知能 認知検査における 4 つの波 第 1の波一般的な定量化一般知能に基づいて人間を区分する客観的な方法としての開発と普及 総括的なIQの使用知的障害の判定 第 2 の波臨床的プロフィール分析ウェクスラー検査の登場総括的な IQ から VIQ/PIQ 下位検査得点のパターン分析 診断的で心理治療的な

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知能 認知検査における 4 つの波 第 1の波一般的な定量化一般知能に基づいて人間を区分する客観的な方法としての開発と普及 総括的なIQの使用知的障害の判定 第 2 の波臨床的プロフィール分析ウェクスラー検査の登場総括的な IQ から VIQ/PIQ 下位検査得点のパターン分析 診断的で心理治療的な考察 第 3 の波心理測定的プロフィール分析知的能力と学力のディスクレパンシーモデルによる LD 判定心理測定理論に則った論理的で系統的な手法の使用 第 4 の波知能検査解釈への理論の適用 CHC 理論に基づくアセスメント解釈方法の開発 RTI ( 児童への指導における反応を重視するアプローチ ) に応えるアセスメント利用 2

ウェクスラー尺度の歴史 WPPSI=Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence; WISC=Wechsler Intelligence Scale for Children; WAIS=Wechsler Adult Intelligence Scale Wechsler- Bellevue I 1939 7 to 69 WAIS 1955 16 to 64 WAIS-R 1981 16 to 74 WAIS-III 1997 16 to 89 WAIS- IV 2008 16 to 90 Wechsler- Bellevue II 1946 10 to 79 WISC 1949 5 to 15 WISC-R 1974 6 to 16 WISC-III 1991 6 to 16 WISC-IV 2003 6 to 16 WPPSI 1967 4 to 6.5 WPPSI-R 1989 3 to 7.3 WPPSI-III 2002 2.6 to 7.3 * modified by Kazuhiko Ueno 3

原版 WISC と日本版 WISC 刊行の歴史 WISC 1949 年齢 5-15 WISC-R 1974 年齢 6-16 WISC-III 1991 年齢 6-16 WISC-IV 2003 年齢 6-16 日本版 WISC 1958 年齢 5-15 日本版 WISC-R 1978 年齢 6-16 日本版 WISC-III 1998 年齢 5-16 日本版 WISC-IV 2010 年齢 5-16 1982 5 歳換算表 1988 尺度修正 * modified by Kazuhiko Ueno 4

WISC-IV 改訂による変更と改善点 *WISC-IV,10 の基本検査の配置 検査の実施時間の短縮が可能 ( 組合せ 絵画配列 削除 ) 削除理由は, 所要時間の問題と信頼性の低さ 絵画配列 社会的推理や系列化能力を支持する研究結果がない * スピードへの影響を大幅減少 能力を速度から分離して扱うことが可能となった *VIQ と PIQ の代わりに,VCI と PRI を利用 より純粋な言語理解と知覚 非言語性推理の測定 * 行列推理 絵の概念 語の推理 の追加 新奇な知識 情報に基づく流動的知能 問題処理能力の測定 * 数唱 語音整列 によるワ - キングメモリ - のイメージ明確化 被転導性からの解放 (FD) というイメージからの解放 ワ - キングメモリ - という用語は, 現代の認知や作動記憶に関する諸説を反映 (Baddeley, 1997)( 算数 は WMI の補助検査 ) 5

WISC-IV 改訂のポイント 実施所要時間の短縮と実施法の簡素化 10 の基本検査による実施時間の 10~20% 短縮リバース実施の統一 言語性 IQ, 動作性 IQ の廃止 指標得点の理論的洗練 4 つの指標得点流動性推理能力やワーキングメモリーの測定強化 標準出現率の採用 プロセス得点の採用 ( 原版 WISC-IV 統合版 ) 6

VCI 言語理解指標 類似単語理解 ( 知識 ) ( 語の推理 )* WISC-IV の枠組み PRI 知覚推理指標 積木模様絵の概念 * 行列推理 * ( 絵の完成 ) WMI ワーキングメモリー指標 FSIQ 全検査 IQ PSI 処理速度指標 数唱語音整列 * ( 算数 ) 符号記号探し ( 絵の抹消 )* ( 補助検査 ) * 新検査 2010 NCS Pearson, Inc. 日本文化科学社の許可を得て転載 7

WAIS-Ⅳ の構成 16-90 歳 11 月 [ 補助検査 ] VCI( 言語理解指標 ) PRI( 知覚推理指標 ) 類似単語知識 [ 理解 ] FSIQ 全検査 IQ 積木模様行列推理パズル [ バランス ](16-69 歳 ) [ 絵の完成 ] WMI( ワーキングメモリー指標 ) PSI( 処理速度指標 ) 数唱算数 [ 語音整列 ](16-69 歳 ) 符号記号探し [ 絵の抹消 ](16-69 歳 ) WAIS-IV 実施 採点マニュアル Figure1.1 転載

WISC-IV の特徴 5 歳 0 ヵ月 ~16 歳 11 ヵ月 ( 適用年齢範囲 ) (WISC-III と同じ, ただし原版は 6 歳 0 ヵ月 ~ ) 5 つの合成得点 4 つの指標得点 合成得点全検査 IQ 言語理解指標知覚推理指標ワーキングメモリー指標処理速度指標 略称 FSIQ VCI PRI WMI PSI 9

標準出現率 以下の値については, 標準出現率を調べることができる 1 指標得点間ないし下位検査評価点間の差 2 各下位検査の評価点と評価点平均との差 3 プロセス得点 4 プロセス得点間の差 (WISC-IV 理論 解釈マニュアル p.95) 標準出現率 (base rate) とは, 上記の値が, 標準化サンプルにおいてどの程度の割合 ( 累積パーセンテージ ) で見られたかを表す数値 つまり, これらの値が, どの程度 まれ であるかを判断する基準となる 標準化サンプルの 10% から 15% 以下の出現頻度であれば, その値を まれ とみなすことが提案されている 10

WISC IV の 7 つのプロセス得点 プロセス得点 積木模様 : 時間割増なし 数唱 : 順唱 数唱 : 逆唱 順唱 : 最長スパン 逆唱 : 最長スパン 絵の抹消 : 不規則 ( 配置 ) 絵の抹消 : 規則 ( 配置 ) 略語 BDN DSF DSB LDSF LDSB CAR CAS 11

プロセス分析 ( WISC-IV 理論 解釈マニュアル pp.98-101) プロセス得点は, 下位検査の結果に寄与する認知能力のより細かい情報を与えてくれる プロセス分析は, 特定の情報処理スタイルを評価することにも役立つ この理解は, 認知能力の強いところ弱いところをとらえ, 教育的介入や治療プログラムの一部として状況を改善する方略を生み出すのに重要なものである 日本文化科学社の許可を得て掲載 12

強い能力と弱い能力の判定 比較の基準 10 検査平均 ( WISC-IV 実施 採点マニュアル p.40, 表 B.5:p.233) 10 9.4 0.6 6 7 9 13 9.4 9.4 9.4 13 8 11 8 9 9.4 9.4 9.4 9.4 9.4 9.4-3.4-2.4-0.4 3.6 3.6-1.4 1.6-1.4-0.4 3.10 2.97 3.33 2.90 3.18 2.62 2.72 2.49 2.78 3.52 10 10-25 10-25 2010 NCS Pearson, Inc. 日本文化科学社の許可を得て転載 94 9.4 13

WISC-IV のさらなる枠組み VCI 言語理解指標 GAI 一般知的能力指標 PRI 知覚推理指標 FSIQ 全検査 IQ WMI ワーキングメモリー指標 CPI 認知習熟度指標 PSI 処理速度指標 2010 NCS Pearson, Inc. 日本文化科学社の許可を得て転載 (2010.12 上野加筆修正 ) 14

CHC 理論 (Cattel-Horn-Carroll Theory) 今日の米国の知的 認知能力検査類は,CHC 理論に準拠することが一般的に求められており, ウェクスラー知能検査も同様である 第 3 層として一般能力 (g) が 第 2 層には 10 の広義な能力 (broad abilities) が 第 1 層には 76 の限定能力 (narrow abilities) が位置づけられている 一般能力 (g) 10 の広義の能力 (broad abilities) 76 の限定能力 (narrow abilities) * modified by Kazuhiko Ueno 15

CHC 理論 (Cattel-Horn-Carroll Theory) 第 2 層の 10 の広範的能力 1 流動性知能 (Gf) 2 量的知識 (Gq) 3 結晶性知能 (Gc) 4 読み書き能力 (Grw) 5 短期記憶と検索 (Gsm) 6 視覚処理 (Gv) 7 聴覚処理 (Ga) 8 長期記憶と検索 (Glr) 9 認知処理速度 (Gs) 10 反応時間 / 速度 (Gt) それぞれの広範的能力は, 最低 2 つから最高 14 までの限定的能力で構成される 16

指標 VCI PRI WMI PSI 指標得点の構成下位検査と CHC 因子 下位検査 検証的因子分析による広義の能力の分類 a 専門家の合意にも基づく広義と限定能力の分類 b 類似 Gc Gc 言語発達語彙の知識 単語 Gc Gc 語彙の知識 理解 Gc Gc 一般的知識 知 識 Gc Gc 一般的知識 語の推理 Gc Gc 語彙の知識 Gf 帰納 積木模様 Gv Gv 空間関係 絵の概念 Gf Gf 帰納 Gc 一般的知識 行列推理 Gf, Gv Gf 帰納一般的系列推理絵の完成 Gv, Gc Gc 一般的知識 Gv 閉合の柔軟性 数唱 Gsm Gsm 記憶範囲ワーキングメモリー 語音整列 Gsm Gsm ワーキングメモリー 算 数 Gf 年齢の高い児童 Gq 数学的学力 Gf 量的推理 Gsm 年齢の低い児童 符号 Gs Gs 課題遂行速度 記号探し Gs,Gv Gs 知覚速度 課題遂行速度 絵の抹消 Gs Gs 知覚速度 課題遂行速度 注 : 太字は主要な分類を表す 標準文字は二次的な分類を表す

WISC-IV 下位検査の CHC 分類 8 つの新しい臨床クラスター ( エッセンシャルズ WISC-IV) 1. 流動性推理 (Gf) 2. 視覚処理 (Gv) 3. 非言語性流動性推理 (Gf-nonverbal) 4. 言語性流動性推理 (Gf-verbal) 5. 語い知識 (Gc-VL) 6. 一般的知識 (Gc-KO) 7. 長期記憶 (Gc-LTM) 8. 短期記憶 (Gsm-MW) これら臨床クラスターは, 子どもの認知能力について合成得点 (IQ および指標得点 ) 以上の情報を得るために, 事前仮説に基づく臨床比較 ( 対比較 ) で用いられる 18

臨床クラスターと WISC-IV の下位検査 臨床クラスター (CHC 因子 ) 構成下位検査 1 流動性推理 (Gf) 行列推理 + 絵の概念 + 算数 2 視覚処理 (Gv) 積木模様 + 絵の完成 3 非言語性流動性推理 行列推理 + 絵の概念 (Gf-nonverbal) 4 言語性流動性推理 類似 + 語の推理 (Gf-verbal) 5 辞書的知識 (Gc-VL) 語の推理 + 単語 6 一般的知識 (Gc-KO) 理解 + 知識 7 長期記憶 (Gc-LTM) 知識 + 単語 8 短期記憶 (Gsm-MW) 語音整列 + 数唱 19

日本版 WISC-IV モデルに基づく検証的因子分析 繁桝 大六 星野 立脇 上野 ( 日本テスト学会第 9 回大会 2011 年 9 月 ) 類似 理解 語の推理 積木模様 絵の概念 語音整列 符号 絵の抹消 0.72 0.65 0.69 0.62 0.47 0.66 0.72 0.46 単語 知識 絵の完成 行列推理 算数 数唱 記号探し 0.78 0.76 0.60 0.66 0.72 0.63 0.77 VCI 言語理解指標 PRI 知覚推理指標 WMI ワーキングメモリー指標 PSI 処理速度指標 20

CHC 理論に基づく検証的因子分析 ( 負荷量の高いもののみを表記 ) 繁桝 大六 星野 立脇 上野 ( 日本テスト学会第 9 回大会 2011 年 9 月 ) 類似 0.72 理解語の推理積木模様絵の概念語音整列符号絵の抹消 0.66 0.69 0.64 0.41 0.73 0.77 0.47 単語知識絵の完成行列推理算数数唱記号探し 0.78 0.75 0.51 0.65 0.63 0.90 0.66 Gc Gv Gf Gsm Gs 結晶性知能 視覚処理 流動性知能 短期記憶と検索 認知的処理速度 21

主な障害臨床研究成果 エッセンシャルズ WISC-IV( 近刊 ) より ギフテッドや LD,ADHD, 外傷性脳損傷, 自閉症, アスペルガー障害, 運動障害の多くは GAI が FSIQ より 5 ポイント以上高く, 反対に知的障害の多くは FSIQ が GAI より 5 ポイント以上高い (Saklofske et al., 2006) 自閉性障害, アスペルガー障害 : 一番平均点が低かったのは処理速度指標 (PSI) で, これらを構成する下位検査は全般的な認知障害を最もよく反映する ギフテッドを査定するのに最もよい下位検査は言語理解指標 (VCI) を構成するもので, その次が知覚推理指標 (PRI) の下位検査である 全米ギフテッド協会 (NAGC, 2008) は, ギフテッドの査定には FSIQ の代わりに GAI を使うことを勧めている 22

知的障害はしばしば GAI より高い FSIQ を示す 類推能力や習得された知識よりも, あまり複雑ではない課題を 得意とするからだろう ADHD はワーキングメモリー (WMI) と処理速度 (PSI) に困難を示し, その結果 FSIQ が低くなり,GAI より FSIQ が低い 処理速度指標 (PSI) の中では, 記号探し に比べて 符号 の評価点が低い LD と ADHD の両方をもつ子どもは特に 語音整列 の得点が低い (Prifitera ら, 2005) 読字障害は言語に基づかない課題 ( 絵の抹消 など ) を最も得意とする 読字障害は, ワーキングメモリーに相対的困難を示した 算数障害は, 逆唱 に相対的困難を示した 逆唱 が数字の操作を必要とするからだろう 23

END ご清聴感謝いたします 24