平成 29 年版 警察のあゆみ
安全で安心して暮らせるまちづくり ~ 県民の期待に応える力強い警察活動の推進 ~ 平成 29 年重点施策 迅速 的確な初動警察活動の推進 特殊詐欺 サイバー犯罪 街頭犯罪及び侵入犯罪の抑止と検挙 凶悪 重要事犯の検挙 犯罪組織の壊滅 弱体化と暴力団排除の徹底子ども 女性 高齢者の犯罪被害と少年非行の防止交通事故の抑止と飲酒運転の根絶テロ 災害等緊急事態への的確な対処 埼玉県警察
平成 29 年版警察のあゆみの発行に当たって 埼玉県警察本部長 貴志 浩平 警察のあゆみ は 埼玉県警察の活動状況等を広く県民の皆様にお知らせするため 毎年発行しているものです 平成 29 年版は 平成 28 年中の県内治安情勢と各種対策の推進状況について 事例やデータをお示ししながら解説するものとして 取りまとめました 特に 平成 28 年は 指定暴力団六代目山口組の分裂に起因する抗争事件が本県で発生し これを検挙解決したこと 交通死亡事故に占める高齢者の割合が増加したこと 特殊詐欺が認知件数 被害金額ともに前年と比較して減少したものの 依然として高水準で発生していることを踏まえ 特集として 暴力団対策及び取締りの現状 高齢化社会に向けた交通事故抑止対策の推進 振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の現状と対策 を掲載いたしました 平成 28 年中の犯罪情勢は 刑法犯の認知件数が6 万 9,456 件となり ひったくりや車上ねらい等の一部罪種で増加が認められたものの 前年と比べて4,000 件 5.4パーセント減少し 平成 17 年以降 12 年連続の減少となりました また 交通事故情勢は 交通事故死者数が151 人で前年に比べて26 人減少し 昭和 30 年以降で最少となり 人身交通事故件数は2 万 7,816 件と 前年に比べ1,712 件 5.8パーセント減少し 平成元年以降最少となるなど 県内治安は着実に回復しております 県警察では 今年も組織の総合力を発揮して 県民が安全で安心して暮らせるまちづくりのために全力を尽くして参ります この冊子が 県警察の活動へのご理解とともに 県民の皆様の安全安心の一助となりますよう期待申し上げるとともに 皆様には今後の県警察の活動に対して 引き続きご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます 平成 29 年 4 月
目 次 ( 表紙裏 ) 埼玉県警察基本姿勢 重点施策発行に当たって目次埼玉県警察の組織 1 特集 1 暴力団対策及び取締りの現状 2 特集 2 高齢化社会に向けた交通事故抑止対策の推進 4 特集 3 振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の現状と対策 5 Ⅰ 犯罪情勢と治安回復に向けた警察の取組 6 1 警察事象と警察力 6 2 警察基盤の整備 9 Ⅱ 安全で安心して暮らせるまちづくり 11 1 サイバー空間の安全確保に向けた取組 11 2 子ども 女性等の安全対策 13 3 街頭犯罪 侵入犯罪の抑止 15 4 地域警察活動の強化 17 5 防犯のまちづくり 20 6 風俗 経済 環境事犯の検挙 22 7 警察安全相談等への対応 24 8 少年非行の防止 25 9 凶悪 重要事件の検挙 29 10 犯罪組織の壊滅 弱体化 31 11 知能犯罪の発生と検挙 35 12 科学捜査の推進 36 13 交通事故の抑止 37 14 テロ対策の推進 40 15 災害 重大事案への対策 42 16 警備実施 43 17 犯罪被害者の支援 44 Ⅲ 警察官の教育訓練 45 警察が実施する指導班の派遣及び講習会 46 話題記事 ( 現場活動紹介 ) 航空隊 の活躍 ( 裏表紙 ) 事件 事故等情報サイトのご紹介
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特集 1 暴力団対策及び取締りの現状 警察では 市民生活を脅かす暴力団の壊滅 弱体化を目指して 暴力団犯罪の取締りや資金源遮断を強化するとともに 暴力団排除に取り組む事業者に対する暴力団情報の提供 保護対策の強化等に取り組んでいます 1 対立抗争対策平成 27 年 8 月末に指定暴力団六代目山口組傘下の直系組長 13 人が離脱して神戸山口組を結成しました 神戸山口組は 六代目山口組構成員を切り崩して傘下に加えるとともに 過去に六代目山口組から絶縁等の処分を受けた者を構成員として復帰させるなど その勢力拡大を図っていることから 全国各地で両団体間における事件やトラブルが発生しています 本県においても 両団体の分裂に起因すると認められる拳銃発砲事件や放火事件が発生しており 六代目山口組 神戸山口組対立抗争集中取締本部を設置し 市民生活の大きな脅威となる対立抗争関連事件の取締りを重点的に行っています 今後も 両団体の動きに最大限の注意を払い 取締りや警戒の強化 関連情報の収集等を推進し 対立抗争の火種となるようなぼうあつ事件の検挙を徹底するなどして 対立抗争の防遏と組織の弱体化を図ることとしています 警察本部に取締本部を設置 県内における六代目山口組と神戸山口組の対立抗争に係る事件の検挙事例 八潮市内における民家に対する拳銃発砲事件 (H28.2 発生 ) 熊谷市内における六代目山口組傘下組織幹部の所有車両に対する放火事件 (H28.3 発生 ) 行田市内における六代目山口組傘下組織事務所に対する放火未遂事件 (H28.3 発生 ) 2 暴力団犯罪の取締り県警察では 平成 18 年以降 毎年 1,000 人以上の暴力団構成員等を検挙しています 検挙人員のうち 暴力団の有力な資金源となっている覚せい剤取締法違反 恐喝 賭博等の伝統的な資金獲得犯罪が占める割合は全体の3 割程度で推移しており 財産犯である窃盗 詐欺 強盗も含めると全体の約半数が資金獲得に関わる犯罪となっています 県警察では 暴力団の資金源遮断に重点をおき 暴力団の活動の変化に対応しながら効果的な取締りを推進しています 罪種別検挙状況 ( 平成 28 年中 ) 検挙人員の推移 ( 注 ) 平成 28 年中の統計値は暫定値 - 2 -
3 暴力団の資金源対策暴力団は 飲食店等に対してみかじめ料や用心棒料等を不当に要求し その活動資金を得ていることから 警察官が飲食店等を個別訪問して積極的な情報収集を行い 不当要求に対しては暴力団対策法に規定される中止命令等を積極的に発出しているほか 暴力団の活動に積極的に協力している事業者に対し 埼玉県暴力団排除条例に基づく勧告等の措置を講じ 暴力団の資金源遮断対策を推進しています 4 暴力団排除対策の推進 社会対暴力団 の構図の下に 県民生活や社会経済活動からの暴力団排除を徹底するため 次のような対策を推進しています ⑴ 暴力団排除のための広報啓発活動暴力追放 薬物乱用防止埼玉県民大会県民 事業者の皆様に暴力団の実態 暴力団排除活動の必要性等を周知するため 地域 職域ごとに設立された暴力排除団体等と協力して 毎年 暴力追放 薬物乱用防止埼玉県民大会や暴力団排除キャンペーンを開催しています また 事業者の皆様が行う各種契約等から暴力団を排除するため 契約約款等に暴力団排除に関する条項を設けていただくよう働きかけを行っています ⑵ 公共工事 各種業からの暴力団排除対策暴力団関係企業の実態解明を推進し 暴力団員が実質的に事業活動を支配していることが判明した企業等について 公共工事の入札参加除外措置や建設業 産廃業等各種業の許認可の取消し等の措置が行われるよう 県や市町村に対し積極的に通報しています 平成 28 年中の主な排除事例 建設業を営む法人の代表者が暴力団員と社会的に非難されるべき関係を持つことが判明したことから 当該法人について埼玉県及び2 市が公共工事の入札から一定期間除外する措置を実施 (H28.4) 産廃業を営む法人が 廃掃法に規定される欠格要件 ( 法人の役員等が 暴力団員でなくなってから5 年を経過しない者であるもの ) に該当することが判明したことから 許可取消し処分 (H28.5) 建設業を営む法人が 建設業法に規定される欠格要件 ( 暴力団員がその事業活動を支配しているもの ) に該当することが判明したことから 許可取消し処分 (H28.10) 5 暴力団事務所の撤去暴力団事務所は 対立抗争事件の発生時等には攻撃対象になるなど 付近住民や事業者の方々の平穏を脅かす存在です 暴力団対策法では 住民の方々の安全等を考慮して 付近住民から委託を受けた ( 公財 ) 埼玉県暴力追放 薬物乱用防止センターが訴訟を提起できる制度が設けられており 平成 28 年 4 月には 草加市内に所在する暴力団事務所について 当該制度を利用した全国 2 例目の暴力団事務所使用差止請求訴訟により 暴力団事務所が撤去されました 6 保護対策の徹底暴力団は 要求に応じない人に対し 報復や見せしめのための襲撃事件 嫌がらせ行為を行うなど 目的を遂げるためには手段を選ばない凶悪性が見られ 依然として社会の脅威となっていることから 暴力団とトラブルを抱えてしまった方々に対し 警察官による定期的な立寄り警戒や保護対策用資機材の効果的な活用等により その身辺の安全等に万全を期しています 身辺警戒員訓練の実施状況 - 3 -
特集 2 高齢化社会に向けた交通事故抑止対策の推進 高齢運転者の免許人口と交通事故発生状況 埼玉県は 高齢者の運転免許人口が年々増加しており 平成 28 年中の高齢者免許人口は約 95 万人 全運転免許人口に占める割合は20.4パーセントです また 高齢運転者 ( 原付車以上 ) が第一当事者となる交通事故の全体に占める割合は 死亡事故は23.8パーセント 人身事故は20.6パーセントと年々増加しています 高齢者運転免許人口の推移 高齢運転者 ( 原付車以上 ) が第一当事者となる割合の推移 高齢運転者事故防止対策の推進 1 高齢運転者への対応 県警察では 高齢運転者の身体機能の低下による交通事故の防止を図るため 実車講習や体験型講習予備検査を取り入れた シルバー ドライバー ドック を実施しています 第一当事者が原付車以上の事故 また 実車講習等で撮影したドライブレコーダー等を活用し 記録した映像により実際の運転状況を確認させながら 必要なアドバイスを行う交通安全教育を実施しています シルバー ドライバー ドック ドライブレコーダー等の映像を活用した講習 2 運転免許の自主返納運転免許を自主返納して 運転経歴証明書を取得した高齢者に対しては タクシー料金やコミュニティバス料金割引等の生活支援を行う シルバー サポーター制度 を実施しています また 運転免許更新の待ち時間等の機会を利用し 認知症の早期発見のきっかけとなる 車の運転時に現れやすい状態 30 項目をリストアップした 運転時認知障害早期発見チェックリスト30 を活用するなど 自主返納を考えてもらう機会を提供しています シルバー サポーター制度周知用リーフレット - 4 -
特集 3 振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の現状と対策 警察では 電話等で嘘の口実を設けて 不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪を 特殊詐欺 と呼んでいます その中でも代表的なものが 振り込め詐欺 です 1 特殊詐欺の現状 ⑴ 被害状況平成 28 年中の振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺被害は 認知件数 972 件 被害金額約 21 億円でした 認知件数 被害金額ともに前年と比べ減少したものの 被害は連日のように発生しています 手口については 息子や孫等を装い現金をだまし取るオレオレ詐欺が最も多く サイト利用料や訴訟回避等の名目で電子マネーや現金をだまし取る架空請求詐欺や還付金等詐欺等も多発しています ⑵ 検挙状況 認知件数 被害金額の推移 ( 注 ) 平成 28 年中の統計値は暫定値 平成 28 年中は 特殊詐欺で156 人 特殊詐欺に悪用する携帯電話や預貯金口座等を契約し 売買するなどの特殊詐欺助長犯罪で148 人 その他関連事件を含め合計 305 人の犯人を検挙しました 平成 28 年中の主な検挙概要 県警察に寄せられた情報や逮捕した犯人からの突き上げ捜査によって 県内及び都内の犯行拠点 ( アジト ) 合計 6 か所を割り出し アジト急襲型捜査で犯人グループ等 26 人を検挙しました 県民の皆様の協力を得て実施した だまされた振り作戦 では 合計 76 人の犯人を検挙しました 犯行アジトからの押収品 未然防止件数 金額の推移 2 特殊詐欺被害防止対策 ⑴ 被害防止 ( 未然防止 ) 状況平成 28 年中 特殊詐欺の未然防止事案は806 件 未然防止した額は約 14 億円でした 未然防止の多くは 金融機関職員等が注意喚起を行い 被害を未然に防いだものです ⑵ 主な被害防止対策県警察では 民間事業者に委託して特殊詐欺被害防止コールセンターを開設し 電話で直接県民や金融機関に対し 注意喚起と被害防止対策の案内を行っているほか 振り込め詐欺抑止対策員の配置や県警察が制作した金融機関職員用 DVDの活用による水際防止対策等を実施しています また 自動通話録音 警告機等の普及促進による被害者に犯人からの電話を取らせない対策の推進 自主防犯活動団体等と連携した戸別訪問をはじめとする高齢者 息子や孫世代に対する被害防止の広報啓発等 県民総ぐるみによる被害防止対策を推進しています - 5 -
Ⅰ 犯罪情勢と治安回復に向けた警察の取組 1 警察事象と警察力 1 刑法犯認知件数等の推移 刑法犯認知件数は 平成 16 年には過去最多となる 18 万 1,350 件に達しましたが 平成 17 年以降 は 12 年連続で減少し 平成 28 年は 6 万 9,456 件となりました 昭和 62 年以来 初めて 7 万件を下 回り 当時の治安水準にまで回復しつつあります 2 県内市区町村別人口 1,000 人当たりの刑法犯認知件数 ( 平成 28 年中 ) 平成 28 年の市区町村別人口 1,000 人当たりの刑法犯認知件数 ( 犯罪率 ) は 年間の認知件数が最多であった 平成 16 年と比較すると 25 件以上の 市区町村がなくなり ほとんどの市 区町村が 15 件未満となりました 刑法犯認知 検挙状況の推移 - 6 -
3 警察官 1 人当たりの負担状況 ( 平成 28 年 4 月 1 日現在条例定数 ) 本県は 平成 13 年度以降 全国最多の 2,831 人の警察官が増員されていますが 警察官 1 人当 たりの人口負担 業務負担は依然として過重であり 全国上位にあります ⑴ 人口 ( 平成 28 年 4 月 1 日現在推計人口 ) ⑵ 刑法犯認知件数 ( 平成 28 年中 ) 順位は小数点第 2 位までの値で算出 ⑶ 110 番受理件数 ( 平成 28 年中 ) ⑷ 重要犯罪認知件数 ( 平成 28 年中 ) ごうかん 重要犯罪 : 殺人 強盗 放火 強姦 略取誘拐 人身売買 強制わいせつ - 7 -
⑸ 重要窃盗犯認知件数 ( 平成 28 年中 ) 重要窃盗犯 : 侵入盗 自動車盗 ひったくり すり 4 警察官 1 人当たりの検挙件数 ( 平成 28 年 4 月 1 日現在条例定数 ) 県警察では 県民の皆様のご理解とご協力を得て警察活動を推進した結果 全国平均を上回る検挙実績を上げています ⑴ 刑法犯検挙件数 ( 平成 28 年中 ) ⑵ 重要犯罪検挙件数 ( 平成 28 年中 ) ごうかん 重要犯罪 : 殺人 強盗 放火 強姦 略取誘拐 人身売買 強制わいせつ ⑶ 重要窃盗犯検挙件数 ( 平成 28 年中 ) 重要窃盗犯 : 侵入盗 自動車盗 ひったくり すり - 8 -
2 警察基盤の整備 1 優秀な人材の確保増員や大量退職に伴い 平成 13 年度以降 毎年 500 人を超える警察官を採用し 必要な警察力の確保に努めています 真に本県警察で活躍できる人材を確保するため 大学等を訪問して行う就職説明会やインターンシップ 警察学校でのチャレンジセミナー ( 体験 体感型業務説明会 ) 等の各種イベントを開催しているほか OB( リクルーター ) 職場訪問の受入れも随時行っています 埼玉県警察インターンシップ また SNS(Twitter( ツイッター ) Facebook( フェイスブック ) LINE( ライン )) や埼玉県警察採用メールマガジンにて各種イベント 採用試験等の情報をタイムリーに配信しています 平成 29 年度埼玉県警察官採用試験日程回数試験区分申込受付期間第 1 次試験日最終合格発表日 Ⅰ 類 ( 男性 女性 ) 第 1 回試験 Ⅱ 類 ( 男性 女性 ) Ⅲ 類 ( 男性 女性 ) 国際捜査 Ⅰ 類 ( スペイン語 中国語 ) 武道 体育指導 Ⅰ 類 ( 柔道 剣道 ) 4 月 3 日 ( 月 ) ~ 4 月 17 日 ( 月 ) 5 月 14 日 ( 日 ) 8 月 22 日 ( 火 ) サイバー犯罪捜査 Ⅰ 類 第 2 回試験 Ⅰ 類 ( 男性 女性 ) Ⅱ 類 ( 男性 女性 ) Ⅲ 類 ( 男性 女性 ) 武道 体育指導 Ⅰ 類 ( 柔道 剣道 ) 8 月 4 日 ( 金 ) ~ 8 月 30 日 ( 水 ) 9 月 17 日 ( 日 ) 12 月 19 日 ( 火 ) 受験案内 申込書は 採用センター又は県内の警察署 交番 駐在所で配布しています 2 女性が活躍できる職場環境づくりの推進女性の視点を一層反映した警察活動を推進するため 平成 26 年 4 月 1 日に 埼玉県警察女性警察官キャリアサポートセンターを設置し 女性職員の採用 登用の拡大 能力や実績に応じた人材育成 ハラスメント防止対策等に努めています また 育児休業から復帰した女性職員が仕事と育児の両立を図り その能力を十分発揮できるよう 勤務を通じた職場復帰支援等のサポート等 女性職員が働きやすい職場環境づくりを推進しています 仕事と子育ての両立に関するセミナーの開催 - 9 -
3 警察官の増員警察官の定員は 警察法 ( 第 57 条第 2 項 ) の規定により 政令 ( 警察法施行令 ) で定める基準に従い 条例で定めることとされています 国 ( 警察庁 ) は 全国的な治安の悪化に対応するため 平成 13 年度から警察官を計画的に増員し 警察官不足の著しい本県には 全国最多となる2,831 人の増員が措置されました 増員された警察官は 警察署の地域部門を中心に現場の警察力を強化するための要員として配置しています 4 組織の整備治安情勢の変化に的確に対応するため 必要に応じて組織の見直し 体制整備を図っています 最近の主な組織の整備状況は右表のとおりです 5 非常勤職員による業務の補助 補完警察官の業務を補助 補完するため 退職警察官を積極的に活用して 交番相談員 中学校の非行防止活動を支援するスクール サポーター 金融機関等で未然防止活動を行う振り込め詐欺抑止対策員等の非常勤職員を配置しています 生活安全部地域安全対策推進室 ( 新設 ) 平成 26 年度 刑 事 部特殊詐欺捜査室 ( 新設 ) 警 備 部危機管理課 ( 名称変更 ) 保安課 ( 名称変更 ) 平成 27 年度生活安全部生活経済課 ( 名称変更 ) 刑 事 捜査支援 通訳センター部 ( 新設 ) 平成 28 年度 東京オリンピック パラ 警 備 部リンピック警備対策室 ( 新設 ) 振り込め詐欺抑止対策員の活動状況 大宮警察署新庁舎完成予想図 6 施設の整備 ⑴ 警察庁舎の改築耐震化が完了していない警察庁舎の優先的かつ計画的な整備を進めています 平成 29 年秋に大宮警察署等統合庁舎 ( さいたま市大宮区 : 科学捜査研究所及び警察本部鑑識課を統合 ) が完成予定であり 岩槻警察署及び所沢警察署の現在地建て替えについても同時に進めています 平成 29 年度は これらの事業を進めるほか 朝霞警察署の移転改築事業に着手します ⑵ 交番の改築平成 28 年度は 老朽 狭あい化により十分な県民サービスが提供できていない交番 4か所を改築しました 平成 29 年度は 交番 3か所 駐在所 1か所の改築を進めます このうち 越谷レイクタウン地区の居住人口及び商業施設への来場者の増加に伴う治安対策のため 大相模交番を越谷レイクタウン駅前に移転改築します - 10 -
Ⅱ 安全で安心して暮らせるまちづくり 1 サイバー空間の安全確保に向けた取組 1 サイバー犯罪の現状 サイバー犯罪は インターネット等高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ 又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪です 平成 28 年中 県内のインター ネットバンキングにおける不正送金事犯は 89 件 ( 前年比 -16 件 ) 被害金額は約 7,240 万円と多発 しています ⑴ サイバー犯罪に関連する相談受理状況 平成 28 年中の相談件数は 6,834 件で 詐欺 悪質商法被害や迷惑メールに関する相談件数が多 くなっています 相談件数の推移 ⑵ サイバー犯罪の検挙状況 相談内容 ( 平成 28 年中 ) 平成 28 年中は 292 件 218 人 ( 前年比 -175 件 +9 人 ) を検挙しています また 出会い系サイト等 の利用に起因する事件の検挙は126 件で 児童が被害者になる事例は依然として多い状況です サイバー犯罪検挙状況の推移出会い系サイト等の利用に 起因する被害者数等の推移 平成 28 年中の主な検挙 不正プログラムを含むチートツールを第三者に利用させることにより オンラインゲームの識別符号を不正に入手するとともに 第三者になりすましてオンラインゲームで遊戯するなどした 不正指令電磁的記録供用 不正アクセス及び私電磁的記録不正作出 同供用事件 ( サイバー犯罪対策課ほか ) 海外サーバを利用してインターネット上に銀行口座買取サイトを開設し 預貯金通帳等の有償譲渡しを誘引した犯罪収益移転防止法違反事件 ( サイバー犯罪対策課ほか ) - 11 -
2 サイバー犯罪対策の推進 ⑴ 広報 啓発活動県民に向け サイバー犯罪被害防止を目的とした情報セキュリティ講演 キャンペーン セミナー等を実施しています また 県内の大学 専門学校に通う外国人留学生に対し サイバー犯罪への関与を防止するための講演を行っています ⑵ 埼玉サイバーセキュリティ推進会議 サイバー犯罪被害防止キャンペーン 埼玉サイバーセキュリティ推進会議は サイバー空間における県民の安全と安心を確保するため 県内に所在する関係機関 団体で構成された会議で サイバーセキュリティセミナーを開催するなど サイバー空間の実態把握や情報共有等に取り組んでいます ⑶ サイバー犯罪対処能力の向上県内の全警察署にサイバー犯罪捜査官 (icop( アイコップ )) として指定した警察官を配置し サイバー犯罪捜査に当たらせるとともに 情報通信技術に関する有識者 2 人をサイバー犯罪対策技術顧問に委嘱し 深刻化するサイバー犯罪の対処能力を強化しています 3 サイバー攻撃対策の推進サイバー攻撃には 情報通信技術を用いて政府機関を含む重要インフラ事業者等の基幹システまひムを機能不全に陥れ 社会の機能を麻痺させてしまうサイバーテロや 政府機関 先端技術を有 する事業者等から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンスがあります 用語用語の意味目的対象主な手口 ( 例 ) 標的型メール攻撃特定の対象にウイルス対 重要インフラの基重要インフラ事業者等策ソフトで検知できない不幹システムに対す コンピュータへ正プログラム等を添付したる電子的攻撃のアクセス集中情報通信 金融 航空 電子メールを送る攻撃のこ 重要インフラの基基幹システムの 不正プログラムサイバーテロ鉄道 電力 ガス とで 政府機関や企業等の幹システムにおけ機能障害への感染政府 行政サービス 職員からの情報窃取が目的る重大な障害で電 コンピュータへ医療 水道 物流 であると見られています 子的攻撃による可の不正アクセス化学 クレジット 石油受信者が添付ファイルを能性が高いもの開くことで不正プログラム コンピュータへに感染し コンピュータ内の不正アクセスサイバーサイバー空間における機密情報の 政府機関の重要データが知らないうちょうほう 不正プログラムインテリジェンス諜報活動窃取 先端技術を有する企業ちに盗まれたり サイバーへの感染攻撃の踏み台になる場合が ( 例 ) 標的型メール攻撃あります ⑴ 官民連携による被害の未然防止サイバー攻撃の標的となるおそれのある事業者等と構築している 埼玉県サイバーテロ対策協議会 サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク を通じた情報共有や注意喚起等により 被害の未然防止に努めています ⑵ サイバー攻撃事案の実態解明県警察では サイバー攻撃に関する捜査のほか 情報を集約 分析するなどして 実態解明を進めています 埼玉県サイバーテロ対策協議会第 7 回総会 - 12 -
2 子ども 女性等の安全対策 ストーカー事案 ドメスティック バイオレンス (DV) 事案等の恋愛感情のもつれに起因する暴力的事案をはじめ 子どもや女性等が被害者となる犯罪に対し 女性警察官の視点を取り入れた警察活動を推進するなど被害者の安全確保を最優先とした迅速 的確な対応に努めています 1 人身安全関連事案への対応 人身安全関連事案 とは ストーカー事案 ドメスティック バイオレンス (DV) 事案 行方不明事案 児童 高齢者 障害者虐待事案等人身の安全を早急に確保する必要が認められる事案をいいます 人身安全関連事案に対しては 生活安全部門と刑事部門が密接に連携するなど組織的に対処する必要があることから 平成 26 年 4 月に 埼玉県警察人身安全初動指揮本部 を新設し 人身安全関連事案の初動指揮体制を整備しました 初動指揮本部では 事案の危険性 切迫性を判断し これに基づき行為者の事件検挙 行政措置 被害者の保護対策等必要な措置を速やかに講じるなど被害の未然防止に努めています 2 ストーカー DV 対策の推進 ⑴ ストーカー対策平成 28 年中のストーカー事案の相談受理件数は1,009 件で 前年と比べて43 件増加し 依然として高い水準で推移しています ストーカー事案を認知した際は 被害者の安全を最優先に考え 身辺警戒等の保護対策の実施 ストーカー行為等の規制等に関する法律その他の法令を適用した検挙 行為者に対する警告等を推進し 被害の拡大防止に努めています 平成 28 年中は ストーカー規制法違反 23 件をはじめ 住居侵入 脅迫 暴行等 67 件の事件を検挙したほか ストーカー規制法に基づく警告を145 件実施しています ストーカー事案取扱いの推移 - 13 -
⑵ ドメスティック バイオレンス (DV) 対策平成 28 年中の配偶者等からの暴力 (DV) 相談受理件数は5,238 件で 前年と比べて693 件増加しました DV 相談を受理した際は 相談者の安全を最優先に考え 保護対策や防犯指導を実施するとともに 加害者に対する指導 警告及び検挙等 相談者の立場に立った対策を推進しています 平成 28 年中は 暴行 傷害等で455 件を検挙したほか DV 法に基づく警察本部長等の援助を 956 件実施しています また 55 件の保護命令が発出されています DV 事案取扱いの推移 3 子どもと女性の犯罪被害防止 ごうかん 平成 28 年中 強姦及び強制わいせつの認知件数 は493 件で うち18 歳以下の子どもの被害は207 件でした また 声をかける 手をひく 肩に手をかける 後をつける 等の声かけ事案認知件数は年々増加し 平成 28 年中は3,045 件でした 県警察では こうした声かけ事案を犯罪の前兆行為とみなし 早期に行為者を特定して検挙 指導 警告を行う先制 予防的な活動を積極的に実施しています 性犯罪 声かけ事案認知件数の推移 犯罪被害を防止するためのポイント 子どもの被害防止 ~4つの約束を覚えましょう~ 1 ひとりにならない 2 知らない人についていかない 3 大きな声で助けを呼ぶ 4 だれとどこで何時まで遊ぶか家の人に話す 女性の被害防止 暗い道 人通りの少ない道は避けて通る 周囲の様子に気を配り もしかしたら という気持ちを常に持つ 歩きながら携帯電話等の操作や音楽プレーヤーの音楽に夢中にならない 来訪者に対して安易にドアを開けない 2 階以上でも玄関や窓は必ず施錠する 知らない人の車には絶対に乗らない エレベーターや車に乗るとき 帰宅時に玄関を開けるとき等は 付近に不審な人がいないか確かめる - 14 -