への教化のつながり 大学 中庸 解釈 では 郭の 大学 中庸 読解を分析した 郭は 慎独 という自己の内面の修養の際 朱熹以上に 外 を意識し 内面が外に現れ出る過程として 誠意 を捉え 外とのつながりを自覚するがゆえに外に影響されぬよう主体性を保つという文脈で 絜矩 を解釈していた さらに 人間が聖人君子になりうる可能性を強調した朱熹に対し 郭は上記のような厳しい修養を実行できる者のみにその可能性を限定した ここには郭がこだわっていた修己から治人へといたる具体的な過程への関心や 士の増加という当時の問題への危惧が見られる 第 7 章 是非の辯を押し付けること と 己を俗と同じくすること の克服 荘子 解釈 では 郭嵩燾の 荘子 郭象注批判を分析した 自得 独化 という観念を用いて彼是間に是非の争いを想定しなかった郭象に対し 郭嵩燾は 彼是間に必ず生じる是非の争いをいかに解決するかという観点から 有待 相待 を強調した そして 相手に是非を押し付けてしまうこと と 相手に受け入れられるために自分を曲げること という二つの弊害を常に自覚しながら 対立する相手に常に向き合うことの重要性を説いた こうした解釈は 郭が抱いていた士同士の良好な関係への志向に通底するものであった 終章では 郭と劉の真の相違を両者の士大夫像の模索に見出した本論文の考察から 士大夫たちが各自の現状認識に基づきつつ士大夫像を模索していく多様な議論の場としての清末思想史を描きうる可能性や 中国思想史研究とイギリス史研究との接点を提示した 20