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10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T デバイスの電気的検証 Application Note 1600 ネットワーク インタフェースを内蔵したデバイスの数は着実に増え続け ネットワーク機能を持つデジタル エンターテイメント デバイスの普及とともにますます増える見込みです ネットワーク インタフェース ポートを持つデバイスの種類は いまやパーソナル コンピュータから監視カメラにまで及びます かつてはハイエンドのサーバとネットワーク機器だけに 10 Mbps のポートが搭載されていたことを思い出すと 隔世の感があります これらのポートは一般的に "LAN" ポートまたは "NIC" ポートと呼ばれ 通常は 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T のいずれかの規格またはそれらの組み合わせです これらの規格は 8 ピンの RJ-45 コネクタを持つ UTP ケーブル経由で 10 100 1000 Mbps の伝送を実現します このアプリケーション ノートでは これらのテクノロジーで用いられる電気信号を簡単に検証する方法について解説します 10BASE-T 最も歴史の長い 10BASE-T 規格は 1990 年に確立し すでに時代遅れと言われながらも いまだに消え去る気配がありません この規格は カテゴリ 3 または 5 のケーブルの 2 つのペアを使って 10 Mbps のデータ伝送を実現します 1 つのペアが送信用 もう 1 つのペアが受信用です 残りのケーブルは使用されません 100BASE-TX 100BASE-TX は UTP ケーブルを使った 100 Mbps イーサネット ( ファースト イーサネットとも呼ばれる ) 規格の中で最も広く用いられています 10BASE-T と同じペアを送信と受信に使用しますが カテゴリ 5 以上のケーブルが必要です 1000BASE-T 1000BASE-T は UTP ケーブルを使った 1000 Mbps イーサネット ( ギガビット イーサネットとも呼ばれる ) 規格として最も普及しています UTP ケーブルの 4 ペアすべてを使用して送受信を行い カテゴリ 5e 以上のケーブルが必要です 次の図 1 と表 1 に ストレート スルー構成で用いられる 8 ピン RJ-45 プラグのピン割り当てを示します 図 1. 8 ピン RJ-45 プラグ 別名 8P8C コネクタ ピン 10BASE-T/ 100BASE-TX 1000BASE-T 1 TD + BI_DA + 2 TD - BI_DA - 3 RD + BI_DB + 4 未使用 BI_DC + 5 未使用 BI_DC - 6 RD - BI_DB - 7 未使用 BI_DD + 8 未使用 BI_DD - 表 1. 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T でのストレート スルー構成の 8 ピン RJ-45 プラグのピン割り当て TD/RD はデータ送信 / データ受信 BI_Dx は双方向ペア x を表します

10BASE-T 信号のプロービングとテスト 10BASE-T は差動信号を伝送します この信号をプローブする最も簡単な方法は 図 2a に示すように TD + と TD - のピンを 100 Ω 抵抗負荷に接続することです 規格には 100 Ω 抵抗負荷の他に 2 種類の負荷がテスト用に指定されています これら他の 2 種類の負荷を図 3 に示します TD 回路から負荷への直接接続の他に 規格には ツイスト ペア モデル ( 略して TPM) の使用についても記述されています TPM は片方向のリンク セグメントから生じる歪みをモデリングする等価回路であり ここには示していない RLC 回路の 4 つのセグメントから構成されます 10BASE-T のいくつかのパラメータのテストは TPM ありと TPM なしで 100 Ω 抵抗負荷を含む負荷 1 と 2 に対して反復して行います このため テストの数はかな り多くなります 10BASE-T 波形を見てみましょう 一般的に テストには 4 種類の異なる波形を使用する必要があります 本書に示す波形は 特に記載のない限り すべて図 2a の回路で 100 Ω 抵抗負荷を使用した場合に基づいたものです + TD + Vo 図 2a. 10BASE-T の TD 回路を負荷に直接接続 出力電圧 Vo は負荷の両端で測定 + TD + Vo 図 2b. 10BASE-T の TD 回路をツイスト ペア モデル (TPM) 経由で負荷に接続 115Ω L= 180µH 76.8Ω L= L S 220µH R P C P RS 負荷 1 負荷 2 L S = L ± 1% C P = 12 pf ± 20 % L の定義 R P 2 k Ω R S 0.5 Ω 図 3. 10BASE-T のテストに用いられる負荷 1 と 2 2

10BASE-T 信号のプロービングとテスト ( 続き ) 最初の信号は LTP( リンク テスト パルス ) です これは NLP( ノーマル リンク パルス ) とも呼ばれます LTP は 10BASE-T トランスミッタから最初に送信される信号であり アクティブなトランスミッタの存在を示すために用いられます リンクの反対側にアクティブなデバイスがある場合は 相手も LTP で応答します LTP は 自動ネゴシエーションの際に デバイス ケーパビリティ データを交換するためのデータ ワードを構成するバーストとしても用いられます どの場合でも LTP は TPM の有無に関わらず すべての負荷の組み合わせで 定義されたテンプレート内に収まる必要があります TPM なしの LTP TPM ありの LTP 図 4. TPM ありとなしの場合のリンク テスト パルス (LTP) 波形 図 5. LTP テンプレート内の TPM 付き LTP 信号 3

10BASE-T 信号のプロービングとテスト 続き 次 の 信 号 は TP_IDL 信 号 で す 10BASE-T データは マンチェスタ コード化された 遷移がロジック "1" を表す データ パケットとして送信 され パケット間にフレーム間ギャッ プというアイドル期間が置かれます TP_IDL 信号はアイドル期間の開始を 示すものなので 各データ パケット の終わりに存在します LTP と同様 に TP_IDL 波形も TPM の有無に 関わらず すべての負荷の組み合わせ で 定義されたテンプレート内に収ま る必要があります フレーム間ギャップ 図 6. マンチェス タ コード化され たランダム デー タ パケット 画 面の下半分に表示 された波形は 上 半分の波形の白い ボックス内の領域 を拡大したもので す 300 ns 350 ns 図 7. TP_IDL は 正パルスであり その幅は 最後の ビットが 1 か 0 か に応じて それぞ れ 300 ns または 350 ns になりま す 図 8. TP_IDL テンプレート テスト 4

10BASE-T 信号のプロービングとテスト ( 続き ) 10BASE-T のシグナリング レートは公称 10 MHz です オール 1 のマンチェスタ コード化された信号は 10 MHz の波形になります このオール 1 の波形を使って 送信回線で測定されるすべての高調波が基本波より 27 db 以上低いことがテストされます 現在のデジタイジング オシロスコープはほとんど FFT 機能を装備しているので このテストは簡単に行えます 周波数確度のためにハニング窓関数を選択して FFT を使用することにより 10 MHz およびその高調波のスペクトラムの大きさを容易に測定できます テンプレート テストおよび高調波成分のテストに加えて その他のテストできるパラメータとして ピーク差動出力電圧とコモン モード電圧があります これらのテストは 図 6 に示すようにランダム データ信号を使って行われ 比較的簡単な測定です 図 9. オール 1 のマンチェスター コード化された信号 図 10. オシロスコープ画面は 2 分割され 上の部分のトレースにはオール 1 のマンチェスタ コード化された信号が表示されます 下の部分のトレースは オシロスコープの FFT 機能を使って オール 1 のマンチェスタ コード化された信号の高調波成分を測定したものです この例では 10 MHz の基本波周波数と 3 次高調波 (30 MHz) にそれぞれマーカが配置されています ここに示す 3 次高調波の大きさは 基本波に対して - 28.45 db です 5

100BASE-TX のテスト 100BASE-TX では MLT-3 と呼ばれるライン エンコード方式が使用されます これは データが 3 つの電圧レベルの間で変化し 遷移がロジック 1 を表すものです MLT-3 ライン コード化を使うと 同じデータ レートに対して NRZ などの他のコード化方式よりも必要な帯域幅を狭くできます 100BASE-TX は MLT-3 コード化されたアイドル パターンを使ってテストされます ほとんどのデバイスでは 速度設定を 100 Mbps に設定すると 自動的にアイドル パターンが出力されます このパターンの一部を図 11 に示します 同じパターンがすべての 100BASE-TX テストに用いられます 図 11. 100BASE-TX からの MLT-3 コード化されたアイドル パターン 100BASE-TX 規格では 100BASE- TX トランスミッタの出力を簡単にチェックするためのアイ パターン テンプレートの使用を規定しています ただし アイ パターン テンプレートの使用は 100BASE-TX パラメータの詳細なテストに代わるものではなく 特定のトランスミッタの性能に関してある程度信頼できる指標を提供することです 図 12. 100BASE-TX 信号のアイ パターン テンプレート オシロスコープは 送信波形から復元されたクロックを使用します 6

1000BASE-T のテスト 1000BASE-T は ツイスト ペアの 4 ペアすべてを使ってデータを伝送し PAM5 と呼ばれる 5 レベルのパルス振幅変調をデータ伝送に使用します 10BASE-T や 100BASE-TX と同様の通常のデータ伝送のテストは簡単とは言えないので 規格では 4 つの異なるテスト モードが定義されています これらはテスト モード 1 ~ 4 と呼ばれ 1000BASE-T 制御レジスタのビット 13 ~ 15( レジスタ 9.13:15) に書き込むことにより設定されます テストはトランスミッタの 4 ペアすべてに対して行います A E C D B F H G J M テスト モード 1 では トランスミッタは PAM コード化された 5 つの信号レベルすべてを送信します ここでは " + 2" " - 2" " + 1" " - 1" のシンボルが 127 個の "0" シンボルと交互に現れます この後 "+2" と "-2" のシンボルの長い列 (128 個 ) が 2 回繰り返され 最後に 1024 個の "0" シンボルが現れます テスト対象のポイントを表すために 波形のさまざまなポイントに A から M まで (I は不使用 ) のラベルが付けられています ポイント A B C D は それぞれ " + 2" " - 2" " + 1" " - 1" のシンボルに対応します 図 13. テスト モード 1 波形の 1 サイクルと テスト ポイント A ~ M のラベル テスト モード 1 では 3 つのテストが実行されます 最初に ポイント A B C D でのピーク電圧が測定されます ポイント A と B の電圧が比較され 振幅が 1% 以内で一致することが確認されます これらの測定は比較的簡単であり 目的のポイントにズーム インして測定するだけです 7

1000BASE-T のテスト ( 続き ) 次のテストは テンプレート テストです ポイント A B C D F H が 2 MHz のハイパス フィルタを通過し IEEE 規格 802.3-2005 のサブクローズ 40.6.1.2.3 に記述された規則に基づいてノーマライズされた後で 定義されたテンプレート内に収まる必要があります これらの手順は 現在市販されているデジタイジング オシロスコープを使って実行できます 右の図 14a 14b 14c では ポイント A のテンプレート測定を例として用いています 図 14a. この例のデジタイジング オシロスコープでは 波形に対して実行するファンクションを指定できます この例では 下のカットオフ周波数が 2 MHz のハイパス フィルタがファンクション 2 を使ってチャネル 1 に適用されます テンプレート テストの他に " + 2" および " - 2" シンボルの長い列に対するドループ テストもあります ポイント F(" - 2" シンボル列の開始位置での最小ポイント ) からポイント G( ポイント F から 500 ns 後 ) までと ポイント H( 図 3 に示す波形の最大ポイント ) からポイント J( ポイント H から 500 ns 後 ) までの間で 電圧ドループが測定されます 図 14b. ファンクション 3 では 拡大機能を使って ファンクション 2 でフィルタリングされた波形をノーマライズします ポイント A の波形は A の波形のピーク電圧値で除算することによりノーマライズされます 図 14c. フィルタされ ノーマライズされたポイント A の波形が テンプレートにベスト フィットするように配置されます 8

1000BASE-T のテスト ( 続き ) 次に テスト モード 2 と 3 について説明します これらのテスト信号は TX_TCLK と呼ばれる 125 MHz のタイミング クロックに同期して " + 2" と " - 2" のシンボルが交互に現われる信号です テスト モード 2 と 3 の違いは 使用するタイミング ソースです テスト モード 2 はマスタ モードと呼ばれ デバイス自身の送信クロックを使用します 一方 テスト モード 3 はスレーブ モードと呼ばれ マスタ モードのリンク パートナから送信されたデータから復元されたクロックを使用します 1000BASE-T デバイスのジッタをテストするためには デバイスの TX_TCLK をプローブできる必要があります 1000BASE-T デバイスのデータシートには TX_TCLK にアクセスするためにどのピンをプローブすればよいかが記載されています テスト モード 2 と 3 の波形は基本的に同じです 波形の例と TX_TCLK を図 15 に示します ジッタ テストの詳細はこのドキュメントの範囲外なので ここでは説明しません テスト モード 2/3 TX_TCLK 図 15. テスト モード 2/3 波形と 125 MHz の TX_TCLK 9

1000BASE-T のテスト ( 続き ) 最後に説明するテスト モードは テスト モード 4 です テスト モード 4 では デバイスは 2047 シンボルの疑似ランダム ビット パターンを出力します このパターンは PAM5 でエンコードされた後 部分応答フィルタによりフィルタリングされたものです フィルタからの出力は 図 16 に示すような 17 レベルの信号です テスト モード 4 の波形は アクティブに送信中の 1000BASE-T デバイスからの波形がどのようになるかを大まかに示しています テスト モード 4 の出力は ピーク トランスミッタ歪みの測定のためのソースとして用いられます 歪み測定は オシロスコープでは簡単に実行できません 歪みを計算するためにポスト プロセッシングが必要だからです 規格では 歪み計算のサンプル MATLAB コードが提示されています このコードの動作を簡単に説明すると 2047 個のシンボルのそれぞれを TX-TCLK クロックの任意の位相でサンプリングすることです その後 このコードは 各サンプルの歪みを調べて 最大値をピーク歪みとして報告します これには通常 テスト モード 4 の波形のいくつかのサイクルを含む大きなレコードの収集が必要です この波形は記録され PC に転送されて MATLAB コードに従って処理されます 図 16. テスト モード 4 波形 10BASE-T 規格がいくつかのテストを TPM を使って実行するように規定しているのと同様に 1000BASE-T 規格でもテスト モード 1 とテスト モード 4 のテストを外乱信号の存在下で実行するように規定しています 外乱信号は正弦波発生器と定義されていて 他の 1000BASE-T トランスミッタからの干渉をシミュレートします 本書では 外乱信号を使ったテストについては扱いません 10

リターン ロス テスト リターン ロスは 受信デバイスから送信デバイスに向かって反射されるエネルギーの指標です リターン ロスは 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T の各規格で定義されています リターン ロスが特に重要なのは 1000BASE-T デバイスの場合です 1000BASE-T デバイスは双方向シグナリングを使用するため データを送信するのと同じピンがデータの受信にも用いられるからです 受信デバイスのリターン ロスが大きいと 送信側からの情報が反射され 送信側で問題が生じます 送信側はレシーバとしても動作し 反対側のトランスミッタからのデータを受け取ろうとしているからです このため リターン ロス テストは 他のデバイスとの相互運用性を保証するために重要です リターン ロス テストは ベクトル ネットワーク アナライザを使って行われます N5395B イーサネット電気プロービング フィクスチャを使用すると リターン ロス測定が簡単になります イーサネット デバイスからの信号は差動信号であり ネットワーク アナライザの入力はシングルエンドなので フィクスチャのバラン トランスにより 差動からシングルエンドへのインピーダンス変換が必要です また N5395B フィクスチャには ベクトル ネットワーク アナライザを校正するための RJ-45 ショート / オープン / ロード接続付きのリターン ロス校正フィクスチャも付属しています リターン ロスは 対数振幅の順方向反射 (S11) 測定を使用することにより ベクトル ネットワーク アナライザのひとつのポートで測定できます この測定はバラン経由で 50 Ω で変換されるため 100 ± 15 Ω の等価値に数学的に変換する必要があります このため リターン ロスは 85 Ω 100 Ω 115 Ω(10BASE-T ではこれに加えて 111 Ω) で計算されます 変換は以下の式で行われます リターン ロス (db 単位 ): RL db =20 log 10 Г 0 ここで Г 0 は VNA で測定された ( 周波数に対する ) 複素反射係数値の配列であり インピーダンスを用いて以下のように表されます Z in - Z 0 Г 0 = Z in + Z 0 Z in は DUT のインピーダンスで これも ( 周波数に対する ) 複素数配列です Z 0 は測定が実行された標準器の基準インピーダンス ( 実数 ) です 測定はベクトル ネットワーク アナライザにより 50 Ω の基準インピーダンスで行われていますが 最初にバランによる 2:1 の変換を通っているので Z 0 = 2*50 = 100 となります Z in について解くと Z in = Z 0 1 + Г 0 Z in より さまざまなインピーダンス 1 - Г 0 リターン ロス (db) における反射係数を計算できます Z in - 85 Г 85Ω = Z in + 85 Z in - 100 Г 100Ω = Z in + 100 Z in - 115 Г 115Ω = Z in + 115 リターン ロス対周波数 周波数 (MHz) 図 17. 1000BASE-T デバイスのリターン ロス対周波数プロット db 単位のリターン ロスは 以下のように求められます RL 85Ω = 20 log 10 Г 85Ω RL 100Ω = 20 log 10 Г 100Ω RL 115Ω = 20 log 10 Г 115Ω 11

まとめ 広く用いられている 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T の電気的検証の概要を説明しました イーサネット信号の伝送に用いられる信号は データ レートが 10 Mbps から 1000 Mbps に指数関数的に増加するのに伴って 複雑さが増しています 帯域幅が制限された UTP ケーブルでより多くのデータを伝送するためには さらに複雑な変調方式が必要になるので この傾向は今後も続くでしょう 測定ツールの品質とシグナル インテグリティは 測定対象の信号を正確に表現できることを保証するために 重要な役割を果たします ここで説明した測定のほとんどは 現在のデジタイジング リアルタイム オシロスコープを使用して手動で行えます これらの例で用いられた信号は 市販のネットワーク インタフェース カードの出力を Agilent 80000 シリーズ オシロスコープでアクティブ差動プロー ブを使って捕捉したものです 図 2 と 3 に示す回路にプローブを接続するには Agilent N5395B イーサネット電気プロービング フィクスチャが用いられています N5395B フィクスチャと組み合わせて使用できる自動テスト アプリケーションも用意されています イーサネット検証用ツールの詳細については www.agilent.co.jp/find/ n5392a をご覧ください 関連カタログ タイトルカタログ タイプカタログ番号 N5392A イーサネット電気的特性検証 / コンプライアンス ソフトウェア Infiniium DSO80000B Series Oscilloscopes and InfiniiMax Series Probes Data Sheet Data Sheet 5989-1527JA 5989-4606EN Infiniium DSO/DSA90000A シリーズ Data Sheet 5989-7819JAJP 製品 Web サイト アプリケーションと製品に関する最新の詳細情報については 以下の Agilent 製品 Web サイトをご覧ください www.agilent.co.jp/find/n5392a 12

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